【夏祭り・鎮守の不知火】暇な酒好き天狗(和歌祭 麒麟 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

●酒飲み妖狐
 祭りの裏方を任せられている妖狐の小五郎はかなりの怠け者だった。
「まったく、なんで俺っちがこんな面倒なことをしなくちゃならんのだよ」
 日本酒の入った桶をあちこちの祭り会場に運ぶ仕事が小五郎の仕事だった。
「うまそうな匂いがするなぁ。誰も見ておらんし、少しくらいなら飲んでも構うまい」
 小五郎はいつも持ち歩いているぐい飲みを懐から取り出すと、桶にたっぷりと入っている日本酒をすくい上げる。
 グビグビと飲む小五郎。整った顔が緩くなり、ほのかに顔が朱色になっている。
「うまいじゃないか。どれ、もういっぱい頂くとしようじゃないかい」
 小五郎がもう一杯飲もうとしていると、何者かの気配を感じた。
「だ、誰だい? 俺は酒を盗み飲んじゃいないよぉ、手に持ってるこのぐい飲みはぁ、あれだ、水だよぉ」
 小五郎は見えない誰かに言い訳をする。
「なに、咎めたりはせん。ワシもお仲間に入れてもらえんかな?」
「あ、あんたは!」
 小五郎は驚き声を上げる。すると、近くを偶然通っていた妖狐が小五郎と謎の人物を見つけた。
「おい、小五郎、そいつは! 逃げろ!」
「逃がさんぞぉ、ほっほっほ」
 小五郎は謎の人物――天狗に攫われていった。

●やんちゃな天狗
 A.R.O.A.に小柄なおかっぱ頭の少年が来ていた。
「ここがA.R.O.A.でいいのじゃな」
「ん? どうしましたぁ?」
 やる気のない職員が少年の応対をする。
「わたしはテンコというのじゃが、うちの者が一人、天狗に攫われてしまったのじゃ、これ、聞いておるか?」
「あー、ねみぃ……、ああ、天狗に攫われたんですねー、……天狗? オーガじゃなくて?」
「天狗じゃ、妖怪の天狗じゃぞ、もっとしっかりした職員はおらんのか?」
 テンコは辺りを見回すが運悪く他に職員は見当たらない。
 テンコは神社の宮司にして妖狐一族の長である。子狐だが。もふもふの耳を動かして他の職員がいないか探るがいない様子。しっぽが残念そうに垂れた。
「ああ、思い出した。会議でいわれたあれかぁ」
 やる気のなさそうな細い目をした職員は閃く。
「夏祭り関係の方ですね。確か神社にテンコ様ってかたがいたようなぁ」
「そのテンコじゃ」
 職員は納得したというように手を叩いた。
 少しはまじめに話を聞き始める職員。
 祭りの雰囲気に寄せられたのか、一匹の天狗が迷い込んだようだ。
 小五郎という祭りの裏方をしていた妖狐が天狗に攫われたとのこと。
 また、祭りで振る舞われている日本酒があちこちで盗まれているという。犯人は天狗らしい。
 酒好きの天狗らしく、いくら新しく日本酒を用意しても持って行かれてしまうという。
 困ったのでA.R.O.A.に助けを求めに来たそうだ。
 天狗に攫われた妖狐の小五郎を救出して欲しいという依頼と、悪さをする天狗を懲らしめて欲しいとの依頼。
「天狗のヤツは分身するから注意するのじゃぞ。ヤツはタフな妖怪じゃが、ウィンクルムたちならなんとかできよう」
 分身の数は多くて、本体を見つけるのは難しい。ただ、酒が大好きな天狗なので、日本酒を見ても分身を維持できるとは思えないとのこと。
「ウィンクルムたちに依頼を出しておきますね」
 職員は眠たそうにあくびをした。
「……ちゃんと依頼を出すのじゃぞ、大丈夫じゃろうか……」
 このやる気のない職員も仕事はきちんとこなして、ウィンクルムたちに正式に依頼がでた。
 任務の内容は妖怪・天狗から妖狐・小五郎の救出と妖怪・天狗の討伐だ。

解説

●詳細
 妖怪・天狗の討伐と妖狐・小五郎の救出をおこなってください。
 天狗の居場所は時空が歪んだ鎮守の森です。
 トランス状態になるといくことができるといわれている場所となっています。

★妖怪・天狗ってどれくらいの実力なの?
 タフです。攻撃を沢山食らってもなかなか倒れません。
 攻撃力は高くありませんが、分身をおこない、ウィンクルムたちの攻撃にミスが出やすくなります。

★妖怪・天狗と妖狐・小五郎はどこにいるの?
 鎮守の森に天狗の隠れ家が2カ所あります。そのどちらかにいます。天狗と小五郎は一緒にいるかも知れません。
1:草むらの小屋
2:竹藪の小屋

ゲームマスターより

 お祭りの裏方も大変!
 妖怪に邪魔されながらも妖狐たちはがんばっています!
 小五郎の運命はどうなる?

リザルトノベル

◆アクション・プラン

エリザベータ(ヴィルヘルム)

  心情:
呑み仲間が欲しくなったか?
盗人猛々しいな

行動:
日本酒を数本、通信機、塩を小袋に入れて用意
メモ帳も何枚かちぎっとくぜ
通信機は電源入れて通話にしてポケットに入れとく

日本酒を持ち歩いて天狗を誘い込む
来たら一緒に酒が飲みたいって声かけるぞ
「酒豪の天狗が居るって聞いて、一緒に飲みてぇなと」
コップがないと伝え天狗の隠れ家に連れて行って貰えねぇか頼むぜ

駄目なら酒と一緒にくさやを渡して匂いを辿って尾行する

隠れ家に着いたら天狗にお酌して酒を飲ます
小五郎も居るか確認してぇな
天狗が油断したらユミルに奇襲して貰うぜ

戦闘:
天狗に塩をかけて目潰しだ
本物ならしょっぱさで怯みそうだし

ウィルの詠唱中はあたしがかばうぜ



ユミル・イラストリアス(ドクター・ドレッドノート)
  【支給品要請】
インク
ゴム風船

天狗は小五郎さんに用があって攫ったのではないかって思います
だから、小五郎さんに今すぐ危機があるわけじゃない…
ですが時間が経過したらわかりません、準備はしつつもできるだけ早く見つけ出す必要がありますね。

この人数ですと、別々で捜索する方が危ないです
なので、天狗をお酒でおびき寄せ、アジトに帰るそのあとを尾けていけたらいいなと。
エリザベータさん達が天狗と接触している時は私達は離れたところから監視、隠れ家に向かう時に行動を開始します。
森に入るさいはトランスしておきます。
警戒が緩んでいる時に師匠の【乙女の恋心】で奇襲できれば良いのですが。



●鎮守の森にレッツゴー!
 神社の一部を闇が覆っていた。どこから来たかはわからないが、鎮守の森へと繋がる場所だ。
 神社で働く者でもめったに入ることはない場所である。中は迷路のようになっている。妖怪たちが悪さをするのも相まって、鎮守の森に入っていこうという者はとても少ない。
「エルザちゃん、鎮守の森ってトランスしないと入れないんですって」
「本当かよ、面倒くせぇ場所だな」
 エリザベータとヴィルヘルムは神社の一角で闇の空間を見つめていった。
「ねぇ、どうする、トランスしちゃう?」
「アレやるんだろう? こっ恥ずかしいぜ」
「そうよねー、オーガと戦うわけでもないのに、どこでもチュッチュするのはお下品よ」
 トランスをしないといけないのだが、鎮守の森に入るというだけでキスをするというのも気恥ずかしい二人。
「こんなところでぐずぐずしててもしょーがねぇだろ、やるぞ」
「あら、エルザちゃん、情熱的ねっ」
「茶化すなよな」

『薔薇の導きよ……!』

 インスパイアスペルを唱える二人。エリザベータの唇がヴィルヘルムの頬に触れた。
 二人の体からオーラがあふれ出す。エリザベータからは青薔薇の花弁のようなオーラが舞い落ちるようにあふれ、ヴィルヘルムからは白薔薇の花弁のようなオーラが舞いでた。
 その光景は幻想的で、目の前に広がる闇の空間が霞む。
「あら、先に進めそうね」
「本当にトランスしないと行けない場所なんだな」

「師匠、ここが鎮守の森の入口ですね!」
 ユミル・イラストリアスは興味深そうに闇を見つめていた。
「不思議な場所だ。世界から切り取ったかのようにここだけ空間がおかしい」
 ドクター・ドレッドノートは闇を見つめながらいった。
「さすが師匠! 何かわかるんですね」
「ユミル、五感を研ぎ澄まして感じてみろ、ここの異様さが肌を通して理解できるぞ」
 ドクターがいうように、ユミルは五感を研ぎ澄ます。しばらくの間そうしていたが、特に何も感じない。
「うーん、私じゃなんにもわからないです」
「なに、気にすることはない。私と一緒にいればそのうちわかるようになる」
「はい! 精進します!」
 ユミルは元気よくいった。
「……ところで、そのぉ、トランスしないと鎮守の森に入れないらしいのですが……」
「ああ、そのことか。照れていても仕方がない。時間が経てば経つほど恥ずかしくなるぞ」
「師匠ぉ……」
 ユミルは恥ずかしさで目尻に涙が浮いている。
「インスパイアスペルを唱えるぞ」
「はい」

『さようなら』

 ユミルは勇気を振り絞ってドクターの頬に唇を触れさせる。
 二人の体からオーラが吹き荒れた。
「これで鎮守の森に入れる。いくぞ、ユミル」
「了解です!」
  
●迷路のような鎮守の森だけど、天狗の方からやってきました
「この辺りからうまそうな酒の匂いがしてるんじゃがな……」
 鎮守の森に入るとそこは迷路だったが、しばらくすると天狗がこちらに向かって歩いてきた。
 ドクターとユミルは隠れる。
「よう、天狗、あたしらと酒飲まないか?」
 エリザベータが日本酒の一升瓶を天狗に見えるように持ち上げた。
「ぬ、人間か、何しにきた! ワシは人間が大っ嫌いじゃ」
 酒に目もくれずに突然怒り出す天狗。酒になら簡単に靡くと思ったが一筋縄ではいきそうにない。
「おいしいお酒が手に入ったの。ワタシたちだけで飲むのも寂しいじゃない。酒豪の天狗ちゃんがいるって聞いてきてみたのよ」
「どういう気かしらんが、人間のいうことなど信じられるか、……とはいえ、うまい酒というのは本当のようじゃな」
 ヴィルヘルムが日本酒をちらつかせていると、天狗は何かを悩み始めた。
「よし、うまそうな酒に免じて、今日だけは人間とも酒盛りをすることに決めたぞ! 善は急げじゃ、ワシの隠れ家に来るがよい」
 天狗は背を向けて歩き始める。
「なんか、悪い奴には見えないな」
「だめよ、見た目で判断しちゃ。悪い男なんて沢山いるんだからっ」
 エリザベータとヴィルヘルムは、話のわかる天狗がお人好しなのか、腹黒なのか読み切れていない。
「何をしとる、はよ、来んか。隠れ家に一人待たせておる。きっとヤツもその酒をみたら喜ぶぞ」
「わりぃ、今行くぜ」
 エリザベータとヴィルヘルムはいって、天狗の後をついていった。

「いっちゃいましたね」
「こうも順調だと、裏があるのではないかと勘ぐってしまうな」
「どうしますか?」
「ついていくしかないだろう。鎮守の森は思っていた以上に入り組んでいる。こんな場所に残される方が危険だ」
「れっつ、ストーキングですね」
 ユミルとドクターはエリザベータたちから一定の距離を開けて、慎重に後を付けていく。
 天狗に見つかってしまっては潜んでいる意味がない。
 しばらく歩いて行くと、急に開けた場所に出た。さらに進んでいくと道は細くなり、竹藪の中に入っていった。
 竹が風で揺れて葉の擦れ合う音が聞こえる。
 そのまま歩いて行くと古めかしい小屋が視界に飛び込んでくる。
 小屋の前には小さな池があり、鹿威しがばったんこと音を立てていた。

●ようし、酒を飲んじゃうぞー
「小五郎、うまい酒を持った人間が遊びに来たぞ」
「天狗の旦那、毎度悪いっすね、へへへ」
「なに、酒は時間を潰すのには必要じゃろう?」
「おっしゃる通りでっ!」
 小五郎は天狗の隠れ家にいた。特に酷い目に遭っている様子はない。
 むしろ、くつろいでいた。
「将棋、天狗の旦那の番ですぜ」
「ワシがいない間に駒を動かしてないじゃろうな?」
「俺っちが有利なのにそんなことするわけないじゃないですか」
 天狗と小五郎は仲が良さそうに見える。
「ほれ、二人とも、入口で立っていないで上がってきなさい」
 天狗に言われ、エリザベータとヴィルヘルムは小屋に上がった。
 飲んべえの小屋なので汚れているかと思いきや、そんなことはなく、こぎれいに整理整頓がされていた。
「おっ、あんたら人間か、うまい酒をわざわざ持ってきてくれるとはありがてえ、さあ、飲もうじゃないかよ」
 部屋のぐい飲みをエリザベータとヴィルヘルムに渡してくる小五郎。
「ワタシがついであげるわよ、どうぞー」
「あ、いい匂いだな。ウィル本当に良い酒持ってきたんだな」
 みんなのぐい飲みに日本酒を注ぐヴィルヘルムにエリザベータはいった。
「当たり前じゃない。不味いお酒なんておじんの飲み物よ」
「違いないぜ」
 小屋にいる全員で日本酒をあおる。A.R.O.A.から支給してもらったものだが、銘柄はヴィルヘルムが指定したらしい。酒に疎い職員だったのか、簡単に処理が通ったらしいが、職員は後で酒の相場についてお説教をくらっているに違いない。
「天狗、いい飲みっぷりだね。わざわざ、こんな所にまで来てよかったぜ。酒豪の天狗が居るって聞いて、一緒に飲みてぇなと思ってたんだぜ?」
 エリザベータはうまい日本酒を飲みながらいう。
「あら、天狗ちゃんだけじゃないでしょう? 小五郎ちゃんとも飲みたいっていってたじゃない」
「そうだっけか?」
 小五郎は自分の名前が出て、エリザベータとヴィルヘルムを眺めた。
「俺っちのこと知ってるんで?」
「祭りの裏方で大酒飲みっていったら有名ですもの、ねえ?」
 ヴィルヘルムはいった。
「なんで、鎮守の森で天狗と一緒にいるんだ?」
 エリザベータが聞くと小五郎はとんでもないことを言いはじめた。
「そりゃー、あれだよ、天狗の旦那といれば酒飲み放題だし、仕事しなくていいし、極楽じゃねーか。こうしてたまに人間が遊びに来てくれたら暇なんてしないぜ」
「違いない、ホッホッホ」
 天狗は大きな声で笑った。
 エリザベータとヴィルヘルムは確信する。小五郎は攫われたのではなくて、仕事をばっくれて天狗と酒を飲んで遊んでいたのだ。

●おしおきターイム!
「よくわかりませんけど、小五郎さんは拉致されてるわけじゃなさそうですね」
「どうかな? 案外、ストックホルムシンドロームというヤツかも知れない」
「スト……なんです、それ?」
「犯人と長い時間一緒にいると連帯感を覚える現象だ。小五郎は天狗に拉致されたのち、時間を共にすることによって天狗を仲間のように思い始めているのかも知れないな」
 ドクターの考察にユミルは「さすが、師匠」と感心していた。
「で、これからどうするんでしょう?」
「ここからなら天狗を魔法で狙いたい放題だ。ユミルは私の魔法が天狗にヒットしたタイミングで、インク入りのゴム風船を天狗に投げつけるんだ、いいな」
「はい、任せてください!」
 ドクターは詠唱を開始する。魔力が杖に集中していくのを感じた。
 天狗は全く気がついく様子はない。作戦は順調だといえる。
 30秒の詠唱だが、無防備を戦場で晒す、この時間を好む者は余りいないだろう。
 エナジーが杖の先端に集中してきた。詠唱はそろそろ完成する。
 ユミルはインク入りのゴム風船を持ってスタンバイしていた。
 準備は万端だ。いつでも魔法を放てる。
「いけッ!」
 天狗に向かって強烈なエナジーが杖から放射される。しっかりとした手応えを感じる。
「ユミル、ゴム風船を」
「了解ですっ」
 小屋の窓からユミルがインク入りのゴム風船を投げ込んだ。天狗の頭に当たって割れる。
 天狗はあっという間にインクまみれになるのだった。

 天狗は突然のことに「ぽかーん」としていた。
「え、なんじゃ? めっちゃ熱いんじゃけれど」
「天狗の旦那、真っ赤ですぜ。大丈夫ですか?」
「いや、ワシが赤いのは元からって、えー、なんかびしょびしょだと思ったら、ワシ真っ赤なんだけど!」
 エリザベータとヴィルヘルムは天狗と小五郎のやりとりをみていていたたまれなくなった。とりあえず、任務なのでということで、行動をする。
「あら、天狗ちゃん、大丈夫?」
 ヴィルヘルムが天狗の後ろに回った。
「ああ、悪いな、この辺の妖怪のガキじゃろう、いたずらしおってからに!」
ヴィルヘルムは隙だらけの天狗の背中にハンドアクスを振り下ろした。
「いってぇ! ちょっ、なんじゃ、いきなり!」
 天狗は酒を飲んで酔っ払っているのも相まって、状況の急激な変化に対応できない。
「うまい酒を持ってきたと思っておったが、おぬしら強盗じゃな!」
 天狗は怒鳴った。
「なにが強盗だ。てめえこそ盗人だろうが! 祭り会場の酒を盗んでるのは調べがついてんだぞ!」
 エリザベータのこの発言に小五郎は真っ青になった。
「もしかして、俺っちがサボってるのもばれてんの!?」
「まだテンコ様は知らねえだろうが、てめえも同罪だ! 反省しろ!」
 小五郎は素早く土下座の体勢に入って頭をござに擦りつける。
「この通りだ、すんません。テンコ様にはちくらねーでください。心を入れ替えてまじめに働きますから!」
「本当でしょうね、男ってこういうとき、謝れば許してもらえると思ってるところがあるから信用できないわ、そう思わない?」
「ああ、こいつら二人でとんでもない量の酒を飲みきったらしいからな。天狗は妖怪だから納得いくとしてもだ、小五郎は妖狐でありながらテンコ様を裏切るようなことしてるし、これはちくるしかねーよな」
 エリザベータとヴィルヘルムが小五郎に説教をしていると、後ろの方で気配がした。
 エリザベータが振り返ると、天狗がダッシュをして小屋から逃げ始めた。
「ワシ知ーらない!」
 酔っているせいか、何度も転びそうになりながら走っている。分身をするとのことだが、この酩酊状態ではスキルは使えそうに見えない。
「あら、都合がいい距離ね」
 ヴィルヘルムは天狗に向かって詠唱を始めた。
 どんどん遠ざかっていく天狗。天狗の姿が消えるより詠唱が終わる方が早かった。
「おしおきよ!」
 エナジーがヴィルヘルムから放たれる。
「ギャアアアア!」
 天狗は煙を上げながらその場にひっくり返るのだった。
「ああ、天狗の旦那が倒されちまったぁ」
 小五郎は目の前で繰り広げられている事態に、自分のしでかしたことの重大さに気がついたのか大声で泣き始めた。
「うおーん、うわーん、俺っちが悪かったよー、仕事に戻るからこれ以上、天狗の旦那をいじめないでくれよー」
「わかればいいんだよ」
「やれやれね」
 エリザベータとヴィルヘルムは溜息をついた。

「ふむ、倒したようだな」
「天狗は死んじゃったんですかね?」
「いや、タフな妖怪だと聞いている。この程度では死なないだろう」
「追撃しますか?」
「小屋の方から泣き声がする。状況を確認してから動こう」
「了解です!」
 ユミルとドクターは小屋に合流した。
 そこには攫われたといわれていた小五郎がエリザベータとヴィルヘルムに土下座しながら泣いている姿があった。
「何があったんですか?」
 ユミルがエリザベータに聞いた。
「いや、何もないぜ。小五郎の野郎が助けてくれてありがとうって泣いてやがるんだ」
「本当にそうですか?」
 ユミルが不審そうにいった。
「そういうことにしとこうぜ、いいだろ、天狗!」
 エリザベータが大きな声で倒れている天狗にいった。
 天狗はのっそりと起き上がりながら、
「そうしてやってくれ、ワシが悪者じゃ。小五郎を誘惑したのもワシじゃしな、ホッホッホ」
 と、笑っていた。
「やはり、この程度では天狗は倒せなかったか」
「師匠、やっつけましょう!」
「ふむ、その必要はなさそうに思えるが。ユミル、今回の任務は天狗を討伐しろとA.R.O.A.の職員からいわれたな。だが、妖狐達が、酒泥棒を懲らしめて欲しいといっていたのを聞いたんだ」
「A.R.O.A.が解釈を変えたってことですか?」
「いろいろな職員がいるようだ。人が間に入れば情報に齟齬が出ることは多々ある」
「なるほど、連想ゲームみたいですね」
「それに、小五郎とやらは攫われていない様子だしな。テンコ様の勘違いということで納めることができそうだ。酒を盗んだ程度で命まで奪うなんてやり過ぎだと私は思うね」

「そっちは話がまとまったか?」
 エリザベータがいった。
「ええ、だいたいまとまりました」
 ユミルがいう。 
「よし、小五郎、天狗、せっかくあたしたちが持ってきた酒がこのままじゃもったいない。一緒にぱーっと飲むか!」
「えーっ、天狗って妖怪ですよ!? いっしょにお酒を飲むって危険です」
 ユミルは焦っていう。
「たしかに、いいお酒だし、飲まないのはもったいないわね」
 ヴィルヘルムはエリザベータに賛成のようだ。
「盗んだ酒じゃなければ問題ないだろう」
 ドクターはござに腰を下ろしてヴィルヘルムから日本酒の入ったぐい飲みを受け取る。
「ちょっとー、師匠ー、ダメですよー」
「柔軟に考えるんだ。天狗は妖怪だが、ただの酒泥棒だ。それに小五郎は攫われたというより、酒泥棒と一緒に酒を飲んでいただけともいえる。マニュアル人間ならば、依頼通りに動くだろうが、それはつまらない生き方だぞ」
 ドクターはユミルにいった。
「理屈はよくわかりませんけど、師匠がどうしてもというなら、私はお酌します!」
 ユミルはとりあえず納得するのだった。
「よーし、酒盛りじゃー、どんどん飲むぞー、ホッホッホ」
 天狗は楽しそうに踊りながら酒を飲む。小五郎も釣られて踊り始めた。
 小五郎の仕事はこれからも続くのだ。長い人生、少しくらいアウトローなことをしてもいいではないか。
 ドクターは思うのだった。



依頼結果:成功
MVP
名前:エリザベータ
呼び名:エルザ、エルザちゃん
  名前:ヴィルヘルム
呼び名:ウィル

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 和歌祭 麒麟
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル 戦闘
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 08月11日
出発日 08月18日 00:00
予定納品日 08月28日

参加者

会議室

  • 了解です

  • [12]エリザベータ

    2014/08/17-17:38 

    ケータイだと電波云々が関わるからさ、
    それなら通信機(インカムとかトランシーバー)とかのが
    そういうの気にしねぇからマシだと思うんよ。

    酔って強くなるってことはねぇみてーだし、
    酒の誘いを受けるなら勝手に飲んでくれんじゃねーかな。
    あたしがお酌、ウィルも騒いで盛り上げるとかそんな感じだぜ

  • ポケットの中に入れておくとか・・・インカムだと目立たないかなと
    天狗にはある程度飲んでもらう必要がありますね、騒ぐとなると

  • [10]エリザベータ

    2014/08/17-16:25 

    ケータイだと片手が塞がんねぇか?
    カバンの中に入れとくにしても、逆に通音しづらそうだし…
    インカムなら借りれると思うけど。

    それと後から目印見て付いてくるなら
    窓から覗き込むとか、外壁から耳を当てるとかで中の様子確認できると思うぜ。
    隠れ家ならそんなに大きい家じゃないだろうし、
    なにより酔っ払いなら騒ぐから大声出してそうな気が…
    なんならウィルにわざと騒いでてもらうっていう手段もあるかな?

    こっちはウィルに両手杖じゃなくてハンドアックスを装備してもらうぜ、
    魔法が使えるかどうか解んねぇから捕まえて直接撃ち込むつもりだぜ

  • それでお願いします
    …万が一の時のために、携帯をこちらとエリザベータさんので通話状態にしておくのどうでしょう。
    何気ない会話の中で周囲の状況とかわかるでしょうし、ピンチになったらこちらもすぐに駆けつけられると思いますが。

    こちらの乙女の恋心は、確実に油断している酒盛り時(奇襲初撃)で使おうかと思ってます。

  • [8]エリザベータ

    2014/08/17-14:01 

    おう、いいぜ。
    言い出したからにゃあぜってー引っ張り出すぜ。

    【目印】
    メモ帳を千切って落としとけばいいか?
    千切る音でバレるかもしんねーからこれは事前用意させてもらうぜ

  • そうですね…、乙女の恋心を使うとすれば確実に足止めできた時だと思います。
    では、天狗に接近するのはエリザベータさんたちにお任せしても良いでしょうか?
    隠れ家に向かうとき、何かわかりやすい目印を残せないでしょうか

  • [6]エリザベータ

    2014/08/17-11:21 

    【作戦】
    あたし的には酒飲んでるとき(or飲もうとしてるとき)
    ユミル達が奇襲みたいな感じで不意討ちできたらいいかなーと。
    幸いあたしとウィルは成人してるし命中もこっちが低いからな、
    囮役じゃねーけど油断させといた方が当てやすそうかも?

    あ。
    あとスキルは連発出来ねぇぜ。
    MPの制限あるしエンドウィザード自体の攻撃は2ターンかかるかんな。
    確認したら乙女の恋心はMP消費が10だから
    撃ててお互い1回ずつ、むしろ切り札にした方が良いんかな?

    【隠れ家探し】
    あと、わざと盗ませるより敢えて天狗と飲もうと思って用意した的な感じで
    天狗に連れていってもらうとかどうかね?
    「酒豪の天狗が居ると聞いて是非一緒に呑みたい」とか。

  • 連投すみません
    一緒に飲む「ふり」なら良いんじゃないでしょうか
    なんかお酒の強さも一般スキルに振り回されてるっぽいです。

    動きを止められたら、魔法弾を交互に撃ってコンボ稼げませんかね・・・

  • Σ あぁそっか半分こされちゃったらダメですね…

    んーインクと風船でペイントボールぶつけるのもあれでしょうか;
    分身がどの程度のクオリティなのか・・・

  • [3]エリザベータ

    2014/08/17-08:34 

    おう、よろしく。

    【酒】
    小五郎も飲む可能性があるなら泡盛とか混ぜ混むのは危なくね?
    妖怪だから人より丈夫なんて話きいたことねぇし。

    酒飲み友達がほしいんだろうなーっつーのは同感。
    酒飲んでるとこでさらってるしな。

    【戦闘】
    うーん、ウィルはスキル持ってるとはいえ当たるかどうかは期待出来ねぇな。
    ただ体力的にはあたしらが前出た方が良さそうかな?
    脳筋ウィザードだし。

    デミオーガだけど前に砂かけて視界を奪ったら一瞬動きが止まったから
    今回も砂かけて動きを止める感じで。
    あとは酒を一緒に飲んで酔わすとか出来ねえかな?と思った。

    もち成人してる奴だけな、飲むの。


  • 前日で飛び込み済みません
    ユミル・イラストリアスと申します、よろしくお願いします。

    時間がない…ということで私が思ったことを可能な限り書きますね

    【天狗の目的】
    これは、一緒に酒盛りする仲間が欲しくて小五郎さんをさらったのではと思います。
    人質と交換で酒を…なら、既に日本酒をいくつか持っていってる時点で
    小五郎さんをさらうのは「今更?」という感じがします。
    なので天狗は「小五郎さんに」用があったのではと。

    そして天狗のこのセリフ
    「なに、咎めたりはせん。ワシもお仲間に入れてもらえんかな?」
    なんの仲間に…といったらやはり、一緒に酒を飲む仲間なんじゃないですかね?

    【妖怪・天狗と妖狐・小五郎はどこにいるの?】
    これはよくわからない…隠れるなら竹藪でしょうけど
    あえてもう一つ日本酒を盗ませて、後をつけられないでしょうか?

    【戦闘】
    申し訳ないことに、私のパートナーもエンドウィザードで命中が悲しいです
    このままのメンバーですとかなり不利な戦いになりそうです。
    なので、分身を出させない方法で作戦を練る必要があると思います。

    先述の、盗ませる日本酒に細工を施せないかなーと
    焼酎やら泡盛やら透明な酒を日本酒に混ぜちゃうんです
    (お酒もコンビニで買えますし、要請はねられる事は多分、ない…)
    こんな勿体無い飲み方はしたことがないのでどうなるかはわかりませんが
    いくら酒豪でも一口でいろんな種類の強いお酒を摂取したら具合悪くなるんじゃないでしょうか。
    そこを叩けないですかね…?

  • [1]エリザベータ

    2014/08/14-22:59 

    うぃーっす、エリザベータだぜ。精霊はエンドウィザードのヴィルヘルムだ。
    つってもまだ誰もいねぇかー……

    ウィルの命中率が絶望的に低いからその辺は頭ひねらせて考えとくぜ。
    後は酒好きの天狗はなんで小五郎を拉致ったのかねぇ……
    あたしとしちゃそのへんも気になるとこだわ。

    通信機とか電波が届かない場合も考えといた方がいいかな?


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