【夏祭り・月花紅火‏】縁日へ行きましょう(加持 桜子 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「夏祭りに遊びに行きませんか?」

 A.R.O.A.の職員が笑顔でウィンクルム達へと告げる。
 今回ウィンクルム達に勧められているお祭りとは、紅月ノ神社で毎年行われている紅月祭りの事だ。この神社は異空間に存在していて、お祭りの時期だけゲートが開いて入る事ができるのだという。
 簡単に言えば縁日が行われていて、そこに行って遊ぶだけでも紅月ノ神社へ降臨した女神の力になるのだと職員は説明してくれた。
 縁日では様々な屋台が出ていて、そこで食べれる物は全てがとても美味だという。
 そして奥にある神社で二人で願掛けをすれば、願いが叶うかもしれない……と言う噂もあるらしいと職員が教えてくれる。

「月の女神ムスビヨミへの願掛けは二人が同じ願いでなくても大丈夫だけれど、言葉にして誰かに喋ってしまうと効果は薄れてしまうなんて噂もあるみたいですよ。強く願えばそれだけムスビヨミへの力も増すようなので、叶えたい願いがある方はお願いしてみるのもいいかもしれないですね」

 もちろん、お賽銭も忘れてはいけない。賽銭箱に投げ込むお金の金額は願う者の自由なので、気持ち程度で大丈夫ですよと職員は笑う。
 縁日の屋台に、神社への願掛け……きっと楽しい物になるに違いない。
 そう言うことならば遠慮なく遊びに行って、お祭りを楽しんでこようとウィンクルム達は笑いあった。

解説

●参加費
屋台での飲食代としてA.R.O.A.から割引チケットが発行されております。
10枚綴りで全屋台共通、一枚で飲食屋台なら一つの食べ物、飲み物であれば一枚で二人分の物が提供されます。
遊戯系でしたら一枚で二人がそれぞれ一回ずつ楽しむ事ができるでしょう。
お値段は500Jrとなっております。

お賽銭代 こちらは願掛けをなさる方のみです、お賽銭の金額をプランに記載して下さればその金額分だけ加算されますのでお忘れないようにお願いします。
忘れてしまった場合はこちらで適度な金額を加算致しますのでお気をつけ下さいませ。

●屋台
およそ一般的な縁日であれば出ているであろう屋台はほとんどあると思います。
一般的でない物はこちらでマスタリングさせて頂く形になりますのでご了承下さいませ。
屋台の売り子は妖狐達です、人間に化けています。

●その他
スタートは縁日に訪れた所からになります。
浴衣を着ている場合はその浴衣の詳細もプランに簡単で結構ですので、記載して頂けると良いかと思います。

ゲームマスターより

初めまして、またはこんにちは、加持桜子です。
四本目のエピソードは夏祭り、縁日でデートとなりました。
夏祭り、縁日、いいですよね!
夏の夜の縁日でパートナーさんと楽しいひと時をお過ごし下さいね。
皆様のご参加、お待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リゼット(アンリ)

  浴衣は紺地に百合柄

やっぱりというかなんというか…
いつの間にそんなに食べ物ばっかり持ってるのよ!
私はラムネとわたあめしか持ってないのに
チケットがもう1枚しかないじゃない

最後のチケットで射的をやってみる
当たったのに倒れないなんてどういうことよ!
「倒れやすいものじゃなくてアレがほしいの、あの犬の置物」
どうやったら倒せるのか教えなさいよ
って…近い…!耳元でしゃべらないで、くすぐったい!
目の前の獲物に集中よ、集中
今度こそ倒してやるんだから

お賽銭は45Jr
始終ご縁がありますように、よ
誰があんたとなのよ!
まあ、長い付き合いにはなりそうだけど
願い事…もっと背が伸びてスタイルが良くなってアンリを見返せますように



夢路 希望(スノー・ラビット)
  髪はツーサイドアップ
浴衣はピンクに兎と小花柄

照れつつも差し出された手を取り
お祭りを見て回ります

目についた先で綿菓子と林檎飴を一つずつ購入
「…ん。甘くて美味しいです」
おねだりには応えるように差し出して
お返しには赤面、勇気が出せたら一口いただきます

射的屋さんを見つけたら思いきって挑戦
普段のお礼にプレゼントするつもりで
狙うのは黒兎のぬいぐるみ
…落ち着いて、狙いを定めて…<メンタルヘルス
「…あ!」
券をぎりぎりまで使って
やっと落とせました
「あ、あの、これっ」
…喜んでもらえて良かったです
「…え?いいんですか?」
頷く彼から
彼そっくりな赤目の白兎を受け取り
「…私も、大事にします」
ぎゅっと腕に抱いて


ガートルード・フレイム(レオン・フラガラッハ)
  ・願掛け
随分混んでるな。これなら月の女神の力になるんじゃないか?
レオン、まず最初に願掛けに行ってもいいかな。(服の袖引っ張って、レオンを連れて行く)
(神社に来れば、300Jr入れて、祈る)
『レオンが、どこかに去ってしまいませんように』
(オーガとの戦いで死ぬという意味でも、気持ちが離れるという意味でも)
ん、いいぞ。
(精霊と連れだって縁日の方へ)

・射的
(二人で代わる代わる挑んでみるも、二人とも失敗続き)
レオン…私はともかく、君は本当に傭兵なのか?
あ、ああ、どうもありがとう。(クマもらって。そういや彼に何かもらったのは初めてだ)

・雑踏の中
(相手の言葉に)…ああ、うん。
いいんだ。信じてるから。(微笑)



ユミル・イラストリアス(ドクター・ドレッドノート)
  【チケット購入します、精霊が神人に内緒で】

師匠から縁日に誘われました…
縁日!そんな師匠、贅沢ですよ!
お誘いは嬉しいんですが、私遊びに行くお金はあまり残してなくて…。
って、チケット?これがあれば遊べるのですか?
いつの間に…?

あ、そ…それならですね
二人でトロピカルジュースを飲んで、綿菓子や焼きそば、林檎飴を食べて…射的とか、えーと金魚すくいとかおみくじして遊びたいです!

ふふ…楽しいですね師匠!
私…家が大変だったから、こうやって誰かと遊ぶのすごく久しぶりです。
師匠心配してくれたんですか?
ありがとうございます、それと、すみませんでした…
適度に休憩を挟んだほうが勉強の効率も良くなりますよね!



ティアーゼ(リンド)
  浴衣:白地に撫子
浴衣が似合っているかどうかどきどき
下駄も履きなれなくて歩くスピードはゆっくり

お祭りは楽しみですが二人でというのは落ち着かないですね…
このような場ですし多少ははしゃいでも構いませんが、限度はわきまえてください
それと私は門限があるので遅くなる前には帰りますので

まず金魚すくいに挑戦
簡単そうにリンドがすくうなか全く取れず
つい向きになって何枚か消費しようやく1匹ゲット

その後も一緒に屋台をめぐっていると段々足に痛み
鼻緒が食い込んで足が真っ赤に
我慢しようとするが気づかれ祭りから離れ座れる場所まで移動

折角のお祭りなのにごめんなさい
私はここで待っていますからリンドさんはお祭り楽しんできてください



●あなたと過ごす、祭りの夜に

 ユミル・イラストリアスはドクター・ドレッドノートに誘われる形で紅月ノ神社の縁日へと訪れていた。ユミルは倹約家で、余り自分にお金を掛けたりするタイプではない。もちろんお金の掛かる遊びも、年頃の女の子が憧れるようなファッションをする事もなかった。そんなユミルを気にかけて、ドレッドノートが半ば無理やりにでも誘い出したのだ。

「縁日! そんな師匠、贅沢ですよ! お誘いは嬉しいんですが、私遊びに行くお金はあまり残してなくて……!」

 容易く予想できたユミルの返事に、やはりそうだろうなと言う顔をしてドレッドノートはユミルにチケットを見せた。それはA.R.O.A.が発行してくれた縁日で使える割引チケットだ。

「ユミル、お前がそう言うであろう事情はわかっているが……実家に金を送金しているんだろう?それはお前の自由だから構わんが、髪はボサボサ、服は着の身着のまま……年頃の娘だというのにそれでは傍にいて見てられんぞ。私が言うのもなんだがケチすぎる、気晴らしくらいの金は使っておけ」
「は、はい……。ってチケットなんていつの間に……?これがあれば遊べるのですか?」

 そんなに自分の頭はボサボサだろうか、とユミルが緩いウェーブの掛かった銀色の髪を手ぐしで撫で付けながらドレッドノートにチケットの事を聞く。

「そうだ。10枚あるからそれなりに遊べるだろう」
「あ、そ……それならですね! 二人でトロピカルジュースを飲んで、綿菓子や焼きそば、りんご飴を食べて……射的とか、えーと金魚すくいとかおみくじとかして遊びたいです!」
「はしゃぐ気持ちはわかるが、少し落ち着け。それくらいならこのチケットで十分賄えるだろう」

 いつになくキラキラとしたユミルの表情を見ると、年相応の女の子なのだとドレッドノートは認識する。ユミルの実家である錬金術のアトリエが経営難で、A.R.O.A.の依頼によって手に入れたお金の殆どを実家に仕送りしている為に万年金欠ではあるが、全く遊ぶ事に興味がない訳ではないのだ。

「あ、師匠! 焼きそばです、師匠も食べますか?」
「一つ買って分ければいい。綿菓子もりんご飴も、一つ買ってユミルが食べた残りで構わない」

 はい! と元気よく返事をしてユミルが屋台で食べたい物をチケットと引き換える。あっと言う間にユミルの両手は塞がって、ドレッドノートも持つ破目になった。
 ユミルは買った物を一つ一つ、美味しいと言っては食べていく。縁日で食べる物は、何故かいつもより美味しく感じるのは気のせいだろうか? ドレッドノートは興味深いなと思いながらユミルが渡してくる食べ物を口にした。
 残ったチケットは五枚程で、射的や金魚すくいを二人で楽しんだ。たまにはこうやって息抜きをするのも悪くはないだろうとドレッドノートが言うと、ユミルは分厚い眼鏡の奥にある瞳を輝かせて笑った。

「ふふ、楽しいですね師匠! 私、家が大変だったから、こうやって誰かと遊ぶのすごく久しぶりです。もしかして師匠、心配してくれてたんですか?」
「私がユミルを心配……まぁ、そうだな」

 否定はしない、ドレッドノートの目的の為にはユミルには心身ともに健康でいて貰わなくてはならないのだ。心底自分に心酔させて、その心臓を――。

「ありがとうございます、それと、すみませんでした……」
「いや、お前が気にする事ではない。根を詰め過ぎるのはよくない、研究は没頭しがちな行為だが実はそれが一番進展の邪魔をしているんだよ」

 自分の思考に落ちそうになった所を、ユミルの声に引き戻されてドレッドノートは笑みを作りながらそうユミルへと説いた。

「そうですよね、適度に休憩を挟んだ方が勉強の効率も良くなりますよね!」
「そう言うことだ。ほら、チケットはまだ残っているぞ」
「はい! 次はあっちへ行きましょう、師匠」

 この先、ユミルとドレッドノートの気持ちがどう動くのかはわからないけれど……今、確かに二人はこの夜を楽しんでいた。



「随分混んでるな……これなら月の女神の力になるんじゃないか?」

 ガートルード・フレイムは縁日の盛況さから、レオン・フラガラッハにそう話し掛けた。話し掛けられた本人はきょろきょろと辺りを見回していたが、ガートルードに服の袖を引っ張られるとそちらへと振り向く。

「ん? なにどうした?」
「聞いていなかったのか? まず最初に願掛けに行ってもいいかって聞いたんだ」

 まさか可愛い女の子がいないかと思ってきょろきょろしていた、等とは言えずレオンは曖昧に笑いつつガートルードに聞き返す。

「ガーティー、願い事あんの?」
「ん、まぁな」

 ガートルードに服の裾を引っ張られたまま、レオンはその後を付いて行く。紅月ノ神社の前に立つと、ガートルードはお財布から300Jrを取り出して賽銭箱へと投げ入れる。そしてそっと目を閉じて手を合わせると、心の中で願い事をした。

(レオンが、どこかに去ってしまいませんように)

 それはオーガとの戦いや、何か不慮の事故……それから気持ちが離れてしまわないようにという二重の意味を籠めて、だ。
 真剣な表情で祈っているガートルードの様子に首を傾げつつ、レオンは100Jrを賽銭箱へと投げて祈る。

(隣の奴をきっちり護れますように)

 それは精霊たる自分の役目だけれど、最近は少し意味合いが変わってきているのかもしれない。自分でも、気が付かない内に。

「よし、これでいいか? んじゃ行くぞ」
「ん、いいぞ」

 レオンに呼ばれ、ガートルードは並ぶように縁日の屋台へと向かった。
 屋台はどれも人が居て、賑やかで楽しい物ばかりだ。食べ物系の屋台からは良い匂いが流れてきて、そんなに空いてもいないお腹を刺激される。ふと射的の屋台に目をやると、丁度空いているところで二人でやってみようかと言う話になった。

「はい、チケット一枚で6回分だね!毎度!」

 店番からチケットと引き換えに玩具の銃と弾を受け取ると、二人は交互に的を狙って撃ち始めた。玩具の銃は軽く、扱いが意外と難しいのか、二人の弾は一向に的に当たらない。

「弾が切れてしまったな……」
「もう一回だ、チケットもう一枚使うぞ」

 若干ムキになっていた二人は、もう一度と射撃を繰り返す。が、どうにも上手く的に当たらない。

「レオン……私はともかく、君は本当に傭兵なのか?」
「射的と本当の銃は全然違うし。つか、俺あんまり銃普及してない地域にいたし」

 傭兵としての腕を疑われ、レオンは意地になって射的を続ける。そして、半分以上チケットを使って狙いを定めたその時。

「あ」
「当たった!」
「はい、おめでと~!どうぞ」

 小さなクマのぬいぐるみを店番から渡され、レオンは面目躍如とばかりに笑ってガートルードへとそのぬいぐるみを投げた。

「ほら、やるよ」
「あ、ああ……どうもありがとう」

 渡されたクマのぬいぐるみは可愛らしい茶色のぬいぐるみで、ガートルードはそう言えばレオンに何かもらったのは初めてだと気が付く。ほんの少しだけ微笑んで、大事そうにぬいぐるみを手にするとレオンの後を追いかける。
 雑踏の中、はぐれないように歩いているとレオンがガートルードへぼそりと話し掛けた。

「……あのさ、俺は願掛けってあんま信じてねえんだ。願いがあったら努力して叶える派だな。だから……なんか俺に言いたい事あったら言えよ」
「ああ、うん。いいんだ、信じてるから」

 レオンの言葉にガートルードは淡く微笑んで答えた。その笑みはレオンを惹き付けるような笑顔で、レオンは言葉に詰まる。

「……ほら、チケットあと半分くらいあるから次行くぞ!」
「あぁ、ちょっとお腹空いたな」

 レオンの様子には気が付かず、ガートルードは屋台を物色し始める。縁日の夜は、まだまだこれからだった。



 夢路 希望とスノー・ラビットはお互い浴衣を着て紅月祭りの縁日へと訪れていた。希望は長い髪を耳から上の後ろ髪を二つにわけて括る、ツーサイドアップにして残りを下ろしている。

「ノゾミさん、その浴衣とてもよく似合っていて可愛いね!」
「ユキこそ、よく似合っていると思います。裾のワンポイントがとってもユキらしいです」

 ピンク地に兎と小花柄の浴衣を着た希望が、ベージュに月と兎のワンポイントが裾に施された浴衣を着たスノーを褒めるとお互いが照れた様に笑った。スノーがはぐれないようにと差し出した手を、少し照れながらも希望が握り返すと二人はゆっくりと歩き出した。
 祭囃子が響く縁日は、どの屋台も美味しそうに見える。そこで目を惹いたのは紅色が鮮やかなりんご飴と、ふわふわで美味しそうな綿菓子だ。
 希望が綿菓子を、スノーがりんご飴をチケットと引き換えて、人の邪魔にならない場所で食べる事にした。スノーはりんご飴を食べるのが初めてで、思い切ったようにパリパリの飴が掛けられたさくさくの林檎を一口齧る。

「美味しい!」
「綿菓子も……ん、甘くて美味しいです」
「ノゾミさんのも、一口ちょうだい?」

 甘えるように笑うスノーに応えるように、希望は綿菓子をそっと差し出す。

「ん、こっちも甘くて美味しいね。お返しに僕のもどうぞ」

 その蕩けるような甘さに目を細めるスノーにりんご飴を差し出され、希望はどきっとして照れてしまったが勇気を出して一口齧る。

「甘い……ですね、美味しい」

 甘いりんご飴と綿菓子を分け合いながら食べ終わると、次の屋台を見る為にまた歩き出す。途中、射的を見つけて二人で遊んでみる事にした。希望が狙うのは黒兎のぬいぐるみだ。玩具の銃は軽く、思ったよりも銃の先がぶれてしまい中々的に当てる事ができない。何度かチケットと引き換えて、自分の分は最後の弾になってしまった。
 希望はゆっくりと深呼吸して目を閉じる。

(落ち着いて……狙いを定めて……)

 そしてゆっくりと目を開けると、狙いを定めて引き金を引いた。

「当た~り~! はい、お嬢さんおめでとう!」
「あ、ありがとうございます……!」

 スノーはそれを横でにこにこと笑って見ながら、次は自分の番だと白兎のぬいぐるみを狙う。部屋に沢山あるけれど、新しい家族を迎えたかったのだ。
 やはり玩具の銃に苦戦して、スノーも弾がなくなるギリギリで目当ての的を打ち落とす。

「……やった!」
「はーい、おめでとう~! どうぞ!持って帰ってね」

 店番から渡されると、スノーは笑顔でありがとうと答えた。希望に見せようと横を向くと、希望が少しもじもじしながら普段のお礼のつもりで取った黒兎のぬいぐるみをスノーへと差し出した。

「あ、あのっ、これっ」
「……僕に? いいの?」

 こくこくと頷く彼女から頭に赤いリボンをした黒目の黒兎を受け取ると、自然と笑みが零れる。

「ありがとう、大事にするね。代わりって言ったらなんだけど、これをノゾミさんに」
「え、いいんですか……?」

 スノーにそっくりな赤目の白兎を受け取ると、希望も嬉しそうにそのぬいぐるみをぎゅっと胸に抱いて笑う。それはまるでお互いに似たぬいぐるみを交換したようで、希望は少し照れくさくなって持っていたうちわで顔を扇ぐ。
 残り少なくなったチケットで何をしようかと、笑いながら二人は縁日の人混みの中へ紛れていった。



「その浴衣、ティアちゃんにとても良く似合ってるね。ピンクの撫子がティアちゃんにぴったりだよ」
「そ、そうですか? ……ありがとうございます」

 白地に撫子の模様が入った浴衣を着たティアーゼは、リンドにそう褒められてほんの少し笑顔を浮かべた。浴衣が似合っているかどうか、ずっとドキドキしていたのだ。一方、リンドは黒地に茶の縦縞というシンプルながらスマートな佇まいの浴衣だ。

「このような場ですし、多少ははしゃいでも構いませんが……限度はわきまえて下さい。それと私は門限があるので遅くなる前には帰りますので」
「はいはい、わかりましたよ」

 初っ端からガードの硬い言葉にリンドがティアーゼらしいと笑いながら頷く。ティアーゼはティアーゼで、お祭りは楽しみだけれど二人でと言うのがどうにも落ち着かないようで、どことなくそわそわしているようにも見えた。
 気を取り直したリンドが人が多いからはぐれないようにと手を差し出すと、ティアーゼは大丈夫ですと抵抗を見せる。

「あ、迷子になる方がいい? はぐれると中々見つけ難いと思うんだよね」
「……わかりました、仕方ないですね」

 ティアーゼのプライドを上手く刺激して、リンドは手を繋ぐ事に成功する。そのまま二人で屋台を品定めしながら歩いていると金魚すくいを見つけ、どちらからと言う事もなく金魚すくいをする事にした。
 ポイと呼ばれる金魚を掬う為の道具と小さな椀を渡されて、二人で金魚が泳ぐ水槽の傍にしゃがむ。

「俺、こういうの結構得意なんだよね」

 その言葉通り、リンドは器用に金魚を掬っていく。一瞬それに見惚れてしまったが、ティアーゼも負けじと金魚すくいをする為に真剣な表情で金魚を掬う……のだが、全く取れないままポイが破れてしまうのだ。ムキになって何度も挑戦するティアーゼにリンドは思わず笑ってしまう。

「どっちが年上かわからないね」
「……言いましたね」

 負けず嫌いなティアーゼはその言葉に、何度かポイを購入してやっと一匹の赤い金魚を掬う事ができた。その瞬間の笑顔といったら本当に嬉しそうで、リンドはつい見惚れてしまった程だ。金魚すくいのその後は、また二人で屋台を巡る事にした。
 下駄を履き慣れていないティアーゼは元々ゆっくりとした速度で歩いていて、リンドはそれに合わせるように歩いていた。けれど更にティアーゼの歩みが遅くなった事に気が付いて、その足元を見るとティアーゼが歩き辛そうにしているのが見て取れる。

「ティアちゃん、もしかして足……痛い?」
「……はい、少し」
「少しって感じじゃないよね、それじゃ歩くの大変だろうし……ちょっと休憩しようか」

 本当は鼻緒が足の指に食い込んでしまって、とても痛くなっていたのだ。我慢しようと歩いていたが、リンドに気が付かれてしまっては仕方ない。祭りから少し離れた座れる場所で休憩をする事にした。

「あぁ、結構赤くなっちゃってるね」
「折角のお祭りなのに、ごめんなさい。私はここで待っていますから、リンドさんはお祭りを楽しんで来て下さい」

 そうティアーゼに言われるとリンドは残ったチケットを受け取って、少し待っててと告げて屋台へと走る。残りのチケットでりんご飴や綿菓子、それからたこ焼きを買った。それから、ティアーゼの帰り用の靴を一つ。なるべく浴衣の装いを壊さないように、ヒールのないサンダルを選んだ。お祭りの会場で売っているか心配だったが、慣れない下駄で足を痛める女性も多いのか妖狐達の好意で用意されていたのだ。

「お待たせ、ティアちゃん。はい、これお土産だよ」
「リンドさん……私なんかに気を使わなくても……」
「一緒じゃないと楽しくないから。それと、これも」

 下駄を脱がせて、履き易いサンダルを差し出す。その気遣いにティアーゼは申し訳無さそうに、けれど嬉しそうに微笑んだ。少し遠くに聞こえる縁日のお囃子を聞きながら、のんびりと二人で過ごす時間も悪くはなかった。



 黒地にかすれ縞模様の浴衣を着たアンリは、両手にいっぱいの食べ物を落とさずにバランスを取って持ちながら、器用に皿の上の食べ物を摘んでいた。

「やっぱりと言うかなんというか……ちょっと目を離した隙に、いつの間にそんなに食べ物ばっかり持ってるのよ!」
「縁日と言えば食いもんが主役だろうが。もっと食いたいのを我慢してるくらいだ」

 紺地に百合の柄が美しい浴衣を着たリゼットに怒られながらも、一向に気にする様子を見せずにアンリはお皿を片付けていく。

「あぁ! 私はラムネと綿飴しか持ってないのに。チケットがもう一枚しかないじゃない」
「ん? リズもそんだけじゃ足りないのか?」
「足りないとか、そういう話じゃないわ!」
「お腹が空くと怒りっぽくなるもんな、ならたこ焼きを分けてやろう。ほれ、あーん」
「ん……っ美味しいわね、これ」

 たこ焼き一つで誤魔化されてやるつもりはなかったが、程よい温度のたこ焼きはとても美味しかった。使ってしまったチケットが戻ってくる訳でもない、と仕方なくリゼットは諦めてアンリが持っているお皿の食べ物を摘む事にした。
 大盛りの焼きそばもたこ焼きも、二人で食べればあっという間で、ゴミを片付けて縁日を回る。

「10枚もあったのに、チケットが最後の1枚になってしまったわね」
「使えばなくなるもんだからな。まぁ最後の一枚はリズが好きな事に使っていいぞ」

 大半を使ったのは誰かしらね、と言うリゼットの視線をそ知らぬ顔でアンリは笑う。神社に近い場所で射的の屋台を見つけると、リゼットはそこに的として置かれていた犬の置物に目を遣った。

「あれが欲しいわ。射的にしましょう」
「射的か、まぁひとつくらい遊んでみるのもいいか。って犬? なんであんなの欲しいんだよ。ふっまだまだお子様だな」

 お子様と言う言葉は聞こえなかった事にして、チケットと弾を引き換える。狙いを定めて引き金を引けば、弾は犬の置物へと当たった。けれど、当たっただけで落とせはしない。

「当たったのに倒れないなんて、どう言う事よ!」
「倒れ易い物にしておけばいいじゃないか」
「アレが欲しいのよ、あの犬の置物! どうやったら倒せるのか教えなさいよ」

 仕方ない、教えてやるかとアンリはリゼットの後ろから肩越しに犬の置物を見ながら落とし方をレクチャーする。

「真ん中じゃなくて上の方を狙え。揺れて倒れ易くなるからな」
「ひゃ……っ! って近い!耳元で喋らないで、くすぐったい!」
「くすぐったい? 先生のアドバイスに集中しな、ほら。ちゃんと狙って、角度はこうだ」

 耳元で喋るアンリの声に、我知らずリゼットは赤くなりながらも目の前の獲物に集中する。そしてアドバイス通り、上の方を狙って引き金を引いた。

「やったわ!」
「お、取れたじゃないか。取れなかったらあとで俺が取ってやろうと思ったが……俺のアドバイスのお陰だな」
「はいはい、ありがとうございました。先生」

 先生、と言われてアンリはどう致しましてと笑う。お目当ての置物を手に入れ、それを大事に持ちながら神社で願掛けをして行く事にした。

「お賽銭は45Jrよ。始終ご縁がありますように、って意味よ」
「ご縁ねぇ。そうか、そんなに俺と居たいのか。じゃあ俺も45Jrだ」
「誰があんたとなのよ!」

 確かに長い付き合いにはなりそうだけれど、そう思いながらリゼットは手を合わせて願いを掛ける。それに倣ってアンリも手を合わせた。

(願い事は……もっと背が伸びてスタイルが良くなってアンリを見返せますように!)
(願い事は……そうだな。リズが色んな意味で早く大人になりますように)

 似ているようで、似ていない二人の願い事。いつかこの先叶うであろう願い。ムスビヨミが二人の願いに微笑んだような気がしたのは、気のせいだったのだろうか。


 祭りの夜はまだまだ終わらない。紅月ノ神社を訪れた者達は、より一層大きくなる祭囃子を聞きながら縁日を楽しむのだった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 加持 桜子
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月15日
出発日 08月22日 00:00
予定納品日 09月01日

参加者

会議室

  • [6]ティアーゼ

    2014/08/20-00:15 

    ティアーゼと申します。
    皆様初めまして。今回はよろしくお願いします。
    人が多そうで不安ですが、縁日を楽しんでこようと思います。

  • [5]夢路 希望

    2014/08/19-18:49 

    えっと、夢路希望、です。
    お久しぶりの方も、初めましての方も、宜しくお願いします。
    ……縁日、とっても楽しみです。

  • あ、済まんユミルさんたちとは前回も一緒だったなorz
    ばらばらに妖怪を探す以来だったから気がつかなかった…(超残念記憶力)
    改めまして、よろしくなorz

  • みなさん初めまして、ユミル・イラストリアスです
    え、縁日ですか…はぁ

  • こんにちは。リゼットさんペア以外とは初顔合わせ、かな? 今夜は縁日楽しもうな。
    任務とかじゃなくてのんびりお祭り遊んでみたかったから、丁度良かった。
    10枚もチケット使えるだろうかな…(汗)

  • [1]リゼット

    2014/08/18-00:26 

    リゼットよ。連れはアンリ。
    食べ物だけで全部チケットを使われないようにしなくちゃ…。
    よろしくお願いね。


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