紅葉、ひらひら。(禰琉 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「紅葉、綺麗だね!」
あなたは精霊とともにフィールレイクでボートに乗っている。秋ということもあり、紅葉が青空に一層映えている。
「紅葉狩りデートって風情があるな」
ボートを漕ぎながら精霊がつぶやいた。
湖の水面に一枚の紅葉が浮かんでいる。あなたはそれをひょいと拾い上げた。
「押し花にして栞でもつくろっかな」
「紅葉狩りの次は読書の秋か?」
精霊が小さく笑う。あなたもつられてくすりと笑った。
「それもいいかも。でも私はどちらかというと食欲の秋かな」
「なんだ、ころころ変わって」
「ほら、よく言うじゃない。女心と秋の空って」
「なんだそれ」
ふたりは顔を見合わせてさもおかしそうに笑う。ひとしきり笑うと、あなたはふと小さくつぶやいた。
「秋って物悲しいね」
「昔から春の華やかさと秋の物悲しさがよく対比されるよな」
「春と秋、か……」
「俺は春のほうが好きかな」
「私は秋がいい。食欲の秋だから」
「また食いもんかよ」
精霊がそうつっこむと、あなたはさもおかしそうに笑うのだった。
「でも」
突然精霊の声が低いものに変わる。あなたはハッとした。
「お前が好きなら、俺は秋も好きになりたい」
しんと静まりかえる空間。
精霊はボートを漕ぐ手をやすめ、あなたのほうを真っ直ぐ見据えている。
あなたは口許に微笑を刻んだ。
「ありがとう。……私のあなたへの気持ちは変わらないから」
「そこは女心と秋の空じゃないのか?」
「それは違うね」
「そっか」
よかった、と安堵した様子の精霊に、あなたはにっこりと目を細めて微笑むのだった。


解説

フィールレイクで紅葉狩りデート!

・訪れたカップルが永遠に結ばれるという伝説がある「祈りの泉」は10:00~12:00の間だけ入れます。
・湖では8:00~19:00にボートに乗れます。
・レストランではスイーツが楽しめます(ご自由にご指定ください!)。

なお、色々遊んで300jr頂戴いたします。

ゲームマスターより

私は春と秋では秋のほうが好きですが、皆さんはいかがでしょうか?

リザルトノベル

◆アクション・プラン

豊村 刹那(逆月)

  ボート遊び、とも思ったけど。(時計を確認
11時、前。なら、まだ間に合う。がんばれ、私!
「あのな、逆月」
落ち着け。(深呼吸
「祈りの祠に、行かないか」(頑張って目を逸らさない

「えっと。祈りの祠って、その」(意味を知らないのかと慌てる
「恋人が一緒に行くと、永遠の絆で結ばれるって、伝説があって」(言ってて恥ずかしく、視線を逸らす

「え?」(意味がわからず、逆月を見る
「ぅえ、それはその」来世とか考えた事なかった。(顔が赤くなる
「逆月が、最初で最後って、決めたから。その」
「問題無いです……」(なんとか口に出すも小声

祈りの祠:
「ん?」
「……お手柔らかに、お願いします」いつも通りに見えるのに、雰囲気が本気……。


シルキア・スー(クラウス)
  お昼前ボート遊び
今日はフィールレイクリベンジデートってところかな?
バツの悪そうな彼にふふっと笑んで
実はねこんなものがあるのよ 焼き芋じゃじゃーん
秋はこれよねー♪ 大丈夫よ ちゃんとお店で買ったし まあいざとなったらまた泳いで帰りましょ?

中央の島祈りの泉へ
永遠に結ばれる伝説か…
永遠までいかなくても来世までは続いてくれますように(祈りのポーズ)前に約束したからね
彼が静かに私に視線を送るから私もそうして彼の言葉を待つ
言葉にドキリ
理解してくれてたの?
(私を失っては生きていけないと苦しく呟いたいつかの姿が気がかりだった だから交わした約束)

不安振り払い満面の笑顔
簡単に死なないけどね!
手を繋いで島の散策
秋の彩り堪能


マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)
  お昼過ぎ
彼に誘われて秋のスイーツフェアを愉しみます

注文品は
四角いプレートに秋の果物を使った可愛いサイズのスイーツが12種類も乗っている
わぁ! 綺麗
うっとり眺めたりして二人で美味しく頂きます

鞄から本を取り出して
は、はい! 私も読み終わりました ユリアン様がお勧めの推理小説
彼に思った感想を話す

…私のはどうでしたか?
彼が不意に小説のセリフを!迫力絶大 カーッと赤面
あわわ 再現だなんて…! し、死んでしまいますッ
はぁはぁ 興奮抑えて
空想の世界ですから
私は覗かせて頂いてるというスタンスです!
でも…今ので主人公のときめきを体験できた気がします
はぁ とまだ熱い頬を抑える

きゃー
死んでしまいますー!!
(本音は聞いてみたい


イザベラ(ディノ)
  精霊とボートで紅葉狩り。
ジンクスを聞くなり、頭上に降ってきた紅葉に飛び掛かる。
「ふん!」
勢いのままに精霊へとダイブ。

「…ほら、ディノ。…お前にやろう」
敢え無く返品された紅葉。
私の物ならば私が願いを掛けねばなるまい。
「……お前が、笑えば良いのに」
最近、自分の前では笑わなくなった精霊。
覆い被さったまま相手の顔を凝視。

「…笑った」
真っ先に思い浮かぶのは『まぁ、だからってどうという事はないが』だが。
それは自分の悪癖、もっと良く考えなければ、と自問自答。
「お前が笑うと………私は、嬉しい」
その言葉が存外にしっくりときて、僅かに表情が緩む。


●イザベラ(ディノ)の場合

イザベラはディノを紅葉狩りに誘った。ディノのほうはイザベラの意図が読めず、最初はかたくなに断った。しかし何故かイザベラは執拗にディノを誘った。というのも、イザベラ自身、近頃内面に変化があり、こういうことも積極的にやっていこう、と思うようになっていたのだ。
(相変わらず何考えてるかわからない……)
事情を知らないディノは悩んだが、いつものように渋々応じることにした。
イザベラは喜んでいるのかどうか、表情からは全く読み取れないが、ひとまずほっとしたらしい。
……そういう訳で、イザベラとディノはフィールレイクに紅葉狩りに来ていた。
いま、ふたりっきりでボートに乗っている。
ディノは無愛想ながらも渋々イザベラに同行していた。
綺麗な湖のなか、ボートはゆっくりと進んでいく。
周りの景色が紅葉で真っ赤に彩られているのを眺めながら、ディノはふと口を開いた。
「……紅葉を、地面に落ちる前に捕まえたら……願いが叶うって言いますよね」
何処かで聞いた迷信であった。何気なくつぶやいた言葉だったが、イザベラは興味を持ったようだ。
「そうなのか」
なるほど。面白そうだ。
そう思ったイザベラは、ジンクスを聞くなり、頭上に降ってきた紅葉に勢いよく飛び掛かった。
「ふん!」
勢いのままにディノへとダイブする。
ディノは勢い余ってイザベラに押し倒される形になった。
(なんでダイブ!?)
ディノは迷惑そうに顔をしかめる。すると。
「……ほら、ディノ。……お前にやろう」
イザベラの差し出した紅葉にディノは一瞬目を丸くした。まさか自分のために取ってくれたのだろうか。だが、気恥ずかしさからバツの悪そうに受け取るのを拒否した。
「……いりません。貴方が捕まえたんだから、貴方のでしょう。というか、さっきの話はただの迷信ですし……」
そう言ってディノは顔をそむける。
「迷信だからといって絶対願いが叶わないとは限らないだろう」
イザベラの反論に、ディノは少し目を見張ったが、やはり顔をそむけたままだった。
敢え無く返品された紅葉を見つめながら、イザベラは少し考えた。私の物ならば私が願いを掛けねばなるまい――
そうして考えた結果、
「……お前が、笑えば良いのに」
ポツリと零れ落ちた、小さな言葉。
ディノは目を見張った。……いま、この人はなんと言った?
イザベラの口からそのような言葉が出るなど、彼は思ってもみなかった。今日はいつもと違って随分人間らしいな、と思った。
他方、イザベラは真剣だった。
最近、自分の前では笑わなくなったディノ。イザベラはそれがなんだか寂しかったのだ。
覆い被さったままディノの顔を凝視する。自分を見つめる瞳に居た堪れず、ディノは無理矢理口の端だけを上げて見せた。
「……笑った」
イザベラに改めて指摘され、ディノは何だか恥ずかしくなってきた。
「だったら、何だって言うんです」
憮然とするディノ。
イザベラの頭に真っ先に思い浮かんだのは「まぁ、だからってどうという事はないが」である。
しかしそれは自分の悪癖、もっと良く考えなければ、とぐるぐる思考する。
――何故ディノに笑ってほしいのか。
――何故ディノが笑わないと、寂しく思うのか。
思考を巡らせた結果、紡ぎ出された言葉は。
「お前が笑うと…………私は、嬉しい」
その言葉が存外にしっくりときて、イザベラの表情が僅かに緩んだ。
ほら、やっぱり迷信でも願いは叶ったじゃないか。
口には出さないが、イザベラは満足だった。
一方ディノは、押し倒される体勢や相手の意外な反応に胸がときめくのを感じていた。
期待しないと決めた癖に、容易く翻弄される自分が嫌だ。しかし、久し振りにまともな(?)交流ができたのが、正直嬉しくて。
ちょっと泣きそうになっていた。
そして、改めて思う。
やっぱり自分はこの人が好きだ――


●シルキア・スー(クラウス)の場合

お昼前。シルキア・スーとクラウスはフィールレイクにボート遊びに来ていた。
「今日はフィールレイクリベンジデートってところかな?」
シルキアの明るい声に、クラウスは「うむ……」とバツが悪そうに答える。
ドジになる琥珀糖を食べ、ボートが転覆し泳いで帰る羽目になった、あの夏の出来事を思い出したからだ。……あの時は本当に散々な目に合った。実は今日のデートもシルキアに誘われて渋々来たものの、あの出来事がよぎりあまり気が乗らなかった。しかし、今日は特に怪しげな事象には遭遇していない。クラウスとしては心穏やかに秋の景色を愉しみたいものであった。
そんなクラウスの胸中を察してか、シルキアはふふっと笑んで、
「実はね、こんなものがあるのよ」
そう言ってどこからかあるものを取り出した。
「焼き芋!」
それは籠いっぱいの焼き芋であった。
じゃじゃーん、という効果音付きである。
「秋はこれよねー♪」
るんるんと楽しそうなシルキアに、クラウスは少し嫌な予感がした。……まさか、食べたら湖に落ちるとか……? クラウスの警戒心を察したのか、シルキアは安心させるようにしてにこりと微笑んだ。
「大丈夫よ、ちゃんとお店で買ったし。まあいざとなったらまた泳いで帰りましょ?」
悪戯っぽく笑うシルキアにクラウスは苦笑せざるを得なかった。
「半分こ!」
と差出された焼き芋を受取り一緒に食してみる。焼き芋の甘さがふわりと口中に広がった。
「少し冷めたかな?」
心配そうなシルキアに、クラウスは首を横に振る。
「いや、まだ温かい。これくらいがちょうど良いだろう。あまり熱すぎても食べられないからな」
そう言ってふたりはあっと言う間に焼き芋を平らげてしまった。
……続いて、ふたりが訪れたのは中央の島――祈りの泉である。カップルで訪れると永遠に結ばれるという伝説がある。
「永遠に結ばれる伝説か……」
永遠までいかなくても来世までは続いてくれますように。そう願ってシルキアは祈るように手を合わせた。
「前に約束したからね」
お祈りを終えたシルキアが不意につぶやくと、クラウスは静かに視線を送った。だから彼女も同じようにして彼の言葉を待った。
クラウスの脳裏に過去の出来事が思い出される。
(どちらが先に逝っても来世で会おうと……その為に残された者を見守り生を全うしようと……そういう約束をした)
クラウスは暫くの沈黙ののちに、淡く微笑を浮かべた。
「ああ。約束を違える事は無い。来世でお前に会えると思えば俺はオーガに堕ちる事もないだろう」
その言葉にシルキアの胸がドキリと脈打つ。
「理解してくれてたの?」
(私を失っては生きていけないと苦しく呟いた、いつかの姿が気がかりだったから交わした約束のこと――)
オーガとの闘いは決して楽なものばかりではない。時には命が危険にさらされることもあるだろう。
――もしも、私が先に死んだら?
――もしも、クラウスが先に死んでしまったら?
……どちらも想像するだけで胸が苦しくなる。
わずかによぎった不安を振り払うようにして、シルキアは満面の笑顔で言い切った。
「簡単に死なないけどね!」
クラウスも応えるように力強く笑んだ。
ふたりはその後、手を繋いで島の散策を楽しんだ。紅葉に彩られた秋の光景はまるで絵の具を乗せたように美しい。
「綺麗だね……」
「そうだな……」
紅葉に見惚れるシルキアの横顔を見つめながら、クラウスはひそかに誓う。
(死なせはしない。いや生き抜くのだ。永遠が叶うなら今生の生を全うし来世へ繋がる縁であれ)
仰いだ空は突き抜けるように青かった。


●豊村 刹那(逆月)の場合

豊村 刹那と逆月は二人でフィールレイクを訪れていた。
最初に歩を向けたのは、ボートで遊ぶことができる広い湖であった。
眼前に広がる湖を眺めながら、逆月は頭の中の知識の引き出しをひとつ、開けてみる。
(確か、海よりは小さく。池よりは広いのだったか?)
そうしてぼんやりと湖とほとりの紅葉を眺めてみる。なるほど、紅葉の緋と湖の蒼の対比が美しい。更に紺碧の空も合わさって、まさに天然の芸術といった風情だった。
逆月が景色に見惚れる一方、刹那のほうはというと、何だかそわそわしながらやたらと時計を確認していた。
(ボート遊び、とも思ったけど……)
いまは十一時、前。ならば、まだ間に合う。
刹那は深呼吸して自分自身にエールを送った。
(がんばれ、私!)
刹那の異変に気付いた逆月は微かに首を傾げていた。彼女を見遣れば、少し顔が強張っているように見受けられた。
(何かあったか)
まさか体の具合でも悪いのか?
あれこれ思考を巡らせていると、刹那が恐る恐る口火を切った。
「あのな、逆月」
意を決していざ逆月の顔を見ると、刹那は言おうとしていた言葉が引っ込みそうになって身震いする思いになる。
(落ち着け、深呼吸!)
ごくりとつばを飲み込んで、刹那は気をとりなおして口を開いた。
「祈りの泉に、行かないか」
よかった、ちゃんと言えた! ……と、安心したのもつかの間。今度は真剣さを伝えるため、頑張って目を逸らさないように努力する。
すると逆月も目を合わせたまま、やけにあっさりと頷いた。
「ああ、構わない」
余りの即答に刹那は瞳をしばたたかせた。そしてある結論に思い至った。もしかして祈りの泉の伝説を知らないのだろうか?
「えっと。祈りの泉って、その……恋人が一緒に行くと、永遠の絆で結ばれるって、伝説があって」
改めて自分で説明していてかなり恥ずかしくなってきたのか、刹那は慌てて視線を逸らした。
一人で慌てだした刹那をじっくり見つめながら、逆月はなんだそんなことか、と思う。
何しろそれは、彼がすでに知っている事柄だったから。
逆月には逆に刹那に尋ねてみたいことがあった。なので視線を逸らしたままの刹那に、彼は一歩近づいた。彼女の顔をわざとらしく覗き込んでみる。
「刹那こそ、良いのか」
「え?」
問われた刹那は言葉の意味が分からず、思わず逆月を振り仰いだ。
その怪訝そうな表情に、逆月はにやりと口の端をつりあげる。
「永遠ならば、此度の生のみならず。来世も、其の先も。俺から離れられぬぞ」
「!? ぅえ、それはその……」
来世とか考えたことなかった……!
刹那の顔がみるみるうちに赤く染まる。そんな刹那を見つめながら、逆月は彼女が何を言うか静聴する。
暫くすると、蚊の鳴くようなか細い声が耳に飛び込んできた。
「逆月が、最初で最後って、決めたから。その……問題無いです……」
なんとか口に出す刹那。
逆月は目を細め、刹那の頬を右手で優しく触れる。
真、俺より上には見えぬ――
そんなことを思いながら。
……祈りの泉まで、逆月が刹那の手をとって移動した。その間刹那はドキドキしっぱなしで逆月の言葉も美しい景色も、まったく耳や目にはいって来なかった。
隣で平然としている逆月を恨めしそうに見つめ、刹那は深々と歎息を零す。
暫くして祈りの泉に着くと、逆月が神妙な面持ちで刹那の名前を呼んだ。
「刹那」
「ん?」
「蛇は、執念深いらしいが。知っていたか?」
淡々と、言外に逃がさないことを告げる。それを察した刹那は顔をひきつらせた。
「……お手柔らかに、お願いします」 
いつも通りに見えるのに、雰囲気が本気……。
刹那は苦笑しつつ、不思議と嫌な気分ではなかった。
達した結論。
――好きだから、まあいっか。


●マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)の場合

マーベリィ・ハートベルとユリシアン・クロスタッドはふたりで昼下がりのフィールレイクを訪れていた。
「秋のフィールレイクも美しいね」
ユリシアンは周りの景色を眺めながら感嘆のため息を零した。緋色の紅葉と蒼い湖のコントラスト。それは自然の絵画のようであった。屋外レストランにして正解だった、と満足しつつユリシアンはマーベリィと景色を眺めながら注文品を待った。
マーベリィのほうはユリシアンに誘われて秋のスイーツフェアを愉しもうと、スイーツプレートと紅茶を頼んでいた。もちろんユリシアンも同じものを頼んだ。
「お待たせしました!」
店員の運んできた注文品を見てふたりは目を見張った。それは四角いプレートに秋の果物を使った可愛いサイズのスイーツが、十二種類も乗っているものだった。
「わぁ! 綺麗」
マーベリィは瞳を輝かせ、うっとりとスイーツを眺める。
そんな彼女を見つめながら、ユリシアンはにこりと笑った。
「宝石みたいだね。そんなに瞳をキラキラさせて喜んでくれると誘った甲斐があったよ」
そう言ってふたりは美味しそうにスイーツをすべて平らげた。
……一息ついたところで、にわかにユリシアンが切り出した。
「マリィ、これ読んだよ。きみがお勧めの恋愛小説」
そう言いながらユリシアンは一冊の本を取り出した。
実は先日、読書の秋だからとお勧め本を交換しておいたのである。
マーベリィも同様に鞄から本を取り出した。
「は、はい! 私も読み終わりました、ユリアン様がお勧めの推理小説」
マーベリィは驚いたことに、登場人物ひとりひとりについて熱を込めて語り始めた。しばらくそれを黙って聞いていたユリシアンは微かに苦笑を漏らした。
「そんなに登場人物に感情移入してたら疲れたんじゃないのかい?」
……とはいえ、ユリシアンは彼女の誠実さに改めて感心していた。次はソフトなものにしてあげよう、とひそかに思うのであった。
「……私のはどうでしたか?」
おずおずと尋ねるマーベリィ。
ユリシアンは淡く微笑した。
「きみはこの小説の男の様な言葉を言われたいのかなって思った。
『君を薔薇の海に閉じ込めて僕だけのマーメイドにするよ』」
不意にユリシアンの唇から紡ぎ出されたのは、例の恋愛小説に出てくる名台詞のひとつであった。その迫力たるや絶大なもので。マーベリィはカーッと赤面した。
「あわわ……再現だなんて……! し、死んでしまいますッ」
ユリシアンは彼女の珍しい反応に興味を抱いた。……マーベリィがここまで赤面するのは初めてじゃなかろうか。
果たして名台詞を実際に言って見せたから恥ずかしがったのか、それとも自分が言ったからこそ恥ずかしがってくれたのか。
後者だといいな、と願いつつユリシアンはマーベリィを見つめた。
一方マーベリィははぁはぁ言いながらなんとか興奮を抑えようと試みる。そしてなんとかこれだけを紡ぎ出した。
「空想の世界ですから。私は覗かせて頂いてるというスタンスです!」
でも……と、マーベリィは続けてつぶやく。
「今ので主人公のときめきを体験できた気がします」
はぁ……とため息をつきながら、まだ熱い頬を押さえる。
一方ユリシアンはマーベリィの反応にぽりぽりとこめかみをかいた。
(こんな可愛い反応見せられたら参ったな……)
そうして思考を巡らせているうちにはたと思い至った。
「閃いた! 今度朗読会をしよう!」
良いアイディアだと満面の笑みを刻むユリシアン。
マーベリィはその発言に思わず手で顔を覆った。
「きゃー死んでしまいますー!!」
……と、口では言いつつも「ユリアン様の朗読なら聞いてみたい……」という本音をなかなか言葉にできないマーベリィであった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 禰琉
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月06日
出発日 10月12日 00:00
予定納品日 10月22日

参加者

会議室

  • [4]イザベラ

    2017/10/11-19:13 

    イザベラだ。
    あれを…ディノを連れて行こうと思う。
    宜しく。

  • ユリシアン:
    パートナーのマーベリィと参加するよ。
    よろしく。

  • [2]豊村 刹那

    2017/10/11-17:18 

    豊村刹那と、逆月だ。
    よろしく頼むよ。

    ボート遊びもいいかもな。
    祈りの泉が気にならなくも……ないけど。(ぼそぼそ

  • [1]シルキア・スー

    2017/10/11-14:02 

    シルキアとクラウスです。
    よろしくお願いします。


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