リザルトノベル

●草原の戦い
「草原に沢山の敵が?」
 采女 澪が呟いた。ヴァーリ=ウルズも驚いた様子である。
「沢山いるし、見晴らしがいいから避けて通ることもできないみたいよぉ~」
 ラブラ・D・ルッチ、地図を示しながら敵戦力の分布を説明する。偵察部隊は偵察行動中に敵に見つかりそうになったものの、アスタルア=ルーデンベルグや、五十嵐晃太のスキルを巧みに使用し、無事に帰還していた。
 「トランス不要な安全なルートを、って思ってたけど、難しそう」と吉坂心優音。

 采女 澪は情報部を設けていた。戦いに不慣れな者が多いアーサー王子隊の連携の弱さを見抜き、情報共有のサポートに回ったのである。彼女は偵察隊から報告を聞いて、いったんキャンディーバードで全員と連絡をとり、皆で車座になって相談することにした。
 予想外の事態に皆不安そうだ。ヴァーリ=ウルズが状況を分析し、「偵察隊の戦力だけで草原を突破できそうにないなら、先行隊も戦うしかないだろう」と結論づけると、皆が頷いた。

 偵察隊と先行隊が一丸となり、草原を進軍する。
 漂う甘い空気に耐えきれずハガネが煙草をふかし、フリオ・クルーエルが「甘いの嫌いなんだ?」と訊いた頃、敵が襲いかかってきた。直ちにトランスしアプローチ、引き付けた敵を後衛のトラが魔法でぶっ飛ばす。花岡 美園が、「ハガネさんさっぱりする飲み物ありますよ」と声をかけているあたり、戦闘中とはいえ余裕である。
「おっと、デミ・ベアーだぜ! 気をつけろ!」叫んだのはエリザベータ。豊村 刹那、前に出て、「私が敵の足を止めるからその隙にヤれ」と斬りかかる。
「刹那、下がれ」冷静な声で言ったのは逆月。その弓がデミオーガの後足を射貫くと、敵は凄い声で吠えた。豊村 刹那が退いたのを確認後、ヴィルヘルムがカナリヤの囀りを発動する。デミ・ベアーに炸裂四散、周囲の敵にも大ダメージだ。

「ヴィルヘルムさん、派手でいいね。他の人たちが力を温存して先に行きやすくなる」上巳 桃が呟くと、ネイチャーのワイルドドッグやラットがあたりを囲んでいるのに気がついた。
「ネイチャーはデミの影響受けてるだけだと思うから、あまりやっつけたくないですね」と斑雪。大事な作戦の時もネイチャーへの優しさを忘れない姿勢は立派だ。彼は実戦経験浅いサラ・ミルカ・リリエンスールや歌戀・ラフェール・ロクシタン、ルンやテヤン、100000774や驟雨をさりげなくフォローしていた。
「では、私たちが!」ルゥ ムーンナルとメルティナ バーンブレスは、素早く石鹸をワイルドドックの足下に放った。犬たちは滑ったり転んだりしてきゃんきゃん逃げていく。
 ネイチャー達を更に驚かせたのは、ミヤ・カルディナとユウキ・アヤトが二人で協力して焚いた篝火だった。暗い夜に輝く、いくつもの篝火に野犬や野ネズミは恐れをなして逃走した。

 逃げ残って攻撃を続けているのはほとんどがデミオーガだった。リュシエンヌ・ジルベールとエティエンヌ・プティパが、一見無防備な様子で隊から離れて歩いて行くので、デミ・ウルフが襲いかかった。しかし、二人の狙いは囮となること。音無淺稀がすかさず銀音をでデミ・ウルフをなぎ払えば、フェルド・レーゲンが敵の足を、あるいは目を撃ち貫いていく。その射撃に狼狽えるデミオーガを狙い澄まし、ルキウス・アズールがデミオーガの視界の外からとどめを刺す。深海 萌花はパートナーが戦いやすいようにサポートしている。
 偵察隊と先行隊の戦いぶりは見事だった。実戦経験の浅いリクトも、まず敵を引き付けてから戦いを挑む冷静さを持っていたし、カスミは少しだけ緊張していたが、素早くリクトにトランスのキスをして、その後も彼の戦いをサポートした。
 皆の頼もしい戦いぶりに、コカコは敵や味方の状況だけではなく、アーサー王子の整った容姿まで観察する余裕が生まれていた。彼女がアーサー王子に熱い視線を注いでいる様子を見ても、ポヴァラは「彼女の目にだって俺が一番美しく映っているに決まっていますし」と信じていた。
 リセ・フェリーニとノア・スウィーニーは戦場をよく観察し、前後衛へファストエイドがすぐにかけられるよう、遊撃的な立ち回りをして、いち早く怪我人の回復に当たっていた。

 激戦の末、草原の敵は蹴散らした。リセ・フェリーニとノア・スウィーニーが回復した他にも、多少のけが人が出ていたので、偵察隊として戦いを避けていた香我美と聖が一人一人に声をかけ、回復して回る。

●城下町の戦い
 一行は城下町へと進軍した。城下町には草原ほど敵はいなかったものの、道を通っているとデミオーガが襲いかかってきた。
 名生 佳代が「眼鏡で殴れ!」とトランスすると、花木 宏介が「佳代ウロウロするな。作戦は任せたぞ」と言い残し、敵に飛びかかっていく。スキル・双葉が炸裂した。
 カルラス・エスクリヴァがアプローチを発動すれば、向坂 咲裟が武器での閃光効果や闇耐性低下を狙う。闇の中できらめく光は効果十分だ。その後ろで怪我人の世話や、キャンディニアの住人の避難誘導をしているのは麻琵 桜玉 殊月と椿姫桜 姫愛姫だ。カルラス・エスクリヴァが引き付けてくれるから大丈夫と思っていると、
「チュー!」
 不意に、家の隅からデミ・大ラットの群れが飛び出してきた。ラットとはいえ危険なデミである。しかし椿姫桜 姫愛姫は慌てず騒がず、酢と粉末唐辛子を混ぜたものを霧吹きで次々とラットたちの顔面に吹きかける。デミ・大ラットはたまらんといった様子で退散していった。特別な武器や道具がなくても簡単な工夫で敵を撃退した、彼女の機転は光っていた。
 紫月 咲姫が罰ゲーム、紫月 彩夢がコネクトハーツで残りのデミ・大ラットを撃退すると、二人はショコランドの住民の避難誘導と保護に忙しく働いた。彼女らの活躍で住民達に怪我人もなかった。

 町はデミオーガから解放された。住人達はウィンクルムを歓迎し、道には歓声が沸き起こり、花ならぬキャンディーが降り注いだ。
 しかし、戦いはまだ終わっていない。ストラオプ城を取り戻し、女王を助け出さねばならないのだ。

●ストラオプ城の戦い
 一行はついにストラオプ城へ入城した。
「アーサー王子、いよいよですね」今までずっとアーサー王子のそばを片時も離れず警護し続けていたベルンハルトが声をかける。
「ありがとうベルンハルト。母上が無事だといいんだけどね」
 アーサー王子も彼を信頼している様子だ。ベルンハルトは、王族が戦闘の経験があるとは思っていない。王子に敵が近づく前に迎撃するつもりだ。おとなしくついてきている真衣が離れ過ぎないよう、気を配りつつも、この国の精神的支柱である王子を何が何でも死守する覚悟だった。

 襲いかかってきた敵にも、ウィンクルム達は少しも怯まない。菫 離々がマグナライトで目くらましした敵を、蓮が取回ししやすいクレイモアで素早く制圧する。攻撃力が増しているのは、ノグリエ・オルトのスペードリンクのお陰だ。本当はノグリエ・オルトは後方にいるシャルル・アンデルセンを戦いから遠ざけておきたいのだが、そういうわけにもいかない。
 強力な一撃を繰り出す蓮の勢いに怯んだ敵に対し、雨池颯太が「ひーばあちゃんはおれが守る!」と叫びながら更に追い打ちをかけていく。井垣 スミが「そうちゃん、無理しないでね」と後から続く。

 やがて敵陣は総崩れとなった。しかし、ウィンクルムは戦いの手をやめない。デミオーガ達を完全に掃討して、この城の平和を取り戻すためには、司令官級の敵を排除することが必要だ。
 ふぅと定治はあえて強敵ではなく、雑魚を確実に減らすことで、他の皆が大物へ攻撃しやすくした。
 ソルティがスキルを活用して時間を稼ぎ、クラリスがそれに寄り添い、時には闇雲に反撃してきた敵を退ける。時間を稼いでいたのはサフィールのためだ。サフィールは前衛の様子と敵の様子をみて、敵を多く巻き込めそうな所にカナリアの囀りを放とうとしていた。 アンダンテが弓で彼をサポートする。
 そこに、今まで互いに連携して一匹ずつ敵を倒していたリデルとエイルが走り寄ってきた。
「多分あいつが司令官だ! 今、ルークさんが一対一で戦ってる!」
 サフィールが指さされたところを見ると、ルークと巨大なデミオーガが今対峙しているところだった。
「ルーク! 退いて!」
 ユラが叫ぶと、ルークが飛び退く。サフィールが魔法を放った。強烈な威力にデミオーガはひとたまりもなかった。

 敵を一掃した後、霧白とクロスパールが味方を回復していく。クロスパールは内心、シロちゃんに怪我がなくてよかった、と思っていた。 最後尾を進み、後ろからの襲撃に備えていた水瀬 夏織と上山 樹も、戦局を見極めて上がってきて、皆に回復魔法をかけていた。

 ユラとルークは事前に、小部屋など王族が隠れる場所がないか、アーサー王子に確認していた。アーサー王子が二人に話したとおり、女王は一番高い塔に立てこもっていた。ユラがキャンディーバードで敵が去ったことを女王に伝えると、塔から降りてきた。
 ウィンクルムたちを出迎えたキャンディニアの女王は、緩くウェイブのかかった長い金髪に碧眼、アーサーそっくりの顔立ちに、慈愛に満ちた微笑みをたたえている。
「母上! ご無事でしたか!」
「よく帰ってきてくれました、アーサー。わたくしはそなたが助けに来てくれると信じていましたよ」
 慈母のような彼女とアーサーは、ひしと抱き合った。
「ウィンクルムの皆様、キャンディニアを救って下さり、本当にありがとうございます。
しかし、ギルティ・ボッカを倒し、バレンタイン伯爵を助け出す任務がまだ残っています。
わたくしからも改めてお願いします。息子を、そしてこの子の父親を助け、バレンタイン地方の平和を取り戻して下さい」
 女王は優雅に、品のある仕草でウィンクルム達に述べたのであった。


シナリオ:蒼鷹GM


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