わんわん!わんだふるタイム(巴めろ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●鳴き声わんわん響かせて
わんわん、きゃんきゃん、わふーわふー。
楽しげな鳴き声響かせて、子犬たちはガタゴト車の中。
わんわん、きゃんきゃん、わふーわふー。
白黒茶色に、立ち耳たれ耳。ふわふわもこもこ勢ぞろい。
わんわん、きゃんきゃん、わふーわふー。
皆に会いにきたんだよ。もうすぐ行くから待っててね。
皆で首を長ーくして、わんわん、きゃんきゃん、大合唱。

●子犬が街にやってきた!
「……ハト公園に、『わんだふるタイム』がやってくるらしい」
A.O.R.A.職員の男が、ぽつりと言った。眉間に寄ったしわが、もとより強面な顔をさらに凶悪に見せている。
彼にこんな顔をさせる『わんだふるタイム』とは、その名称が与えるほのぼのとした雰囲気を裏切って、それほどまでに恐ろしいものなのか。……と思ったら、違った。
「『わんだふるタイム』は、子犬を沢山連れて街を回る……言わば、臨時のふれあい広場みたいなものだ」
想像してみろ、と男は言う。のどかな公園の一角を跳ね回る、ころころと愛らしい沢山の子犬たち。触れる毛並みの柔らかさ。抱きしめた温もり。そりゃあもう可愛いだろう。犬好きならば、幸せな時間を過ごせること請け合いだ。
「……その日、仕事さえなければ、なぁ」
零れるのは盛大なため息。
つまるところ、男もまたわんこの魅力に心奪われた者の一人に過ぎなかったのだ。
「……興味があれば、行ってみるといい。きっとめちゃくちゃ癒されるぞ」
ため息が、またひとつ零れた。

解説

●『わんだふるタイム』
車で色んなところを回る、巡回型の所謂ふれあい広場。(但し動物は子犬のみ)
今回の巡回先は首都タブロスのハト公園です。
参加費はおひとりさまにつき50ジェール(パートナーの分を含めて2人分100ジェール)です。
ジェールは子犬のごはん代やおもちゃ代等、すべて子犬たちのために使われます。

●子犬
色んな子犬がいます。
こんな子と遊びたい! まったりしたい! という希望がございましたら、プランにご記入ください。
どんな子犬と戯れたいかご指定がない場合には、こちらでわんちゃんを選ばせていただくことがございます。
ひたすら抱っこで可愛がるもよし、眺めて癒されるもよし、ロープで引っ張りっこするもよし。それなりのスペースがありますので、軽くボールを投げて遊ぶもよしです。
子犬のおもちゃは、よほど特殊なもの以外は用意されています。

●お約束
子犬を可愛がってあげることが今回の絶対条件です。
その他、白紙プランや公序良俗に反するプランにもご注意ください。
前者は描写が極端に少なくなり、後者は描写いたしかねます。

ゲームマスターより

お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!

今回は可愛いわんこときゃっきゃうふふなお誘いです。わんこ大好き!
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイヤ・ツァーリス(エリクシア)

  えと……こいぬさんと遊びたい、です。
しばいぬさんやシベリアンハスキーさんがすき、です。
ぎゅってしても大丈夫かな? なでなでしても平気かな?
ロープ遊びだとげんきいっぱいなこいぬさんに負けちゃいそうなので、ボール遊びをしたい、です。

上手にとれたらいいこいいこしたいなあ。
こいぬさんはきっとぎゅってしたらお日様の匂いがしていっしょにいたらげんきになれると思うの、です。
えへへ、ぼくもいっぱいいっぱいあそびたいな。
で、でも、こいぬさんとめいっぱい遊んだら帰る頃にはへとへとになっちゃいそう。
……でもこんな機会あんまりないもの。
おうちに帰って寝るまでが楽しい一日だからたくさん楽しんでもふもふする、ですっ。



初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
  わんこなぁ……とりあえず可愛いのはわかったから
落ち着け、怖がらせるんじゃないぞ?わかったら行ってよし。
……身近にいるからな、犬っぽいのが(相方を見送り)
ん?(足元にじゃれつく金色わんこ)
どっかの誰かに似てるなお前……こらかじるなって、うお!?
(しゃがんだ瞬間に後ろから飛びつかれ)
ちょ、待て群がるなっ……イグニース!!
こ、子犬で窒息するかと思った……
甘い匂いでもしたのか?

はぁ、やっと落ち着いた(子犬抱いて座り)
体温高いな、あったかい……
(うとうと船を漕ぎはじめ)(隣のイグニスの肩にもたれる)



大槻 一輝(ガロン・エンヴィニオ)
  おー。愛い愛い。
やっぱ子犬の内は可愛いな。(撫で繰りなでくり

まあ、ガキの頃はでっかい犬を飼うのも夢ではあったけどさ。こんぐらいの歳にもなるとやっぱちっさい犬の方が世話は楽だと思うんだよな。


(撫でくりしながらもっふもふ
ほーれとってこーい(ボール投げ

ま、仕事もあるし。
こうしてオーガとかとか戦うことになっちまったから気軽に動物を飼えなくなったのは残念だとは思うわ

てかこうして遊べるだけの躾をしてる、ってのも実は苦労してんだろうなあ…



ベオウルフ=レオンハート(ヴィラン=アークソード)
  ※アドリブ歓迎

●心情
ふわもこでかわいいわんこ達ときゃっきゃもふふ
そんなの癒されまくるに決まっている!
ウィンクルムとしての活動も大事だが、偶にはこんなイベントに繰り出すのもいいな

●行動
どのわんこときゃっきゃもふふしようか……
よし、俺の足下に寄り添ってきているこのわんこにしよう

ふわもこなわんこは眺めているだけでも癒されるが
やはり抱きしめてもふもふしたいところ
優しくそっと抱きしめたら、撫で撫でしたり頬ずりしたり……
思う存分満喫するのだ

着流しだったら、懐に潜り込ませて抱きしめたりとか出来るんだよな
なんて羨ましい……



●金色ふわもこは主様がお好き
その日、ハト公園の一角は『わんだふるタイム』の子犬たちでいっぱいで、ふわふわのもこもこだった。ふわもこの群れに視線をばっちり奪われているイグニス=アルデバランは、その瞳をきらっきらに輝かせていて。
「秀様わんこですよわんこ! もこもこ!!」
言ってパートナーの初瀬=秀の方へと振り返ったイグニスの瞳は、やっぱり眩しいほどにきらっきら。
「わんこなぁ……」
顎に手をやって応じつつ、色つき眼鏡で守っている色素の薄い自分の目を、そのあまりの眩しさに細める秀である。イグニスの瞳がきらきら光線を放っているのは錯覚のはずだけれど、眩しく感じるものは仕方がない。秀は苦笑した。と。
「では早速、もこもこわんこと遊んできます!」
いつの間に準備したのやら、ボールを手にふわもこの元へと駆け出そうとするイグニスの服をぐいと掴んで強制ストップをかける秀。何だか前にも同じようなことがあったような気がする。
「とりあえず可愛いのはわかったから、落ち着け。怖がらせるんじゃないぞ?」
「はっ、大丈夫ですいじめません!」
「わかったら行ってよし」
「はいっ!」
ビシッと応えて、イグニスは今度こそふわもこワールドへととび込んだ。なになに? と興味津々でイグニスを見上げてくる、たくさんのちびわんこたち。つぶらな瞳に上目遣いに見つめられれば、胸がきゅんとするのは不可抗力である。
「秀様のお許しがでたので一緒に遊びましょう! ボール遊びですよっ!」
じゃーん! とボールを高くかざせば、寄ってきた子犬たちが、嬉しさとボール欲しさににぴょんこぴょんこと足元で跳ねる。上手に跳ね損なってぺちんと転がるわんことか。またも胸をきゅんとさせるイグニスに、1匹のわんこが「わふ!」と吠えた。翻訳すると、早く投げて。
「じゃあ、投げますよ! ほーらとってこーい」
軽くボールを投げれば、ちびわんこたちが短い足でてちてちと走ってそれを追いかける。たくさんのふわもこに埋もれて、ボールはあっという間に見えなくなってしまった。
「……可愛い……」
思わず呟くイグニスである。
一方の秀は、そんなイグニスとふわもこのじゃれ合いを少し離れたところから眺めていた。
「……身近にいるからな、犬っぽいのが」
誰がとは言わない秀であるが、目の前に広がる光景は『ちびわんこたちとおっきいわんこの戯れ』にしか見えない。と、そんな秀にふわもこの魔の手が迫る……!
「きゃんっ!」
「……ん?」
気づけば、秀の足元にはきらきらおめめの金色ちびわんこが。わんこは何だか秀のことが気に入ったらしく、その足元にくっついて離れない。
「どっかの誰かに似てるな、お前……」
謎の既視感に思わず笑み零し、秀は子犬の相手をしてやろうとしゃがみ込んだ。嬉しさに尻尾をぱたぱたさせながら、ちびわんこは甘えるように秀の手にじゃれついてくる。そしてテンションの上がったちびは、楽しい遊びの気持ちで甘噛み一つ。でも、子犬の歯って鋭いんです。
「痛っ……! おいこら齧るなっ」
秀がわんこのおいたを止めさせようとした、その時。
「うお!?」
背後から迫ったふわもこの群れが、「僕たちとも遊んで!」と言わんばかりに一斉に秀の背中へと飛びついた。バランスを崩した秀を、ふわもこが埋め尽くす!
「ちょ、待て群がるなっ……イグニース!!」
ちびわんこたちに埋もれながらその名を呼べば、はっとして振り返る忠犬イグニス。
「秀様? って、大変なことに!? 美味しい匂いがするからって秀様食べちゃダメですー!」
慌てて秀へと駆け寄り、イグニスはふわもこ地獄から秀を救出する。
「秀様、大丈夫ですか?」
「こ、子犬で窒息するかと思った……! 何だ? 甘い匂いでもしたのか?」
すん、と自分の匂いを嗅いでみるも、自分ではそういうのって結構わからない。
「秀様はいつもいい匂いです!」
キリッ。大きい方のわんこが、真面目な顔で言った。

「はぁ、やっと落ち着いた」
金色わんこを膝に抱いて、ベンチに腰掛けた秀がやや疲れたような声で言った。公園のあちこちで、遊び疲れたわんこたちがすやすやと団子になって眠っている昼下がり。
「わんこさんもお昼寝の時間ですね」
イグニスがにっこりとする。
「しかし、子犬って体温高いんだな。あったかい……」
膝の上のわんこを撫でながら、どこかとろんとした口調で呟く秀。温もりが秀を柔らかな眠りへと誘う。やがて秀は、こてん、とその体をイグニスの肩に預けた。
「……秀様?」
問うも、すやすやと眠る秀からの返事はなく。ただその人の温度だけが、イグニスの肩に伝う。ついでにいい匂いもする。
(どうしよう今すごく貴重な体験をしている気がします!)
動けない! でも幸せなので問題ない! そんな心境。
秀の膝の上のわんこも、いつの間にか寝息を立てていた。何ということはない、けれどとても幸福な一時。
「……お疲れなんでしょうか。ゆっくり休んでくださいね、秀様」
優しい言葉が、暖かな日差しと共に子守唄のように降り注いだ。

●ふわもこは正義です
「おおお……!」
思わず声を漏らしたベオウルフ=レオンハートの目前には、自由気ままに遊ぶたくさんのふわもこわんこたち。おもちゃにじゃれついてころんと転げるふわもこ、ロープの引っ張りっこに興じるふわもこ、無防備に愛らしいお腹を見せて眠っているふわもこ……その他色々。これは、まさに。
「ふわもこパラダイスっ……!」
見ているだけで幸せな気持ちになる完璧なふわもこっぷり。だがしかし、見ているだけでは今日のふわもこタイムは終わらない。だって『わんだふるタイム』は、所謂ふれあい広場なのだから。
(ふわもこで可愛いわんこたちときゃっきゃもふふ……そんなの癒されまくるに決まっている!)
握る拳にもぐっと力が入るベオウルフである。
「ウィンクルムとしての活動も大事だが、偶にはこんなイベントに繰り出すのもいいな」
と、自分と同じくふわもこを愛するパートナー、ヴィラン=アークソードの方を振り返れば。
「!!」
ヴィランの着流しの懐からは、既に愛らしいふわもこが顔を覗かせていた。ちょこんと顔を出す金色わんこの可愛さ、プライスレス。
「ヴィラン、何だそれは?!」
「何だも何も、見ての通りのふわもこだが。あったかいぞ。なぁ、ちび」
ヴィランが頭を撫でてやれば、懐のふわもこが「わん!」と応じる。その愛らしさに、思わずきゅんとするベオウルフ。
「って、危ない! ふわもこの魅力に屈するところだった……!」
ふわもこ、恐るべし。と、気を取り直して。
「ヴィラン、俺が言いたいのは、いつの間にそんな羨ましいことになったのかという話なんだが……」
「ベオウルフ」
視線はふわもこに固定、手にはふわもこの温もりを感じつつヴィランが低く渋い声で言う。
「時間は、有限だからな」
カッコいいっぽいこと言ってますが、強面な顔が緩んでますよ、ヴィランさん。
(くっ、そうか。着流しだったら、ああやって懐に潜り込ませて抱き締めたりとか出来るんだよな。なんて羨ましい……!)
しかし、ふわもこ好きとしてベオウルフも負けてはいられない。
「さて、どのわんこときゃっきゃもふふしようか……」
ぐるりと辺りを見回して――ふと足元に視線を落とせば、「おじちゃん僕と遊んでよ!」とでも言いたげなきらきらな瞳で自分を見上げる銀色のちびわんこ。視線が合えば、銀色ちびちゃんはアピールタイムとばかりにベオウルフの足元に尻尾を振り振り寄り添ってくる。
「あああ可愛い! よし、このわんこにするっ!」
ベオウルフ、陥落。ふわもこなわんこは眺めているだけでも癒し効果抜群だが、ここはやはり抱き締めてもふもふしたいところ。地に膝をつき「おいで」と両手を広げれば、待ってました! と言わんばかりの勢いで胸にとび込んでくるわんこ。ふわふわもこもこの温もりが、今ベオウルフの胸の中に!
「……幸せだ……」
噛み締めるように呟いて、そっと優しく抱き締める。きゃっきゃもふふタイムの始まりだ。ふんわかした毛並みを撫で撫ですれば、わんこは気持ち良さそうに目を細める。
(この様子ならきっとほっぺすりすりも許されるはず……!)
そっと頬をわんこに寄せれば、ふわもこは「きゅーん」と鳴いた。頬から伝わる温度の心地よさときたら、もう……!
「至福……!」
幸せに胸を温かくするベオウルフの隣に、相変わらず懐にふわもこを入れたヴィランがそっとしゃがみ込む。
「楽しそうだな、ベオウルフ」
「ああ、勿論だ!」
顔を輝かせるベオウルフに、ヴィランはふっと笑いかけて。
「ならやはり、ここに来てよかったな」
独り言のようにそう言葉を溶かしたヴィランの低い声は、流石ベオウルフの父親代わりというべきか、優しい色を帯びている。ヴィランの心遣いを、ベオウルフは素直に嬉しく感じた。例え――例えちょっとカッコいい台詞を零したヴィランの顔が、胸元のふわもこに骨抜きにされていて緩みっぱなしでも。その金の尻尾が、幸せにゆらゆら揺れっぱなしでも。ありがとうとベオウルフが返そうとした、その時。
「はーぅ」
「ふぁー」
2匹のわんこが、同時に可愛いあくびを漏らした。そのあまりのキュートさに、筋金入りのふわもこ大好きコンビなベオウルフとヴィランは顔を見合わせて思わずくすりとする。
「どうやらおねむの時間みたいだな」
言って、わんこを下ろしてやるベオウルフ。わんこはベオウルフの傍をしばらくぐるぐるとした後、こてんと丸くなって眠る体勢を整える。やがて、ベオウルフに寄り添った銀色のふわもこからは、すぴーすぴーと可愛らしい寝息が零れ出した。
一方の金色わんこも、ヴィランの着流しの中でもぞもぞとし始める。その柔らかな肉球が、ふわっとした尻尾が、ヴィランの胸元を撫でた。
「ちび、こら、やめっ……!」
刺激に敏感なヴィランが目に見えて慌てる。そんなヴィランをやや生温かい目で見守りつつ、ベオウルフは思う。
(何というか……決まらないなぁ)
でもそれを口には出さない、大人なベオウルフなのだった。

●貴方のためのふわもこタイム
「わああ! こいぬさんがいっぱい……!」
好き勝手に遊び回るたくさんのふわもこたちの可愛さに、セイヤ・ツァーリスはその愛らしいかんばせを綻ばせた。小さな主の嬉しそうな姿を見やってエリクシアもふわりと笑みを零す。絵に描いたような幸せなお出かけの時間。けれどセイヤには、少しばかり気にかかっていることがあって。
(エリクはこいぬさんは好き、ですか? って、聞く前についてきてもらっちゃったから。ちょっと今更で聞きにくいの……)
ちらとパートナーの表情を窺おうとすれば、セイヤへと視線をやっていたエリクシアとばっちり目が合ってしまった。予想外の出来事にどきどきしつつ、ぱっと視線をふわもこへと戻すセイヤ。常よりやや落ち着きのないセイヤの様子に気づかないエリクシアではなく、セイヤ様はどうされたのだろうかと首を傾げる。一方のセイヤは、
(エリク、ふわってにっこりしてた。だからきっと、大丈夫だよね?)
と幾らか不安を和らげるも、その笑顔を思い出せばいつもの病気に胸がどくんどくんと脈打って。と、その時。
「あんっ!」
「わふっ!」
足元から響く、元気な鳴き声。気づけば2人の足元には、茶柴とシベリアンハスキーのおちびちゃんたちが寄ってきていた。「僕を見て!」「遊んで!」とばかりに、2人の足にじゃれついたり、体を寄せたりする無邪気なふわもこたち。エリクシアはそっと微笑み、セイヤはぱああと顔を明るくした。
「エリク! こいぬさんたちが遊びにきてくれたよ!」
「良かったですね、セイヤ様。ほら、ちびちゃんたちが待っていますよ」
「うんっ!」
ふわもこと触れ合うためにその場に膝をつけば、2匹のわんこはちぎれんばかりに尻尾を振って、セイヤに甘えてくる。銀色わんこはセイヤにそっと寄り添い、茶わんこは膝の上にうんしょと登って、小さなおててをセイヤの胸に当て、一生懸命に背伸びをしてセイヤの顔をぺろぺろとなめる。
「えへへ、くすぐったいよぉ」
ころころと笑うセイヤを、柔らかく目を細めて見守るエリクシア。
「ね、エリク。ぎゅってしても大丈夫かな? なでなでしても平気かな?」
「ええ、きっととても喜びますよ。どちらの子も、セイヤ様のことがすっかり気に入ったようですので」
エリクシアにそう言われてそっと茶わんこを抱き締めれば、ふわもこは「きゅー」と嬉しげな声を出す。僕も僕もと、銀色わんこもきゃんきゃんと騒ぎ出した。
「待ってね。順番、だよ」
ふわもこと戯れるセイヤを見て、純粋な生き物にはセイヤの心優しさがわかるのだろうと、エリクシアは密か誇らしく思う。と、そんなエリクシアにお声がかかった。
「ねぇ、エリク。その、いやじゃなかったらね、エリクもいっしょに、この子たちと遊ぼ?」
セイヤとふわもこたちに上目遣いに見つめられては、エリクシアに断る理由はない。片膝を折りセイヤの隣に腰を落とせば、銀色わんこが撫でて撫でてと寄ってきた。そっとふわもこを撫でるエリクシアを見て、セイヤはにっこりとする。
「ねえねえ、エリク、ぼく、こいぬさん大好きなんだ。おっきくなっても優しいし……にゃんこさんも好きだけど、わんこさんも同じくらい好きなの」
それにね、とセイヤは一生懸命に言葉を紡ぐ。
「動物さんと触れ合うと、疲れがとれるって聞いたから……いつもぼくのこと見守っていてくれるエリクが、わんこさんと触れ合って少しでも和んでくれるといいなって、思って」
セイヤのふんわりと温かい言葉に、エリクシアは僅か目を見開いて。
「だから、あの……エリクはわんこさん好き、ですか?」
恐る恐る零される、優しい問い。エリクシアは、そっと目元を柔らかくした。
「はい、好きですよ。それに何より、セイヤ様のお心遣いを嬉しく思います」
ありがとうございますとうっとりするような笑みを向けるエリクシアにセイヤはしばし見惚れ――それからはにかんだように笑顔を返した。
「あのね、エリク。こいぬさんはぎゅってしたらお日様の匂いがしてね、だから、いっしょにいたら元気になれると思うの」
セイヤの言葉に応じるように、銀色わんこがエリクシアへと身を寄せる。幸せな温もりを、エリクシアはそっと抱き締めた。その表情の柔らかいのを見て、セイヤは自然にこにこ笑顔になってしまう。
「ぼくも、いっぱいいっぱい遊ぼうっと。ロープ遊びだと元気いっぱいなこいぬさんに負けちゃいそうだから、ボール遊び」
ごそごそとボールを取り出せば、ふわもこたちが目を輝かせる。立ち上がったセイヤに、エリクシアが声をかけた。
「セイヤ様、あまり無理はなさらないでくださいね?」
「うん。でも、こんな機会あんまりないもの。おうちに帰って寝るまでが楽しい一日だから、たくさん楽しんでもふもふするのっ」
上手に取れたらいいこいいこだよとセイヤがボールを投げれば、ふわもこたちは転がるようにボールを追う。その愛らしい姿に、2人は揃って笑み零した。

●ふわもこな愛を貴方に
「すごい……というか、なにこれこの数どうやって面倒見てるんだよ」
僅か目を見開いて、大槻 一輝は言葉に驚きと多少の呆れを乗せた。公園は元気に遊びまくるふわもこでいっぱい。ハト公園のはずなのにハトの肩身がやたら狭いのはどういうことだろうか。
「ハト公園っていうかもう、子犬公園?」
「ふむ。言い得て妙だな」
顎に手を当てて、ガロン・エンヴィニオが口の端を上げた。そんな2人の足元に、てちてちと愛らしい足音を響かせてふわもこが集まってくる。「お兄さんたち僕らと遊びませんか?」と目で訴える人懐っこいわんこたち。
「おーおー、寄ってきた寄ってきた」
整備された公園なのが幸いと一輝はその場にあぐらをかき、子犬たちに向かって来い来いと両手を広げる。途端、「僕も!」「あたちも!」と殺到する子犬たち。あっという間に、一輝の周りはふわもこで満員御礼だ。
「あー、やっぱ子犬のうちは可愛いな」
愛い愛いと呟きつつ、一輝はふわもこを撫でくり撫でくり。
「きゅーん……」
撫で撫でされたふわもこが、気持ち良さそうに鳴いた。1匹のふわもこを抱き上げてもっふもふすれば、触れた手から胸から頬から伝わる至高の温もり。但し、1匹だけもっふもふするだなんて他のふわもこが黙っていない。「替われよー」とばかりに抱っこされたわんこの足を口で引っ張るふわもこあり、「次は僕!」と足の上で騒ぐふわもこありであっという間に一輝は大忙しだ。
「モテモテだな、カズキ」
いつの間にかひとりベンチに座り、膝の上のふわもこを優雅に撫でつつ笑み漏らすガロン。一輝とふわもこの戯れを眺めて楽しむ体勢である。
「まーね。おかげさまで、モテてモテて大変だわ」
「それは重畳」
刺々しい台詞を返すも、効き目はまるでなし。さらりと流されて、一輝はため息を一つ漏らした。
「まあでも、これくらいの子犬なら何とかなるか。ガキの頃はでっかい犬を飼うのも夢ではあったけどさ。こんぐらいの歳にもなると、やっぱちっさい犬の方が世話は楽だと思うんだよな」
手では器用にふわもこたちの相手をしつつ、一輝が零す。と、ふとあることを思い出して、今度はガロンが口を開いた。
「そういえば、以前出かけた時に犬が飼いたいと言っていたな、カズキは」
「あー、言ったっけそんなこと。でもま、仕事もあるし」
言葉を紡ぐ一輝の表情が、そっと険しくなる。
「こうしてオーガとかと戦うことになっちまったから気軽に動物を飼えなくなったのは、残念だとは思うわ」
言ったっきり無口になり、一輝はふわもこたちの相手に夢中になる。いや、夢中になったふりをする。その様子に、ガロンは眩しい物を見る時のように目を細くした。
(カズキ、君は真面目すぎる)
契約済みの神人の中にも、動物を飼っている者は幾らもいるだろう。そしてそれは、微塵も責められるべきことではない。日常を謳歌することは、神人にとっても勿論当然の権利で。
(でもカズキは、『いざという時のこと』を考えてしまうのだね)
動物に対し――否、全てに対して真摯に向き合いすぎているがために。
「――さて、俺は彼の相棒として、何をしてやればいいのだろうね?」
一輝には届かないようなごく小さな声で、ガロンは膝の上のふわもこへと尋ねる。勿論返事など期待していなかったけれど、ふわもこはちゃんとガロンの話を聞いていた。
「わふっ!」
と一声鳴くや否や、ふわもこはガロンの膝からとびおりた。手近に落ちていたロープ付きのボールのロープの部分を口にくわえて、小さな体で一生懸命にボールを一輝の元へと運んでいく。そして。
「わんっ!」
ふわもこが、一輝に向かって吠えた。
「わんっ! わんっ! わんっ!」
「な、何だよ……って、ボール?」
投げてほしいのかと一輝が問えば、ふわもこはYESとばかりに尻尾を振り振り。そのコミカルで愛らしい様子を見て、一輝は少し笑った。ボールを手に取れば、一輝の上にいたふわもこたちも、目をきらきらと輝かせながら一輝から降りて彼の周りをうろうろし始める。視線はボールに一点集中。
「ほーれとってこーい!」
立ち上がった一輝がボールを投げれば、ふわもこたちが一斉にボールを追って走っていく。
「って、どうするんだ、あいつら? ボールは1個しかないのに」
視線の先では、ボールに群がるふわもこたちがもみくちゃになっている。思わず噴き出す一輝。
「っはは、何だよあれ。……けど、あれだけの子犬にこうして遊べるだけの躾をしてる、ってのも実は苦労してんだろうなあ」
ふわもこたちを目元を柔らかくして見つめながら、一輝はごく現実的なことに言及した。もうすっかりいつもの調子だ。
「カズキ」
ガロンが言った。
「またどこかへ出かけよう。今日みたいに」
何言ってるんだよ急にと怪訝な顔をする一輝に、ガロンはただ笑みを向けた。自分にできることを、ふわもこたちが教えてくれた気がするから。



依頼結果:成功
MVP
名前:セイヤ・ツァーリス
呼び名:セイヤ様
  名前:エリクシア
呼び名:エリク

 

名前:初瀬=秀
呼び名:秀様
  名前:イグニス=アルデバラン
呼び名:イグニス

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 果島ライチ  )


エピソード情報

マスター 巴めろ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 05月17日
出発日 05月27日 00:00
予定納品日 06月06日

参加者

会議室


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