【祭祀】あなたは前に誰と来たの?(森静流 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 夜空に満開の花が咲き誇る。
 一瞬で散ってしまう色とりどりの花。
 大きな音、大きな光、次々と打ち上げられる花火。
 あなたは相方とともに、花降る丘で二人きり、ビニールシートを敷いて花火を見ている。
 暗い丘の上、花火がぱっと散ると、その瞬間だけ相方の顔が照らされて、あなたはその横顔にドキドキしてしまう。
「見事な花火だな」
 相方は連続で打ち上げられる花火を見ながらそう呟く。
 あなたも花火の方を見て、頷く。
「本当に素敵ね。いつまでもずっと、見ていたい……」
 あなたと二人きりで。
 そこまでは口に出して言えなくて、あなたは胸の奥がちょっとだけ痛む。
「来年、また見に来よう」
 相方の方はあなたの気持ちに気がついているのかいないのか、美しい花火と夜空を見上げながらそう言った。
「そうね、また来年」
 その約束が出来た事をあなたは嬉しく思っている。来年も、再来年も、二人きりで相方とこの花降る丘に来るのだ。そうして、花火を見て、ウィンクルムの愛をはぐくむ。
「花火って、まるで人間の人生みたい。ぱっと打ち上がって、輝くのはほんの一瞬。夜空の星の寿命に比べたら、人間の命なんて本当に打ち上げ花火」
「ふうん?」
「……だから、その一瞬の間だけでも、あなたとずっと一緒にいたいの。来年も、再来年も、ずっと……」
 あなたはいつになく正直な気持ちでそう言った。
「女の人ってそういう考え方するものなのかな。前にも、花火を見ていた時に、同じような事を言われて……」
 相方は不意に昔の話をし始めた。
「え?」
 あなたと相方が花降る丘に花火を見に来るのは初めての事である。
 つまり、昔に来た事はない。しかし、相方は、昔、ここで女性と花火を見た事がるような言い方。
「星の寿命に比べて人間なんて花火みたいなもんだってやっぱり言っていたんだけれど、俺はなんだかピンと来なくてさ」
 相方はへらへらと笑いながらその思い出話を始めた。
「ちょっと待って! 私以外の女性と、花降る丘で二人きりってどういう事!!」
 いつもはもう少し冷静に、心を広く持てるあなただったが、今日はどういう訳かそうはいかなかった。
「へ? どうしたの?」
 相方はきょとんとしている。
「私以外の女性と、こんなところで二人きりになるなんて酷い! 一体どういう事なのよ!」
「え、あの……女性っていうか……」
 突然、情緒不安定になったあなたに対して、相方はびっくりしてしどろもどろになっている。
「あなたはちゃんと私の方を向いているの? 私のことをなんだと思っているの?」
--ちゃんと愛してくれているの?
 恐らく、日頃から、そういう不安な気持ちがあったのだ。それが全て吐露されてしまう。それに対して、相方はまだちょっと状況が把握出来ないでいる様子。
「ど、どうしたんだよ……」
 だって、そんな気にするような人ではない。
 キレてしまっているあなたに、相方はすぐには言えない。
(その女性って、俺のばあちゃん……)

解説

【解説】
 花降る丘で花火大会を見るデート中です。
※プロローグ通りのパターンでなくてもOKです。
 碑文の影響で、ウィンクルムの二人は日頃感じている不安や不満を吐露しやすい状態になっています。逆に愛情に関する本音も普段より素直に言えます。
 デート中に、神人、もしくは精霊が、以前にも異性とここで花火を見たという発言をしてしまいました。
 それに対して、不安定になっている相方は一体どんな反応をするでしょうか。
 プロローグでは「一緒に来たのはおばあちゃん」となっていますが、両親や兄弟などでも構いません。実際に過去の異性であったり、あるいはただの友人であったりなど様々なパターンがあると思います。
 相方が華麗に誤解を解いて愛を深めるエピソードをお待ちします!(※誤解が誤解のままで終わっても構いません!)

※ビニールシートやペットボトルなどを購入したため、300Jrかかりました。

ゲームマスターより

異性に対する誤解は切ないものですよね!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

クロス(オルクス)

  「へぇこんな所、よく見付けたなぁ
良い所じゃん!

なぁ、オルク…
さっきの言葉、一体全体どういう意味だ?
何お前、俺と言う者がありながら、他の女と此処に来たって事?
しかも、何回も、だと!?
はんっ! どうだかな!
俺に隠れて来てんだろ!?
どうせ男みたいな俺より、可愛らしい女の方が好きなんだろ?!
なんだよあんなだけ俺だけが好きだとか言いやがってやっぱり他に女がいたんだなそうかだからかどうしたら俺の事見てくれる?斬ればいい?そしたらオルクは…(ハイライト無/精霊にキスされる
…っ!?

っ!
うぅっ俺の勘違いだなんてっ!
一生の不覚恥ずかしいっ!
…俺だって嫉妬位するし(小声
うん、そうだね、いつかそうなれたら良いな(微笑」


水田 茉莉花(八月一日 智)
  やっぱり綺麗よねーここから見る花火って
うん、前に来たことあるわよ
うん、同僚とだけど…どうしたの、ほづみさん?

男性もいたよ、女性がほとんどだったけ…なになになに?!
近い、近いですよほづみさんっ!

はぁ?彼氏じゃないですよ、ただの同僚、おじいちゃん先生だったし
それも違いますよ、保育園を立ち上げた園長先生です
その先生の紹介で、あの潰れちゃった会社内保育所に勤めたんですけどねー
そこから先はほづみさんも知ってるでしょ?

既に初めては1つやってますよほづみさん
『初めて同居した人』…じゃないですか
ああでも、初めてキスしたのは前に飼っていたわんこのコタローで
わんこですよ、いーぬ、ほづみさん犬に嫉妬してるんですか?


伊吹 円香(ジェイ)
  花火、キレイね。ジェイ
ここじゃありませんが家の皆と花火見に行った時、ジェイは用事でいなかったんですよね
だからジェイと来れて良かったです

…そういえば、前にここで花火を見た時にこんなことが
キレイになったな、って頭を撫でられたんです
さすがに恥ずかしいので止めてって言いましたが
その人は私の、
言葉を遮られキョトン
え? はい、そうですが
(うーん、言うタイミング逃したみたいです?)

…ジェイ
どなたと思っているのか分かりませんが、
その人、お父さんです(にこっ
…ありがとう、ジェイ。私、頑張ります
だから、よろしくお願いします


●伊吹 円香(ジェイ)編

 今日、伊吹円香は、精霊のジェイと花降る丘に花火を見に来ています。
 その日は紅月ノ神社の納涼花火大会だったのです。
 次々と打ち上げられる花火が、大きな音を轟かせながら、夜空に大輪の花を咲かせます。円香はうっとりとそれを見上げました。
「花火、キレイね。ジェイ」
「ええ。綺麗にございます」
 花火に見入っている円香の声に、ジェイは静かに頷きかけながら答えました。
 花火も美しいのですが、花火の輝きを反射する白磁の肌を持つ円香も綺麗でした。
 青みがかった黒の長髪、黒曜石の瞳、白い皮膚。礼儀正しい物腰から来るしっかりとした姿勢と凛とした表情。父親であるジェイの主がいとおしみ、可愛がるのも納得出来る美しさなのです。
 着ているものは、クールフルワンピースにシュガーカーテン、エクレアと、質素ですが品も質も良いものです。小物はチェックキャップ「初夏」、ひみつの花園【手袋】とやはりお嬢様らしいもの。それと、彼女らしいことには、花火大会にも二冊の本を持ってきていました。花火が始まるまでの間、薄暗がりでも本を読んでいたのです。知的で静かな表情でした。
 ジェイは、円香と花火を見比べながら、夏の終わりの癒やしを堪能していました。
 ジェイの方は、ディープブルーカットソーにディープ・フラウ、ミントウォーカーと、全体的に青っぽい服を着込み、夜の冷え込み防止にフィールレイクを羽織っていました。そうしていると、普通の青年のようにも見えますが、何しろ彼は隻眼です。
 いかにも色白のお嬢様の円香を守るように、褐色の肌に隻眼の男が付き添うのは、ちぐはぐなようでしっかりサマになっている光景なのでした。
「ここじゃありませんが家の皆と花火見に行った時、ジェイは用事でいなかったんですよね。だからジェイと来れて良かったです」
 円香は花火の方を見ながらも、すっとジェイを振り返って微笑みかけました。ジェイに気遣いを見せるのです。
「そう言っていただけて、嬉しく存じます。お嬢」
 微かに笑いながらジェイが言葉を返すのを聞いて、円香は花火の方へと視線を戻しました。
 花火は続けざまに打ち上げられて、美しい彩りを弾けさせています。夏の終わりを飾る華やかさと艶やかさでした。
 そこで、円香は不意に思い出話を始めました。
「……そういえば、前にここで花火を見た時にこんなことが。キレイになったな、って頭を撫でられたんです。さすがに恥ずかしいので止めてって言いましたが、その人は私の」
 円香は自然な調子で次々に話し始めました。
「……あの。以前にどなたかとこちらへ……?」
 思わず、ジェイは円香の言葉をさえぎってしまいました。
 躾のいいジェイが円香の話すのを止めるなどと滅多にないことなので、円香はきょとんとしてしまいます。
「異性の方でございましょうか」
 ジェイは円香の話の内容からそう推察しました。
「え? はい、そうですが」
 ジェイは不自然な沈黙に陥ってしまいます。
 円香が自分以外の異性と花降る丘に来たとして、おかしな事も一つもないはずなのですが、胸中が非常に複雑なのです。何しろ円香はもう子供ではありません。十六歳です。それぐらいになれば、好きな異性の一人もいるでしょうし、一緒にこの穴場デートスポットに来たところで、咎められる事ではないでしょう。円香の父ならば、全力で阻止しようとするかもしれませんが。ジェイはそんなつもりはありません。だって、ジェイにそんな権利はないのですから。
 それで沈黙してしまったのでした。
(うーん、言うタイミング逃したみたいです?)
 ジェイの反応を見て、円香は困ってしまいました。
 ですが、彼女はしっかりした性質ですので、自分から話し始めました。
「…ジェイ。どなたと思っているのか分かりませんが、その人、お父さんです」
 そう言ってから、にこっと笑います。
「…あ……」
 ジェイは微かな驚きの声を上げました。
 それから恐縮して頭を下げました。
「そう、でございましたか。失礼致しました」
 どういう訳か大きな安堵の心がジェイの中に生まれます。
 それが何故なのかは分かりませんが、相手が円香の父だと知ると、本当に安心してしまうのです。
(主はお嬢をよく気にかけておられる。……ただ、少しばかり過保護ではあるが)
 恩人である円香の父の事を思い出しながら、ジェイは心の中で強く念じます。
(……どうかこのジェイに、)
 その言葉は口には出さず、ジェイは心臓の上に手を当てて、円香の前に頭を下げます。
「お守りさせて下さいませ。お嬢」
 円香は静かな笑みを顔に浮かべて、ジェイの方に穏やかで澄んだ眼差を見せます。
「……ありがとう、ジェイ。私、頑張ります。だから、よろしくお願いします」
 円香は芯の強さの感じられる仕草でジェイに礼を言い、その後、二人は間近に座って一緒に花火を見ました。花火は本当に美しく、二人の心の中にはいつまでも咲いていました。

●クロス(オルクス)編

 今日は紅月ノ神社の納涼花火大会です。
 クロスは精霊のオルクスと花降る丘に訪れました。
「へぇこんな所、よく見付けたなぁ。良い所じゃん!」
 花降る丘は文字通り、夏の花々が咲き乱れている場所ですが、神社の並み居る屋台からは少し離れていて、知る人ぞ知る穴場のデートスポットなのでした。まるで花火を独り占め出来そうなぐらい、辺りには人がいなくて静かです。それなのに夕暮れ時に花々の匂いが漂う、ロマンチックないい場所なのです。
「だろぉ? オレにとって、思い出の場所だからな」
 オルクスは自慢げににっと笑ってそう答えました。
 クロスも喜んでくれるだろうと、念を入れて選んだ甲斐があると言うものです。
 しかし、クロスは不意に笑顔から表情を逆転させました。
「なぁ、オルク……さっきの言葉、一体全体どういう意味だ?」
 雰囲気を一変させてクロスはオルクスに詰め寄りました。
 オルクスは意味が分からなくてきょとんとします。
「何お前、俺と言う者がありながら、他の女と此処に来たって事?」
 そのものズバリをクロスは訊ねました。
「え? ちょ、クー!? キミは一体全体何を言ってるんだ?! そりゃ何回も来たことあるが、クーと付き合ってからは一回も来た事ないぞ?!」
「しかも、何回も、だと!? はんっ! どうだかな! 俺に隠れて来てんだろ!?」
 突然、クロスは怒鳴り始めました。
 碑文の影響で、普段は押し殺していた不安が、一気に表に噴出してしまったのです。クロスも自分で、どうしてと思うのですが、もう感情が止まりません。
「どうせ男みたいな俺より、可愛らしい女の方が好きなんだろ?! なんだよあんなだけ俺だけが好きだとか言いやがってやっぱり他に女がいたんだなそうかだからかどうしたら俺の事見てくれる? 斬ればいい? そしたらオルクは…」
 恐ろしい早口で、クロスは不安を吐露しています。嫉妬するから不安なのか、不安だから嫉妬してしまうのかは分かりません。次々と言葉を放ちながら益々、不安になっていき、気持ちが混乱していきます。支離滅裂な事を恐ろしい早口で口走りながら、いつしかクロスの目尻に涙が浮かびました。
 そのとき、言いつのるクロスをオルクスが抱き締めました。
 そして有無を言わさず、強引にキスをします。
 両目を大きく見開くクロス。そのまま彼女の動きは止まりました。
「何を言ってるんだ! 取り敢えず落ち着け!」
 キスを終えて、オルクスはわずかに息を切らしながらそう言いました。
「そのまま聞け」
 抱き締めたままです。
「確かに可愛らしい子は好きだが、キミだからだ! それにオレはありのままのクーが好きで愛おしくて可愛らしいと常々思い考えている! てか、此処に来た奴等はオレの家族の事だぞ。元カノでさえ此処には来てねぇよ、だからクーが初めてさ」
 そこでふっと笑ってオルクスはクロスを見つめました。
「っ!」
 クロスは背筋を引きつらせます。
 それから見る間に赤面して、オルクスの腕の中で縮こまってしまいました。
 オルクスの言葉はクロスの心にまで響きました。
--キミだからだ。
 彼ははっきりとそう言ったのです。
 オルクスの中ではクロスもまた可愛らしい子のうちに入るのでしょう。その上で、可愛らしい子だからではなくて、何よりも、誰よりも、クロスだからこそ--好きで、愛しているのだと、オルクスは言ったのでした。
 そして事実として、来ていたのは家族とで、元カノとでさえ此処に来た事はないと明言したのです。
 クロスはその言葉に安心しました。しかし、同時に、何も悪くないオルクスに散々気持ちをぶつけて喚き散らした事実が彼女を苛みます。
「うぅっ俺の勘違いだなんてっ! 一生の不覚恥ずかしいっ!」
 そうは言いますが、今更言葉を取り返す事も逃げる事も出来ません。
「しっかし、クーが嫉妬、なぁ……」
 オルクスはにやにや笑っています。
「嬉しいぜ……」
 そのオルクスの声を聞きながら、クロスは目を閉じて小声で答えました。
「……俺だって嫉妬位するし」
 それにオルクスは満足したようでした。
「将来はディオは勿論の事、新しい家族と一緒に来ような……」
 オルクスは微笑み、クロスを後ろから抱き締めて、耳元で囁きました。
「うん、そうだね、いつかそうなれたら良いな」
 クロスはそんなオルクスに微笑みを返しました。
 その頃、一発、二発--花火が上がり始めました。大空に咲く花火を見ながら、クロスとオルクスは遠い未来に胸を馳せます。ずっと先の未来に、二人は再びこの花降る丘に来る事があるのでしょう。そのときは、大切な人達と、新しい家族と、一緒で。その夢がかなうと約束してくれるかのように、花火は絶え間なく上がり続け、光の花吹雪を彼らに見せつけるのでした。
 花火が輝くのは一瞬でも、来年も、再来年も、花火大会はあるのです。だから、いつか、きっと。

●水田 茉莉花(八月一日 智)編

 その日は紅月ノ神社納涼花火大会でした。
 水田茉莉花は精霊の八月一日智と一緒に花降る丘に来て、そこから花火を見る事にしました。花降る丘は知る人ぞ知る穴場のデートスポットです。
 その名の通り美しい花が咲き乱れる丘で、花火を見るには最適ですが、あまり人に知られていず、まるで花火を独り占めするかのように二人きりで見る事も出来るのでした。
 せっかくの花火大会ですから、茉莉花は浴衣を着ました。
 ゆったり浴衣(白)に、雪駄「千鳥」を合わせています。それに稲荷狐のお面。小物はハートキューティー・ネックレス、イヤリング「サンシャイン」、ライトブルー・ブレスレット、と夏を感じさせるものばかりです。
 智の方も、ゆったり浴衣(紺)に雪駄「市松」。【ネックレス】ディープアビス、イヤリング「ブルーオーシャン」で夏の季節感を出しています。
 おそろいの浴衣で二人なりにムード作りを出しているのかもしれません。
「やっぱり綺麗よねーここから見る花火って」
 茉莉花は次々と打ち上げられる花火の光に顔を照らされながらそう言いました。居心地のいい場所で美しい花火を見て、とてもいい笑顔です。
「『やっぱり』? 何だよやっぱりって、前にここ来たことあんのか?」
 それを聞きとがめた智が茉莉花にそう訊ねました。
「うん、前に来たことあるわよ」
 茉莉花はあっさり肯定しました。何も隠すような事ではないからです。
 それを聞いて、智は気を落ち着かせるために焼きそばの一気食いを始めました。
「……野郎と、なのか?」
 じとり、と微妙な目つきになりながら智は茉莉花に肝心な事を訊ねます。
「うん、同僚とだけど…どうしたの、ほづみさん? 男性もいたよ、女性がほとんどだったけ…なになになに?! 近い、近いですよほづみさんっ!」
「野郎と来てンじゃねーか、何だよ、前彼か?」
 智は茉莉花の顎の下まで身を乗り出して聞きます。「女性が…」のくだりは聞いていません。
「はぁ? 彼氏じゃないですよ、ただの同僚、おじいちゃん先生だったし」
 茉莉花は驚き、呆れながらも訂正します。
「おじいちゃん先生…って、ナイスミドルだったりするのか! それともみずたまりが教え子だったりするわけか! 禁断のホニャララとかそういう」
 口から紅ショウガをマシンガンのように放ちながら訳の分からない事を言う智。茉莉花と話が全然すれ違っています。
「それも違いますよ、保育園を立ち上げた園長先生です」
「……え、違うのか?」
 智は目をぱちくりさせました。
 茉莉花は力強く頷きます。
「その先生の紹介で、あの潰れちゃった会社内保育所に勤めたんですけどねー。そこから先はほづみさんも知ってるでしょ?」
 茉莉花は智に比べればずっと冷静な調子でそう言いました。
「…お、おう、なんにせよ前彼とかじゃなくて良かった」
 智はやや赤面しながらそう答えました。
 どうやら、碑文の影響で、智は、普段は気づいていない自分の不安を茉莉花にぶつけてしまったようです。
 ですが、茉莉花は、竹を割ったような態度でそれを受け止め、彼の誤解を解いてくれたのでした。
「出来ればおれ、みずたま……まりかの初めてを一杯欲しいから、な!」
 やはり碑文の影響か、智は、普段だったら言わないような事も茉莉花の前で言ってしまうのでした。
 普段はみずたまり、みずたまり、と呼んでいるのに、今は「茉莉花」とちゃんとした女の子らしい名前で呼びかけようともしています。
「既に初めては1つやってますよほづみさん。『初めて同居した人』…じゃないですか」
 茉莉花はやはり呆れたように、でも嬉しそうに、そう言うのでした。
「お、おう……」
 赤面して、照れてしまう智。そう言ってもらえただけでも彼にとっては幸せです。ですが、もっと大きな野望を持っています。それについては、碑文の影響があっても、なかなか言い出すことが出来ないのでした。
(出来れば初めてのちゅーもしたいんだが……)
 何しろ穴場のデートスポットに二人きりなのですから、そんな気持ちも湧いてくるのです。今日のために、花降る丘をチェックして、浴衣も用意して、それは茉莉花の協力もあっての事だけれど、智だってずっと頑張って来たんですから。
「ああでも、初めてキスしたのは前に飼っていたわんこのコタローで」
 そこで茉莉花はふと思い出した事を話し始めました。
「…ってキス?! おまっ、キスしたことあるのかっ!」
 智は茉莉花の発言の内容をよく考えてみもせず、キスという事にばかり反応します。
「わんこですよ、いーぬ、ほづみさん犬に嫉妬してるんですか?」
 茉莉花が慌てて智をなだめようとしますが、智は聞き入れません。
「ガーッ、許せん!」
 どうやら、本当にわんこのコタローに嫉妬している様子です。碑文の影響で不安定になっているのか、それとも、本当に茉莉花の事になると見境がなくなるのか……。
 どちらにせよ、ロマンチックとは言いがたいデートになりましたが、それでも二人の仲むつまじさには変わりがないのでした。
 智は普段は見せない不安や嫉妬を表しましたが、茉莉花は難なくそれを受け止め、受け入れてくれているのです。
 それもウィンクルムの愛のなせる技、二人の仲の良さの証拠なのでしょう。



依頼結果:大成功
MVP
名前:クロス
呼び名:クー
  名前:オルクス
呼び名:オルク、ルク

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月18日
出発日 08月24日 00:00
予定納品日 09月03日

参加者

会議室


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