リザルトノベル【男性側】第四監獄『大灼熱』オーガ討伐部隊
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リザルトノベル
●薄闇の監獄に罪人の絶叫が響き渡る。
投獄されている重罪人と教団員の脱獄を試みるマントゥール教団の作戦阻止。そのために200メートル四方の第四監獄『大灼熱』へと、
ウィンクルム達はトランスを終え、各自コンフェイト・ドライブやハイトランス・ジェミニを行い現場に駆けつけた。その彼らを出迎えたのが、
捕らえられたマントゥール教団員や狂った殺人鬼達の痛罵であった。
「殺せ!」
「殺せ!」
囚人達は拳を突き上げ、闇をかたどる異形のオーガ達へと声援を上げた。
「ウィンクルムを殺せ!!」
その悪意の罵声に、歴戦のウィンクルムであっても思わず足を止める。戦闘経験値の低い者達ならなおさらだ。
さらにウィンクルム達の目を奪ったのは、異形のオーガ達の姿形であった。
まず目に飛び込んできたのは天井近くまで背丈のある植物。3メートル近い不気味な赤紫色の花の周辺に無数の蔦が絡み合い、触手のように伸びている。
花の下には筒状の胴体が伸びていて、たぷたぷと波打っていた。
その隣には白衣をまとった蓬髪の男。長身であるのにびっくりするような猫背で、目は爛々と輝き、まるで死体のように顔色が悪かった。
男は左手に箱状の何らかの装置――計測器を抱え、右手には注射器のようなものを持っていた。
植物型オーガ、メダ・サテナ。
そしてBスケールオーガ、ラウナ・テクニカである。
●
「植物のオーガ……珍しい……」
アイスブルーの瞳を覆う眼鏡をかけ直し、李月が呟く。
「ま、いない訳じゃねーだろう。オーガは動物じゃなきゃいけないって決まりがある訳じゃないし」
ゼノアスは軽口のように言いながら、クライツシュトラールを握り直す。
「ここで戦闘開始のようですね」
眼鏡をかけている白露が、周囲の囚人達の怒声に思わず振り返りながら言った。
「パパ、あたしがんばる」
この状況にもかかわらず、アイオライト・セプテンバーは全く元気なようである。
「ネカ」
俊・ブルックスが軽く声をかける。
「はい」
ネカット・グラキエスはごく自然に返事をする。
オーガ達はウィンクルム達に気がつき、じりじりと近づいてきている。
そこに向かい、ネカットは流れるように呪文を唱え、朝霧の戸惑いを周囲に張り巡らせた。ウィンクルム達には無害な霧が周囲を覆っていく。オーガ達の動きが鈍る。
それを見極めて、俊はアヒル特務隊「オ・トーリ・デコイ」をメダ・サテナの方へと突撃させていった。
独特の鳴き声を放ちながら正に囮となるべく突っ込んで行くゼンマイ仕掛けのアヒル。
一方、ショーンもアヒル特務隊「オ・トーリ・デコイ」をサテナとは反対、ラウナ・テクニカの方へと射出する。
テクニカはゾンビを思わせる目つきでアヒルを視線で追いかける。速すぎず遅すぎない動きでアヒルの方へ進む。
その前方に、ケインが走り出た。
「俺が相手だ!」
サテナから一気に距離を取った方向にアヒルと共に走り、テクニカにアプローチIIを行う。真面目な彼には戦いにおける真剣な表情が似合う。
テクニカは注意を一気にデコイとケインに惹きつけられ、自らそちらに大股に近づいて行く。それを見て、ショーン、白露、ハティ、シムレスとロックリーン、
天原秋乃とイチカ・ククルはテクニカを追いかけていく。
残されたウィンクルムはサテナ撃破のために、異形の植物の周囲に展開していく。
「リノ、こっちへ」
シャーマインが自分の周囲5メートルにフォトンサークルを張り巡らせ、その中にユズリノが入る。
ユズリノのみならず、広範囲に渡るシャーマインのフォトンサークルの中にはゼノアスや鳥飼、鴉、アイオライト、李月が含まれた。
ユズリノがマグナライトを掲げて辺りを照らす。
後方に、牢を守るようにしてブリンドが立ち、そこからも離れてややテクニカに近い方向にネカットが立つ。ブリンドはラピットファイアをセットする。
ネカットは乙女の恋心IIを詠唱開始。
その後、シャーマインは自身の防具を青白く発光させ、プロテクションを行う。
一体どこが知覚器官になっているのか、メダ・サテナは、ウィンクルム達の動きを悟り、蔦の触手を伸ばすと近くに立つ鳥飼を突っつこうとするが、
彼はエレガントパラソルを開いて跳ね返す。角度によっては女子にも見える鳥飼にパラソルは似合って優雅だ。
「そうはさせません……!」
サテナは触手をさまよわせ、アイオライトを蔦で巻き付けようとする。
「いやーん、こっち来るなー!」
アイオライトが悲鳴を上げると、鴉が動いた。
パペットマペットIIで白猫のぬいぐるみを召還。ぬいぐるみが蔦をはね飛ばし、アイオライトを守る。
「子供は余り前に出ない方がいいですよ」
腹黒キャラを隠して鴉はそんな事を言っている。
「ウィンクルムの力を舐めるなっ」
「それっ」
「負けないんだからー!」
シャーマインのフォトンサークルと、鴉のパペットマペットIIが守る中、李月や鳥飼、アイオライト達は一斉に武器を振りかざし、触手を叩き斬り始めた。
襲い来る不気味な触手が切り裂かれ、床に叩き落とされる。
「あ、あの……えいっ」
ユズリノはフォトンサークルの内側、シャーマインの影に隠れているが、自分の方に触手が伸びてくれば、必死に妖刀狐火を振りかざして応戦する。
ゼノアスは食人植物の力を防具に憑依させブラッディローズで防御力を上げる。
「ぶっ倒す!!」
その上でタイガークローIIで斧の刃を猛獣の爪と変えると、サテナに対して猛烈な勢いで攻撃を開始した。
そのゼノアスの攻撃力が鬱陶しかったのか、蔦が再び彼を突くように飛びかかってくる。それを突き破るブリンドの弾丸。
その弾丸の影から李月は飛び出て、ハンマーでサテナを殴りつける。動きが止まるサテナ。
「リノは……守る!」
シャーマインもバッドエクゼキュータを振り上げ、手数でサテナを打ちのめそうとする。
プロテクションで防御を上げているシャーマインはある程度は前に出ても大丈夫だ。
そのとき、蔦が大きくざわめいたかと思うと、一斉に、神人達を庇って前に立つシャーマインに襲いかかった。
蔦が手足を絡め取り、シャーマインを激しく締め上げる。
「シャミィ!」
悲鳴のように叫んでユズリノは刀を片手に前に走ろうとする。
「バカ、来るなっ! 危ないっ!」
それを制止するシャーマイン。しかし顔が苦痛に歪む。
そこに、ブリンドの命中精度が上がりきったファスト・ガンが炸裂した。
絡み合う蔦の真ん中に命中し、シャーマインの利き手が自由になる。シャーマインは自力でもう片方の腕を縛る蔦を切って脱出。
シャーマインがサテナから離れたところで、ネカットの乙女の恋心IIが完成し、巨大なエネルギーがサテナの中心を焼け焦がす。
「……ふふ、どんどん行きましょう!」
大ダメージを与えながらいい笑顔を見せるネカットだった。
「待て……こいつ……!」
そのとき、眼鏡の奥で信じがたいというように李月が目を見開いた。
「再生……し始めた……!」
果敢な攻撃を繰り返すウィンクルムの前で、メダ・サテナは妖しくざわめきながらその傷ついた姿を回復していった。
それとともにフォトンサークルにタイムリミットが訪れる。ウィンクルム達の防護が剥がれ、目の前でオーガは不気味にのたうちながら甦っていく。
●
一方、テクニカを追う面々も戦闘状態に入っていた。
ケインが連続してアプローチIIで注意を惹きつけている。
ケインの隣はシムレス。その隣がロックリーン。ロックリーンは光の輪を何重にも自身の周りに張り巡らせている。
シムレスと俊は、一斉にテクニカに向かいマグナライトをかざした。
突然明るくなった視界に、テクニカが思わず動きを止める。
「お前の急所はどこだっ」
「大人しくやられるんだね!」
その隙にハティとイチカが一斉にテクニカに斬りかかり、手数で責め立て、弱点を探し出そうとした。
ハティは妖刀の乱舞の力で一心にテクニカを斬りつける。
イチカはアナリーゼで攻撃回数を上げながら、エトワールとスタッカートを交互に繰り出す。
視力を回復したテクニカが動き出そうとした途端、タイミングを計ったようにショーンのクリアレインがきらめきながら矢を放つ。再び動きが止まるテクニカ。
目くらましを受けながらもテクニカは神人に当てずっぽうでパンチを行おうとする。
その途端に、ロックリーンの周辺の光の輪が、テクニカの攻撃を跳ね返した。
「ぐおおっ!」
叫ぶテクニカ。
(どこだ……どこが弱点だ。見たところ、白衣以外、目立った装備品はない……!)
ロックリーンは冷静にテクニカの姿を観察する。
白露は離れた位置から術式銃でテクニカの全身に弾を当て、同じく弱点を探し出そうとしている。
「ぐ……くっ……」
連続の目くらましにより、不意を突かれたところでいきなり猛攻を繰り出され、テクニカはうなり声を上げる。
しかし、攻撃はほとんど効いていないようだった。ラウナ・テクニカの身に纏う黒いオーラの力が、ウィンクルム達の攻撃をほぼかき消しているのである。
かき消され、弾かれた攻撃は、後方の牢屋の壁へ直撃し動きを止めてしまいテクニカへの大きなダメージにはなっていない。
「弱点は、どこだ……!」
秋乃は緊張に声をかすれさせながら、距離を取りつつ弓で攻撃を繰り返す。
「うるさい……地獄の蠅どもがっ!」
黒いオーラで攻撃を消していきながら、テクニカは計測器を振りかざした。
怪電波がウィンクルム達の脳を攻撃する。
「ぐうっ」
間近にいたハティが呻いて後ずさりをする。
普段は笑顔を絶やさないイチカも苦悶の表情を見せる。
他のウィンクルム達も、脳が軋むような激痛に攻撃の手を止めてしまう。
そこで、テクニカは採取器を取り上げると、ロックリーンの腕に突き刺した。
「ぐっ……あっ」
思わず悲鳴を上げるロックリーン。
みるみるうちに血を吸い上げられ、立っていられず膝から崩れる。
「ロック!」
すかさずシムレスはロックリーンの背中から抱きついてサクリファイスを行った。痛みを分かち合うウィンクルム。
ウィンクルム達の体勢が崩れる。
テクニカは大声で笑い出すと、計測器を操り、採取器をさらに振り上げた。
脳への容赦ない攻撃に耐えながら、秋乃とショーンは弓の攻撃で対抗を続ける。白露も焦りを殺しながら銃弾で全身を撫でるように攻撃し続ける。
それをモノともせずに、銃弾を弾き今度はイチカに採取器で襲いかかるテクニカ。
「……待ってたよ」
その途端に、イチカはユニゾンで攻撃を反射した。
イチカの脚を狙っていた採取器。
その攻撃をそのまま反射して、イチカはテクニカの白衣の中、太ももを抉るような攻撃を行った。
「ギャアアアア!!」
耳を覆いたくなるような苦痛の悲鳴が響き渡る。
そこが、テクニカの弱点だったのだ。
通常の何倍もの激痛がテクニカに襲いかかり、黒いオーラが消える。
テクニカはオーガの異形の力を解放しながら、その場でのたうちまわり、暴れ回り始めた。
到底我慢出来る痛みではないのだ。
テクニカは辺りにパンチを何度も繰り返し、近くの牢屋の壁をぶち破った。
テクニカの攻撃のみでは破壊出来なかったであろう牢屋の壁が壊されたのは、
ウィンクルム達が放ちテクニカに弾かれ、壁に衝突していた高威力の攻撃、そしてテクニカの怪電波によって損傷を繰り返していたからだろう。
本来であれば、そうそう破壊される壁ではないが、それだけウィンクルム達の攻撃の精度と威力が高かったということだ。
「オーガ様ァア!!」
オーガに会えた歓喜に震えるマントゥールの罪人や、狂った殺人鬼達が、中から飛び出て来る。
理性のあるまともな人間ならば、オーガとウィンクルムの戦いの場に突入しようなどと思わないだろう。
しかし、彼らはそんな人間らしい恐怖も持ち合わせてはいなかった。恍惚とした表情で、暴れ回るテクニカやサテナの前に出て行く。
「オオオオオオ……!」
そのとき、サテナは、ネカットとブリンドによる連続攻撃に、再生が追いついていなかった。
MPの足りなくなった精霊に対しては、神人達がディスペンサを行い、フォトンサークルやプロテクションは継続していた。
ゼノアスのジョブスキルも同様である。神人達の休みない攻撃、ゼノアスのタイガークローIIも確実にサテナの体力を削っており、
何度も再生を繰り返しても、全く回復出来ないでいた。
そこに、無防備な人間が自分から飛び出てきたのである。
サテナの蔦が生命力を求めて不気味にざわめく。
「やめろ、危ないっ!」
シムレスが叫んで制止する。
「何を考えているんだ……!」
ブリンドも牢屋の中に狂信者を戻そうとするが、全く聞く耳を持たず、オーガを賛美しながら彼らは縋り付いていく。
サテナは何も躊躇しなかった。
「オーガ様……オーガ様……!」
縋ってくるマントゥール教団員を、サテナは蔦で絡めて持ち上げる。そうして、一口に飲み込んでしまった。
声を立てる事も出来ないまま、マントクール教団員はオーガの腹の中に飲み込まれる。
ゴボ、ゴボ、と腹部の筒が蠢くのを呆気に取られて見つめるウィンクルム達。
それにより、生命力を吸収してメダ・サテナは甦る。
そして、メダ・サテナは人を飲んだ腹部から、消化液を一挙に放出した。
「このっ……!」
アイオライトが月光の龍写鏡を振りかざして反射しようとする。
しかし、消化液は高威力の攻撃ではあるが、状態異常を行う訳ではない。鏡は何も反射する事はなかった。
「読みが外れた!?」
アイオライトが呆然と立ち尽くす。
そこに、鴉のパペットの白猫が飛んできて、身代わりとなって消化液を受けた。たちまちボロボロになってしまうぬいぐるみ。
「後ろに下がって!」
シャーマインが叫び、プロテクションを纏った体でサテナに突っ込み斧を振るう。
李月と鳥飼もまた、必死に触手を切り分けている。
「この化け物! 命のありがたみを知らねえのか!」
ゼノアスは怒り、猛獣の爪を大きく振り上げ襲いかかった。
ブリンドはさらにラピッドファイアを行い精度を上げ、急所に弾丸を的確に撃ち込んだ。そのスナイピングはサテナの腹部に大穴を開けた。
大ダメージが繰り返された後に、ネカットの乙女の恋心IIがその穴を抉るように焼き尽くし、醜悪な植物にトドメを刺した。
●
サテナが自分を崇拝する教団員を食べ尽くした――。
その光景は、ケイン達も呆然とさせていた。
しかも、ラウナ・テクニカは痛みが引かないためかまだ床や壁を殴って転げ回って暴れているのである。
「パパ!」
そのとき、アイオライトが白露の側に駆け寄って、マグナライトを振りかざし彼の手元を明るくした。
アイオライトの行動に父親としての理性が戻る。白露は、イチカが探り当てた弱点に向かいスナイピングを行った。
「……逃がしません!」
さらなる激痛、激痛に重なる激痛に、テクニカは口を金魚のように開閉しつつ、よろよろと立ち上がった。
「おのれっ……憎い……憎いぞ、ウィンクルム……!」
憎悪の瞳でウィンクルム達を睨み付け、計測器を使おうとする。
「そうはいきませんよっ」
そこに鴉が駆けつけて、ミラーデーモンで攻撃を反射。
またしても苦痛の声を上げて後退するテクニカ。
「大人しく滅びろ!」
ハティは弱点を狙って妖刀恋慕で攻撃しようとする。
しかし、テクニカは計測器を振りかざしてそれを防御。
ハティは計測器を破壊する勢いで連続攻撃。
「ハティ、そのまま……」
そのハティの攻撃を囮として、ブリンドがダブルシューターIIでテクニカの太ももを狙う。
「援護します!」
ほぼ同時に白露が走りながら狙撃を行う。パルパティアンII。
痛みに今度はうずくまってしまうテクニカ。
「今だ!」
それを見て、俊が駆け寄ると電波を放ち続ける計測器を、妖刀紅月で真っ二つに叩き斬った。破壊される計測器。
その頃、ダメージから立ち直ったロックリーンは、シムレスを背に呪文を詠唱していた。
シャインスパークがテクニカの弱点をつく。
テクニカの持つ心の器が、破壊された。
「やった!」
テクニカの白衣のポケットから何かが落ちてくる。それは、ひび割れて壊れた小さな皿だった。ショーンがそれを拾い上げると、
それは……醤油皿程度の大きさだったが、血のような鮮やかな赤色をしていた。テクニカの心を表しているようにも思える。
「奴はオーガだ。仕方ないな」
ショーンの手元を見つめて、ハティはあっさりとそう言った。
黒いオーラを失い、暴れる事も出来なくなっているラウナ・テクニカ。
その彼に、ハティは妖刀を振り上げる。
刀は乱れ舞いながらラウナ・テクニカに襲いかかる。
トドメを刺す神人の攻撃は、任務だからか、正義だから、それとも女神の説く慈愛なのか――
ラウナ・テクニカはウィンクルム達の攻撃により、確実に動きを止めた。沈黙の中、浄化していくラウナ・テクニカ。
監獄『大灼熱』を覆い尽くしていた罪人の絶叫が止まる。
殺せ、と言う叫び。
オーガを狂信する歓呼。
それらは全てが止まり、辺りは息が詰まるような静寂に包まれた。
ラウナ・テクニカは魂まで滅ぼされ、瘴気を吐きながら消えて行った。だが、その顔は不思議に安らかだった。
まるで、恋慕という名の刀を振るう神人に討伐された事が満足であるかのように。
瘴気と化したラウナ・テクニカはオベリスク・ギルティに吸収されていく。
オーガを滅ぼされた監獄の囚人達は、牢屋の奥の壁際に寄っていって、何も言わない。
ウィンクルム達はマントゥール教団達のやり方に疑問が尽きないが、その答えは、これからの戦いで見いだしていくのだと決意した。
(執筆GM:森静流 GM)
戦闘判定:成功