リザルトノベル
●支援部隊 執筆:雪花菜 凛 マスター
重苦しい暗い雲が空を覆っていた。
「速く! もっと速く!」
ルビー・モス・アゲートとペリドット・アパタイトは、必死に走っていた。
オーガのホテル襲撃部隊より先にホテルに辿り付く必要がある。
間に合わなければ、ホテルに残された多くの人々が犠牲になってしまうのだ。
同様に走る救出班のウィンクルム達と共に、ひたすらホテルを目指して川沿いを駆ける。
「おい、アレ……!」
一人が声を上げて川の向こうを指差した。
「あれは……オーガ!」
川の向こうに、ホテルを目指して進行するオーガ軍の姿がある。
「畜生、行かせるかよ!」
一行は速度を上げて、ホテルまでの道をひたすら走った。
間一髪、ホテルに辿り着く前に、オーガ軍を迎え撃つ事に成功したウィンクルム達は、戦闘を開始する。
「影君、お願いします!」
「ここから先は……通行止めだぜ!」
天空天使の指示で、天空影がシノビ特有の素早い動きでオーガ達を翻弄した。
「そうそう、オーガ相手だからトランスしなきゃだね♪」
「オーガ相手だから仕方ないか……」
天原 秋乃とイチカ・ククルも、トランス状態となると、囮となるべく派手に動き始める。
栗花落 雨佳もまた、決意の眼差しでオーガと対峙した。
(君が優しいのは知ってるよ)
隣に居るパートナー、アルヴァード=ヴィスナーに心で話し掛けた。
自分のために、この任務を選んだ。それが分かるから。
(君の優しさに免じて、ホテルに向かうオーガは必ず殲滅させよう)
「僕が気を引くから、一撃で、仕留めて」
凛と響く雨佳の言葉に、アルヴァードは力強く頷き、杖に魔力を集中させる。
(ギルティとの接触で顕現した雨佳を……今、ギルティに会わせる訳にはいかない)
雨佳がオーガを集めるのを確認し、アルヴァードは強烈なエナジー弾をオーガ達へ叩き込んだ。
(こいつ等がオーガかよ!?)
遥 宏樹は、初めてみるオーガに全身の筋肉が震えるのを感じた。
「油断出来ねぇな!」
パンッと両頬を叩いて気合を入れて、パートナーの月都を見遣る。
「月都? 救出作業が優先だからな?」
放っておくと戦いに行きそうな彼に、先手を打って声を掛けておく。
月都は油断なく構えながらも、頷いて彼に従うのだった。
「皆さん、どうか信じて」
ホテルに取り残された人達へ、羽瀬川 千代は真摯にそう告げた。
「皆さんの祈りは、俺達の力になるから」
真剣な心の篭った呼び掛けに、避難者達は頷いて同意する。
「さぁ、行きましょう!」
明るい声で促すと、パートナーのラセルタ=ブラドッツと共に避難者達を誘導し、ホテルの外へと向かった。
ホテルの外は乱戦状態だった。
ホテルから出て来た人々を見て、濁った目を血走らせたオーガ達が吠える。
「皆さん、大丈夫です!」
千代は大きく振りかぶって、オーガ達へ向け爆竹を投げ付けた。
雨佳や宏樹達も直ぐにフォローへ入る。
「今の内に行け!」
ラセルタも攻撃に加わり、オーガ達を足止めした。
千代達は避難者達を庇いながら脱出する。
避難者達の脱出を確認すると、ウィンクルム達は一気にオーガ達を殲滅した。
こうして、ホテルでの戦いは、一般人に犠牲を出す事なく、ウィンクルム達の勝利に終わったのだった。
「包帯が足りません!」
「止血剤は何所?」
「軽傷の人は、こっちに!」
一方、炊き出し班には、次々と負傷者が運ばれてきていた。
救出班が出発した直後に、正面攻撃部隊がオーガ部隊と衝突したのだが、数の上で劣るウィンクルム軍は劣勢。
予想の5倍も怪我人が担ぎ込まれて来る事態となっていた。
神崎翔太は、懸命に怪我人の治療に当たっていた。
「大丈夫、かすり傷だ」
一人一人の表情や想いを確認しながら、常に笑顔で、安心できる言葉を心掛ける。
「記録を付けておくぜ」
その隣で、翔太のパートナーのファル・クリスタは、怪我の状態や会話の内容をメモに取っていた。
クレメンス・ヴァイスもまた、医学の知識を活かして、怪我人の診察を行っている
怪我の程度を識別し、トリアージタグの代わりに色付き木綿糸を付け、治療の順番を決めていった。
「貴方は先に治療を。貴方は少し我慢して」
「よっし、じゃあ、運びますよ!」
クレメンスのパートナー、アレクサンドル・リシャールは、識別済の怪我人を急いで治療場へ搬送し、治療の手伝いをしている。
(……初めてのお仕事がこれなんて……怖いよ)
薊 雅は震える手で、負傷したウィンクルム達に包帯を巻いていた。
そんな彼を横目に、薊 俚も傷口の消毒を手伝う。
(初めての戦いで、ぼく達まだまだ見習いで……戦いにも出た事がないもんねー)
仕方ないかと俚は思う。
(頑張ろうね、雅)
まだ自分達に出来る事は少ないけれど、出来る事を全力で。
そんな想いに突き動かされ、二人は動いていた。
「うん、しっかり止血しておいて」
木之下若葉は、怪我人治療の指示を出していた。
医学の知識を持つ若葉が適切な指示を与える事で、混乱が避けられ、正しい治療が出来る。
「大丈夫ですからね」
若葉の傍らでは、『清浄のオーブ』を借りたアクア・グレイが、瘴気に汚染された人々の治療を行っていた。
暗い空から鈍色の雨が落ちる頃。
怪我人はなおも増加の一途を辿っている。
少しでも前線のウィンクルム達に元気を取り戻して貰おうと、厨房では食事の準備に追われていた。
野菜スープ、おにぎり、ホットサンド。
ゼク=ファルを筆頭に、料理が得意なウィンクルム達が次々と運ぶ料理を作り上げている。
その間、柊崎 直香は、メモを片手に、残された物資の在庫把握に歩き回っていた。
適切な在庫を把握しておかないと、食料や医療品が底を尽きてしまったら、何も出来なくなる。
料理が準備出来ると、それを運ぶべく食糧輸送班が組織された。
戦いの最前線に居る仲間達へ遅い夕食を届けに向かう。
しかし、ウィンクルム達に力を付けさせる行為を、オーガ達もただ黙ってみている筈がなかった。
食糧輸送班は、オーガ達に執拗に狙われることとなったのだ。
「ゼク、死守だよ」
トランス状態になり、直香がゼクにそう告げる。
「当たり前だ」
ゼクは眼差し強くオーガ達へと対峙した。
食糧輸送班の奮闘で、深手を追いながらも無事に前線へ食事を届ける事が出来、戦うウィンクルム達に力を与えたのだった。
冷たい雨が降り止み、少しだが星が確認出来るようになった頃、状態が動いた。
ルミノックス内部での戦闘に移行し、ルミノックス内部に捕らえられていた人達が救出されたのだ。
彼らは皆、瘴気にあてられ重体の状態だった。
「今治療しますからね!」
ウィンクルム達は『清浄のオーブ』を使用し、彼らの治療に当たる。
しかし、被害者は数千人にも増え、最早彼らの力だけではどうしようもない状況となった。
このままでは、明日の朝まで持たず、この数千人が皆命を落とす事になる。
被害者達を元気付けながら、ウィンクルム達はひたすら奇跡を祈った。
どれだけ時間が経ったのか。
このまま、どうしようもないのか。
ウィンクルム達が、重苦しい絶望に押し潰されそうになった時、その知らせは届いた。
『正面攻撃部隊と隠密偵察部隊が、ボッカを撃退した。
ルミノックスを復旧する事が出来れば、皆を救える。』
ウィンクルム達は疲労した身体を奮い立たせ、月の道を通ってルミノックスへ向かった。
直ぐ様、ボッカによって狂わされていた温泉の源泉を、『清浄のオーブ』で清浄化する作業を開始する。
「カズキ、捕まって」
精神力を使い過ぎて、ふらつく大槻 一輝の肩をガロン・エンヴィニオが支える。
「ガロン、俺はいいから……源泉を……」
この復旧が成功しない限り、人々の命は救えないのだ。
倒れそうな身体をお互いに支え合い、ウィンクルム達は『清浄のオーブ』へ全ての精神力を注ぎ込んだ。
まるで濁流が清流へ姿を変えるように。
清らかな湯が湧き出るのに、ウィンクルム達は互いの顔を見遣って笑った。
そして、精神力を使い果たした彼らは、その場へ倒れ込んだのだった。
ウィンクルム達の決死の復旧によって、ルミノックスは本来の姿を取り戻した。
瘴気にあてられた人々は、ルミノックスに運び込まれ、その聖なる温泉の力で瘴気を取り除く事に成功する。
数千人の命が、すべて救われた瞬間だった。
本隊を影で支えた支援部隊の活躍が無ければ、人々は救えなかっただろう。
人々は深くウィンクルム達へ感謝したのだった。
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