プロローグ
(夢だし、こんな格好ならロマンチックな展開を期待しちゃうよね)
童話かおとぎ話にでも出てくるようなかわいらしいドレスを身に纏って森の中を歩いていると、7人の小人に出会いました。
「そんなんじゃダメに決まってんだろ」
「で、でも……」
「この花どうかなー?いいにおいだよー?」
誰かにあげるプレゼントを用意しているようにも見えます。
「誰かにあげるプレゼントですか?」
声をかけると、その中のリーダーと思しき小人が答えてくれました。
「いや、えっと、プレゼントではないんですが、大切な方のために綺麗なものを集めているところです。そうだ、どうか貴女も会ってあげて下さい」
小人と一緒に行った先には、ガラスの棺に横たわる契約精霊の姿がありました。
悪い魔法使いの呪いで彼は永遠の眠りについてしまっているというのです。
「呪いは誓いの口づけを交わしたことのある女性からのキスで解けるというのですが、僕たちには何のことかわからなくて」
そういうリーダーの隣で眠そうにしていた小人が手の甲を見比べて言いました。
「その手、同じ文様だねぇ~。貴女なら解けるんじゃないかなぁ~呪い」
「本当ですか。じゃあさっそく!」
「え、あ、いや。見られながらは流石に……」
流石にまじまじと見られたままのキスは抵抗があります。
「どうしました?さあ早く!」
「えっとー。あ……はい……」
小人たちの期待に満ちた眼差しの中、目を閉じ唇にそっとキス。
「……」
「……」
ふいに強く抱きしめられ慌てて目を開けると、優しい笑顔で抱きしめてくる精霊の姿がそこにはありました。
「……おはよう」
「目覚めのキス、ありがとう」
解説
・概要
キスで精霊様の呪いを解きましょう。
キスをする場所は任意ですが、服や装飾品ではなくご本人にキスしなければ呪いは解けません。
呪いが解けた瞬間に夢は終わります。その為、目覚めた後、不自然ではない体勢や状況にこちらで調整することがございます。
例)
お二人の身長差が10㎝程度、唇へキスの場合→背伸びをしてキス。
お二人の身長差が20㎝以上、唇へキスの場合→精霊様が腰かけた状態でのキス。
・プランについて
キスをどこにするのかは必ずお書きください。書かれていない場合自動的に唇になります。
OPの2人は目覚めた後はほぼ書いておりませんが、キスをする直前まではどなた様も概ね同じになりますので、目覚めた後に重点を置かれたプランをお勧め致します。
・ジェールについて
ここに来る前に飲み物を買ったりしたので、お一人300Jr消費致しました。
ゲームマスターより
こんにちは、または初めまして。龍川那月と申します。
ロマンス系白昼夢として白雪姫ならぬ白雪王子をご用意致しました。
難易度はとても簡単に設定しておりますが、お二人の関係や神人様によっては難易度がとても高くなってしまうかもしれません。
ですが、精霊様の呪いを解くためです。頑張ってください。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
フィオナ・ローワン(クルセイド)
「夢」なのだし。 たまには…私から、大胆な行動をとっても、いいですわよね。 どちらかと言えば、いつも、受け身のことが多いですし…。 …そんな風に思ったこともありました(過去形?) まさか。夢は夢でも白昼夢だったなんて。 いや、白昼夢と言うだけではなくて。 実際に、コトに及んで(ごほごほ) じ、実行(?)していただなんて…。 これではまるで、夢遊病患者…ですね。 彼の、揶揄うような瞳が、何だか痛いです。 |
豊村 刹那(逆月)
全体的に白いのもあって、似合い過ぎてるな。 女としては複雑なような。(見つめる ええと。やっぱりく、口に……なのかな。 別のとこにして起きなかったら困るし。(そっと近づく ……やっぱ無理!(触れる寸前で口を避けてキス 覚醒後: 最近慣れて来た抱きしめられる感覚に、目を開ける。 上体を少し反らせば、逆月と目があった。 「な、何」(離れようともぞもぞ やっぱ近いんだってば!(耐えきれず目を瞑る 「わ、わざわざ起きた後にしなくても」 逆月とキスしちゃった。ううう、なにこれ恥ずかしい。いや、この体勢も恥ずかしいけど!!(初キス 「……何がだ」(薄々わかってる そういうのは言わなくていいんだよ……!(心の叫び 「顔から火が出そう」 |
水田 茉莉花(八月一日 智)
ええと…どうしよう しっかり見られてるのも恥ずかしいけど… ほづみさんにき、き、き… したことないのにしたらなに言われるかわかんないわよ!(吠える) ほら、心臓マッサージとかじゃダメ? 保育士してたときに講習受けたし、こういう時には役立つかなーって (ひきつり笑い) ダメですか、しないとダメですか…むーっ、目ぇ食いしばれぇあたしーっ! (半ば自棄っぱちで頬にキス) 痛っ ほづみさん急に立ち上がんないでください、おでこ痛いです! さ、さぁ、知りません 気のせいなんじゃないですか?夢でも見てたとか? ち、近くに顔があったのは、たまたまですよ、たーまーたーまー! えっ、やっ、顔貸せって… …こんなの口同士のキスより恥ずかしいよう |
ファルファッラ(レオナルド・グリム)
キ、キス…!?そっかキスかぁ…。 目覚める為には必要、なんだものね。そうよそのためよ! (それに…こんなことでもないとキスだなんてできないもの) 頬にキス。 ふふ!可愛い女の子からのキスよ!嬉しいでしょ! (だめだ心臓ドキドキいってる) そう、そうなの!目を覚ますためには必要だったのよ! だから私がキスしてあげたの。目が覚めないとレオが困るでしょう。お仕事もあるし、ね。 あぁ、そんなことはどうでもいいの。レオがいないと私が困るの。 ご飯も作ってもらわないといけないしお菓子も準備してほしいし…それに…一人はとっても寂しいわ…。 レオがね…一緒にいてくれないと嫌だもの。 起きて笑っててほしい。そんなレオが好きだもの。 |
星宮・あきの(レオ・ユリシーズ)
▼キス キスか…… レオ君は私に向ける自分の好意に少しずつ疑問を持ち始めてる (※EP2参照) だから今、直接唇同志は混乱させちゃうかな 無難に頬っぺたで…… ……あれ、私自身は唇でも抵抗ないのかな……? (と思いつつ結局頬にキス) ▼覚醒 あ、……おはよう?(ぎこちなく笑う) え、レオ君…… 私が、レオ君の事、好きじゃないって思ってるの? それは…… (そういう意味で好きではない、と言い当てられ言葉に詰まる) (更に一線を引いている、の言葉にいよいよ固まり) ……ああ、そうか 私の中の『誰かを愛する感情』が…… もう、壊れてしまっているんだ あの日から…… ごめん、……ごめんね (泣きたいのに泣けない、そんな表情をして、身を委ね) |
●夢違い(フィオナ・ローワン&クルセイド 編)
(『夢』なのだし。たまには……私から、大胆な行動をとっても、いいですわよね)
フィオナ・ローワンは心の中でそう呟く。
彼女の精霊クルセイドがSっ気が強い性質であることも影響してか、フィオナはどちらかというと受け身であることが多い。しかし、そんな彼は目の前で深い眠りにつきフィオナからの口づけでなければ目覚めない。しかもこれが夢であることは事前に分かっている。
「…そんな風に思ったこともありました」
揶揄う様な瑠璃色の瞳がぐさぐさとフィオナに刺さる。夢であることは分かっていた。
(でも、まさか。夢は夢でも白昼夢だったなんて)
白昼夢。夢という文字は入っているが、その実際は夢を見ているような非現実的な空想である。しかも、
(白昼夢と言うだけではなくて。実際に、コトに及んでもといじ、実行していただなんて……)
夢が終わった時、一番最初に見たのは今も続くクルセイドの揶揄う様な視線だった。フィヨルネイジャから漏れている夢なのだから彼も同じ夢を見ていたのだが、夢の中でも彼は眠っていただけ。事を起こしたのは全てフィオナである。
「これではまるで、夢遊病患者……ですね」
フィオナはがっくりと肩を落とす。
(でも、あの状況ではああするしか方法はなかったはず……ですし……)
「……逆の立場だったらクルセイドはどうしていましたか?」
首を傾げるフィオナを待っていたのかにやりとクルセイドは悪い微笑みを浮かべ口を開いた。
●目覚めてほしい理由(ファルファッラ&レオナルド・グリム 編)
「キ、キス……!?」
大きな驚きを秘めた小さな声とともにファルファッラの両目にある紫水晶がガラスの棺へと向けられる。その中で眠るレオナルド・グリムの毛は色とりどりの花の中にあってもなお鮮やかに赤い。
(そっかキスかぁ……)
キス。その言葉だけでドキドキしてしまうファルファッラは小さく頭を振って数回深呼吸する。
(目覚める為には必要、なんだものね。そうよそのためよ!)
そう自分を奮い立たせるが、それでも行動に移すだけの勇気がほんの少しだけ足りない。小さく息を吐きファルファッラは自分の背中を押した。
(それに……こんなことでもないとキスだなんてできないもの)
「目を覚ました!」
「ありがと~」
小人たちの歓声がぼんやりと聞こえる中、頬の柔らかい感触を手繰るようにレオナルドの意識は浮上した。
これが、フィヨルネイジャの見せる夢か。そんなことを思いながら頭を振ってファルファッラへと焦点を合わせる。
「ん…ファル、どうかしたのか?」
「ふふ!可愛い女の子からのキスよ!嬉しいでしょ!」
「お前が俺にキス?」
さっきの感覚から言って頬だろうか?と、そっと触れた頬はいつも通りで唇の感触も温度も残ってはいなかった。
(夢の中で寝ていたのか)
不思議なことだなとも思うが先ほどの小人の声とファルファッラの話から推察するにそういうことだろうとレオナルドは考えた。
「あぁ、起こしてくれたのか?すまないな」
「そう、そうなの!目を覚ますためには必要だったのよ!だから私がキスしてあげたの。目が覚めないとレオが困るでしょう。お仕事もあるし、ね。」
ドキドキとうるさい心臓の音をかき消すように説明するファルファッラに、ふむ。とレオナルドは頷いた。
「仕事もしなきゃいかんしずっと眠っているわけにはいかん。それにお前の世話もせにゃならんからな。ん?顔が真っ赤だな……そんなに恥ずかしかったか?」
トランスの時以外は初めてだったから。というのが彼女の言葉だ。
(そうか確かにそうだな……。ふむ……美少女からのキスに感謝を示すか)
考えてみれば、保護者の立場であるレオナルドからファルファッラに日常生活でキスをすることはない。逆もまた然りだ。
「あぁ、そんなことはどうでもいいの。レオがいないと私が困るの。ご飯も作ってもらわないといけないしお菓子も準備してほしいし……それに……一人はとっても寂しいわ……」
「ファル、ありがとう」
「レオがね……一緒にいてくれないと嫌だもの。起きて笑っててほしい。そんなレオが好きだもの」
白いメッシュの入った前髪をそっとかき上げ額にキスを落とす。万華鏡のようにくるくると表情のかわる娘だから真っ赤になったりするのかもしれない。そんな風に考えていたレオナルド。だから、髪から離れる指をきゅっと握られることも、真剣な表情でそんな心からの言葉が届けられることも予想していなかった。
(ん、珍しい反応だな。そんな風に真面目に返されるとその……こちらも照れくさい)
少しだけ朱の差した頬をひとかきしてレオナルドはファルファッラの真っすぐな視線に自らの視線を絡める。
「お前にキスで起こしてもらえるのは悪いもんじゃなかったよ。今度があったらまた起こしてくれ」
●夢の終わりはレモン味(水田 茉莉花&八月一日 智 編)
ガラスの棺に横たわる茶髪の王子の前で黒髪の姫は固まっていた。
「どうしたんですか?」
以前勤務していた保育所にいた子供のように純粋な瞳が14つ不思議そうに黒髪の姫、水田 茉莉花を見つめる。
「ええと……ほら、心臓マッサージとかじゃダメ?保育士してたときに講習受けたし、こういう時には役立つかなーって」
どうかな?と微笑む頬はひくひくとひきつっている。
「心臓マッサージ?死んでないよ?眠っているだけだよ?」
妙にリアリティのある突っ込みに、ですよね……。と乾いた笑いしか出ない。しっかりと見られていることも恥ずかしいが、それよりも大きな問題を彼女は抱えていた。
「……っ!」
(ほづみさんにき、き、き……そんなのしたことないのにしたらなに言われるかわかんないわよ!)
言葉をぐっと飲みこむが誰もいなければ多分吠えていたことだろう。
「ダメですか、しないとダメですか……むーっ、目ぇ食いしばれぇあたしーっ!」
半ば自棄になりながら頬にそっと唇を寄せる。全部自棄になっていたら唇同士だったかもしれないが、半ばなので頬である。
(柔らかい……。ほっぺたに何か柔らかいのが当たった気が……)
何が当たったんだろう。そんな疑問を胸に八月一日の意識が浮上する。薄く目を開けると瞳を閉じたまま神人の顔が酷く近くにある。
(……アレ?まりかの顔?まりかのチューで目が覚めるなんておれの嫁になった夢でもなきゃ無理)
そうか、そういう夢なんだ。そう思いながらも彼女から目が離せない。こんなに近くで見ることはそうそうない。そう思いながら見ていると黒く長いまつげが揺れ瞼が開いていく。
(……目があった?本物?)
「夢じゃ無いっ!んがふっ」
「痛っ!!」
すごくいい音がして目の前に火花が散る。驚いた拍子に智が立ち上がった為お互いの額同士が熱い口づけ、もといぶつかり合ったのだ。
「ほづみさん急に立ち上がんないでください、おでこ痛いです!」
「イッテェ…まり、まりかっ、今チューしただろおれにっ、ほっぺた!夢だったらあんなやわこい感触するわけねーし第一おめーの顔が近くにねぇだろまりかっ!」
茉莉花の苦情も無視して一気にまくし立てる八月一日。
茉莉花としても覚えていない。もしくは覚えていても何も言わない。そんな展開になるとはこれっぽっちも思っていなかったが、開口一発、感触がどうだったと言うことを口にされると流石に恥ずかしい。
「さ、さぁ、知りません。気のせいなんじゃないですか?夢でも見てたとか?……ち、近くに顔があったのは、たまたまですよ、たーまーたーまー!」
素直に認めることもできないまま、真っ赤な顔で明後日の方を向く茉莉花を見て、やっぱりキスをされたのだと八月一日は確信する。
「だーもうこんクソ、ノーカンだ今のノーカン!意識ねぇ状態でやられちゃおれが損する!顔貸せまりかっ!」
「えっ、やっ、顔貸せって……」
半ば強引に振り向かせると額に触れるだけのキス。
「コレでチャラで良いよな」
あるだろうと思いながら言った言葉へ返事はない。見れば先ほどより真っ赤な顔で目を伏せている茉莉花の姿。
「おっ……」
どうしたのかと開いた口はそのまま止まってしまう。
(契約以外でキスをしたのって初めてじゃね?)
恥ずかしさでぎゅうとつむったまま目を開けられない茉莉花と彼女に背を向け跳ね上がった心拍数を抑えることに必死な八月一日。
「ああもう帰るぞバッキャロ、こんな所なんざ懲り懲りだ」
(こんなの口同士のキスより恥ずかしいよう)
●夢の果ての真実(星宮・あきの&レオ・ユリシーズ 編)
(キスか……)
小人に話を聞いた星宮・あきのは少しだけ考える。
(レオ君は私に向ける自分の好意に少しずつ疑問を持ち始めてる。だから今、直接唇同志は混乱させちゃうかな)
それなら頬っぺたが無難かな。そう結論付けて頬に唇を寄せた刹那、あきのの頭に一つの考えがよぎる。
(……あれ、私自身は唇でも抵抗ないのかな……?)
「っ!!」
レオ・ユリシーズが目が覚めて一番最初にしたのは自分から彼女を引きはがすことだった。
頬に触れる優しい感触と好意を寄せる女性の香りに何も感じないほどレオは年齢的にも精神的にも枯れていない。
「あ、……おはよう?」
そう言うあきのの笑顔は驚きのせいか少しぎこちない。
「あきのさん、好きでもない人にキスしたら駄目だよ」
目覚めのあいさつを礼儀正しくしてから、肩をつかむあたり彼の奥ゆかしさがにじみ出ている。
「え」
「ああ、でもそしたら夢は覚めなかったのかな。でもやっぱり……うう」
ちいさく口をついた彼女の言葉はレオの葛藤にかき消された。
レオが落ち着いたところで彼女は先ほどかき消えた言葉を今度は最後まで口にする。
「レオ君……私が、レオ君の事、好きじゃないって思ってるの?」
「え?いや、うん、解ってるよ。悔しいけど、あきのさんは私の事、好きじゃないでしょう『そういう意味』では」
「それは……」
好きだと告白したあの日までこの神人は何も知らないと思っていた。でもそうではなかった。何も知らず何も気が付いていない人があんなに落ち着いた態度を取るとは思えない。
彼女は自分が思っている以上にいろいろなことに気が付いている。それに気が付いたからだろうか、行き違いがないようにと確認の意味も込めてレオが口にした言葉は結果的に彼女から言葉を奪った。
数秒の間の後レオが再び口を開く。
「と言うかね、あきのさんは誰に対しても一線を引いてる気がする。深入りしないように、近づきすぎないように」
彼女に対する好意の中に覚えた違和感。それが何なのか探すうちにそう感じるようになったのだと彼の言葉は続いた。
核心を突きすぎていたのだろうその言葉たちによってあきのの頭は真っ白になってしまった。
そんな彼女を見てこれ以上言ってもいいものかとレオはほんの数秒考える。そして彼女を優しく抱きしめてから言葉を続けることを選んだ。これ以上壊れないように、あの時のように消えないように。
「あきのさんはきっとまだ『あの時』に縛られているんだ。大切なものを失いかけた、あの日に。だから、傷つかないよう『大切』を作るのを避けてる。……無理もない事だけれど」
言葉をかみしめるようにしながらレオは口を動かす。
その声からは大切だった人たちの代わりにもなれない事への悔しさが痛い程ににじみ出ている。
(……ああ、そうか。私の中の『誰かを愛する感情』が……もう、壊れてしまっているんだ。あの日から……)
回らない頭に彼の言葉がすぅーっと入ってくるのは、どこかで気がついていたからなんだと彼女は思った。ずっと目を背けていた。そういう可能性を考えないはずがないのに、これっぽっちも考えつかなかったのは、考えつかないのではなく、考えたくなかったからなのだろう。
「ごめん、……ごめんね」
泣きたいのに泣けない、そんな表情で身を委ねるあきのをレオは決して離さなかった。
●夢ではないから(豊村 刹那&逆月 編)
棺の中で瞳を閉じて横たわる逆月。その色素の薄い肌を豊村 刹那は見つめていた。
(全体的に白いのもあって、似合い過ぎてるな)
一番最初に浮かんだ率直な感想はそれだった。それはそれで女としては複雑な気もするが、感想らしい感想はそのくらいしか思い浮かばない。
彼が綺麗であることは以前から知っていることであるし、今まで何度も感じてきたことだ。今更そう感じる自分を否定する気にもならない。
(ええと。やっぱりく、口に……なのかな)
この類の物語で呪いを解くといえば唇同士を重ねるのがセオリーである。だが、
「今ここでキスをしてください」
といきなり言われて、分かりましたとすんなり出来る人がどれだけいるのだろう。
(……別のとこにして起きなかったら困るし)
そう自分に言い聞かせ深く息を吐くとゆっくりと顔を近づけていく。整った想い人の顔が視界を埋めるにつれ心臓は早くうるさくなる。
(……やっぱ無理!)
ほんの数センチ、触れる寸前まで近づいたところでぎゅうとつむった瞳。恥ずかしさで唇の着地点がほんの少し、ずれた。
上がらない瞼、動かない身体。聞こえる小人の声。
それだけで逆月は状況を理解した。それを踏まえ考えるに唇の端に触れている感触は刹那の唇なのだろう。
(ということは、もう目は開くのだな)
手を刹那に伸ばすのと瞼を持ち上げるのは同時だった。この状況で抱きしめないという選択肢は彼にはなかった。
最近少しづつではあるが慣れてきた独特の感覚に刹那は目を開けた。上体を少し起こそうとするが背中に回された腕は予想以上に力強く、反らすことしかできない。それでも逆月と目が合うには十分な距離は確保された。それでもかなり至近距離ではあるのだが。
「な、何」
(やっぱ近いんだってば!)
離れようともがくが逃がさないという意思表示なのだろうまったく腕は解けない。恥ずかしさに耐えきれなくなり目をつむる刹那に逆月の声と唇が近づく。
「刹那」
そうして触れ合った唇。
(ふむ)
いつもなら拒まれるキスを拒まれなかったことに逆月は若干の安堵を覚える。
「白雪姫なる話は、口付けるものなのだろう?」
「わ、わざわざ起きた後にしなくても」
仕事をしない逆月の表情筋とは対照的に刹那の表情筋は活発に動き戸惑い狼狽えている。
(逆月とキスしちゃった。ううう、なにこれ恥ずかしい。いや、この体勢も恥ずかしいけど!!)
それも無理はない。先ほどのキスが唇ではなかった以上、彼氏いない歴=年齢である彼女にとってはこれが本当の意味でファーストキスなのだ。
「愛らしいな」
ぽそりと精霊から言葉が漏れる。
「……何がだ」
その質問の答えは薄々わかっている。が、分かっていても聞きたくなる時が人にはある。今の彼女がちょうどそれだった。
(何が、など)
「腕の中で、朱に染まる刹那が愛らしい」
そうだろうな。と思ってはいたが言葉として耳にすると念押しをされたようで恥ずかしさも倍増する。
(そういうのは言わなくていいんだよ……!)
そんな心の叫びを飲み込み視線を下げ刹那は小さな声で言う。
「……顔から火が出そう」
彼女の反応、その全てを記憶しようとしているかのように、逆月はじっと刹那を見つめる。この不慣れな様子も、戸惑う仕草も、誰も知らないのだろう。そして、この先も、刹那の全ての初めては俺なのだと事実に僅かばかり気分が高揚するのを逆月は自覚していた。
もっと望むことも出来るだろうが、一度にたくさんではこれも夢ではないかと考えてしまう。
(だから今は、触れるだけの口付けとしよう)
「もう一度触れて良いか」
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
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マスター | 龍川 那月 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ロマンス |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 03月08日 |
出発日 | 03月16日 00:00 |
予定納品日 | 03月26日 |