flower*wall~ハナノアメ~(らんちゃむ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ


「お前最近機嫌悪いな」
 
 目の前にある美味しそうなハンバーグを一口放り込もうとした手が、ぴたりと止まる。
向かいに座って頬杖をつく貴方の友人は呆れるように笑って言葉を続けた。

「よく一緒にいるアイツと何かあったんだろ?一人の時によく出くわすし察しはつくさ」
別に何もないと答える貴方の答えに、友人は肩をすくめる。
…貴方が頭の隅で思い出したのは、数日前のパートナーとの会話。
どうしてここまで怒っているのか分からないけど、納得いかないから顔を合わせづらい。

 原因も思い出せない 些細な喧嘩の延長戦。

「別に俺には関係ないけどさ、でもマズイだろ?お前達二人で一人なんだから」
言われなくても分かっていると、心の中で言い返した貴方。
くだらない意地を張っているのは分かるが、どうも自分から言うのは癪だ。
いつか自然といつも通り…そうなるといいなと心の何処かで期待している貴方に、友人が一枚の記事を差し出す。
そこには此処から少し離れた森で起きる、不思議な現象について書き記してあった。

「ここ、相棒と行って来いよ」
なんでアイツなんかと、そう言い返した貴方に友人は困ったように笑って指を差した。
記事の一文を差した指先に記してあった言葉に、胸の奥がちくりと痛んだ。

大切なあの人へ 言葉に出来ない気持ちを贈れる自然がくれた最高の場所

「何が原因か知らねえけど、そんな不細工な顔してるお前と飯食ってる俺を少しは可哀想だと思ってくれよ」
意地悪な言葉にむすっとする貴方は一言言ってやろうと顔をあげる、友人はそんな貴方を置いて立ち上がっていた。
自分で誘えないなら手伝ってやるからと付け足した友人は背を向けて貴方の前から去っていった。
…彼なりに自分達を気にかけてくれているのだろうか。
ふっと吐いた息は、とても重たく沈んでいく気がした。


「撮影、取材NG…野暮な事を一切禁じた聖域と言っても過言じゃないですね」
 友人がくれた記事と同じ記事を読む受付スタッフは、いつか恋人と行ってみたいと笑っていた。
そんなに良い場所なのだろうか、貴方はスタッフに声をかけてどんな場所なのかと問いかける。
「行った人しか分からない感動が待ってるとしか…聞いた事無いですね」
確かな情報を手に入れられなかったものの、スタッフの言葉に少しだけ興味を持った貴方。
……誘って、みようか。
そう思った貴方に、スタッフは一枚のチラシを貴方に差し出した。

「お出かけだったら贈り物とお弁当持っていくといいですよ」
言えない気持ちを素直に贈る事が出来る、特別な場所なんですから。
そう笑ったスタッフに、貴方は頭を下げて本部を後にした


「……仲直り出来るといいですね、次は二人で笑って本部に来て下さいよ」

解説

■目的
原因も思い出せない些細な喧嘩をした貴方とパートナー。
友人とスタッフのオススメもあって、不思議な聖域と呼ばれるスポットへお出かけしてきて下さい。
大切なあの人へ言葉に出来ない気持ちを贈れる最高の場所
仲直り、出来るといいですね。
・友人の協力で出かける事になったのか、精霊or神人どちらか誘ったのか教えて下さい
・仲直りのついでです、普段言いたくても言えない事を伝えてみましょう


■贈り物・お弁当について
喧嘩した相手へのちょっとしたプレゼントを持っていきませんか?
お弁当を持ってのんびり…でもいいですね。
両方にするか、片方だけにするのかはお任せします。

・お弁当
お魚のお弁当:300Jr
お肉のお弁当:350Jr
サンドイッチ:200Jr

・贈り物
花の描かれたブックカバー:500Jr
カルシウムたっぷりにぼし大袋:400Jr
小さな宝石の入ったネックレス(お好きな色指定):600Jr
お揃いのストラップ:300Jr
上品な万年筆:700Jr

大事に使って欲しい物か、それとも嫌味を込めてカルシウムたっぷり大袋を贈るか
でも結局は愛が篭ってるし、贈り物には変わりませんよね…?


■聖域について
撮影NG、取材NG…野暮な事を一切禁じた不思議な場所。
ぱっと見はただの平原ですが、ある時間とあるタイミングが重なると
そこは一瞬にして現実から切り離される不思議な世界に変貌する…とか。


そんな世界で貴方が何を伝えるのか、じっくり考えてみて下さい。

ゲームマスターより

男性側ではお久しぶりです。らんちゃむです!
撮影も取材もNG…野暮な事したらアカンよ!って事ですよね。

生きてる内に体験しないような不思議な世界を目の前にした時、恥じらいとか誤魔化しとか我慢とか…そういう感情が仕事をしなくなってしまう。そんな空間へいってらっしゃい。
あ、大丈夫ですよこっそり覗き見とかしませんから。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

信城いつき(レーゲン)

  ※いつきから誘い お魚弁当(手作り)300Jr

最近レーゲンとぎくしゃくしてる
ケンカにもなってない、俺が勝手に突っかかってる
お弁当持ってちゃんと話しよう

レーゲンが悪い訳じゃないよ。
告白した後もレーゲン…以前と全然かわらないし
その…何で、もうちょっと、色々、近づいてこないのかとか俺が勝手にもやもやしてるだけ
…やっぱり他に好きな人がいる?

だって酔った時とか俺とは違う触れ方するし、
今の家も、俺と出会う前に「誰かと暮らす為」に借りたって、近所の人から聞いたよ

じゃあ……どうぞ
触れた後中々近づかないので、自分からキス
遅いっ(でも顔真っ赤)

(景色を見て)
わぁ!(さっきまでの色々が吹き飛んで、夢中で景色を見る)



アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  ◆原因
ランスが大学入試模擬試験前に動物園に誘ってきたから

◆気持ち
ユキヒョウの出産が嬉しいのは分かるけどさ
息抜きも大切だろうけどさ
もう一寸でA判定なここが踏ん張り所なんだよ

◆説明
肉弁当2人分、御免な万年筆
友人の仲裁で来訪

◆現地にて
なんとか仲直りしたい
何かきっかけがほしいな…

不思議な空間になったら、
観察したり感動したりの会話で何時の間にか普通に話してる

手分けして周りを探索してみるか
確かに1人じゃ不慮の事態に対応できないよな
うん、2人で調べよう

付近を調べ終わったら弁当
ほら、お前の分
…ランスも持ってきたって?(呆然
⇒吹出す
⇒贈り物を見たらもう爆笑w

気持ち欄を話す
気持ちを伝え合い互いに謝ろう

「勿論だよ」



セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  オレからラキアを誘おう。
「良いトコへ行こうぜ」って。
植物好きなラキアなら森の中なら気分も落ち付くと思うし。春先だから陽気もいいし、気分転換になるじゃん。
お弁当持って行く。お肉のお弁当2人分。

森で花達見ているラキアはとても嬉しそう。
やっぱラキアは笑っている方がいいな。
森の奥までいって、お弁当食べようぜ。
普段だと食事の用意はラキアがしてくれる事が多いから、今回はオレの趣味でお弁当を選んだ!
え、お肉たっぷりだって?
それはまだ食べ盛りだし(笑。
お弁当食べながら「この間からゴメンよ」と謝ろう。
「一緒に居る時間を諍いで台無しにするのはモッタイナイと思うし」

素敵な光景見た後、花のブックカバーを贈るぜ。



アイオライト・セプテンバー(白露)
  だって、パパがあたしの大事なぱんつコレクション、勝手に洗ったんだもんーっヽ(`Д´)ノ
怒ってるの、おこなの、ぷんぷんなの
でも、パパが行きたいなら、デートしたげてもいいよ

にぼしの大袋をおやつに持ってこーっと
見晴らしのいいところで食べたいな
仕方がないから隣に座ってあげるけど、でも、パパには煮干しあげない(ぼりぼり)(サンドイッチ凝視)
ううんっ食べないもんっ
パパのこと大好きなのに、なんで喧嘩しちゃうのかなあ
ずっと一緒の仲良しでいたいのに

あのね、パパ
怒っちゃってごめんなさい
あたし、温かい紅茶をアヒルさんに入れて持ってきたから、一緒に飲む?
煮干しも全部あげる
…サンドイッチが欲しくていってるんじゃないもん



天原 秋乃(イチカ・ククル)
  お肉のお弁当:350Jr
お揃いのストラップ:300Jr

原因は思いだせないがイチカと喧嘩した
いつもなら何してもへらへらしてるはずのイチカが、今回に限ってそうじゃない
…正直このままだと気まずいので、聖域とやらに誘って出かけてみるか

道中の会話は全く弾まない…こんなんで仲直りとかできんのか?
…ちょっと不安になってきた

聖域について、その時がきたら思い切ってイチカに謝る
「イチカ、ごめん。今回は俺が悪かった…と思う。お詫びにこれ」
言いつつ、用意していたお揃いのストラップを渡す
俺は『お揃い』とかそういうの苦手なんだけど、イチカは好きそうだから

…それにしても反応鈍いな。俺から謝ったのがそんなに珍しいのかよ



●それぞれの諍い風景

 お互いから視線を逸らしたまま、アキ・セイジとヴェルトールランスは平原までやって来た。
出会ったばかりの頃なら、ささやかな言い争いくらいは日常的であったが、恋人になってからの日々は時に緊張はあってもそれは優しい時間ばかりで。
こんなにギクシャクが長引く喧嘩は久しぶりで、友人の勧めに乗って出掛けたはいいもののまだ今日になっても距離感が掴めずにいた。

(それもこれも、ランスが動物園になんて誘ってくるから……)

普段の日ならいい。
まさかランス自身の大学入試模擬試験直前に誘ってくるなんて。
でも、最近頑張っていたし気が張ってもいたみたいだし……俺も強く言いすぎたかな……
なんとか仲直りしたい。
セイジはきっかけを探すように、平原を見渡した。崖がある。

「確かあの下が聖域って言ってたよな。ちょっと、手分けして探索してみるか」
「えっと、セイジ。何かあっても危ないだろ。……2人揃っての方が」
「あ、ああ。そうだな、一人じゃ不慮の事故とかに対応出来ない、もんな。うん。2人で調べよう」

 何とか会話が繋がって安堵し合う二つの心だが、まだどこかたどたどしい。
そんな二人の上空を吹き抜ける一陣の風 ―。

**
 きっかけは本当に些細なこと。
目玉焼きにはソースか、醤油か?みたいな事だった。はず。
しかしお互いが意地を張るとどんなことでも喧嘩になると、今回しみじみ実感しているセイリュー・グラシアとラキア・ジェイドバイン。
ケンカ中でも任務が来たら行かなきゃならない。
その時に何かあったらどうしよう、という漠然とした不安をラキアはずっと抱えていた。
そんな折り、セイリューはラキアに声をかけたのだった。「良いトコへ行こうぜ」と。

(誘われて、ちょっと安心した)
(植物好きなラキアなら森の中なら気分も落ち付くと思うし。春先だから陽気もいいし、気分転換になるよな)

とっくに絡まった意地っ張りな糸は解けていたが、最後のひと押し、素直な言葉を伝え合う何かが足りない2人。
道中の森で嬉しそうに花達を見ているラキアの姿を、微笑ましく見つめるセイリュー。

(やっぱラキアは笑っている方がいいな)

普段ならさらりと口にしているであろう台詞も今は心の中。
少しでもいつも通りに戻りたい思いは同じで、当たり障りのない会話は自然と口にされる。

「花が色々と咲いてて、心が洗われるね」
「森の奥抜けた所に平原があるんだってさ。そこでお弁当食べようぜ」
「え?お弁当?」

 セイリューが?という疑問がラキアの顔に浮かんだのを見て、笑いで返す。
見てのお楽しみな!と先を進めば森を抜けた瞬間、一面緑の海が広がった。
こっそりと聞いてきた件のスポット、崖下の日当たり良い場所を見つけ、セイリューはラキアを導きながら駆け出す。
そこでお弁当タイムだ。

「普段だと食事の用意はラキアがしてくれる事が多いから、今回はオレの趣味でお弁当を選んだ!」
「……お肉たっぷりだね。っていうかほとんどお肉しかないね」
「それはほらまだ食べ盛りだし」

 いただきます♪と手を合わせてから、大きく口を開けてお肉をモグモグするセイリューの様子に、嬉しそうな表情を向けるラキア。

「セイリューってホント、美味しそうに食べるよネ」
「美味いからなホントに。ラキアとこうして、良い天気に気持ちのいい場所で食べてんだし……」

 それに、と僅か空いた間に先を促すように首を傾げるラキア。
その瞬間、二人の視界に青と緑以外の色が飛び込んだ ―。

**
(何かいつきの気に障るようなこと……しちゃったのかな……)

ここ最近、どこへ出掛けてもよそよそしさがある信城いつきの様子に、レーゲンはすぐに気付いていた。
が、決定的な原因に心当たりが無く気をもむ日々が続いていた。
当のいつきも、レーゲンの戸惑いはちゃんと感知しており、いよいよもってこのままじゃいけないと
レーゲンを誘ったのである。

(喧嘩……とも言えないよな。俺が勝手に突っかかってるだけだし。でも、ちゃんと話しよう)

確かこの辺り……だよな、と話に聞いた崖下のスポットへ着くと、まずはきっかけと思って持ってきたお弁当を広げる。

「え?いつきが用意してくれたの?」
「うん……」

 まだ少し視線を泳がせながら、それでも差し出されたお弁当の中身は、レーゲンの好きな魚類が入った具ばかりで。
それだけで、いつきがこの状況をどうにかしたいと思ってくれている気持ちが伝わり、レーゲンは微かに微笑んだ。
チラリと見上げてくる視線を受け、レーゲンは優しいきっかけを口にする。

「ねぇ、いつき。私が何か怒らせるようなことしちゃった……?」

 ぶんぶんと首を振り、いつきはやっとレーゲンと視線を合わせる。

「レ―ゲンが悪いわけじゃないよ。ただ、そのさ……」
「うん」

 レーゲンの見守ってくれる視線を受け、いつきは勇気を出して言葉にする。
 
「告白した後もレーゲン……前と全然かわらないし。その……なんで、もうちょっと、色々、近づいてこないのかとか俺が勝手にもやもやしてるだけ。
……やっぱり他に好きな人がいる?」
「いや、ちょ、ちょっと待って」

 何やら嬉しいような言葉を聞いた気がするが、あまりに後半の具体的疑問形が無視できなすぎた。
以前から時折いつきとすれ違っているような違和感を感じてはいたが、これか!

「ねぇ、前から気になってたんだけど『他に好きな人がいる』はどこから出てきたの?」
「だって酔った時とか俺とは違う触れ方するし、今の家も、俺と出会う前に『誰かと暮らす為』に借りたって、近所の人から聞いたよ」
(……それ、記憶喪失前のいつきだよ)

レーゲン、心の中で盛大に脱力する。
言いたいけど言えないこの葛藤。いつもは親切なご近所の方々が今だけ恨めしい。
雑念を振り払って、レーゲンはいつきを真っ直ぐに見据えた。

「今好きなのはいつきだけだよ。多分いつきが思ってるよりずっと、私はいつきの事が好きだ。
 大切だから、どう触れたらいいか分からないぐらいに」
「触れたいと、思ってくれてた?」
「勿論」
「だったら、そうすればいいじゃん……っ」

 途中からポカンと聞いていたいつきが、くしゃりと顔を歪ませた。
ああ、ずっと気にさせちゃってたのかと反省の思いが湧きながら、レーゲンは口を開く。

「……じゃあ、触れていい?」
「………どうぞ」

 ヤケで目を閉じたいつきだが、頬へ触れた温もりからそのまま中々動かない気がして、じりじりしてくる。
実は顔を近づけていたレーゲンなのだが。

「もっと近づいてもい」

 許可を取ろうとしたその刹那、レーゲンの口にいつきの柔らかな唇が押し付けられた。
(あ、先越された……)

「遅いっ」

 顔を真っ赤にしながら怒るいつきが、もはや愛しくて堪らない。
面目躍如しようと伸びたレーゲンの手が、いつきの突然の歓声でピタリと止まるのだった―。

**
 原因も思い出せないような喧嘩は、日常茶飯事といえばそうなのだが、今回ばかりは勝手が違って困惑している天原 秋乃。

(いつもなら何してもへらへらしてるはずのイチカが……)

日が経てば経つ程会話が減っている気がする。
気まずさに耐え切れず、とうとう秋乃は藁にも縋る気持ちで噂に聞いた聖域とやらへパートナーを誘い出したのである。
そんな道中。
微妙な距離を保ったまま隣りを歩くイチカ・ククルも、あまり今までに無かった戸惑いに身を置いていた。

(最近気まずいせいか、何話していいのか正直迷っちゃうなあ……)

何度窺っても目の合わない秋乃へ幾度目かの視線を横目でやって。
秋乃の、真っ直ぐ自分に感情をぶつけてくる表情は好きだけれど、こんなに関係がこじれたのは決して本意ではなかった。

(……やっぱり秋乃怒ってるよなあ……)
(会話が全く弾まない……こんなんで仲直りとかできんのか?……ちょっと不安になってきた)

 それぞれがそれぞれのタイミングで、ハァ……こっそり溜息をつく。
実は互いが相手が怒ったままだ、と誤解した状態故のすれ違いなのだが。
双方共その思いがどんどん深刻化して、収拾がつかなくなってしまったようである。
ほぼノー会話なまま、気付けば目的とする場所についてしまった。

(なんだここでどうすればいいんだっ?……いや謝罪だ、ここは男らしく切り出せ俺……)

自分に連れて来られるがまま、それでも文句も言わずついてきてくれたイチカへ、勢いよく振り返った秋乃。
その時、二人の視界に彩が突如生まれる ―。

**
「だって、パパがあたしの大事なぱんつコレクション、勝手に洗ったんだもんーっ」

『ヽ(`Д´)ノ』な顔でとある路上をさっさか歩くアイオライト・セプテンバー。
白露が数メートル後ろから控えめについて行きながら、しかし自らの言い分はしっかり呟く。

「ぱんつは普通洗うものじゃないですか……」
「女の子の宝物を黙って触ったらいけないんだもん!」

 怒ってるの、おこなの、ぷんぷんなの、と全く振り返ることなく表情すら此方に見せない様子に白露は困って思案する。

(はぁ……本気で拗ねてるみたいですし、ここはやはり……)

「アイ、私と聖域へ行きませんか?」

 突然の提案に振り返らないものの足をピタリと止めたアイオライト。
少しホッとしながら、白露は素敵なピクニック場所を聞きまして、と説明した。
白露の話を一通り聞いてもまだ顔を向けないアイオライトの背中に、気持ち大げさにしょんぼりした声色が放たれる。

「イヤ、ですか?……私がアイと行きたかったのですが……」
「パパがどーしても行きたいなら、デートしたげてもいいよ」

 大人的演技かはたまたちょっと素のへこみだったかは本人のみぞ知るだが。
とりあえずこうして、まずはアイオライトを誘うことに成功した白露なのであった。

お出かけ日和な晴天日。目的地である平原に到着すれば、一番平原が見渡せそうな座れる場所をキョロキョロ探すアイオライトに、
件の崖下スポットを見つけた白露が手招きをする。

「『女の子』が地面に直接座ったら腰を冷やしますよ。ハンカチを敷きますから、私の隣にどうぞ」
「……仕方がないから隣に座ってあげるけど、でも、パパには煮干しあげない」

 いそいそとハンカチを引き、更にシートを広げその上にお手製サンドイッチを置く白露。
そっぽを向いてハンカチの上に腰を下ろし、おやつのお供に持ってきた大袋の中の煮干をぼりぼり食べるアイだが。
じー
視線はサンドイッチに釘付けである。
素直な反応に口元を緩ませ、続けて声をかけてみる白露。

「サンドイッチも好きなだけ食べていいですよ」
「ううんっ食べないもんっ」

 まだまだ機嫌の直らない様子に、眉を下げその小さな背中を一度見つめてから。
暫くはこの景色を楽しんで流れに身を委ねるとしましょうか……と、白露は澄んだ空を見上げた。

(パパのこと大好きなのに、なんで喧嘩しちゃうのかなあ。ずっと一緒の仲良しでいたいのに)

 アイオライトとて好きで機嫌が直らないわけではなかった。
ただ、純粋故に一度こじれた心を元に戻す方法とタイミングが掴めないだけで……―。


●心溶かす ハナノアメ

 それは崖の上に咲き誇る花畑と、稀に吹く風のイタズラで起こるささやかな奇跡の風景。
今まさに巻き起こった風に、花々たちは プツッと土から離れ空へと舞い上がる。

 ふわふわ ひらひらり

鳥の夢を見るように、花たちはそのものの姿を保ってクルクル回って降っていく。
パステルカラー纏った沢山の淡い色たちが、これから崖の下を彩るために ――

**

「うわ……」
「すげー!」

 同時に感動の声を上げるセイジとランス。
一瞬、妖精が踊っているのかと思うその光景は、意固地とか寂しさとか、そんな最後に空いていた穴を埋めるように幻想的景色を生み出す。
いつの間にか二人の間にたどたどしい雰囲気はなくなっていた。

「……ゆっくり見ながら、弁当でも食べようか」
「おう」

 どちらからともなく微笑して。
そうして、セイジが取り出した肉弁当2人分を見て、ランスが目を丸くした。

「ほら、お前の分。……どうした?」

 ランス、無言で自らが持ってきた弁当2人分をセイジの前に差し出す。
それは全く同じ肉弁当。
セイジ呆然。

「うん、正直すまんかった。頑張って2人分ずつ食べるとも」
「……ぶは!」

 真顔でランスがいただきますと食べ始めると、セイジは堪えきれず吹き出した。
ついでだ、と言わんばかりにランスはもぐもぐしながら再びセイジに何やら大袋を差し出す。

「あと、これは詫びだ。俺らカルシウム取ろうぜ」
「にぼし!?」

 またぼりぼり真顔で食べられればもうトドメで。
セイジはお腹を抱えて笑い出した。
ふわり ひらひら
花の雨は包み込む。いつもの2人の間に流れる温かな空気を。
笑い終え一息付けば、セイジは万年筆をそっとランスに手渡しながら最後にもやもやしていた思いを口にした。

「ユキヒョウの出産が嬉しいのは分かるけどさ。息抜きも大切だろうけどさ。もう一寸でA判定なここが踏ん張り所なんだよ」

 でも御免な、の優しい謝罪付き。

(ああ……本当に俺を応援してくれてるんだな)

万年筆を大事そうに受け取りながら、罪悪感と共に、ランスも応えるように言葉をかわす。

「息抜きのつもりも有ったけど……セイジが前に見たいって言ってたから誘ったんだ」
「え?」
「俺を想って厳しく言ってくれるんだってのはわかるけど、セイジの喜ぶ顔が見たかったんだ。
 ……けど御免。点数上がってきてて確かに油断は有ったかもしれない。セイジと同じ大学入りたいし頑張るよ」
「うん。頑張れ」

 なんだ。お互いにお互いを気遣い過ぎた喧嘩だったのかと。
笑い合えばぎゅっと大事なヒトの体を抱き締め合った。
温もりにすっかり心が解けた頃、ランスが口を開く。

「合格したらあらためて一緒に見に行ってくれるか?」
「勿論だよ」

 セイジの髪に飾られるように付いた淡い水色の花をさり気なく挿し直しながら、花咲くように笑うセイジにランスも微笑み返すのだった。

**
「「綺麗だ」」

 降り注ぐ花たちに重なった声。
見上げた先、殺風景な崖の岩肌にも逞しくも控えめに、点々と色を付ける花たちが今なら見える。
交わる視線に、ふ、と笑みが溢れた。
セイリューは今度ははっきりと、ラキアへ言葉を紡ぐ。

「一緒に居る時間を諍いで台無しにするのはモッタイナイと思うし。だから……」

 この間からゴメンよ、と続いた言葉に、ラキアは穏やかな気持ちで満たされるのを感じた。
ああ、やっとセイリューらしい直球になったな、なんて。

「オレも悪かったよ」

 つられるようにラキアの口から自然と出た謝罪の言葉。
それが聞ければとてもとても嬉しそうにしてから、セイリューは鞄から何かを取り出しラキアへと差し出した。

「ラキア、こういうの好きかなって思ってさ」
「え?くれるの?」

 それは花のブックカバー。
流石に少々照れくさそうに頬をかくセイリューへ優しく微笑んでから、それを受け取り浮き出た花の絵を撫でる。

「ありがとう。好きな花だ。セイリュー、この花知ってたの?」
「え?いや全然」
「だと思った」

 おかしそうに肩を揺らしたラキア。じゃあこの花の名前教えてあげるね、とセイリューへ身を寄せブックカバーの花を一つ一つ指しながら。
舞う花が落ち着いた頃、幸せそうにお弁当を食べる2人の姿があるのだった。

**
「わぁ!」
「これは……」

 目の前の幻想的な景色に、いつきはもう先程までのことが吹き飛んで、夢中で舞う花に手を伸ばし楽しそうに眺めていた。
レーゲンは花といつきを交互に見つめる。

(やっぱり笑っているいつきが好きだなぁ)

いつだって自分を幸せにしてくれるその笑顔に、背後から手を伸ばし。

「あ、レーゲン、すごいな!こ……、っっ?!」

 花を指差したままいつきは硬直した。
嬉しそうに、幸せそうに、レーゲンはいつきの口へ自身の唇を落としたのだ。
いつまでも彼が彼のままでいますように、と、小さな祈りを込めて。
調子にのって額や頬へとキスの雨を降らせるレーゲンに、照れが限界になったいつきからギブアップの叫び声が上がるのはこの数秒後……。

**
「……花?」
「わぁお。すごいな……秋乃、これを見せに連れてきてくれたの?」
「あ、あぁ……いや」

 素直に感動するイチカの横顔へ、降りる花たちから視線を移す。
なる程……うん、ちょっと落ち着いたかも。俺以外とパニクってたんだな……。
一度深呼吸し、秋乃はずいっとイチカの前へ出た。

「イチカ、ごめん。今回は俺が悪かった……と思う。お詫びにこれ」
「へ?」
「その、俺はこういうの苦手なんだけど、イチカは好きそうだったから」

 それは『お揃い』のストラップ。片方は秋乃、片方はイチカの。
瞳を丸くし、しばし秋乃の言葉を反芻中のイチカ。
恐る恐る差し出されたストラップに手を伸ばす様子に、不安混じりに秋乃が口早に言葉を繋げた。

「は、反応鈍いな。俺から謝ったのがそんなに珍しいのかよ」
「……あの……秋乃が怒ってたんじゃなかったの?」
「は?いやお前だろ?だってずっと……今日だって、全然話しかけてこなかったし……」
「ちょっと色々考えてたから口数は減ってたと思うけど……本気で怒らせたと思ったし。
 僕がそばにいると嫌かなって思ってしばらく距離とってたんだけど……」

 数秒の沈黙の間。
にやーっと嬉しそうな笑みに変わるイチカに反して、がっくり地べたに手をつく勢いでうな垂れた秋乃。

「そっかそっかー。つまり、僕と離れるのは寂しいってことだよね?秋乃がそんなに僕のことを好きでいてくれてるなんて嬉しいよ」

 しゃがみ込んでがっくりしている秋乃の頭をぽんぽんとすると、あからさまに嫌~な顔と出会ってイチカは益々笑みを深める。
あはは、と喜ぶイチカを睨みつけていた秋乃だが、いつの間にか普通の会話を交わしていることに気付き複雑そうな表情に変えた。

(話せないでいるよりまだこれがいい、と思っちまう俺……慣れって怖ぇな……)

時間と共に開き直れば、最後は持ってきたお弁当を仲良く2人で分ける。
「秋乃がお弁当?!」「悪いかよっ」「とんでもない。愛を噛み締めることにするよ」「ちげぇよ!!」
秋乃とイチカが繰り広げる通常会話に、淡い花々がくるくる彩りを添える。

(やっぱり、秋乃とはこうでなくちゃね)

そっと安堵の光がイチカの心に灯っていたのを秋乃は知らない。

**
「気持ちのいい春の日ですね」
「(ぼりぼりぼりぼり)」

 穏やかな声と煮干を噛み砕く音が響いた瞬間、二人は同時に目を見開いた。
隙間を埋めるように、腰を下ろす二人の間にもふわりひらひら舞い降りる花たち。
淡いピンクの花がクルクル回転しながら、アイの掌にも。
背中を押されるように、アイが口を開いた。

「あのね、パパ。怒っちゃってごめんなさい」

 やっと正面から見せてくれた表情に、白露は笑いかける。

「こちらこそ勝手に宝物(=ぱんつ)を洗って、すみません。今度からはちゃんとアイに許可を取ります」
「あたし、温かい紅茶をアヒルさんに入れて持ってきたから、一緒に飲む?煮干しも全部あげる」

 持参してきたアヒル型水筒、ポカポカ・アッタマールと煮干の袋をずいっとアイは差し出した。
(サ……サンドイッチが欲しくていってるんじゃないもん)
素直じゃない気持ちも素直な証拠。

(大袋の煮干しのプレゼント……いえ、アイの気持ちですしね)
難しいお年頃なコとの仲直りが出来たのだ。今はそれで充分だと言い聞かせ。

「ちゃんと全部いただきます」

 にっこり受け取った白露を確認して、やっと、美味しそうにサンドイッチへ手を伸ばすアイがいた。
その隣りでアヒルの口から紅茶を出しながら、煮干を見つめる白露の心中は。
(こっそりお味噌汁の出汁にしたら、アイはまた怒るんでしょうか)
きっと、喧嘩のたびに親子愛が深まることデショウ―。


ハナノアメの祝福を受けたウィンクルムたち。

日時はそれぞれ違ったものの、皆が一様に、帰る頃には穏やかな笑顔を浮かべ。

たまたま同じ日同じ頃に訪れた組の中には、帰路でバッタリ会って

「……見た?」「素敵な場所だったね」なんて会話も交わされていたかもしれない。


(このリザルトノベルは、蒼色クレヨンマスターが代筆いたしました。)



依頼結果:成功
MVP
名前:アキ・セイジ
呼び名:セイジ
  名前:ヴェルトール・ランス
呼び名:ランス

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 猫谷美甘  )


エピソード情報

マスター らんちゃむ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月22日
出発日 03月28日 00:00
予定納品日 04月07日

参加者

会議室


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