【メルヘン】燻る紫煙、薫る酒気(こーや マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●酒と煙草
 店内にところどころ立ち上る紫煙。そして多くの席から薫り立つ酒の匂い。
間接照明と静かに流れる音楽で落ち着いた雰囲気は一瞬でも肌に触れればすぐに分かる、大人の店だ。
 ここ『ハバネラ』はバレンタイン城下町にしては珍しいタイプの店だった。
バレンタイン地方はチョコレート産業で発展している為、チョコレートなどの菓子類を扱う店が集まっている。
『ハバネラ』もチョコレートを扱っている店ではあるが、この店は酒も供する。
そして店内での喫煙も許可している為、未成年の入店を禁止している。
 歳若い人々が立ち寄ることも多い町だからこそ、ここは厳しくならなくてはいけないのだと店主は言う。
入店時に必ず年齢確認を行い未成年と分かれば入店を断る。
それだけでなく、騒いで他の客の迷惑になる客も速やかに退店を促す為、店は常に落ち着いた雰囲気を保っていた。

 君がこの店を知ったのは通りがかりか、それともA.R.O.A.の支部で聞いたか、はたまたウィンクルム仲間から聞いたか。
とにかく、パートナーと共に店へ向かうことにした。
 目当ては酒か、それとも紫煙を配慮しなくていい場所か。
いや、大人の時間を楽しむために、君は店へと足を踏み入れた。

解説

■<<!!【Caution】!!>>■
神人か精霊のどちらかが下記に当てはまる場合は、参加を御遠慮いただきますようお願い致します

・未成年設定、もしくは外見年齢が未成年で自由設定に成年であることが記述されていない
・酒か煙草に嫌悪感を持っている設定(呑まないor吸わないけど嫌悪感はない場合はOK)

上記を無視して参加されましても、描写そのもののお約束はできませんので御了承ください。


●参加費&すること
お酒や煙草を楽しみながらお話しする
飲食費二人合わせて600jr

かなりお酒を飲む方ならば、一人につき+100jr
プランに+100jrを明記されていない場合でも、内容を判断して徴収する場合がありますので御了承ください

●メニュー
・酒
日本酒や焼酎はありません
ビールやカクテル、ウォッカやラム、ワインなどの洋酒を扱ってます
またオリジナルカクテルが二種類
『ハバネラ』:チョコレートリキュールベースでちょっぴりビター。後味すっきり
『アリア』:ホワイトチョコレートリキュールベースで甘い。度数は低め、結構お腹に溜まるのでお酒に弱い人向け

・煙草
持参扱いとします
コーディネートされていなくてもプランに含まれていれば持参されたということで扱います

・食べ物
小さなチョコレートの盛り合わせ
カプレーゼ
チーズの盛り合わせ
バケットのスライスwithサーモン

●その他
しっとり系のエピとなります

他の組と相席という風にしていただいても構いませんが、
その際はどう交流するかをプランに含めてください

ゲームマスターより

飲酒・喫煙描写が入ります
必ず解説部をしっかり目を通してからご参加いただきますようお願い致します

リザルトノベル

◆アクション・プラン

篠宮潤(ヒュリアス)

  注文:アリア、バケットのスライスwithサーモン

●「えっ。ヒューリ…煙草、吸う、の?」
驚き。契約してから今まで見たことが無い
この店に来た事も不思議そうに
「お酒?大丈夫、だよ。一応、男所帯、だから…ね」
バケットもぐ
美味しそうに雑談

〇「煙の匂い、とか、苦手でも無い、から、気にしないで」
「…そっか。うん、彼女…言いそう、だ」
嬉しそうに、その後切なそうに微笑み

●「そん、な…事…、僕なら平気…だよ…」
どうして、今になって込み上げてくるんだろう
確かに一度思い切り泣いたはずなのに
精霊の言葉に促されるように声を出さず涙流す

〇ひとしきり後
「…あり、がとう…」
泣く前と泣いた後のお酒
どこか違う味に感じる
…美味しい…



かのん(天藍)
  非喫煙者、周囲が吸うのは平気
お酒、自称嗜む程度

天藍に誘われハバネラへ
店で最近依頼で一緒だった潤さん達を見かけ、もし目が合ったら笑顔でこっそり手を振る

静かに飲みながら14日の天藍の都合を聞く
バレンタインなのでチョコケーキを焼いて持って行っても良いでしょうかと
それなら俺がかのんの家に行こうかとの答えに、焼きたてが美味しいフォンダン・ショコラを用意して待っていますねと笑顔

以下、伝えたい事ではあるが恥ずかしさが先行
途切れ途切れに辛うじて天藍に聞こえる小声で
去年は契約したばかりで、よろしくお願いしますの気持ちを渡していました
今年はウィンクルムとしてではなく、恋人の天藍に好きという気持ちと一緒に渡せたらと



七草・シエテ・イルゴ(翡翠・フェイツィ)
  「翡翠さん、今日は特別な日ですね」
だってお酒も窘めて、お食事も出来て、
喫煙も出来るんですから・・・・・・。
今日は素敵な一日を過ごしましょう。

クロスさん達とご一緒させていただきます。
私は、アリアと小さなチョコの盛り合わせを注文。
注文が届くまでは、クロスさん達や翡翠さんとお話ですね。

「食べてみます?」
アリアを飲んだ後、チョコレートをひとつまみ。
半分を咥えたまま、翡翠さんを挑発するように上目遣い。
(せ、背中が重いです)
……をしている内に、クロスさんに抱きつかれてしまいました。
(※と言いつつ、彼女の頭をそっと優しく撫でながら)
「お姉さんと慕ってくれるのは嬉しい分だけ・・・・・・何だか恥ずかしいですね」


クロス(オルクス)
  ☆心情
「ん?こんな所にお店?
そうだな、入ろう!」

☆酒
カシオレ

☆相席
・シエテと翡翠
・飲みながら酔って抱きついたり話したり

「シエテさん達と飲めるなんて嬉しいな
色々話そ♪
やっぱりカシオレだよねぇ(一気に半分飲んで酔う
平気ぃ
ぽわぽわするけどねぇ
てかシエテさんってスタイル良いから羨ましい~
私もシエテさんみたいに大人な女性になりたぁい
だけどシエテさんみたいなお姉ちゃんや翡翠さんみたいなお兄ちゃんが欲し~(抱きついて微笑
二人共お似合いで憧れてたんだぁ
二人の事大好きだからシエテお姉ちゃんと翡翠お兄ちゃんに抱きつくのぉ
えー大丈夫なのにぃ
でも約束は守るよぉ
だって一番大好きで安心するのはオルクなんだもんねぇ(ニコ」



アイリス・ケリー(ラルク・ラエビガータ)
  私はアリアを頂きます
あとはチョコレートの盛り合わせがあれば、一先ず満足です

グラス、ですか?
なるほど、それでは乾杯
…ふふ、甘い
私には丁度良さそうです

普段は私が行きたいところばかり連れまわしてますから、そのお詫びです
任務はラルクさんが、外出先は私が決めるという約束だったのに、
任務についても私が口出しすることが多いので
そういう訳なので、煙草も気になさらずにどうぞ
いえ、私服の時に微かに匂うことがありますから

ラルクさんの煙草と他に煙草を吸われている方を見比べて思ったのですが…
それはすごく、手間がかかる煙草なのでは?
背伸び…ですか?

お酒と煙草のせいでしょうか
彼が自分ことを話すの、初めてな気がします


●独りと二人
「えっ。ヒューリ……煙草、吸う、の?」
 篠宮潤の煙水晶の瞳が見開かれる。
ヒュリアスが煙草を吸う姿を見たこともなければ想像したこともなかっただけに、驚きが大きい。
「……契約の少し前にやめたのだがね。今日だけ見逃してくれ」
 苦笑いを浮かべながらヒュリアスは角の席へと潤を導く。
それまでの間に潤の瞳が店内の様子を窺っていることをヒュリアスは見逃さなかった。
 椅子に腰掛け、注文を終えてからヒュリアスは一応とばかりに確認してみた。
「酒は飲めるのか?」
「お酒?大丈夫、だよ。一応、男所帯、だから……ね」
 不思議そうではあるが、潤は気後れしているわけでなさそうだ。
こういった店に馴染みがないからなのかもしれないとヒュリアスは深く考えないことにした。
 チョコレートリキュールを使った『ハバネラ』とホワイトチョコレートリキュールを使った『アリア』、サーモンが添えられたバケットが運ばれてくる。
店員が静かに頭を下げて離れると、ヒュリアスは胸元から潰れかけの箱を取り出す。
 トンと箱の底を指で叩き、出てきた煙草をそのまま銜え火をつける。
その様を潤はやはり驚きの混ざった眼差しで見ていた。
「すまん、煙草は平気だったかね」
 確認が後回しになったことをヒュリアスが詫びると、ふるり、潤は小さく頭を横に振る。
「煙の匂い、とか、苦手でも無い、から、気にしないで」
 アリアにほんの少し口をつけてから、サーモンを乗せたバケットを一口食べた潤は、「う……」と小さく呻いた。
アリアの甘ったるさが口に残っていて、サーモンの味が分からなくなってしまったようだ。
けれどもう一口齧りなおすと、特有の脂と食感が口内に広がり、潤の口元が僅かに緩む。
 ヒュリアスもハバネラに口を付けるが、彼の視線は煙草の先から立ち上る紫煙を追っていた。
「……『あいつ』に言われたのだよ」
 『あいつ』が誰を指すのか潤には言われずとも分かる。
食事の手を止め、じっとヒュリアスの言葉を待つ。
「いずれ誰かと契約する気があるのなら、煙草は体力を落とす。後々の為に今からやめておけ、と」
「……そっか。うん、彼女……言いそう、だ」
 潤は笑った。
嬉しそうに、けれど泣き笑いのような笑顔で。煙水晶の瞳は帰らぬ人を想い、滲む。
 ヒュリアスは、彼にしては大きく息を吐いた。
彼自身を叱咤しているように潤には見えた。
「……独りで泣かせて、すまなかった」
 潤が息を呑む音が聞こえた。
ヒュリアスの瞳がアリアとハバネラを行き来する。そして、僅かな決意の末に琥珀の瞳が煙水晶へと向けられる。
「あの日、俺は見ていたのだよ、潤。お前が独りで泣き崩れているのを、遠くから」
 苦い記憶だった。
二人がその日、別々の視点で見ていた光景は未だ重い。けれど、ヒュリアスはどうしても言わなくてはいけないことだと感じていた。
潤は独りで泣いていたのだから。
「そん、な……事……、僕なら平気……だよ……」
 搾り出すような、自身に言い聞かせるようにも聞こえる震える声。
元より途切れがちの潤の言葉だが、今はいつも以上だ。
滲んでいた涙が、一度思い切り流したはずの涙が、堰を切ったように零れ始める。
「ご、め……」
「この店には潤の背負っていたものを受け止める為にきたのだから、構わんよ」
 短い謝罪の言葉すら言えないほどに涙を流す潤を、ヒュリアスはあの時よりも遥かに近くで見つめる。
けれど、ただ眺めるだけだったあの時とは違う。
今度は受け止める為に。受け止める者がいない涙は消化されないから。
「……あり、がとう……」
 未だ潤んではいるものの、新たに零れる涙はない。
潤の顔にはもう寂しさは無い。
 潤はアリアへと手を伸ばした。同じ飲み物なのに、さっきと違って潤を包むような甘さに感じる。
「……美味しい……」
 その様を見届け、ヒュリアスもハバネラを口にした。ほんのりと広がる苦さはすぐに姿を消す。
『彼女』に止められた煙草を吸い、吐き出した煙がヒュリアスの表情を隠した。
煙で隠した安堵の表情を見たら、『彼女』は何と言うだろうか。



●煙草とライター
 クロスとオルクスがその店を見つけたのは偶然だった。
『ハバネラ』と刻まれた看板と店構えは落ち着いた印象を与えた。
「ん?こんなところに店?」
「結構趣のある店だな。入ってみるか」
 カランと、扉に取り付けられた小さな鐘が鳴る。
店員に案内され、席へ向かう途中にオルクスは見知った姿を見つけた。

「翡翠さん、今日は特別な日ですね」
「ああ、俺もそう思うよ」
 七草・シエテ・イルゴと翡翠・フェイツィは顔を見合わせ、穏やかに笑みを交わす。
酒と食事だけでなく、煙草も楽しめるのだ。
 シエテと契約してから初めての一服かもしれないと思いながら、翡翠は注文の品を待っていた。

「翡翠達じゃないか」
 聞き覚えのある声に名を呼ばれ翡翠とシエテが振り返れば、シエテの茶色い髪がさらりと揺れる。
そこにはクロスとオルクスがいた。
嬉しい偶然にシエテの笑みは深まり、翡翠の瞳が和らぐ。
「オルクスの兄さん」
「偶然だな。一緒に飲もうぜ」
「勿論」
 それならばと、案内の店員はシエテ達と相席させてもらうことにした二人へメニューを差出し、注文を聞いてから席を離れる。
少し間を置いて二組分の品を纏めて店員が持ってきた。
 シエテにはアリアとチョコレートの盛り合わせ、翡翠にはハバネラとチーズの盛り合わせ。
クロスにはカシスオレンジ、オルクスにはウォッカのロックだ。
 静かに乾杯した後、翡翠が煙草を取り出した。
それを見たオルクスが問い掛ける。
「翡翠も吸うのか?」
「一応ね。随分久しぶりだ」
「ならつけてやるよ」
 翡翠とオルクスはテーブルへと前のめりになり、お互いに火をつけあう。
その横でクロスはニコニコと笑っている。
「シエテさん達と飲めるなんて嬉しいな」
 とはいっても、それらしい会話はあまり浮かんでこない。
気にせずクロスは自身のカシスオレンジを一気に煽った。口から離れたグラスには半分ほどしか残っていない。
 クロスは酒に弱い。それを知っているオルクスが注意しようとしたが、遅かった。
既にクロスは顔を赤くしている。
「ぽわぽわするねぇ。てかシエテさんってスタイル良いから羨ましい~。
私もシエテさんみたいに大人な女性になりたぁい」
 言いながらクロスは立ち上がり、向かいの席のシエテの背中に抱きついた。
翡翠に言われてチョコレートをつまみ上げ、食べさせようとしていたシエテは背中に感じる重みに屈する。
近づいてシエテとの顔が離れた翡翠は、ほっとすると同時に残念だという気持ちを抱きながら周囲の目を見回した。
すると、店員が困ったような笑みを浮かべていることに気付く。
 その意味は考えるまでも無い。
「クロスの姉さん、席に戻ったほうがいい」
「だけどシエテさんみたいなお姉ちゃんや翡翠さんみたいなお兄ちゃんが欲し~」
「……そろそろこっちに来い」
 自分で離れる気配の無いクロスを、オルクスが席を立って連れ戻す。
「え~大丈夫なのにぃ」
「ったく酔うとすぐこうなる」
 完全に酔っているクロスとぼやくオルクスに、シエテと翡翠が苦笑いしていると、店員が水を持ってやってきた。
コトリ、水の入ったグラスがクロスの前に置かれる。
「飲食の場なので、あまり立ち歩かれないようお願いしますね」
 落ち着いた雰囲気を保つ為、他の客へ迷惑をかける客には速やかに退店を促す店だ。
飲食中に立ち歩くのは礼儀としてもよく無い。まして、酔っている人間が意味無く立ち歩くのは店側からすれば心配事にしかならない。
 すまないとオルクスが謝罪すると、店員はお願いしますねと苦笑いのまま席を去る。
「でも、お姉さんと慕ってくれるのは嬉しいです……」
 その分恥ずかしいけれどと照れたように笑うシエテに、翡翠は同意する。
「頼ってもらえているみたいでこっちとしては嬉しいから」
「そう言ってもらえると助かる」
 気遣いの意味もあるだろうが、二人の言葉が本心だとオルクスには分かる。
感謝の意を示すオルクスの横で、クロスはその肩に頭を預けて小さな寝息を立てていた。
「二人の事大好きだからぁ……」
 そんな小さな寝言に、三人は笑みを零した。



●約束と煙管
「ふむ、んじゃ俺はウォッカから」
「私はアリアを頂きます。あとはチョコレートの盛り合わせがあれば、一先ず満足です」
 ラルク・ラエビガータはアイリス・ケリーの注文を聞いて僅かにゲンナリとした表情を浮かべた。
甘味をそれほど好まないラルクには見るだけで胃もたれを起こしそうな組み合わせだが、甘党の彼女は気にしない。
 気を取り直してバケットとカプレーゼも頼んでおくと、あまり待つことなく注文の品々が運ばれて来た。
店員が去ると、すぐにラルクはグラスに触れた。カラリと音を立てて氷が揺れる。
「ほら、グラスを持ち上げろ」
「グラス、ですか?」
 その意図が読めず、アイリスは小さく首を傾げる。
ラルクは軽く笑って見せ、グラスをアイリスへと向けた。
「こういう時はとりあえず乾杯するもんだ」
「なるほど、それでは……乾杯」
 カチリ、ぶつかったグラスとグラスが小さな音を鳴らす。
二人はそのままそれぞれの酒を口へと運ぶ。
「……ふふ、甘い。私には丁度良さそうです」
「そりゃ良かった」
 嬉しそうに笑うアイリスを尻目にラルクはぐいとグラスを傾ける。
どうやら彼はかなり呑めるクチのようだ。バケットを齧りながらでもすぐにグラスを空にし、近くの店員にワインの追加を頼む。
「んで、アンタ、どういう風の吹き回しだ?」
 酒には強くないとアイリスは言っていたのに、ここに来ようと言い出したのは彼女だ。
喫煙者でもないのに何故と、ラルクが疑問に思うのは当然といえば当然。
「お詫びです」
「ん?」
「普段は私が行きたいところばかり連れまわしてますから、そのお詫びです」
 二人の間で、任務はラルクが、外出先はアイリスが決めるという約束が交わされていた。
けれど、任務についてもアイリスが口出しすることが多いからと、彼女は言う。
 はっとラルクは笑った。そんなことかと言わんばかりに。
「悪くは思っていたわけだ」
「一応は。そういう訳なので、煙草も気になさらずにどうぞ」
 そういったアイリスの顔をラルクは怪訝そうに見つめる。
何かと言いたげにアイリスは翠玉の瞳を向けた。
「……俺はアンタに煙草を吸うこと話していたか?」
「いえ、私服の時に微かに匂うことがありますから」
 成る程と得心したラルクはそれならば遠慮なくと、袖から小さな巾着袋を取り出す。
その中からするりと慣れた様子で煙管を引き抜いた。
 チョコレートとアリアを口にしながら、アイリスはラルクの手元を見つめる。
時折ちらりと他所にも向けられるその視線を感じながらも、ラルクは気にせず刻み煙草を火皿に詰める。
軽く吸い込みながら火をつけ、煙を吐き出した。
「……ラルクさんの煙草と他に煙草を吸われている方を見比べて思ったのですが……それはすごく、手間がかかる煙草なのでは?」
 二杯目のワインを飲み干し、三杯目を頼み終えたラルクにアイリスが問い掛ける。
「ん?ああ、手間が掛かるな」
 だから際限なく吸い続けることにならなくていいと言いながらも、ラルクは苦笑いを零した。
「そもそも吸うなっていう話かも知らんが……背伸びしたかった頃の名残だ」
「背伸び……ですか?」
 言葉の意味を問い返しながらアイリスはチョコレートを手に取る。
「こうやって酒飲んで、煙草吸ってっていうのが一人前の男だと思い込んでたって話だ」
 若い男性特有の話だろうかと思いながらも、アイリスは気付いた。
ラルクが自分のことを話すのはこれが初めてだと。
 そんなアイリスに気付かぬまま、紫煙を昇らせる煙管を片手に三杯目のワインをあけたラルクが小さく呟いた。
「にしても、いい酒置いてるな」
 ラルクはあとどれくらい酒を飲むのだろうか。次の一杯を注文している彼は機嫌が良さそうだ。
満足そうなその笑みを見ながら、アイリスは紫煙のようにぼんやり考えた。



●仲間と恋人
 店員に案内され、かのんと天藍は店内を進む。
天藍が仲間に教えてもらったという店内では落ち着いた雰囲気の元、煙草と酒の匂いが漂っている。
 途中、かのんは潤とヒュリアスの二人に気付いた。
つい最近の任務で一緒だった二人がこちらに気付いたのならば挨拶をしようと考えたものの、止める。
今の二人は、触れることなく二人のままにしておくのが良いだろう。
かのんは二人に向けていた視線を、前を歩く天藍の背中へと向けた。
 明るさを落とした橙色の照明の下、かのんと天藍は向かい合って座る。
二人は静かに、注文した食べ物と共に酒盃を傾け始めた。
 かのんも天藍も煙草は吸わない。
かのんは非喫煙者、天藍は格好をつけるために吸っていたが近頃は吸っていない。今も吸うつもりはあまり無い。
 言葉のやり取りは少ないが、それを気まずく思う段階は遥か以前のことだ。
グラスの足を持ちながら、ゆるり、ゆるりとワインを揺らす。ピジョンブラッドのような深みのある赤が踊る。
「14日」
「ん?」
「予定、空いてますか?」
 2月14日の予定を恋人が恋人に聞く理由は一つ。勿論、天藍が仕事以外の予定を入れる必要はどこにもない。
バケットを咀嚼する天藍の口元が微かに綻ぶ。
「いや、予定は無い」
「でしたら、チョコケーキを焼いて持って行っても良いでしょうか?」
 かのんが少し、慎重に聞いているように見えるのは気のせいだろうか。
恋人として初めて迎えるバレンタインを楽しみに思いながらも、天藍の迷惑にならないかと不安になっているからかもしれない。
 かのんは蜂蜜を垂らしたブルーチーズを摘みながらも天藍をちらちらと窺っている。
その様子が可愛いと思うのは恋人として当たり前のこと。
自然と天藍の頬が緩むが、それは口元の側にあるバケットで隠す。
「それなら俺がかのんの家に行こう」
 天藍の提案に、アスターの花にも似た色のかのんの瞳が輝く。
「焼きたてが美味しいフォンダン・ショコラを用意して待っていますね」
 花が開いたように頬を染めて笑うかのんに、天藍は微笑む。
「去年は貰えたが、今年はどうなのかと思ってたからな。嬉しい」
 パッとかのんの頬がさらに色づく。
先程とは違い、嬉しさからではなく恥ずかしさゆえ。
 目を泳がせながらも、小さな声でかのんは言葉を紡ぎ出す。
「……去年は、契約したばかりだったので、これからよろしくお願いしますという気持ちで渡しました」
 でも。
かのんは恥ずかしさを堪えるように、グラスの足をきゅっと強く握った。
頬は薔薇のように赤くなっている。
「今年は、ウィンクルムとしてではなく……あの、恋人として……恋人の天藍に……好きという気持ちと、一緒に……渡し、たくて……」
 言葉にしたものの、その声の小ささと同じように消え入りそうなほどに照れているかのんの手を、天藍はそっとグラスから引き離す。
おずおずと覗いてみた天藍の瞳は、いや、その表情は穏やかだ。
「楽しみにしてる」
「……はい」
 重なった手と手は温かい。
ワインよりも、二人はその温かさに酔いしれた。去年とは違う、恋人同士として――



依頼結果:成功
MVP
名前:篠宮潤
呼び名:ウル
  名前:ヒュリアス
呼び名:ヒューリ

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 吉原留偉  )


エピソード情報

マスター こーや
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月08日
出発日 02月13日 00:00
予定納品日 02月23日

参加者

会議室

  • [10]クロス

    2015/02/11-23:00 

    クロス:

    >シエテさん
    やったー!勿論良いよ!
    シエテさん達と一緒なんて嬉しいな(微笑)

    オルクス:
    翡翠とシエテ、宜しくな(微笑)

  • [9]アイリス・ケリー

    2015/02/11-22:57 

    アイリス・ケリーと申します。
    潤さんとヒュリアスさんは、ジャック王子のところで本当にお世話になりました。
    とても心強かったです。
    かのんさんとシエテさんはお久しぶりです。
    クロスさんは初めまして。

    私自身はお酒に弱いのであまり飲めませんが、雰囲気たけでも楽しめればと思います。
    それでは、どうぞよろしくお願い致します。

  • 遅くなりましたが、皆さん、お久しぶりです。
    潤さんは、かすていら侍さんでご一緒させていただきましたね。
    改めてよろしくお願いします。

    >クロスさん
    よかったらご一緒してもいいですか?
    今回、お食事と喫煙とお話が中心になりますので、トランプ等の娯楽は持参できるかわかりませんが。

  • [6]篠宮潤

    2015/02/11-21:34 

  • [5]篠宮潤

    2015/02/11-21:34 

    あ。顔見知り、の人、ばかり…(嬉しそう)
    アイリス、さんたち、とは、本当にお久しぶり、なんだけ、ど、
    ジャック王子隊、で、お世話になってる、から、あまりそんな感、じ、しない、ね(照れくさそうに微笑み)

    ……ヒューリ、煙草…吸う、の……???
    なん、だか、普段見ない姿、みることになりそう、だよ…(若干ビクついている)

  • [4]かのん

    2015/02/11-16:52 

  • [3]かのん

    2015/02/11-16:52 

    皆さんお久しぶりです
    天藍に誘われてこちらのお店に伺いました
    オリジナルのカクテルもあるようで楽しみです

  • [2]クロス

    2015/02/11-11:20 

    クロス:
    皆久し振り!
    今回も楽しもうな♪
    俺達は別に相席でも平気だからその時は遠慮なく言ってくれな(微笑)
    ふふっお酒楽しみだなぁ♪

    オルクス:
    オレは酒飲んでも滅多に酔わないし煙草も嗜む
    それに他の連中達と飲むのも楽しいよな!
    だがしかしクー、お願いだからあまり飲むなよ弱いんだからさ…(溜息)
    (酔うと誰彼問わず抱き着いて甘えん坊に変貌するから心配だよ、オレは(汗))

  • [1]クロス

    2015/02/11-11:01 


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