【ユニパ!A】お菓子の国で遊ぼう!(まめ マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

『お菓子王国のハートフルキッチン』

クッキーやマカロンなどのお菓子の装飾がカラフルにデコレーションされた看板には、ファンシーな文字でそう書き記されていた。
そしてそのすぐ後ろには、白いホールケーキをイメージした大きな建造物がどどんと構えている。
2段構えのケーキの1段目には建物の中へと続く通路があり、その入り口付近には例の看板と、フリフリのエプロンドレスを身に着けた受付女性が一人。
どこを見ても異様なオーラが漂っているように見えるのは気のせいだろうか。いや、気のせいであってほしい。

……ここは、タブロス市内のゲームセンター『ユニゾンパーク』。
若者たちで賑わう活気あるスポットで、人気デートスポットの一つとして様々な雑誌で特集が組まれるほど。
建物全てがゲームセンターとなっており、音楽ゲームなどの協力プレイゲームや格闘ゲームなどの対戦プレイゲーム。
そしてお馴染みクレーンゲームなど、様々なゲームを楽しむことができる。
奥の方にはアトラクション等のコーナーもあり、『お菓子王国のハートフルキッチン』もこのアトラクションスペースのうちの一つであった。

一体どんなアトラクションが楽しめるのか、試しに入り口付近にいた受付女性に尋ねてみると、彼女は眩しい笑顔でこう答えた。

「『お菓子王国のハートフルキッチン』へようこそ~!
 ここではお菓子の妖精が『ユニゾンパーク』のマスコット『ユニ子』ちゃんの大好物のお菓子を作っているよ!
 けど大変!キッチンにイタズラネズミが沢山現れちゃったみたい!みんな~この銃でイタズラネズミをやっつけよ~☆」

彼女が手にした銃は『ワルサーP38』…などではもちろん無く、丸い曲線を描くおもちゃのような銃で、まるでチョコレートを固めて作ったかのように見える。
銃口からは赤い光が出ており、トリガーを引くとその光がチカチカと点滅する。
そして同じような赤い光を持つネズミのおもちゃが、アトラクション内に出撃するようだ。
『お菓子王国のハートフルキッチン』は、そのネズミのおもちゃをこのチョコレート銃で狙い撃っていく…という内容のガンシューティングアトラクションであった。

「あ、ちなみにイタズラネズミですが、強さのレベルを選べるよ!
 EASYモードは、照準の大きいネズミだけが現れる初心者さん向けのモード。
 NORMALモードは、大きいネズミと小さいネズミがランダムで現れるモードだよ!
 HARDモードは、NORMALモードと同じで大きいネズミと小さいネズミがランダムで現れるんだけど、なんと攻撃してきちゃいます~☆
 でも安心してね!攻撃は水鉄砲だから、当たっても怪我はしないよ!お洋服が濡れちゃうから気を付けてね☆」

解説

巷で話題のゲームセンター『ユニゾンパーク』にやってきた神人と精霊。
色々なゲームで遊び、盛り上がっていた所でこのアトラクションにぶち当たりました。
お菓子モチーフで一見可愛らしいこのアトラクションですが、一癖ありそうな予感がします。

入場料は一組300Jrです。

●遊び方
受付のお姉さんからチョコレート銃を神人、精霊それぞれで受け取ったら入場ください。
最初はお菓子を作る妖精達の和やかな話し声などが聞こえていますが、そのすぐ後にイタズラネズミが登場し、妖精達のお菓子作りの邪魔を始めます。
イタズラネズミはどれも丸い照準を体のどこかに持っていますので、その照準目掛けて銃を構えトリガーを引いてください。
うまくヒットすると、効果音と共にネズミの鳴き声があがります。

モードは選べる3種類。
EASYモード…照準の大きいネズミだけが出現。スピードは他の二つのモードよりも遅め。
NORMALモード…大・小のネズミがランダムで出現。
HARDモード…NORMALモード同様、大・小のネズミがランダムで出現。ただし、水鉄砲で攻撃してきます。

濡れた洋服は、受付のお姉さんがちゃんと乾かしてくれるので心配無用です。
濡れたくないという場合は、レインコートも無料で貸し出しています。
こちらも受付のお姉さんに尋ねてみてください。

●ユニゾンパークマスコット解説
・ユニ子
白馬のユニコーンの女の子。18歳。3等身。
パッチリおめめのキュートな女の子
真っ白な毛並みが自慢でおしゃれがだーい好き!
いつも明るく元気な笑顔でみんなをお出迎えしちゃうぞ
ボーイフレンドのコー太くんとはとっても仲良しなんだよ!

・コー太(※本エピ出番無し)
黒馬のユニコーンの男の子。18歳、3等身。
キリッとした瞳の元気な男の子
黒い毛並みが自慢で友達(来場者)思いの熱血漢!
ちょっと照れ屋で女の子に抱きつかれると照れちゃうだゾ。
ガールフレンドのユニ子ちゃんが大好きなんだよ



ゲームマスターより

木乃GM主催の連動企画【ユニパ!AorG】のA側(アトラクション)のエピソードの一つになります!
モードの選べるガンシューティングアトラクションで日頃のストレス解消をしてみませんか?

参加者の皆様はどのモードでプレイされるか、
プレイ中、神人がどんな反応をするのか、精霊がどんな行動をとるのか、どんな連携をみせるのかなどなど、自由に記載いただければと思います。

ぶっちゃけ数撃てば当たるので細かい計画は不要で大丈夫です。
いや、そこはこだわりたい!ということであれば、もちろん細かい計画を立てたプラン提出も有りでございます。

決して、HARDモードが書きたいから申請したエピではありません。
真剣にピュアラブを目指しています。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

日向 悠夜(降矢 弓弦)

  降矢さんが最近、機械に挑戦しているみたいだから
ユニパに誘ったけれど…まだ早いかな?
わあ、ファンシー…降矢さんがやる気なら、もちろんやるよ!

色々難易度があるんだね
折角だからHARDに挑戦してみる?
レインコート…乾かしてもらえるなら別に良いかな
水鉄砲もアトラクションの醍醐味だもんね

軽く作戦を立てるよ
その方が弓弦さんにゲームを意識させなくて済みそうだもの
ネズミが出てこない場所…例えば出入り口などを死角にする様に背中合わせで立つよ
私はあんまり銃を使った事がないけれど、固くならない様気楽にやるね
水鉄砲は中々当たっちゃうね…

あーあ、びしょびしょだ
あはは!降矢さんもびしょ濡れだね

結果がどうであれ楽しみたいよ


テレーズ(山吹)
  わあ、可愛い!
建物だけじゃなくて銃も可愛いですね
…食べれないですよね?

難易度はやるのならやはりHARDでしょう!
そのほうがクリアした時に達成感がありそうです
服はこれしかないのでレインコート借りていきますね

とりあえず当てればいいんですよね
数打てばあたる!です

山吹さんと狙う箇所が被ってしまうと勿体ないですしある程度は分担しましょうか
では私はこっちを頑張るので山吹さんはあっちをお願いします!

顔面で水被る
わっ、冷たい!
もう、お返しですよ、覚悟してくださーい!

へくしっ
楽しかったですがこの時期に水は、すごく冷えますね…

わ、ありがとうございます
上手ですねー、山吹さん
じゃあ次は私がやってあげますね!


上巳 桃(斑雪)
  ユニ子ちゃんかわいいなあ
抱き枕にしたら寝心地よさそうだなあ

モードははーちゃんが決めていいよ
コートは要らないや
体はあとで乾かせばいいしー
はーちゃん、一緒にハイスコア狙おうね

多分はーちゃんのが銃は上手いだろうから、私は周囲をぐるっと警戒しよ
そんで、はーちゃんが見逃しそうなちっちゃい鼠をゆっくり確実に撃っていく
私のがはーちゃんより背高いから、鼠に狙われやすいかも
そんときは私を囮にすればいいよ、はーちゃん

ひゃー濡れた濡れた
このままじゃお布団に入れないね
やっぱりコート借りた方がよかったかも
でも、かっこいいはーちゃんが見られたからよかったかな
(スタッフに乾かしてもらいながら、うとうと)
はーちゃん、ありがと



アイリス・ケリー(ラルク・ラエビガータ)
  可愛らしい感じのアトラクションですね
折角ですから、HARDモードで
乾かして頂けるんですし、濡れても大丈夫ですよ


私は大きいネズミを優先して狙うので、ラルクさんは小さいネズミをお願いしますね
そうですね
どうしても上を目指したくなってしまいます


服、ですか?
濡れるのは分かってましたし、どうと、も…
あ…濡れて、張り付いて…これ、は、恥ずかしい
すみません、ありがとうございます
照れて、悪いですか?(じろり睨み)


服も乾かしてもらったし、ラルクさんに上着を返します
ありがとうございました
…ラルクさんが、こういう風に気遣って下さるのは意外でした
いいえ、悪くないと思います(にこっと笑い)


じゃあ飲みながら、さっきの反省を



ユラ(ルーク)
  アドリブ歓迎

ガンアクションはあんまりやったことないんだけど・・・
難易度はルー君に任せる

外見からしてそうだと思ったけど、やっぱり中もメルヘンだねぇ
ところでユニ子ってあんなに可愛いのに18歳なんだって
知ってた?ルー君より年上なんだよ(笑)

あ、ネズミ。うーん、やっぱり小さいのは狙いにくいなぁ
って、冷たっ!え、なに不意打ちとかありなの!?
・・・・・・よろしい、ならば殲滅だ

壁となる場所があれば一時避難、様子見
なければルークを盾に
ネズミの出現箇所・攻撃頻度を記憶(記憶スキル使用)
出現した時、攻撃をした後などの隙を狙って反撃
なるべく照準を狙って打つ

あはは、濡れたねぇ
まぁ楽しかったからいいんじゃない?



●モード選択
アトラクション前ではゲームモードの選択に悩む参加者の姿があった。
「うーん、ガンアクションはあんまりやったことないんだけど大丈夫かな」
「まぁ、普段銃を使う事なんてないからな」
 アトラクションのパンフレットを片手に、首を傾げて悩む『ユラ』の姿と、横からそのパンフレットを覗き込む『ルーク』の姿があった。
「だめだ。私にはよくわからないよ。難易度はルー君に任せる!」
 暫く悩んでいたユラだったが、途中で考えることが面倒になったのかルークへと選択を委ねる。
「所詮ゲームだし、HARDでも大丈夫だろ」
 ユラはルークの答えに大きく頷いた。


「わぁ、可愛い!」
 次に現れた参加者は、白銀の髪をなびかせてアトラクションに駆け寄った。
「そんなに急がなくてもアトラクションは逃げませんよ」
 くすりと微笑みを浮かべ、その少女『テレーズ』の後をゆっくりと追う『山吹』。
テレーズは受付で銃を受け取ると、自身に向け「食べれないかな?」なんて言って首を傾げている。
新しい物にすぐ夢中になってしまう彼女の癖に山吹は小さく笑うと、銃口に手をかざしてそれを制した。
「例え本物で無いとしても人に銃を向けてはいけませんよ。さて、難易度ですが無難にNORMAL……」
「やはりHARDで!」
 山吹の言葉を遮ってテレーズは片手を高々とあげて宣言した。
「やる気は充分のようですね。わかりました。それで行きましょう」
 山吹は苦笑を浮かべて頷くと、受付からレインコートを受け取ってテレーズと建物の中へと入って行った。


次の参加者は、アトラクションからやや離れた所で様子を伺っていた。
いかにも女性が好きそうなお菓子のデコレーションがされたその建物は、男性にはやや敷居が高い。
「いやにハードルが高い見た目だな。アンタ本当にここに入るのか?」
 身構えたように立ち尽くす『ラルク・ラエビガータ』は、隣に並び立つ『アイリス・ケリー』に入場の確認をとる。
「ええ。とっても可愛らしいですね」
 アイリスは微笑みを浮かべるとアトラクションへと軽やかに歩きはじめる。
そういえばアイリスは甘い物が好きだったと気付いたラルクは、もう何も言う事無く彼女の後を付いていった。
 モード選択でアイリスは迷うことなくHARDモードを選択した。
「アンタがやりたいって言うならいいが、濡れるってわかってるのか?」
 彼女の今日の服装は淡い水色のワンピース。
しかしアイリスはきょとんとした顔で「乾かして頂けるんですし、濡れても大丈夫です」と答える始末。
(分かってないな。これは)
 ラルクは小さく溜め息をつくのだった。


一方、アトラクションの前に居ながら、意識はすっかり別の所に放り投げている参加者が。
視線の先には『ユニゾンパーク』の名物マスコットの『ユニ子』の姿。
「ユニ子ちゃんかわいいなあ。抱き枕にしたら寝心地よさそうだなあ」
 ぼんやりとした様子でユニ子を見つめている『上巳 桃』がその視線の主である。
そしてその隣では、内心とても張り切っているものの、それを静かに抑え込む『斑雪』の姿があった。
 (主様が誘ってくださいました!楽しみです!けれど、本音を言うのは子どもっぽくてちょっと恥ずかしいです)
内側ではこんな葛藤をしていたりする。
「モードははーちゃんが決めていいよ」
 やっと意識を戻した桃は、そう言いながら斑雪の服の袖をくいっとつまむ。
「もちろんHARDですよ!」
 すっかり本音を隠すことも忘れ、むんっと握りこぶしで決意を露わにする斑雪。
その様子に桃は小さく笑うとゆっくりと受付へと歩きはじめた。
桃が受付でレインコートの貸出を断ると、斑雪も「主様がコート要らないとおっしゃるなら、拙者が着るわけにまいりません」と断った。
敵がどんな攻撃を仕掛けてこようとも主様を守るという気構えでいるらしい。


最後の参加者は、まだ『ユニゾンパーク』の入り口付近にいた。
「ゲームセンターというのは騒がしい所なんだね。置いてある機械も一切分からない……」
 ゲームセンター内に置かれた様々な筐体を興味深そうに眺めている『降矢弓弦』と、その降矢を少し心配そうな表情で見守る『日向悠夜』だ。
(降矢さんが最近、機械に挑戦しているみたいだからここに誘ったけれど……まだ早いかな?)
 読書家の彼は様々な事に関してとても知識があり頼りになる存在なのだが、どうも機械となると話は別のようで。
けれど最近、降矢が苦手分野を克服しようと努力をしていたことを知っていた日向は、いい機会だと思いココへ誘ってみたのだった。
そんな風に悩み歩いていると、『お菓子王国のハートフルキッチン』と書かれた看板の前に辿り着いた。
「わあ、ファンシー!」
「変わった雰囲気だね。ガンシューティング?これなら僕でも……!悠夜さん、これを一緒にやってみないかい?」
 思いがけない降矢からの提案に、日向は顔を明るくして頷いた。
 二人は『HARD』モードを選択すると、受付からチョコレート銃を受け取った。
「随分とファンシーな見た目だね。ゲームとはいえ戦闘でも使用する銃だからそこまで緊張せずに出来そうかな。頑張るよ」
 手にした銃に苦笑を浮かべる降矢に、日向はくすりと微笑んだ。


●ハンター誕生!

「外見からしてそうだと思ったけど、やっぱり中もメルヘンだねぇ」
「こういうとこ絶対一人じゃ入らねぇな」
 アトラクションの中はキッチンが横長く広がったような空間になっており、外装同様、内装もかなりハートルフルな様子。
チョコレートのようなタイルが壁一面に張り巡らされ、シンクや戸棚、テーブルやイスはお菓子モチーフでとても可愛らしい。
至る所に小さい妖精がいて、歌を歌いながらお菓子作りをしている。
ユラは壁に掛けられたユニ子の肖像画に気付くと、にんまりとした笑顔を浮かべルークを突っついた。
「ユニ子って18歳なんだって知ってた?ルー君より年上だよ」
「あのなぁ……。マスコットと比較するなよ」
 ルークは可愛らしいマスコットと比べられてしまい面白くなさそうである。
二人でじゃれ合っていると辺りが急に暗闇に包まれ、付近から妖精の悲鳴があがる。
その声を合図にキッチンの至る所にイタズラ鼠が登場した。
大・小の鼠が棚やテーブルの隙間から、チラチラと顔を出してはこちらをあざ笑うかのようにチューチューと鳴いている。
「あ、鼠!えい!」
 すかさずユラが銃を構えて狙い撃つが、小さい鼠は動きが早くて捉えることが出来ない。
「やっぱり小さいのは狙いにくいなぁ」
 続けて連射で狙うもやはり当たらない。
「こんなの適当に撃ってれば当たるだろ」
 ユラが小さい鼠を恨めし気に睨んでいると、ルークの構えた銃が見事にそこを狙い撃った。
「へぇ、おもちゃとはいえヒットすると気持ちいいもんだな」
「すごい!ルークやるね!……って、冷たっ!」
 突然、ユラの顔に水が降りかかる。鼠の反撃、水鉄砲だ。
「え、なに不意打ちとかあり!?……よろしい、ならば殲滅だ」
 ユラの瞳に静かな炎が灯る。
「お、おい?落ち着け、これゲームだから!」
 顔は笑いながらも瞳が全く穏やかでないユラは、先程攻撃をしてきた小鼠に狙いを定めると、ルークを盾にまっすぐ突っ込んだ。
ルークに無慈悲に襲い掛かる水鉄砲。
水鉄砲が終わるタイミングを見計らって、ユラはルークの背後から飛び出し銃を構えると、憎っくき鼠達をあっという間に殲滅した。
ルークは逆らえる雰囲気じゃないと早々に感じ取ったようで、黙ってユラの行動に合わせるのみ。
そのまま勢いに乗って次の鼠へ攻撃を仕掛けるかと思いきや、ユラはその場から動かない。
ルークが不思議そうに様子を伺うと、ユラの視線の先には妖精にかじりつく鼠の姿があった。
妖精をかじっては隠れ、現れてはまた妖精をかじって隠れ、といった動きを繰り返す鼠を静かに見つめている。
そして五回目ぐらいに姿を現した所を、容赦無く狙い撃つ。ハンター・ユラ誕生の瞬間である。
(こいつ目が笑ってねぇ……!)
 ルークは冷や汗を浮かべると、ユラをあまり刺激しないよう静かに距離を取った。

「あはは、濡れたねぇ!」
 アトラクション前でタオルで顔を拭うユラ。
水を拭い取るとスッキリとした顔が現れた。
どうやら存分に楽しんだようだ。
「あぁ、なんかすんげー疲れた。これって、そんなに本気でやるアトラクションだったか?」
 一方で隣に立つルークはげっそりとした表情を浮かべている。
「まぁ楽しかったからいいんじゃない?」
 からっとした笑顔で答えるユラ。
その笑顔を見たルークは一人、背筋を凍らすのだった。

●二人で拭きっこ

アトラクションの中に入ると、テレーズは早速周囲のお菓子モチーフの家具に興味を示すと、楽しそうに笑っていた。
山吹はその様子を暖かく見守っていたが、辺りの雰囲気が変わるとすぐにテレーズの元へと近づき彼女を背に銃を構える。
山吹の背中からテレーズはひょっこりと顔を出すと、周囲の様子を大きな瞳で伺った。
先程までいなかった鼠がキッチン内をちらほらと動き回っている。
「この銃であの鼠を撃てばいいんですよね?数打てばあたる!です」
「そうですね。数でカバーしましょう」
 山吹もそれに賛同する。
横長のキッチンで丁度二人が立っている部分は中央に位置する。
このままここで狙い撃っていては、標的が被ってしまうかもしれない。
そう考えたテレーズは山吹に分担して鼠をやっつける作戦を提案するのだが。
「では私はこっちを頑張るので山吹さんはあっちをお願いします!」
 その抽象的な説明は、果たしてどこからどこまでが『こっち』で、『あっち』なのか。
山吹はテレーズらしい説明の仕方だと苦笑を浮かべるも、手振りから『あっち』の範囲を推測すると、テレーズの反対側へと銃を構えた。

「わっ、冷たい!」
暫く分担して鼠を撃っていると、山吹の後ろから小さな悲鳴があがった。
振り向くと、テレーズの顔面が水浸しになっていた。
身体はレインコートのおかげで守られているが、正面にいる鼠から水鉄砲を食らってしまったようだ。
「大丈夫ですか?!」
これはゲームでただの水鉄砲と解かってはいるのだが、山吹はつい過剰に反応してしまう。
「はいっ!もう、お返しですよ、覚悟してくださーい!」
 山吹に笑顔で答えると、テレーズは鼠を追って奥の方へと走って行く。
ほっと胸を撫で下ろしていると、今度は山吹が鼠から攻撃を食らってしまう。
どうやら彼女の心配をしている余裕は無さそうだ。
テレーズのフォローをしようと考えていた山吹だったが、ゲームが終わるその瞬間まで、すっかり自分ものめり込んでしまったのだった。

「へくしっ!楽しかったですがこの時期に水はすごく冷えますね」
いくら室内といえど冬である。
水鉄砲で濡れた身体が一気に体温を失い、テレーズは両手で抱え込むように丸くなった。
その体を包み込むように肩からふわりとタオルが掛けられた。
「タオル借りてきました」
「ありがとうございます」
 山吹はもう一枚のタオルでテレーズの濡れた頭をごしごしと拭う。
優しすぎず強すぎず、絶妙でとても気持ちがいい。
「山吹さん、上手ですねー」
 テレーズの顔は完全に緩みきってしまっている。
ふとテレーズの顔に冷たい雫がかかる。
見上げると山吹の頭も結構濡れてしまっていた。
「じゃあ次は私がやってあげますね!」
 山吹からタオルを受け取ると、こんどはテレーズが山吹の頭をごしごしと拭う。
山吹は何だか落ち着かない様子でそれを受ける。
粗方拭き終わると、山吹は少し照れが残ったままの顔でタオルをまとめ、スタッフの元へとテレーズを促した。
「さぁ、風邪を引かないうちに乾かしきってしまいましょう」


●ぶっきらぼうな優しさ

お菓子モチーフの可愛らしい内装に、楽しそうに歌う妖精達。
女性なら胸躍らせるようなシチュエーションなのにも関わらず、アイリスは真剣な顔で手にしたチョコレート銃を確認していた。
「では、私は大きい鼠を優先して狙うので、ラルクさんは小さい鼠をお願いします」
「へいへい。アンタ、こうゆうの割と拘るよな」
 ラルクは肩をすくめて答えるも、アイリスらしいその言動になんだか安心したような気持ちだった。
ここで騒ぐような女なら一緒にこんなゲームに参加しているとは到底思えない。
こんな彼女だからこうして今隣にいるわけで。
「そうですね。どうしても上を目指したくなってしまいます」
 アイリスは一瞬驚いたように目を丸めたが、すぐにいつもの淡い微笑みを浮かべて頷いた。
あまり他人に関心を示さなかったラルクが、自身のことをそんなに理解してくれているという事に驚きを隠せなかった。
「まぁ、遊びにも全力ってのは、悪くはないがな……と。いよいよイタズラ鼠のお出ましだな」
 二人は顔を見合わせて頷くと銃を構えた。

「このっ、えいっ……!」
 すっかりこのゲームの虜になってしまったアイリスは、夢中で鼠達に銃を撃つ。
反撃されても所詮水鉄砲と割り切っており、攻撃を受けても一切怯む様子が無い。
濡れた服は肌にぴっとりはり付き、身体のラインが判るどころかうっすらと肌色の素肌が浮かび上がっている。
その様子から、やっぱり分かってなかったかとラルクは大きくため息をつくと、アイリスに指で合図を送る。
「アンタ、自分の服をよく見てみな」
「服、ですか?濡れるのは分かってましたし、どうとも……あ」
 やっと自身の現状に気付いたアイリスは、もじもじとした様子で両手で腕を引き寄せる。
「これ、は……恥ずかしい」
「ほら、これ貸してやる。少し濡れてるが、今のままよりはいいだろ?」
 ラルクはぶっきらぼうにそう言うと、羽織っていた上着を脱いでアイリスに掛けてやる。
「すみません、ありがとうございます」
 アイリスは顔を赤らめて、肩に掛けられた上着を手繰り寄せた。
ラルクの温もりが冷えた身体にじんわりと染み渡る。
そんなアイリスを見て、ラルクはニヤリと笑みを浮かべた。
「アンタでもやっぱ照れるんだな?」
「照れて、悪いですか?」
 アイリスは手にした銃をラルクに向けると、じろりとした目で睨みつける。
「いや、悪くない」

アトラクションから出てきた二人は、すぐに濡れた服を乾かしてもらう。
アイリスはラルクに上着を返すと、頭を下げてお礼を言った。
「ありがとうございます。ラルクさんがこういう風に気遣って下さるのは意外でした」
「まぁ、これくらいはな。悪いか?」
「いいえ、悪くないと思います」
 アイリスはにっこりと微笑んだ。
「さっきの逆か。こういうやりとりも悪くはない、な」
 ラルクも笑って答える。
「さて、服は乾かしてもらったとはいえ、何か温かい飲み物でも飲んだ方がいいか」
「じゃあ飲みながらさっきの反省を……」
 アイリスは顔を引き締め直すと、ゲームの反省会をしようとラルクに提案する。
「あ?反省だと?やれやれ……」
 肩を竦めたラルクは苦笑を浮かべる。
だが、それでこそアイリスなのだ。


●お守りします!

「銃より手裏剣の方が得意なんですが、それは反則ですよね。とにかく撃って撃って撃ちまくります」
 使い慣れない銃に少し不満げな斑雪だったが、迷いをふっきるとカチャリと銃を構えた。
「多分はーちゃんのが銃は上手いだろうから、私は周囲を警戒しているね。はーちゃんが見逃しそうなちっちゃい鼠をゆっくり撃っていくよ」
「わかりました!鼠が攻撃してきても決して逃げません!むしろこっちに攻撃を仕掛けている時が千載一遇のチャンス!そこを狙い撃ちます」
 作戦を確認し合う桃と斑雪。
そこでふと桃があることに気付く。
「私のがはーちゃんより背高いから、鼠の攻撃を受けやすいかも。そんときは私を囮にすればいいよ、はーちゃん」
 『囮』という物騒な言葉に斑雪は狼狽える。
「あ、主様を囮になんて、とんでもありませんっ!拙者、体を張って主様の盾になります!」
 斑雪の決意と共に辺りの照明が暗くなる。
そして周囲には主様を狙う不届き鼠が姿を現した。
「む……!そこだ!」
 桃の後ろの食器棚から大きい鼠が顔を出す。
そこを斑雪はすかさず銃で狙い撃つ。
今度は桃の横の冷蔵庫の上から小さい鼠が顔を出す。
それもすかさず斑雪が銃で撃つ。
意図せず囮のような形となっている桃を守ろうと、斑雪は必至に周囲の敵を攻撃する。
斑雪が捌き切れず鼠から攻撃を食らいそうになった所は、桃のアシストで切り抜けた。
パーフェクトである。
しかしその後、栄光はあっという間に崩れ去ることとなる。
「あ……!ユニ子ちゃん……」
 桃は斜め前の壁に掛かったユニ子の肖像画に気付くと、応戦していた鼠の存在も忘れふらふらとその絵に向かって歩き出してしまう。
「あ、主様?!」
 その予想外の行動にはさすがの斑雪も反応することが出来ず、鼠は桃に向かって大量の水を発射した。

「ひゃー濡れた濡れた。このままじゃお布団に入れないね。やっぱりコート借りた方がよかったかも」
 濡れた髪をタオルで拭い、自身に纏わりつく水滴を払いながら桃は呟いた。
こんな時でも寝ることを考えている、ぶれない桃。
「うぅ、主様を守り切れませんでした」
 桃を最後まで守り通すことが出来なかった斑雪は、しょんぼりと肩を落とす。
「でも、かっこいいはーちゃんが見られたからよかったかな。はーちゃん、ありがと……」
 受付で借りた温風の出る機械を自身に当てていた桃は、うとうとしながらそう呟いた。
眠そうな、けれど優しい眼を斑雪に向けにっこりと微笑む。
その言葉に斑雪は頬を染めるとぐっと握り拳で答える。
「拙者もっと修行します!」
 斑雪のその決意を聞き遂げると、桃はゆっくりと瞳を閉じた。


●濡れてもへっちゃら

アトラクションの中は更にファンシーな世界が広がっていた。
外装やチョコレート銃からは大体の想像は出来ていたのだが、実際に自分がその場にいるとなると、なかなかの威圧感がある。
「軽く作戦を立てよう」
 降矢がこのゲームの雰囲気に呑まれてしまわぬよう、日向は実戦の戦闘を意識付けようと降矢に作戦立てを提案する。
「敵、この場合は鼠なんだけど、鼠が攻撃しにくい位置を探って優位な位置を確保。全方位に注意が向けられるように背中合わせで立つのはどうかな?」
 ゲームということを意識させてしまわぬよう、慎重に言葉を選ぶ日向。
その日向の優しさに気付いた降矢は小さく「ありがとう」と呟くと、続いて「それでいこう」と頷いた。
「降矢さんと違って私はあんまり銃を使った事がないけれど、固くならない様気楽にやらせてもらうね」
 その後すぐに現れた鼠達から二人は距離をとると、攻撃の届かない位置を見極め基点のポイントを定める。
戸棚と食器棚の間にあるわずかなスペースが死角になりそうだと判断すると、二人はその位置を陣取り背中合わせで左右の鼠へ攻撃を開始した。
片側が壁の為、全方位を警戒する必要が無く、突然飛び出してきた鼠も冷静に対処することができる。
二人の連携は見事な物で、日向が下方から出てきた鼠に意識を払えば、降矢が上方の鼠を警戒し、降矢が小さい鼠へ照準を定めている間にできた隙は日向がフォローと、まるで本当の戦闘のようであった。
さすがに狭いスペースであった為二人分の死角を確保出来ず、結果として水浸しとなってしまった二人だが、何も言わなくても心が通じ合うというとても心地の良い時間を過ごせたようだ。

「あーあ、びしょびしょだ」
 日向はアトラクションから出ると、両手を横に振り水を払う。
気付けば服が濡れて身体にぴったりとはりついてしまっている。
グラマーな体のラインがくっきりと浮かび上がる。
「わっ……、悠夜さん、これ着て」
 その姿に気付いた降矢は、慌てて自身の羽織りを脱ぐと、日向の肩に優しく掛ける。
目のやり場に困ってか視線は上の方を泳いでいた。
日向も少し照れたような表情を浮かべていたが、自身よりびしょ濡れの降矢に気付くと声をあげて笑った。
「あはは!降矢さんもびしょ濡れだね!」
 いつも所々跳ねている降矢の寝ぐせは、濡れても尚、ぴんっと立っていた。







依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター まめ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月20日
出発日 11月27日 00:00
予定納品日 12月07日

参加者

会議室

  • [7]上巳 桃

    2014/11/27-00:01 

  • [6]上巳 桃

    2014/11/25-21:26 

    改めまして-。
    ジョーシモモとハダレの愉快なコンビです、よろしくおねがいしまっしゅ。
    皆様初めましてです。
    うちも多分HARDだよ。
    お互いの健闘を祈る╭( ・ㅂ・)و ̑̑

  • [5]日向 悠夜

    2014/11/25-19:40 

    こんにちは!日向悠夜って言います。
    アイリスさん、上巳さんとは初めましてだね。よろしくね。
    テレーズさんとユラさんは今回もよろしくお願いするね!

    難易度は…HARDモードに挑戦しようかなと考えているよ。
    楽しい一日になりますように!

  • [4]テレーズ

    2014/11/24-13:47 

    テレーズと申します。
    よろしくお願いしますね。
    ガンシューティング楽しみですね。
    難易度を何にしようか迷ってしまいます。
    では皆様も楽しい一日をー。

  • [3]アイリス・ケリー

    2014/11/23-22:59 

    アイリス・ケリーと申します。
    悠夜さんと桃さんは初めまして。テレーズさん、ユラさんはお久しぶりです。
    可愛らしいガンシューティングゲーム、楽しもうと思います。
    それでは、よろしくお願いいたしますね。

  • [2]ユラ

    2014/11/23-21:33 

    どうも、ユラです。
    はじめましての人もそうでない人も、よろしくね。
    ガンシューティングかぁ・・・あまりやったことないけど、楽しめたらいいな。

  • [1]上巳 桃

    2014/11/23-20:58 


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