【祭祀】花と恋模様(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ


 祭り囃子が聴こえる。
 沢山の人々が楽しげに屋台を見て歩いてる中、手を繋ぎあちらこちらに視線を彷徨わせながら歩く姿。
 精霊と歩いていた貴方の目の前には、お面屋……ではなく、仮面屋があった。
 一般的なお面屋とは違い、狐面や猫面、狼面等、どうやら動物をメインにした仮面のようで。
 白や黒の仮面。
 その仮面には特徴的な模様が描かれていて瞳を奪われる。
「どうだい、自分で模様を描いてみないかい?」
 老人の指先が、何も描かれていない仮面を指差す。
 どうやら模様を描くこともできるようだ。
「自分で好きなように文様を描いていいんだが……ひとつだけ」
 必ず、何か花をひとつ。
 それが約束なのだという。
「例えば君の誕生日花でもいいし、ただの好きな花でもいい。何かしら花に思いを込めて描くといいさ」
 花言葉、というものがあるだろう?
 それを意識してもいいかもしれないねぇと老人が微笑む。
 色があまりないのが難点ではあるが、そこは色を混ぜて作ってもいいし、寧ろたった一つだけの「花」ということにしてもいいだろう。
 そこは君たちの自由だという。
「仮面越しになら、普段言えない「何か」を伝えやすくもなるだろうねぇ」
 さて、君たちに伝えたい「何か」はあるのかね?
 その言葉に顔を見合わせる君たちを、老人は笑って見守るのだった。



 さて、貴方達は筆をとり絵を描きはじめた。
 先に出来あがった仮面を付けた「彼」が紡ぎだしたその言葉に、貴方は瞳をまたたく。
 さぁ、どんな答えを返そうか……。

 同時刻。
 仮面を買って、さっそくつけた「貴方」は、いつもは胸に秘めていたその「思い」を吐露してしまう。
 「彼」はなんといってくれるのだろうか……?

解説

 碑文の影響で、日頃感じている不安や不満を吐露しやすい状態です。
 逆に愛情に関する本音も普段より素直に言えるそうです。
 そんな状況でもやっぱり恥ずかしいじゃん……? という精霊さん、神人さん、仮面は如何でしょうか!
 プロローグの状況以外も可能ですので、思う存分おかき下さい。

●jr
 仮面を買う:300jr
 仮面に模様を入れる:400jr


●仮面
 狐・兎・猫・狼 その他何か動物。
 色は 白と黒 のみ。

●花
 必ず一つ、何かの花が描かれています。

●模様
 自分で描いてもいいし、見本があるのでそれを真似しても、テンプレートがあるのでそれをなぞっても可能。
 筆ペンがあり、色は青・赤・黒・白・黄・金・緑・紫 があります。
 色を混ぜて新しく色を作っても構いません。

ゲームマスターより

狐面とかそういうのが大好きな如月修羅です。
寧ろ私もやりたい……。
宜しくお願い致します。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)

  仮面:白・猫
花:赤い薔薇
模様:緑で薔薇の蔦のような模様
自分で描く

薔薇の花の咲き誇る場所で…フィンの過去を聞き、初めてキスした
俺にとって大切な思い出の花
絵心なんてないけど、丁寧に想いを込めて描く

出来上がった仮面を着けたら、言葉が溢れた

もしも…俺とフィンがウィンクルムとして出会わなかったら…どうなってただろう?

契約して、フィンが俺の部屋に一緒に住むようになって…二人で過ごした時間の積み重ねがあったから、今がある
そうじゃなかったら…考えるだけで、心底怖い
フィンが居なければ…孤独なまま…

フィンと巡り合わせてくれた運命に感謝してる
運命って言葉は余り好きじゃないけど

そうだな
俺も絶対にフィンを見つけてみせる


カイン・モーントズィッヒェル(イェルク・グリューン)
  仮面:白狼
絵:南天

こういうのもいいだろ
終わったら着け…イェル?

あー…やっぱ気にするか

リタが言わなかったのは、父の日のサプライズだったんだろうよ
そういう奴だった

お前、身長幾つだ
リタの身長は、147cmだ
180ー147は?

俺は…
何でこいつ契約の場に連れてきた、誰がどう見てもヤバイってレベルで生きながら死んでたイェルが徐々に生きてる感じになっていって、それが嬉しかった
最初、そいつが今のお前を望んでない事に気づけ、死ぬなってだけだったがな

俺は地味に毒吐くのに、未だ俺の言う事やる事1つで真っ赤になる可愛いイェルがいい
リタにならなくていい

って訳で
今日も綺麗で可愛い嫁さん、祭楽しもうぜ?※角キス+尻尾撫で


アイオライト・セプテンバー(ヴァンデミエール)
  仮面に絵を描いていいの?
おもしろそう、やるやるっ
これにするっ兎さん!
何の模様にしようか迷っちゃうなー
じーじは何がいいと思う?
林檎かーたしか白いお花だったよね
じゃ、兎さんの色は黒色がいいかな?
そんで金色とか緑色とかでアクセント付けて…できた!

えっと…じーじ、人の少ないとこ行こう?
なんだかちょっと恥ずかしいから

(仮面を付ける)
あのね、じーじ
パパとはちょっと違うけどパパと同じくらい、あたし、じーじも大好きだよ
だから、ずっと傍にいてほしいな

(仮面を外す)
えへへ、じーじにこの仮面あげる
言いたいこと言えたから、あたし、もういらないの
その代わり、また一緒にお出掛けしようね
あと、とっときのぱんつもあげる


楼城 簾(白王 紅竜)
  僕は白猫のお面にしよう。
模様は…
(アザミ。彼の様な花)
僕はどうかしている。
これでは彼のお面だ。

描き終わって着けたら祭りへ。
紅竜さんは沈黙のまま。
いつもは気にしないが…
「何故いつも黙り込むんだい?」
僕に不満なんだろうが、訳を聞きたいと思った。

声が悪いから喋りたくない?

「そうだったのか。嫌な護衛対象相手に話したくないのかと思っていたよ」
それを否定されないのもいつものことだが何故か胸が痛む。
「僕は気にしない。雑談してくれると僕も嬉しいよ。キスしろとかそんな命令しないから安心していい。望まないことには絶対従わないのは知って」
…ちょっと待て。
「僕の、ファーストキスだったんだが!?」

この男、何考えてる!?



「模様を描くのかい?」
 老人の問いかけに、頷いたのは少し前……。
 蒼崎 海十はフィン・ブラーシュと共に選んだ仮面を手に、席へと座っていた。
 白い指先が持つのは、白色の猫の仮面。
 まだ何も描かれていないそれに、海十は提灯の光を受け、どこか淡く輝く黒い瞳を向ける。
 この白い面に描く花はもう決めてあって、どこにその花を描こうかと指先をそっと縁へと滑らせつつ思い出すのは、薔薇が咲き誇るあの場所だ。
 沢山の薔薇に囲まれたあの時……海十はフィンの過去を聞いた。
 ……それだけではなくて。
(初めてのキスをした)
 無意識に伸びた指先が、唇にと触れる。
 海十にとって大切な思い出の花だ。
 だからこそ、絵心はない方なのだけれど、その分丁寧に想いを込めて赤い薔薇を描こう。
 そこに込められた想いは、なによりもその薔薇を美しくみせてくれることだろう。
 そうして筆を滑らす頃。
 海斗の髪のようなその黒に、青色を滑らすフィン。
 一つ、二つと描いた青色の勿忘草に、同じ青色の瞳を細める。
 何か思い入れのある花でもと老人にそう言われ、思い入れのある花といえば勿忘草が浮かんだ。
「真実の愛」に「私を忘れないでください」という二つの花言葉は、海十に捧げたいフィン自身の気持ちだ。
 それに、と思う。
 あの悪夢の中で交わした誓いと共に響かせた歌。
 それは今も鮮やかに青空というキーワードと共にフィンの胸の中にと残っている。
 あの時の歌を心の中で自然と口ずさみながら描かれていく葉や茎は、共に歌ってるかのように青い勿忘草を彩る。
 まるであの時の空間にいるような。
 そんな気持ちになりながら、フィンは暫し仮面にと視線を落とすのだった。

「終わったのかい?」
 老人の問いかけに、フィンが頷いた。
「2人とも、何か特別な思い出があるようだね」
 長いことこうやって見てるとね、なんとなく伝わってくるものを感じる時があるんだよ。
 そういって微笑む老人が、2人ともいい花だ。と大きく頷く。
 その言葉に顔を見合わせた海十とフィンは、微笑みを浮かべあう。
 釣られたのか老人も笑みを深くし、もしよかったら少しのんびりしていくといいと、2人にと声をかけた。


 言葉に甘えて提灯がほんのりと2人を照らす中、出来上がった互いの仮面を見ていた。
 赤い薔薇を支えるかのような緑色の蔦模様。
 白猫の仮面に描かれたその模様に、フィンも薔薇に囲まれた一時を思い出したようで。
 絡み合う視線。
 何か言いたげなそんな視線から表情を隠すように仮面をつければ、ふっと湧き上がる「言葉」。
「もしも……俺とフィンがウィンクルムとして出会わなかったら……どうなってただろう?」
 契約してからフィンと共に海十の部屋で暮らすようになり、色々な場所へ2人で行った。
 そうやって共に過ごした2人の時間の積み重ねがあったから、今があると海十は思う。
「そうじゃなかったら……考えるだけで、心底怖い」
 恐怖の色が滲む声音に、フィンは真摯に耳を傾ける。
「フィンが居なければ……孤独なまま……」
「俺もそうだよ」
 海十を安心させるように、自分に言い聞かせるようにフィンが唇を開く。
 気がつけば青い勿忘草が描かれた仮面を持つ指先に力が籠っていた。
「海十が居なければ孤独なままだった」
 そういうフィンは、しっかりと海十へと視線を向ける。
 仮面越しに絡みあう視線。
「自分を許せないまま、一人で生きていたよ」
 それに、と視線を合わせたままフィンも不安を吐露する。
「今だって凄く怖いんだ。海十を失ったらどうしよう、って……」
 海十の居ない世界なんて考えられない。
 そういうと、微動だにしない海十へと指先を伸ばした。
「でも、こうも思うんだ。俺と海十は出会わない筈はない。
どんなに遠く離れてたとしても、きっと海十を見つける」
 仮面にそっと触れながらいえば、海十が僅かに身じろぐ。
 仮面越しに感じるフィンの指先の温もり。
 そして、力強いその言葉。
 海十はそっと仮面の下で瞳を閉じる。
(フィンと巡り合わせてくれた運命に感謝してる。
運命って言葉は余り好きじゃないけど)
 不安が、恐怖が、フィンの力強い言葉によってふわりと溶けてなくなっていく。
 仮面の下で瞳を開き、じっとフィンを仮面越しに見つめる。
「そうだな」
 力強い声音に、フィンが瞳を瞬いた。
「俺も絶対にフィンを見つけてみせる」
 ふわり。
 金の髪を揺らし、笑みを浮かべたフィンは、海十の手をとる。
 ゆっくりと絡められた指先に力がこもって。
「海十は俺のたった一人の輝ける星だから」
 だから。
 この星空の下、共に歩いて行こう。
 出来あがった仮面をお供に、2人、ゆっくりと祭りの喧騒の中へと歩みを進めるのだった。



 どの仮面を選ぶんだい? そういう老人の問いかけに楼城 簾が選んだのは隣に居る白王 紅竜にどこか似ている白色の猫面だった。 
(白猫のお面?)
 ほんのわずか、視線が仮面と簾を捉えた。
 そんな彼の視線に気がつかず、簾は促されるまま席にとつく。
 君はそれかい? そう言われた紅竜の手には黒い猫の仮面。
 模様を描きはじめた簾の隣に座った紅竜は、彼が描き出すのを見詰めた。
(……自覚していなさそうだが、意識されている)
 そう、思うのは何もうぬぼれではないだろう。
(油断ならない腹黒い男なのにな)
 さらさらと描くのはアキメネス。
 大事な人、あなたを救う。そんな意味も持つ花を描く紅竜の傍ら、簾は茶色の瞳を瞬いた。
(アザミ。彼の様な花)
 自分が描くその花に、眩暈を感じるような。
(僕はどうかしている。これでは彼のお面だ) 
 そんな気持ちになりながら、心の中で呟く。
 筆が止まったのに気が付き、老人が終わったのかい? と声を掛けてきて。
 アザミの花に視線を落としながら、簾は暫しその問いかけに答えることを忘れ見入ってしまったのだった。

 紅竜も描き終わり、老人が簾の仮面と紅竜を交互にみた。
 その様子にやはり似ていたのだろうか、と簾は思う。
 紅竜の仮面の花に視線を落とした後、老人が2人を見て微笑んだ。
「2人をみているようだね」
 仮面に君たちの心が描かれたのかな。
 そう言って老人は去っていく2人を見送るのだった。
 
 白い猫面をお供に祭りへ。
 祭り独特の喧騒がそのまま耳に入るぐらい紅竜は無言で隣を歩いている。
 何も言わないものの、時折視線や耳が音や何かに気をとられるのか動くのみ。
 ひょっとしたらそれは護衛として正しい姿なのかもしれない。
 いつもならば、気にすることはないこの沈黙。
 けれど、今日はやけに気になってしまった。
「何故いつも黙り込むんだい?」
 僕に不満なんだろうが、訳を聞きたいと思った。
 そんな簾に赤色の瞳が向けられる。
 視線が混じり合い、答えがないのだろうか、と簾が思った所で紅竜としてはその質問に特別な事情などないために、あっさりと答えを返した。
「私は声が余り良くない」
 自分の声が綺麗な声ではない、と言外にこめて紅竜がたんたんと言葉を紡ぐ。
「故に、余り喋りたいと思わないだけだ」
(声が悪いから喋りたくない?)
 その答えは予想していなくて瞳を瞬く。
 僅かに首を頷きの形にすれば、白猫の仮面も共に頷いて。
「そうだったのか。嫌な護衛対象相手に話したくないのかと思っていたよ」
 簾のその言葉に、紅竜は否定しなかった。
 人間性がどうしようもない、とも思っていたのは事実だからだ。
 だからこそ否定しなかった紅竜に、それを否定されないのはいつものことだけれど、と瞳を細める簾。
(胸が……痛い)
 でも、今日は何故か胸が痛む。
 知らず胸元に伸びた指先が胸元にと触れる、その様子に首を傾げたのは紅竜だった。
「……何故そこで傷ついた顔をする」 
 はっと視線を合わせた簾は、それでもゆるりと首を振る。
「僕は気にしない。雑談してくれると僕も嬉しいよ。キスしろとかそんな命令しないから安心していい」
 じっと視線が絡みあう。
 紅竜がなにも言わないから、さらに言葉を紡いでいく。
「望まないことには絶対従わないのは知って、」
 その言葉は、2人の唇の間に溶けて消えていく。
 自分とは違う体温に、動揺したのはどうやら簾だけのようで。
 おかしい命令を聞かないのは事実だけれど、キスぐらいならば、と行動を起こした紅竜は涼しい顔だ。
「それ位ならこの様に」
 そんな彼に、………ちょっと待て。と声を荒げる簾。
「僕の、ファーストキスだったんだが!?」
(この男、何考えてる!?)
 唇にやった指先までかなり熱を持ったような気がする。
 耳まで赤く染めて睨みつける簾に紅竜の心の中はどこか冷静だ。
(……ファーストキスだったか)
 こちらは高潔だったとは予想外だ、と小さく独り言つ。
 その方面も護衛しないといけないようだと目標を新たにして。
 それに、と金の髪のディアボロに知られたら拙さそうだし、とも。
 黒猫の仮面のアキメネスに込められた「想い」を胸に秘めながら、さて、お祭りを楽しまないのか? と問いかけるのだった。



 がやがやと楽しそうな雰囲気の中、やってきた2人。
「仮面に絵を描いていいの?」
 アイオライト・セプテンバーの問いかけに、老人は目元に笑みの形に皺をよせ頷いた。
 へぇ、仮面か。
 とひとつ呟き、ヴァンデミエールは棚に並ぶ仮面にと緑色の視線をやる。
 同じように色んな種類がある仮面にと視線をやり……いや、ヴァンデミエールの視線とは違い、きらきらと瞳を輝かせたアイオライト。
 少しして考えをまとめたのか、仮面とヴァンデミエールと老人を交互にみた。
「おもしろそう、やるやるっ」
「嬢が描くのかい?」
 こくこくと頷くアイオライトに微笑ましく瞳を細めるヴァンデミエール。
「じゃあ僕は傍で見ているから、困ったことがあるなら訊いてくれればいいよ」
 わかった、と大きく頷く。
 合わせて揺れる金の髪に視線をやり、ヴァンデミエールは見守っている。
「これにするっ兎さん!」
 お嬢ちゃん、楽しんでね。
 なんとなく性別を勘違いしているような老人に笑顔で頷きつつ、アイオライトが最終的に選んだのは兎の仮面だった。

 席に座り、じーっと仮面を見ながら首を傾げる。
「何の模様にしようか迷っちゃうなー」
 じーじは何がいいと思う? と問われ、今度はヴァンデミエールが首を傾げた。
「……成る程。模様ねえ……」
 小首を傾げて見上げてくるアイオライトと視線を合わせ、浮かんだその花は。
「林檎はどうだい?」
 実も可愛いけど、花も愛らしい形をしている。
 だから、とヴァンデミエールは自信をもってすすめることが出来る。
「嬢にぴったりだと思うよ」
 その白い花は、今ここでそう言われて、ぱっと笑みを浮かべるアイオライトにとても似合うだろう。
「林檎かーたしか白いお花だったよね」
 じゃぁ仮面は黒にしようと黒色を手に取り、席へと座るアイオライト。
 金や緑で模様を描き始める。
 暫し、金や緑を黒へと踊らせていれば、納得のいく形になったようだ。
 それを見守るヴァンデミールの瞳にも、金や緑が楽しげに踊っている。
「……できた!」
「はい、よく出来ました」
 自然と伸ばされた指先がぽんぽんとアイオライトの頭を撫で上げる。
 嬉しそうに微笑むアイオライトの手には、白い愛らしい花に緑や金色がうねる模様の黒い兎の仮面。
「おや、お嬢ちゃんのように愛らしい花だね」
 林檎の花なのだとそういえば、老人が暫し瞳を瞬いた後、小さく頷いた。
 なるほど、と声が聞こえてきそうなその頷きは、ひょっとしたらその林檎の花に込められたヴァンデミエールの思いを汲み取ったのかもしれない。
 老人からもよくできたね、と褒められたアイオライトは、ヴァンデミエールを誘う。
「えっと……じーじ、人の少ないとこ行こう?」
 2人は老人と別れ、歩きだす……。

 なんだかちょっと恥ずかしいから。
 そういうアイオライトに内心首を傾げつつ、共に歩いてついたのは、屋台の喧騒が少し遠くに聞こえる場所だった。
 辿りついたその場所で、先程作った仮面をぱっとつけたアイオライト。
 おや? と首を傾げるヴァンデミエールに普段は言えない胸の内を吐露する。
「あのね、じーじ。パパとはちょっと違うけどパパと同じくらい、あたし、じーじも大好きだよ」
 ふっ、と息を止めたヴァンデミエールにアイオライトさらにその声音に愛情を込めて気持ちを伝える。
「だから、ずっと傍にいてほしいな」
「そうだね、僕もずっと嬢と一緒にいたいよ」
 そう言う彼に、仮面越しにアイオライトの瞳が笑みの形に細められる。
「ウィンクルムの精霊としては僕は未熟だけれども、嬢を幸せに出来るよう努力しよう」
「えへへ、じーじにこの仮面あげる」
 言いたいこと言えたから、あたし、もういらないの。
 そういって渡された仮面を受け取る。
「僕が仮面をもらっていいのかい? ありがとう、お返しは何もできないけれど」
 ううん、と首を振られる。
「その代わり、また一緒にお出掛けしようね」
 愛らしい笑顔を浮かべるアイオライトにそっと胸の内で呟く。
(さて、種明かしはどうしよう)
 林檎の花言葉は「選ばれた恋」「優しい女性」。
 まぁ、他の言葉もあるのだけれど……と瞳を細めた後。
(今は僕だけのとっておきの秘密にしておいて、嬢が大きくなったらそのときに伝えるとしようか)
 大きくなった時に伝えれば、アイオライトはどんな反応を示してくれるだろうか。
 今からそれが楽しみな気がして、口元に浮かんだ笑みを深めていれば落とされる爆弾。
「あと、とっときのぱんつもあげる」
「……ぱんつはいらないかな」
 浮かんだ苦笑も未来への土産話の1つになるかもしれないと思えば、こんな時間もまた楽しいかもしれない。
 また別の場所に行こうと手を引くアイオライトについていきながら、ヴァンデミエールはそうも思うのだった。



 いらっしゃいと老人が仲睦まじく寄り添い見ていた2人にと声を掛ける。
「仲良しさんだね」
 恋人さんかい? という老人の問いかけに、カイン・モーントズィッヒェルが夫婦だと言えば、老人がそりゃすまんかったねぇと笑う。
 もしよかったら仮面を買わないか、という老人に、イェルク・グリューンが選んだのは黒狐。
 そしてカインが選んだのは白狼だった。
 2人ともゆっくりと。
 そう言われ席に座った2人は、それぞれの花を描きはじめる。
 カインが描くのは赤い南天。
「私の愛は増すばかり」そして、「良い家庭」。
 まさに2人を象徴する花ではなかろうか。
 対して、黒い狐面に白アザレアを描くイェルクは、「恋の喜び」。
 カインに愛する喜びを想い出させて貰ったイェルクらしい花だった。
 描き終わったその花を見つめ、老人は穏やかな笑みを浮かべる。
 感じられたのは2人の愛情と信頼と、家族としての絆だったのだろうか。
 祭りを楽しんで。
 その言葉に頷きながら、2人、再び歩きだす。


「こういうのもいいだろ」
 南天の描かれた白狼の面を頭にかぶせながらそういえば、黒狐の仮面をつけたイェルクの僅かな変化に気が付いた。
(普段言えない事……)
「……イェル?」
 あの時のことを思い出し、イェルクが瞳を伏せつつも思っていたことを素直に口に出す。
「何故……リタさんの妊娠を知らなかったのですか?」
(あー……やっぱ気にするか)
 カインはその問いかけに、同じようにあの時のことを思い出したのか瞳を細めた。
「リタが言わなかったのは、父の日のサプライズだったんだろうよ」
 そういう奴だった。
 そう静かにいうカインに、イェルクは納得し頷きながらも、羨ましいと思う。
「私も飛び蹴りすべきでしょうか……」
 あのチョコレートフェスタやお花見の時の会話を思い出しながらいえば、カインがそんなイェルクと視線を合わせてくる。
 逸らさない強い視線と、イェルクの視線が絡みあい息を飲んだ所で、カインが唇を開いた。
「お前、身長幾つだ。リタの身長は、147cmだ」
180ー147は? との謎かけに、尻尾がしゅんっと垂れ下がる。
「33、です」
 そんな尻尾と共に気持ちも項垂れてしまったかのように見える愛おしい妻に、カインが再度唇を開いた。
 なぜイェルクを契約の場に連れてきたのかといえば。
「誰がどう見てもヤバイってレベルで生きながら死んでたイェルが、徐々に生きてる感じになっていって、それが嬉しかった」
 その視線はとても優しい。
 長い年月を共に過ごしたカインだからこそ出来るものだろう。
 イェルクの尻尾がゆらりと揺れる。
(酷かったというのは前にも聞いたが……)
「最初、そいつが今のお前を望んでない事に気づけ、死ぬなってだけだったがな」
(出会った時からこんなに私を心配してくれていたのか)
 自然と浮かぶのは穏やかな笑み。
 そして、なによりもイェルクのことだけではなく、イェルクの大切な人。
(メグのことまで……メグの願いを叶えようと考えてくれたなど……)
 愛さない訳が、なかった。
 こんなにも自分を深く思ってくれる人を。
 知らず眦が赤く染まる。
「俺は地味に毒吐くのに、未だ俺の言う事やる事1つで真っ赤になる可愛いイェルがいい」
 リタにならなくていい。
 きっぱりと言い切ったカインに、イェルクが微笑む。
(そのあなたが、『私』でいいという)
 ……嬉しい。その言葉を口にしなくても十分にカインに伝わる笑み。
「はい、あなた」
 私もあなただからいい。
 そう言えば、カインの体がイェルクに近づく。
 距離が、零へ。
「って訳で」
 指先が揺れる尻尾をゆるりと撫で上げる。
 その感覚に、ぴくりと肩が震えて。
「今日も綺麗で可愛い嫁さん、祭楽しもうぜ?」
 黒色の角に口付れば、耳まで赤く染めたイェルクが、それでも逃げようとはせずにカインの腕の中に納まったまま。
(……角キスとか尻尾撫では恥ずかしいけど)
 それでも角と尻尾に感じる温もりは、イェルクにとっては何にも変えられない、とても大切なものだから。
 ここから逃げようとは思わないのだ。
 ただ、でも。
「お祭りを、楽しむんでしょう?」
 そう言って、カインの瞳を覗き込んだイェルクは、家で待ってる「家族」のためにもお祭りを楽しもうと夫と再び祭りの喧騒へと足を踏み出すのだった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 白金  )


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月25日
出発日 08月31日 00:00
予定納品日 09月10日

参加者

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