【チョコ】チョコレート魔人を退治せよ!(木口アキノ マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 キャンディニア王国のチョコリート工場で働く妖精、アプリとコットは、チョコレート略奪隊がうろつく森を抜け、なんとかチョコレートの滝に辿りついた。
 チョコレートの滝は、崖の上から50mの高さを温かいチョコレートが流れ落ちている滝。
 下の滝壺の周りは、チョコが打ち寄せられて固まって岩のようになっている。
 温かいチョコレートから立ち上る甘い湯気に包まれ、アプリとコットは安堵の息をつく。
「これで、工場でチョコリートが作れるね」
「うん。早く運ぼう」
 チョコリートは、チョコを原料とした魔法の建材。バレンタイン城下にある建物の殆どは、ブロック状に固めたチョコリートを積み上げて造られている。
 しかし、最近、バレンタイン城はオーガに占領され、チョコリートの原料となるチョコレートが略奪されてしまったのだ。
 こうなっては、工場でチョコリートを生産することができない。
 アプリとコットはチョコリートの原料を手に入れるべく、チョコレートの滝を訪れたのだ。
 しかし、ここも安全ではない。デミ・ゴブリン数匹で結成されたチョコレート略奪隊が目を光らせているのだ。早くしなければ、やつらに見つかってしまう。
 アプリとコットは、持って来たバケツをチョコレートの滝壺に入れようとする。その時。
 滝壺から、ぬうっと焦げ茶の影が現れた。
「きゃ、きゃーーーーーっ」
 2人は手をとり悲鳴をあげる。
 大きな、人型をしたチョコレートの塊がゆらりと動く。こちらに近づいてくる。大きく腕を振り上げ……溶けかけの熱いチョコレートの塊を投げつけてくる!
 アプリとコットはバケツをその場に投げ捨て、逃げ去った。

 キャンディニア王国には、あっという間に「チョコレートの滝にチョコレート魔人が出る」という話が広まった。
 目撃者の話によると、不思議なことに、チョコレート魔人が現れるのは1日1回。しかも、1時間程度でまた滝壺の中に戻っていくという。
 チョコレートがオーガに略奪されている今、チョコレートの滝もこのような状況では、チョコリート工場は困ってしまう。
 工場主たちの訴えを聞いたキャンディニア王国のアーサー王子は、A.R.O.Aに助けを求めたのだった。

解説

 チョコレート魔人を退治してください。
 魔人は体長4メートルほど。チョコレートでコーティングされた棍棒を持っています。
 熱々のチョコレートを投げつけてきます。
 チョコレートの滝の周りには、デミ・ゴブリン3~4体で結成されたチョコレート略奪隊が徘徊しています。侵入者に気付くと容赦なく襲ってきます。
 また、現在ショコランドに入り込んだマントゥール教団員がオーガのチョコレート集めに加担しています。チョコレートの滝も、彼らに狙われているかもしれません。
 それでは、健闘を祈ります。


ゲームマスターより

 チョコレートの滝でチョコレートフォンデュ、してみたいですねぇ。
 なんて、悠長なことを言っている状態ではないようです。
 一体、何物なんでしょうか、チョコレート魔人。
 1日1回、1時間だけの出没なのは、一体なぜなのでしょうか……。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)

  ☆心情
これは私の勝手な想像だけれど、魔人はチョコレートの滝を守る番人なんじゃないかな

☆デミ・ゴブリンを探す
・前衛職の自分達が先行、魔人に気づかれないよう静かに偵察
・戦闘前に精霊とトランスする
・敵が後衛の仲間の方へ行かないよう鞭で牽制

☆ゴブリン討伐後魔人と戦う
・魔人戦にて【ハイトランス・ジェミニ】に移行
・鞭を使って魔人の足を絡めとって転倒させたり棍棒を叩き落せないか試す(※重量の関係でそれが無理な場合は通常攻撃に変更)
・魔人がチョコレートを投げるモーションを見せたらすぐ回避に専念、間に合わない場合は【魔守のオーブ】でバリアを展開し仲間も守る
・防御の大失敗判定は【伊焚荷ノ勾玉】で無効化 

☆持ち物



フィーリア・セオフィラス(ジュスト・レヴィン)
  「…工場で、使う、原料がないと…、困るの、ね…。…チョコレートの、滝、…って、どんな、ところ…?」

まずは情報集収からでしょうか。
アプリさんやコットさんやその他の目撃者の人たちに。
チョコレート魔人のことや、チョコレートの滝までの道とか周囲の地理とか…。

チョコレート魔人とチョコレート略奪隊とマントゥール教団員…?
一度に遭遇すると大変そうですし。
魔人は滝壺に近づいてから現れたみたいなので、自分たちがこっそり滝周辺に近づいて、略奪隊とかを先に見つけられれば、戦い易くなる、かも?
戦いになったら、神人は邪魔にならないようにしているしかありませんが。



●謎のチョコレート魔人
 アプリとコットが働くチョコリート工場は、原料不足のせいか、現在は稼働していない。
 静かな工場にやってきたフィーリア・セオフィラスとジュスト・レヴィン、そして、ミサ・フルールとエミリオ・シュトルツ。
「……工場で、使う、原料がないと……、困るの、ね……」
 フィーリアが言うと、アプリがこくこくと頷く。
「……チョコレートの、滝、……て、どんな、ところ……?」
 まずは情報収集が大切である。
「山の中を進むと大きな崖があって、そこからチョコレートが流れてくるんだ」
 コットが説明してくれる。妖精2人でも行けるくらいの場所なのだから、緩やかな山なのだろう。
「……1日1回、1時間……」
 ジュストとしては、チョコレート魔人の謎のほうが気になるようだ。
(制限時間、ですよね。過ぎると固まる、とか……?)
「魔人が原型をとどめていられるのが1時間なのでは」
 ジュストが考えていると、エミリオも自分の意見を述べる。
「もしそうであるなら魔人を時間内に討伐できるよう時間配分には気をつけなければならないね」
(そもそも、どこから……、あるいは誰が……?)
 ジュストは、チョコレート魔人の後ろに誰か黒幕がいる可能性も考えているようだ。
 ミサが、
「魔人だけじゃなくてデミ・ゴブリンやマントゥール教団も現れるかもしれないのよね」
と表情を引き締める。
 ミサの口から略奪隊と教団の名前が出ると、ジュストはまた思案する。
(できるなら、略奪隊や教団員を尋問してみるとか、魔人やチョコレートの滝を調べると何か分かる、かも?)
「マントゥール教団に遭遇したら、うまく捕獲したいね」
 ジュストの考えを察知してか、エミリオがそう言う。
「……一度、に、遭遇……すると、大変そう……」
「そうよね。先に略奪隊のデミ・ゴブリンをなんとかできないかしら」
 と、フィーリアとミサ。
 アプリが羽根をぱたつかせながら、
「魔人はチョコレートの滝のすぐそばまで近づかなければ現れないよ」
と教えてくれる。
「……こっそり、滝の、周りに近づいて……先に……略奪隊を、見つけられれば……戦い易く、なる……かも?」
 フィーリアがジュストに視線を送ると、彼は、その戦法に賛成だ、というように頷いた。

●チョコレートの滝へ
 4人は、チョコレートの滝をめざして出発する。
 フィーリアが街の住人から滝までの道を確認してくれたので、道案内がなくとも滝まで行くことができそうだ。
「私の勝手な想像だけれど、魔人はチョコレートの滝を守る番人なんじゃないかな」
 歩きながらミサが言うと、エミリオは
「ミサらしいね」
と、微笑んだ。
 何事もまず、悪意のない方へと考える。彼女の心根の優しさがそうさせるのだろう。
「ミサのそういうところが……」
 好きだよ、と言いたかったのに言葉に詰まる。ミサを愛しく思っているのに、時折、別の感情に支配されそうになるのだ。
「エミリオさん?」
 異変に気付いたミサは、そっとエミリオの手をとる。安心させるかのように。
「なんでもない、大丈夫だよ」
 エミリオはミサに笑みを返した。
「……魔人、は……4メートルくらいの、大きさで……棍棒を、持っている、のね……」
 気を付けてね、とフィーリアはジュストを見つめる。
(体長4メートル、棍棒……同じような特徴をもつネイチャーやオーガは、過去にいなかっただろうか)
 ジュストはチョコレート魔人の正体をなんとか割り出そうとしているようだ。
「……そろそろ……チョコレートの、滝、ね……」
 遠く前方からドーッという大量の液体が流れ落ちる音が聞こえ、微かに温かい空気が流れてくる。
「……良い……匂い」
 フィーリアがうっとりする。その様子を見て、ミサがふふっと笑う。
「そうよね。チョコレートフォンデュとか、食べたくなっちゃうね」
 フィーリアは頷くが、ジュストは「なんだ、それは」と呟く。
「チョコレートフォンデュっていうのはね、パンやフルーツに、溶かしたチョコレートを付けて食べるスイーツだよ」
 美味しいものの話をするときのミサは楽しそうである。
「ここまで滝に近くなれば、そろそろデミ・ゴブリンたちが現れてもおかしくないね」
 エミリオが言うと、「そうだね」と、ミサは楽しげな表情から一変し厳しい顔つきになる。
「ここからは、私とエミリオさんが偵察を兼ねて先行するね」
「……魔人に、近づき、過ぎないで……気を付けて、ね……」
「大丈夫よ」
 心配するフィーリアに、ミサは力強く頷く。
「ミサ。いつデミ・ゴブリンたちと遭遇するかわからないよ。備えておこう」
「うん、トランスしておこう」
 ミサはエミリオの頬に唇を寄せる。
「絆を繋ぎ、想いを紡ごう」
 ミサの唇がエミリオの頬に触れると、2人の周囲に透明の薔薇が舞い散る。同時に青と赤の光が飛び交い、ミサの右手にある腕輪が青く輝き、エミリオの左耳にあるピアスが赤く輝いた。
「……ジュスト……私たち、も……」
 フィーリアが言うと、ジュストは頷き、フィーリアに頬を寄せる。
「……力を、此処に」
 フィーリアがジュストの頬に口付け、トランスした。

●チョコレート略奪隊
 ミサとエミリオは、耳を澄ませ、目をこらしながら進んでいく。
 木の影、岩の影にデミ・ゴブリンが潜んでいるかもしれない。もしかしたら、木の上、頭上からだって現れるかもしれない。
 すると、滝の音に混じって、右手前方から足音と奇怪な鳴き声のようなものが聞こえてきた。
「エミリオさん」
 ミサは小声でエミリオの名を呼び、2人は視線を合わせて頷いた。デミ・ゴブリンのチョコレート略奪隊に違いない。
 ミサとエミリオはデミ・ゴブリンたちがいると思しき方向へ足を進める。フィーリアとジュストもそれに続いた。
 やがて、大きな岩陰から、4匹のデミ・ゴブリンの姿が見えた。
 咄嗟にジュストはフィーリアを木陰に押しやる。
 ゴブリンたちはボロボロの鎧に身を包み、錆びた剣を振り上げて襲ってくる。
 それを、ミサのウィップ「ローズ・オブ・マッハ」の一振りが迎え撃つ。
 ゴブリンたちが怯んで脚を止めたところへ、エミリオが素早く接近する。彼の持つ双刀「キング&クイーン」は音楽を奏でるかのような風切り音をたて、まずは手近な2匹に切りかかる。
 残る2匹はエミリオの攻撃をかいくぐり、ミサを標的にする。
 ミサはウィップを、そして後方からジュストが蛇の模様の施されたワンドを振るう。
 ウィップに脚を絡めとられたデミ・ゴブリンに、ジュストの魔法攻撃が襲い掛かる。
 その間、エミリオは自分と対峙していた2匹に、致命傷を与えていた。
 ミサがウィップを引くと、デミ・ゴブリンたちの脚は自由になったが、魔法攻撃を食らった影響でよろめいている。
 それを好機とし、エミリオは残る2匹のゴブリンに後ろから切りかかった。
 1匹はエミリオの刃に倒れ、もう1匹はかろうじてそれを逃れ反撃を試みる。が、よろよろと振り上げた剣はミサのウィップに絡めとられ、さらにジュストの魔法でデミ・ゴブリンの体は吹き飛ばされる。地に倒れたところで、エミリオが最後の1匹にとどめをさした。
 4匹のデミ・ゴブリンが倒れると、辺りに静寂が戻る。
「……もう、敵は……いない、みたい……」
 フィーリアが木陰から出て来る。聞こえるのは滝の音だけ。
「何か気にしながら戦っていたようだね」
 エミリオがジュストに声をかける。
 ジュストは頷いた。どこかにマントゥール教団員が潜んでいるかもしれないと、常に気を配っていたのだ。
「確かに、気を付けなければならない相手だ。これから魔人と戦っている時にも、どこかにいるかもしれないね」

●対決!チョコレート魔人
4人は改めて、チョコレートの滝を眺める。
チョコレート魔人は、あまりにも情報の少ない敵だ。しかも体長4メートル。今まで対峙してきた敵の中でも、大型の部類に入るだろう。慎重に戦わなければ。
ジュストがロープを取り出す。マントゥール教団に遭遇したとき、彼らを拘束するためにA.R.O.Aから借り受けてきたものだ。
「罠を張るのはどうだろう」
「なるほど」
 エミリオがジュストの案に興味を示した。
「……でも、それ、は……教団が、現れたときの……」
 フィーリアが言いかけると、ミサが
「ロープなら私たちも持ってきたから大丈夫よ」
と安心させる。
 ジュストはまずは、滝壺の右端にある木の枝にロープを括りつける。そして、ロープの端を持って左端にある木まで行く。なるべく、滝壺そのものには近寄らないようにして。
 そしてジュストはロープの端を持ったまま、木の陰に身を潜めた。フィーリアも一緒に木陰にちょこんとしゃがむ。
 ミサはエミリオの手をとり、その甲に浮かぶ文様に唇を寄せる。
「絆を繋ぎ、想いを紡ごう」
 ミサの周りに白い光のオーラが粉雪のように儚く舞う。対して、エミリオの周りには黒い光のオーラが炎のように纏わりついた。
 ハイトランス・ジェミニの完了である。
 2人はロープを隔てて滝壺のすぐそばまで近づく。
 ぽこり、と波打つチョコレートの中から泡が浮かび上がった。
 エミリオが双刀「キング&クイーン」を振るうと、不思議な響きが空気を震わせた。
 チョコレートの中に潜んでいる魔人への挑発だ。
 ぼこ、ぼこりっ。
 チョコレートの泡がだんだんこちらへ近づいてくる。ミサもエミリオも退くことはしない。
 ついに、体中からチョコレートを滴らせた魔人が姿を現した。
「この形……何かに似てる」
 木陰から魔人の姿を見るジュストが呟いた。
 この大きな体躯……トロールのよう?
エミリオがぴたりと双刀の切っ先を魔人に向けた。しかしこちらのほうから攻撃を仕掛けることはしない。
魔人がチョコレートまみれの棍棒を振り上げる。ミサたちが棍棒の間合いにはいないのにもかかわらず。
しかし魔人は迷うことなく棍棒を振り下ろす。
棍棒の先から、滴っていたチョコレートの塊が飛んでくる!
ミサは咄嗟に宝玉「魔守のオーブ」で半透明の魔法力場の盾を展開する。
チョコレートの塊は力場にぶつかり弾けると、チョコレートの雨のようにミサとエミリオに降りかかった。が、ダメージとしては極小で済んだ。
チョコレート弾が効かないと悟ったのか、魔人は2人に襲い掛かってくる。しかし溶けたチョコレートをかき分けながらであるため、その速度は遅い。
通常であれば、この時が攻撃の好機なのであろう。だが、ミサもエミリオもあえて攻撃しなかった。
滝壺から上がった魔人は、棍棒を振り上げながら、速度をあげて突進してくる。
「今だ」
 ジュストがロープを引っ張る。
 ぴいんとロープが張られ、魔人は見事にロープに引っ掛かり転倒した。辺りに溶けたチョコレートの飛沫が飛び散る。
 この隙に一気にカタを付けるとばかりに、エミリオがスキル「オスティナートⅡ」を発動させる。
 魔人はもがきつつ立ち上がり、さらにエミリオの攻撃を振り払おうとするも、エミリオの気配はオスティナートⅡによって完全に二分されており、芯を得た攻撃ができずにいる。
 チョコレート魔人の体はエミリオの双刀によって削りとられ……、そう、チョコレート部分が削りとられ、トロール特有の石のような皮膚が姿を現してきたのだ。
「やっぱり、トロールだ」
 ジュストは自分の仮説が正しかったと確信した。
「……トロールの、チョコ、フォンデュ……ね」
 フィーリアが呟く。
 エミリオの攻撃が止んだところで、今度はジュストが魔人に魔法を叩きこむ。魔法攻撃は固い皮膚もろとも魔人にダメージを与える。
 正体がわかれば、相手に応じた攻撃も可能となる。
 エミリオはトロールの目など、急所を狙い始める。ミサがそれを手助けするように、ウィップで棍棒の動きを抑制する。
 エミリオの攻撃ターンが終わる頃合いを見て、ジュストは魔法で援護する。
 ジュストは援護攻撃をしながらも、周囲への注意を怠らない。
 トロールがなぜ、こんなところにいるのだろう。
 確かに奴らはなんでも食べる。チョコレート食べたさにここにいるのだろうか。だとしたら、滝壺に潜んで来るものを脅すようなことをする必要があるのだろうか。そもそも奴らに、「他者を脅してチョコレートを独り占めしよう」という知恵があるのか。目の前に食べられるものがあれば何も考えずに食らい尽くすだけの奴らに。
 もしかしたら。
「操られてる、とか」
 ジュストの頭にまた一つの仮説が浮かんだ。
「リア、じっとしているんだ」
 フィーリアにそう言うと、ジュストは木陰から出て、辺りを駆け回る。
 もしかしたら、どこかに、トロールを操る者が……。
「!」
 ジュストは、滝の裏側に、人影を見つけた。
 滝の裏側は少しえぐれた形になっており、そこにボロボロのローブを着た男が1人、立っていた。エミリオたちと戦うトロールを一心に見つめて。
 ジュストは念のためにスキル「シャイニングアローⅡ」を発動させ、その男に駆け寄る。
 液状化したチョコレートの中をかき分け進むジュストの足音を聞きつけ、ローブの男が顔をあげた。
 男はジュストの姿を認めると、滝の裏から出てきてジュストに飛びかかる。
 シャイニングアローⅡの力で男の拳は体ごとはじかれた。
 その途端、エミリオと対峙していたトロールの動きが、止まる。
 それを見逃さず、エミリオはトロールの顎から頭にかけて切り上げる。
 トロールはのけぞりながら倒れた。エミリオは動かなくなったトロールの頭部に、見たことのない冠が装着されているのに気が付いた。
「逃がすかっ」
 その場にジュストの声が響く。エミリオ、ミサが顔をあげると、ローブの男が逃げようとしており、その背中にジュストが魔法を打っていた。
 ジュストの魔法攻撃でその場に膝を付いたローブの男に、エミリオは素早く接近し、
「お前、マントゥール教団の者だな」
と厳しい声で問い詰める。
 男は返事をせずに尚も逃走を試みたため、エミリオはその首の後ろを殴りつけ、気絶させた。
「これで全て、片付いたかな」
 倒れた男を見下ろして、エミリオが呟く。
 ミサは、動かなくなったトロールの頭部に近づき、そっと冠に手をのばす。
 すると冠はトロールの頭から外れ、ころころと転がり、そして……ぱりん、と儚い音を立てて砕けた。

●謎の冠
 無事にチョコレート魔人もといトロールの退治を終え、4人はA.R.O.A本部に戻り、ローブの男の身柄を引き渡す。
 道中、目を覚ました男になぜこのようなことをしたのか尋問した。
トロールを使い滝のチョコレートを占領し、ボッカに捧げようとした、と男は白状した。
魔人の噂が出れば、滝からチョコレートを持っていこうとする者はいなくなるだろう、と。
魔人の目を盗んでチョコレートが持っていく者を狙って、チョコレート略奪隊も徘徊するようになったそうだ。
しかし、トロールに装着されていた冠については、男は口を割らなかった。
 なので、男の身柄を引き渡したあと、ミサは本部職員にトロールの冠について報告する。
職員は「ふむ……」と唸る。
「実は、ここ最近、同じような冠の事例が何件か、他のウィンクルムからもあげられているのです」
 職員の説明にフィーリアが「……そう、なの?」と問う。
「全てが判明しているわけではないのですが、知能の低いネイチャーなどを操ることができる力があるようです。効果は1日に1時間程度ならしいのですが」
「また、マントゥール教団は厄介なものを使うようになったね」
 エミリオが眉をひそめる。
「しかし、君たちがマントゥール教団の者を掴まえてくれましたからね。これからいろいろ聞き出せるといいのですが」
 と言いながらミサたちを見た職員が、耐えきれない、といった様子で吹き出す。
「す、すみません、ずっと我慢はしてたのですが」
「どうかしたのか」
 ジュストが訊く。
「いえ、君たちが、あまりにも美味しそうだったから」
 4人は顔を見合わせる。
 そこで改めて、皆チョコレートまみれになっていたことに気付く。
「ふっ」
 誰ともなく吹き出し、その場は笑い声とチョコレートの甘い香りに包まれた。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木口アキノ
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 02月05日
出発日 02月13日 00:00
予定納品日 02月23日

参加者

会議室

  • …お帰りなさい…、お仕事、お疲れ様…。

    こちらこそ、よろしく、お願いします…。
    戦い…、ほとんど、ミサさんたちに…、頼って、しまっているし…。

    …うまく、いくと、いいね…。

  • [7]ミサ・フルール

    2015/02/12-22:40 

  • [6]ミサ・フルール

    2015/02/12-22:39 

    こんばんはー!
    遅くなってごめんなさい。

    シャイニングアローの件、了解しました!
    どうもありがとうね、よろしくお願いします(ぺこり)

    プランの最終確認終わりました!
    ではでは任務の成功を祈って、

  • …あ、…はい…、が、頑張ります…。
    えと、偵察するなら…、チョコレートの滝までの道とか、周囲の地理とか…、聞いておくといいかと思って…。
    アプリさんやコットさんに…、やってみる、ね…。

    …魔人と戦っている最中の、確保か足止めは…、お願い、してみる…。
    でも、ジュストは…、スキル、回復かカウンターか、どちらか、しか付けられないから…。
    足止め用に、と思って…、今、…シャイニングアローⅡ、に、してもらってる、けど…、それで、良い…?
    …ロープは、私たちも、持ってく、ね…。

    …ロープ、木と木の間に張って、おいて…、魔人とか誘い込めば…、転ぶかしらって思ったけど…。
    スキルもないし…、ちょっと無理かも…。

  • [4]ミサ・フルール

    2015/02/12-08:14 

    フィーリアちゃん達とまたご一緒できて嬉しいよ、一緒に頑張ろうね!(ぎゅっと手を握り)
    ライフビショップの援護、とても心強いな。
    前衛での仕事は私達に任せてね(片手でどんっと胸を叩き)

    うん、最初は滝の周りを偵察してみようか。
    前衛職の私達が先行するね。

    魔人はチョコレートの滝を守る番人なんじゃないかなーと想像してみたり。
    決められた時間内にしかいられないなんて不思議だよね。

    あと私が気になったのは【マントゥール教団員が出現するタイミング】なんだよね……。
    もし私達が魔人と戦っている最中に教団員がせっせとチョコを盗んでいたら嫌だなーと思ったの。

    とりあえずプランは完成したんだけど(何かあれば調整しようと思っているよ)
    私とエミリオさんのプラン、ゴブリンと魔人との戦闘のことについて重点を置いて書いたから教団員確保のことは【鳩尾や首の後ろを殴って気絶させ、用意した縄で縛る】くらいしか書けなかったの(しゅん、と俯き)

    もし魔人と戦っている最中に教団員が現れたらジュスト君に教団員の確保もしくは足止めをお願いできたりしないかな?
    出発前日だし難しい場合は遠慮せず言ってね。
    こっちの方でプランを調整してみるよ。

    今日は仕事が遅番で14:00~21:00の間は会議室に来れないんだ。
    帰宅してからだと22:00になってしまうかも、ごめんなさい(お辞儀)
    もし何か不安に思うことがあったらどんなに小さなことでもいいから教えてくれると嬉しいな。
    それではまた後でね!

  • …あ、…っ…、あの…、ミサさん、エミリオさん、…お久しぶり、です。
    その…、よろしく、お願いします。(ぺこり)
    …良かっ、た…、ジュスト、は『ライフビショップ』で、回復とかカウンターとか、できるけど…。
    二人でどうしよう、て…、その…。

    …えと、…、先に、デミ・ゴブリンを退治、するのは、いいと、思います…。
    …チョコレート魔人は、滝壺に近づいてから、現れたみたい、だし…。
    こっちが、先に、偵察?、とかして…、デミ・ゴブリン、見つけられたら、いい、かしら…?

    …デミ・ゴブリンとか、マントゥール教団とか…、チョコレート魔人と、何か、関係あるの、かしら…?

  • [2]ミサ・フルール

    2015/02/11-07:42 

    ミサ・フルールとパートナーのエミリオさんのジョブは『テンペストダンサー』です。
    どうぞよろしくお願いします(お辞儀)
    フィーリアちゃん、久しぶりだね!

    チョコレート魔人との戦いに集中する為にまずはデミ・ゴブリンを退治しようかなと思っているよ。
    マントゥール教団員もいたら逮捕しないとね。

    今のところ少ない人数で大変だけど、自分ができることを精一杯やろうと思っているよ。
    (これから仕事の為、18時以降に会議室に来ます)

  • [1]ミサ・フルール

    2015/02/11-07:40 


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