リザルトノベル
●正面攻撃部隊 執筆:雪花菜 凛 マスター
夕暮れの朱色が、分厚い雲に覆われている。
ウィンクルム達は疲弊していた。
オーガの大群とウィンクルム達は正面から対峙していたが、別働隊のオーガを叩くために別部隊を派遣するしかなかった。
結果、更に数の上で劣勢となったウィンクルム達は、苦戦を強いられていたのだ。
「負傷者は後ろへ!」
セイリュー・グラシアは剣で敵の攻撃を振り払ってから、負傷者の肩を支える。
後方では、彼のパートナーであるラキア・ジェイドバインが、【サンクチュアリⅡ】を展開し、皆を必死に癒していた。
「まだやれるよ!」
ラキアが励ますように声を掛けると、ヴァレリアーノ・アレンスキーはしっかりと頷いた。
パートナのアレクサンドルもまた、セイリューに礼を言い前を見据える。
「負けて堪るか……!!」
(このままじゃ、世界があぶねぇ!)
高原 晃司は、渾身の力を込めて剣を振るう。
後ろでは、晃司のパートナー、アイン=ストレイフが銃を構え、スナイピングでオーガの頭を狙い奮戦していた。
「!? 皆、下がれッ!! 魔法だッ!!」
晃司の声が響くと同時に、前方から圧倒的な魔力がウィンクルム達を襲う。
オーガの長距離魔法攻撃。
広範囲に放たれた魔法で、前衛のウィンクルム達は吹き飛ばされた。
「くそぉ……!」
更なる負傷者が後ろへ下がり、オーガ軍に押されるようにウィンクルム達はじりじりと後退していく。
雨が降り始めていた。
日が落ち、暗く湿った空気の中を、別働隊のオーガを追ってウィンクルム達は走っていた。
「木を見れば、奴が通ったか分かるかもしれない」
叶は、不自然に葉っぱが大量に散ってる木が周囲に無いかを確認しながら、オーガの姿を探す。
「居た……!」
前方に禍々しい影を見つけ、叶は周囲に目を凝らした。
降り注ぐ雨のせいか、まだこちらには気付いていないようだ。
今の内に、奴らの指揮官の位置を把握したい。
隣で、パートナーの桐華も同様に指揮官を探す。
不意に、長い嘴をもった鳥めいた頭部がこちらを向いた。ヤグアートだ。
「気付かれた……!」
初瀬=秀が、タバスコと酢の混合液が入った水風船を、敵の真ん中へと投げ付けた。
強烈な刺激臭が漂い、ヤグアート達の動きが一瞬止まる。
そこへ、イグニス=アルデバランの放った【カナリヤの囀り】のプラズマ球が炸裂した。
プラズマは炸裂四散し、更にヤグアート達の動きを縛り付ける。
そこへ、エリクシアと桐華は、同時に飛び出していた。
パートナーであるエリクシアの背中を、セイヤ・ツァーリスが祈るように見つめる。
桐華とエリクシアによるアルペジオの舞が乱舞した。
二人に呼応するように、ウィンクルム達に総攻撃が開始される。
グギィィイイイイイ!
断末魔の声を上げ、ヤグアート達が地に伏した。
「やった……!」
別働隊のオーガ達はウィンクルム達の手によって倒され、タブロスは救われたのだ。
「本隊へ合流しよう!」
休む暇なく、彼らは本隊への合流を目指し、再び走り出す。
雨が体力を奪っていく。
「魔法を撃たせないようにすれば、勝機はあります!」
アインは、銃を構えて狙いを付けた。
魔法部隊を切り崩すため、その司令官を撃つ。
全身をウロコに覆われ、爬虫類めいた頭部を持つオーガを、スコープに捉える。
頭部目掛けて引き金を引くと、オーガはその場に崩れ落ちた。
それを合図に、司令官を失い乱れる陣形に向かって、銃を持つ精霊達による一斉射撃。
オーガの魔法部隊を一掃する。
「今だ! 突撃するぞ!」
力を振り絞り、ウィンクルム達は敵軍の司令部ヤックドーラ隊へ向け、総攻撃を始めた。
「なマイキな!」
カタコトの人語で、ヤックドーラが怒りの声を上げる。
「司令官は、あそこだね!」
「道を切り開こう!」
信城いつきの言葉に、レーゲンは頷いて銃の引き金を引いた。
司令官を守ろうと殺到してくるオーガ達を、レーゲンの銃弾が乱し、いつきの小刀が斬り裂く。
「……増援だ!」
その時、反対側に味方のウィンクルム軍が現れて、オーガ達に攻撃を加え始めた。
挟み撃ちとなり、オーガ軍は逃げ道を失う。
「ば、バかナ……!」
司令官のヤックドーラが焦燥の色を隠せず、声を上げた。
「今だ!」
オーガ達の足並みが乱れた隙を付き、レーゲンの連続射撃がオーガ達を捉える。
そうして切り開かれた道を、ヴァレリアーノとアレクサンドルを先頭に、ウィンクルム達が駆け抜けた。
「お前らの相手はこっちだ!」
ヴァレリアーノ達を押し留めようと動くオーガは、セイリューの剣に阻まれる。
「はぁああああああ!!!」
ウィンクルム達の渾身の攻撃に、司令官のヤックドーラがついに倒れた。
そして、司令官を失ったオーガ達も次々に討伐され、司令部は壊滅。
オーガ軍は散り散りに敗走したのだった。
いつの間にか雨は止み、薄い雲の後ろにぼんやりと月明かりが映っている。
攻撃部隊は、ルミノックスへの扉が開かれたとの連絡を受け、一路ルミノックスへ向かった。
女神の湯から月の道を通って、ルミノックスへ到着した一行は、満身創痍の潜入部隊に合流する。
更に、ボッカを探していた部隊と合流を果たすと、その道案内で、ボッカのいる新月の湯へ足を踏み入れたのだった。
そこは、大きな鍾乳洞の部屋だった。
中央が大きな湯船になっており、月のように輝く美しい湯が満たされている。
湯気に煌めく銀髪。額にある3本の角。
悠々と湯に浸かった格好で、イヌティリ・ボッカは侵入者達を不思議そうに見た。
「なんだ!てめーら! 俺のファンか?! ……ん? なんだ、ウィンクルムかァ」
一行の顔を見渡し口の端を上げると、ボッカはゆっくりと立ち上がる。
隙だらけな動きの筈なのに、誰一人として動けない。
迂闊に動けば、一瞬で終わってしまう。
ウィンクルム達は、皆、そう悟っていた。
ボッカは、包囲するウィンクルム達をニヤニヤしながら見回した後、鼻で笑う。
「へっ……これっぽっちか。 ま、しゃねぇ……遊んでやるよ」
そう言うなり、彼は人差し指を出すと、ほんの少し動かしてみせた。
「!!?」
それを同時に眩い閃光が走り、足元の温泉が一瞬で蒸発していた。
岩肌は飴のように溶けている。
「特別さぁびすだ! 感謝しろよォ?」
哄笑と共に、ボッカの身体が2つに別れた。
そして、二人となったボッカは、それぞれ2つの部隊へ戦いを挑んで来たのである。
その力は圧倒的だった。
「甘い、甘い! はーっはっはっはっはははははァ!!」
放たれた銃弾は、ボッカの指先の動き一つで到達する前に粉砕された。
「はっはっはっ! どーした、どーしたァ!?」
斬り付ける剣も、ボッカが指先をすっと動かしただけで生じた風に、簡単に吹き飛ばされる。
「ヌルい。ヌルぅーいッ!」
魔法のエネルギー弾さえ、ボッカは掌で受け止め、握り潰した。
「なんだ、なんだァ? こんなモンか~? つまんねーなァ」
完全に遊んでいる。
ボッカは酷薄な笑みで、ウィンクルム達を眺めていた。
「準備運動にもなりゃしねェ。もう、終わっとくかァ?」
ボッカが人差し指を立てる。
あのとんでもないエネルギーの一撃が、来る。
ウィンクルム達が身構えた時。
『コケッコッコー!』
場違いなまでに明るい、鳥の鳴き声がした。
それは朝を告げる鳥の鳴き声。
人間であれば、とても身近な……あの、鶏の声。
「うわぁあああああああああ!?」
次の瞬間、ボッカの顔が恐怖に歪み、その場にしゃがみ込んで頭を抱えた。
「……え?」
思わず停止するウィンクルム達。
『コケコケコッコー!』
更に元気よく鶏が鳴く。
「やめ……やめろォ、やめろォーッ!!」
ぶんぶんと首を振り、ボッカが嫌がる。まるで子供のようだ。
今が好機!
最後の力を振り絞り、ウィンクルム達はボッカに攻撃を仕掛けた。
「おま、お前らァ! 卑怯だぞ~ッ!」
『コッコー!』
ボッカは一歩も動けずに、次々と繰り出される攻撃を受けるのみ。
「ランス!」
アキ・セイジがパートナーの名を呼び、頷いたヴェルトール・ランスが杖を構えた。
この時のため、魔法を温存していたのだ。
「これが神人と精霊の絆の力だ!」
セイジがランスの身体を支え、最大出力でエナジーがボッカへ照射される。
そこへ追い打ちとばかりに、魔法と銃弾がボッカへと降り注いだ。
「く、クソがァ……!」
満身創痍となったボッカが、よろよろと立ち上がる。
「お前ら……ぜってェ、許さねェ……! 覚えてろ!!」
歯軋りをするその身体を薄紫の霧が覆っていく。
「逃すか!!」
振り翳された剣は空を斬った。
ボッカの姿は、霞のように消えていたのだった。
「……勝った、のか?」
誰かがぽつりと呟く。
「勝ったんだ」
誰かが力強く言い、ウィンクルム達は一斉に勝利の声を上げた。
そしてその後、支援部隊の活躍により、ルミノックスはかつての姿を取り戻し、それにより何千の命が救われた。
長い長い夜が明け、朝がやって来る。
眩しいばかりの明るい太陽が、雲と空を赤く輝かせていた。
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