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フェスティバルイベント

『『狂信者の『愛』とウィンクルムの『愛』(女性側)』』

リザルトページ


リザルトノベル【女性側】ユウキ×リーガルト交戦部隊

チーム一覧

神人:ふぅ
精霊:定治
神人:八神 伊万里
精霊:蒼龍・シンフェーア
神人:シエル・アンジェローラン
精霊:ヴァン・アーカム
神人:シャルル・アンデルセン
精霊:ツェラツェル・リヒト
神人:ファルファッラ
精霊:レオナルド・グリム
神人:リデル
精霊:エイル
神人:吉坂心優音
精霊:五十嵐晃太
神人:采女 澪
精霊:ヴァーリ=ウルズ
神人:真衣
精霊:ベルンハルト
神人:井垣 スミ
精霊:雨池颯太
神人:アラノア
精霊:ガルヴァン・ヴァールンガルド
神人:アデリア・ルーツ
精霊:シギ
神人:一色 真黒
精霊:華彩 輝
神人:エセル・クレッセン
精霊:ラウル・ユーイスト
神人:シャルロット
精霊:リカルド
神人:鬼灯・千翡露
精霊:スマラグド
神人:零鈴
精霊:ゼロイム
神人:瀬谷 瑞希
精霊:フェルン・ミュラー
神人:水田 茉莉花
精霊:八月一日 智
神人:葵 竜胆
精霊:ステファノ・アバーテ
神人:ミヤ・カルディナ
精霊:ユウキ・アヤト
神人:紫月 彩夢
精霊:紫月 咲姫
神人:アンジェリカ・リリーホワイト
精霊:真神

リザルトノベル

 白い雪が視界を覆いつくしている。
 『オベリスク・ギルティ』の下部層階。通常は雪が届かない筈のそこには、塔の外壁部にある無数の穴のせいで、風雪に晒されていた。
 雪は深く床を白く染め、その中に『ミニメリーツリー』が海のように生い茂っている。
 『ミニメリーツリー』の樹海、そして吹雪のせいで、まるでそこは迷路のようだった。

「さあ、おいで。ウィンクルム」

 ユウキ・ミツルギは、『ミニメリーツリー』の枝の上に立ち、白い髪を靡かせる。
「愛の力を見せてみてよ」
 ユウキの手の中で、両手鎌『エンド・オブ・ソウル・R』が不気味に光った。
 背中に装着された氷の結晶の翼『クロニクル・コキュートス』が、まるで生き物のように羽を広げる。
 そんなユウキの姿を遠目に、リーガルト・ベルドレットは両手銃『龍之爪』を構え、樹海の雪に溶け込んで攻撃の機会を窺っていた。


 配られた白い外套を羽織って、アンジェリカ・リリーホワイトは不安げに『ミニメリーツリー』の樹海を見上げる。
 この何処かに、マントゥール教団員であるウィンクルムが居るのだ。
「あんじぇ」
 アンジェリカが顔を上げると、パートナーの真神がこちらを見ている。
「足元に気を付けるのだぞ」
「はい、雪さま」
 二人は手を取り合い、ゆっくりと歩き出した。

 八神 伊万里は、鉱弓『クリアレイン』を強く握り締めた。
 ユウキ達の言う事は、全く理解出来ないししたいとも思わない。
 必ず、彼女達を捕獲する──碧眼に強い意志の力を読み取り、蒼龍・シンフェーアは微かに口の端を上げた。
「イマちゃん、どうする?」
「ユウキさんを探しましょう」
 伊万里は蒼龍の頬に唇を寄せた。
『汝、罪無し』
 逆流する青黒い滝を思わせるオーラが二人を包み込んだ。
 二人は周囲を警戒しながら、雪と木の樹海へと踏み入る。

「これじゃあ、どうぞ狙撃して下さいって言ってるようなものだよね」
 ふぅは辺りを見渡して眉を寄せた。
 視界の悪さも、迷路のような樹海も──地の利は相手にあるようだ。
「早めにトランス化した方が良さそうだな」
「そうだね」
 定治の言葉にふぅは頷くと、身を屈めた彼の肩に手を掛け、触神の言霊を紡ぐ。
『れっつごー』
 頬に口付ければ、二人を温かな力が包んだ。
「ふぅ、離れるなよ」
 『魔守のオーブ』で魔法力場を展開する定治に、ふぅは力強く頷く。
 そこへ、不意にウサギのようなネイチャー達が現れた。
「さだはる!」
「ああ」
「贄は増やさせないよ!」
 ふぅは精一杯怖い顔をしてセイクリッドワンド『アルフェラッツ』を構え、定治は片手剣『カットラス』で威嚇し、ネイチャー達を追い払いに掛かる。

(シエルとトランスね……)
 緊張した面持ちでこちらを見上げるシエル・アンジェローランを見下ろし、ヴァン・アーカムは心の中で頬を掻いた。
(……こんなときじゃなきゃ嬉しくもあるが)
 シエルはよしと両の拳を握って、一つ深呼吸する。
「い、いきますね」
「……ああ」
 腰を落としたヴァンにシエルが背伸びして、そっとその頬に唇を触れさせた。
『パーティーの始まりだ!』
 途端に、不思議なオーラが身体を包んでヴァンは己の手を見下ろし、ぐっと拳を握り締める。
「悪くねぇ」

「あの二人は、できるだけ近づけさせないようにしたいですね」
 シャルル・アンデルセンの言葉に、ツェラツェル・リヒトは静かにその目を見た。
「ウィンクルムというのは二人でいる、それだけで強くなるものですから……」
 蜂蜜のような金色の瞳が遠慮がちに伏せられるのに、ツェラツェルは視線を逸らす。
「では、敵精霊に狙いを定め、神人と接触させないようにしよう」
 そう言い歩き出すツェラツェルの後を、シャルルは歩き出した。

「ウィンクルムの癖に教団員ってなんなのよ」
 ファルファッラは、むぅと眉を寄せて荒れ狂う吹雪に黒髪を揺らした。
「面倒くさい、とっても面倒だわ!」
 肩を怒らせるファルファッラに、レオナルド・グリムはやれやれと眉を下げ、樹海に目を凝らす。
「で、どうする?」
「持久戦、にはさせたくないけど……なったらまた面倒だわ」
「わかった。『待て』だな」
 レオナルドは喉を鳴らして頷く。
 もしもの時の為に力を温存する──それが二人の作戦だ。

「狙撃する気なら高所に居るかな?」
 リデルは、わざと見通しの良い所を歩くエイルを、少し離れた位置の木の影から見守っていた。
 エイルとはすでにトランス化を済ませている。
 白い外套はわざと着ずに、堂々と歩くエイルを相手が狙ってくれたら……そこから二人の反撃が始まるのだ。
 緊張に汗ばむ手で、リデルは持参した望遠鏡で木の上を注意深く観察する。
 不意にエイルが足を止め、リデルに緊張が走った。
 彼の周囲に、キタキツネのようなネイチャー達が現れる。黒い瘴気に包まれているのが、リデルの位置からも分かった。
 思わず飛び出そうとするリデルへ、エイルは手を突き出した──来るな、という意味だ。
 両手剣『ゼノクロス』を構え、エイルはネイチャーを引き付ける。そして、全身をコマのように回転させた。
 『トルネードクラッシュ』──竜巻のような技に、ネイチャー達はすべて吹き飛ばされる。

「晃ちゃん、そっちはどう?」
 吉坂心優音は、インカムで木の上を移動するパートナーに話し掛けた。
「んー……今のとこ、何の影も見えへんな」
 ミニメリーツリーの枝と枝とを身軽に乗り移りながら、五十嵐晃太は注意深く辺りを警戒し答える。
「みゆ、何かあったらすぐに俺を呼ぶんやで」
「うん。晃ちゃんも気を付けてね」
 上と下で索敵しながら、二人は進んで行く。

 降り注ぐ雪と同じ色の外套にすっぽり身を包んで、采女 澪は慎重に地面を踏み締めた。
 雪に同化したような静かな佇まいは、遠目から発見は難しい。
 この白い外套を、澪はこの戦闘に参加している全てのウィンクルムに配っていた。これを身に付けていれば、遠くからの狙撃に晒されるリスクはかなり避けられるだろう。
「こちら今のところ、異常なし」
 通信機で仲間に呼び掛け、澪は足元を確認した。ユウキ達が通った跡がないか、少しの変化も見逃さないよう注意する。
「お嬢」
 隣で同じく警戒していたヴァーリ=ウルズが、潜めた声を上げた。
 木々を揺らす音に二人は息を止めて警戒する。
 ガサッ……。
 やがて現れたのは、真っ白なウサギのようなネイチャーだった。二人はそのまま息を殺してネイチャーをやり過ごす。

「あ……キツネさん?」
 真衣は、突然飛び出してきたキタキツネのようなネイチャー達に目を丸くした。
「おねがい、ここはキケンだから……向こうに行っていてほしいの」
 真剣に真衣はネイチャー達を見つめて語り掛ける。
 しかし、ネイチャー達はフーッと毛を逆立てた。仄かに黒い瘴気が立ち昇る。
「真衣、どうやら瘴気の影響を受けているみたいだ」
 ベルンハルトが真衣を守るように、ナブサ・M206ジャイロライフル『マリーナ』を手に前へ出た。
「まって、ハルト」
 真衣は、バトルフライパン『新婚さん』をえいっと振り回した。
「あっちへ行ってて!」
 ゴーン!
 見事一匹の頭にヒット。ネイチャーは目を回し、その様子を見た他のネイチャー達は逃げ出して行った。

 この視界の悪さならば、相手を補足することは難しい。
 敵から狙い撃ちされる可能性もある──。
 井垣 スミは、迷わず直ぐに『魔守のオーブ』で魔法力場を展開した。これで防げる攻撃もある筈だ。
「そうちゃん、離れないようにね」
「わかった!」
 雨池颯太は元気に大きく頷く。
「ひーばあちゃん、前がまっしろだよ」
「吹き溜まり近くは気をつけてね」
「うん!」
 二人は寄り添うようにして、雪の中を歩いていく。

 白くなる息を吐き出し、アラノアはしっかりと『閃光ノ白外套』を羽織り直した。
 その白い輝きは、現在視界を覆いつくす白い雪と混じり合い、敵から身を隠す機能を果たしている。
 深呼吸し、脳内でスイッチを切り替えるイメージを浮かべて、手の中のカラーボールを握り締めた。
 こうする事で、冷静になりきる事が出来る──アラノアの癖だ。
 ガルヴァン・ヴァールンガルドは、そんなアラノアを横目に見て、ポンとその肩を優しく叩いた。
「張り詰め過ぎるな」
 斥候役が敵を見つけ次第、二人は行動を開始するのだ。
「……はい」
 アラノアは頷いて、ガルヴァンの手の温もりに僅かほぅと息を吐き出すのだった。

 白い外套が吹雪にふわりと舞い上がる。
 アデリア・ルーツは、油断すると吹き上げられそうなフードを押さえ、上を見上げた。
 木の上には、パートナーのシギが居る。
 彼も同じ白い外套を身に纏い、景色に同化するようにフードを深く被っていた。
『だいじょうぶ?』
 口パクで尋ねれば、シギは手を振って応えた。
 枝の雪が落ちるのに合わせ慎重に移動するシギを見て、アデリアは自身も表情を引き締める。
 二人は斥候役。敵を見つけたら、直ぐに皆に知らせないといけない──。
 辺りを警戒しながら、二人は進む。

 一色 真黒は、突如木々の間から飛び出してきたウサギのようなネイチャーに、目を丸くした。
 白い毛並みに黒いオーラが見える。瘴気に当てられているとみて間違いない。
「ここは危ないです。離れて下さい」
 無駄かもしれないと感じながらも、真黒は会話を試みる。出来れば、戦いたくはない。
 赤い目が真黒を見て、牙を剥いた。みるみる瘴気が濃くなる。
「──仕方ない。追い払うから下がって居ろ」
 真黒を庇うように華彩 輝がその前に出た。
「私は大丈夫です」
「いいから、任せておけ」
 飛び掛かってくるネイチャーに『ハートフル・ウォール』を突き出し威嚇すれば、ネイチャーは逃げていく。
 逃げていく小さな背中に、真黒はほっと息を吐き出した。

(マントゥール教団に入信するような、何があったんだろう?)
 そう考えながら、エセル・クレッセンは、ゴーグル越しに携帯電話の画面を眺める。
 連絡先を交換したウィンクルム達から、随時メールで連絡が入ってくる。エセルはそれを取り纏めているのだ。
「……大分、情報が集まって来たな」
 ラウル・ユーイストは、エセルの携帯電話を横から見ながら、この『オベリスク・ギルティ』の下部層階の構造を把握すべく情報を整理する。
(二人が何故マントゥール教団に入信したのか、気になるな……)
 エセルは同じ空間に居る筈の、ユウキとリーガルトに思いを馳せた。

 もう一組、『オベリスク・ギルティ』の下部層階の地図を作成しているウィンクルムが居る。
「……出来ました」
 シャルロットは、『ミニメリーツリー』の幹に目立たない程度に小さく傷を入れて印を付けた。
 手作りの地図に印を入れた地点を書き入れれば、一つ頷く。
「シャルロットさん」
 僅か緊迫したリカルドの声に、シャルロットは驚いて顔を上げた。
「ネイチャーです」
 ザザッと木々を揺らしてキタキツネのようなネイチャー達が現れる。彼らの毛は逆立ち、瘴気の影響を受けているのは明らかだった。
「立ち去っては……頂けないようですね」
「リカルドさん!」
「シャルロットさんは、下がっていて下さい」
 リカルドは、ダブルダガー『ハイ&ロー』を構えた。
 ギーッ!
 一斉に飛び掛かってくるネイチャー達を、加速する剣技で峰打ちする。
 更にシャルロットが短剣『クリアライト』の眩い輝きで目くらましをすれば、ネイチャー達は一目散に逃げて行った。

 鬼灯・千翡露は、周囲の様子を注意深く眺めた。
 保護色のコートとマントに身を包んだ彼女は、『ミニメリーツリー』の影に隠れれば、完全に景色の中の一部となる。
 同じ色のコートとマントで、スマラグドは千翡露と反対方向を観察する。
 二人が探すのは、リーガルト。
 出来れば、ユウキと離れた所で拘束を狙いたい。
「ラグ君、ここには居ないみたい」
「先へ進もう、ちひろ」
 二人は死角を補いながら、ツリーの間を歩いていく。

 ツリーの影で、零鈴はA.R.O.A.から借り受けた救急箱を強く抱き締めた。
「零鈴さん、ここには居ないようなのだよ」
 周囲を警戒していたゼロイムが声を掛けると、零鈴は白い息を吐く。
「じゃあ、先へ進みましょう」
 表情を引き締める零鈴と、その手の救急箱を交互に見て、ゼロイムは丸眼鏡をくいと押し上げ、小さく頷いた。

「雪の効果もあって、空間認識能力が狂わされてるみたいです」
 瀬谷 瑞希は、『ミニメリーツリー』を睨むように見上げた。
 同じ場所を回っているような錯覚さえ起こす──厄介だと思う。
「ミズキ、逸れないように気を付けよう」
 フェルン・ミュラーが言えば、瑞希はええと頷いた。
「何処から狙撃されてもおかしくありません」
 視界を奪う雪に、ミズキはより警戒しながら、フェルンと共に歩いていく。

 ──孤立したら奇襲を受けかねない。
 葵 竜胆は、迷路のような空間に危機感を覚えていた。
 敵が身を隠しているのは、各個撃破を狙っているのかもしれない。
「早急に敵を見つけないと」
「で、索敵に徹すると?」
 ステファノ・アバーテの問いに、竜胆は小さく頷いた。
(遠距離射撃が得意となると、上からかな)
 『ミニメリーツリー』を見上げる。
 頭上を警戒する竜胆の代わりに、ステファノは周囲に視線を巡らせた。
「リン」
 鋭い響きのステファノの声に、竜胆は瞬きした。
「来るぞ、ネイチャーだ」
 ウサギのようなネイチャー達が木々の間から飛び出してくる。
「露払いも大事ってか」
(教団かぶれの馬鹿と戦闘する連中の体力を温存させないとな)
 ステファノの持つマジックブック『目眩』から、ぬいぐるみが出現した。
「離れるなよ」
 竜胆に一言告げると、ぬいぐるみをネイチャーの群れへ突進させる。
 ネイチャー達がぬいぐるみへ飛びつくと同時、ぬいぐるみは爆発してネイチャー達を吹き飛ばした。
「──さあ、どんどん来いよ」
 ステファノはマジックブックを構え、ネイチャー達と対峙する。

 ミヤ・カルディナは、雪に紛れる白いフードを羽織って、慎重に木々の間を歩いていた。
 インカムから仲間達の状況が定期的に伝わってくるが、まだユウキ達に接触したウィンクルムは居ない。
(何処に隠れているの?)
 敵精霊はプレストガンナー。遠距離狙撃で狙い撃ちも有り得る。
「状況は敵有利。今は逆転のチャンスを窺おうぜ」
 ユウキ・アヤトの声に、ミヤはそちらを見た。
「行こう」
「ええ」
 白く染まる木々と吹雪を隠れ蓑に、ミヤとアヤトは突き進む。

 ガァ!
 特徴的な鳴き声を上げて、紫月 彩夢の手からアヒル特務隊『オ・トーリ・デコイ』が放たれた。
 ぜんまい仕掛けのアヒルは、囮となるべく鳴きながら雪の上を滑っていく。
(これで不意打ちは避けられるかな?)
 彩夢は雪が舞い散る『ミニメリーツリー』達を見上げた。
 そこへ、鳥がふわりと飛んでいく──紫月 咲姫の片手本『ポイズンクッキング』から現れた『パペットマペットII』のぬいぐるみだ。
「反応してくれたらいいんだけど……」
 咲姫はゆっくりと鳥を旋回させる。木々の間を縫って、見せつける様に──。
 パァン!
 突如、鳥のぬいぐるみが爆発した。
「「見つけた……!」」
 彩夢と咲姫は走り出す。

 水田 茉莉花は、『封樹の杖』を手に『ミニメリーツリー』と向き合っていた。
「ツリーに干渉できると良いんだけど……」
(ムリでも、彼らの居場所ぐらいは教えてもらいたいわ)
 瞳を閉じて、ゆっくりと杖に意識を力を集中していく。
「がんばれ、みずたまり」
 周囲を警戒しながら、八月一日 智がその姿を見守る。
 ──応えて。そして、教えて──
 茉莉花の長い髪が舞い上がり、杖が輝きを増した。
 そして、茉莉花の中にビジョンが浮かんできた。
 『ミニメリーツリー』が伝えて来る、ユウキとリーガルトの居場所──。
「見えた!」
 カッと瞳を開いて、茉莉花は叫んだ。


「思ったより早く見つかっちゃったね」
 集まってきたウィンクルム達を見下ろして、ユウキは嬉しそうに笑った。
「うんうん、愛の力、感じさせてくれるよね」
 アデリアは、ユウキの傍にリーガルトの姿が見えないか警戒する。茉莉花からの情報によると、彼は少し離れた位置に身を潜めているというが──。
 シギは合図の笛を鳴らし、更に皆へユウキの場所を教える。
 その様子にユウキは笑みを深め、軽い足取りで地面へ降り立った。
「これは、ほんのご褒美──受け取って」
 背中までの長い白髪を揺らして、ユウキは両手鎌をゆっくり振り上げる。
 真黒がハートフル・ウォールを構え、輝は攻撃を反射する光の輪を出現させた。
「させない!」
 駆け付けた零鈴が、ユウキの顔へ『マグナライト』を当てる。強烈な光にユウキは顔を顰めた。
 そこへゼロイムが駆け込み、両手鎌へと鈍器『ヘッジホック』を思い切り叩き込む。
「あは、今のはちょっと手が痺れちゃったな」
 ユウキはにっこり笑うと、ゼロイムへ強烈な蹴りを放った。ゼロイムはそれを両腕でガードしながら雪の中を転がる。
「流石、ウィンクルム……愛の力、もっと見たいな」
 クスクスと笑いながらユウキが鎌を持ち直し振り上げた。そこへ、黒猫のぬいぐるみが飛来し体当たりする。
 ボンッ!
 爆発と同時、鋭く光る弓矢がユウキの腕に突き刺さった。
「勝った方が真実の愛ということで」
 片手本『ポイズンクッキング』を開いた蒼龍、そして『クリアレイン』を構えた伊万里と、ユウキの視線が絡み合う。
「面白いね」
 ユウキは腕に刺さった矢を引き抜いた。
「行くよ」
 両手鎌を振り下ろすユウキの前に、青白く発光している盾『輝く昼下がり』を持ったフェルンが滑り込む。
 ガッ!
 鎌は盾に弾かれ、ユウキは小さく舌打ちした。
「──守ってみせる」
 フェルンの周囲に闇と風が入り混じった輝く盾が現れる。紫槌『リ・ヴィスタ』を手に、フェルンは油断なくユウキの動きを見つめた。


 彩夢と咲姫が辿り着いた先に、その精霊は身を潜めていた。
『運命を、嗤おう』
 彩夢が咲姫の手の甲に口づけて、二人は力を分かち合い、高め合う。
(射線の方向から、位置は分かった……後は引きずり出すだけ……!)
 咲姫の『ポイズンクッキング』から、再び鳥のぬいぐるみが浮かび出て、猛スピードで飛翔した。
 パン!
 射撃音と共に爆発するぬいぐるみの爆風を避けて、彩夢は『コネクトハーツ』を抜いて斬り掛かる。
「ふっ……!」
 交差する視線。
 『コネクトハーツ』を手甲で受け流し、雪の中からリーガルトが姿を現した。
「──愛も歪むと醜いものよ。まるで鏡を見てるようで……吐気がするね」
 咲姫は無表情のリーガルトを見据え語り掛けた。彼は無言のまま引き金を引く。彩夢は『魔守のオーブ』で魔法力場を展開した。
「来るぞ!」
 澪の声に、ヴァーリは自身の周囲に光輪を展開して前に出る。
 リーガルトの弾を光輪が反射した。
「……」
 反射された弾が頬を掠り、リーガルトが微かに顔を顰めた。
 澪は油断なく周囲の様子を確認しながら、インカムで状況を仲間達へ伝える。
 リーガルトがちらりと左方向を見た──ユウキの居る方向だ。
「合流はさせないよ……!」
 スマラグドのマジックスタッフ『クリスタルロッド』が光り、霧が発生した。霧はリーガルトの自由を奪うべく絡み付く。
 そこへ、ベルンハルトがフェイクを交えながらの弾丸の雨を降らせた。
 弾丸は鎧で弾かれるも、リーガルトは衝撃に更に顔を顰める。
 勝機を感じたヴァンは、バスターソード『バーバリアン』を手にリーガルドに突進した。
(俺の場合は考えるよりもまず行動だ。悩んでたってしかたねぇ)
『ヴァンさんは思いっきりやっちゃってください』
 脳裏にシエルの言葉が蘇る。
(お前は俺の敵、な)
「オラァ!」
 正面から一直線に力を叩き込む。リーガルトは力づくで霧を振り払い、銃身でヴァンの剣を防いだ。
 刹那、両脇から迫る殺気に、リーガルトは身を屈めてそれを避ける。
「……外したか」
 ツェラツェルは忌々しげに銃弾を補充して、リーガルトを睨んだ。
「ウィンクルムの癖に教団の人間だと……?冗談じゃない。お前らに復讐するために私は……俺はシャルルと契約をしたのだぞ!」
 限界など気にしていられない。ツェラツェルはHS・32口径リボルバー『ビリースペシャル』を構え、ひたすらにリーガルトへ向け銃弾を放つ。
 それを後退しながら避け、リーガルトは銃を構えた。
 シュッ!
 リーガルトの足元に手裏剣『桜襲』が突き刺さる。紙一重避けたものの、斬られたリーガルトの髪がぱらぱらと宙を舞った。
「そう簡単にヤれると思ったら、大間違いや!」
 反撃の銃弾を、『ミニメリーツリー』の上に居た晃太は身軽に躱した。
『盲亀の浮木、優曇華の花』
 アラノアが力ある言葉と共に、ガルヴァンの頬に口付けを送れば、二人を温かく強い力が包む。
「えい……!」
 アラノアはカラーボールをリーガルトに投げ付けた。彼の鎧が服が、鮮やかな色に染まる──これで、もう雪に隠れる事はできない筈だ。
「こっちも当たれ……!」
 スマラグドは、リーガルトの顔目掛けてカラーボールを投げる。リーガルトは銃でこれを撃ち抜くが、顔にも鮮やかな色が付き、視界を悪くする事に成功した。

 ユウキはちらりと右方向を見た。そして口の端を上げる。
「ちょっとホンキを出しちゃおうかな──」
 ユウキの手がその茶色のプリーツパンツへ伸びるのを見て、伊万里は叫んだ。
「シードを使う気です……!」
「ウィンクルムやめちゃうの? キミ達の愛ってその程度?」
 挑発しながら蒼龍がマジックブックを飛ばす。
「させないッ!」
 それと同時に、朱金に輝く四葉のクローバーが舞う翡翠のオーラを身に纏った心優音が、ユウキの懐へ飛び込む。
 『トランスソード』がユウキの手を狙い鋭く突き出され、ユウキは鎌でそれを往なした。
「まだまだ!」
 心優音の回し蹴りを腕で受け止めて、ユウキは微笑んだ。
 心優音がそれを睨み返す──その時、ユウキの背後に小さな影が跳んだのを、彼女は見た。
「いっしょにいたいからって、悪いことしちゃダメなんだよ!」
 叫びと共に、颯太の小さな体がコマのように回転する。心優音は後ろに跳んだ。
「ッ!?」
 背後からの奇襲は、ユウキが纏う『クロニクル・コキュートス』を狙った一撃。
 ビシッ。
 小さく音を立てて、翼にヒビが入った。
「もういっちょ!」
 ──鼻っ柱へし折ってやる!
 颯太に続いて跳んだ智は、双剣『オシリス・スパーダ』で目にも止まらぬ速さの連続突きを放った。
 『コンフェイト・ドライブ』で力を得ていた智の連撃は、そのヒビを抉り、翼はピシピシと音を立てて崩れていく。
「逆転のチャンスは、ここだろ!」
「ええ、逃がしません!」
 アヤトの言葉に頷いてミヤが手製パチンコでインク玉をユウキに打ち込んだ。鮮やかな色に染まるユウキは、雪に紛れて逃げる事もできない筈だ。
 続いて、大剣『テーナー』を手に突進したアヤトが、全身を回転させた重い一撃をユウキの両手鎌へ叩き込む。
 ──今が、拘束の好機。
 瑞希は神符『詠鬼零称』に力を込める。ほのかに淡い光を放っていた符は、瑞希の力で眩く光り、敵を拘束する光となりユウキに絡み付いた。
「グッ……!?」
 ユウキがもがくのに、瑞希は渾身の力で耐える。
「一人じゃないよ!」
 千翡露もまた、神符『詠鬼零称』の力を解放した。二本目の拘束する光が、更にユウキの自由を奪う。
「そして、まだまだぁ……!」
 茉莉花が時の砂『輝白砂』を使う事で、ユウキの身体は縫い止められたように停止した。
 伊万里は、シードを隠していると目星を着けたプリーツパンツのポケットを矢で射る。
 シードがパンッと砕け散る音がした。
「バカな……」
 目を見開くユウキの腕を、フェルンの紫槌が打った。
「ッ……!」
 アヤトの一撃でダメージを負っていたユウキの手から、両手鎌が地面へと落ちる。
 ゼロイムが素早く両手鎌を拾い後退すれば、神符の効果が切れてユウキは地面へ崩れ落ちた。
 ウィンクルム達は、縄と捕縛用ガムテープを使い、ユウキを拘束する。

「ユウキ……?」
 異変を感じたのか、リーガルトの顔が僅かに強張ったように見えた。
「お前達に構っている暇は無くなった」
 銃を構え、その視線が鋭さを増す。
 しかし、余裕を無くした彼は伏兵に気付いていなかった。
 後ろから弾丸がリーガルトの両脇に跳んでくる。
 躱そうと横に動いた所で、リーガルトはぬいぐるみの円らな瞳と目が合った。ぬいぐるみが爆発する──。
「当たった……のか?」
「うまいこと爆発したな」
 ラウルが両手銃『ガンスリンガー』を手に瞬きすると、マジックブック『皆既日食』でぬいぐるみを操ったレオナルドが安堵の笑みを見せた。
「くっ……」
 爆発の威力はそこまでのものではない。ただし、視界を奪われた。
 焦るリーガルドの腹に、鎧の隙間を縫った拳が入る。
「もろた……!」
 晃太の渾身の一撃に、リーガルトは一瞬目の前が暗くなり掛けて、がむしゃらに銃を振り回した。
「おっと」
 ひらりとそれを避けて、晃太は指を二本顔の前に立て、短い呪文を唱えて防御を固める。
 リデルの投げた雪玉がリーガルトの視界を更に狭め、エイルは晃太に続いて脇差『骨削』でその腕を凪いだ。
「その銃、封じさせて貰うぞ」
 密かに背後に回っていたガルヴァンの両手斧『ルールブレイカー』が、リーガルトの銃に絡む。
 不思議な突起物──標識と補助標識の間に、銃身を挟むように引っ掛け身動きを封じた。
 ──これでリーガルトは引き金を引けない。
 ベルンハルトにひと撫で頭を撫でて貰い、その狙撃に援護されながら、真衣はリーガルトへ駆け寄る。その手にフライパンを構えて。
「えいっ!」
 ゴーン!
 大きな特徴的な音が響き、フライパンがリーガルトの頭にクリーンヒットする。
 リーガルトはそのまま意識を失った。
 その崩れ落ちる身体を支え、ガルヴァンが叫んだ。
「拘束だ!」

 ※

 リーガルト・ベルドレットは、様々な国を渡り歩いていた元傭兵だ。
 傭兵としての仕事ならば、何でもした。それが彼の日常だった。
 そんな彼の世界を、明るく染める女性が現れ──リーガルトは彼女を愛した。
 彼女もリーガルトを愛してくれた。
 彼女と結ばれたいとリーガルトは願ったが、そこに障害が現れた──A.R.O.A.だ。
 精霊であるリーガルドが、神人でない女性と結ばれる事を、A.R.O.A.は良しとしなかった。
 二人の仲を裂こうとしてくるA.R.O.A.から、リーガルトと女性は手を取り合って逃げる。
 身を隠し、二人だけの生活が始まった。
 A.R.O.A.の手が何時伸びて来るか──不安を抱えながらも、ささやかな幸せを手に入れた。ずっとそれが続くのだと信じていた。
 あの時までは──。

『これは復讐よ……!』

 狂ったように笑う女。
 その手に握られた凶刃は、愛した女性の胸を突き、彼女の命を散らした。
 女は、かつてリーガルドが傭兵の仕事で殺した男の家族だった。

 はじめて、リーガルトは自分のしてきた事に、気付いた。

 気付くのが、遅過ぎた。
 彼は深く後悔する。
 己の生きた道を、ウィンクルムになっていなかった自分を。

 自分を責めた。
 何故、あの時──何故、何故、何故……。

 答えのない自問を続ける中で、ふとリーガルトは思った。
 オーガ達と戦い続けるウィンクルムの姿は、何と尊く美しいのかと。

 そう──彼らこそ、愛の象徴。彼らこそ、愛。求めていた愛は、そこにある。
 ──ああ、分かった。
 俺はきっと、ウィンクルムの愛を強くする為に、愛を知り、愛を失ったのだ。

 では、A.R.O.A.は何だ?
 A.R.O.A.は──邪魔だ。
 排除せねば……そして、ウィンクルム達には、その力を愛を高める為に、障害が必要だ。

『愛は、尊いよね』

 やがてリーガルトの前に現れた適合する神人は、彼と同じ考えを持っていた。

『尊い愛は、ウィンクルムと共にある。ウィンクルム達の愛を深めるために、オーガの力が必要なんだ』

 うっとりと瞳を細めるユウキ・ミツルギの手を、リーガルトは取った。

 ※

 リーガルトが目覚めた時、隣にユウキが居た。
 縄とガムテープで拘束された彼女を見て、同様に動かない己の身体に、リーガルトは敗北を理解する。
「──殺さないの?」
 歌を歌うように楽しげに問い掛けたユウキの前に、零鈴が膝を付いた。
 彼女の手には救急箱。
「少し染みるかもしれませんけど──」
 消毒液を手にする零鈴に、ユウキは大きく瞬きする。
 頬の傷に、そっと触れる消毒液を含ませたガーゼ。ユウキの肩が震えた。
「……あ、やっぱり染みましたか?」
「──そうだね。染みる……かな」
 ユウキはそっと瞳を閉じる。
 何時しか、吹雪は止んでいた。

(執筆GM:雪花菜 凛 GM)

戦闘判定:大成功

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