リザルトノベル

●キャンディニア王国へ ~草原~
 夜とは言え、キャンディニア王国までの道のりは明るく照らされている。
 大小さまざまな飴がキラキラと光り輝き、舗装された道も多い。
 ウィンクルム一行はアーサー王子と共に、偵察に出た小人騎士達の帰りを待っていた。
 小人騎士たちが無事に戻ってきて、報告を受けた結果、敵が多くいる地域、待ち伏せに最適そうな場所、そして進みやすい進路を見つけることが出来た。
「さすがキャンディニア王国が誇る騎士たちだね」
 とアーサーが目尻を下げる。
 土地勘のあるアーサーが地図を広げ、草原、城下町また城の内部を皆に説明する。
 そして集まったウィンクルム達と共に作戦と進路を決めた。
 まず数名の神人が囮となり敵を呼びよせ、此方に有利となる土地に敵を集める。そこで精霊や他の神人で一斉に攻撃する、という流れ。
「新米に何処までやれるか…いや、やれるかじゃない、やるんだ!」
 そう気合をいれるのは蒼崎 海十。
 普段は忙しさからか眠そうな表情を見せる海十だが、今回のような大規模な作戦に参加するということでキリリと引き締まった表情を覗かせる。
 そんな海十にブレストガンナーのフィン・ブラーシュは声をかける。
「海斗、深呼吸。力み過ぎ」
 深呼吸を促せば、海十は言われた通りに息を吐く。
(怖くないと言えば嘘になる……が、俺はこんな所で死ねない)
 息を吐いてもなお真剣な表情を崩さない。
(正直言って、お前を囮にするなんてオニーサン的には冗談じゃないが…本気、なんだな)
 そんな海十にフィルも意を決した。

 囮として草原を進むのは、海十とフラル、スコット・アラガキ、暁 千尋。
 舗装された街道を真剣な面持ちで三人は歩いた。幾人かの伝達役の小人騎士も一緒だ。
 知的な印象を与えるフラル、浮世離れした印象を与えるスコット、真面目な印象を与える千尋。
 彼らは既にパートナーとのトランスを済ましている。
 街道には飴のライトがあるとは言え、まだ夜。目を凝らし周りを見回しながら慎重に道を行く。
 …グルルルルル……
 少し歩けば、三人は獣の低い呻き声を感じ始めた。
「来たか……」
 フラルが持参した武器の柄を握りしめる。出来る限り他の仲間達の元へ敵を誘導するのが目的だが、勿論身にかかる火の粉は振り落とさなければならない。 
 スコットたちと目を合わせ頷き、フラルは叫んだ。
「お前らの相手は此処に居るぞ!」
 彼の言葉に、近づく呻き声の数がどんどんと増えていくことがわかる。
 千尋やスコットもわざと飴のライトに照らされるように配置どる。
 敵の数は彼らの想像を遥かに超えた敵の数だった。目視できるだけでも多いというのだから、実際は更に数多いのが伺える。
「そろそろ、かなー」
 スコットの言葉に、皆が敵の誘導を開始した。
 目指すは、彼らの精霊や仲間達の待つ場所。

「4人はこっちに順調に誘導してくれてるみたいだよ」
 戻ってきた一人の小人騎士の報告を受け、アーサーは皆に伝える。
 戦闘予定地域にてウィンクルム達が各々トランスを済ませたり、連携の確認をしたり、緊張感に包まれていた。
「人手がいるというから来てやったんだ。王子が功績を上げるかどうかなど知らん。敵が来たら戦えばいいだろう」
 褐色の肌に銀髪、エキゾチックな雰囲気を持つハーケインは仲間の輪から少し離れ、小刀ライラックを素振りする。
 そんなセリフを聞き、隣にいるパートナーのディアボロ、シルフェルドは魅惑的な笑みを浮かべる。
(ハーケインの言葉を翻訳するならば……王子はオーガに対抗する術がないからウィンクルムに任せて身を守っていろ、ってところだな)
 長い黒髪が夜風に揺れ。
(神人も大して変わらんのだからお前こそ自分の身を守っていろと言いたいがな )
 そんな想いを胸に秘め、シルフェルドも己の片手剣を握り直した。

 仲間達の元よりも囮の4人寄りに移動していたのはスコットのパートナー、ミステリア=ミスト 。
 心配な表情は隠し、進路方向を見ていると……見慣れた緑の髪が目に入った。
 示し合わせたハンドサインで囮の四名が全員無事だというのも確認する。
「お疲れ、スコット」
 ミストはアプローチを使用すし、囮となった4人から意識を自身に向けさせる。
 敵はミストを4人よりもミストを目指し、それを見計らって彼は仲間達の方へと敵を誘導していった。

 敵はほとんどがネイチャーらしく、知性の高いものは少なそうだった。
 それゆえ彼らはまんまとウィンクルムの作戦に嵌る。
 袋状に近い広場で待ち受けていたウィンクルム達は、多くの敵を取り囲むことに成功する。
「オレ達の力を見せてやろう!」
 アーサーの言葉に皆が声を上げ、戦闘が開始された。

 ウィーテス=アカーテースはその大きな体からウィンクルムソードを振るう。
 彼の身体の陰からウィーテスのパートナー、パラサ=パックがワーウルフファングを飛ばす。
 グギャア、とコボルドの身体に命中し、ウィーテスが更に追い打ちをかけた。
 まだ息の根があるコボルドに、駆け出しウィンクルムである真がセイクリッドワンド「アルフェラッツ」を振り下ろす。
 ……人の足を引っ張らない程度に戦う、と言っていた真。
 もう少し真面目にやろうよ、と思っていた真のパートナーである新は、ちゃんと役割をこなす真に安堵の表情を見せつつ、短刀蝉時雨を振るう。
 援護攻撃に感謝しつつ、ウィーテスはコボルドに止めの一撃を喰らわした。
 息を止めたことを確認し、4人は目に入る新たな敵へと立ち向かう。

 真と新のように、この戦いが初の戦闘となる者も少なくない。
 萌黄は戦線からやや離れた位置に移動し、パートナーの蘇芳にゴブリンの位置を伝える。
 その言葉通りに蘇芳は武器をスネイクヘッドで白蛇と化させ、敵に確実にダメージを与えていた。
 負傷すれば周りに迷惑をかける、と蘇芳は考え。目に入る敵に攻撃しては引き、堅実に動く。
 劣勢に感じたゴブリンは蘇芳が引いたすきに逃走を図ろうと背を向けた。
「逃がさないギャー!」
 そのゴブリンの背中に鋭い手裏剣が突き刺さった。
 投げられた方向を萌黄と蘇芳が見やれば、パラサがグッと親指を立てた。

 草原での戦いは圧倒的にウィンクルムが優勢であった。
 スキンヘッドにいかつい顔、迫力感溢れるルータス・ファンはワイルドドッグに後ろから斬りかかる。
 ギャン!と悲鳴を上げる敵に、ルータスのパートナー、ディアボロでライフビショップのジャミファ・シャンは高笑いを上げる。
「やあ、雑魚がお揃いだね。それじゃ早速倒されてもらおうか!」
 そう言うと、ジャミファは腕を伸ばす。そしてその腕を後方に向けた。
「この人たちにね!」
 その腕の示す先には。
「ふ、くふ、ふははははははははははははははははははははは!!!」
 一心不乱にタムタムを振るう、片目を黒髪で隠したド変態、明智珠樹の姿が。
 目に入る敵は全て討つ!とばかりにタムタムを振る姿は正に狂気。
 そんな珠樹のノリに、ルータスも剣を振るう。ジャミファはそんな彼らの後方で高笑い。
「……あんま無茶すんなよ、珠樹……」
 珠樹達の後ろに忍びつつ、的確に手裏剣を繰り出すのは珠樹のパートナーである、兎テイルスの千亞。
 派手に動く彼らに引き寄せられる敵達。
 囮として動いていた海十も攻撃に加勢し、その背後からフィンのファストガンが放たれる。
 更に、千亞やハーケイン、シルフェルド達の猛攻を受け敵は散っていく。

 敵は個体レベルでは脅威ではない。しかし数が多く、ウィンクルム達は傷はなくとも少しずつ疲弊はしていく。
 パートナーの仮面のトリックスター、サウセの元へ戻ってきたフラル。
 サウセはマジックブックを使用し、仲間に攻撃が当たらぬよう慎重に戦いを進めた。
 そしてフラウもそれをサポートするように動く。
 千尋も彼のパートナーであるジルヴェール・シフォンと合流していた。
「ふふ、遠慮はしないわよ?」
 妖艶に微笑み、魔法の詠唱を始めるジルヴェール。千尋は彼を守るように寄り添った。
 フラルやサウセが敵を集めるように華麗に動き、攻撃をしかける。
「先生、小人たちも避難は完了してます」
「ありがとチヒロちゃん。それじゃ、いっくわよー!」
 範囲攻撃であるカナリアの囀りが炸裂し、非常に多くのネイチャーやデミオーガがその餌食となるのだった。

 ウィンクルム達の活躍により、草原の敵は激しい勢いで減っていく。
 派手に戦うことで、知性のない敵達は吸い込まれるように戦場に現れる。そして猛攻に合い息絶える。
 かなり敵の数が減ってきたと判断し、動き出すのはアルクトゥルスと西園寺優純絆 。
 戦闘地帯から城下町へと移動していく。
 城下町に残る敵達を草原までおびき寄せるため、彼らは行動を開始したのだった。
 ネオンのように飴のライトが光る街は明るい。
 容易にゴブリン魔法使いを見つけると、アルクトゥルスは敵の足元に矢を放った。
「ゴブ?」
 とゴブリンが2人に気が付けば、どう見ても可愛い女の子に見える優純絆が
「鬼さん鬼さんこっちなのだよ」
 と挑発する。
 怒り狂うゴブリンは仲間を呼び出し、そのままアルクトゥルスと優純絆を追いかけていく。
 しばし二人は城下町を駆け回り、残る敵達を引き付けていた。
(あぁ、追いかけてくれるのがベルたんだったら立ち止まって両手を広げ迎え入れますのに……!)
 そんな妄想に浸るアルクトゥルス。余裕だ。
 十分に敵を引き付け、彼らが草原へと戻っていけば。
「ルカさまーーー!」
 優純絆のパートナー、ルーカス・ウェル・ファブレが微笑みを携え待ち構える。
 その隣には、アルクトゥルスのパートナー、ベルたんことベテルギウスも。
 アルクトゥルスと優純絆は彼らのパートナーの後方に回る。
 ベテルギウスがその強靭な肉体で、引き付けられた敵達にタックルをかます。
 そして草原での戦いに一区切りがついたウィンクルム達は、戦線を城下町側へと徐々に上げ。流れてきた敵を迎え討つ。
 萌黄や蘇芳、フラルやサウセが敵と戦いながら上手く敵を集めれば。
「行きますよっ」
 城下町近辺でトランスを行った優純絆とルーカス。
 そして集められた敵達をなぎ倒すようにルーカスから放たれたトルネードクラッシュⅡが炸裂し、敵は倒れていった。
 
 残る敵達も難なく撃破すれば。
「流石ウィンクルムのみんな、お見事だね!」
 アーサー王子の微笑みが草原を制したことを物語った。
 大きな傷を受ける者もなく、他の二部隊よりも早く城下町へと突入したアーサー隊だった。 

●キャンディニア王国へ ~城下町~
 アルクトゥルス達の引付けにより、城下町の敵はだいぶ数が減っていた。
 それでもまったく敵がいないわけではない。
 ウィンクルムの数組は城下町に入ってからトランスを行った。

 夜のキャンディニア王国の城下町は、草原同じく飴の明かりが灯っている。
 キラキラとしたネオンのような装飾は美しい。だが、住民は皆避難をしているのか、街は静けさに包まれており逆に恐怖さえ感じさせる。
 アーサーはそんな故郷を憂いだ表情で見る。
 アーサーの案内により、一行が城へと向かい進んでいく間に、いくらかの敵が襲い掛かってきた。
 しかし、皆無傷なことや敵が個々で現れるため容易く撃破していく。
 そんな時、ハティが城下町の安全を確かめつつ、道を進むと1人の妖精が慌てて走っているのを見つけた。
 その閃光の色を持つ瞳が驚きに目を見開き、妖精へと駆け寄った。
「今、凄くおっきぃのが来て……僕、必死で逃げてきて……」
 ハァハァと肩で息をする妖精をハティは抱え、そしてアーサー王子の傍を守っていたブリンドに目配せをした。
 そのままハティは近くの家へ妖精を避難させる。
「悪ぃがちょっと離れるわ」
 ブリンドはそう言い、妖精が出て来た路地裏に近づく。
 そこにいたのは……巨大な体を持つデミトロールだった。
 ガリボリと飴を貪るデミトロールは此方には気づいていない。ブリンドはすぐに仲間にデミトロールの存在を知らせた。
 デミオーガが出現する、と予測はしていたが、まさかデミトロールか……と一部のウィンクルムから声があがる。
「こんな路地裏で戦うわけには行かねぇからよ」
 そう言うと、ブリンドは手に持つ銃をデミトロールへと向け、発砲した。
 銃弾がデミトロールの身体にめり込み、ゴギュグワァ!!と叫び声を上げるものの、その瞳は怒りに満ち。
 もっと広い所で戦おうぜ、と誘うようにブリンドはデミトロールを誘導していった。

 動きの鈍いデミトロールはブリンドを捕まえられることはできず、ひたすらに彼を追いかけた。
「はい、ここまで」
 そう言うと、ブリンドが辿り着いた広場にはロキ・メティスとローレンツ・クーデルベル。
 そしてハティも要請を送り届けた後、合流した。
 知的な雰囲気を持ち、冷めた目をしがちなロキだが、今回は怪我なんてしてられん、と剣を握る。
 いつもはネガティブで己を卑下しがちなシェパード系テイルス、ローレンツもロイヤルナイトとしての役割を果たそうとデミトロールに目を向けた。
 トランスを終えたローレンツはアプローチを使用し、デミトロールの目を自身に引き付けた。  
 狼のような咆哮も相まって、効果は絶大。敵の目にはローレンツしか入っていないようだ。
 そこで、ハティやロキが背中や背後から攻撃にかかる。
 巨体に地道に攻撃を加えるも、デミトロールは戦意を失わずローレンツに立ち向かってくる。
 そこへ加勢してきたのは優純絆とルーカス。
「一体に対してスキルを使うのも悔しいですが、仕方ありませんね」
 ルーカスはそう言いながら、華麗にトルネードクラッシュⅡをトロールに叩き込んだ。
 激しい攻撃にデミトロールが転倒する。そしてブリンドが
「面倒くせぇ。一気にカタつけるぜ」
 と言えば、ハティが意図を理解し頬に唇を寄せる。そして彼らの体がオーラに包まれた。
 ローレンツが倒れた敵にダメージを喰らわせた後、ブリンドから放たれたダブルシューターは、倒れたオーガの胸を貫通し絶命させた。

 城下町での戦いは、草原ほどではないにしろ敵の数は多かった。
「くふ、ふふふははは!」
 相変わらず奇声と共に武器を振るう珠樹。
(こいつ声枯れないのか……)
 と思いつつ珠樹の後ろから双葉で確実に止めを刺す千亞。
 真や新達も徐々に戦いに慣れているようだった。
 千亞はそんな彼らの姿も気に留め、中距離から彼らを援護するように手裏剣を投げる。
 新の感謝の視線にウィンクを返す千亞だった。 

 ほとんど敵はいなくなった、と偵察隊の小人から報告を受け。
 戦況を見守っていたアーサーは、遂に城の奪還に動き出した。

●キャンディニア王国へ ~城
 アーサーをはじめ、ウィンクルム達が城の前へ集結する。
「皆、有難う。あと少し力を貸してくれ」
 アーサーが真剣な表情で皆の顔を見回す。
 ハティやブリンド、そして数組のウィンクルムは城下町で取りこぼした敵がいないか、警備と巡回にあたることになった。
「何かあったら伝達してねー」
 スコットが朗らかな笑顔を見せれば、珠樹や千亞など城下町に残る者達の心が和らいだ。

 城下町や草原は飴の光で輝いてたが、それに比べると城の中はほの暗い。
 天宮・水生が事前にアーサーに城内の情報を貰い、そこから敵がいそうな場所に目星を付ける。
 水生のパートナーであるコンラットが簡単に偵察を行い、その結果大勢でぞろぞろと各部屋を回るのも非効率だったため、ウィンクルムは数組に分かれ城内の安全確保に努めることとなった。

 金髪に輝くツンツンとした髪を持つ葵はその表情を更に険しいものにしながら、慎重に部屋をチェックしていく。
 彼のパートナー、ワンコ系テイルスである飛鳥は葵と共に、童顔な表情をキリリと引き締め進む。
 彼らの後ろには、更に2人の少年が。
 真顔を崩さない、おとなしそうな印象を見せるアリス。そして気品あふれる狼テイルスのティーダは己の銃を手にしつつ進む。
「だいぶ静かだね」
 アリスの言葉に葵や飛鳥は同意する。大方の敵は草原や城下町で撃退できたようだ。
「ふん。手応えがない」
 ティーダが退屈そうに銃をクルクルと回しつつ、次の部屋のドアに近づこうとする。
 すると、突然ドアがバァン!と破られ、中からコボルド戦士が飛び出してきた。
「やっとお出ましか」
 動揺もせず、ティーダはファスト・ガンでコボルド戦士を即座に撃つ。
 攻撃はヒットしたものの、致命傷には至らない。
 飛鳥が敵の周りを素早く動き、敵の注意を引きつつ攻撃を加え、少しずつ相手に傷を増やしていく。
 葵が小柄な少年達を守るように、やや前に出て剣を握る。攻めよりも防御の姿勢を崩さず、慎重に間合いを取る。
 しかしコボルド戦士は後ろに居る少年達を狙って攻撃をしかけてきた。
「大丈夫」
 無表情ながらもアリスが進み出て、プシュ!と隠し持っていた霧吹きをオーガの顔に向けて放った。
 刺激臭のする液体にオーガが一瞬怯んだ隙を狙い、葵と飛鳥の斬撃とティーダの銃弾によりコボルドは息絶えたのだった。
 無事に敵を倒した彼らは安堵の息をつく。
「飛鳥、ありがとう」
 と葵は彼の頭を撫でた。
 
 大勢のウィンクルムの活躍により、城内は次々と安全が確保されていく。
 月岡 尊はライトを片手に、パートナーのアルフレド=リィンと城内を歩く。
(侵す者は侵される、奪う者は奪われる…覚悟は、いいな)
 尊の眼鏡の奥に光る真剣な表情に、普段は陽気なアルフレドも気を引き締める。
 共に行くのはトランスをすませたアルクトゥルスとベテルギウス。
 彼らが長い廊下を歩き、曲がり角に差し掛かると、ドゴン!と目の前に斧が振りおろされた。
 慎重に進んでいた彼らに当たることはなく、その斧を振り下ろした敵の姿を見つける。
 そこにいたのはミノタウロスだった。ネイチャーの中では強敵な部類だ。
 即座にベテルギウスはローズガーデンを発動し、敵の攻撃に備える。
 外の三人は後方へと下がった。
「蹂躙なんざ見てらんねーんでな!」
 後方からアルフレドが双葉を使用し敵の身体に手裏剣で傷を付け、尊とアルクトゥルスは弓で援護射撃を行った。
 攻撃は当たるものの、なかなか致命傷には至らない。
 アルフレドはスピードを生かし、手裏剣で攻撃しながら更に後方へ。そして見つけた偵察の小人に援軍を頼んだ。
 ベテルギウスは多少の攻撃を受けるものの、ローズガーデン効果でしっかりと反撃も返す。
 そこへ、援軍としてスコットとミストが現れた。
 ミストがアプローチを使い、敵の目をまたも引き付ける。
 見事術中にハマった敵に、尊敬は腕を狙い、矢を引く。
 その攻撃は見事にミノタウロスの腕に当たり、呻き声と共に斧を地面へと落とした。
 そして丸腰となった敵に、ウィンクルム達の猛攻撃。
 ミノタウロスはなすすべもなく倒されたのであった。

 戦いを終え、深いものではないが傷を付けられたベテルギウス。
 情報を聞き駆けつけたジャミのファストエイドにより、すぐさま傷が消えていく。
「…ッス」
 と、感謝を伝えるベテルギウス以上にアルクトゥルスが安心したのは言うまでもない。

●秘密の抜け道
「もう少しだ……」
 秘密の抜け道の確保へと進むアーサー。
 ピンクの髪を持つシグマが気合を込めつつ王子の傍を守るように歩く。
 先導するのは彼のパートナーであるオルガ。そしてその少し後方を歩くのは鳥飼とそのパートナーである鴉。
 鳥飼はどう見ても女性に見える容姿を持つ。初見の人では気づかないどころか、彼を見知った人でも(偽っているのでは?)と思われるほど。
 そんな鳥飼の姿に、大の女嫌いなオルガはムッとした表情を見せる。
 オルガの様子に気付いているのかいないのか、長い三つ編みを揺らしながら鳥飼はいつもと変わらぬ表情で進んだ。
 鳥飼のパートナーである鴉は飄々とした表情で鳥飼の隣を歩く。

 秘密の抜け穴までの道でも敵は発見された。
 しかし敵は劣勢なことに気付いているのか、逃げようとするものばかり。
 逃げ惑う敵達を、オルガは冷徹な表情で双剣「アジンドゥバ」を振るい、止めを刺していく。
「俺の前に立ったのが運の尽きだ」
 アルペジオを使用し、速度を加えた攻撃で敵を切り刻んでいくオルガ。
 しかし、一度にたくさんの敵に狙われ、コボルド戦士がオルガ目がけて槍を振るった。
「ちっ」
「オルガさんっ!」
 シグマは王子の元からオルガの元へ向かおうとする。
 しかしそれよりも早く一本の杖が槍の一撃をいなした。そしてその流れで鳥飼は杖を振るい敵の胴に思い切り当てる。
 そしてタイミング良く鴉がマジックブックで攻撃を仕掛け、コボルド戦士を撃破した。
 神人であるにも関わらず前に出、そして勇敢に戦う鳥飼の姿に眼鏡の奥の瞳を少しだけ見開き、そして細める。
「ありがとうございます」
 対・他人モードのオルガに、鳥飼は
「いえいえ、お互い様ですから」
 と目を細めた。
「主殿、あまり無茶はしないでくださいよ」
「えぇ、無茶なんてしてませんよ?」
 鴉の言葉に心外だ、と言いたげな表情の鳥飼。頬を膨らませてみるその表情は女性そのもので。
 女性好きなシグマがその表情に見惚れる。その直後「援護が遅い!」とオルガに蹴られたのは言うまでもない。

 そして。
 遂にウィンクルム達は秘密の抜け道へと到達した。
 水生の元に偵察隊から『城内の安全は確保され、女王も無事』という一報が届いた。
 スムーズに事が進んだのは城内の確認に回った千尋やジルヴェールの功績が大きい。
 奪還と女王の無事を水生は即座にアーサーに伝えると、目尻を更に下げ、安堵の息を吐いた。
 そしてずっと王子の傍で守りを固めた水生やコンラート、そしてまずはその場に居たウィンクルム達に感謝を伝えた。
 城を奪還した、という知らせは瞬く間に城下町にも広がり、ウィンクルムを含め皆が第一歩の成功に歓声を上げたのだった。


 こうして、アーサー達はどの隊よりも早く秘密の抜け道の安全を確保した。


シナリオ:上澤そらGM


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