プロローグ
タブロスの近くに小さな丘がある。そこは綺麗に芝生が生えていて、この時期のお昼寝ポイントとして最適だ。
睡眠の秋とはよく言ったもので、この時期、とにかく季候がよくて眠いのだ。
せっかくの休日を部屋で寝て過ごすのはもったいない。
せっかくだからパートナーを誘って、一緒に芝生の丘でお昼寝をするのはどうだろう?
この丘で見る夢は普通の夢とは少し違うという噂があって、カップルでお昼寝をすると、二人同時に同じ夢を見ることが稀にあるらしい。
夢の中でも会えるほど仲がいい二人でないとこの現象は起きないらしいが。
ウィンクルムの二人ならきっと同じ夢を見られるだろう。
さて、丘で昼寝をするのはいいが、それだけでパートナーを誘うのも気が引けるかも知れない。
そこでどうだろう。手作り弁当を用意するというのは?
食欲の秋ともこの時期言ったりするもので、季候がいいせいか食欲が旺盛になる季節だ。
自分で作ってもいいし、相手に作ってもらうのも面白いかも知れない。
芝生の丘でお弁当を食べた後、お昼寝をするのはそんなに珍しいことではない。
パートナーと同じ夢を見るチャンスな訳だし、多少強引でもきっと許されるはず!
夢の中ならいつもより、ずっと素直になれるのがこの丘で見られる夢の特徴だ。
そして、起きた後も二人は夢の内容を忘れない。
そんな、ちょっぴり不思議なお昼寝スポットなのだ。
解説
お昼寝エピソードです。
芝生の丘でお昼寝をしましょう。
二人でお昼寝をすると、二人とも同じ夢を見て、パートナーと夢の中で遭遇します。
いつもは恥ずかしくて言えないようなことを言ってみましょう。
夢の中では不思議と素直になれるので、緊張しすぎて何も言えないことや、頑固になることもありません。
★ストーリーの流れ
前半部分は、二人で手作り弁当を食べるストーリーが展開されていきます。
食欲の秋です。おいしいお弁当をたっぷり食べましょう。
作ってくれたパートナーを褒めてあげることも大事です。
後半部分は、お昼寝パートです。
食後眠くなってきた二人がうとうとしていると、お昼寝をしてしまいます。
芝生が気持ちよくてよく眠れるでしょう。
夢の中にパートナーが出てくるので、素直になっている夢の中の自分で相手に言葉を紡ぎましょう。
眠りに落ちてから1時間ほどで、お互いに目が覚めます。
不思議なことに二人とも同じ夢を見ていて、夢の中でのやりとりを覚えています。
手作りお弁当の材料費300Jrが必要です。
ゲームマスターより
食欲の秋! 睡眠の秋!
秋はいいですね。
お祭り騒ぎをするのも楽しいのですが、ゆったりとお昼寝をするのも時には重要です。
疲れた体をリフレッシュさせたいですね。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
アリシエンテ(エスト)
思いの丈…覚えていられる夢…… 自分でも定かではない思いを知る良い機会だわっ。よしっ まずはお弁当作りから エストに作らせれば良いのだけれど、それではそつが無さ過ぎてつまらない …作ってみようかしら、お弁当 キッチンに侵入して…ええ、自分でもサンドイッチは作れそう 子供の頃にお母様が作った、最初で最後の不恰好な手料理……お母様もこんなに嬉しかったかしら ──出来たっ!何故か詰めていたら具がはみ出すわ、バスケットが閉まらなかったりするけれども…!!外見はともかく、問題は味よっ! (一つバスケットの中身を減らす為につまみ食い) からい…(どんより) え、エスト…無理して食さなくても良いのよっ?味の保障は出来ないわっ! |
かのん(天藍)
芝生の丘へ誘われ、家にある物でお弁当の準備を 天藍におにぎりの担当をお願い 色味考え、だし巻き卵、小松菜の胡麻和え、トマトのサラダ詰め 天藍に尋ねたら肉物もある方が嬉しそうなので唐揚げ追加 概ね我流なので天藍の口に合うか少々不安 晴れた空の下丘の上でお弁当を広げる 手の大きさの違いでしょうか? 自分で作るよりは幾分大きなおにぎり両手で持って食べる 生姜の風味が美味しいです 天藍が満足そうに食べる様子を見てほっと安堵 食後、寝転がる天藍に腕を引かれ彼の胸の上で心音聞きながら目を閉じる 夢の中 膝の上で此方を見上げる天藍の話を聞きながら彼の髪を手で梳く 天藍の話に貴方が怪我等しないように何か出来ないかと考えている事を伝える |
七草・シエテ・イルゴ(翡翠・フェイツィ)
秋も深まってきた事ですし、 ここは秋の味覚をふんだんに使って、翡翠さんの為に二段弁当を作りましょう! デザートは、マスカット一房ですよ! (調理スキル使用) 「私のお弁当、美味しいですか?」 はっ、翡翠さんとお弁当を食べる際の話題を忘れてました! この丘といえば、相手と同じ夢を見られるという話ですから、興味あるか聞いてみましょう。 あくまでも稀ですし、見られたらって事でいいですよね。 「翡翠さん、私」 本当は自分でも気づいていたんです。 貴方を・・・・・・。 守ってくれる精霊ではなく、一人の男性として見ていた事に。 「翡翠さん!」 夢から覚めてしまいましたが、彼の目を見て、答えは只一つ。 「もう・・・・・・離さないで!」 |
リヴィエラ(ロジェ)
リヴィエラ: (※神人、精霊共に『願い、灯る』エピの事でギクシャク) ●前半 (ロジェ様のお弁当なのに、どうして…? 胸が苦しくて味がわからない…) ●後半 (夢の中で) ロジェ様…どうしてあの時、私に嘘をついたのですか…? (夢から覚め、涙を流し微笑う) バカ…本当にロジェ様はバカですね…私が貴方を残したまま、帰ったりするものですか…! 大丈夫。貴方はギルティになったりしない。 貴方の心が光で溢れるように、私が貴方の心の灯火になります。 一緒に楽しい事を沢山しましょう。 大丈夫。ずっと、一緒です(と、ロジェに抱き付いて額に口づけ、頭を撫でる) (もし貴方に終わりがきたら、私も逝きます。貴方を独りにはしない…!) |
アイリス・ケリー(ラルク・ラエビガータ)
ピクニックですし、食べやすいものがいいと思いましたのでサンドイッチにしました 南瓜のペーストとレタス、ハムと胡瓜、卵の三種類 一人暮らしですから、このくらいは 何も言わずとも昼寝を始めそうなラルクさんにちょっと苦笑い ひざ掛けはいりますか? ではお言葉に甘えて…もう一枚のひざ掛けを枕にして、横向きに寝ます そう、夢ですね ですが、夢と現実が別物だと決まっているわけではありません 機会がなければ言えないこともありますから ラルクさんとは、思っていたよりもずっといいパートナーでいられそうだと思いまして 正直に申し上げますと、神人を守ると張り切るような方は嫌でしたから …改めまして、よろしくお願いしますね |
●
タブロス近郊の小さな丘。ここはパートナーと同じ夢が見られるちょっと不思議な場所。
秋が訪れると、芝生が生えそろったこの丘は絶好のお昼寝スポットとなる。
(思いの丈……、覚えていられる夢……)
二人で同じ夢を見た後、内容をお互い忘れないという、芝生の丘にアリシエンテは興味を持っていた。
(せっかくだからお弁当を用意したいのだけれど……、エストに作らせるのは、そつがなさ過ぎてつまらないわね)
「……作ってみようかしら、お弁当」
アリシエンテはキッチンにそっと入る。キッチンには誰もいない。
冷蔵庫を確認すると食材は充分にある。
(これなら……、私でもサンドイッチはつくれそう)
アリシエンテは食材を冷蔵庫から取り出す。
野菜に包丁を入れたり、サンドイッチの具を作っているとふと昔の記憶が蘇ってくる。
「子供の頃にお母様が作った、最初で最後の不格好な手料理……、お母様もこんなに嬉しかったのかしら?」
一生懸命に作業をしていると時間はあっという間に過ぎ去るものである。頑張った甲斐があって、無事サンドイッチが完成した。
「――できたっ! なぜか詰めていたら具がはみ出すわ、バスケットが閉まらなかったりするけれども……!! 外見はともかく、問題は味だからっ!」
バスケットを締めるために、サンドイッチの数を減らそうと一つ手に取り口にするアリシエンテ。
「からい……」
一気にテンションが下がる。
アリシエンテはエストを誘って芝生の丘に来ていた。芝生の丘は日光がよく当たっていて暖かい。秋の終わりを知らせる柔らかな日差しだった。
芝生は心地よくて、何かをするわけでもなく二人でゆっくりとしていた。
何もしなくてもお腹は減る。ついに作ったサンドイッチをお披露目しなくてはいけないときがやってきた。
「サンドイッチ作ってきたんだけど……」
アリシエンテは気まずそうにサンドイッチを入れてきたバスケットをエストの前に置いた。
エストはアリシエンテの不安そうな表情を読み取る。
(お弁当の出来はおおよその見当はつきます。思いの丈が料理で知れるのなら喜んで頂きましょう)
エストはあまりおいしいとはいえないサンドイッチを口にした。
アリシエンテは申し訳ない気がして、いった。
「え、エスト……、無理して食さなくてもいいのよっ? 味の保証はできないわっ!」
エストがサンドイッチを食べる姿に、罪悪感がわいてくる。
「ありがございます、お弁当を用意してくれて」
わずかに微笑んでアリシエンテにエストはいった。
日差しが暖かく、食後は眠気が襲ってくる。この丘でエストと一緒に夢を見る。少し恥ずかしい気がしたが、芝生の優しい感触と、柔らかな日光のせいで二人は眠りに落ちていた。
アリシエンテとエストは同じ夢の中にいた。エストの傍にアリシエンテが微笑み、目をつむって傍に立っている。
「恋人、それは素敵な響きかも知れない。でも、私は恋人より、ずっとずっと我が身がかわいいの」
夢の中で、踊り、舞いながらアリシエンテは言葉を紡いでいく。
「――だから、貴方がいなくては私は困るの。恋人なんかじゃない。貴方は私の手足なんだから。もしも、なくして代わりを用意したところで、それはきっと死ぬよりつらいことよ」
エストに振り返るアリシエンテの表情は、エストには見えなかった。エストは一抹の切なさを感じながらも、瞑目して微笑んだ。
「畏まりました、アリシエンテ」
エストがいうと急速に二人は覚醒に向かっていく。
目が覚めると二人は手を繋いで夢を見ていた。
●
「かのん、出かけるぞ」
朝、かのんの家に天藍がデートの誘いにやってきた。
「どこかに連れて行ってくれるんですか?」
「芝生の丘にな」
天藍の突然の誘いに、かのんは微笑みながら、いった。
「じゃあ、お弁当が必要ですね。天藍にはおにぎりを作るのをお願いしてもいいですか?」
「ああ、うまいのを作るぞ」
かのんと天藍は芝生の丘に持っていくお弁当の準備を始める。
「今からお買い物に行くと時間がかかっちゃいますから、冷蔵庫にある物でいいですか?」
「かのんの料理の腕は信用しているから、まかせる。あ、唐揚げを入れてくれると嬉しいな」
「はい、わかりました」
かのんは色味を考えて、だし巻き卵、小松菜の胡麻和え、トマトのサラダ詰めをお弁当箱に詰めていく。
天藍のリクエストの唐揚げもお弁当箱に詰める。
お弁当を作り終わると芝生の丘に二人は向かう。
「いい天気! 素敵なところですね!」
かのんは一面に広がる、手入れの行き届いた芝生の景色に目を奪われていた。若草色が日光に照らされ美しく光を反射する。
「この時期、この場所は昼寝をするのに丁度いいんだ」
青空の下、芝生の上に座って用意したお弁当を広げた。
「さあ、召し上がってください」
「ありがとう」
天藍はかのんから箸を受け取ると、お弁当に手をつけ始めた。
かのんも食べ始める。天藍が作ってくれたおにぎりを手にとった。
(手の大きさの違いでしょうか?)
自分で作るより、幾分大きなおにぎりだった。両手で持って食べる。
(生姜の風味がおいしいです)
胡麻と、鮭、生姜を刻んで混ぜた天藍の特製おにぎりである。
かのんが天藍の方を見ると、満足そうに食べていて安堵した。
かのんの料理は天藍の期待を満たしていて「うまいな」と黙々と箸を進めている。
「せっかくの休みだ。ゆっくりしよう」
「そうですね。休みですからリラックスしないと」
天藍は寝転がると、横に座っているかのんの頭を引き寄せ、胸板の上に乗せた。
「とりあえず、目を閉じて、力を抜いて」
天藍は片方の手で子供を寝かしつけるように、ゆっくりとリズムをとった。
二人は夢の世界に落ちていく。
夢の中では、かのんは天藍を膝枕していた。景色はほとんど変わったように感じないが、この場所には自分たちしかいなかった。
寂しさはなく、二人だけの空間といった印象を受ける。
かのんは優しい気持ちになっていて、こちらを見上げる天藍の髪を手で梳く。
天藍は素直な気持ちになっていて、ときどき頭をよぎることが口から出ていた。
「俺は幼い頃、周囲のウィンクルムに憧れていたんだ。将来、俺もなりたいと思っていた。縁がなかったのか、適正者に会うことはなかったがな。諦め始めた時にかのんと出会えて、とても嬉しかったのを覚えている」
「私も天藍に会えて嬉しかったですよ。天藍が怪我とかしないように何かできませんか? 私、何とかならないか考えてて……」
「出会えて嬉しいと伝えてくれたこと、俺を支えようとしてくれてるところ。そういう、かのんの気持ちが嬉しい」
二人は夢から醒めても、芝生が気持ちよかったので、しばらく横になっていた。
●
七草・シエテ・イルゴと翡翠・フェイツィは休日の今日、芝生の丘にデートの約束をしていた。
(秋も深まってきたことですし、ここは秋の味覚をふんだんに使って、翡翠さんのために二段弁当を作りましょう! デザートはマスカットですよ!)
前日にシエテは翡翠のために食材を買いそろえていた。調理にはいつも以上に力が入る。
ご飯をたわら型に握って海苔で巻いていく。ご飯の中には鮭の身をほぐしたものが入っている。いくつか作ると、弁当箱に収めていく。
人参を紅葉の葉状にカットして、インゲンなどと一緒に煮物にして、秋らしさを強調した。秋野菜のコロッケを作り、肉団子などと一緒に弁当箱に収めれば綺麗な色合いのお弁当になっている。
さらにもう一段、おかず専用の弁当箱を用意する。
エビ、椎茸などを天ぷらにして、生姜を添えて弁当箱の半分に納めて、さわらを焼き料理にして納めて完成だ。
結構なボリュームだ。それでも翡翠なら食べてくれるだろう。
出発の準備を整えると、翡翠との待ち合わせ場所に向かった。
芝生の丘に着くと、秋の日差しが芝生の肌を優しく照らしていた。風はほとんど無く、心地がいい。
芝生の丘でシエテと翡翠はしばらくゆっくりとした時間を過ごした。昼時になって、お弁当を食べることにする二人。
シエテは一生懸命作ったお弁当を広げた。
すると、翡翠も何か取り出す。
「実は俺もシエのために弁当を作ってきたんだ。交換して食べない?」
翡翠の並べた弁当は山菜を中心にしたもので、山の幸といった感じの弁当だ。
「デザートには巨峰を持ってきたからね」
二人は楽しくお弁当タイムを満喫する。どちらのお弁当もおいしい。
「私のお弁当、おいしいですか?」
「とっても、うまいぞ。俺の作った弁当はどうだ?」
「男の人の料理って感じですね」
シエテの感想に翡翠は、いった。
「ギャンブルと違って、料理は運や奇跡じゃ作れなかったな」
「この丘といえば、相手と同じ夢が見られるってスポットですよね」
シエテはお弁当を食べるのに一段落つくと、いった。
「ああ、そうらしいな」
翡翠も芝生の丘の噂話は聞いたことがあるらしい。
「翡翠さんはこういう噂話とか興味がある方ですか?」
「まあ、夢が見られるという噂は、気になるけどね」
翡翠はシエテに聞きたいことがあって言葉を続ける。
「シエ、聞いていい? この間の茨に出てきた……、ん? 寝てる?」
シエテは心地よい芝生の丘で、睡魔に負けて眠りに落ちていた。眠っているシエテを見ていると翡翠も気がつくと眠りに落ちていた。
夢の中は真っ白な空間だった。この場所にいるのはシエテと翡翠だけだ。
「翡翠さん、私……」
夢の中のシエテが翡翠に語りかける。
「本当は気がついていたんです。貴方を……、守ってくれる精霊ではなく、一人の男性として見ていたことに」
夢の中の翡翠は、シエテのこの言葉を素直に受け入れられる。
「俺もいいか? 気づいたんだ。真実の雫で喋ってしまったときに。星を見せたかったのも、動物園で急に抱きしめたのも……」
翡翠はここまで言って、一度深呼吸をする。そして、いった。
「代わりでもいいんだ! シエ、俺の隣に、君にいて欲しい!」
「翡翠さん!」
ここで夢の世界が白一色から芝生の丘に変わる。変わったのではない。眠りから覚醒したのだ。
二人は夢の中でお互いの気持ちを明かしたことに気がつく。これは噂に聞く、「相手と同じ夢を見ていた」状態で、「お互いに夢の内容を覚えている」のだ。
翡翠は真っ直ぐにシエテを見つめる。シエテは翡翠の目を見て、いった。答えは一つしか無い。
「もう、……離さないで!」
翡翠は感極まって、シエテを抱きしめる。
二人の気持ちは通じ合ったのだ。秋の心地のいい日差しが二人を祝福していた。
●
芝生の丘にリヴィエラとロジェは来ていた。ロジェの方からこの場所に来たいと誘ったのだ。
リヴィエラはいつもなら喜んですぐに返事を返すのだが、今回に限っては気持ちが重たかったので、返事に数日を必要とした。
「弁当を作ってきたから食べよう」
芝生の丘にロジェがお弁当を広げる。
(リヴィーの奴……、料理が下手だからな。俺が弁当を作ってよかっただろう)
「ありがとうございます、ロジェ様」
ぎこちない二人の時間が続いていく。
ロジェの作った弁当は、味付けをした肉と調理した野菜を中心としていて、ご飯にはごま塩がふってある。
いい匂いがして食欲がわく弁当だ。
(ロジェ様のお弁当なのに、どうして……? 胸が苦しくて味がわからない……)
リヴィエラは愛憎に心が揺れていて、弁当の味どころではなかった。
弁当を食べ終わって、しばらく無言の時間が続いた。どちらからも何も言わずに、ただ、ゆっくりと時間が過ぎていく。
芝生の丘は心地のいい秋の日差しに照らされていて、二人はいつしか眠りに落ちていた。
夢の中は真っ暗だった。その中にリヴィエラとロジェだけがいる。
「ロジェ様……、どうしてあの時、私に嘘をついたのですか?」
リヴィエラは夢の中のロジェにわだかまっていた気持ちをぶつけた。
ロジェは苦しげな表情をしてから、一気に話し始める。
「俺は……、君をひと目見たときから愛してしまった! 君に『父親は生きている』といえば、君が屋敷に帰ってしまうのではないかと思ったんだ! 君を愛しているから、俺の側に置いておきたかった……! 俺は……、復讐に囚われたこの心は、闇のように真っ黒だ。友が傷つくたび、君が危ない目に遭うたび、俺の心は砕けそうになる! もし俺がギルティと化すことがあったら、君は俺を殺せ。終わるときは、愛する君の腕の中で終わりたい……」
夢の中のリヴィエラはロジェのこの言葉を素直に受け取れた。愛憎で言葉がねじ曲げられることなく、ストレートにリヴィエラの心を揺らす。
夢の世界が明るくなってきた。夢からの覚醒の時だ。
夢から醒めると、二人は同じ夢を見ていたのだと、お互いの表情を見て確信した。
「バカ……、本当にロジェ様はバカですね……、私が貴方を残したまま、帰ったりするものですか! 大丈夫、貴方はギルティになったりしない。貴方の心が光で溢れるように、私が貴方の心の灯火になります。一緒に楽しいことを沢山しましょう。大丈夫、ずっと、一緒です」
リヴィエラはロジェに抱きついて額にキスをした。ロジェの頭を優しく撫でる。
ロジェはリヴィエラに対する罪悪感が少し軽くなり、救われたように感じた。
「……っ、お前は……、バカじゃないのか!? なんで、こんな俺のことなんか、そうやって……、うっ、うぅあぁぁ、ああああッ!」
ロジェは芝生に崩れ落ちるようにして泣き叫ぶ。
リヴィエラはロジェが泣き止むまでの間、頭をなで続けていた。
●
芝生の丘でくつろぐアイリス・ケリーとラルク・ラエビガータ。アイリスの方からラルクを誘ったのだ。
昼時になるとアイリスは手作り弁当を並べる。
「ピクニックですし、食べやすいものがいいと思いましたので、サンドイッチにしました」
ラルクはアイリスの用意したサンドイッチを見て、いった。
「出来合のものでも買ってくるんだと思っていたが……、へぇ、アンタ、料理できたんだな」
「南瓜のペーストとレタス、ハムときゅうり、卵の三種類です。一人暮らしですからこれくらいは作れますよ」
アイリスの言葉に、ラルクは少しアイリスに対する印象が変わる。
「いいとこ育ちのお嬢さんだから、できないもんだと思ってた」
そう言いながら、ラルクはサンドイッチを一つ摘まんでかぶりつく。
「結構うまいな」
「沢山ありますから、ゆっくり食べてくださいね」
食事が終わってしばらくすると、ラルクはあくびをした。
「にしても、今日はいい天気だな……、こうも暖かいと眠くなる。少し横になるか」
早くもうとうととしているラルクに、アイリスは少し苦笑いをした。
「ひざ掛けはいりますか?」
「ひざ掛けはいい、アンタが使え」
「では、お言葉に甘えて……」
アイリスは二枚あったうちの、一枚のひざ掛けを枕にして、横向きに寝た。
日差しが心地よく二人は眠りに落ちた。
一面、芝生の世界が広がっている。この場所にはアイリスとラルクしかいない。
「夢、か?」
夢の中のラルクはつぶやいた。
「そう、夢ですね」
アイリスはラルクに返事をするように、いった。そして、続ける。
「ですが、夢と現実が別物だと決まっているわけではありません。機会がなければ言えないこともありますから」
アイリスは優しく、いう。
「……どういうカラクリかは知らんが、アンタの思惑通りというわけだ。で、こんな回りくどいことをして何が目的だ?」
ラルクはアイリスの考えが読めなくて、率直に質問する。
「ラルクさんとは、思っていたよりもずっといいパートナーでいられそうだと思いまして。正直に申し上げますと、神人を守ると張り切るような方は嫌でしたから」
アイリスは優しく、丁寧に言葉を紡いだ。
「その点は同感だな」
ラルクはニヤっと笑うと言葉を続ける。
「アンタは戦闘であろうがなんであろうが、怯えもしなけりゃ動揺もしない。かわいげはないが、組んでやっていく以上は丁度いいのかもしれんな。今ではアンタと上手くやれそうな気がしている」
二人は微笑みあう。
「改めまして、よろしくお願いしますね」
「ああ、よろしくな」
夢から醒めても、二人は夢の中で交わした言葉を忘れることはなかった。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:七草・シエテ・イルゴ 呼び名:シエ |
名前:翡翠・フェイツィ 呼び名:翡翠さん |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 和歌祭 麒麟 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ハートフル |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 10月26日 |
出発日 | 11月02日 00:00 |
予定納品日 | 11月12日 |
参加者
- アリシエンテ(エスト)
- かのん(天藍)
- 七草・シエテ・イルゴ(翡翠・フェイツィ)
- リヴィエラ(ロジェ)
- アイリス・ケリー(ラルク・ラエビガータ)
会議室
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2014/11/01-23:54
-
2014/10/30-22:16
-
2014/10/30-12:27
アイリス・ケリーと申します。
シエテさんはお久しぶりです。
他の皆さんも始めまして。
どうぞよろしくお願いいたします。 -
2014/10/29-21:56
-
2014/10/29-21:56
かのんと申します
折角ですから、お天気良くて素敵な1日になると良いですよね
では、改めまして -
2014/10/29-19:09
皆さん、お久しぶりです。
七草シエテです、今回もよろしくお願いします。
丁度過ごしやすい季節にお昼寝するのですから、とびきりな一日にしたいですね。 -
2014/10/29-01:51