【灯火】煙と未来(あご マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 三日月が輝く夜空の下、今夜もバザー・イドラが目を覚ました。
賑わい始めたバザーの中、二人はふと、あるテントの前で立ち止まる。

「シーシャ……?」

 ワイン色のテントには金の房飾りが飾られ
入口の横に駆けられた看板には『シーシャあります』と書かれている。
その異国めいた言葉の響きに惹かれ、二人はテントの中へと足を踏み入れた。

 テントの中は意外に広く、ウィンクルムが5組は悠に座れるであろう。
床に直接敷かれた、テントと同じくワイン色のカーペットの上には
色ガラスでできた三角フラスコを連想させるボトルが大小様々、ずらりと並んで置かれていた。

ただし、フラスコの口に当たる部分には、仰々しい金属のバルブが取り付けられ
そのバルブから伸びた細い管の先が吸い口になっている。


「いらっしゃい。ここはシーシャ……水煙草を扱う店だよ」

 店の奥から、一人の男が顔を出した。どうやら店主のようだ。
店主曰く、シーシャとは、専用のペーストを炭で熱し出た煙を水に潜らせて吸う煙草の一種で
様々なフレーバーが楽しめる嗜好品なのだとか。


「フレーバーは、果物、花、スパイス、あとはチョコレートやコーヒーなんかもあるぜ
それからもう一つ。うちのシーシャはちょっと変わった効果があってね」

見てな、と店主が手元のパイプを一吸いし、一旦吸い込んだ煙を吐きだす、と。


宙を漂う煙の中に、二人が店主に金を払い、シーシャを購入する姿が見えた。
煙に浮かぶビジョンは、煙が解けると共に薄らぎ、やがて消えたが
目の前に現れた幻に二人はしばし言葉が出なかった。

「驚いたろ。うちのシーシャはな、煙を吐いた人の望む未来が見えるんだ
つまり、俺は今、アンタたちがこのシーシャを買ってくれればいいと思ってるってことだ
……もちろん、そのビジョン通りに事が運ぶかは、神のみぞ知る、ってやつだけどな」

 買うかい?と店主は笑ったが、すぐに思い出したように言葉を続ける。

「ああそうそう、こんなんでも一応煙草の仲間だ
お二人さん、吸う方の子はきちんと成人してる、よな?」
 

解説

●目的
煙の中に「見たい未来」が見える、不思議なシーシャを嗜みましょう。
未来予知とは違い、その人の願いを見るものなのでご注意ください。

●プラン
シーシャを吸う人……神人or精霊どちらかおひとり。
煙の中にどんな未来が見えたか、またそれに対する反応を教えてください。

吸わない人……パートナーの煙に映る未来に対する反応を教えてください。

※なお、このエピソードに関しましては、バザー・イドラの特性も鑑み、
未成年のPCも吸わない方であれば参加可能といたします。副流煙待ったなし!
吸う方はご遠慮ください。店主が捕まっちゃいます。



ゲームマスターより

お久しぶりです!ちょっと休憩してました!

EXエピソード!これで文字数に勝てる!
よろしくおねがいします!わーい!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)

 
ディエゴさんに禁煙を勧め、本人からも了承を得て煙草を隠しました
でもそれから落ち着きなく歩き回ったり、物を探すように掃除をし始めるんです
まだ4日目なのに

流石にちょっと可哀想になってきたので連れてきました

【反応】

5日目で諦めてるんじゃあないですか、どうして諦めるんですかそこで
…楽しみを取り上げたくて煙草を禁じてる訳ではないです
単純に貴方の健康を心配してるんです
もし何かあって置いていかれたらと思うと…堪らないですよ。

…ディエゴさん、両腕を出してください
ニコチンパッチです
さっきも言ったように楽しみを取り上げたいわけじゃありません…1日2本とか決めるなら吸っても良いです

え…3枚貼るんですか…。



水田 茉莉花(八月一日 智)
  アドリブ大歓迎

えっと…あ、知ってるウィンクルムがいっぱい居るわね
ねえほづみさん、ここって何の店…?
水煙草?…水って煙草になったっけ?

(店員さんから説明を聞く)
ふーん、水を通して煙草の葉を…
って、ほづみさんやってみるの?

あ、見えた…ほづみさん、背が高くなってる?
ああ、前々から言ってる
『改造してナイスミドルになる』って夢ね
でも何でタキシード姿?
…あ、あれ?隣にいるのって…ドレス姿のあたしぃ?!
えっ、ちょっと待って、何で?なんで?!

…背が伸びたほづみさんとあたしが居ました、結婚式でした
(棒読み)
ほづみさんがいつもあたしに言っている
『おれの嫁』って発言
アレって、冗談じゃ、なかったんですか?
(顔真っ赤)


出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)
  シーシャ…禁煙…
レムをチラチラ見てたら許可が出た
ちょっとだけ、吸ってみるわね

フレーバーお任せ
未来の姿
病院のベッドでマキナの赤子を抱いている自分
ドアが開き、息を切らしたレムが駆け寄ってきて
未来のあたしは彼に微笑みかけ…

きゃあああ!!(慌てて煙を払い
ち、違うの!これはその…
家族が欲しくて、それで『お母さんになりたい』って…
あたしの母ができなかった分まで、自分の子を育てたいって思ったの
父親がレムだったのは、たまたまよ!

夢を語る姿が微笑ましくてさっきの動揺が落ち着いてくる

禁煙…頑張ってみよう
レムの励ましが一番効く気がする
これってやっぱり…認めるしかない
あたし、とっくにレムのことが好きになってるんだ…



アイリス・ケリー(ラルク・ラエビガータ)
  非喫煙家、匂いも気にしない
シーシャを見るのは初めて
ラルクが自分の好みにあわせてフレーバーを選んだことに気付き、素直に感謝する
綺麗な硝子…こういう煙草もあるんですね
触るのは良くないかもしれないので、まじまじと眺めながら席に座る

煙に写っているのは…私?
自分じゃ選ばないような深い赤のワンピースを着てる事にも、
ラルクがこんな未来を望んでることにも驚く
彼を見れば、頭をがしがしと掻いてる
どうしてと問う前に、言われた理由に衝撃を受ける
…自分ではちゃんと笑っていたつもりだったんですが
ただ、ラルクさんが望むなら…善処します
言いながらも手袋越しに右手の甲を抑える
姉様と同じ笑みは…私には出来ないのですね
心中で悲嘆


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  吸わない人

羽純くんが煙草を吸う所、初めて見ます…!
お店の中も大人な雰囲気で、何だかドキドキしちゃいますっ
羽純くんが選んだフレーバーは、チョコレート
甘い物好きな彼らしいな

パイプを銜える彼の横顔にキュンとしてしまうのは何ででしょうかっ

煙の中
あれは……私?
羽純くんにカクテルを作って貰ってる…
大人な空気

ぽーっと見惚れてたら煙が消えて
ああ!もう少し見てたかった…!

羽純くんが、私との未来を見てくれた事が嬉しくって

羽純くん、有難う!
えへへ、あんな風に大人な女性になれるよう、私頑張るねっ
で、絶対羽純くんにカクテル作って貰うんだ♪

ね、チョコレート味の煙草ってどんな味なの?
いいなぁ…成人したら、私も吸ってみたい



「ねえほづみさん、ここってなんの店……?」

 八月一日 智の後に着いてワイン色のテントの内幕へと入り
水田 茉莉花は不思議そうにあたりを見回した。

「いらっしゃい。ここはシーシャ……水煙草を扱う店だよ」

「水煙草?…水って煙草になったっけ?」

「はは、面白い姉さんだな。水煙草ってのはな……」

 店主が茉莉花に丁寧に説明してやると、茉莉花はふんふんと頷きながら興味深げに説明を聞き
店のあちこちに置かれたガラスの吸引器をしげしげと眺めた。

「俺が吸うぜ!
未来が見えるなんておもしれーヤニだよなー」

「え、ほづみさんやってみるの?」

「おう、漢の嗜みってヤツだろ!」

 茉莉花の驚きは意に介さず
智はまるで新しい玩具を与えられた子供のような表情で店主の前に500Jrを差し出した。

が。

「うーん、困るね、これでも一応煙草なんだよ
坊やはもっと大きくなってから……」

 期待に満ちた表情が、智をいつも以上に幼く見せたのかもしれない。
智を未成年と勘違いしている様子の店主に、智は取り出したIDカードを必死に見せた。

「あのなー!
おれガキに見えるけど、成人してるの!」

「おお……これは悪かったな。じゃあ、煙草を吸うのはこっちの兄さんでいいんだな
じゃあ、準備が出来たら、あっちの吸引器の所で待っていてくれ」

 智の手からIDカードを受け取った店主は、頭を掻きながら悪びれずに言うと
店の奥にある吸引器の方を指差した。



 智と茉莉花が通されたのは、青みがかったガラスでできた吸引器の前だった。
銀の吸い口とバルブが、側に置かれたキャンドルの光を受けてきらきらと輝いている。

(ちょっとオシャレかも)

 異国風のその見た目は一見風変わりなランプか何かのようにも見え、
特に智の瞳とよく似た色をした青いガラスが、茉莉花は一目で気に入った。

二人が床に敷かれたカーペットの上に座ったところで
店主が専用の煙草ペーストと炭を吸引器の中に設置する。

燃やされた煙草ペーストの煙は、管を通って青いガラスのボトルに入れられた水に到達した。

「そろそろいいだろ。それでは、当店自慢のシーシャの味をゆっくり楽しんでってくれ」

 吸い方のコツを二、三伝えると、店主はひらりと手を振ってカウンターの向こうへと消えて行った。

この煙草は未来が見える煙草だ。
不用意に他人の未来を見てしまわないよう、配慮してくれているのだろう。

「よし、こうか、な?」

 手にした吸い口の金具に口を付け、智は店主に教わった通りに
体の力を抜き、リラックスしてそっと空気を吸った。

智は普段は煙草は吸わない。

し慣れない煙を吸うと言う行動に、初めは上手く吸えなかったが
しばらく繰り返しているうちに何とか煙を体に満たせるようになる。

腹式呼吸で吸い込んだ煙を時間をかけて口から少しずつ逃がしていく。
ふわりと揺蕩う紫煙の中、ぼんやりとした人影が浮かび上がって来るのが見えた。




赤い絨毯が敷かれた道の脇に、ずらりとベンチが並ぶ。
落ち着いたダークブラウンのベンチは、皆一様に同じ方向を向いており
その先には、大きなステンドグラスと白い十字架、
それから数段の階段と、その上に置かれた祭壇が見えた。

どうやらどこかのチャペルのようだ。


神父が立つ祭壇の前には、一人の男がいる。
すらりとした長身と、長い手足には白いタキシードが良く似合っていた。

そのヘッドフォンをしたようにも見える耳は、彼がマキナであることを示しており、
栗色の髪と青い瞳は、顔立ちこそ年齢を重ねた渋みを醸し出しているものの
どこかこの煙の持ち主である智に似ていた。

(お父さん?うーん、でも……)

 今の智とはあまりに違う体格に、茉莉花は一瞬血縁者かと思ったがすぐに思い直す。

この煙草の煙は希望の未来を見せるもののはずだ。
だったら、煙の中に佇む彼は、血縁者などではなく、もしかしたら……

(前々から言ってる、改造してナイスミドルになる夢を叶えたほづみさん、ってこと?)

 茉莉花がそう思った時だった。
赤い絨毯か敷かれた通路を、純白のドレスを纏った女性が嫋やかに歩いて来た。

背中しか見えないが、低めのヒールのパンプスを履いてなおすらりとした長身が印象的だ。
マーメイドラインのドレスが良く映えていて
歩いて行くにつれ、彼女の頭に薄く透ける白いヴェールが見える。
白い手袋をした手に持つウエディングブーケが幸せそうに揺れた。

彼女が階段の前まで辿り着くと、祭壇の前の智が
そっと手を伸ばして階段を上がるのをエスコートしてやる。
嬉しげに微笑んで智を見上げるその顔に、茉莉花は目を瞠った。

(あ、あれって……ドレス姿のあたしぃ!?
えっ、ちょっと待って、何で?なんで!?)

 長い髪は結い上げてこそいるが、毎日鏡で見ている顔を見間違えるはずもない。
智の隣で、幸せそうな笑みを浮かべているのは、紛れもなく茉莉花本人だった。




宙に留まっていた煙が霧散してしまっても
今見た幻の姿に驚いた茉莉花は言うべき言葉を見つけられずにいた。

「なーなー、みずたまりー、何が見えたー?」

 隣にいる智が少し冗談めかした口調で茉莉花に尋ねる。
茉莉花は何と言おうか迷ったが、感情の籠らない口調で淡々と事実を述べた。

「……背が伸びたほづみさんとあたしがいました」

「そうかそうか、身長伸びたおれが居たのか、それはいいことだ」

 茉莉花の言葉に、智は満足げに頷く。
そんな智のことをなるべく見ないようにしながら、茉莉花は言葉を続けた。

「……結婚式でした」

「……あー」

 茉莉花の言葉に、智は居心地悪そうに頭を掻いたあと
ぽつり、とその心に秘めていた思いを口にした。

「おれ、今背が低いじゃん。
高くないと嫁貰えねーって思ってるんだよ、うん。
……会社員やってるのにな、変だよな」

 やや自嘲気味に、智は笑う。

いつか改造して、ナイスミドルになるという夢の本質の片鱗が
茉莉花にも少しだけ見えた気がした。

そして、思い出すのは、智がよく言っているあの台詞だ。

「ほづみさんがいつもあたしに言っている、『おれの嫁』って発言、あれって」

 自分で言葉に出すと、余計に恥ずかしくなってしまう。
真っ赤な顔をした茉莉花が小さな声で
冗談じゃなかったんですか、と呟くと、智も釣られて頬が赤くなった。

「いやー、それなー、おれの嫁なー……」

(冗談じゃない、ようになりたい……)

 初めから、冗談というわけではない。
だが、照れてしまった智の口は、違う、とその一言が出てこないまま
二人の間で時間だけが過ぎていく。

黙りこくってしまった二人の目の前
煙草ペーストを燃やしていた炭が無くなり智は立ち上がった。

「ん、まあ、この話はまた今度だな
他の客も待ってるみたいだし、出るか」

 そう言って、智がテントの出口に向かったので茉莉花も慌てて後を追う。

ありがとうございました、という店主の声を背にテントを出たところで
二人は出石 香奈とレムレース・エーヴィヒカイトと鉢合わせた。

おう、と頬が赤いままの智が小さく挨拶をすると、レムレースが会釈で応える。
香奈は二人が出てきた店に興味を持ったようで、後から出てきた茉莉花に尋ねた。

「ここはなんのお店なの?」

「あ、ええと、シーシャっていう水煙草のお店です」

 へえ、と納得した様子の香奈に、茉莉花はぺこりとお辞儀をして歩いて行く智の後を追った。





「シーシャ……」

 もともと喫煙者である香奈は、興味津々といった表情でテントを眺めている。
だが。

「禁煙……」

 香奈は目下のところ、禁煙を宣言していた。
当然、煙草の一種であるシーシャも禁煙の対象だ。

チラリ、とレムレースの様子を伺うと、彼は少し考えてから口を開いた。

「気になるなら、一緒に入ろう。
煙草は苦手だが、いつも喫煙所の前で待つのは案外つまらないものだからな」


 レムレースの許可が出たのを良い事に、香奈は嬉しそうにテントの入口へと入って行った。




「どれにしようかしら……」

 足早にテントの中へと入って行った香奈は、レムレースがテントの中に入る頃には
紙に書かれたリストの中から煙草ペーストのフレーバーを選んでいた。
テントの中に満ちた煙草の煙に、レムレースは僅かに眉を顰めたが
香奈が店主に500Jr支払っているのを見て覚悟を決めた。



案内されたカーペットの上には、紫色のガラスと銀のバルブで出来た吸引器が置かれていた。

「綺麗な色ね。うちにも一つ欲しいかも」

「……禁煙はどうしたんだ」

 冗談よ、と笑う香奈と、訝しげに香奈を見るレムレースがカーペットの上に座ると
店主が煙草ペーストと炭を持ってきた。
シーシャを吸う準備が整ったのを見るや否や
香奈は期待に満ちた表情で吸い口を持つと、そっと口に運ぶ。

煙を体に行きわたらせるように深く吸い、じっくりと味わうように吐きだすと
二人の周りに花の香りの煙が纏わりついた。

ふわりと空中に浮かんだ煙の中に、ぼんやりと何かが浮かび上がってくる。





それは、白い床に白い壁、白い木枠の窓には、白いカーテンが揺れている部屋だった。
どうやら病院の一室のようだ。
だが、誰かが重い病気で寝込んでいるとか、死の床に着いているといった重い雰囲気は無い。

美しい花が飾られたサイドテーブルの隣、
白いベッドの上にはこれまた白い入院着に身を包んだ香奈が座っており、
その腕の中には、小さな赤ん坊が抱かれている。

耳の形状からしてマキナの男の子と思われる赤ん坊に向かって、香奈は何やら語りかけているようだ。
その表情は穏やかで、心の底から腕に抱いた子を慈しんでいる様子が見て取れた。

突然、煙の中の香奈が、何かに気が付いたように顔を上げた。

視線を辿れば、病室の外へと続くのであろう白いドアが見える。
勢いよく開かれたドアの向こう、廊下にはレムレースが立っていた。

よほど急いできたのだろう
レムレースは切れた息を整える様子もないままベッドの香奈へと駆け寄る。
嬉しげに目を細めて微笑みかける香奈の唇は、はっきりと彼の名を呼ぶように動いて……



「きゃあああああ!!」

 そこまで見たところで、耳まで真っ赤になった香奈が
宙に浮いた紫煙を無理やり手で散らした。
紫煙が散り散りになってしまったので
そこに映っていた映像もかき消されて見えなくなってしまったが、
香奈の望む未来の映像に、レムレースは硬直していた。

映像の中の自分は、今までに見たことが無いくらい嬉しそうな表情をしていた。
そして、それは香奈も同じだ。
香奈のあんなに穏やかで幸せそうな笑顔も、レムレースは未だかつて見たことが無かった。

幸せそうな香奈の腕に抱かれ笑顔を向けられていた赤ん坊はマキナだったと思いだし
そっと、レムレースは自身の耳に触れる。

指に触れた固い感触が、確かにレムレースもマキナであることを示しており
レムレースは再度夢を思い起こす。

何度考えても、夢の内容が示す応えはただひとつ。
理解するにつれ、レムレースの顔がすこしずつ赤くなっていった。

そんなレムレースの顔を見て、香奈も余計に赤くなる。

「ち、違うの!これはその……
家族が欲しくて、それで、『お母さんになりたい』って。
あたしの母ができなかった分まで、自分の子を育てたいって。
父親がレムだったのは、たまたまよ!」

「ふむ、やはりあれは俺が父親なのか」

「……あっ!」


 慌てた様子で自身の望む未来を話していく香奈。
見たことのない母親と言う存在に対する強い憧れが、あんな映像を映したのだろう。
だが、あの映像ではレムが本当に赤ん坊の父親かははっきりしていなかった。
香奈の言葉で、自身の予想が正しかったと裏付けられ、レムレースも更に赤面する。

しばし、二人の間に形容しがたい沈黙が流れる。

「ええと……そ、そうだ、俺もな、少し似た夢があってな」

 沈黙に耐え兼ね、口を開いたレムレースは心の奥底に抱いていた自身の夢を口にする。
誰かに話すのは初めてだが、香奈にならば話してもいいと思えた。

「オーガとの戦いの歴史は長い。
俺達の代だけでは終わらないかもしれない。」

 ゆっくりと低い声で語りだすレムレースの言葉に、香奈は耳を傾けた。

「だからこれまでのウィンクルムの絆と戦いを次の世代に伝えて行きたいと思っている
……まあ、それが自分の子とは限らないが」

 その落ち着いた声と、珍しく夢を語る姿になんとなく微笑ましい気分になり、
次第に慌てていた気持ちも落ち着いてきた。


一方、落ち着いてきた香奈とは裏腹に
レムレースは自身でも理解しきれない心の動きに戸惑っていた。

赤ん坊の父親が自分だと知った時、レムレースは自身でも無意識なままに
登場した父親が自分で良かったと感じていたのだ。

(何故、だろうか)

 押し黙ってしまったレムレースに、香奈はそろそろ行きましょ、と声をかける。
煙草があまり好きではない彼をシーシャを吸い終わった後まで
長居させるのはなんだか申し訳ない気がしたのだ。

二人で並んでテントの外へと出た時、
ちょうど入れ替わりに入ってきたのはハロルドとディエゴ・ルナ・クィンテロだった。




「あら、ひさしぶり、最近見なかったわね」

「……まあ、禁煙中だからだよ、結構続いてるんだ」

「あら、じゃああたしと一緒ね」

 香奈とディエゴが軽く言葉を交わす。
喫煙所仲間の香奈とディエゴだが、最近は二人とも禁煙に勤しんでいたため
自然と依頼外で顔を合わせる回数は減っていた。

仲が良さそうな様子の二人に、一瞬レムレースの眉がほんの僅かに動いたが
ハロルドだけがそれに気づき、そっとディエゴをテントへと促す。

自分たちと入れ替わりにテントに入っていくハロルドとディエゴを見送り、
香奈とレムレースは歩き出した。

「母親になりたいのなら、やはり煙草はやめた方がいい」

 歩きながら、レムレースが思い出したように香奈に話す。

「母体にも、赤ん坊にもいい影響はないからな」

 それに、と
言葉には出さず、レムレースは心の中で呟く。

(喫煙所で俺以外の男と一緒にいるのを外から見るのは
あまりいい気がしないんだ)

 香奈にはもっともらしいことを言っておきながら、実はそれが禁煙を勧める一番の理由かもしれない。
だが、それを香奈に告げる勇気は、今はまだ無かった。

自由な香奈を縛り付けるような、狭量な男だと思われたくなかったのかもしれない。
その気持ちが、友人の域を超えかけていることに、レムレースは未だ気づいていなかった。

「禁煙、頑張ってみよう」

 隣で自分に言い聞かせるように話す香奈に、頑張れ、と言葉を返す。

レムの励ましが一番効く気がする、と香奈は思った。
禁煙は辛いが、レムの励ましがあれば乗り越えられそうな気がするのだ。

(これってやっぱり……認めるしかない)

 心の奥、ずっと封印していた想いは気づかないふりなどできないほどに大きくなっている。
もはや、言い逃れはできない。

(あたし、とっくにレムのこと好きになってるんだ……)






テントに入った瞬間、ディエゴが深く息を吸ったのをハロルドは見逃さなかった。

(まだ4日目なのに)

 ディエゴの健康を心配したハロルドが、彼に禁煙を勧めたのはほんの4日ほど前。
目に入れば吸いたくなるから、とディエゴ本人も納得したうえで
ハロルドは愛飲していた煙草を隠した。……までは良かったのだが。

禁煙を始めてわずか一日ほどで、ディエゴは見違えるほど落ち着きがなくなった。


じっとしていられないのだ。


椅子から立ち上がって用も無い部屋の中を歩き回ったりし出すので
堪りかねたハロルドが、どうかしたんですかと声をかければ、なんでもない、とまた座り直す。
自分でも、無意識のうちに歩き回っているようだ。

椅子に座れば今度は、肘掛を指先でコツコツと叩いたり、
頻繁すぎるくらい頻繁に足を組み替えたり。

一日半が経過する頃には、既に片付いている室内をさらに隅々まで掃除し始めた。
まるで、何かを探すかのように。

そんな状態が四日も続き、さすがに可哀想になってきたハロルドは
立ち寄ったバザー・イドラで見かけたシーシャの店に連れてきたのだった。
少しの気晴らしになればいい、と。


ディエゴは数種類のフレーバーの中からコーヒーの香りの煙草ペーストを選んだ。
店主に500Jr支払うと黄色のガラスに、金色のバルブが付いた吸引器のある席に通された。

異国の情緒漂うその吸引器に
店主が煙草ペーストとそれを燃やすための炭をセットする。

準備が整ったのを見計らって、ディエゴは金の吸い口を手にした。
吸い口を銜え、待ちかねたとばかりに深く吸い込むと
普段吸っている紙煙草よりは弱いものの、慣れ親しんだニコチンの味が体中に沁み渡った。

まるで安堵の溜息のように、ディエゴはコーヒーの香りを味わいながら
深く吸った煙をゆっくりと吐き出す。

薄っすらと開かれたディエゴの唇から立ち上った紫煙は宙に留まり
ディエゴの望む未来を映し出した。


そこは、見慣れたA.R.O.A.の喫煙所。
周囲には、見知った顔も何人か見受けられる。

喫煙所の角、いつもの場所に陣取ったディエゴは
ポケットから愛飲しているロンリーキングダムライトの箱を取り出すと、
慣れた指先でとんとん、と箱の側面を叩くと、顔を出した一本を口に咥える。

ライターの火口を煙草の先に近づけ、吸った。

ライターから煙草の先へと移った火が、ディエゴの呼吸に合わせて明滅する。
ふう、と細く吐き出した紫煙が昇ってゆく先を、ディエゴは静かに見上げた。


……そこで、映像は終わった。
浮いていた煙が散ってしまったようだ。

「……5日目で諦めてるんじゃあないですか、どうして諦めてるんですかそこで」

「くっ……」

 ハロルドの不満げな言葉が、ディエゴの心に刺さる。

ディエゴとて、決して喫煙の習慣をいつまでも続けたいと思っているわけではない。
戦わなくてはいけない身として、いつかはこの習慣を断ち切らねばとは思っていた。
そこでハロルドの勧めるままに禁煙に乗り出したのだったが、
長く続けた習慣というものは、一朝一夕で抜け出せるものではなかったのだ。

「ままならんな」

 そう言って眉をひそめるディエゴの目を見てハロルドが語りかけた。

「……楽しみを取り上げたくて煙草を禁じてる訳ではないです。
単純に、貴方の健康を心配しているんです。
もし、何かあって置いていかれたらと思うと……堪らないですよ」

 ハロルドの、左右色の違う瞳がそっと伏せられる。

ハロルドが禁煙を勧めてくれた理由も、
この店に誘ってくれた理由もわかっているつもりだった。

だが、改めて伏せられたハロルドの瞳を見て、
ディエゴは彼女の心の奥深くに眠る寂しさや恐れを目の当たりにした気がした。

「本当に、そうだな」

「……ディエゴさん、両腕を出して下さい」

 ハロルドが、唐突に言う。
彼女の手には、禁煙用のニコチンパッチ。
それを、ディエゴの両腕に一枚ずつ貼りながら、ハロルドは続けた。

「さっきも言ったように楽しみを取り上げたいわけじゃありません
一日二本とか決めるなら、吸ってもいいです」

「吸っていい?正直、嬉しいが……」 

 条件付きでなら吸ってもいい、というハロルドの提案は、
禁煙の辛さを味わっている最中のディエゴにはとても魅力的に思えた。
だが、ずっと一緒にいれば幸せが増えるかも、と
ディエゴを信じて言ってくれたハロルドの気持ちを裏切るわけにはいかない。

「いや、禁煙はまだ頑張るよ」

 そのディエゴの言葉に、ハロルドは少し安心したように見えたが。


「……だから、パッチは三枚貼ってくれ」

 すぐに再度眉を顰めることとなった。

「え……三枚貼るんですか……」





 結局、ニコチンパッチを三枚貼ってもらったディエゴが機嫌よくテントを出ると
丁度通りかかったアイリス・ケリーとラルク・ラエビガータに出会った。

ラルクも喫煙者のため、ディエゴとは喫煙所仲間だ。
お互いに、軽く手を上げ挨拶を交わす。

「どうだった、シーシャとやら」

「ああ、なかなか珍しい風味だったな」

 ほう、とディエゴの言葉に興味をそそられた様子のラルクに
アイリスはさっさとテントの中に入って行ってしまう。
それを見たラルクは、ディエゴへの挨拶もそこそこに慌てて後を追った。

「おい、なんで勝手に入ったんだ。
アンタ、煙草なんて吸わないだろう」

「でも、ラルクさんは吸いますよね?
煙草の臭いは別に気になりませんし
私も、シーシャがどんなものか興味があるんです」

 奇遇ですね、と張り付いたような笑みを見せるアイリスの言葉が
彼女なりの気遣いだということも、近頃は随分わかるようになってきた。

シーシャは吸ってみたいと思っていたので、
ラルクはアイリスの気遣いに甘えることにし
店主に500Jr支払ってしげしげとフレーバーリストを眺める。

「聞いたことはあったが、見ると聞くでは大違いだな。
こんな煙草は、他にないだろうな」

 アイリスはフレーバーや煙草よりも、吸引器本体に興味があるようだ。
店内に飾ってある、異国風の装飾が施された吸引器の数々を興味深そうに観察していた。

「おい、先に行くぞ」

 並んだ色とりどりの吸引器の前から動かないアイリスに声をかけ
ラルクは店主に案内されるまま、先に用意されたカーペットへと向かう。

後を追ったアイリスの目に飛び込んできたのは、カーペットに座ったラルクの姿だった。

表情こそ普段と変わらないラルクは、しかし既に右手には吸い口を持って
店主が煙草ペーストと炭をセットするのを待っている。

早くシーシャを吸ってみたくて堪らないという姿に見えるのは、
おそらくアイリスだけだろう。

アイリスがカーペットの上に目を向ければ、
そこには赤いガラスと金のバルブでできた吸引器が置いてあり
店主がシーシャを吸う準備を整えているところだった。

「綺麗な硝子……こういう煙草もあるんですね」

 水の張られた赤いガラス瓶が、少しラルクの瞳の色に似ていると思いながら
触れてみたくて指を伸ばし、
ガラス製品だから触れるのは良くないかもしれないと思い直して引っ込める。

代わりに、記憶に焼きつけるようにまじまじと眺めながらラルクの隣に座ると、
ちょうど店主が準備を終えたところだったようで、
ラルクが待ってましたとばかりに金の吸い口を銜えた。

始めに、味を確かめるように軽く吸う。
ふわりと漂ったのは、花の香り。

どうやら、ラルクは煙草を吸わないアイリスの為に、
煙草のフレーバーをアイリスが好む花の香りにしてくれていたようだ。
その気遣いに、アイリスは素直に感謝した。

続いて、ラルクが今度は深く煙を吸い込む。
煙をゆっくりと吐き出せば、煙の中に一人の女性が浮かび上がった。


アイリスだ。


煙の中のアイリスは、普段の彼女なら選ばないような深い赤のワンピースを身に纏い、
やや上目づかいにこちらを見上げている。
おそらく、ラルクの視点なのだろう。

煙の中のアイリスの表情はいつもの張り付いたような笑みではなく
本当に楽しそうな、心からの笑みを浮かべていた。


煙に映った映像は、ラルクの望む未来だ。
彼が自分の心からの笑顔を望んでいることにアイリスは驚きを隠せず
隣で頭をがしがしと掻いているラルクを見る。

ラルクもまた自分が望んでいたものの正体に驚いていたが
動揺している様子をアイリスに気取られる前に話し出した。

「……うまくやってるつもりかもしれないが、本当の意味で笑ってない事には気付いてる。
そんな胡散臭い笑い方よりも、普通のがいい」

 それは、ここまでの時間を共に過ごしてきたラルクだからこそわかりえる小さな違い。
だが、ラルクにも気づかれていないと思っていたアイリスは、その言葉に衝撃を受けた。

「自分では、ちゃんと笑っていたつもりだったんですが……
ただ、ラルクさんが望むなら……善処します」

 そう言ったアイリスが、そっと手袋越しに右手の甲を抑えたことに、
動揺を隠すのが精いっぱいなラルクは気づく余裕がなかった。


(姉様と同じ笑みは……私にはできないのですね)


 そう胸の内で呟くと、アイリスはそっと目を伏せた。





お互いに口数の少ないままアイリスとラルクが連れだってテントを出ると、
興味津々といった様子でテントを覗き込む桜倉 歌菜と出会った。
側に居た月成 羽純が歌菜の手を引いて道を開けさせる。

「失礼」

 そう言って片手を上げたラルクに、羽純がこちらこそすまないと返した。
通り過ぎたアイリスから漂う花の香りに、
歌菜がより一層興味を示したのを見て、羽純は歌菜に声をかけた。

「入ってみるか?」

「えっ、いいの?」

 歌菜の大きな青い瞳がわかりやすいほどに輝き、羽純は少し笑ってしまった。
こうもわかりやすいと、誘い甲斐があるというものだ。

「いいけど、歌菜は吸うなよ。未成年だからな」

 はーい、と返事をし、嬉しそうにテントの中へと向かう歌菜の後を羽純がゆっくりと追う。
羽純がテントの中へと入ると、歌菜が物珍しそうにあたりを見回した。

「大人な雰囲気で、なんだかドキドキしちゃいますっ」

バザー・イドラは全体的に異国の雰囲気が漂う場所だったが
このシーシャの店も外の雰囲気に違わず強い異国感を醸し出していた。

特に、大人向けの嗜好品を扱う店とあって
店内には落ち着いた、それでいてどこか妖艶な雰囲気が漂っている。

羽純がカウンターに向かい500Jrを支払うと、店主が二人を空いている席へと案内した。
案内されたカーペットの上には、黒に近いグレーのガラスと、銀のバルブが付いた吸引器が置いてあった。
店主が吸引器に煙草ペーストと炭をセットし、準備が整うと羽純に吸い口を手渡した。

(羽純君が煙草を吸うところ、初めて見ます……!)

 羽純は煙草は吸うが、実家のカクテルバーで付き合いで吸う程度で、
日常的に吸っているわけではない。
そのため、歌菜に煙草を吸う姿を見せるのはこれが初めてだったせいか
歌菜は喫煙する羽純の姿を目に焼き付けんばかりに見つめた。

「歌菜」

「はいっ」

 急に名前を呼ばれ、歌菜は背筋を伸ばして返事をした。

「そんなに見つめられると緊張するんだけどな……」

「はっ、ご、ごめんなさい!つい!」

 慌てて視線を逸らした歌菜に、羽純は少し笑って、改めて銀の吸い口を口に銜えた。
そっと瞳を閉じ、大きく、深く煙を吸い込む。体中に、甘い香りの煙が行き渡る。

羽純が選んだのは、チョコレートのフレーバーの煙草だったようだ。

甘いものが好きな彼らしいな、と歌菜は逸らしていた視線を彼の方へと戻し
視界に飛び込んできた光景に歌菜は心臓を掴まれた気持ちがした。


彼の艶っぽい薄く開かれた唇に、銀のパイプが銜えられている。
そのパイプを支えるのは、同じく羽純の長い指。
いつも歌菜を優しく見守っている黒い瞳は
今は黒く長い睫毛に縁どられた色白な瞼に覆われていた。


その姿は、歌菜にとってはまるで一枚の絵画のように幻想的で美しく思えた。
見惚れていると、羽純の唇が僅かに動き、ゆっくりと煙を吐き出す。



立ち上った紫煙の中、バーカウンターが見えてきた。
羽純も目を開け、歌菜と一緒に煙の中を覗き込む。

こじんまりとはしているが清潔で洒落たバーカウンターの中
シェイカーを振っているのは羽純だ。

羽純は、シェイカーの中身をグラスに開けると
向かい側のカウンター席、スツールに座った一人の女性に差し出した。

彼女は、首から肩までの肌を惜し気もなく晒すデザインの
深い赤のカクテルドレスを身に纏っており
白い肌に、濃い色のチョーカーとイヤリングが良く映えていた。

(あれは……私?
羽純くんにカクテルを作ってもらってる……)

 羽純と談笑しながら、彼が作ったカクテルを受け取る女性の横顔は
少し大人びてはいるが、どう見ても歌菜本人だ。
優雅な仕草でグラスを持ち上げると、嫣然と微笑んでカクテルに口を付けた。
そんな彼女に、バーテンダーの羽純が優しく、だが愛を込めた視線を送る。
そのゆったりとした大人の雰囲気に、歌菜はそれが煙の中の世界だということも忘れて見入っていた。

少しずつ映像が薄れ、映像はゆっくりと消えていった。煙が散ってしまったのだ。

(俺は、こんな未来を望んでたのか……)

 自分でも想像していなかった望む未来に、羽純は少し驚いた。

そして、これを見た歌菜がどんな反応をするかが気になり、ちらりと隣を見ると
歌菜は残念そうに煙が散ってしまった空中を眺めていた。

「ああ……もう少し見てたかった……!」

 歌菜の反応に、羽純は胸を撫で下ろす。
嫌がられていたらどうしようかと、内心ひやひやしていたのだ。
羽純が自分を見ていることに気が付いた歌菜が、満面の笑みで口を開いた。

「羽純くん、ありがとう!」

「……なにが、ありがとうなんだ?」

「羽純くんが、私との未来を見てくれたことが嬉しくって」

 まさか礼を言われるとは思っていなかった羽純は、
満面の笑みで返された歌菜の言葉に胸に暖かいものが広がるのを感じた。
そんな羽純の気持ちには気づかず、歌菜は言葉をつづける。

「えへへ、あんな風に大人の女性になれるよう、私頑張るねっ!
で、絶対羽純くんにカクテル作って貰うんだ!」

  にこにこと笑う歌菜に、そうなる日もそう遠くはないような気がして羽純は目を細めた。

「ああ、楽しみにしてる」

 イイオンナになれよ、と頭を撫でてやれば、歌菜の顔がたちまち真っ赤に染まる。
その姿に、羽純は楽しげに笑った。

「そ、そうだ、羽純くん、チョコレートの煙草ってどんな味なの!?」

 歌菜が真っ赤になったまま、慌てて不自然に話題を逸らそうとするので、
羽純はまた笑ってしまいそうになるが、
せっかくだから、とシーシャをもう一吸いして味を伝えてやることにした。

「煙は滑らかで軽い味わいだな、チョコレートの香りが全身に広がるようだ」

 ゆっくりと味わって話す羽純の姿に大人を感じ、歌菜は再度見惚れてしまう。

「いいなぁ……成人したら、私も吸ってみたい」

 心の底から羨ましそうな声を出す歌菜に、羽純は笑いかけた。

「なら、歌菜が成人したら、また一緒にこよう」

 その言葉に、歌菜の動きが止まる。

なんだ、変な顔して、という羽純はきっと気づいていないのだろう。

だが、歌菜は羽純との間にできた
煙のように消えたりしない、確実な未来の約束が出来たことが嬉しくてにっこりと微笑む。

その花が咲くような笑みに、羽純も微笑みを返した。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 白金  )


( イラストレーター: 越智さゆり  )


エピソード情報

マスター あご
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ EX
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,500ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月08日
出発日 03月13日 00:00
予定納品日 03月23日

参加者

会議室

  • [11]桜倉 歌菜

    2015/03/12-23:56 

  • [10]桜倉 歌菜

    2015/03/12-23:55 

  • [9]アイリス・ケリー

    2015/03/12-14:04 

    煙管吸いなんで喫煙所はたまーにだが、一応は日常的に吸ってる。
    手を上げて軽く挨拶くらいをいれとこうかと。

  • [8]水田 茉莉花

    2015/03/11-22:47 


    ういーっす、見知った顔ばかりだな、よろしく!
    ヤニは漢の嗜みって事で、おれがチャレンジしてみる!
    ・・・吸ったことはネェし、見てくれがこうだからOK出るかわかんねぇけどな。
    ID見せて説得する予定だぜ。

  • [7]桜倉 歌菜

    2015/03/11-22:02 

    月成羽純だ。パートナーは歌菜。

    シーシャは俺が吸う。初めての経験なので、楽しみだ。
    喫煙自体は、実家のカクテルバーで付き合いで嗜む程度だな。
    歌菜の前では吸った事はない。

    宜しくお願いする。

  • [6]桜倉 歌菜

    2015/03/11-22:01 

  • [5]出石 香奈

    2015/03/11-21:12 

    出石香奈とパートナーのレムよ。
    見知った顔ばかりね、今回もよろしく。
    煙草…レムは苦手みたいなんだけど、あたしはなかなか禁煙できなくて。
    シーシャというのは初めて見るけど、どんな感じなのか楽しみだわ。

    そういえば、ディエゴとは喫煙所でよく会うわね。

  • [4]出石 香奈

    2015/03/11-21:07 

  • [3]ハロルド

    2015/03/11-16:04 

    全員知り合いだな、よろしく頼む

    もし日常的に喫煙する奴がいるなら教えてくれ
    (喫煙所仲間ってことでエピ内で絡めないかなあと思ってます、お邪魔にならない程度に…)

  • [2]ハロルド

    2015/03/11-14:18 

  • [1]アイリス・ケリー

    2015/03/11-12:27 

    ご一緒したことがある方々ばかりですね。
    アイリス・ケリーです。パートナーはラルク。
    シーシャは見るの初めてです。
    ラルクさんが吸うそうですが…どういう未来を見るのか楽しみです。
    それでは、今回もよろしくお願い致します。


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