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フェスティバルイベント

『狂信者の狂信者による狂信者のための狂奏曲』

リザルトページ


リザルトノベル【女性側】第四監獄『大灼熱』オーガ討伐部隊

チーム一覧

神人:Elly Schwarz
精霊:Hein
神人:マーベリィ・ハートベル
精霊:ユリシアン・クロスタッド
神人:上巳 桃
精霊:斑雪
神人:篠宮潤
精霊:ヒュリアス
神人:日向 悠夜
精霊:降矢 弓弦
神人:アリシエンテ
精霊:エスト
神人:スティレッタ・オンブラ
精霊:バルダー・アーテル
神人:夢路 希望
精霊:スノー・ラビット
神人:吉坂心優音
精霊:五十嵐晃太
神人:シルキア・スー
精霊:クラウス
神人:ニーナ・ルアルディ
精霊:グレン・カーヴェル
神人:豊村 刹那
精霊:逆月
神人:出石 香奈
精霊:レムレース・エーヴィヒカイト
神人:瀬谷 瑞希
精霊:フェルン・ミュラー

リザルトノベル


「殺せ!」
「殺せ!」
「ウィンクルムを殺せ!」
 200メートル四方の第四監獄『大灼熱』。
 トランス、そしてコンフィト・ドライブやハイトランス・ジェミニを終えて駆けつけたウィンクルム達を出迎えたのは、狂った囚人達の罵声だった。
 その圧倒的な悪意の前に、マーベリィ・ハートベルは息を飲む。その精霊のユリシアン・クロスタッドも緊張の面持ちである。
「ウィンクルムを殺せ!!」
 収監されていたマントゥール教団員達を中心に、囚人達は現れたオーガへと歓呼の声を上げ、神人と精霊に向かい悪意を吐き散らしていたのだった。
 囚人の中には狂った殺人鬼もいる。正気とも思えない笑い声が響き渡り、篠宮潤が僅かに身じろぎし、彼女の精霊のヒュリアスが庇うように一歩前に出た。

 ゆら……ゆら……

 ウィンクルム達は囚人達の罵声に耳を貸している暇はなかった。
 彼らの行く手には、2体のオーガが瘴気を撒きながら立ちふさがっているのである。
 珍しい植物型オーガ メダ・サテナは、触手のような蔦を収縮させながら根をざわめかせ接近してくる。
 3メートルはあると思われる花は醜悪な赤紫で、どこか異形の怪物を思わせた。筒状の胴体は液体が入っているのか、たぷ、たぷ、と波打ち、獲物を喰らった害獣の腹にも似ている。
 そのメダ・サテナの蔦の揺らめく動き。
 その隣に、死体のように顔色の悪い白衣の男が立っていた。
 Bスケールオーガのラウナ・テクニカだ。
 得体の知れない機器を両手に持ってラウナ・テクニカは細長い呼吸を繰り返し、ウィンクルム達の方に歩いてくる。
 左手に抱えているのが計測器。右手に持つ巨大な注射器のような器具が、採取器だろう。
 メダ・サテナの蔓が揺らめく。
 ラウナ・テクニカの四肢が揺らめく。
 不気味な瘴気を感じ取りながら、どのウィンクルム達も生唾を飲み込み、自らの武器やマグナライトを握りしめた。
「こっち……こっち、来て!」
 潤はメダ・サテナの前に走り出した。ヒュリアスも、潤と同じ方角に走る。
 どこが知覚器官なのだろうか。
 植物でありながら、動物のような感覚も有しているのだろう。メダ・サテナは潤に反応して、蔦を大きく蠢かせながらその姿を追う。
 ラウナ・テクニカも揺らめきながら、意外に速い動きで潤を追いかけようとした。
「君はこちらだ!」
 そこでフェルン・ミュラーがラウナ・テクニカにアプローチIIを放ち、サテナから距離を取った位置へと引っ張って走り出す。
 そのフェルンとテクニカを追って、瀬谷瑞希、マーベリィとユリシアン、上巳桃と斑雪、
 レムレース・エーヴィヒカイト、降谷弓弦、バルダー・アーテル、スノー・ラビット、五十嵐晃太が走る。
 広大な監獄の中を、ウィンクルム達はオーガとともに二手に分かれて移動する。
 メダ・サテナ側には、篠宮潤とヒュリアス、アリシエンテとエスト、スティレッタ・オンブラ、夢路希望、吉坂心優音、日向悠夜、
 ニーナ・ルアルディとグレン・カーヴェル、シルキア・スーとクラウス、豊村刹那と逆月、出石香奈が残っている。
 監獄の闇の中、シルキアはクラウスの方を向いて一つ頷いた。クラウスは頷き返した。
 アリシエンテはエストにとって最適な場所を探して誘導すると、射撃の邪魔にならないように斜め前に立った。そこはエストの射撃の命中率が下がらないぎりぎりの距離だった。
 蔦をざわめかせながらサテナは潤を追っている。
 そこに、スティレッタのマグナライトが強い光を当てた。
「こんな嫌な植物お断りよ」
 自分でサテナを照らし出しておきながら、嫌悪感をあらわにするスティレッタ。
 続いて希望が辺りを照らし出すようにマグナライトを振りかざす。心優音はA.R.O.A.から貸し出された懐中電灯でウィンクルム達の視界を広げた。
「……誰も傷つけさせないっ」
 視界が開けたと感じると同時に、クラウスは辺りにチャーチを唱える。6メートル四方に渡って半透明の防護壁が展開され、ウィンクルム達を守る。
 オーガを誘導した潤は、そのクラウスのバリアの影に隠れた。
「オーブさん、力を貸して……」
 ニーナが魔守のオーブを取り出す。赤いオーブに念をこめると、防護の力場が半径1メートルに広がった。この場は三時間は持つ。
「あ、あの……頑張りますっ」
 希望が護符「水龍宮」を周囲に撒く。24枚の護符が空中に展開し、水神の力で辺りは水中のようにキラキラと輝きだした。
 希望のマグナライトの光を反射し、闇が明るく照らし出されていく。
「ありがとう、これでやりやすいっ!」
 かなり視界が開けたため、刹那は妖刀紅月を振りかざすと、自ら先頭を切って群がる蔦を切り払い始めた。
「私が蔦を切っていくから、みんなは遠慮無く突っ込んで、本体を倒してくれ!」
「……手伝う」
 その刹那を迅雷のグリューンで逆月がサポートしている。
 蔦は刹那に敵意を燃やして絡んでくるが、逆月のパルパティアンに撃ち落とされてしまう。
「よしっ!」
 ヒュリアスは刹那の切り開いた道に飛び込んで行く。
「神人に怪我はさせられん……な!」
 すかさずダブルハートを使うとヒュリアスの背中には黒い羽根と白い羽根が一枚ずつ顕現する。
 力を大幅に増幅しながら、ヒュリアスは大太刀備前長船を振るい、オーガの腹を切りつける。
「今だっ!」
「行きます!」
 シルキアとクラウスも間合いに飛び込み、攻撃を当てる。
 当てたかと思うとすかさず引いて、追ってくる蔦から距離を取る。
 グレンが前に出てグラビティブレイク。サテナの防御力を下げようとする。
 一度当てると、すかさず下がる。
 今度はニーナが前に出て、妖刀恋慕で乱舞攻撃を狙う。オーブの守護があるので恐くない。交代で前後に動く事により、隙を作らない作戦だ。
 サテナの蔦は本当に長い蛇のように収縮しながら、ウィンクルム達を狙い、四方八方へと伸びていく。
 心優音は自分を突っつこうとする蔦を叩っ切る。
「復帰戦…ですかね」
 Elly Schwarzは大きめのフードを深く被って前に出る。
「戦いから1度逃げる形となってしまっていましたが…もう逃げませんよ」
 Ellyはトランスソードを片手にサテナへと突っ込んで行く。
 オーガへと威力を増した攻撃を一撃、二撃と繰り返す。叩き斬られていく蔦たち。
「いい調子だ」
 Heinが声をかける。
 一瞬、怯んだオーガだったが、不意打ちのように横からEllyの腕を蔦で掴み上げた。
「!」
 Ellyは応戦する暇もなく、四肢を蔦に掴み上げられ、空中まで持ち上げられて締め付けられる。
「させないわ!」
 スティレッタはその蔦の根元をめがけて【鉄扇】イルミノヴェンタリヨを叩きつける。蔦が衝撃で震動する。
「待って、助けます!」
 ニーナも恋慕で蔦を切り裂き、Ellyを救出しようとする。
「このっ……しつこい植物ね!」
 悠夜は、レイピア「ステノトゥース」でEllyの足首に絡んでいる蔦を突きまくる。
 絡み合い締め上げる蔦を神人達が攻撃し、力緩んで蔦の間からEllyが落下する。
 それを相方のHeinが床に落ちる寸前に抱いて受け止める。
「ハインさん……」
「気をつけろ!」
 HeinはEllyを床に立たせると、影法師をセット。マグナライトに照らし出されたサテナの影に向かい、双葉弐式を撃ち放った。口のないサテナが悲鳴のような音を立てる。
 そのHeinの援護をするように、エストの弾丸が通り抜けていく。
 エストはフェイバリットシューターを両手で構えて、無表情に攻撃を繰り返している。蔦がエストに襲いかかろうとすると、アリシエンテが容赦なく紅月で蔦を切り落とす。
「厄介ね……切っても切っても……このオーガ、回復しているわ……!」
 香奈は触手に真面目に対処しながら、そう呟いた。その事には、皆気がついていた。どれだけ果敢に攻撃を繰り返しても、オーガ自体がすぐに回復してしまうのだ。
「……回復を上回る、攻撃……連続して……」
 潤が途切れがちの言葉でそう主張した。それしかない、とヒュリアスやグレン、クラウスは顔を見合わせる。
 その時、サテナに異変が起こった。
 ゴボ、ゴボ……と筒状の胴体から液体の音が聞こえてきたのである。
「何か来ます、下がって!」
 エストが叫んだ。
 前に出ていたヒュリアス達は下がった。
 筒状の胴体から消化液が弾丸のように噴き上がってくる。
 悠夜は筒からこみ上がって飛んできた消化液を、盾「食いしん坊なお化け」を前面に出して身を庇う。
 心優音も危ないところだったが、動きをよく見ていたために何とかかわす事が出来た。
 消化液は異臭を放ちつつ、地面から煙を立てている。まるで地面まで消化して溶かしてしまいそうだ。もしももろに浴びていたかどうなっていたか分からない。
「恐い……」
 心優音は思わずそう呟いた。
 隣に立っていた晃太が振り向く。
「何言ってるんや。みゆの事は俺が絶対護るさかい、遠慮なく戦え!」
 そう言って晃太はサテナにも手裏剣を投げつける。
「……そうだな。もたもたしていられない。一気に行くぜ!」
 消化液の威力を見たグレンはそう言い切り、自らにインプロージョンを使用して一気に攻撃の威力を高める。
 その次の一撃は本体に重いダメージを与え、サテナは激しく震えた。
 蔦がそのグレンを絡め取ろうとするが、ニーナを始め神人達が処理してグレンの動きを止めさせない。
 クラウスはシャインスパークを撃ち放ち、前衛の手元を明るくしながら神人達の細かい傷を癒やしていく。。
 グレンがインプロージョンで威力を上げた上でグラビティブレイクを行い、一気にサテナの防御力を落とす。
 サテナの胴体に穴が開く。
 そこにクラウスが再びシャインスパークを炸裂させ、サテナに目くらましを行う。
 その間、神人達が声をかけあい連携して蔦触手を切り落とし、精霊達の動きを全く止めさせなかった。
 ヒュリアスはMPを温存していたが、鈍くなったサテナの動きを見て見切りをつける。
「……これがトドメだっ!」
 群れなす白いワームの力を武器に宿す。ヒュリアスの備前長船は真っ白な蛇となり、スネイクヘッドIIがサテナの胴体を貫いていく。
 サテナは異臭を放つ消化液を吹き上げながら聞こえない断末魔の叫びを上げ、その場に倒れ伏した。
 その頃、ラウナ・テクニカの周囲を囲んでいたウィンクルム達からも歓声が上がった。エストが心の器を破壊したのだ。


 潤が位置取りをしていた頃、フェルンとレムレースもラウナ・テクニカをうまく誘導してサテナから引き離していた。
 フェルンがアプローチIIを駆使しながらサテナの蔦の届かない範囲までテクニカを引っ張り、そのフェルンにレムレースがフォトンサークルをかけて守っていた。
「……よし」
 最適と思われる場所にテクニカを連れてくると、フェルンはフォトンサークルIIを周囲に張り巡らせる。それぞれの属性にあった半透明の防御壁が仲間を守る。
 場所が決まった事を悟ると、マーベリィと桃がほぼ同時にマグナライトをかざして辺りの闇を明るく照らし出した。
「弱点はどこでしょう……!」
 マーベリィはマグナライトをかざしながら、目をこらしてテクニカの白衣を見つめ続ける。
(どこだ……!)
 レムレースの方も通常攻撃をテクニカのあちこちに当てながら反応をうかがっていた。
 レムレースの持つセレモニーナイフはオーガ攻撃時には相当威力が上がるものなのだが、テクニカは気にも止めずにフェルンに攻撃を繰り返していた。
 テクニカの黒いオーラが並大抵の攻撃はかき消してしまうのである。
「フェルンさん、オーガの弱点は、性質から言って四肢にはないはずです。体のどこかを狙ってみてください」
 瑞希が冷静な口調でそう言った。
「……ここかな!?」
 フェルンは獣骨斧フェンリルの攻撃をテクニカの肩に当てるが、彼は不気味な笑みを顔に広げるだけで、痛そうなそぶりも見せなかった。
「愚かなウィンクルムよ……! そんな攻撃が当たると思うか!」
 そう嘲笑うと、テクニカは計測器を操った。
「!!」
 怪電波がフェルンの脳に襲いかかる。フェルンのみならず、周囲のウィンクルム全体に、脳が軋むような電波の攻撃が行われた。
 思わずうずくまってしまう者もいる。
 電波攻撃を繰り出しながら、テクニカは採取器を振りかざす。
 そのとき、弓弦のダブルシューターIIが、テクニカの手首を弾いて行動を阻害した。
「仲間をやすやすとやらせはしないよ」
 弓弦はラピットファイアをセットしながら、テクニカの動きを注視しつつ、銃弾で撫でるような攻撃を開始した。
「……!」
 悔しげに顔を歪めるテクニカ。
「そちらばかり見ないで欲しいね。きみの相手はぼくもだよ」
 同じくプレストガンナーのユリシアンも、通常攻撃ながら古銃「ヒートスピリッツ」で採取器と計測器を撃ちまくる。
 彼は、装備品に心の器が隠れていないか確かめたいのだ。
「どこに隠しているのか……!」
 心優音のすぐ側に場所を取りながら、晃太も手裏剣で攻撃し、心の器を探す。
 同じくシノビの斑雪も、朧月を駆使し、見えない位置から攻撃を繰り出している。
「よそ見をするな」
 バルダーはアリナーゼで攻撃回数を倍増させ、手数を増やして一気にテクニカを攻め立て、弱点を探す。
「……ここですか?」
 エトワールで回避を上げたスノーが、スタッカートで見切れない突きを繰り出していく。
 黒いオーラの威力を知るウィンクルム達は、弱点の心の器を探し、一斉に攻撃と確認を繰り返し始めた。
「小癪な……! 身の程を知れ! オーガに及ばぬゴミどもが!」
 テクニカが叫ぶと、周囲の牢屋から囚人達が歓声を沸き立たせた。
「――殺せ!」
「――殺せ!」
「――ウィンクルムを殺せ!!」
 恐怖を感じてマーベリィは顔を歪めるが、ユリシアンの戦う姿に勇気づけられ、心をしっかりと持つ。
 テクニカは振り上げた採取器をレムレースへと突き刺そうとする。
 レムレースは咄嗟に、イージスの盾を展開する。
 しかし、イージスの盾は飛び道具への反射技である。
 採取器がレムレースのアルブスアルムムの肩を貫き、一気に血を吸い上げる。
「あ……」
 レムレースが地面に膝を突く。
「このっ……!」
 フェルンは顔色を変えてアプローチII。自分の方に注意を惹きつける。
 フェルンへと採取器を振り上げるテクニカ。
 そのとき、朧月で姿を消していた斑雪が一瞬にして移動。
 全く視認出来ない動きで、霞斬りをテクニカの採取器に行った。
 全然、気がつく事が出来なかったテクニカ。
 採取器が粉々に割れる。
「やった!」
 思わずユリシアンが声を上げる。
 そして自らも計測器に狙いを定めて射撃。
 バルダーはエトワールで舞いながらテクニカに接近していき、アリナーゼで増やした攻撃を計測器に叩きこむ。
 計測器が破壊される。
「……よくも……!」
 恨みに燃えるテクニカの目。
 しかし、テクニカにはまだ心の器が残っているのだ。
 黒いオーラで攻撃を跳ね返される限り、ウィンクルム達は苦戦を強いられてしまう。
「どこや……一体……!」
 晃太は手裏剣「桜襲」を投げつけながら、考える。
(肩ではない……体の中心ではないなら……四肢?)
 弓弦は、ダブルシューターIIを試しにテクニカの脚に向けて撃ってみた。
 途端にテクニカは、脚を庇うようにして後退した。
「脚! 脚のようだよ! 脚のどこか!」
 弓弦が声を上げて周囲に知らせ、さらに自分もまずは右足の太ももを狙ってみた。そのあと左の腿、左の膝、と狙いをつけるつもりだった。
 テクニカは明らかに白衣の右のポケット――太ももの部分をかばってさらに後ろに下がる。
「逃がしません!」
 そのとき、2体を確認出来る位置に陣取っていたエストが、ラピットファイアで上げた火力でワイルドショットを撃ち放った。
 ワイルドショット。ワイルドショット。ワイルドショット。
 MPが尽きた途端に、アリシエンテがディスペンサを行う。
 ワイルドショット。ワイルドショット。ワイルドショット。
「ギャアアアアアアアア!!」
 総毛立つような悲鳴がテクニカの喉から上がる。苦痛にのたうちまわるテクニカ。破壊される心の器。


 ほぼ同時に、サテナ戦は終了していた。
 スティレッタ、希望、香奈、EllyとHeinがテクニカの方に走り寄ってくる。
 スティレッタはマグナライトをかざし、苦痛に喘ぐ顔を見てぞっとした。
 その隣に潤が走り寄ってきて小型カメラを構える。スティレッタやマーベリィ達のマグナライトの光を借りて、心の器を撮るつもりだ。
 のたうち回るテクニカのポケットから醤油皿程度の小皿がこぼれ落ちた。それは血のような赤色をしていた。
 潤が見ている前でひび割れていた小皿――心の器は、地面に落ちた途端、粉々に砕け散った。潤はその破片をカメラで撮影した。
 希望は、スノーを中心に護符を展開する。
 香奈は、レムレースの様子を見て悲鳴を上げ、彼の方に真っ直ぐに走り寄って行った。
「ダメだ、香奈、来るなっ!」
 レムレースが怒鳴る。しかし香奈は構っていられない。
 そのとき、痛みにのたうっていたテクニカが、走り寄ってくる香奈に起き上がり様にパンチを行った。
 香奈まで地面に倒れてしまう。
「なんてことを……!」
 サテナ戦が終了したのだ。クラウスは大慌てで香奈とレムレースの側に走り寄り、サンクチュアリを唱えた。
 エナジーフィールドが展開されて、じわじわと傷が癒え始める。香奈は何とか立ち上がり、囚人達の方に下がった。
「許せない……!」
 レムレースが闘争心を明らかにし、自身にプロテクションを張り直すとセレモニーナイフで斬りかかる。
 無様な声を立てるテクニカ。
 黒いオーラはもう完全に消えていた。
 しかし、痛みの余り怒りに燃えたテクニカは手がつけられない状態で、神人達の方に向かいパンチで攻撃しようとする。
 大ぶりのパンチに対し、何とか回避する瑞希、希望。
「マリィ、危ない!」
 思わず声を上げて狙撃するユリシアン。
「桃!」
 照明を持っていて目立つのが悪いのか、離れて立っていたマーベリィや桃達にまでテクニカは無茶苦茶パンチを振り回して襲いかかる。
 フェルンはアプローチIIを撃とうとテクニカを追いかける。
 そのとき、バルダーが双剣双桜を振り上げたかと思うと、テクニカに突進。
 テクニカの両方の胸を、双子の剣で刺し貫いた。
「危険だ! 早く離れて!」
 叫ぶフェルン。
「俺も動けない? 構わん。手段を問うてる暇はない。早く倒せっ!」
「クロスケ……!」
 バルダーの行動に言葉を失うスティレッタ。
 その表情を見て、ユリシアンはいち早くダブルシューターIIでテクニカを撃つ。かと思うと即座にスナイピング。
 弓弦のワイルドショット。
 レムレースの全力の攻撃。
「ノゾミさんを殴ろうとしたね……? ただですむと思うな」
 スノーは護符に守られながらレクイエムのステップを踏んで死者の霊を呼び出した。死者とともに踊りながら攻撃を繰り出し、生命力はおろか聴力まで奪い取るスノー。
 その鮮やかな攻撃の影から、遁甲で防御力を上げきった晃太が飛び出した。
「これで終わりや!」
 朧月で動きを見えにくくした上で、防御を上げた晃太は、空中からテクニカの顔面に手裏剣を撃ち込む。
 それから着地すると影法師を使い、神人達のマグナライトの照らし出す灯りの中、くっきりと浮かぶテクニカの影に手裏剣を思い切り叩きこんだ。
「かはっ……」
 テクニカの喉を最後の呼吸が通り抜けていき、彼はバルダーの目前で膝から地面に崩れ落ちていった。
 ラウナ・テクニカの魂は滅び、瘴気を放ちながら浄化されていく。
 それは、メダ・サテナも同じだった。
 監獄『大灼熱』はいつになく静まりかえっていた。
 あれほど敵意を剥き出しにしていた囚人達は一言も発さず、滅び行く2体のオーガを見つめていた。
「悠夜さん、終わりましたよ」
 弓弦が、穏やかな声で言った。
「……始まりでしょ。オベリスク・ギルティを攻略するまで、戦いは終わったとは言えないわ」
 悠夜は悲しげな声でそう答えた。
 2体のオーガの瘴気は、確かに、オベリスク・ギルティへと向かって吸収されていった。その氷の塔に何があるのか、ウィンクルム達は全てを知る訳ではない。
 悠夜の声を聞いて、ウィンクルム達は、思った。
 ――あるいはオーガの謎を全て知るまで、戦いは決して終わらないのかもしれない、と。

(執筆GM:森静流 GM)

戦闘判定:大成功

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