ヘッダー画像


フェスティバルイベント

『『狂信者の『愛』とウィンクルムの『愛』(女性側)』』

リザルトページ


リザルトノベル【女性側】ミラス・スティレート奪還部隊

チーム一覧

神人:かのん
精霊:天藍
神人:クロス
精霊:ディオス
神人:桜倉 歌菜
精霊:月成 羽純
神人:リチェルカーレ
精霊:シリウス
神人:日向 悠夜
精霊:降矢 弓弦
神人:アイリス・ケリー
精霊:エリアス
神人:ひろの
精霊:ルシエロ=ザガン
神人:ニーナ・ルアルディ
精霊:グレン・カーヴェル
神人:出石 香奈
精霊:レムレース・エーヴィヒカイト
神人:七草・シエテ・イルゴ
精霊:翡翠・フェイツィ

リザルトノベル

 円形の広場は凍えるように冷たい。
 『オベリスク・ギルティ』の最上階で、ウィンクルム達は白い息を吐き出した。
 氷結している床と氷柱が、この冷たい空気を作り出している張本人だ。
「ミラス! しっかりしろ!」
 セナ・ユスティナートの悲痛な声が、凍える空気を震わせる。
 そのセナの視界の先で、瘴気に包まれた青年──ミラス・スティレートが唸り声を上げた。
 ゆらりと揺れる身体はどす黒い靄のようなものに覆われ、セナを見返す瞳も今は昏く濁っている。

「ふふ、もう時間の問題ですよ」

 グノーシス・ヤルダバオートが楽しげに微笑んだ。
「人工的なギルティの力、どれ程のものか……楽しみですね」
 ミラスがギルティ化すると微塵も疑っていない様子の口調に、セナは怒りに肩を震わせる。
「ふざけんな! そんな事、絶対にさせるかよ!」
 グノーシスはセナの怒号すらも面白いといった様子で、広場の端へとゆっくり歩いて行く。
 どうやら、ミラスがギルティ化する様子を特等席で見守るつもりのようだった。
「この……!」
 一歩踏み出そうとしたセナの手を、そっと優しい手が掴んだ。
 セナがハッと息を飲むと、その青い目を見返して、かのんが微笑む。
「私達が居ます」
「護るから。セナさんはミラスさんだけ見てて」
 凛とした声と共に、ひろのがセナの隣に立った。
「セナさん、これを。そして貴方は前には出ないでください」
 アイリス・ケリーがセナの前に膝を付き、彼女の靴に手際よくロープを括り付けた──氷結した床へのかんじき代わりである。
 アイリスの用意したロープは、すでにウィンクルム達全員の靴にも巻き付けられていた。
「彼を取り戻すためには、貴方が倒れないことが肝心でしょうから」
 しっかりとロープを縛ってから、アイリスはセナを見上げる。セナはぎゅっと唇を噛み締めた。
「今まで一緒だった分。頭の中の声より、セナさんの声は届くよ」
 ひろのがゆっくりと口を開く。
「だから、ずっとミラスさんに呼び掛けて、欲しい」
 絶対に護るから──盾『六壬式盤』を構えて、ひろのは前を見据えた。
「心細くなったら、ミラスさんの名前を沢山呼んであげてください。帰る場所が分かるように」
 ひろのと挟むような形でセナの隣に並び、そう言ってニーナ・ルアルディは『魔守のオーブ』を掲げる。ニーナを中心に円形の魔法力場が形成された。
「大丈夫、二人一緒に歩む未来はあるよ」
 盾『食いしん坊なお化け』を手にした日向 悠夜は、セナを力付けるような温かい笑みを見せた。
「ええ、必ず。お二人は守ります」
 七草・シエテ・イルゴが同意するように頷けば、セナの瞳に涙が浮かんだ。
「一緒に頑張りましょう!」
 桜倉 歌菜が明るく言い、セナの背中を優しく叩く。
「絶対に奴らの好きにはさせないわ」
 瞳に強い光を灯し、出石 香奈は力強く言い切った。
「セナ、絆を信じろ。だから必ずミラスを救おう」
 『トランスソード』を手にクロスが笑顔を見せれば、セナは大きく頷いた。涙をぐいと拭って前を見る。
「必ず助けます」
 セナの様子に微笑んでから、リチェルカーレは表情を引き締め、神符『詠鬼零称』を手にミラスを見た。彼を覆うどす黒いオーラはどんどん膨らんでいっている。最早猶予はない。

 しんとした空気の中、ウィンクルム達の触神の言霊──インスパイア・スペルが響き渡った。

「無理はせず、危なくなったら後退してくれ」
 月成 羽純がそう言うと同時、彼の周囲に、光と水の力を湛えた強固な防御壁が展開される。
「援護する」
 続けて、レムレース・エーヴィヒカイトの身体を中心に、聖なる領域が形成された。これで彼の傍に居れば防御力が強化される。
 ルシエロ=ザガンは、レムレースから離れないよう意識しつつ前に出ると、改めてミラスを観察した。
 彼の鎧の隙間──胸ポケットにチケットのようなものが見える。
(映画のチケット……?)
 ルシエロはセナを振り返った。
「彼と映画を観に行く約束でも?」
「え?……そういえば……」
 戸惑いながらも瞳を潤ませるセナに、ルシエロは一つ大きく頷いた。
 一方、『スチームウィールソード』を手にした、翡翠・フェイツィはミラスの武器に注視している。
(隙を見て、武器を叩き落せたら……)
 ミラスのレイピア『ジェンマの制裁』は黒いオーラの影響なのか、光無き暗い色に染まっていた。
 前に出て来た精霊達に、徐々にミラスの息が荒くなっていく。
「……ッ」
 ミラスの顔が苦痛に歪むと同時、翡翠に向けてレイピアが打ち出された。
「させるか!」
 ディオスの『ゼノクロス・ツヴァイ』がレイピアを弾くと同時、『ヴィンテージギア・レザー』に憑依した吸血バラを模した食人植物がミラスに牙を向くが、黒いオーラを纏った『正義の盾』が弾き返す。
「大切な神人を悲しませるつもりか。確りしろ!」
 『ソウルダンサー』を両手に構え、舞うような動きで天藍が斬り込んだ。
 ミラスの『アンチダメージ・プロセッサ』の黒い翼が羽ばたき、その攻撃を盾が防ぐ。
「……何とかしてみせる 凌いでくれ」
 そこにスピードを上げたステップから、シリウスが飛び込んだ。至近距離から連続で『ソウルダンサー』を振るう。
 天藍の攻撃から体勢を立て直せない所に加速する剣戟。ミラスは無意識に後退しながらレイピアを突き出した。
「ここだ!」
 ミラスの動きを見ていた降矢 弓弦が、両手弓『酉之爪』から弓を放つ。続けて撃たれた二本の矢がミラスの両脇から迫った。
 ミラスは思わず身構えるも、彼を覆う黒いオーラが弓矢を弾き返す。
「……グゥッ……!」
 咆哮と共に、ミラスのレイピアが唸った。
 一発、二発。
 瘴気の斬撃が真っ直ぐ線を描き、二筋、セナに向かって飛んでいく。
「レム!」
 香奈の叫びに反応したレムレースが走り、セナ達が『フォトンサークル』の範囲内に入った。
「止まれッ!!──オラァ!!」
 セナの傍に待機していたグレン・カーヴェルが、一発目を『エスグリミドール』の渾身の一撃で相殺する。
「「「させない!!」」」
 二発目は、悠夜とひろのが盾を構え、ニーナは魔法力場で迎え撃った。
 斬撃は何とか防ぐ事が出来たが、
「きゃあっ」
 一番前で攻撃を受けた悠夜の身体が、氷結している床を滑った。
「危ない……!」
 氷柱にぶつかりそうになる所を、歌菜の『ローズ・オブ・マッハ』が捕えて救出する。
 続けて両手でレイピアを構えるミラスへ、天藍とシリウスが舞う動きで斬り掛かった。
「「相手はこちらだ!」」
「……グゥウウウ!」
 ミラスは再び吼え、レイピアを振り上げて、先程より溜めた状態から黒い斬撃を放つ。
 直撃は避けられたが、威力は大きく、天藍は大きく蹈鞴を踏み、シリウスは床に膝を付いた。
 ぽたりと二人の足元に血が滴る。
「まだまだ!」
「こっちも居るぞ!」
 続けざまレイピアを振り上げるミラスに、翡翠が斬り付け、ディオスが蹴りを繰り出すも、黒いオーラに弾かれて床を転がった。
(何処だ、何処に黄金の鱗がある……?)
 弓弦は弓を放ちながら、注意深くミラスの動きを観察する。
 オーラで攻撃は防がれるが、無意識に庇う場所がある筈だ。
(オーラを何とかしなければ、チケットも奪えそうにないな)
 ルシエロは舞うステップで攻撃を躱しながらミラスの隙を伺うも、斬撃の威力は凄まじく迂闊には近寄れない。
「俺にはよくわからないな」
 また力を溜めて一撃を放とうとするミラスに、後方に控えていたエリアスの『スイーツロット』から放った魔法弾が着弾した。
「セナの言葉よりも、変なやつの言い分の方が重要なのかい?」
 一撃自体の威力はオーラの前に無いに等しいが、ミラスの気を引くのには十分だった。
 また、その言葉も。
「……セ、ナ……」
 ミラスの身体が小刻みに震える。
「ミラス! あたしはここだよ!」
 アイリスに背中を押され、セナが叫んだ。
 ミラスの瞳がセナを見る。
「お願い頑張って!」
「負けるな!」
 リチェルカーレとクロスが叫び、その手の中で力を注ぎ込んだ神符が輝きを放った。
 符の聖なる力がミラスの身体に光の蛇のように巻き付いて、その動きを更に鈍らせる。
「その闇、払ってみせます……!」
 続けて、かのんの持つ呪符『五行連環』が力を解放する。
 木・火・土・金・水──かのんが印を結ぶと同時、呪符から溢れた光がミラスを包んだ。
「くぅッ……!」
「かのん!」
「かのんさん!」
 じりじりとかのんの足が凍り付いた地面を滑る。香奈とシエテがその背中を支えた。
 パァンッ!
 呪符から光が弾ける。かのん、香奈、シエテの身体は弾き飛ばされた。
「かのん!」「香奈!」「シエ!」
 天藍とレムレース、翡翠が三人の身体を抱き留める。
 かのんは痺れる腕で何とか天藍の手を握り返し、ミラスを見た。
「失敗ですね……」
 ミラスを包む黒いオーラに変化を見出せず、かのんはきゅっと唇を噛み締める。
「いや──……」
 天藍はかのんの頬に掛かる髪を払ってやってから、ミラスを見据えた。
「十分だ。鱗の位置は分かった」
「え?」
「ああ、見えた」
 レムレースと翡翠が頷くのに、香奈とシエテは顔を見合わせ瞬きする。
「きゃっ……!」「うわっ……!」
 リチェルカーレとクロスの神符の光が途絶え、二人が反動に思わず声を上げた──ミラスの拘束が完全に解ける。
「リチェ、もう一回行けるか?」
 シリウスの問いに、リチェルカーレは痛む手を押さえて確と頷いた。
「回復する」
「皆さん、羽純くんの『インベル・ヴィテ』の範囲内へ……!」
 歌菜が負傷者を誘導し、羽純の放つ回復の光が傷を癒していく。
「クロ」
「俺も行けるぜ!」
 クロスも体勢を立て直し符を構えれば、ディオスはその姿に微かに笑みを見せ、ミラスへ突進する。
 ミラスはレイピアを両手で構えていた──また、あの斬撃を放つ気だ。そうはさせない!
 エリアスの魔法弾と、弓弦の弓矢が援護射撃する中、ディオスはレイピアを狙い剣を繰り出す。
 ミラスは忌々しげに、矛先をディオスに向けた。
「させない」
「隙だらけだ」
 そこへ、加速するシリウスとルシエロの剣戟がミラスの四肢を捉えた。オーラ越しとはいえ、ミラスの身体がぐらつく。
「砕けろッ!!」
 そこへ翡翠がその武器を砕かんと振り下ろした重い一撃に、レイピアを振るう手も動きが鈍った。
「行くぞ、リチェ!」
「ええ、もう一度……!」
 クロスとリチェルカーレの神符が再び力を放ち、ミラスの足と手に絡み付いた。
「今だ!」
 エリアスと弓弦は一瞬視線で合図すると、魔法弾と弓矢を同時に放つ。
 エリアスの魔法弾が、弓弦の弓矢を守るように隠すようにして、二発の弓矢が左右からミラスに迫った。
 狙うは──その首の後ろ。
 かのんの攻撃の際、僅かに薄れたオーラ、そして体勢を崩したミラスの首の後ろに『黄金の鱗』を見つけたのだ。
「グゥウウウウウ!!」
 ミラスは力任せに神符の力を払い除け、左右からの弓矢をレイピアで叩き落す。
 しかし、そこに最大の隙が生まれた。
「貰った……!」
 後ろに回り込んでいた天藍の一撃が、『黄金の鱗』を捉える。

 ミラスの絶叫が響き渡った。

 彼を覆っていた黒いオーラが消えていくのに、ウィンクルム達はぐっと拳を握った。

「これはこれは……」
 傍観していたグノーシスが、ゆらりと身体を揺らす。

 動きの止まったミラスの懐へ、ルシエロは素早く飛び込んだ。胸ポケットのチケットを流れるような動作で抜き取る。
「預かるぞ」
 ミラスの身体が僅かに震えた。
 抜き取られたチケットを求めるように手を伸ばす。
「ミラス……!」
 セナがミラスの名を呼べば、ミラスはそちらを見て──。

「いけませんねぇ。そんなに瘴気が足りないのなら、補充して差し上げましょう」

「ッ!!!?」
 グノーシスの言葉が響き渡ると同時、ミラスが苦しみ始める。
 グノーシスの掌から放たれたどす黒い何かが、彼の中に入っていくのをウィンクルム達は見た。
 フーッ、フーッ。
 獣のような息遣いで、ミラスは再び両手でレイピアを握り締める。
「ミラス!! あんた、一体ミラスに何を……!」
 セナが飛び出ようとするのを、ニーナとアイリスが両脇から抱えるようにして止めた。グノーシスの哄笑が響く。
「グォオオオオオオオ!!」
 獣の咆哮と共に、ミラスのレイピアが振り抜かれた。
 黒い瘴気の塊が嵐となってウィンクルム達を襲う。
 そこへ茜色の眩いオーラが立ち塞がった。
 光輪が鏡のように瘴気の斬撃を全て弾き返して、羽純はミラスを見据える。
 彼の隣には、同じオーラを身に纏った歌菜が居る──『らぶてぃめっとトランス』を発動したのだ。
「もう少しだ……もう少しだけ凌いでくれ」
「ミラスさん、負けないで」
 同じくリチェルカーレと『らぶてぃめっとトランス』を発動したシリウスが、ミラスの前に出る。リチェルカーレもその横で神符を構えた。
「ミラス、自分を保つんだ」
 天藍もまた、かのんと『らぶてぃめっとトランス』を行い、かのんと共にミラスに対峙する。
「セナさん、ミラスさんと交わした約束や思い出を話して下さい。貴方の声なら、きっと彼は……」
 かのんが呪符を手に言えば、セナは大きく頷いた。
 リチェルカーレの神符が、光の渦となってミラスに絡み付くと、かのんの呪符がミラスの視界を奪うように目を覆う。
 シリウスの高速で繰り出される剣と、天藍の高速突進での防御を崩す連打に、ミラスは苦悶の声を上げながらも、レイピアを振り回した。
 放たれる攻撃は、羽純の光輪が反射する。
「お前の大切な者はここに居る! 戻ってこい!」
 歌菜の手を取り、羽純が呼び掛けた。
「ミラスさん! セナさんを見て!」
 羽純と歌菜の声と、その手を繋ぐ姿に、ミラスの動きが僅かに鈍る。
「ミラス!闇に堕ちるな! 大切な人を思い出せ!」
 ディオスも吼えるように叫んだ。大切な人──もし、己が同じ立場なら、絶対にクロスを、オルクスを忘れない。忘れられるものか!
「二人一緒に歩む未来がある!」
「そう、必ず……!」
 悠夜が叫べば、弓弦は強く頷く。そう、二人の未来は絶対に繋がる、ここで断ち切らせる訳にはいかない。
「自分を取り戻せ!」
「ミラスさん、しっかり……!」
 シエテと翡翠も、声を上げてミラスへ呼び掛け続ける。
「セナさんの声、よく聞いて下さい……!」
「そうすりゃ、きっと負けねぇよ」
 ニーナは懇願するように、グレンは力強くミラスへ言葉を紡いだ。
「負けないで、こんな奴に!」
「自分を保て!」
 香奈とレムは、ミラスを励まし力付ける。
「セナの言葉だけに耳を傾けたらいい」
 グノーシスの動きを警戒しながら、エリアスが穏やかに語り掛けた。
「セナ」
 ルシエロがセナに、ミラスから奪ったムービーチケットを手渡した。
「セナさんの声は届くよ」
 ひろのが真っ直ぐにセナを見る。
「チケットについて、思い出を語り掛けてみたらどうでしょう?」
 セナの手に握られたチケットを見つめ、アイリスがそう言えば、セナはうんと一つ頷いた。

「なぁ……ミラス。一緒に映画に行こうかって話をした時……ポップコーンの話になったよな。
 あたしがキャラメル、ミラスが塩がいいって……あたし達意見が合わなくて……。
 どっちがいかに美味いか、言い合いしたっけ……」
 セナは、小さく肩を震わせる。
「あたし、絶対譲らないなんて言ったけど……一回だけ、ミラスの好きな塩味にしてもいいかなって……。
 だから……だから……」
 ぽろぽろと、セナの瞳から大粒の涙が溢れて落ちた。

「だから、戻ってこいよ……! あたし、あんたが居ないと……駄目なんだ……!!」

 ミラスの動きが止まった。
 体を震わせて、涙を零すセナを見る。
 ウィンクルム達は、ミラスの中で、ミラスが闇と戦っているのを感じた。

「……セ……ナ…………セナ……セナ……!!」

 ぎこちなくも、ミラスは愛おしいパートナーの名前を口にした。

「……忌々しい……! その神人を殺しなさい!!」
 グノーシスの苛ついた声と共に、殺気を感じた悠夜は声を上げる。
「敵が来るよ!」
 グノーシスの背後から、マントゥール教団員らしき武装した男達が現れた。
「セナさんに手出しはさせません!」
 槍『緋矛』を突き出して、シエテは教団員達を牽制する。
「ここから先は一歩も行かせねぇぞ!」
 グレンの『エスグリミドール』が、巨大な竜巻のように教団員達をなぎ倒した。
「避けられるものなら、避けてみやがれ!」
 装甲を砕く重いグレンの一撃に、教団員達はセナに近づけない。
 エリアスは『朝霧の戸惑い』で霧を発生させ、教団員達の動きを封じる。
 次々と倒れる教団員達に、グノーシスの怒りは頂点に達した。
「ならば、私の手で摘み取ってあげましょう……!」
 セナに向かって、グノーシスが跳躍した。
「行かせるかよ!」
「いけない……!」
 グレンが斬り込み、弓弦が矢を放つも、グノーシスは軽やかにこれを躱す。
「……ッ……行ったぞッ!」
 グレンが叫ぶのに、
「レム、お願い!」
 香奈はレムの額へ口づけし、彼に自身の持っている魔力を受け渡した。
 レムレースが身に纏う防具が青白く発光する。
 『閃光ノ白外套』の輝きも加わり、グノーシスは一瞬視界を奪われた。
 
「ミラス! ミラス!」
 セナは、ひたすらミラスの名を呼び続けていた。
 ミラスの中で、セナに呼ばれる度、小さな光が灯る。
 小さかった光は、ウィンクルム達の呼び掛け、ウィンクルムから受けた攻撃によって段々と大きくなり……。
「……負けるか……よ……」
 握り締めたレイピアが小刻みに震え、確かにミラスの意志を持って構えられていく。
「ミラス!!」
 力の限りセナが叫んだ。
 届け!
 この声よ、思いよ、彼に届けと──!

「セナ……お前が居るから、お前が居るから……俺は……!」
 ミラスを蝕んでいた黒いもの──『瘴気の力』が、レイピアへと集まっていく。

「俺は……負けない!!」

 ミラスはレイピアを突き出した。
 凝縮した黒い焔が真っ直ぐに天を駆け、グノーシスの脇腹を掠る。その身体がぐらりと揺らいだ。

 グノーシスは驚きに目を見開く。有り得ない事が起こっている。
 
「バカ……な……」

 それがグノーシス・ヤルダバオートの最後の言葉だった。
 円形の広場から、グノーシスの身体は外へと落ちていく。

 まるでスローモーションのように、小さくなって消えていくその姿を、ミラスは呆然と見送った。
 ──当たったのか? これで俺は……僕は……。

「ミラス!!」

 温かい腕に抱き締められて、ミラスはやっと大きく息を吐き出した。
「ミラス! ミラス!」
 胸の中で泣きじゃくる愛おしい体温に、戻ってこれたと実感する。
「……心配かけて、ごめんね。セナ」
 優しくその赤い髪を撫でて、ミラスは傷だらけのウィンクルム達を見回した。
「皆さん……本当に、ありがとうございます……」

「おかえりなさい」

 誰からともなく、そう口にしていた。
 ミラスは帰って来たのだ。

 レッドニス・サンタクロースは、グノーシスが転落していった場所を、『フライングトナカイボート』から見下ろしていた。
 果たしてこれで、あの男は滅んだのか……。
 そうであって欲しいと祈るような気持ちで、『オベリスク・ギルティ』のウィンクルム達を見遣る。
 何時しか、明るい太陽が辺りを照らし始めていた。
 まるで、ウィンクルム達の勝利を祝う光のように、レッドニスには思えたのだった。

(執筆GM:雪花菜 凛 GM)

戦闘判定:大成功

>>フェスティバルイベント トップ


PAGE TOP