【ハロウィン・トリート】笑顔を求めて(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●切実なお願い
「子供たちと、ハロウィンパーティーをしてほしいんです」
 そう言って頭を下げた男性の足には、痛々しくも包帯が巻かれていた。
 たまたま憂いを帯びた男性と出会ったA.R.O.A.職員が話を聞けば、ハロウィンパーティー目前で、階段から落ちて捻挫してしまったという。
 そのために、子供たちが楽しみにしているパーティーが出来ない……。
 そんな話を聞いてしまえば、無視はできないというもの。
 さらに、孤児院にいる子供たちは、オーガなどに家や家族を奪われた者だという。 
 なので! と職員が語尾を強める。
「今回は正式なお仕事じゃないんですけども、ここはひとつ皆様のお力をもってして、どぉーんと楽しいハロウィンパーティーをお願いします!」
 男性も頭を下げる。
「子供たちも、皆様にお会いできたら喜ぶでしょう。
子供たちは3歳から10歳までの10人の男の子と女の子です。みんな元気な子ですよ。
手作りのお花やわっかで飾り付けて、クッキーやパンプキンパイを作るんです。
今年は、ご厚意でランタン用の南瓜も貰っていますから、それも作る予定だったんですが……。
私の足もこうでしょう? スタッフがあと1人いますが、それでも手が回らないんです」
 どうか助けてください、そういわれてしまえば、否ともいえない雰囲気だ。
「たまには、こうやって触れ合うのもいかがでしょうか?」
 その言葉に、皆行くことを決めるのだった……。

解説

 孤児院でハロウィンパーティーをしよう! という依頼です。
 午前が準備、午後からパーティーの予定ですが、プレイングによってどちらの時間が長いか決まります。


●孤児院
 院長とスタッフ1名による、こじんまりとした孤児院。
 子供部屋、スタッフ部屋、応接室、食堂、作業部屋、台所、お風呂やトイレからなります。
 
院長:ヨゼフ 40歳 男性 子供達の良き父的存在
スタッフ:カレン 25歳 女性 子供達を愛するお姉さん的存在

●子供達
 3歳から10歳までの男女10人。
 おしゃまな女の子や悪戯っこな男の子、恥ずかしがり屋……。
 みんな元気です。

●パーティー
 一応OPに記しましたが、自分達で企画しても大丈夫です。
 ただ、孤児院にはそんなに物はありませんので、各自持ち込みになります。
 また、OP中にあるのは、全て孤児院に材料や道具がありますので、それに関しましては用意は不要です。

●近くのお店
 ちなみに、持ち込みする際は近くにいろんなものが売っているお店があります。
 ハロウィン装飾用多めです。

食材:
南瓜(大):150Jr
南瓜(小):100Jr
其の他、食材:80Jr

雑貨:
紙・色紙・折り紙・リボン・包装紙・シール:50Jr
其の他、装飾品(ハロウィン用置き物等):100Jr

必要な品がありましたら、お買い求めください。

ゲームマスターより

 楽しいパーティーを!
よろしくお願い致します!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

高原 晃司(アイン=ストレイフ)

  よっしゃ!!このままじゃ院長とスタッフの人が大変だろうからパーティーの準備を手伝うぜ

「力仕事だったら得意だからじゃんじゃん任せてくれな!」
女性に力仕事とか流石にさせてられねぇしな
俺は力仕事や院長の頼まれごととかを積極的に手伝うぜ
院長達もきっと子供たちの為に何かしたいって思ってるだろうしな

料理も少しだったら手伝えるからじゃんじゃん言ってくれ
(仕事に集中する事でアインに対する気持ちを少しでも忘れればいいな…)
男が男を恋するなんてしかもそれが育ての親とかもっての他だしな

ランタンとか作るのも任せてくれ!

精一杯パーティーを祝おうぜ!!


アイオライト・セプテンバー(白露)
  わーハロウィンのパーティーだー♪
最近おかしな夢ばっか行ってたから、こういうのもいいな
でも孤児院で、あたしばっかりパパにべたべた甘えたら、なんか狡いよね
だから、今日はパパとあんまり遊ばない
あたしにくっついちゃダメだよ、パパ

じゃ、みんなで飾り付けしよっ♪
お料理は得意じゃないから、お花とか輪っかとか作るほう
(花を頭に付けて)パパ、似合うー?お姫様みたいー?
はっ
パパ、今のなしだもんっ
エルドのおじいちゃーん、ランタンの作り方教えてー(ぱたぱた

パーティーは踊るよー♪
あたし踊るの大好き(スキル「ダンス」
ネカさん達が楽しそうなことしてるから、まぜてもらいたいな
はしっこでもいいよ

また皆でパーティー出来るといいな



鹿鳴館・リュウ・凛玖義(琥珀・アンブラー)
  ふふ、子供は可愛いよねぇ。あんなに、はしゃいじゃってさ。
どうしたの?琥珀ちゃん。あー、もしかして妬いてる?
まっ、今日はとにかく楽しもうよ。ねっ?

子供達の中に一人ぽつんとしてる子は、いないかな?
いるわけないよね、こんなに元気な子達なのに。

でもね
もし、いたら声をかけて、南瓜のランタンを作らないかって誘って、一緒に作りたいんだよね。
だってほら、寂しいじゃない。
大丈夫だって!おじさんもあまり上手くないから。

南瓜は小さいのを10人分、あと男の子女の子がどちらでも作れるようにリボン、カラーマジック、ボンド、ビーズセットも人数分用意。

というわけで、琥珀ちゃんも手伝ってね。
あとでお礼は、たっぷりとするからさ。



俊・ブルックス(ネカット・グラキエス)
  午前の準備は得意分野じゃねえから、手伝いだな
主に雑用押しつけてくれたら色々やる
ランタンは…まあ頑張る
俺達の本番はどうやら午後のパーティーの余興らしい
うん…分かってた

本番はゾンビの仮装でネカやアイオライト達と一緒に
横一列に並んでムーンウォークっぽいダンス
難しいが、大事なのは『皆で、楽しく』だからな、少々間違えても気にするな
それにミスがあったり素人っぽい方が怖い感じの仮装がやわらぐだろ
…そんなこと考える俺もだいぶ染まってきたな…
けどそんな自分が嫌じゃないことに気付く

ハロウィンやった思い出はあんまりないんだけど
こういう体験もたまにはいいかもな

買物:
ゾンビ仮装(雑貨其の他、装飾品相当)×2
200Jr



エルド・Y・ルーク(ディナス・フォーシス)
  所持品:コンビニやホームセンターの子供向けコーナーに売っていそうなオモチャのピアノ・普通の絵本2冊

前半はハロウィンの手伝いです。華やかになるように、ランタンを作りましょうか

「ミスター!ランタンの作り方が意味不明です!!」

おやおや、ここにランタン用の南瓜を抱えた孤児院のお子さん達以下の精霊がおりましたよ
しかも演奏以外は絶望的に不器用な事が判明しました
では、アイさん達とも皆さん一緒に楽しく作りましょうか

精霊が要望を一件出してきました。
まったく、この老体に何と云う事を言うのでしょうか(やんわり微笑みながら)
恐らく楽しくて仕方がないから周りが見えていないのでしょう。たまにはこういうのも悪くないものです



●孤児院にて
 ぽかぽかと暖かい日だった。
 空の上にまんまると光る太陽が、少し肌寒い中元気に輝く。
 近くにあるお店でハロウィン用品を買い求めた鹿鳴館・リュウ・凛玖義と琥珀・アンブラーは、大きな荷物と、軽くなった財布を抱えて孤児院へと向かう。
 南瓜とかを人数分買おうかと思っていたのだけれど、ちょっと嵩張る上に思った以上の大きさで。
 南瓜は孤児院で必要かどうかを確かめてからでもいいかということになった。
 そして他のを半分の、それまた半分。そんな風に減らしても1人で持つには大変だった。
 凛玖義のお手伝い! とばかりに琥珀が荷物を持つ。
 琥珀のやる気ゲージはぐんぐんと上がって行く。 
「ごめん。りくぅ、持って行くの時間かかりそうだよぅ」
 やる気が上がっ て行くのとは対照的に、体力の方はちょっとよたよたになっていた。
 時に現実というものはやる気についてこないものである。
「ん? あぁ、重かったよねぇ」
「て、手が空いてたら、はくの荷物、手伝ってほしいなぁ」
 思った以上に一つのケースに入った量が多かったビーズが、からりと音を立てている。
 それにじぃっと見上げられてしまえば、断ることも出来ないだろう。
 嵩張る袋を持ち、エルド・Y・ルークとディナス・フォーシスが歩く。
 玩具のピアノは比較的安く手に入った物の、やっぱり嵩張って。
 手に持った絵本の重みを感じつつ、にっこりとディナスが微笑む。
「ミスターは、パーティ内でこの絵本2冊をすべてハロウィン仕様にしてパーティ時間で朗読して下さい」
「まったく、この老体に何と云う事を言うのでしょうか」
 やんわりと微笑みそういうエルドにディナスは小悪魔なことを言う。
「失敗したら子供達に笑われてしまいますね?」
 それでも、絵本をハロウィン仕様するのは難しいことではないだろう。
 けれど、それを受けるエルドには大人の余裕があった。
 包み込むように微笑むその姿の向こうで俊・ブルックスがネカット・グラキエスを見て、小さく溜息ついた。
(俺達の本番はどうやら午後のパーティーの余興らしい)
 持っている袋の中身に思いを馳せて、呟く。
「うん……分かってた」
(ふふふっ、今月もネカザイル再結成の時がやってきたようです……)
 笑顔を浮かべてそう思うネカットが、そんな俊の呟きに視線をやった。
「どうしました?」
「いいやー? それよりも凄い楽しそうだな?」
「再結成ですからね!」
「……うん、分かってた」
 再度言うのに、ネカットが笑う。
 そんなネカットの近くで、アイオライト・セプテンバーが楽しげに白露の腕に抱きつく。
「最近おかしな夢ばっか行ってたから、こういうのもいいな」
 ハロウィンの異変での出来事を思い出しアイオライトがそういえば、白露もそうですね、と頷いた。
 楽しみだと気分は上がっていく。
 やがて辿りついた孤児院の前。
 高原 晃司がアイン=ストレイフと共にドアの前に立つ。
 一番先についた彼らの後ろに、皆が辿りついた。
 それを確認し、じゃぁ……と晃司がドアを叩けば、ゆっくりとドアが開く。 
「いらっしゃいませ!」
 カレンと名乗った女性が、先導して中に入って行く。
 ひとまず荷物を台所に置いて、先に居た包帯を足に巻いた男性ヨゼフと、案内してきたカレンとそれぞれ挨拶を交わせば、ドキドキと顔を覗かせる子供達と改めて挨拶を交わすのだった。
 一通りのお祭り騒ぎが終われば、ヨゼフの一言により皆が動き出す。
「怪我には、気を付けてくださいね」
 はぁい! と元気な声が返った。


●作業室にて
 わらわらと用意をするものが自然と別れれば、ぐいっとアイオライトが白露の腕を掴む。
(孤児院で、あたしばっかりパパにべたべた甘えたら、なんか狡いよね) 
 子供達からの死角になるその場所で、真剣な面持ちだ。
 その思いを伝え、びしっと言い切る。
「あたしにくっついちゃダメだよ、パパ」
 今日はパパと遊ばないんだからね! と念を押すのに 、白露がしみじみと頷く。
(くっつかないでと言われても、いつもアイの方が私にくっついてくるんですけどね)
 その瞳は、まさに子供の成長を見守る親の愛情に溢れる瞳。
 独り立ちを試みるその心意気が、とても嬉しい。
「……子供達と同化しているのは、さておいてですけれど」
 すでに子供達と一緒になって騒ぎ始めているアイオライトを見て、わずかに痛む気がする胃を抑えるのだった。
(よっしゃ!! このままじゃ院長とスタッフの人が大変だろうからパーティーの準備を手伝うぜ)
 そう思う晃司は、カレンにと声を掛ける。
「力仕事だったら得意だからじゃんじゃん任せてくれな!」
 沢山あったカボチャを前に難しい顔をしていたカレンが、その言葉にほっと息をつく。
 隣に立つアインも見れば、なるほど力仕事を任せても大丈夫だろう。
「手伝いますね。どこにおけばいいですか?」
 料理用とランタン用、どちらもかなりの量があって。
 調理台の上と、そして作業室へ。そんな指示に2人力を合わせて動く。
「アイン、そっち持ってくれ」
「わかりました、晃司、気を付けて下さいね」
 よいしょっと持ち上げた南瓜は、ずしりと重みを伝えてくる……。
 そんな2人が持ってきた南瓜を囲み、盛り上がる子供達の中に、アイオライトとディナスと俊も混ざる。
「おや……?」
 白露が首を傾げる。
 うっかりアイオライト達も混ぜて数えてしまったが、子供の数が足りない。
 同じく気が付いた凛玖義も辺りを見渡した。
 その視線の先に、足にと抱き着く子供を抱えてアインがゆっくりと歩く。
 子供の世話は晃司で慣れている……というわけで、抱き上げて高い高いをしてやれば、天井に近いのに歓声があがった。
「すごーい!」
 ヨゼフが痩せ身だからだろうか。
 今回やってきたウィンクルム達の中でも、体格がいい者達に子供達が集まる。
 特にアインのその身長は魅力的だったかもしれない。
「1人ずつ、順番を守ってくださいね」
 だっこやおんぶーと続く言葉に微笑み、1人1人やって行くのだった。
 同じく子供の世話に慣れているのはアインだけじゃなくエルドもだ。
「ミスター! ランタンの作り方が意味不明です!!」
 呼ばれて向かえば、南瓜だったモノが置いてある。
 確かに中身を取らないといけないけれど、どこをどうしたのか貫通していて、さらに細かくばらばらになっていた。
 演奏をする以外は壊滅的に不器用だと判明したその姿に、瞳を細める。
 孫のような息子のような、そんな愛おしい存在が今を楽しんでいて。
 ただ、楽しみ過ぎてちょっと気がそぞろな所はある。
(恐らく楽しくて仕方がないから周りが見えていないのでしょう。たまにはこういうのも悪くないものです)
 ランタン作りを手伝うエルドの周りには子供達が集う。
「上の部分はナイフを使いますから、大人にやって貰いましょうね」
 そうはいうものの、ここに居る大人代表達は少々心もとない。
 まっすぐ切れるのか、いっそのこと斜めも斬新かもしれないけれど。
「任せろ、頑張るぜ」
 俊の持つナイフが、さくりと南瓜にと入る。
「蓋付きのランタンも可愛いよね!」
 そうアイオライトが言えば、蓋も失敗するわけにはいかなくて。
 難易度が上がったそれに、皆の視線が集中するのだった。 
 そんな子供達から離れて、さっきまで頑張っていた少年が今にも輪から離れそうなのを発見した凛玖義。
「大丈夫だって! おじさんもあまり上手くないから」
 そう言って、泣きそうな少年を元気づける。
 本当? と言われれば大きく頷く。
 漸くおじさんと一緒になら、やる……という少年と作り始めるのだった。  


●キッチンにて
 その頃キッチンでは、琥珀や晃司がランタン作りをする面々から離れてカレンを手伝って料理を作っていた。
 一心不乱に頼まれたジャガイモの皮を剥く作業は、今の自分のこの思いを忘れさせてくれるだろうか。
(仕事に集中する事でアインに対する気持ちを少しでも忘れればいいな……)
 晃司の手は止まらない。
 男が男を好きになる……それだけではない、もう一つの事実。
(育ての親とかもっての他だしな)
 その事実が、重く伸し掛かる。
 手元に集中していれば忘れられるのか、出来ないのか……。
 もう一個、と取ろうと手を伸ばす。
 ころりと転がり落ちたじゃがいもを取ろうと立ち上がった瞬間、歓声があがった。
 どうやら無事に南瓜の上の部分が全部切り取られたようだ。
 そんな歓声を背に、ネカットが段取りをヨゼフと台所にて相談していた。
 使う曲もディナスに伝えておく。 
「ここも使っていいですか?」
「そうですね……」
 2人の会話に熱が入っていけばカレンが味見をして頂戴と声をかけた。
 美味しいと味見係が言う頃、はたと気がついた琥珀が声を上げる。
「りくぅー! 南瓜や材料が足りなかったら買いに行くー!」
 その呼びかけに答え凛玖義が周りにきいて足りない物を把握する。
「リボンがあってもいいんじゃないか?」
 俊がそう言って、辺りを見渡す。
 最初に買うかどうか迷って、買い出しも出来るし……と一旦は諦めたそれをメモする。
 南瓜は足りそうかどうか聞けば、そちらは大丈夫だと答えが料理の指揮を執るカレンから返ってきた。
 やってきた凛玖義が琥珀に笑いかける。
「ふふ、子供は可愛いよねぇ。あんなに、はしゃいじゃってさ」
(子供……いいなぁ。はくも子供に戻りたい)
 琥珀が羨ましそうにお手伝いの手を止めて見つめる。
「どうしたの? 琥珀ちゃん。あー、もしかして妬いてる?」
「や、妬いてないよっ!でも、ちょっと羨ましい、かも」
 今日を楽しもうよ、と微笑まれれば、子供達と楽しむ! と元気よく頷く琥珀。
「それにしても、琥珀ちゃん、大丈夫?」
 この日のためにバイクもすでに買ってある。
「大丈夫だよぅー! はく、この日の為にバイク買ったし、運転できるからー!」
 そうして、ちゃんとメモも持って買い物へと向かうのだった。


 そんなキッチンの向こう側……ようは外では白露はまごまごしていた子供を見つけた。
 中に入ろうと誘えば、おずおずと伸ばされる指先。
 料理も、ランタン作りも飾りも作るのは苦手だという。
「じゃぁ一緒にビーズの腕輪を作りませんか?」
 凛玖義達が買ってきていたビーズを思い出した白露がそう言えば、紐に通すだけのそれならば、出来そうだと2人が微笑む。
 それに、出来た飾りにビーズを貼り付けるも出来そうだ。
 きらきら輝くビーズを見て、2人もきらきらと笑顔を浮かべたのだった。 
「パパー、似合うー? お姫様みたいー?」
 そんな白露の元に、アイオライトが駆け寄ってくる。
 頭につけた花飾り。
 それを誇らしげに見せれば白露が微笑んだ。
「えぇ、似合ってますよ」
 綺麗、綺麗! と子供達も大喜びだ。
 ビーズもつけて、ちょっと豪勢にしようか……?
 そんな会話が出る中、はたっと気がついた。
「パパ、今のなしだもんっ」
 慌てて離れて、くるりと踵を返す。
「エルドのおじいちゃーん、ランタンの作り方教えてー」
 ぱたぱたとアイオライトが去って行くのに、白露が小さく吹きだした。
 なかなか頑張るアイオライトに、成長した証が見えた気がして父親心? が分かった気がしたのであった。
 中身をくり抜く子供達の葛藤の声が聞こえてくる。
 意外と簡単なようでいて難しいそれに、力尽きようするのを声をかけて、時に一緒にやって乗り越えて行く。


 そんな中、バイクに乗って琥珀が白い袋を提げて戻ってきた。
 バイクを置いて庭に入れば、一人、力仕事から逃れてきた子供を発見して、手を差し出した。
「いっしょに、施設の中、探検しよう~?」
 探検という言葉にいつもと同じ場所も全然違うように思えて。
 ちゃんと荷物を凛玖義に届けて、琥珀は子供と一緒に探検を開始するのだった。
「さぁ、中身を取り終わったら顔を描きますよ!」
 肝心の顔を描く段階に、ランタンづくりは最高潮になっていく。
「歪む……」
 まず最初のペンで描く段階から難解である。
 やってきた晃司も仲間に入って、作っては見るものの、意外と難しい。
 むむっとにらめっこしながら作る姿を、膝の上にのせた少女のお手伝いをしているアインが微笑み見詰める。
 ネカットもやってきて、俊の隣で一緒に作って行く。
 ぐりんっとすべった所は消しつつ、何度目かやればだんだんコツを掴み始めて。
「意外と難しいですね」
「それだけじゃなく、穴作るのも結構……」
 それもまた難しかったりして。
 四苦八苦していくなか、エルドがやんわりという。
「穴を開けるときはナイフを使いますから、気を付けてくださいね」
 先ほどよりはある程度見れるようになったディナスの成長に微笑みを零す。
 小さい子は大人と一緒に! それを守って皆でゆっくりと作って行く。
 アイオライトも、慣れてきたのか小さい子の作るのを手伝えば、おねむになりかけていた少年を抱き上げてあやしていた白露も、安堵の息を零すのだった。
 そんなこんなで飾りも料理もできて、飾り立ても無事すめば。
「精一杯パーティーを祝おうぜ!!
 晃司の言葉に、皆笑顔になる。
 そろそろパーティーの時間だ!


●パーティーをしよう
 ランタンに火がともる。
 怒っているの、笑っているの、おどけているの。
 如何様にも見えるその顔達から漏れる光は、ゆらゆらと楽しげな影を作り出す。
 ビーズのついた花飾りやリボン達が、そんな柔らかな光を受けて、きらきらと輝いた。
 これは私の、あれは誰の? そんな会話が繰り広げられ、話は止まらない。
「では、 楽しいハロウィンパーティーをしましょう」
 ヨゼフの一言により、ハロウィンパーティーが始まった。
 最初はエルドの絵本だ。
 冒険物語に気分が高揚すれば、その間にネカットと俊が着替えを終える。
 ディナスも玩具のピアノの音域確認は無事終了だ。
「さぁ、私たちの出番ですね!」
 袖でそう言って準備万端なのはネカザイルを再結成したネカットだ。
 隣で俊が頷く。
「ハロウィンやった思い出はあんまりないんだけど。こういう体験もたまにはいいかもな」
「私は小さいころ家族でやりましたよ、ハロウィン。……来年も、またやりましょうね」
 その言葉に視線を合わせようとした瞬間には、ネカットが舞台へと向かってしまう。
 慌てて追いかければわぁっと声が上がった。
 いわゆるムーンウォークなダンスだ。
 曲もアップテンポである。
 何あれ、すげー! 足の動きがおもしろーい! と子供達は興味津々だ。
 すり足のような、それともまた違うようなその動きは、子供達には初めて見るのだろう。
 ゾンビの衣装も常ならば恐ろしいけれど、今日は面白いダンスも引き連れてきているからか、泣き出してしまうような子供はいなかった。
「わわっ」
 一緒に踊りに入ったアイオライトがやってみるものの足の動きがぎこちない。
(ミスがあったり素人っぽい方が恐怖心も安らぐだろ……)
 こんなことを考えるなんて自分も染まってきている気がするが、そんな自分が嫌じゃなかった。
 多少失敗しても、逆にその動きがまた楽しく映るのだ。
 それに、知らぬ間にランタンの影達も踊りだしているようで。
 やがてなれれば、アイオライトもネカットと俊の動きにあってくる。
 そうなれば、圧巻だった。
 ゾンビを連想させる少々怖い動きも、ダンスの域まで昇華されれば恐怖心は一切なくて。
 わぁっと盛大な拍手が沸き起こる。
「さぁ、みなさんもやってみましょう!」
 ネカットの言葉に、興味のある子供達もわらわらと寄ってくる。
 その身を飾るのはビーズの腕輪に、ビーズやリボンで作られた髪飾りや胸元飾り達。
 勿論センターは譲りませんけどね? とネカットが微笑みつつ、俊と2人で中心的にダンスを教えていくのだった。
 そんな喧騒の傍ら、料理を堪能する子供もいる。
 ほっかほかの南瓜パイ、それに子供たちの好きなジャガイモのサラダもある。
 美味しそうな香りが、ダンスを踊る皆も包み込んでいく。
 晃司が頑張ったお蔭で普段より山盛りのサラダに子供達はきらきら満面の笑顔だ。
「おにーちゃんがつくったの?」
 美味しい! と声があがり、晃司が少々照れくさそうに笑う。
「あ、こら、好き嫌いは駄目だぞ!」
 だがしかし、そっとピーマンを退けるのを見つければ、注意をする。
 そんな姿を見て、アインが微笑んだ。
「大きくなれませんよ?」
「おじちゃんたちみたいに、おおきくなる?」
 ピーマンをお皿の上に置いて、2人を見つめて問いかければ、晃司とアインが視線を交し合った後、大きく頷いた。
 それに勇気を得たのか。
 ぱくんと口に含んだ所で声がかかった。
「全員でやってみませんか?」
 その言葉に顔を見合わせれば、俊が言う。
「間違えても大丈夫だぜ」
 むしろ、そういうのが楽しいんじゃないか? 俊が笑う。
 その言葉に、勇気が出なかった子供達も飛び込んで。
「じゃぁ、もう一回弾きますよ」
 ディナスの指先が、軽快なテンポを刻む。
 きらきら、しゃらしゃら輝くビーズもやがて同じリズムを刻むようになって。
 子供達だけじゃなく、ヨゼフもカレンも楽しそうだ。
 ダンスも一段落すれば、お腹もぺこぺこで。
 ほっくほくの南瓜のパイの甘さがじんわりと体に沁み渡って行く。
「美味しい!」
 そんな声があがって、カレンが嬉しそうに微笑んだ。
 皆と一体となった時間が緩やかに、穏やかに過ぎていく。
「ラストはまた絵本にしましょうか」
 ヨゼフがそう言って、エルドに頼めばもう一冊取り出される絵本。 
 ダンスで程よく疲れた体を癒すのは、エルド静かな声音だ。
 先程の怖くてスリリングは冒険物語ではなく、今回はお化けと人間との心温まる友情物語。
 ぱたんと最後のページが閉じられれば、子供達がシーンとしていて。
 それぞれ余韻を楽しんでいるのかもしれない。
 最後にヨゼフの要望で、有名な曲がリクエストされればディナスが弾きはじめる。
「ぞんびのおにーちゃんも、うたお!」
 俊の腕を掴み、少女が言えばわらわらと皆が集まってくる。
 勿論、センターはネカットで。
 歌声と共に楽しい時間は過ぎて行く……。
「さぁ、これでお終いですよ」
 ヨゼフの言葉と共に、終了したのだった。


 勿論片付けだって力仕事を。
 晃司がアインと共に荷物を運び始める。
 一時は収まった恋心。
 けれど子供達に優しく対応するその姿を見れば、燻ってしまうのも仕方ないだろう。
「ミスター、お疲れ様でした」
 ディナスがそう言ってエルドを見る。
「えぇ、素敵な演奏でしたね」 
 そう言われれば笑顔が毀れた。
 惜しみながらも片付けるアイオライトが、白露が持つ箱の中にお花を入れていく。
「パパ、箱揺らさないでね!」
 琥珀と凛玖義も一緒になって片づけて行く。
 着替え終わった俊とネカットも合流すれば、比較的時間も掛らず全て終了して。
 やがて挨拶も終り、名残惜しい中だけれど、皆が荷物を持って玄関へと向かう。
 その背に、子供達とヨゼフとカレンが付いてくる。
「今日は、ありがとうございました!」
「ありがとうございました!!」
 皆が頭を下げ、大きく手を振る。
 その言葉を背に、ゆっくりと歩いていく……。
 今日のこの出来事は、しっかりと子供達の記憶にも残っていくだろう。
 楽しい時間をありがとう。
 そんな絵手紙が届くのはまた別のお話。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月17日
出発日 10月25日 00:00
予定納品日 11月04日

参加者

会議室

  • プラン出したよ。
    一応、かぼちゃのランタン作る予定で人数分用意する予定。
    でもどんな企画にしても、子供達が喜ぶといいよねぇ。

  • [14]俊・ブルックス

    2014/10/24-22:58 

    っと、時間ぎりぎりだが俺達もランタンについてさらっと書き加えておいた。
    作ったことないから世話かけるかもしれないが、よろしく頼む。

    >ダンス
    今回は『みんなで楽しむ』のが第一だから、下手でもいいってスタンスだ。
    ムーンウォークがガッタガタでも、それはそれで思い出になるかなと思ってな。

    というわけでプラン提出してきたぜ!
    パーティー、楽しみにしてよう。

  • >ネカットさん
    あたし踊れればそれでいいんだー♪
    だから、はしっこでいいよー♪ らららー♪

    >ディナスさん
    わー、ほんと?
    ありがとう、そんじゃ、プランに付け足しさせてもらうねっ。

  • [12]エルド・Y・ルーク

    2014/10/23-23:46 

    >アイオライトさん
    あ、僕、風物詩だという「ランタンを作ろうとして作り方のつの字も知らなかった」ので、ミスターに頼る事にしました。(めちゃくちゃ他力本願)
    せっかくですから一緒に作りませんか?

    >ムーンウォーク
    子供達に出来るのでしょうか……っ。
    物凄く楽しそうですが、最近のお子さんは適応力に溢れていると言いますから問題無いかもしれませんね……!
    楽しみですっ。

  • [11]俊・ブルックス

    2014/10/23-22:42 

    ネカット:
    ディナスさん、アイちゃん、ありがとうございます♪
    私達は、【ゾンビの仮装】でムーンウォークをふんだんに取り入れたお化けダンスを披露する予定です。
    できたら、子供たちとも一緒に踊りたいですね。
    でもセンターは譲りませんよっ!

  • あたしもネカザイルで踊らせてー♪
    バックダンサーでいいからー♪ るるるー♪

    かぼちゃのランタンを作るの、自信ある人いる?
    あたし苦手だなーって思ったけど、なんとかなりそう?

  • [9]エルド・Y・ルーク

    2014/10/23-00:58 

    ディナス:

    それでは近くのお店から、安いおもちゃのピアノを買って持ち込みましょう。
    ミスターには絵本を買って、フェイクで全てハロウィン仕様の話に変えてもらいます。
    (恐らく個別に多大なジェールが引かれる可能性)

    ダンスグループ(?)ネカザイルの為にも、少しでも華やかになるように精一杯努力しますね。(ネカザイルに非常に興味を引かれている)

  • [8]俊・ブルックス

    2014/10/22-00:11 

    あ、悪い。別に手伝いをメインにプランを書くつもりじゃないんだ。
    前半の準備については手伝いをちょっとやるくらいにしか触れられないってことで。
    ピアノと絵本、いいんじゃねえかな。

    ネカット:
    ピアノ、演奏してくださるなら私踊っちゃいますよ!
    久々にネカザイル復活です♪

    俊:
    やっぱりか…

  • [7]エルド・Y・ルーク

    2014/10/21-12:14 

    そうですねぇ。
    こちらはおもちゃ用のピアノと絵本を買って内容をハロウィン仕様にと考えていましたが、今回はせっかくですから、皆さんと同様、孤児院のパーティのお手伝いと参りましょうか。
    人手が足りなければ、せっかくのパーティも台無しですからねぇ。

    こちらの精霊も世間知らずもいいところですので、きっと手伝いをするだけでも楽しめるものとなるかと思われます。
    ランタン等は是非とも作ってみたいですねぇ。

  • 余興と聞いてっ(期待に満ちた目)

    あ、パパが調理や家事がちょっとだけできるから、そっちも手伝えるとおもうよー。

  • [5]俊・ブルックス

    2014/10/20-09:50 

    俊・ブルックスだ。
    初めての奴も引き続きの奴もよろしくな。

    準備に関してはOPにあるものをそのまま使うでいいと思うぜ。
    こっちは準備に使えそうなスキルは何もないから手伝いがメインになるかな。
    ネカが言うには、俺達の本領はパーティーの余興らしい…
    …うん、こうなるって分かってた…

  • [4]高原 晃司

    2014/10/20-03:12 

    おっすおっす!始めましての奴ははじめましてっと
    今回はこっちで企画するかそっくりそのままOPの奴を使うかって感じか
    力仕事とか料理も多少はできっからそういうのは任せてくれ
    よろしくなー

  • 僕もスタンプ欲しいねぇ(羨ましそうにしながら)
    晃司君、俊君はお初かな。
    アイオライト君、サロメではお疲れ様。
    ルークさんは、ヒサメさん以来だね。改めてよろしく。

    このパーティーって、各自決めていいのか、皆で話し合って決めるのかわかんないから、
    ちょっと聞いてこようか。

  • [2]エルド・Y・ルーク

    2014/10/20-00:40 


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