プロローグ
●ホット・チョコレート・ドリンク in かまくら
「甘いものは、お好きですか?」
A.R.O.A.職員がウィンクルム達の反応を伺いつつ、言葉を続ける。
「スノーウッドの森近くの村で『自分好みのホットチョコレートドリンクを堪能しよう!』という催しがあるそうです」
そう言いつつ、職員が差し出すチラシに目をやれば。
ホットチョコレートドリンク、ココアの定義は様々あるが、今回の場合は固形のチョコレートと温めた牛乳、お好みで砂糖など甘味料を入れた飲み物を指すらしい。
「あ、『それだけ?』って思ってませんかぁ?」
表情を伺っていた職員が更に言葉を続ける。
「自分好みのホットチョコレートを飲めるのは勿論、飲むのは雪で作られたかまくらの中なんです。
二人きりであったかくてあまぁいホットチョコレートを、身を寄せあって飲む……なんだか素敵じゃありませんか?」
職員はうっとりとした表情でどこかを見つめはじめた。
そして更に言葉を続ける。
ホットチョコレートにこだわりがあれば、まずは使えるチョコレート。
甘みあるミルクチョコ、カカオ感のあるスィート、苦味を強く感じるビター。
こだわりがあればカカオ分のパーセンテージ(%)も指定できる。
コクのあるホワイトチョコレートも利用可。
チョコレートをブレンドするのも面白いかもしれない。
更にチョコレートを溶かす牛乳。
これを豆乳やお湯に変えることもできる。
チョコ多めならそれだけ濃厚に、牛乳多めならそれだけマイルドになる。
砂糖も基本の白砂糖から、グラニュー糖。
ブラウンシュガー、黒砂糖、はちみつ。
キャラメルソースやチョコレートシロップを使うのもありだろう。
チョコレート自体にも甘さはあるため、ノンシュガーでもいいだろう。
トッピングにもこだわりたい。
生クリームやホイップクリーム。
ココアパウダー、シナモン、ジンジャーやペッパーも最近は入れる人がいるようだ。
ラム酒やブランデーなどのリキュール。
オレンジのフレーバーやミントフレーバー、マシュマロもホットチョコレートによく合う。
アラザンやチョコスプレー、カカオニブを散らすなど見た目にも華やかだ。
以上、職員の熱弁をまとめるとこんな感じ。恐らく。
「どうですか、無限の可能性が広がっているんですよ…!」
拳を握り締め、語りに語る職員。
「ただ、飲み物はホットチョコレートしかありません。
甘いものが苦手ならば、ビターチョコレートに砂糖なし。お酒を入れれば大人味になりますね」
職員の熱すぎるホット・チョコレート・ドリンクへのこだわりはさておきや。
かまくらでパートナーと二人きり。
肩を寄せ合い、温かい飲み物を飲みながらパートナーと語り合うのは良いだろう。
飲み物へのこだわり、日頃の想い、クリスマスに向けて等。
「えっと、ドリンク代金とかまくらキープ代含めまして、二人で600Jrです。
ちなみに瘴気払いも兼ねてますから、いくらかまくら同士が離れていて声が聞こえないからといって、痴話喧嘩や殴り合いは止めてくださいねっ」
時間は晴れた日の午後。
雪でできた定員2名のかまくらの中から、まったりほっこり銀世界を眺めるのもきっと悪くないだろう。
解説
●流れ
参加申し込み時にホットチョコレートドリンクの好みを書いてもらい、
完成したものが二人のいるカマクラに運ばれます。
プランにもよりますがリザルトはカマクラから始る可能性大きいです。
●かまくら
軽くかがまないと入れないような小さな入口。
中も広くありません。
アウトドアで使うような、小さな折りたたみ椅子が二脚用意されています。
二人が腰掛ければ嫌でも密着します。
●ホットチョコレート
年齢20才未満の方はリキュールはラム酒風味シロップ等になります。
プロローグにないものもお使いいただけます。
あまりに突飛なものは使えないかもしれませんがっ。
お好きに素材を選んでいただき、プロフェッショナルさんがお作りするので
よほどのことがない限りマズチョコにはならない仕様です。
ホットチョコレート以外の用意はないので苦手な方、ファイトー。
●指定例
【ビター72%のチョコにミントのリキュール、砂糖なし。
ホイップクリームの上にココアパウダーとアラザン】 等。
文字数取りすぎだ面倒くせぇ!な方には『お任せ』もヘイ喜んで!
適当に妄想してかまくらにお持ちいたします。
ですが、甘め、さっぱり等ちょっとした好みがあると有難いです。
【お任せ。甘め】
【お任せ。すっきり目】
【お任せ。お酒多め。ホワイトチョコNG】
●結局メインは
王道にチョコや甘いもの談義するもよし!
チョコは添え物、イチャイチャまったりするもよし!
クリスマス何欲しい?とかキャッキャウフフするもよし!
まったりほっこり、ほんのり甘くて暖かな冬を楽しんでいただければ幸いです。
喜びが瘴気を払いますがゆえ、痴話喧嘩や殴り合い、決闘等に発展すると失敗やも。
あったかチョコドリンク堪能ですが、防寒してね!
ゲームマスターより
バレンタインでもないのに申し訳ございません。
チョコレート大好き新米へなちょこへっぽこGM上澤そらです。
何卒よろしくお願いいたします。
相変わらずなプロローグですが、よほどのことがない限り
ほっこりしっとりまったりなリザルトに……なればよいな!と思いますがどうなることやら。
アドリブは前作の着ぐるみ程入れることはないと思います。
が「余計なこと書くなやオラ!」な方は【アドリブ不可】の記載をぜひ。
私のカラダはカカオマスで出来ています。
レッツ チョコ浪漫!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
叶(桐華)
普通のミルクチョコレートにお砂糖、マシュマロは必須! 後は…んー、元々ココアに入れて楽しむつもりだったし、ココアパウダーもお願いします バーベキューの時の約束が果たせたねぇ かまくらでぴったりくっついてぬくぬく かまくらなんて、子供の頃以来だなぁ 昔はこんなでっかいの、とても作れなかったよねぇ 僕の昔話は面白くないので割愛で ま、桐華と会うまでは、お察しの通り、一人でぶらっとしてたよ 生まれてから向こう、長い事A.R.O.A.には登録してなかったし、野良神人ってやつ? こういう、狭い所 一人で引き籠ってる時間が、長かったの 今日は、二人だね。だからかな。ふふ、狭い もっとくっついてよ そんで、桐華のお話聞かせてよ |
ハティ(ブリンド)
【甘さ控えめ。ダークチョコ、ミントフレーバー、さっぱりめのホイップ】 蝋燭が入るくらいの小さなかまくらを作る 雪が光を通すのを見るのが好きだ 冷たい筈だけどあったかい感じ リンに感じる空気に似てる 俺ばかりが連れ回しているのも気になって、次はリンが行きたい場所にって 話はしたものの誘いを待てず。だってかまくら。入ってみたかった …待てなかったのは自分だが少し寂しい しっかりしてるんだな。俺の部屋よりあったかいかもしれない リンは行きたい場所、ないのか?一人の方がいい? 分けてもらいながら聞いてみる …しかし寝に帰るために借りているようなものだから 帰らないと意味がなくなる 差し出されたものを見て言葉を噤む くれる、のか? |
柊崎 直香(ゼク=ファル)
先生狭いです 誰かさんは横幅もあるからね 寄りすぎると崩れるよ フレーバーはお菓子作りが得意なゼクに任せよう 猫舌な僕は甘い香りをしばらく楽しんで。 ねえゼク、一口頂戴 ……控えめに言って、すごく甘くない? かまくらの中は暖かいって デマじゃないですかね普通に寒いよ まあ全力で冬を満喫できて良しとしよう 雪遊びしたことなかったし もうすぐクリスマスでしょ。それが終わったら年越し、お正月と。 イベントいっぱい。どこ行こうか 優先はお仕事だけど 家で? 出不精は良くないよ ああゼクはツリー飾ってご馳走食べて クリスマスの朝の枕元を楽しみにする良い子だもんね 今更だけど帰りにツリー買う? じゃあクリスマスケーキは飛びきり甘いのにしないと |
アイオライト・セプテンバー(白露)
あたしね、ホワイトチョコレート! チョコ多めでどろっとして、すごく甘いの それにオレンジとかフルーツのグラッセ足すのって大丈夫かな チョコレートフォンデュみたいに絡めながら食べると、美味しいよね わーいパパと二人っきりだ←二人暮らしなので、大体二人きりです この日のために用意した上着「プレゼントマン」 チョコレートであったまったら、いざ! 「パパ、あたしを食・べ・て♪」 『…では、いただきます』 「あーっ。パパがあたしのチョコ盗ったー!」 楽しみにちょこっとずつ飲んでたのにーっ(えぐえぐ でもね あたし、今年パパとずっと一緒で幸せだったよ だから、なにかプレゼントしたかったのは本当なの それは信じてね いなくなっちゃやだよ |
明智珠樹(千亞)
【お任せ。千亞をイメージした甘くて可愛いものを】 ふ、ふふ、可愛い千亞さんと密着できる絶好の機会ですね…! …これが私のドリンクですね。美味しいです、ふふ。 よければ千亞さんもぜひ。 (幸せそうな千亞を微笑み眺め) 甘いものは食べますが……流石に千亞さんほどではありませんね。 むしろ甘いものに喜ぶ千亞さんを食べ(略) それに。 そしてもっと色んな悦びの表情も見たいですが、ふふ、ふふふ…!!(妄想) 「ただ…無理はしないでくださいね。 ウィンクルムとしては失格かもしれませんが……」 (頬に顔を寄せ、壁ドンならぬかまくらドン) …その時を楽しみにしておりますね、可愛い千亞さん。 そしてもっと強くお願いします。 『ド変態!』 |
●願い
叶はいつになくご機嫌だった。それこそ鼻歌でも聞こえてきそうな勢いで。
「ね、桐華。バーベキューの時の約束が果たせたねぇ」
笑顔を向ける叶に桐華は頷く。季節はあっという間に過ぎるものだ、と思いながら。
二人がかまくらに入るとすぐ、ドリンクが運ばれてきた。
紫がかったマグカップには叶が頼んだドリンク。ミルクチョコレートに砂糖が入り、マシュマロがぷかぷか浮かんでいる。ココアパウダーもかかり、見た目にも可愛い。
桐華には彼の髪飾りと同じような淡い紫色のマグカップ。
ビターチョコにマシュマロだけという予定だったが、叶の
「それじゃ面白くないのでもう少しお任せアレンジしてあげてください」
という言葉により、バニラのフレーバーと甘味のないチョコソースがかかっている。
「ま、激甘じゃないだけいいか」
「それじゃあ桐華、かんぱーい!」
叶の明るい声に桐華もマグカップを重ねる。
「ふぁ、マシュマロがとろけて、甘くてっ。美味しいねぇ」
幸せそうに頬っぺたを押さえる叶。桐華も自分のドリンクとマシュマロを堪能する。
ビターを選んだが、それでも甘く感じるのは隣のパートナーの体温を感じるせいもあるだろうか。
桐華にぴったりとくっつき、叶はぬくぬくと幸せな表情を見せている。
「かまくらなんて、子供の頃以来だなぁ。昔はこんなでっかいの、とても作れなかったよねぇ」
同意を求めてくる視線に桐華は。
「大人二人が入るサイズは子供一人じゃ無理だわな……誰かと一緒なら、別だろうけど」
呟き、探るような視線。思い出話にかこつけて、前の相棒の話を聞き出そうだなんて。……我ながら嫉妬深いと思いながら。
「ん?僕の昔話なんて面白くないから割愛でー。お察しの通り、桐華と会うまでは一人でぶらっとしてたよ」
叶の少し遠くを見る表情に、桐華は(上手いこと交わしやがって)と心の中で毒づいた。
「生まれてから向こう、長いこと機関に登録してなかったし。野良神人ってやつ?」
茶目っ気たっぷりな笑顔でまっすぐに桐華を見る。
「確かに野良気質だよ、お前は」
……お蔭様でお前の情報は自力発掘になって、未だに全然知らないと来た。
知ったところで、自分の気持ちが落ち着くのか。むしろ、心に小さな棘が刺さるのかもしれない。いや、もう刺さっているのかもしれない。
しかしそんな痛みなんて気にならない位……叶をもっと知りたい。
そんな桐華の心中を察する様子もなく。
「こういう、狭い所」
叶が呟く。
「一人で引き籠ってる時間が、長かったの」
チョコレートを一口飲み。
「今日は、二人だね。……だからかな。ふふ、狭い」
にへら、と叶が笑う。桐華がかまくらに手を触れその冷たさを感じる。叶とは対照的に、桐華は眉を寄せ
「……そんな時間が長かったからって、一人が、好きなわけでもねぇだろ」
その言葉に返答せず、叶は桐華の肩にもたれた。
「もっとくっついてよ。そんで、桐華のお話聞かせてよ」
「俺の話、ね」
……しばしの思案。
「取り立てて面白くもねぇよ。……甘えたで寂しがりなでかい子供が、どうにも、愛しいってくらい」
複雑な色を見せる桐華の赤色の瞳。叶はじぃっと見つめて、そして。
「なんか、お父さんみたい」
にぱ!と笑顔を向ける叶。台無しだなこの野郎、と桐華は叶の帽子をくしゃりと撫でた。
●約束
「先生、狭いです」
柊崎直香がかまくらの中で窮屈そうに、小さい身を更に小さくする。
「……これでも端に寄ってる」
直香のパートナー、ゼク=ファルが頑張って空間を開けようとするも、長身の彼には難しい。
実はそこまで直香がギュウギュウでないことに、彼は勿論気づいていない。
「誰かさんは横幅もあるからね」
「横幅って、俺が肥えてるみたいに言うな」
ぐむむ、とゼクは眉間に皺を寄せ、体をかまくら側へ。
「あーあー、寄りすぎるとかまくら崩れるよ?あ、チョコきたー」
ウェイターが黒色のマグカップを直香の前に、白色のマグカップをゼクの前に差し出す。
「ね、お菓子作りが超!得意なゼクさん。どんなのにしてくれたの?」
満面の笑みをゼクに向ければ、ゼクは(菓子作り勉強中の俺に嫌味か)と、ぐぬぬぬぬ。やっぱり直香の嫌いなピーマンを入れてやれば良かった、とか思いつつ説明をする。
「スイートチョコレートをベースにヘーゼル、カシュー、マカダミア等の砕いたナッツ類をトッピングしてもらった。キャラメル風味のシロップも入っているから香ばしくて美味しいと……思う」
「へー、いい香りー」
手にマグカップを持ち、直香が顔を近づける。猫舌な彼はカップにふーふーと息を。
対するゼクは己のドリンクを口付け、幸せそうにチョコレートドリンクを堪能する。
やっと飲める程度の温度になったチョコを直香は喉に流し込んだ。
「ん、香りほど甘さは強くなんいんだね。美味しい」
その言葉に安心するゼク。やはり選んだものを気に入ってもらえるのは嬉しい。
「ねぇゼクはどんなものにしたの?一口頂戴」
ん、と白いマグカップを直香に差し出した。
一口飲み、思わず顔をしかめる直香。決して美味しくないわけじゃない。だがしかし甘い。ひたすらに甘い。鬼のように甘い。
「……控えめに言って、すごく甘くない?」
そうか?とゼクは何事もなくゴクゴクと口にする。
彼が頼んだのはスイートチョコに少量の牛乳、あまぁいホイップクリームをたっぷりと、更にこれでもかとはちみつがかかったドリンク。こんなに甘目で本当にいいんですか!?とシェフが3回確認してきた伝説の一品。
チョコレートを堪能し、二人の身体が暖まったか…と思いきや。
「かまくらの中は暖かいって……デマじゃないですかね、普通に寒いよ」
ブルブルと直香が身を震わす。
「雪があるんだ、寒いのは当たり前だろ。出掛けに言っただろうが」
少し薄着なのか、それとも猫属性で寒さに弱いのか。直香がやや唇を尖らすも。
「まぁ、全力で冬を満喫できて良しとしよう」
ドリンクがまだ入っているマグカップを両手で包み、手のひらに暖かさを感じながら、ニッと笑う。
「雪遊びしたことなかったし」
「俺もそう雪深い場所で育ったわけじゃない……降れば遊んではいたが」
ゼクが昔を思い出すように、外の景色へと視線を移す。
「もうすぐクリスマスでしょ。それが終わったら年越し、お正月と」
直香が指を折りつつ予定を数える。
「イベントいっぱい。どこ行こうか」
勿論、優先はお仕事だけど、と付け加え。
「出掛けずとも家で楽しむ方法もあるぞ。というか静かにしていろ」
「え?家で?」
直香が目を丸くした。
「出不精は良くないよ。……あぁ、ゼクはツリー飾ってご馳走食べて、クリスマスの朝の枕元を楽しみにする良い子だもんね」
「良い子って、そういうお前は――」
直香のふふん、という悪戯な視線。
そんな視線を受けるのは日常茶飯事だったが……その瞳の奥の、何かを訴えかける光を薄らと捉え、思い出す。
直香のこれまでの生活。きっと、彼は――
言葉を返してこないゼクに、直香は更に言葉を続けた。
「今更だけど帰りにツリーを買う?」
「……ああ、そうだな」
ゼクが頷き。
「ツリーを買おう。アドベントカレンダーも。今までの日数一気に開けてしまえばいい」
彼にしては大胆な発想に直香はキョトンとした表情を見せた。
「年越しの準備も併せてする。忙しくなるぞ。掃除、手伝えよ」
ぶっきらぼうに、しかし楽しげにゼクは伝える。
「そうだね。じゃあまずはクリスマスケーキかな。飛びきり甘いのにしないと」
皮肉を込めた直香の声に。
「ツリーは飛びきり背の高いものにしよう」
「それじゃ僕が飾りつけできないじゃん!ゼクの意地悪ー!鬼ー!老亀ー!筋肉痛ー!」
楽しげな直香の笑顔。
きっと今年は二人にとって一番思い出の残る冬になるだろう。
●想い
かまくらを前に、明智珠樹が呟いた。
「ふ、ふふ……!可愛い千亞さんと密着できる絶好の機会ですね……!」
そんな珠樹の足を思い切り踏みつけるのはパートナーの千亞。
おそらく珠樹との密着以上にチョコレートの誘惑が勝ったのであろう。
かまくらに入れば、ウェイターが2つのドリンクを持ってきた。
ピンク色のマグカップには千亞のオーダーしたドリンク、ビターチョコレートをベースとし、温めた牛乳で溶かしたもの。
トップに乗ったホイップクリームにはカラメルソースとカスタードソースが彩られ、まるでプリンのような香りと味を醸し出す。
「うわぁ……!」
千亞のパッチリとした瞳に輝きが増した。
珠樹には淡い紫色のマグカップ。
「これが私のドリンクですね、ふふ……!千亞さん、乾杯」
乾杯、と二人はマグカップに口を付ける。
「うわぁ……プリンの味!チョコプリンだぁあ」
子供のように無邪気にはしゃぐ千亞に珠樹は目を細め微笑みを浮かべる。
「こちらも美味しいですよ。よければ千亞さんもぜひ」
「ありがと。珠樹はどんなの頼んだんだ?」
「ふ、ふふ、千亞さんをイメージしていただきました」
カップにはたっぷりのホイップクリーム。アラザンがキラキラと光り、更にラズベリーのソースが彩りよくかかっている。
「へ?僕をイメージ?バーじゃあるまいし……」
しかし満更でもなさそうに千亞が珠樹のカップに口を付けた。
ドリンクはホワイトチョコをベースとし、ほのかに酸味。きっと中にもベリーのソースが入っているのだろう。
「甘酸っぱくて美味しい……!」
千亞の顔が更に綻んだ。そして、飲む?と珠樹にもカップを渡す。
嬉しそうにコクコクとドリンクを飲む珠樹を見て
「珠樹も結構甘いもの食べるんだなー、意外」
多分嬉しそうなのは間接キスが理由かと。
「甘いものは食べますが……流石に千亞さんほどではありませんね。むしろ甘いものに喜ぶ千亞さんを食べ――」
爽やかな笑顔を添えて珠樹が言い終わるよりも早く、千亞の鉄拳が飛んだ。おおふ、と珠樹が腹を押さえるも幸せそうなのはいつものことだ。
「それに」
更に言葉を続けようとする珠樹に、千亜が拳を振り上げる。
「愛らしい千亞さんの喜ぶ顔が見たいのは当然じゃありませんか」
いつもの冗談めかしたものではなく、珠樹は真っ直ぐとした視線を千亞に向けた。
その表情に千亞の顔がみるみる紅潮し、上げた拳がやり場を失う。そんな真剣な瞳、ずるい。
「そしてもっと色んな悦びの表情も見たいですが、ふふ、ふふふ…!!」
いつもの表情へと戻る珠樹に少し安心する千亞。
「ば、バカ、からかうなド変態ッ!!」
そっぽを向き、己のドリンクを堪能する。
「ただ…無理はしないでくださいね。ウィンクルムとしては失格かもしれませんが……」
珠樹の言葉に千亞が顔を向けると、珠樹の手がドン、と千亞の背後のかまくらの壁に押し付けられる形になる。壁ドンならぬかまくらドンだ。
「え?おい、何を……」
慌てる千亞に更に顔を近づける珠樹。そして千亞の頬に唇を寄せ、キスを……する直前で止まり、耳元で囁く。
「千亞さんの本気で嫌がることはしたくありませんから」
千亞が気づいた。
「……トランスのこと、か?」
珠樹の体が離れ、視線が合う。肯定も否定もしてこない。
「……べ、別に嫌がってなんかない。そんなこと気にするな、バカ」
ウィンクルムとして契約するということは戦いの覚悟ができている、ということだろう。
「……その時を楽しみにしておりますね、可愛い可愛い千亞さん」
「うさぎとリスの影響受けすぎ!」
千亞が珠樹の頬をむにぃっとつまむ。
「もっと強くお願いします」
「ド変態!」
どこか楽しげな千亞の声がかまくらに響いた。
●贈り物
「お待たせいたしました」
ウェイターが二つのマグカップを運んできた。
アイオライト・セプテンバーの目の前には濃い蒼色、パートナーの白露の前には白に近い薄い水色のマグカップ。
「お父様とお嬢様のカップを間違えませんよう、お気を付けください」
ウェイターの笑みに、白露が微笑み返す。
「ね、ね、パパ!あたしお嬢様だってー!今日のあたしってそんなに上品ー?」
アイオライトが満面の笑みを白露に向ける。
「はいはい、上品ですよ、とても白くて」
わーい、とアイは嬉しそうにマグカップを両手で抱え。
「うわぁ、あたたかーい!それに甘い香りー♪」
アイが選んだのはホワイトチョコレートのホットドリンク。
チョコの分量が多く、粘度がありドロッとしている。そしてドリンクに添えられた、オレンジや桃、リンゴのグラッセ。
「パパはどんなの?」
アイが白露のドリンクを覗く。
「私はスイートチョコにアマレット、そしてアクセントにペッパーが入ったドリンクです」
「アマレット?」
アイがキョトンと首を傾げた。
「アマレットはお酒ですね。体を温めてくれますが……アイはもう少し大人になってから、ですね」
「むー。早くあたしも大人の悪女になって、あまれっと飲むのー」
「はい、一緒に飲めるのを楽しみにしてますよ。アイ、乾杯」
柔らかく微笑む白露にアイが自分のマグカップをコン、と重ねる。
程よくお酒が効きペッパーの辛みがチョコレートのコクを際立たせ、白露の体を暖める。
「ん、美味しい。アイ、美味しいですか?」
「うん、美味しー!それにね、見てパパ、フルーツを絡めると…チョコレートフォンデュみたいになるのー!」
キャッキャとはしゃぎ、嬉しそうなアイ。美味しそうにフルーツをフォンデュしては食べ、チョコを堪能する。
そして、思い出したように手をポム、と叩いた。
「あのね、パパと二人っきりだから……特別にプレゼントをあげるね!」
「はい、なんですか?」
今日のアイの格好は「プレゼントマン」なるプレゼント袋を模したお洋服。
「パパ、あたしを食・べ・て♪」
ウインクするアイ。
……しばしの沈黙の後、白露の手がアイの身体にゆっくりと近づく。
「では、いただきます」
いつもより低い声を発する白露にアイの可愛らしい胸がトクン、と鳴った。
アイがギュっと目を瞑ると……手に持っていたホワイトチョコドリンクをスッと奪われた。
「あーっ!パパがあたしのチョコ盗ったー!!」
目に涙をため、アイちゃん猛抗議。
「……そんなことだろうとは思ってましたけどね」
かまくらに入る前から上着を着ていたため、アイの思惑が手に取るようにわかる白露パパがふぅ、と息をつく。
「楽しみにちょこっとずつ飲んでたのにーっ」
えぐえぐ、と可愛い表情が涙に濡れ。
「はい、チョコは返しますよ。帰ったらおかわりも作ってあげますから、泣くのはやめてください」
「ホントに?」
とアイが顔を上げる。
「うるさくすると、かまくらが壊れちゃいますよ?」
「……なら、許したげる。絶対に絶対、約束忘れないでね、パパ!」
はいはい、と己のドリンクをすする。
「まったく、何処でそんなことを憶えてくるんですか」
呟く白露に
「えっとね、テレビで見たお昼のドラマかな?」
教育とは難しいものですね、としみじみ思い。昼時はチャンネルを変えようと誓った白露だった。
「でもね」
しばらくチョコを堪能しているとアイが口を開き、いつになく真剣な表情で白露を見据えた。
「あたし、今年パパとずっと一緒で幸せだったよ。だから、なにかプレゼントしたかったのは本当なの」
突然の真剣な言葉に白露が少し驚いた表情を見せた。更にアイは言葉を続ける。
「それは、信じてね。……パパ。いなくなっちゃ、やだよ」
上目遣いに白露を見上げ、懇願するような瞳。
アイの心からの言葉に白露は微笑み、金色に輝く長い髪を優しく撫でた。
「プレゼントなんか必要ありませんよ。これからも二人で一緒にがんばりましょうね」
例えどんな過去があっても、血の繋がりはなくとも。
今、二人で過ごすこの時間は真実なのだから。
「私はちゃんとアイの傍にいますから」
白露の言葉に、アイが「パパ、大好き!」と満面の笑みで飛びついた。
これ以上のプレゼントなんていらない。
かけがえのないプレゼントは、既に白露の腕の中にあるのだから。
●鍵
ホットチョコレートの到着を待つ間、ハティはかまくらの中で更に小さなかまくらを作り上げていた。
何やってんだか、このマイペースヤロー、とハティのパートナー、ブリンドが呆れた表情で見守る。
「できた」
出来上がったミニかまくらに、ハティは持参した蝋燭をそっと入れ、火をつけた。
それと同時にホットチョコレートを運ばれてくる。
燃えるような赤色のマグカップには、ハティが頼んだチョコレートミントドリンク。
ビターチョコレートベースにミントのフレーバー。さっぱりとしたホイップの上には柔らかい青色のミントソースがかかっている。
灰青のマグカップにはブリンドが頼んだラム酒シロップ入りのドリンク。
ハティと同じく甘さは控えめ、ジンジャーやナツメグ等のスパイスが入り、ジンジャーブレッドのような風味を醸し出している。
ミニかまくらから揺らめく蝋燭の炎を眺めつつ、二人がドリンクに口を付ける。
美味し、とハティが息を漏らす。
雪が光を通すのを見るのが好きだ。冷たい筈だけどあったかい感じ。……リンに感じる空気に似てる。
ハティが視線をブリンドに移すと、ブリンドの瞳と目があった。
「ほらよ」
その視線をブリンドは自分のドリンクを飲みたいのだろう、と思ったようだ。キョトンとするハティに
「んだよ、飲みてぇんじゃねぇのか?」
「……飲んでみたい。リン、頂戴」
そして己のマグカップもブリンドに渡し。
「リンのチョコ、スパイシー。クリスマスっぽい。お酒……風味?」
お酒が入っているかと思ったが、きっと一口欲しがるだろう未成年のハティを思ってシロップに。
「おぅ。お前のはスーッとすんな」
……あぁ、チョコミントもブリンドっぽいかも、とハティは思う。
「リン」
「なんだよ」
ブリンドはミニかまくらから視線は外さず応えた。その視線にハティも蝋燭に目を移す。
「次はリンの行きたい場所にって話はしたものの、誘いを待てず。だってかまくら。入ってみたかった」
「お前は穴に入る動物かなんかか。布団にも入りたがるし」
いつもの日常や、在りし日の宿での出来事をブリンドは思い出す。
「んで起こされて落ち着いた頃に『寝るのか?』『じゃあ俺も寝に帰るな』ってどういうこった」
冷えて帰るってアホなんじゃねえかと。泊まりゃいいって何度も言っているのに。
(こいつ、妙なところで遠慮する奴なんだよな。普段は距離感なんてものともしないやつなのに)
諦めに似た表情をブリンドは見せた。ハティは視線はミニかまくらに向けられたまま。燐光の瞳に揺らめく蝋燭の火が映る。
「俺ばかりが連れまわしてるの、気になって」
「あぁ?あのよ、お前……」
言葉を挟もうとするが、尚もハティの言葉は続く。
「待てなかったのは自分だが、少し寂しい」
「はぁ?」
と思わずブリンドの声が上がる。
「リンは行きたい場所、ないのか?……一人の方がいい?」
「つーか、誘ってんだろ、ずっと」
ブリンドが苛立った声を上げた。その言葉の意味がわからずハティは小首を傾げる。
どこに誘ってくれたっけ?と思い出すため顔を上げてみると、目に入るのはかまくらの雪の壁。ハティはそっと手を添えてみる。
「しっかりしてるんだな。俺の部屋よりあったかいかもしれない」
彼の相変わらずのマイペースっぷりにはもう慣れた。
「部屋のが寒いってどんな物件掴まされてんだアホが。なんでお前、俺の家への誘いはカウントしねえの?」
「寝に帰るために借りているようなものだから、帰らないと意味がなくなる」
「だから。俺の家に来ればいいっつってんだ」
この鈍感野郎、という言葉は飲み込んで。
「どうせメシは食うんだしよ。寝るためだけの家なんて、それこそ勿体ねえだろ」
ほらよ、とブリンドがハティに手渡したのは……一本の鍵。
「あれ?」
思い出の鍵に似た、薄青の色硝子を填め込んだ銀色の鍵。
「あん時のじゃねぇぞ。似てるだけだ」
きっと後から作ったのであろう、ブリンドの部屋の合鍵。
「くれる、のか?」
「いらねぇなら返せ」
「……ありがとう」
少し早いクリスマスプレゼントに、ハティは顔を綻ばせた。
こうして。
冬の割に暖かな日差しが、五つのかまくらを甘く包み込んだ。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 上澤そら |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | ロマンス |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 12月01日 |
出発日 | 12月07日 00:00 |
予定納品日 | 12月17日 |
参加者
- 叶(桐華)
- ハティ(ブリンド)
- 柊崎 直香(ゼク=ファル)
- アイオライト・セプテンバー(白露)
- 明智珠樹(千亞)
会議室
-
2014/12/06-23:58
-
2014/12/06-23:58
スタンプ詐欺。
べつに今回は遊んでないよ!
だんまりでごめんよー、なにしようかなーって悩んでた。
間に合ってよかったよかった(ゼク引っ張って顔に書き書き) -
2014/12/06-23:58
-
2014/12/06-22:25
スタンプを頼みたくなる流れ。
ああ企画の。……完成早いな?!明智さんも叶さんもおめでとう。
俺の方もプラン送信完了だ。長く楽しめるようあったかくして行こう。 -
2014/12/06-20:53
対抗してぺったんこ!
明智君とこのもかわいいー!千亞君ラブリー!おめでとうね!
プランは、これから!(きりりっ) -
2014/12/06-20:50
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2014/12/06-17:15
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2014/12/06-17:14
抱っこスタンプ完成おめでとうー♪
あたしもプラン提出したよー♪
そんなわけで、スタンプ乗っかり乗っかり。 -
2014/12/06-12:22
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2014/12/06-12:22
叶さんと愉快な桐華さんの抱っこアイコンできてらしたので無駄にスタンプしてみました申し訳ございません……!
ご両人呼びが好評で嬉しかった私です、ふふ。
そしてハティさんがご名答すぎてハァハァします、ふふ。
そんなこんなでプラン提出完了です。
皆様のかまくらイチャイチャ楽しみにしております、ふふ…! -
2014/12/06-12:15
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2014/12/04-22:59
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2014/12/04-17:50
アイ:
このまえまで一緒だった人も多いような(笑)
アイオライト・セプテンバーでーす、よろしくでーすっ。
明智さんと千亞さんは初めましてー♪
わーい、ご両人だって言われたー♪
よしっ、ここはかまくらで念願の「あたしがプレゼント♪」をやるチャンス( `・ω・´)bグッ
白露:
…………。白露です、よろしくおねがいします。 -
2014/12/04-17:49
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2014/12/04-09:37
千亞さん、それ多分明智さんが喜ぶだけだ。
うん、ハティとブリンドだ。またよろしくな。
かまくらに入れると聞いて来た。小さいと言っても俺達が二人
入れるってすごいな。
チョコ浪漫。レシピ聞くだけで美味そう。 -
2014/12/04-06:23
千亞:
(明智の足をググッと踏みつけ)
ハティさん達は星巡りのリボンでお会いしてるぞー。
ハティさん、ブリンドさん、大変失礼しましたっ。
今回もよろしくお願いしますっ(ぺこぺこ) -
2014/12/04-00:28
ご両人!なんだろう凄く素敵な響き!
明智君たち以外はちょこちょこお顔合わせたりしてるかな?
叶と愉快な桐華さんだよ宜しくねー。
ホットチョコにー、マシュマロ!
寒くなったらしようねって桐華と約束してたから果たせる機会に混ざれて素直に嬉しい僕だよ。
かまくらも子供の頃以来な気がするから楽しみー。 -
2014/12/04-00:23
こんばんは、明智珠樹と申します。
直香さんはシマシマぶりですね、今回もよろしくお願いいたします…!(手をふりふり)
叶さんご両人、ハティさんご両人、アイオライトさんご両人ははじめまして、ですね。
千亞さん共々何卒よろしくお願いいたします…!ふふ。
うちの千亞さんがチョコレートを飲みたそうなので参りました。
良きかまくらほっこりを楽しみたいですね、ふふ、ふふふ…!!!