探せ、うさぎさん！inお月見祭りだぴょん（巴めろ　マスター）　【難易度：とても簡単】

プロローグ

●お月見祭りだからうさ耳をつけてうさぎさんを探そうぴょん！
「今日は、ちょっぴり不思議なお月見祭りのお誘いだぴょん！」
　殊更楽しそうに宣言する、ミラクル・トラベル・カンパニーの青年ツアーコンダクター。だが、語尾がおかしい。どう考えてもおかしい。ウィンクルム達の意を察してか、ツアーコンダクターはあくまで機嫌よくころりと笑って、
「タブロス近郊のチェリコ村で、例年通りお月見祭りが開催されるんだぴょん！　会場の広場では、うさ耳をつけてうさぎさんに変身することが必須！　なのですぴょん！」
　と、事の次第を説明してみせた。曰く、チェリコ村のお月見祭りにはちょっぴり（？）変わった決め事があり、広場に入る前には、必ずうさ耳カチューシャかうさ耳頭巾を着用しなくてはいけないのだとか。更に、広場にいる間は語尾に『～ぴょん』をつけて喋ることも忘れてはならないルールであるそうで。
「チェリコ村には面白い言い伝えがあってね。むかーしむかし、満月の夜。兎をお供に連れた魔法使いがやってきて、村を救ったんだって。その魔法使いへの感謝の気持ちをいつまでも忘れずにいられるように、お月見祭りの夜は魔法使いが連れていたうさぎさんになりきるんだ……ぴょん」
　思い出したように語尾に『～ぴょん』をつけるツアーコンダクターなのであった。ちなみに、広場に入る為に必要だといううさ耳は、村へ到着した際に無料で貸し出してもらえる……のだが。そのうさ耳というのがまた、中々に難儀な品だったりする。
「うさ耳には古い古い魔法の力が詰まっていてね、語尾に『～ぴょん』を付けずに喋ると、右の手の甲にうさぎさんマークが現れるんだぴょん。で、もう一回ミスすると本物のうさぎさんになっちゃうぴょん。うさぎさんになっちゃっても人間の言葉は喋れるけど、語尾は強制的に『～ぴょん』だからね！　ぴょん！」
　魔法の効力はおよそ数十分で切れるのでご安心をとツアーコンダクターは笑うが、人によってはトラウマレベルの地獄のような数十分になりそうな気がしないでもない。
「あ！　それと、今年のお月見祭りでは、新しい催しがあるんだぴょん！　手のひらサイズの陶器のうさぎさんがね、広場中に隠されてて……」
　それを探し出すことに成功すれば、チェリコ村名物の『満月プリン』の巨大verが貰えるのだと、ツアーコンダクターはうっとりとする。
「もちろんもちろん！　ゆったりと月を眺めて過ごすのも大歓迎らしいぴょん！」
　だから、どうぞそれぞれに思い思いのうさぎさんな時間をと、青年ツアーコンダクターはにっこりとした。

解説

●今回のツアーについて
チェリコ村の不思議なお月見祭りを満喫していただければと幸いです。
ツアーのお値段はウィンクルムさまお一組につき３００ジェール。
ツアーバスで首都タブロスを出発し、日が暮れてから村へ着きます。
数時間の自由時間の後夜行バスでタブロスへ戻るツアーです。

●魔法のうさ耳について
村の入り口にて無料で貸し出される不思議なうさ耳。
詳細は、プロローグにてご確認願えますと幸いでございます。
形は、カチューシャタイプと、耳に特徴のある精霊さんでも装着しやすい頭巾タイプの２種から、お好きな方をお選びくださいませ。
装備したうさ耳の色が兎化した時の毛色となりますので、色の希望がありましたらプランにてご指定を。
ご指定ない場合は、村人がランダムにチョイスいたします。
また、兎化時の瞳の色は普段の瞳の色と同じです。
兎化時のサイズは、一般的に考えられる兎のサイズとなります。

●兎探しイベントについて
プロローグにあるような陶器の兎が、広場中に隠されています。
屋台にて『満月プリン』の巨大verと交換できるので、興味がございましたらあちこち探し回ってみても。
見つけ出すのは、そんなに難しくありません。
こちらのイベントへの参加は任意ですので、お好みの時間をお過ごしくださいませ。

●屋台の食べ物とお月見について
ここでしか食べられないものとして、ツアーコンダクターくんがご紹介している『満月プリン』があります。
村から見える満月と同じ黄金色で、とろっとろの絶品です。
お買い求めは広場の屋台にて。１つ３０ジェール（ツアー代とは別料金）です。
広場は絶好のお月見スポットで、月と兎をあしらった愛らしいベンチも多数あります。

ゲームマスターより

お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます！

ぴょんぴょんうさぎさんなお月見のお誘いです！　ぴょん！
過去のお月見祭りについては、『月に兎が跳ねる夜』『お月見祭りにうさ耳は揺れる』にてご確認いただくことができますが、ご参照いただかなくとも今年のお祭りを楽しんでいただくのに支障はございません。
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします！

また、余談ですがGMページにちょっとした近況を載せております。
こちらもよろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

蒼崎　海十（フィン・ブラーシュ）

黒・カチューシャタイプ 陶器の兎を探す…ぴょん 満月プリンの巨大verと交換できるなんて、見逃せない…ぴょん だから、兎化してる時間も惜しいから、頑張って語尾にぴょんを付ける…ぴょん 皆言ってるんだから、恥ずかしくない…筈…ぴょん それにしても、何でフィンはあんなに順応力が高いんだ…ぴょん フィンは左側を探してくれぴょん 俺は右側を探すから…頼むぴょん 見付けられたら、思わず語尾のぴょんを忘れて喜んでしまい、兎化 一生の不覚だ… フィンの肩に乗せられて、元に戻るまで広場を散歩 フィンの肩から見上げる月は綺麗だ 元に戻ったら念願の満月プリンを食べる 月を見上げながら食べるプリンは絶品で、思わず無口に …もう、絶対わざとだろ

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アイオライト・セプテンバー（ヴァンデミエール）

去年はじーじと一緒だったから、今年も一緒に来たかったんだぴょん♪ あたしカチューシャにするぴょん、ピンク！ うさぎさんは何処でかくれんぼしてるぴょんですかー？ 早く出てこないと、プリンじゃなくてうさぎさんを丸齧りしちゃうぴょんですよー 早く出てきたら、ぱんつをあげるぴょーん （ベンチの下に潜り込んでごそごそ） あ、プリンみーっけぴょん じーじ、半分こしよっ！　だぴょん はい、じーじ、あーんして 去年はじーじがあたしに食べさせてくれたから、今年はあたしがあーんしてあげたかったの ね、じーじ、美味しい？ もっとあげるねー……あ←プリンに夢中でぴょん忘れてた またウサギになっちゃった、プリン食べてる途中だったのにーっ（地団駄

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楼城　簾（白王　紅竜）

（何で僕は黒兎の頭巾を被っているのかな） 祖父が息抜きにと勧めてきたからだ。 僕にあんな事したのに、紅竜さんはいつも通りだし（エピ4） 時間潰しにもなるし、陶器の兎を探そう。 語尾にぴょんつけたくないから、無言で。 と、紅竜さんが僕の顔を見ている。 「何か用かい！？」 って、あ。 紅竜さんが溜め息ついて兎になった僕を抱え上げ、僕の踵があった辺りの石の陰から陶器の兎も拾い上げた。 だから見てたのか。恥ずかしい。 僕を肩に乗せる紅竜さんの手がいつもより温かく感じる。 あと香水？…彼らしい香りだ。つけてたのか。 プリンはお土産…別に僕は欲しかった訳ではないけど。 …信じられないものを見たしされた。 この男、本当に何考えてる！？

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ユズリノ（シャーマイン）

借りられるなら照明を　照明持つ カチューシャ着用 ふるふる震え 「シャミィがぴょん　やばい　ぴょん（歓喜 「？ 「わきゃー　兎ぴょんー♡♡！！ 屈んでおいでしたら飛び込んでくれた！ 抱き抱ききゅむー「シャミたんって呼んでいいぴょん？ 満月プリン目指し陶器探し 「あそこにあるぴょん！ 隙間奮闘を見守り(お尻ふりふりしてる　きゃわわわ(悶絶 「危ないぴょん 落ちそうなの咄嗟にキャッチ 頬チュは彼＋兎で超悶絶幸福 ぜーはー「僕を萌え殺す気ぴょん？ 交換してベンチへ 巨大さ眺め　ほわー（感動 あーんは恥かし嬉しで頂きます 「おいひーぴょんー！　お返しぴょん 激照れお返しあーん (やばい　幸せ 月見上げ夢見気分 バス 「シャミたん誘ってくれてありがと…ぴょん スヤ

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セツカ＝ノートン（マオ・ローリゼン）

・心情 うさぎの置物、探すの楽しみっ ・行動 うさ耳は…マオと僕の、どっちも選んでもらおう！ どういうのか、それも楽しみ 「マオ、うさぎさん探すんだぴょん！」 手を繋いで、一緒に探すね。 あちらこちらみてみるけど、なかなか見つけられないかも 僕、そういうの探すのちょっと苦手なんだよね… でも、マオのヒントがあったら、みつけられるね 「マオ、ありがとうぴょん！」 マオから見せてもらったマーク、可愛いね！ちょっとだけつけてみたくなっちゃうけど、兎さんになるのは困るから… 「兎のマーク、かわいいね、でも次は気を付けてぴょん！」 とかいってるうちに、兎さんになってしまったら、マオを抱っこしてみて回るね これもまた、楽しいかも！

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●おててを繋いで月の下
「うさぎの置物、探すの楽しみっ！　ぴょん！」
　頭の上にうさ耳をぴょこぴょこと揺らしながら、セツカ＝ノートンは辿り着いたばかりの広場をぐるりと見回した。ふわっふわの真っ白いうさ耳カチューシャは、チェリコ村の村人に選んでもらったものだ。マオと僕の、どっちも選んでもらおう！　というのはセツカの提案で、だから、傍らに立つマオ・ローリゼンの頭を飾る黒いうさ耳頭巾も、村人チョイスである。
「どういうのかそれも楽しみって思ってたけど……白黒うさぎさんになっちゃったね、ぴょん」
　マオの姿に、セツカはくすぐったいような笑みを漏らした。愛しいセツカの屈託のない笑顔に、マオのかんばせにも微笑の花が咲く。
「ふふ、なんだか、可愛いお祭りだよね……ぴょん」
「僕もそう思うぴょん！　じゃあマオ、うさぎさん探すんだぴょん！」
　晴れた顔のまま頷いて、セツカはマオの手をぎゅっと握った。繋がれた手の温もりに、マオは思う。
（まぁ、一番可愛いのはセツカなんだけれど……お祭りよりもずっとね）
　そうして、お月様が優しく見下ろす広場の内、セツカとマオは一緒に陶器の兎探し。セツカ、あちらへこちらへと赤の眼差しを走らせて懸命に陶器の兎を求めるのだけれど、
「うう、なかなか見つけられないぴょん……僕、そういうの探すのちょっと苦手なんだよね、ぴょん……」
　なんて、やがてその肩がちょっぴりだけ下がった。一方のマオは、既にして陶器の兎をその視界の端に見留めていたのだけれど、
「ねえセツカ、あの植木、あやしくない？　ぴょん？」
　と、自分で手に取るという選択も、解答を教えるという選択もせずに、セツカの耳元に囁き一つ。セツカが陶器の兎に出会えなければヒントを、と思っていたのだ。
「あっ、見てみるぴょん！」
　マオの手を引いたまま、セツカは植木の元へ。そしてセツカはようやっと、植木の陰にて、ちょこんと愛らしい陶器の兎に出会った。ころんとして温かみのあるそれを、そっと両の手のひらに乗せるセツカ。
「見つけたぴょん！　マオのヒントのお陰だね、ありがとうぴょん！」
「ふふ、見つかってよかったね」
　セツカの嬉しそうな表情に柔和な笑みを零した後で、マオはすぐに、
（あ、しまった……）
　と、手を口元に遣った。件の語尾をつけ忘れたことに気付いたのだ。見れば、右の手の甲に浮き上がるうさぎさんマーク。マオは、苦笑混じりにセツカへと右手の甲を翳してみせる。
「あぁでも、見てセツカ、これも可愛いよ……ぴょん」
「ほんとぴょん！　かわいいね、でも次は気を付けてぴょん！」
「うん、わかったよ……あ」
　ずっと感じていた『～ぴょん』という語尾への気恥ずかしさが、ここにきて災いした。またも例の語尾を付け忘れていつもの調子で返事をしてしまったマオは、口を抑える間もなしに黒くて小さな兎の姿に。
「ああ……本当にうさぎになっちゃったね、ぴょん」
　付けようとしなくても、『～ぴょん』という言葉が口からとび出す。マオ兎を優しく抱え上げながら、セツカは少し笑った。マオから見せてもらったマーク可愛かったぴょん、と。
「ちょっとだけつけてみたいけど、２人共うさぎさんになるのは困るもんね、ぴょん」
　セツカに抱っこされたままで、マオ兎は、「そうだぴょん」と、思い出したように言った。
「セツカ、忘れずにプリンも貰わないとね、ぴょん」
「あ、そうだったぴょん！　マオ、一緒に食べようね、ぴょん！」
　腕の中にマオ兎の温もりとふわふわ具合を感じながら、セツカは月明かりが静かに照らす広場をゆったりと歩く。自然、足取りが弾んだ。
（何だか、これもまた楽しいかも！）
　巨大な『満月プリン』を貰おう、２人で一緒に楽しもう。わくわくを胸に、セツカは屋台へと急ぐのだった。

●お月見祭りをもう一度
「１年ぶりだね……っと、いけない忘れるところだった、ぴょん」
　危ない危ないと、ヴァンデミエールは口元に手を遣った。まだうさ耳は装着していないし広場も遠くに見えるけれど、
「えへへ、去年はじーじと一緒だったから、今年も一緒に来たかったんだぴょん♪」
　なんて、青の双眸を爛々と煌めかせてうさ耳を選ぶアイオライト・セプテンバーは既にしてうさぎさん気分なのだ。アイオライトの『じーじ』たるヴァンデミエールも、それに倣うように件の語尾を忘れない。
「あ！　あたしカチューシャにするぴょん、ピンク！」
「僕は、頭巾タイプを貸してもらおうぴょん」
　ヴァンデミエールが手に取ったのは、昨年アイオライトが彼の為に選んだ色、水色の頭巾だ。それに気づいたアイオライトが太陽のように笑み零し、ヴァンデミエールは、目元を和らげてみせることでそれに応えた。
「うん、懐かしいぴょん。あの頃は、嬢とウィンクルムになってから、まだ日が浅かったぴょん」
　僕たちがどれくらい仲良くなったかお月様に確かめてもらおうぴょん、と、ヴァンデミエールはアイオライトの小さな手を握る。そうして２人は、お月様の待つ広場へと向かった。

「うさぎさんは何処でかくれんぼしてるぴょんですかー？」
　ベンチの下にごそごそと潜り込んで、アイオライトは元気いっぱい陶器の兎を探す。
「早く出てこないと、プリンじゃなくてうさぎさんを丸齧りしちゃうぴょんですよー」
　アイオライトが無邪気にそんなことを言うものだから、ヴァンデミエールはその様子を思い浮かべてくすりと音を漏らした。その間も、「早く出てきたら、ぱんつをあげるぴょーん」と、アイオライトは絶好調だ。そんなアイオライトの後ろ姿を眺めながら、
「……それにしても、この喋りは少し疲れるよ」
　苦笑混じりに、ぽつりと呟くじーじである。と、その時。
「あ、みーっけ！　ぴょん！」
　弾けるような声を上げるや、陶器の兎を手にアイオライトがベンチの下から戻ってきた。
「じーじ、プリン、半分こしよっ！　だぴょん」
「それは嬉しいね、ぴょん。嬢、探しものおつかれさまぴょん」
　労いの言葉に、益々明るくなるアイオライトの表情。
「プリンと交換して、そこのベンチに座って食べようぴょん」
　ヴァンデミエールの提案に、アイオライトは元気よくお返事をして屋台へと駆け出す。微笑を一つ、ヴァンデミエールはその背中をゆったりとした足取りで追い掛けた。

「はい、じーじ、あーんしてぴょん♪」
　ベンチに、２人仲良く腰を下ろして。アイオライトは上機嫌で、幸せな一匙をじーじの口元へと運んだ。おや、という具合に、ヴァンデミエールが僅かだけ首を傾ける。
「ありがとう、嬢が僕に食べさせてくれるんだねぴょん」
　素直に御言葉に甘えようか……ぴょん、と、ヴァンデミエールは口の中にとろとろプリンを味わった。アイオライトの瞳が、ぴかぴか輝く。
（去年はじーじがあたしに食べさせてくれたから、今年はあたしがあーんしてあげたかったの）
　なんて、胸に思うのはそんなこと。
「ね、じーじ、美味しい？　もっとあげるねー……あ」
　プリンに夢中になっているうちに、すっかり件の語尾のことを失念してしまったアイオライト。気付けば昨年と同じく、愛らしい桃色兎に変じていて。おやおや、と、ヴァンデミエールが目を丸くした。
「今年も、嬢はウサギになってしまったねぴょん」
「うーっ、プリン食べてる途中だったのにーっ！　ぴょん！」
　ぷりぷりとして地団太を踏むアイオライト兎の様子に、
「仕方がない、ここからは僕が嬢にあーんしてあげるよぴょん」
　と、ヴァンデミエールは優しく苦笑いをする。そして、自身の膝の辺りをぽんぽんとして示した。
「だから嬢、跳ねてばっかりいないで、僕の膝においでぴょん」
　瞳を数度瞬かせて――アイオライト兎は、じーじの膝の上へとぴょん！　ととび乗ってみせる。優しく背中を撫でられて青の目がうっとりと細められるその様子を、月が柔らかく照らしていた。

●知らなかった香り、翻弄する手
（……何で僕は、黒兎の頭巾を被っているのかな）
　頭の上に愛らしい黒いうさ耳を揺らしながら、楼城　簾は知らず嘆息していた。自発的な希望からではなく、自身が働く会社を興した祖父の勧めで簾は今チェリコ村にいる。
（息抜きと言われてもな……僕にあんな事したのに、紅竜さんはいつも通りだし）
　自然、猫の仮面と祭囃子が思い出された。それから、唇に触れた温度も。それなのに、しっとりと美しい月が頭上で静かに煌めく広場の中、簾と同じ黒兎の頭巾をさらりと着用した白王　紅竜は何でもないような顔をしているのだ。と、その時。
（っ……！）
　紅竜の赤い眼差しが、ふっと簾へと向けられた。ふいっ、と視線を虚空に逸らす簾。その様子に、簾さんが挙動不審だ、と紅竜は口には出さずに思う。
（この前のキスが原因だろう。私も木石ではないから人並に経験しているが……）
　まさかそっち方面に高潔とは思ってなかった、というのが紅竜の正直な感想だ。紅竜がそんなことを考えている向こうで、簾は口元を引き結んだまま、
（時間潰しにもなるし、陶器の兎を探そう）
　という結論に辿り着いていた。無言を貫くのは、『～ぴょん』だなんて語尾を口にしたくないからだ。言葉こそ一言も交わしていないものの、ベンチやら植木の陰やらに目を走らせ始めた簾の姿に紅竜は彼の意をしかと察し、自身も辺りに陶器の兎を探し始める。
（あれは……）
　かくして、思っていた以上に簡単に陶器の兎は紅竜の目に留まった。但し、問題はその位置だ。陶器の兎は、ベンチを具に観察している簾の踵近く、石ころの陰にちょこんと座っている。加えて、簾はその存在に気づく気配がない。
（さて、どう声を掛けるか）
　簾のかんばせへと眼差しを遣って、紅竜は機を窺う。と、何かの拍子に紅竜の方を振り返った簾が、
「何だ？　何か用かい！？」
　自分の顔へと注がれている視線に気づくや、幾らか詰問じみた声を上げた。そして――我に返った時には、簾は手の甲のうさぎさんマークを確認する間もなく本物の黒兎に変わっていて。
「って、あ……ぴょん」
　盛大に自爆した簾兎を前にため息一つ、
（仕方ない）
　と、紅竜はその小さくてふわふわの身体を抱えた。空いている方の手で、陶器の兎も拾い上げる。
（僕の踵があった辺りに……だから見てたのか）
　恥ずかしい、と唇を噛みたいような想いに駆られる簾兎だったが、小さく変じてしまった身体を肩に乗せる紅竜の手は、いつもより何だかあたたかく感じられた。
（あと、香水？　……彼らしい香りだ。つけてたのか）
　新しい発見に、紅竜の肩の上、簾兎の鼻はひくひくとなる。その間に、紅竜は屋台へと足を進めて、陶器の兎を巨大な『満月プリン』と恙無く交換した。
「本当に大きいな……ぴょん」
「土産にすればいいぴょん」
「お土産……別に僕は欲しかった訳ではないけど、ぴょん」
　紅竜は、兎化している簾よりもいっそすんなりと件の語尾を口にする。簾兎が、ふと紅竜へと顔を向けた。キス以来で近いな、という感想は胸に丁重に仕舞ってやって、
「自爆とは案外可愛いと思ったぴょん」
　なんて、紅竜は赤い眼差しを簾兎へと流してごく仄かな微笑を漏らす。更に、
（兎だし、いいか）
　プリンを持っていない方の手で、ぽふん、と簾兎の頭を撫でる紅竜の手のひら。微かな笑みを目に寸の間硬直していた簾兎、その温度にハッと我に返った。信じられないものを見たし、信じられないことをされた、という認識が追いついてきて簾兎を襲う。
（この男、本当に何考えてる！？）
　わかりやすく動揺する簾兎の様子に、
（腹黒いに可愛いの評価を極秘に追加させて頂くとしよう）
　と、紅竜は胸の内に一つ頷きを零すのだった。

●白黒うさぎ、夜を行く
「ふふ、楽しいお祭りぴょん♪」
　頭にカチューシャタイプの白いうさ耳を揺らして、フィン・ブラーシュは歌うように声を零す。傍らの蒼崎　海十が、ちょっと疲れたような溜息を漏らした。カチューシャの上の黒いうさ耳が、ぴょことお辞儀をする。
「何でフィンはそんなに順応力が高いんだ……ぴょん」
「そういう海十は初々しい感じで可愛いね、ぴょん」
「やめろよ……ぴょん。……皆言ってるんだから、恥ずかしくない……筈……ぴょん」
　甘く囁かれて、海十は少し拗ねたような眼差しをフィンへと向けた。けれど海十は、たどたどしくも件の語尾を欠かさない心積もりでいる様子。
「とにかく、兎化してる時間も惜しいから、頑張って語尾にぴょんを付ける……ぴょん」
「時間が惜しい？　ぴょん？」
「陶器の兎を探す……ぴょん。巨大『満月プリン』と交換できるなんて、見逃せない……ぴょん」
　小さく拳を握る海十の言葉に、「ああ、成る程ぴょん」とフィンは青の瞳を得心に煌めかせる。
「だから、フィンは左側を探してくれぴょん。俺は右側を探すから……頼むぴょん」
「了解ぴょん。四つの目で探せば、きっと見つかる筈ぴょん♪」
　今日も今日とて愛らしい婚約者を安心させるようにそう言って、フィンは茶目っ気混じりにウインク一つ。海十が、ふっと細い息を吐いた。今度は、柔らかい微笑を伴う安堵の息だ。
「ありがとう、フィン……ぴょん」
　慣れない語尾は、ともすれば気恥ずかしさで海十を飲み干そうとさえする。けれど。
（フィンは、いつもと変わらないから。少し、ほっとする）
　傍らに立つ大切な人の笑顔は、奇天烈なルールを前に強張る心を緩やかにほぐしてくれる。
「それじゃあ、一仕事と行こうかぴょん」
　軽やかなフィンの声に海十が頷きを返して、２人は一緒に陶器の兎探し。やがて――海十は、樹の陰にそれをしかと見い出した。黒の双眸が、ぱあと輝く。
「見つけた！　フィン、陶器の兎だ！」
　フィンが止める暇もない、一瞬の出来事だった。気付けば海十は、ぱちぱちと瞳の青を瞬かせるフィンを、いつもより遥かに低い目線から見上げていて。
「一生の不覚だ……ぴょん」
　苦い声で呟いた海十兎。その小さくてふわふわの身体を、すぐに我に返ったらしいフィンは頬をゆるゆるさせながらそっと抱き上げる。
「可愛くって和んじゃうなぁ、ぴょん。うん、オニーサン役得ですぴょん♪」
　海十には申し訳ないけど、と『～ぴょん』込みで付け足すことは忘れずに、フィンは海十兎を自分の肩へとそっと乗せた。
「ゆっくり散歩しようか、ぴょん。それで、元に戻ったら一緒にプリン食べようぴょん」
　優しい声音で言って、フィンは海十兎を柔らかく撫でる。何とも言えない面映ゆさから目を逸らすようにして夜空を見上げ、
（あ……フィンの肩から見上げる月、綺麗だ……）
　なんて、海十兎はほう、と感嘆の息を漏らした。

（ん、美味しい……）
　暫くの後、ようやっと元の姿に戻り、広場のベンチに腰を落ち着けて。陶器の兎と交換した『満月プリン』の味に、海十は知らず無口になっていた。見惚れるほどの月を眺めながら食べる念願の甘味は、まさに絶品だ。フィンもまた、本当に美味しいと思いながら、同じ味をゆったりと口に楽しむ。そして、
（海十の横顔、すごく幸せそう）
　と、フィンは愛しい人が月を見上げる、そのかんばせに乗る色も味わった。幸せのお返しがしたいな、なんて、そんな想いが胸を過ぎる。だから。
「好きだよ。愛してる」
　フィンは海十の耳元に、秘め事のように囁きを零した。海十がハッと傍らへと顔を向けた時には、そこにはただ、ふわふわの白兎がちょこんとして座っていて。
「……もう、絶対わざとだろ、ぴょん」
「だって、海十だけ兎にしちゃうのも不公平かと思ったぴょん♪」
　明るい声でそう応えれば、しょうがないなとばかりに伸びた海十の手、その手のひらが、フィン兎の毛並みを優しく撫でる。次いで静かに落とされた口付けに、フィン兎はふうわりと瞳を閉じた。

●笑顔、月下に咲く
「シャミィがぴょん……やばい、ぴょん」
　村人から貸し出してもらったランタンを手に、ユズリノはふるふると震えた。灰色のうさ耳カチューシャも、頭の上でぷるぷるしている。感情を表すのに長けた甘めのかんばせには、歓喜の色がありありと浮かんでいた。シャーマインがふっと笑う。
「リノが喜ぶなら何度でも、ぴょん。リノ、似合ってるぴょん」
　自身の髪と同じ色のうさ耳頭巾を被ったシャーマインは、ごく自然に件の語尾を口にする。遊ぶ時は全力、なのである。瞳をキラキラさせているユズリノの前で、それにしても、と、シャーマインはいっそ楽しげに軽い苦笑いをする。
「人と牛と兎か、キメラ化が進んだぴょん」
　バッファローのテイルスたるシャーマイン、「と、いう訳で」と右手の甲をユズリノの前へと翳してみせる。頭にクエスチョンマークを浮かべて小首を傾げるユズリノを余所に、ふわり、そこにうさぎさんマークが現れた。
「俺は牛をやめるぞリノー」
　宣言するや、シャーマインは淡いモスグリーンの兎姿に大変身。
「ウサボディの俺はどうだぴょん？」
　なんて、うさちゃん的悩殺ポーズを決めてみせれば、
「わきゃー！　兎ぴょんー！！」
　と、我に返ったユズリノが、語尾にハートマークが幾らも踊るような声を出した。屈み込んでおいでおいでをすれば、ピョコピョコピョン！　とユズリノの胸にとび込んでくるシャーマイン兎。
「シャミたんって呼んでいいぴょん？」
「好きに呼んでくれぴょん」
　ふわふわをきゅむーっと抱き締めながらユズリノが問えば、シャーマインは諾の返事と共に優しい苦笑を漏らした。そうして１人と１羽は、巨大『満月プリン』を求めて陶器の兎を探し始める。
「あっ！　あそこにあるぴょん！」
　ユズリノがランタンで照らし出したのは、広場を取り巻く建物と建物の隙間を埋める細長い木箱の奥。ユズリノの指が示す先に、シャーマイン兎はぴょん！　と潜り込んだ。前足てしてし、前歯まで使って、シャーマイン兎は陶器の兎を引っ張り出そうと大奮闘だ。自然とふりふり揺れる兎なお尻のキュートさに、ユズリノは胸をきゅんとさせた。と、その時。
「わ、危ないぴょん！」
　木箱の上からこちら側へと後ろ足を踏み外したシャーマイン兎の小さな身体を、ユズリノは咄嗟にキャッチ。陶器の兎はしっかりとゲットしたシャーマイン兎、ユズリノの腕に抱かれたまま、
「助かったぴょん」
　と、兎だしいいか、という気持ちで、心配そうに自分に顔を寄せるユズリノの頬へと軽く口付けを零した。うさぎさんなシャーマインからの頬キスは、ユズリノに効果抜群で。
「ぼ、僕を萌え殺す気ぴょん……？」
　息も整わなくなるユズリノの様子に、可愛い反応だとシャーマインは胸の内に微笑した。

「ほわー、大きいぴょん……！」
　陶器の兎を巨大プリンと引き換えて、ベンチへと腰を落ち着けた２人。しげしげとプリンを眺めながら、ユズリノは感嘆の息を漏らした。シャーマインも、既に元の姿に戻っている。
「ほら、最初の一口ぴょん」
　横からそっと掬われて差し出された甘い一匙を、嬉しさと面映ゆさに頬を熱くしながらユズリノはぱくり。そして。
「おいひーぴょんー！　お返しぴょん！」
　と、ユズリノは頬を真っ赤に熟れさせながらも、自分からも一口分のプリンをシャーマインの口元へと運んだ。シャーマインの口の中に消えるとろとろの金色。
（……やばい、幸せ）
　返る笑顔にそんな想いを過ぎらせて、ユズリノは夢見心地で月を見上げた。

「シャミたん誘ってくれてありがと……ぴょん」
　そして、帰りのバスの中。シャーマインは、自分に肩を寄せて眠っているユズリノの髪を満足げにふわと撫でた。
「どういたしまして、リノ」
　月見を楽しみながら２人でプリンを食べ切ったことを、その時のユズリノの顔を思い出す。
（いっぱい笑ってくれたぴょん……おっと）
　妙な癖がついてしまったと、すやすやと寝息を立てるユズリノの傍ら、シャーマインは苦笑した。

---

依頼結果：大成功
ＭＶＰ：

メモリアルピンナップ

（　イラストレーター： 山神さやか 　）

参加者

• 蒼崎　海十（フィン・ブラーシュ）
• アイオライト・セプテンバー（ヴァンデミエール）
• 楼城　簾（白王　紅竜）
• ユズリノ（シャーマイン）
• セツカ＝ノートン（マオ・ローリゼン）

会議室

• 

  [8]蒼崎　海十

  2016/09/18-00:34　

  

• 

  [7]蒼崎　海十

  2016/09/18-00:34　

  

• 

  [6]アイオライト・セプテンバー

  2016/09/16-21:47　

  

• 

  [5]蒼崎　海十

  2016/09/16-00:33　

  

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  [4]蒼崎　海十

  2016/09/16-00:33　

  フィン：
  フィンですぴょん♪
  パートナーは、そこで固まってる海十だぴょん。
  皆、よろしくね！だぴょん♪（満面の笑顔）
  
  海十：
  ……順応早過ぎだろ…。

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  [3]楼城　簾

  2016/09/15-21:22　

  ……楼城　簾と、白王　紅竜……。
  （ぴょん喋りに明らかに動揺している顔）
  
  出発までには言えるようにしておくね。
  今はちょっと厳しいかな。
  
  ……救いは、紅竜が同……何でもない。

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  [2]セツカ＝ノートン

  2016/09/15-21:09　

  セツカと、相方の、マオです、よろしくおねがいいたしま……、（ユズリノさんとシャーマインさんをみて）
  ……よろしくおねがいいたします、ぴょん

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  [1]ユズリノ

  2016/09/15-19:40　

  ユズリノと相方のシャーマインだぴょん。
  
  シャーマイン：
  よろしくぴょん！
  
  (順応の早い二人)