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illust : Q IL

―Festival Event―


プロローグ【『瘴気に染まりし氷塔の浄化作戦』】




「ったく! 本当に心配したんだからなっ!」
「ごめん、セナ……」
 首都タブロス、A.R.O.A.本部の一室で、セナ・ユスティナートはミラス・スティレートにツンっとした態度をとる。
 旧タブロス市街に進行してきたグノーシス・ヤルダバオートに捕らえられていたミラス・スティレートは、
 オベリスク・ギルティにて、儀式『大罪訃君祭』にかけられギルティに堕とされかけた。
 その企ては、ウィンクルム達の力を借りたことで失敗に終わり、グノーシス本人も自我を取り戻したミラスに斬り裂かれ、塔から落下し姿を消した。
 マントゥール教団員の幹部や、重役として地位を築いていた人間が何人も生贄になったことで、マントゥール教団全体の力は大きく削がれ、
 今回の一件は、全体的に見れば確かに良い結果となったのだが……。
「今度あんなことになったら、もう知らないからな!」
 セナからすれば、愛する大事な精霊がギルティとなってしまう一歩手前だったわけで。
 そうそう簡単に、一件落着だった、と割り切れる問題ではない。
「ま、まぁミラスも無事に戻ってきたんだ、そんな怒るなよ、な?」
 ツンツン状態のセナに困りきったミラスに助け舟を出すレッドニス・サンタクロースだったが、
「うるせー! 怒ってねぇよ!!」
「怒ってるだろ……」
 セナは頬を膨らませてまともに話を聞いてくれるような様子ではないようだ。
 はぁ、と困ったように溜息をつき、レッドニスはミラスに両手をあげてお手上げのポーズを見せる。
 ミラスはそれを見て苦笑いを浮かべた後、すっと真剣な表情となってセナを見据えて頭を下げた。
「ごめん、セナ。許してよ」
「ふ、ふんっ! 謝ったって許さないぞ!」
「そうか……じゃあ、映画も一緒に行けないな……」
 わざとらしく悲しそうな表情をして、ミラスが呟くと、
「なっ、映画に行かないとは言ってないだろっ!?」
 セナが大げさにその一言に食ってかかる。
「許してくれないって言ったじゃないか」
「言ったけど、え、映画は……行く……」
 今までとは打って変わってしおらしくなったセナに、ミラスはにこりと笑って、
「じゃあ、許してくれるか?」
「う、うう、ひ、卑怯だぞ! わかったよ! 許すよ! 許せばいいんだろー!?」
 ぽかぽかとセナがミラスの胸を殴りつけながら叫ぶ。
 その様子を見て、レッドニスはなんとなく邪魔してはいけないと察して部屋の隅に移動しようとすると、
 ガチャリ、と扉が開き一人の男性が革靴を鳴らしながら入室してきた。
 レッドニスだけでなく、セナとミラスもその存在に気がつき、男性の方を見やる。
 そして、その男性が誰なのかを認識して、セナの収まった怒りが振り返す。
「レイジ!」
「セナ・ユスティナートか。よく生還した」
「何がよく生還しただ! 人を幽閉しておいてさ!」
「ウィンクルムは貴重な存在だ。もしも彼――ミラス・スティレートがギルティとなっても、神人の君が居れば他の精霊と再契約できるかもしれない、私はそう判断しただけだ」
 怒りをぶつけるセナとは対照的に、レイジは淡々と結果を告げるかのように話をする。
「はぁ!? あたし達は、戦いの道具でも何でもねぇぞ! そんな簡単に再契約なんて出来るわけないだろ!」
「何を言っている。A.R.O.A.のシステムを忘れたか? 神人と精霊の契約は絶対だ」
「あんた……ッ!」
 今にも掴みかかりそうになっているセナを、ミラスが後ろから抑えて一歩下がる。
「離せミラス! あいつはブン殴らないと気がすまない!」
「落ち着いてセナ。ここであの男を殴っても何も良いことは無いよ」
「知るかー! A.R.O.A.の代表だか知らないけどムカつくんだよアイツ!」
 暴れるセナを相手にすることなく、レイジは独白するように報告を行う。
「ユウキ・ミツルギと、リーガルト・ベルドレットは、A.R.O.A.本部地下大監獄 第五監獄無間に収容された」
「…………無間って、大罪人が収容されるところだよな」
「そうだ。無間は、大罪人でありながら処刑が行えない者達を投獄する牢獄だ。
 彼等はウィンクルム。今後の戦いに必要になるかもしれないからな」
 レイジの言葉にセナは、今度は暴れることなく静かに低い声で問う。
「あんたにとって、あたし達ウィンクルムは何なんだよ……?」
「決まっている。『希望』だ。世界を救うためのな。だからこそ、失うわけにはいかない。
 君達は自覚するべきだ。世界に脅威をもたらすオーガという存在を討伐し、瘴気を浄化出来るのは君達しかいないのだということを」
「その為なら、あたし達を道具のように使っても、問題ないってことかよ?」
「言った筈だ。自覚しろ、と。ウィンクルムである限りオーガとの戦いは避けられない。
 仮にA.R.O.A.が存在しなかったとしても、ウィンクルムがオーガと戦うことを人々願うのは当然のことだ」
「………………」
 オーガを倒すことが出来るのは、ウィンクルム達しかいない。
 様々な技術を研究し開発を行うA.R.O.A.ですら、一般人がオーガを倒せる段階まで至っていないのだから、
 ウィンクルムの力なくして、オーガを世界から消滅させることなど出来はしないだろう。
 セナが押し黙っていると、レイジが一枚の紙を内ポケットから取り出してセナに手渡した。
「何だよこれ?」
「読めば理解出来る。ライラット、後は任せたぞ」
 そう言い放つと、レイジは部屋を後にして早足でどこかへ歩き去っていってしまった。
 セナが手渡された書類に視線を落とすと、そこには『オベリスク・ギルティ』についての記載がされていた。
 内容はまとめると、こんな感じだ。集められた瘴気が蓄積し、現状のままで放置しておけば動植物に影響を与えてしまう可能性が高い。
 瘴気を浄化するために、ウィンクルムを集結させ、瘴気の浄化に務める――。
「そうか、瘴気はまだ残ってるもんな」
「そうなんですよ!」
「うわぉあ!?」
 セナが書面を読んで納得していると、突然眼鏡をかけた青年が一人目の前に現れていた。
「ライラットか、久しぶりだな。クリスマスが近くなるとやっぱりテンション高ぇな」
「お久しぶりです、レッドニスさん! いやぁサンタさんに直接会えるなんて大感激ですよ!」
 ライラットと呼ばれた青年は、レッドニスと面識があるようで、嬉しそうに談笑をしている。
「……あんたは何者なんだ?」
 セナがおそるおそる問うと、ライラットは眼鏡を光らせて叫ぶ!
「僕はA.R.O.A.職員ですが、クリスマス関係の行事などを担当しているライラットと申します!」
 ライラットは、セナにレイジが手渡した資料をミラスとレッドニスにも手渡し、目を通すように促した。
「ご覧いただいた通り、『オベリスク・ギルティ』では今、瘴気が膨大な量存在しており、そのままにしておくことは出来ません。
 ただ、戦闘を行っていただいたことから分かるように、あの付近は森しかないので、ウィンクルムの皆さんにデートをしてもらうのもままならない」
 ライラットはそのまま眼鏡を光らせながら続ける。
「しかし! 今回なんと、瘴気の浄化を行いやすくするため、ノースガルドの皆さんを中心に、スペクルム連邦の方々からご助力をいただき、
 ホワイト・ヒルに存在している『ホワイト・ヒル大教会』をパーティー会場として、パーティーを開催することになったのです!」
「それはまた、大規模なイベントになったものだね」
「僕としましては、ムーンアンバー号を使ってイルミネーションとムーンアンバー号の軌跡のコントラストを楽しむ、
 なんてのも企画・検討し立ち上げたかったのですが、見事にボツを食らったので……」
「まぁ、そうホイホイと使えないだろあの列車は」
 今回『オベリスク・ギルティ』に向かう際に使用したのは、ムーンアンバー号だったが、あれは緊急事態だったからこそ使用許可が下りたのだ。
 クリスマスを盛り上げる為に、と使用するのは些か難しいのだろう。
「それで、『ホワイト・ヒル大教会』ってとこで何するんだよ?」
「ウィンクルムの皆さんがパフォーマンスを行うことの出来る『アピアチューレ・ホール』、
 立食パーティーでフレンチ料理を楽しめる『キャンドル・グランツ』、
 願いを込めて鳴らすと、願いが叶うと言い伝えられている『セイント・チャペル』と、見所は大きくわけて3つとなっています」
 ライラットは、そのまま続ける。
「これらの会場の中で、デートプランを選択していただき、ウィンクルムの皆さんに楽しんでいただく、というのが今回のパーティーです。
 主役は世界を救ってくれたウィンクルムの皆様全員ですからね! 思う存分楽しんでいただきたい!」
「パーティーか~!」
 先程まで怒りに表情を染めていたセナの表情も明るくなり、完全にパーティーに思いを馳せている。
「さてと、俺もライラットに負けてられないしな、夢見の塔に戻ってクリスマスプレゼントの準備を進めることにする」
 レッドニスはそう言い、フライングトナカイボートに乗ってA.R.O.A.本部を後にした。
 セナ達はその背中に手を振った後、パーティーについてミラスと共に話を進め、デートプランを考え始めたのだった。





「ぐ…………」
 『オベリスク・ギルティ』から少し離れた場所で、銀髪に眼鏡を掛け、羊の角に似た角を生やす青年が血塗れで歩いていた。
「まさか、あのような結果になるとは……」
 ミラスをギルティ化させることが目的であり、またギルティ化させることが難しいことになるなど微塵も考えていなかった。
 しかし、結果としてミラスはウィンクルムとセナの手によって自我を取り戻し、あろうことか身体に宿していた瘴気を、すべて自分の力に変えて放出して攻撃を行ったのだ。
 彼――グノーシス・ヤルダバオートはその攻撃に晒されて『オベリスク・ギルティ』から落下することとなった。
「愛の力、ですか……少々侮っていたようです」
 グノーシスが一度休もうと木に手をかけた瞬間、雪を踏み抜く足音が彼の耳に届く。
「誰だ!」
 足音の主はグノーシスの視線に射抜かれてもなお、怖気付くことなくゆっくりと吹雪の中からその姿を現した。
「……あなたは」
「派手にやられたな、グノーシス」
 吹雪の中から姿を現したのは、ウィンクルムでも人間でもなく――グノーシスと同じくオーガの角を生やした男。
 マントゥール教団員が羽織っているマントに似た外套をはためかせ、ゆっくりとグノーシスへ近づく。
「手を貸そう、まだ立てるか?」
「触らないで頂きたい」
 男は、グノーシスのつれない態度にも肩を竦めて、手を貸すことなく横に並ぶ。
「……ギルティ・マニアを司るギルティのあなたが、なぜ今更ここに?」
「何、懐かしい顔があったもので、物見遊山でね」
「懐かしい?」
「レッドニス・サンタクロース、彼とダークニス・サンタクロースの姿はよく覚えているよ」
「まったく、ボクも様々な策略を練ったり情報を収集しているつもりなのですが……あなたは本当にわからない方だ。腹ただしくすらありますよ」
 本当に苛立ちを隠せないといった様子で、グノーシスは隣に立つギルティを睨む。
「よくやっているさ、しかしこの世界にはまだ残っているんだよ、これまでの前提を覆すような謎がね」
「興味深いですね。物理法則でも、書き換えるつもりでしょうか?」
 ギルティは、笑みを浮かべながら、まるで演説でも行うかのように言葉を紡いでいく。
「君あらば考えただろう。なぜセイントとなった神人は女神ジェンマの使いになるのか。
 なぜ、テソロ・ペルソナは別次元に遷移されるのか・なぜ、ウィンクルムはなぜ前世の記憶を有していることがあるのか。
 オーガという存在は一体、何のために存在しているのか?」
「………………」
「この世に意味のないことなど存在しない。それ等には必ず意味が存在する」
「なぜ、とは訊きませんよ。それを解明するのが科学者ですから」
 鋭い眼光で、答えを言ったら殺すというかのようにギルティに釘を刺すグノーシスだったが、
 ギルティは気にする様子も無く、微笑みながらグノーシスを見返す。
「期待しているよ、君がそのことに気がつくことに」
「…………あなたはこれからどちらに?」
「特に決めてはいないさ。もはや準備は進んでいるのだから、少しずつ進めればいい。君こそ、これからどうするつもりなんだ?」
「ボクも、まだ計画が完遂したわけではないのですが、正直あなたに興味が湧きました」
「あなたと共に行動し、世界の謎とやらを解明し、この目で見たい」
「なるほど」
 グノーシスの言葉に、ギルティはフッと笑みを零し、まるでついて来いと言うように大きく歩を進める。
 そして、ギルティ・マニアを司るギルティが魔方陣を出現させると、二人のギルティは魔方陣に吸い込まれて消えていった。





 神々しい光を放つ空間で、天使ジュリアーノは女神ジェンマの前で跪拝していた。
「ジェンマ様。もはや、オーガの増加は予断を許さない状況となっております」
「…………そのようですね」
 女神ジェンマは、ジュリアーノと視線を合わせることなく、深刻そうな顔で虚空を見つめている。
「ウィンクルム達の愛も深まってはいますが、テソロ・ペルソナ達の居る次元や、黄昏世界……限界に近い状況です。
 このままでは、ギルティ・ガルテンのようにウィンクルムが一人も居らず、人々がオーガとなっていくだけの世界が増えていくばかりだ」
「……………………」
「私は、女神ジェンマ様に仕えたことを後悔していません。テソロ・ペルソナとなった私の精霊も……事情を話せば分かってくれるでしょう」
 ジュリアーノは唇を噛み切るほど悔しそうに歯噛みしながら、続ける。
「しかし、このまま世界がオーガに埋め尽くされていく様相を見るだけなのは耐えられません」
 滅多に見せないジュリアーノのその姿に、女神ジェンマはついに彼に視線を移して、
「ジュリアーノ」
「はっ」
「わかりました。本来であればまだ早いものではありましたが、手段は選べないようですね」
「ジェンマ様!」
 ジュリアーノが、女神ジェンマの言葉に表情を明るく彩らせた。
「この力は、強大です。そして、繊細なのはわかりますね。ウィンクルム達に授けるとしても、『オベリスク・ギルティ』の瘴気が邪魔をしてしまいます」
「存じております」
「この件は、あなたに一任します。もしも彼等が『オベリスク・ギルティ』の瘴気を浄化できたのなら、あなたからその力をウィンクルムに授けることが出来るでしょう」
「承知しました」
「頼みましたよ、ジュリアーノ……」
「お任せください!」
 女神ジェンマはそう言い残すとその場を後にし、光となって姿を消した。
 ジュリアーノは、女神ジェンマが残した神々しい力を大切に手に取り、ウィンクルム達に祈りを込めたのだった。

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報酬

 ウィンクルムの活躍により、フェスティバルイベント終了時の報酬ジェール、取得経験値が変化します。
 より大きな戦果を残されたウィンクルムには、名誉を讃える勲章が授与されます。
 (結果発表された際に、後日配布が行われます。)


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