プロローグ
●ころころ、と、トーフ
「きゅ!」
「きゅあー」
「きゅいっ!」
ころころころ。
チョコレートと金平糖でできたハムスター・ゆめハムは、今日も今日とてショコランドをころころ転がっていた。それも一匹ではなく、三匹でだ。ふっくらとしたフォルムとくりくりした目は大変愛らしいのだが――今はなぜか、皆一様に険しい顔をしていた。
いつもであれば、にこにこととても楽しそうなのに。転がっていくゆめハムを見たショコランドの住人は、どうしたのだろうと首を傾げた。
気になった住人は、ゆめハムの後を追ってみることにした。
と、ころころと転がるゆめハムの前を、しゃかしゃかとブリッジで歩く真っ白アニマル……オトーフが通る。オトーフの口元はだらしなく緩んでおり、機嫌が良いのだと一目でわかった。きっと好みのぱんつを覗き見ることができたのだろう。なんて不健全なアニマルだ。そんなことを考えていた住人は、オトーフの様子がおかしいことに気が付いた。
「と、とふ……っ」
ゆめハムに気付いたオトーフは、びくりと体を震わせた。ゆめハムの冷ややかな視線に気づいたからだ。
「きゅっ」
一匹が短く声をあげた。すると、ゆめハムたちは一斉に耳元の金平糖を掴み――
ぽいっ。オトーフに投げた。こつん。
「……と、とふぅっ……っ」
「きゅっ、きゅあー!」
ぽいぽいぽい。こつこつこつん。
歓喜に頬(?)を紅潮させるオトーフに、ゆめハムは攻撃を続けている。じゃま、じゃま! どきたまえ! ゆめハムはおそらく、こんな感じのことを言っている。だが、オトーフは気付かない。むしろもっと投げて! もっと強く! といわんばかりだ。
「きゅいっ、きゅー!」
「とふうううっ」
「た、大変、なんとかしなきゃ……!
ショコランドの一角ではじまった戦い(?)をなんとかすべく、住人は走り出すのだった。
●お願いします、ウィンクルムさん
「ショコランドに生息する『ゆめハム』と『オトーフ』がケンカをしているそうよ」
A.R.O.A.の女性職員は、依頼の詳細が書かれた書類を見て呆れたように続ける。
「なんでも、ゆめハムが瘴気のせいで若干気性が荒くなっているらしくて。偶然、ゆめハムの道をふさいでしまったオトーフが金平糖攻撃をうけたとか」
でも、と職員はため息をつく。
「オトーフはゆめハムの攻撃をいたく気に入ってしまったそうでね。ゆめハムの後を追っては怒られ喜び、後を追っては……という悪循環が続いているようなの」
本当に悪循環だ。説明をうけていたとある精霊はそう思う。
「報告された時点ではゆめハムが三匹、オトーフが一匹……だったんだけど、どうにもオトーフが仲間を呼んだらしくて、今はもう少し増えているかもって話よ。そこで」
職員は一度言葉を区切り、ウィンクルムを見つめた。
「ゆめハムの瘴気をはらってあげてほしいの。本来、ゆめハムはとても明るくてかわいらしい動物なの。瘴気さえはらえば、オトーフが喜ぶような何かをするとは思えないし……。あ、もしオトーフも瘴気の影響を受けているようだったら、あわせてはらってあげてほしいわ」
瘴気は一緒にいてあげたり、撫でてあげることではらえるから。
そこまで聞いたウィンクルムは、準備をするべく立ちあがった。そんな彼女たちに、職員は「そうだ」と声をあげる。
「ゆめハムに触ると悪夢が忘れられるとか、良い夢が見られるだとか、はたまた良いことが起こるだとか、いろいろ噂があるようよ」
まあ、噂の域を出ないのだけど。そういって、職員は「お願いね」と頭を下げた。
さあ、ゆめハム(とオトーフ)を救うべく、ショコランドへ出発だ!
解説
●成功条件
・ゆめハムの瘴気をはらう
●ゆめハムについて
ショコランドに生息する、チョコレートと金平糖でできた手のひらサイズのハムスターです。
楽しそうにころころ転がる姿がかわいらしく、触れると悪夢を忘れられるとか良い夢が見れるとか良いことが起こるとか、さまざまな噂が流れています。
そんなゆめハムですが、瘴気の影響でちょっと怒りっぽくなっています。現在は偶然行く先をふさいでいたオトーフに怒りを覚え、金平糖をもぎもぎしてはぽいぽい投げつけています。かみつき、ひっかき、冷たい瞳とバリエーションもあるようです。
ケンカを止めようとするウィンクルムにも抵抗するかもしれませんが、脅威ではないでしょう。かわいがって瘴気を払ってあげてください。
●オトーフについて
ブリッジでしゃかしゃか歩く、牛乳寒天でできたアニマル。
女の子のぱんつが大好き。でもゆめハムがくれる刺激も気に入ってしまった模様。
仲間を呼んでいるようで、ウィンクルム到着時には数体増えていることでしょう。
ゆめハムをとられてなるものかとウィンクルムの邪魔をしてくるかもしれません。
●場所について
飴の花が咲き誇る草原が舞台となります。
開けた場所ですので、ゆめハムとオトーフを見つけることは容易だと予想されます。
●余談
成功条件をさくっとこなせたらゆめハムorオトーフとこんなことしたいなぁ、という希望がありましたらプランに記載いただければと思います。
ゲームマスターより
お邪魔しております、櫻です。
GMアニマルからゆめハムさんとオトーフさんです! 瘴気(とオトーフ)に巻き込まれたゆめハムたちを助けてあげてください。
がっつり戦闘ではないので、初心者さん~癒されたい上級者さんまで、興味を持っていただけた際はお気軽に参加いただければと思います。
では、よろしくお願いいたします。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)
ゆめハム班 見れば見るほど謎な生き物ですよね、オトーフさん。 よくあんなに動き回れますよねぇ… オトーフにスカートの中を見られないように、下に必ずタイツやレギンズなど何か穿いていかないとです。 あの、その、頑張ってくださいね… (一部のオトーフ班から露骨に目を逸らしながら) オトーフさん達が金平糖の射程範囲外に出たらゆめハムさん達を手のひらに乗せて撫でてみますね。 ああっ、金平糖が当たって痛…くないです、あんまり。 ちっちゃいなぁ…かわいいなぁ… もしかしてここをこうやって撫でてると気持ちいいでしょうか? ほら、グレンも一緒にゆめハムさん撫でてみませんかっ …あの、ゆめハムさんをです、私じゃなくて…っ! |
吉坂心優音(五十嵐晃太)
☆オトーフ引き離し班 ☆ミニスカの上にシースルースカート・ガーターベルト ☆心情 「へぇ、オトーフなのに痛みに興奮するとかキm……じゃなくて、いい趣味してるねぇ(目が笑ってない 取り敢えず可愛いハムちゃんから引き離せば良いんだね♪」 ☆行動 ・こっちに気を向かせる為に基本冷めた目や蔑んだり目が笑ってない笑顔で見る ・隠れドS系毒舌女王様イメージ ・悪戯で晃太のスカートをスカート捲り 「わぁブリッジで動き回るの、なんかキモいね でも調教したくなるしあたし好みに育てたくなる☆」 ☆オトーフ調ky…遊ぶ(( おいでと行ったら来ても良いが待てと言ったら止まる遊び 焦らしも入れる 基本上げて落とす言葉攻め ご褒美はオトーフの好きな物 |
豊村 刹那(逆月)
服装はスーツパンツスタイル。 「逆月、あんまり触れないでやれ」 行きがけに金平糖があれば購入。皆に一袋ずつ渡す。(拾う手間を省きたい 無ければ金平糖を予め拾って貰う。 現地に着いたら、一応トランスする。 最初は引き離し班から少し離れたところで待機。 オトーフが引き離し班に向かえば、ゆめハムのところに行く。 ゆめハムの傍で屈んで、「今、苛々してるの治すから。少し我慢してくれ」 多少引っ掻かれるのは仕方無い。金平糖は少し、痛いかな。 掬い上げるように手の平に乗せ、軽く撫でる。 「逆月、それそろ止めようか」 楽しかったのか……? 「欲求に素直すぎるのも程ほどにな」(オトーフをつつく ん? 「まあ、割と簡単に作れるし。いいけど」 |
アイリス・ケリー(ラルク・ラエビガータ)
膝丈スカートに淡いピンクの下着 メイクで精霊の女装をアシスト オトーフ は 仲間 を よんだ ! オトーフB オトーフC 以下略 が あらわれた! …という状況でしょうか 私達の役目はオトーフを引き付けて、他の方々がゆめハムを撫でに行けるようにすること 落ちている金平糖を拾い上げてオトーフに投げつけ、こちらに気付かせます 「こういうのがお好きなんですか?欲しいなら、それ相応の態度を見せてくださいね」などと言ってみます 見えそうで見えないを標語に、スカートを巻き込んでしゃがみこむ オトーフのぷるぷるを堪能したいです つつきまわしましょう 都合よくラル子さんのスカートの中を見て元気をなくした子がいたらいいのですが |
メイリ・ヴィヴィアーニ(チハヤ・クロニカ)
ゆめハムさん治してあげないと。 怒ってても可愛いけど元に戻ってくれた方がもっと可愛いよね。 オトーフ対策で下にズボン着用、これでパンツ見えないはず! お姉さんたちがオトーフひきつけてくれるし、 ゆめハムさんを直すことに専念っ。 近くのゆめハムを撫でてあげる。 噛まれても、引っかかれても我慢…。 気持ちいいほうがリラックスできると思うし、 色々撫でてみて反応がよかった所を重点的に撫でてあげる。 …ゆめハム撫でたらいいことあるって本当かな? スイジュ…お兄ちゃんが元気でいるっていう情報が入ったらいいな。 瘴気払い終わったらアニマルたちと追いかけっこしたいな。 後追いとかされたら抱きしめちゃうかも。 パンツは見せないけどね! |
●到着、ショコランド
あらゆるものがお菓子でできた不思議な国・ショコランド。
甘い香りで満ちた世界にやってきたウィンクルム達は、早速ゆめハムとオトーフがいるという草原へやって来た。
「見れば見るほど謎な生き物ですよね、オトーフさん。よくあんなに動き回れますよねぇ……」
ゆめハムのまわりをシャカシャカと走り回り、何か反応をもらってはぴくぴくと喜びに震えるオトーフを見て、『ニーナ・ルアルディ』は感心したようにそう言った。彼女の相棒であり恋人である精霊『グレン・カーヴェル』は、呆れたように眉をひそめている。
『メイリ・ヴィヴィアーニ』はきゅっと両手を握り、依頼へのやる気を見せていた。
「ゆめハムさん治してあげないと。怒ってても可愛いけど元に戻ってくれた方がもっと可愛いよね」
「確かにオトーフに追いかけまわされるのは鬱陶しそう……ちょっと同情する」
今助けてやるからな、と続けたのは『チハヤ・クロニカ』だ。
目の前に広がる惨状(?)に、『アイリス・ケリー』は冷静に状況を分析する。
「オトーフ は 仲間 を よんだ !
オトーフB オトーフC 以下略 が あらわれた!
……という状況でしょうか」
オトーフはぱっと確認できるだけで六匹はいる。瘴気の影響を受けているゆめハムからすれば、たまったものではないだろう。
「アルェー、ナシテ俺ハコナイナ女装シトルンヤロカー。オカシイナァ……」
「へぇ、オトーフなのに痛みに興奮するとかキモ……じゃなくて、いい趣味してるねぇ。取り敢えず可愛いハムちゃんから引き離せば良いんだね♪」
「ト言ウカ、ミユ……サン? 目ガ笑ッテマセンデスノヨっ!?」
和やかに言う『吉坂心優音』だが、目は一切笑っていなかった。『五十嵐晃太』はびくりと体を震わせる。
「おかしい、何故リセットできない。こんな姿を晒す前に戻ることができない世界なんて、間違ってる……」
アイリスの隣では、『ラルク・ラエビガータ』がずうんと暗い空気を纏い、ぶつぶつと呟いていた。
「晃太、だったか。あの者は、女の装いをよくする」
そんな彼らに追い打ちをかけるように、『逆月』はぽつりと零した。彼の視線の先では、心優音のアシストもあり見事な美少女に変装、もとい変身した晃太がいる。以前同じ任務にあたった時も、彼は――不本意ではあるが――女性の恰好をしていた。
逆月は少し視線をずらすと、「あちらは趣味、と言っていたか」と続けた。晃太と同じように、ラルクも美しい女性へと変身していた。ラルク自身が持つ変装技術、タオルを用い本物そっくりの柔らかな胸を再現できる偽装技術、更にアイリスがメイクでサポートした彼は完全にただの美女である。
「逆月、あんまり触れないでやれ」
購入してきた金平糖を皆に渡していた『豊村 刹那』はそっと声をかけた。これ以上彼らの傷を抉ってはいけない。
彼らがあんな恰好をしているのにはわけがあるのだ。それはずばり、女の子のパンツを好むというオトーフ対策である。
今回、彼らはオトーフの習性を利用し、「オトーフをゆめハムから引き離すオトーフ班」「ゆめハムを瘴気から救うゆめハム班」という二つの班に分かれることになった。そこで、オトーフ班に名乗りをあげた神人に巻き込まれる形で女装をすることになってしまったのだ。
これ以上、ゆめハムを放置しておくわけにはいかない。ウィンクルム達は早速、己の役割を全うしようと動き出した。
『打ち払う』
念のためにと、刹那は逆月の頬にキスを贈り、トランス状態へと移行した。
「あの、その、頑張ってくださいね……」
一部のオトーフ班から露骨に目を逸らしながら、ニーナはそう激励をおくった。だが、グレンは至極楽しそうに残酷な事実を突きつける。
「ラルク――今はラル子か、と晃太。お前らの雄姿はしっかりと周りに広めておいてやるから安心してオトーフ釣って来いよ」
●ぷるぷる上機嫌なオトーフ
オトーフを引き付けて、他の方々がゆめハムを撫でに行けるようにすること。
それがオトーフ班に課せられた役割である。
アイリスは刹那からもらった金平糖を数粒手にとると、オトーフにぽいと投げつけた。
「とふっ!?」
オトーフはあらぬ方向からの刺激にびくん! と体を跳ねさせた。振り返ると、そこにはスカートを履いた素敵な女性がいるではないか!
突如現れた美女のどこか冷たさを感じさせる眼差しもたまらない、と言わんばかりに悶えている。
アイリスはそんなオトーフに「ふふ」と笑い声をあげると、
「こういうのがお好きなんですか? 欲しいなら、それ相応の態度を見せてくださいね」
と言って、スカートを巻き込んでしゃがみこんだ。オトーフの瞳がきらりと光る。膝丈のスカートは、その奥――淡いピンクのパンツを絶妙に隠していた。ちなみに、アイリスが掲げる標語は「見えそうで見えない」だ。
「と、とふぅ」
ふらふらと、オトーフはアイリスへと近づいていく。そんな仲間に気が付いたのか、もう一匹も必死にアイリスのスカートの中を覗こうと奮闘しはじめた。
一方、激励されたラルクはというと、やるからには徹底的に! と開き直っていた。
ロングスカートを押さえ、足は内股に閉じる。
「いや、見ないで!」
ほんのり頬を染め、そう言いながら金平糖を投げるラルクの動きに合わせ、背中の中ほどまである金色のウィッグがふわりと揺れる。
演技力を全力で活かし恥ずかしがるラルクに惹かれやって来たオトーフは、ふわふわと舞うスカートの中を覗こうと必死に周囲を動きはじめた。期待通りの展開に、ラルクは内心にやりと笑う。
――ゆめハムの瘴気を取り除けたら覚悟しておけよ!
ミニスカの上にシースルースカート。更にガーターベルトという最強のオプションを身につけた心優音は、笑みを浮かべていた。だが、その目は冷めきっている。
「わぁ、ブリッジで動き回るの、なんかキモいね。でも調教したくなるしあたし好みに育てたくなる☆」
愛らしい顔にそぐわない怪しい言葉に、ぴくりと二匹のオトーフが反応した。
しずしずと、けれど明らかな期待を込めて近づいてくるオトーフに、心優音はにこりとほほ笑んだ。
「調きょ、じゃなかった、遊んであげるからね♪」
ざわわっ。思わぬご褒美に、オトーフは頬を赤くした。心なしか、息も荒くなったような気がする。
普段は朗らかな笑顔を見せるが、実は隠れドS。毒舌女王様……!
「おいで、って言ったら来てもいいよ。だけど、待てって言ったら……わかるよね?」
くすりと愛らしく微笑む心優音に、オトーフはこくこくと頷いた。
繰り返される「おいで」と「待て」。なかなか彼女の元にたどり着けないオトーフは、じれったく思いつつも着々と近づく楽園に想いを馳せだらしなく頬を緩ませていた。
「そうそう、いい子だね。……あれ? 私、今何も言ってないよ? なんで勝手に動こうとしたの?」
上げて落とす。素晴らしい言葉攻めです女王様!
オトーフが涙を流さんばかりに喜んでいるすぐ傍では、晃太がふんわりとした女性らしいシルエットが愛らしいシフォンスカートを押さえながら死んだような目で――蔑んだように別のオトーフを見つめていた。それはオトーフを喜ばせようと意図したものではなく、純粋にこんな恰好をする原因となった彼らへの想いからのものだった。オレンジ色の肩ほどまで伸びた髪――ウィッグに違和感を覚えつつ、晃太は口を開く。
「こいつ食べたら美味しいのかな……んーでも不味そうだからいらないわ……。ちゅうか可愛いハムさんに何しとんねん迷惑かけんなや……っ!?」
と、足が涼しくなり晃太は咄嗟にスカートを押さえた。
捲られた!?
「~~みゆっ!」
「えへへっ」
スカート捲りをした犯人・心優音は楽しそうに笑っている。晃太は涙目になりながらも、うぐ、と言葉に詰まった。それくらい、心優音の笑顔は可愛かったのだ。オトーフが歓声をあげているのは気に入らないけれど!
「あ、そうだ。頑張ったオトーフには、オトーフ達が大好きなものを……」
「あげんでいい!」
●いらいらゆめハム
ゆめハム班は、オトーフがオトーフ班にひきつけられているのを確認してゆめハムへと近づいた。
スカートを履くことが多いメイリだが、今日はオトーフ対策のため、ズボンを着用していた。これでパンツは見えないはず!
メイリは三匹のゆめハムのうち、一匹に近づいた。そして、その小さな頭に優しく手を伸ばす。
「きゅ、きゅー!」
ゆめハムは「やめろー!」というようにぷるぷると頭を振り、かぷりと指にかみついた。
「大丈夫か?」
「うん、へーき!」
ゆめハムも加減しているのだろうか、噛まれてもそれほど痛みは感じなかった。そのまま撫で続けていると、ゆめハムは抵抗をやめ、うっとりしはじめた。
「きゅ~」
「ここが気持ちいいの?」
「きゅっ!」
どうやらこの子は、耳の裏あたりが気持ちいいようだ。メイリはそこを重点的に撫でてあげる。目を細め、もっとというように頭を押し付けるゆめハムはとてもかわいらしい。
「やっぱりコイツらの性癖理解できない……。余計手が付けられなくなるから物を投げつけられる喜び忘れるといいんだけど……」
少し離れたところでオトーフを見ていたチハヤは眉を寄せた。が、聞こえてきたメイリの小さな呟きに意識を向ける。
「……ゆめハム撫でたらいいことあるって本当かな?」
「どうだろうな。……でも、たしかに不思議な力を持っててもおかしくないような気がする」
そう返したチハヤに、メイリは「そうだよね」と笑顔を見せた。
(スイジュ……お兄ちゃんが元気でいるっていう情報が入ったらいいな)
そんな願いをこめ、メイリは一層優しくゆめハムを撫でた。
温かな指先を満喫していたゆめハムだが、メイリの様子を敏感に感じ取ったのか、じっと幼い少女の瞳を見つめ返す。
「きゅっ」
ゆめハムの短い鳴き声は、不思議と慰めるような響きがあって。
メイリは自然と、「ありがとう」と言うのだった。
ニーナはゆめハムの目線に合わせるようにしゃがみこんだ。スカートを履いているが、レギンスでばっちりオトーフ対策を施している。
「おいニーナ、お前の足元にアレいるからこっち来てろ」
……と思っていたのだが、一部のオトーフが一縷の希望を持って近づいてきてしまったらしい。グレンは足でオトーフを追い払うと、ため息をついた。
単体で見てると奇妙な生き物って感じがするだけだが……ああして群れて動き回ってるのを見るとなんつーかアレだな。
……とにかく関わりたくない。
「……ゆめハム達が瘴気関係なくキレたくなる気持ちも分からんでもない」
グレンはニーナの手のひらに乗るゆめハムに同情の目を向けた。
ゆめハムはイライラしたように、ニーナにこつんと金平糖をぶつける。
「ああっ、金平糖が当たって痛……くないです、あんまり」
そしてついでというように、グレンにもぽいっと金平糖を投げつけた。……飛距離は全然足りていなかったが。
「おいコラ金平糖投げてくるんじゃねぇ、勿体無ぇだろ、投げるくらいなら寧ろ寄越せ!」
かみつくグレンに、ニーナは「落ち着いてください」と苦笑する。
ニーナはイライラが早く治まるようにと、ゆめハムをそっと撫でた。
「ちっちゃいなぁ、かわいいなぁ……」
(小動物が小動物愛でてるようにしか見えねぇな……)
すぐ近くで、ウィンクルムが文字通り体を張ってオトーフと戦っているなんてことを感じさせない、和やかな空間だ。
「……きゅあ~」
「もしかしてここをこうやって撫でてると気持ちいいでしょうか? ほら、グレンも一緒にゆめハムさん撫でてみませんかっ」
「ん、そーっすかな」
「……あの、ゆめハムさんをです、私じゃなくて……っ!」
頬を赤くするニーナに、グレンは楽しそうな笑みを零す。
ふと、グレンはこの不思議なハムスターの噂を思い出し、「いい夢、ねぇ」と呟いた。
今が正にそんな感じだけどな。
地面に落ちている金平糖を拾う逆月と共に、スーツパンツを着こなした刹那はゆっくりゆめハムに近づいた。
「オトーフ……、変わった名だ」
オトーフ班の鉄壁のガードに焦れたらしいオトーフの一匹が近づいてこようとするも、逆月が弾く金平糖に阻まれ近づいてこれない。まあ、それはそれで嬉しそうにしているのだが。
「反応が一番良いのは、あれか」
無表情に「不可思議な」と言いながら狙いを定め、強弱をつけながらオトーフを攻撃する逆月に、刹那は「逆月、そろそろ止めようか」とストップをかけた。
逆月は刹那に頷くと、最後に一度、強めに金平糖を弾き手を止める。
(楽しかったのか……?)
疑問に思いながら、刹那はゆめハムの傍で屈んだ。怖がらせないよう優しく話しかける。
「今、苛々してるの治すから。少し我慢してくれ」
刹那は掬い上げるようにゆめハムを手のひらに乗せる。と、
「きゅいっ! きゅーっ!!」
ゆめハムにひっかかれた。だが、構わず軽く頭を撫でる。
抵抗していたゆめハムだが、すぐに気持ちよさそうに目を細めはじめた。早いな、と刹那は少し驚く。トランスしているからだろうか?
「きゅい♪ きゅい~っ」
「ふ、ご機嫌だな」
ころころと手のひらを転がりはじめたゆめハムに、刹那は頬を緩めた。
本来の彼らはこんなに明るいものなのだな。
そう思うと、瘴気がどれほどの悪影響を与えていたのかよくわかる。
ゆめハム班を見回すと、「きゅっ」「きゅあっ」と楽しそうな声が聞こえてくる。
「ゆめハムの瘴気、とやらは払えたらしい」
「そうだな」
ほっと息を吐いた刹那は、逆月が金平糖をじっと見ていることに気が付いた。先ほどまでオトーフに投げていたものだ。
「どうした?」
「余ったものは、ゆめハム……というのだったか。食すだろうか」
「あげてみるといい」
逆月は迷うように金平糖へ目を落とした。が、一粒つまむと、そっとゆめハムへ差し出す。
「きゅいっ」
ゆめハムは嬉しそうに受け取ると、もふっと頬袋へ詰め込んだ。「もうないの?」と期待をこめて見つめるゆめハムに、逆月が追加の金平糖をあげるのはすぐのことである。
●一難去った後は
ゆめハムの瘴気を無事に払えたと、刹那と逆月はオトーフ班に報告に行った。
「まったく、欲求に素直すぎるのも程ほどにな」
「とふぅ」
刹那につつかれるオトーフを見て、逆月は「刹那」と名を呼んだ。
「ん?」
「牛乳寒天とやらを、食してみたい」
呟く逆月に、刹那不思議そうに首を傾げる。
「まあ、割と簡単に作れるし。いいけど」
だが――そう言った後の逆月の表情は、どこか柔らかくて。刹那も自然と笑みを返すのだった。
「終わったみたいだな」
刹那達の報告を受けたラルクは、恥ずかしがる清純な乙女の表情から一転。足を広げ、スカートからも手を離した。
覗きたいなら覗けと言わんばかりのラルクにオトーフ達は色めきだったが――
「とふっ!?」
があん! と。オトーフはショックを受けたように硬直した。女性ではなかったのか……!
「恨むならうちの神人を恨むんだな」
「オトーフのぷるぷるを堪能したいです。都合よくラル子さんのスカートの中を見て元気をなくした子がいたらいいのですが、と思っていたらいましたね」
「アンタな……ここは『ゆめハムかわいい、きゃー!』ってなるとこじゃないのか」
ラルクの足元で固まるオトーフを、アイリスはつんつんとつつき始めた。いつも通りの彼女に、ラルクは「はあ」とため息をつく。
「変な生き物に興味を示すとこじゃないだろ……そもそもラル子言うな」
晃太はといえば、ゆめハムと戯れていた。
「きゅっ、きゅきゅっ!」
「はあ、かわええなぁ」
ころころと楽しそうなゆめハムに、晃太はささくれだった心が癒されていくのを感じていた。つっついてみたり、撫でてみたり。ゆめハムは楽しそうに声をあげている。
――いまだにオトーフを調教している心優音には、目を向けないようにして。
「というか新しい喜びを知り、結果的にパンツ見られてゆめハムに会って一番得してるのってオトーフ達じゃないのか!?」
チハヤがハッとしたようにそう叫ぶと、側転で草原を進んでいくゆめハムと遊んでいたメイリから「ちーくん、ゆめハムさんたちがびっくりしちゃうでしょ!」と注意がとんできた。
と、遊んでいるメイリ達が気になったのか、もう一匹、チハヤを追うようにやって来る。
「きゅあっ」
「きゅいっ、きゅいー!」
「かわいいー♪」
可愛らしいゆめハムに、メイリはにこにこと嬉しそうだ。力を入れすぎないよう気を付けながら、そっとゆめハム抱きしめる。
不機嫌そうな顔から一転、楽しそうにころころ転がるゆめハムを目で追いながら、チハヤは噂のことを思い出していた。続いて、時々魘されている神人の――メイリの姿が脳裏に浮かぶ。
(メイリがいい夢見れますように)
ゆめハムと楽しそうに戯れるメイリの笑い声を聞きながら、チハヤはそう願うのだった。
陽が沈み、あたりが暗闇と静寂に包まれた頃。任務にあたったウィンクルムは、例外なくぐっすりと眠っていた。楽しい夢を見ているのか、口元を緩める者もいる。
達成感からか、それともゆめハムからの感謝のしるしか。それはわからないけれど、翌日、目が覚めたウィンクルムは「今日はいいことがありそうだ」と思ったとか。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:吉坂心優音 呼び名:みゆ、心優音 |
名前:五十嵐晃太 呼び名:晃ちゃん |
名前:アイリス・ケリー 呼び名:アイリス、アンタ |
名前:ラルク・ラエビガータ 呼び名:ラルクさん |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 櫻 茅子 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | 少し |
リリース日 | 08月03日 |
出発日 | 08月10日 00:00 |
予定納品日 | 08月20日 |
参加者
- ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)
- 吉坂心優音(五十嵐晃太)
- 豊村 刹那(逆月)
- アイリス・ケリー(ラルク・ラエビガータ)
- メイリ・ヴィヴィアーニ(チハヤ・クロニカ)
会議室
-
2015/08/09-23:53
-
2015/08/09-23:52
-
2015/08/09-23:17
-
2015/08/09-23:04
お疲れ様です。
私もプラン提出済みです。
ギリギリまで確認しておりますので、細かなことでしたら変更に対応できるかと思います。
それでは、改めましてどうぞよろしくお願いいたします。 -
2015/08/09-20:22
わかった。ありがとう。
ひとまず自分の役割はわかったし、プランも提出したよ。
会議室は確認してるから、何かあれば変更できる。
気軽に言ってくれ。 -
2015/08/08-23:15
刹那さんが仰った形で良いと思います。
うっかりオトーフがゆめハム班の皆さんのところへ向かうと面倒でしょうから。
ごめんなさい、ラルクさんがいきなり眠ってしまったので代弁しますね。
「ありがとう、この趣味の為に変装・偽装・フェイク・演技を磨き上げた甲斐があった」と仰っています(血を吐いて倒れたラルクの頭を掴んで、強引にかくかく動かし)
私もオトーフを釣れるように頑張りますね -
2015/08/07-23:45
心優音:
言い忘れてましたが、ラエビガータさん、凄くお似合いです(悪気無い笑
これならオトーフも寄ってきますね♪
晃太:
…………(無言でラルクの肩をぽん -
2015/08/07-23:40
アイリスお姉ちゃんまとめありがとうね。
ラルクお兄ちゃんすっごく美人さんなの!女装が趣味でも全然大丈夫(悪気なし)
刹那お姉ちゃんの案でいいと思うよ。
あ、でもまずはゆめハムさんの攻撃ブロックしてから引き離しのほうがいいのかな?
パンツと刺激どっちを優先するんだろ…。
うちも途中でオトーフが来たらちーくんに金平糖投げて足止め頼む予定なの。
寄ってこられたら払えるものも払えなくなっちゃうもんね。
-
2015/08/07-23:16
心優音:
よし、晃ちゃんの変装スキルが火を吹くぜ!←
良かったね晃ちゃん(は・あ・と
晃太:
………_| ̄|○ -
2015/08/07-22:13
ラエビガータさん、大丈夫だ。
似合いすぎていっそ女にしか見えないから。
女装が趣味の男性でも問題無いさ。うん。(目を逸らす
ケリーさんはまとめありがとう。
とりあえず最初はちょっと離れたところで待機して、オトーフが引き離し班に寄って行ったらゆめハムに向かう。
で、いいか?
途中で邪魔しに向かって来るなら、逆月に頼んで金平糖があれば投げて足止め頼もうと思う。 -
2015/08/07-15:01
-
2015/08/07-14:59
ラルク「おい、ニーナ、刹那。そんな目でこっちを見ないでくれ、頼むから、マジで、本気で、真剣にっ!!」
ラルクさん、うるさいです。禿げますよ。
引き離し班:心優音さんペア、アイリスペア
ゆめハム班:ニーナさんペア、刹那さんペア、メイリさんペア
このような感じしょうか。
ニーナさんが仰ったように、スカートの下にレギンスをはくなどでもいいかと思います。 -
2015/08/07-11:41
じゃあ私もゆめハムの方に行くね。
普段スカートだし下に履けるもの準備しておかなきゃ。
オトーフは任せたの。
-
2015/08/07-00:49
なら私はゆめハムさん達の方に行きますね。
パンツスタイル…あった、かなぁ…(不安)
スカートでもタイツとかレギンズとか穿いておけば大丈夫でしょうか…?
何にせよ絶対に見られないようにはしていきますねっ! -
2015/08/06-23:19
希望して良いなら、私はゆめハムの方に行きたい。
オトーフの気を引く方に立候補……と、推薦もいるようだし。(一部精霊を見ながら
ゆめハムに行く場合は、オトーフが寄って来ないようにスカートは止めた方が良いってことだよな?
パンツスタイルにして行くよ。 -
2015/08/06-22:31
心優音:
遅くなってごめんねぇ(しゅん
あたしはオトーフの方へ行きたいと思ってるよー
オトーフを痛めつk…じゃなくて、スカートならよく履くし見られても気にしないからー(にこにこ
なんだったら晃ちゃんも女装させられるから遠慮なく言ってねぇ♪
晃太:
おい、おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいい!! -
2015/08/06-20:36
引き離し班、希望される方はいらっしゃいますか?
一応、私達はこちらを希望しておきますが、他の方々の希望次第では二人とも、もしくどちらか一人かはゆめハムの方へ移動するつもりです。
ゆめハムは三匹とあるので、最低でも三人が向かうと良いかと思いました。
引き離し班になる場合は私もラルクさんもスカートを、ゆめハム班の場合はパンツスタイルにしようかなと考えています。 -
2015/08/06-13:32
(餌と聞いてチハヤをチラリ)
メイリ・ヴィヴィアーニなの。
パートナーのちー君と一緒に頑張るからよろしくおねがいしますですっ!
引き離し班はスカート着用でパンツ見せつつ、戻ろうとしたオトーフには
落ちてた金平糖を投げて注意を引く感じかな?
スカートはいてくのは大丈夫よ -
2015/08/06-12:29
(ラルクさん、大変そうだなぁ…)
あ、ニーナ・ルアルディです。
あとこちらはパートナーのグレンです、よろしくお願いしますっ!
ゆめハムさんとオトーフさんをずっと一緒にしておくと
いつまでたっても場が収まりそうにないですしね。
引き離すのがいいと思います。
引き離し班は気は進みませんけどスカート必須…でしょうかね…うん… -
2015/08/06-10:45
今月の標語とモットーは『使えるものはなんでも使え』、アイリス・ケリーです。
パートナーはシノビのラルク。
女装に必要そうなスキルは大体揃えてあるので、対オトーフ用の餌としても機能してくれます(満面の笑顔)
よろしくお願いいたします。
そうですね、引き離すのが良いと思います。
引き離してすぐにゆめハムへ向かうと、すぐにオトーフの邪魔も入りそうなので…
オトーフを引き離す役とゆめハムを撫でる役に分かれると良いでしょうか。
落ちてる金平糖を拾って投げつけるのもオトーフ的にはいいかもしれません。 -
2015/08/06-10:08
私は豊村刹那。
こっちは契約した精霊の逆月。よろしく頼む。
……まずは、ゆめハムからオトーフを引き離せばいい、のか? これは。(困惑
引き離せたところで、なんとかゆめハムを撫でればいいんだとは思うけど。
なんだろうな。
スカートを穿いて行く事に抵抗を覚えるんだが。(額を押さえる
いやまあ、一応スカートは穿いていくよ。 -
2015/08/06-09:29