お姉さん、見えてます!!(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 暑い暑い暑い真夏。
 庭の満開のひまわりも、太陽の方を向きながら、なんだかぐったりしていそう。
 あなたは白いサマーワンピースに着替えて、麦わら帽子をかぶると、サンダルでゆっくり庭に出て行きます。手にはバケツ。
 あまりの暑さに、庭の向こうに面した道を歩く人達も日陰を探しながら歩いている。手にはお茶のペットボトル。
 あなたはまず、 バケツで道路に打ち水をします。ざっと水を撒いたらじゅわっとアスファルトが音を立てて、たちまち道路にぬるい水が広がってアスファルトが黒くなっていきます。少しは涼しくなったけれど、それでもまだ、暑い。
 それからあなたは、庭の方に回って行って、水道からホースを引いて、庭の植物にも水をかけていきます。水のシャワーが光をキラキラ反射してとても綺麗です。水が植物にかかると、葉っぱや根がぐいぐい水を吸い込んでいくのが何となく感じられます。
 涼しくなった事もあって、あなたは鼻歌気分。
「おーい! 聞こえないのか!」
 そのとき、庭に通じる駐車場の方からいきなり声が聞こえました。
「え!? 何、キャっ……!!」
 びっくりしたあなたはシャワーのヘッドをひねってしまいました。
 シャワーの水がザバーっとあなたの方にかかります。
「ひゃあああああああ」
「うわ!? おいっ、何やってんだお前っ!?!?」
 頭から水をかぶってびしょ濡れになるあなた。慌てて駐車場の方から駆け寄ってきた精霊が、シャワーを自分で持って、ヘッドを植物の方へ向けてくれました。
「な、何なのよ、もう~……」
 前触れもなく突然、現れた精霊に、恨みがましい視線を送るあなた。ところが、精霊の方は真っ赤になって硬直しています。
 そのとき、あなたが着ていたのは白い薄手のサマーワンピース。
 ……透けて見えちゃっています。
 精霊、至近距離から見ちゃってます。
「ぴゃあああああああああああああああああ」

 さあ、あなたはどんな行動を取る? 精霊はなんと言うでしょうか!?

解説

【解説】
 薄着の時に水をかぶったら、精霊に近くから見られちゃった! という事件です。
 プランは何も本文通りでなくてもかまいません。今の季節ならば打ち水や庭に水やりが一番ありうると思ったのですが、例えばプールに普段着で落っこちてしまったとか、何故か風呂場で普段着で入ってしまったなどでもOKです。何なら、精霊も一緒に水をかぶってしまっても構いません。
●下着がどの程度透けているか
●あなたはどんな反応をしたか
●精霊はどんな反応をしたか
●その後、二人の仲は深まったか(精霊が意識するようになった、逆に喧嘩してしまったなどなど……)
 この辺りを中心にプランを書いてください。

なんだかんだで300Jr消えました。

ゲームマスターより

暑い夏にとびきり赤面しそうなエピソードを待ってます!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)

  生活拠点にしている宿屋。
いつもお世話になっている宿屋のおばさんのお手伝いがしたくて、廊下の雑巾がけをしようと水の入ったバケツを運んでいたら うっかり転んで頭から水を被っちゃった・・・!
うわああ、どうしよう、廊下が水浸しに・・・!

(騒ぎに駆けつけた精霊に抱きかかえられ)エミリオ!?
ど、どこ行くの!?
水拭かなきゃ。
(おばさんの申し出に)ごめんなさい、後でちゃんと掃除しにいきますね。

(精霊の部屋、シャワー室に放り込まれ)
ご、ごめんね、私ドジばかりで(しゅん)
え?怒っている理由が違う?
下着がすけ・・・うわあああ!?
さっきすれ違った男の人にも見られたよね、は、恥ずかしい(涙目)
エミリオ、本当にごめんね。


ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  二人で生活用品を買いに出かけていたときに、通り雨(しかも結構激しい)に降られて急いで帰ってきました。玄関で一休み中です。

品物はビニール袋である程度は守られましたが
流石に私達は濡れ鼠ですね
白いワンピース着てきた事を後悔してます
裾に泥水が跳ねてないか心配で心配で
裾の水分だけでも払おうと屈んだら上から何か被せられました。
ディエゴさんが着ていたワイシャツです
彼のも濡れていたのですが絞られたのか私のよりは水気はありません。
そこで待っていろと言われて大人しく待っていると
大きめのタオルを持ってきてくれました。

当然上半身は裸でした
普段人前で傷だらけの体を見られるのが嫌なのに
私のためにしてくれた事に感動です。


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  今日も暑いなぁと、水道からホースを引き、祖父母の弁当屋(休業日)の軒先で打ち水
手が滑って手元から躍ったホースでびしょ濡れに
やっちゃった…と思ってたら、は、羽純くんにも被害が!?
ご、ごごごごめんね!大丈夫!?
慌てて水を止め羽純くんの様子を窺ったら
水も滴る良い男、なんていう言葉が頭の中を乱舞
白いシャツの下、逞しい身体のラインがしっかり見えて…目のやり場が…!
でも見ていたいなんて…(大混乱)

腕を引かれ、店の中へ
羽純くん?(もしかして怒ってる?)
へ?下着…ひゃ、ひゃあああ!?(恥ずかしい…!)
羽純くんの言葉が嬉しくて、有難うと微笑み
私も羽純くんの姿、他の人に見られたくない

改めて羽純くんへの独占欲を自覚


エネルネット(縁)
  自宅がある森の中で川に足を浸けて涼んでいた
…涼しい
小鳥のさえずりに耳を澄ませぼんやり
急に自分を呼ぶ声がし、浸けていた足を上げ、立ち上がる
…が足を滑らせ、そのまま川に落ちてしまう
っ…びっくりした…
精霊に手を貸してもらいつつ、上がる

…? なに?
精霊の様子がおかしいことに気づいた
別の方向を見続けて答えてくれないのでじーっと見つめる
……下?
ようやく白いワンピースが透けて下着がうっすら見えていることに気づいた
…縁さん。 見たの?
少し困ったように眉を下げる
…くしゅっ(くしゃみ
ああ。ちょっと、着替えよう…


伊吹 円香(ジェイ)
  ひゃあっ!?
シャワーヘッドから飛び出した水をもろに被ってしまう
あ。ううん、声かけず後ろに立った私も悪いから。ごめんなさい
涼しくなりましたから気にしないでください

え? なにがでしょうか
……。あっ!
今の状況をようやく理解。ワンピースが透けて下着がうっすらと

あ…そ、そうですね。はい…
着替えてきますね
…あ、ねえ。ジェイ
あまり、気にしないでください。警戒心が強いのはジェイの良いところですよ
だって、私が九つの時から一緒なんですよ? あなたの性格くらい、お見通しよ
そうなんです(にこっ
びしょ濡れだというのにも関わらず鼻歌混じりに家に入った
ジェイとの関係は特に気まずくなくむしろ、より絆か深まったように思う


●エネルネット(縁)編

 その森にはエネルネットと精霊の縁が暮らしています。
 行き倒れの縁を助けてくれたのはエネルネットと彼女の「おばあさん」。その後、成り行きで神人と精霊として契約し、三人で森の自然の息吹を感じながら生活しています。
 その日、エネルネットは自分の家のある森の中、小川に足を浸して涼んでいました。なんといっても暑い日々が続いていましたから。そのときエネルネットが着ていたのは通気性のよい白の薄地のサマーワンピースです。通り抜ける森の風が彼女の鴇色の髪の毛と白い布の上を吹きすぎていきます。
「……涼しい」
 エネルネットは夏の木漏れ日の眩しさをまぶたに感じながら、小鳥のさえずりに耳を澄ましています。薄く目を見開くと、陽光に金糸雀色の瞳がきらめくのです。
(……いた)
 そのとき、エネルネットを探していた縁が、ようやく彼女を見つけました。縁の白い髪は森の緑の中によく映えます。しかし、エネルネットは反対の方を見ていて気がつきませんでした。
「エネルー!」
 縁は彼女の背後、少し遠くから声をかけました。
 急に自分の名を呼ばれ、エネルネットは声の主を探しながら立ち上がります。
 ……が。そのまま、足を滑らせて小川の上に落ちてしまいました。
「……!?」
 縁は仰天して、慌ててエネルネットのそばに駆け寄ります。
「何してるんだ。手、出せ」
 縁は岸辺の方からエネルネットに手を差し出します。
「っ……びっくりした……」
 目を大きく見開いて放心しながら、エネルネットは縁の手をつかんで、小川の上から岸辺に上がります。
「……こっちが倍驚いた」
 縁はため息をつきながらエネルネットを強い力で引き上げます。
 エネルネットは縁の真ん前に立ちました。
 縁は思わず目をそらします。
 そのとき、エネルネットが着ていたものは白の薄地のワンピース。小川に落ちた事により、ワンピースは濡れて透けて、エネルネットの肌も下着も見えてしまっています。
「……? なに?」
 しかしエネルネットは異変に気がついていません。
 縁の様子がなんだかおかしい事には気がつきました。ずっと森の奥の方を見て、エネルネットの方を向いてくれないのです。どうしたんだろうと思って、エネルネットはじーっと縁の方を見続けます。
「……下」
 やがて、縁はぼそっとそう言いました。
「……下?」
 そう言われてエネルネットは俯きます。
 するとようやく、自分が透け透けのワンピースを着たあられもない姿であることが分かりました。
「……縁さん。見たの?」
 エネルネットは精霊に対しそう訊ねました。
「……いや、それは」
 縁は曖昧に言葉を濁します。縁だって、なんと言っていいのか分かりません。エネルネットは少し困ったように眉を下げました。
 そこでエネルネットはくしゅっとくしゃみをしてしまいました。
 真夏とはいえ、冷たい小川に落ちてずぶ濡れになったのですから。
 縁はそこで我に返りました。
「そ、それより。着替えてこい。風邪引く」
 慌ててエネルネットの方を見ないようにしながらも、そう促します。
「ああ。ちょっと、着替えよう……」
 エネルネットはむずむずする鼻を押さえながら、自分の家の方へ向かい歩き始めました。照れて気まずくなっている精霊に対して、エネルネットは気にしているのかいないのか、よく分からない反応です。全く何も意識していないという事はないのでしょうけれど……。
 後日、エネルネットの方はこの件について何一つ触れませんでしたが、縁の方はどう接したらいいのか分からない日が続き、二人は少しだけ気まずくなったそうです。

●伊吹 円香(ジェイ)編

 それはとても暑い日でした。
 伊吹円香の精霊のジェイは、庭のくたびれいている花達にシャワーで水やりをしていました。
「……誰だっ」
 不意に、背後に気配を感じて、ジェイは振り返りました。シャワーの水を止めるのは失念していました。
「ひゃあっ」
 ジェイに話しかけようと近づいて行った円香は、シャワーヘッドから飛び出た水をもろに被ってしまいます。
「お、お嬢っ!?」
 ジェイは慌てて水を止めました。
 しかしそのときは、円香は青みがかった長髪も身につけていたワンピースもぐっしょりとずぶ濡れの状態でした。
「も、申し訳ございません! な、なんてことを……!」
 ジェイはわたわたと慌てますが、こういう時に女の子にどうすればいいのかが分かりません。
「あ。ううん、声かけず後ろに立った私も悪いから。ごめんなさい。涼しくなりましたから気にしないでください」
 円香の方はまだしも落ち着いた態度で微笑んで言うのでした。
「くっ……お嬢に謝らせてしまうなんて護衛失格……!」
 ジェイは一人で悔しがっています。
「え? なにがでしょうか?」
 円香は水を滴らせながら鷹揚な態度です。
「……」
 そのとき、ジェイはあることに気がつきました。
 円香が着ていたのは白い薄地の夏物ワンピース。それが水を被ったものですから、すっかり透けて中が見えているのです。ワンピースの中の、下着がうっすら見えているのです。
 やがて、ジェイの視線を受けているうちに、円香も自分の格好を見て、今の状況を理解しました。
「お……お嬢。この天候だからとはいえ、風邪を引いてしまいます。今すぐ着替えて下さい」
 やや上ずった声でジェイがそう言います。
「あ……そ、そうですね。はい……着替えてきますね」
 そこは素直に円香も従います。
 ジェイは極力、怪しまれないように、普段通りの態度を心がけます。
「……あ、ねえ。ジェイ」
 そのとき、不意に、円香がジェイを振り返りました。
「どうかされたのですか?」
 ジェイは内心慌てながらも、普段通りを意識しながら返事をします。
「あまり、気にしないでください」
「えっ」
「警戒心が強いのはジェイの良いところですよ」
 ジェイは内心びくびくしていますが、円香の方が本当に、いつもと少しも変わらない態度でした。まだ十代の女の子なのに、大人の余裕すら感じさせています。
「……お嬢。貴女は私のことよくご存知なのですね……」
 驚いてジェイが感嘆の声を漏らすと、円香の方はおかしそうに笑いました。
「だって、私が九つの時から一緒なんですよ? あなたの性格くらい、お見通しよ」
 そうは言っても、円香はジェイの過去を知っている訳ではありません。ジェイも教えようとは思いません。それなのに、円香はジェイの本質をよくとらえているようなのです。
 円香にとっては、ジェイは気の置けない兄のような存在なのでしょう。勿論、ジェイにとっても、円香と彼女の父はかけがえのない存在です。
「そう、ですか……」
「そうなんです」
 にこっと円香は笑います。その笑顔に、いつだってジェイはかなわないのでした。
 円香はびしょ濡れだというのに鼻歌交じりに家の中に入っていきました。
 ジェイはそれを見送ります。円香の背中が見えなくなってから、ジェイは呟きました。
「……貴女は強い。だからこそ主は精霊との契約をお許しになったのでしょう」
 強いと言う事は、何も、暴力や腕力をさす訳ではないのです。職業柄、ジェイはそのことを知っていました。円香の持つ平常心や、芯の揺るぎない部分、それらが本当の強さと呼ぶに相応しいのです。ジェイは、自分がそれらを持っているかどうか、少しばかり考え込みました。
 円香とジェイの関係は、気まずくなるような事はなく、むしろ絆が深まっていたそうです。

●ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)編

 それはとても暑い夏の日の事でした。
 場所は、ミサ・フルールと精霊のエミリオ・シュトルツが生活拠点にしている宿屋での出来事です。あんまり暑いので、ミサはその日は白の薄地のサマーワンピースに着替えていました。ワンピースは薄くて通気性がよくて、涼しかったのです。
 そのときミサは、バケツにたっぷり水を汲んで廊下を歩いていました。お世話になっている宿屋のおばさんのお手伝いをしたかったのです。今日は廊下の雑巾がけをするつもりでした。
「キャ!」
 しかし、スリッパを滑らせて、ミサはうっかり廊下で派手に転んでしまいました。
 バケツの水を頭から被ってしまいます。
(うわああ、どうしよう、廊下が水浸しに……!)
 ミサは、みるみる廊下に広がっていく水に対して思わず悲鳴を立ててしまします。その声を聞きつけて宿屋のおばさんがやってきて廊下の惨状にびっくりします。
 その頃、エミリオは自分の部屋でデスクワークをしていましたが、廊下がやけに騒がしい事に気がつきました。
「ミサ! 一体、何があった……」
 エミリオの目に飛び込んできたのは、白の薄地のワンピースが濡れて下着が透けている状態のミサでした。しかもミサは透けている事に気がついていません。
 彼女は慌てて雑巾で水の被害を食い止めようとしています。
 エミリオの他にも宿屋の男達が騒ぎを聞きつけ、ドアから顔を出している事に気づいていません。
 エミリオは宿屋の男達をギロリと睨み付けます。男達は慌てて首を引っ込めていきました。
 それからエミリオはミサに飛びついていきました。
「エミリオ!?」
 ミサは突然の精霊の登場に驚きます。エミリオは何も言わずにミサを抱え上げようとします。
「ど、どこ行くの!? 水拭かなきゃ」
 慌てて抵抗するミサ。そんな場合じゃないというのに。
 しかしその場にいた宿屋のおばさんは『早く彼女を部屋に連れていっておあげ』と言っています。
 エミリオはそれに礼を言って、ミサを抱えて自分の部屋に入りました。そしてたちまちシャワールームにミサを放り込みます。
「ご、ごめんね、私ドジばかりで」
 ミサはしゅんとしています。エミリオが怒ったのは廊下を水びだしにしたせいだと思い込んでいます。
「ミサがそそっかしいのは今に始まったことじゃないでしょ」
 エミリオは冷たい声音でそう言います。かなり怒っているのです。
(え? 怒っている理由が違う?)
 ミサはちょっと驚きます。
「今日の下着はピンクなんだ、可愛いね」
 確実に怒気を含む声でエミリオはそう言い放ちます。
 エミリオの視線の先にはミサの胸。ミサはそれで自分の胸元をのぞき込みました。見えています。
「下着がすけ……うわあああ!?」
 そのときになってミサは自分の格好に気がつきました。本当にワンピースが濡れてピンクの下着が透けているのです。
「俺が怒っている理由分かった?」
 エミリオは目の前で慌てふためいているミサに半ば呆れながらそう言いました。
「さっきすれ違った男の人にも見られたよね、は、恥ずかしい」
 ミサはもう涙目です。
「もういいよ、でもこれ以上俺を嫉妬させないで」
 いつまでも恥ずかしがっているミサを見て、エミリオはシャワーの蛇口をひねり、自分から水を浴びてずぶ濡れになりました。
「ほら、これでもう恥ずかしくないでしょ」
 エミリオは微笑みます。ようやく彼は、笑ってくれたのでした。
「エミリオ、本当にごめんね」
 ミサはそこまでしてくれるエミリオに、申し訳ないやら恥ずかしいやら嬉しいやら……。彼と一緒にシャワーを浴びながら、彼の胸に頭を押しつけたのでした。結局、自分はエミリオに守られて、そして彼が大好きなのだなあ、と思いながら。

●桜倉 歌菜(月成 羽純)編

 それはとても暑い日の出来事でした。
 桜倉歌菜は、あんまり暑いので、その日は白の薄地のサマーワンピースに着替えていました。
 精霊の月成羽純の方は、歌菜の働く弁当屋が休業日である事を知っていました。ですが、歌菜は店内の掃除をすると言っていたので、アイスキャンディの差し入れを持って会いに行く事にしました。
 何しろ、歌菜は掃除が苦手。疲れてしまっているところに甘いものを持って行って慰めてやろうと思ったのです。歌菜の喜ぶ顔を思い浮かべながら。
(今日も暑いなぁ)
 そのとき歌菜は水道からホースを引いて、祖父母の弁当屋の軒先に打ち水をしています。休業日ですので、お客は来ていませんが、こういうことは毎日やるものです。
 あまりに暑いので軽く目眩がしてきました。
 目をこすりながら、歌菜は、ホースを握る手に力をこめて、何気なく振り回します。そのとき、手元が滑って歌菜はホースの水をブシュー! と吹き上げてしまいました。
 歌菜はたちまちびしょ濡れに。
「や、やっちゃった……」
 そう呟いて、目を見開くと、そこにはずぶ濡れの羽純がいました。
(は、羽純くんにも被害が!?)
 歌菜はたちまちパニックです。
 歌菜の姿を見かけて声をかけようとした羽純でしたが、思い切り水を被ってしまいました。
「相変わらず、ドジだな……歌菜」
 濡れた髪の毛をかきあげながら声をかける羽純。惚れた弱みで、これはこれで歌菜らしい、と思ってしまうのです。しかし羽純は、歌菜の姿を見て思考が停止してしまいます。
「ご、ごごごごめんね! 大丈夫!?」
 歌菜は羽純に駆け寄り、そこで絶句。
 水も滴る良い男、などという言葉が頭の中を乱舞。
(白いシャツの下、逞しい身体のラインがしっかり見えて……目、目のやり場が……! で、でも見ていたいなんて……!?)
 見てられない、でも見てしまう。
 もう歌菜は大混乱です。
 一方、羽純は羽純で歌菜の事を食い入るように見ています。というよりも、見てしまいます。
 歌菜の方は、白いワンピースの中が見えています。上どころか下まで下着の色も形もはっきりと分かる透け具合なのです。
 何しろ相手は惚れた女で婚約者。当然男の本能として見てしまいます。
(駄目だと思うが、視線が外せない。当たり前だ、他でもない歌菜なんだから……)
 そこで羽純ははっとします。ここは外です。
 誰が通りかかるか分かりません。誰に歌菜のこんな姿が見られてしまうか分からないのです。
 羽純は無言で歌菜の手を引いて、大急ぎで店の中に入ります。歌菜は訳も分からずついていきます。
「羽純くん?」
 歌菜は恐る恐る彼に声をかけます。
(もしかして、怒ってる……?)
 彼の表情からそう思ったのです。出会い頭にいきなり水をぶっかけてしまったのは自分なのですから、怒られても仕方ないのですが。
 しかし、羽純が言ったのは全く別の事でした。
「下着……透けてるぞ」
 そこでようやく羽純は目をそらしながら言いました。歌菜はきょとんとしながら自分の格好を見直しました。
「へ? 下着……ひゃ、ひゃあああ!?」
 恥ずかしい、と悲鳴を上げて、歌菜は自分の体を両腕で押さえました。
「他の奴にそんな姿、見せる訳にはいかない。通りがかったのが俺で良かった。もっと危機感を持て」
 羽純はため息をつきながら歌菜を抱き締めました。
 その言葉に、歌菜は、「ありがとう」と息をつきます。
「うん。私も羽純くんの姿、他の人に見られたくない」
 歌菜は改めて、羽純への独占欲を自覚します。
 それも全ては愛故です。独占欲や嫉妬は、愛の一面。裏返し。それだけ羽純は歌菜が好きなのだし、歌菜も羽純を愛しているのです。ちょっとしたハプニングで愛情を確認しあう夏の日の一ページでした。

●ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)編

 それは真夏のある日の出来事でした。
 その日は朝からとても暑かったので、ハロルドは白の薄地のサマーワンピースに着替えていました。
 それから、ハロルドは精霊のディエゴ・ルナ・クィンテロと二人で生活用品の買い出しに出かけました。そして帰りがけに激しい通り雨に降られてしまいました。二人とも大急ぎで帰ってきましたが、帰宅した時は随分濡れてしまいました。
 ようやく家についた二人は玄関で一休みです。
(このままだと雨の臭いがつく。すぐに着替えて洗濯だな……)
 ディエゴはハロルドにそう声をかけようとして息を飲みました。
 ハロルドのサマーワンピースは濡れてぴったり肌にくっついて透けているのです。何しろぴったりくっついていますから、肌色、下着の色、丸見えです。
 ハロルドはそれに気がついているのかいないのか、しきりに裾を見ています。
(品物はビニール袋である程度は守られましたが、流石に私達は濡れ鼠ですね。白いワンピース着てきた事を後悔してます。裾に泥水が跳ねてないか心配で心配で)
 ものが白いワンピースなので、透けてしまっていることよりも、泥ハネの方が気になっているのです。
(冷静になれ俺、素数を数えて落ち着け俺素数は1と自分の数でしか割れない数字下着透けてるぞとかデリカシーの無い事を言えば当然いい顔はされないだろうならばこの状況でとれる最適解の行動は俺のシャツを被せて急いでタオルを持ってきてやる事だ)
 0.2秒でディエゴはそう決断しました。
 頭の中の事なのですが、テンパっていて、頭の中でも息継ぎが出来ていません。
 その頃、ハロルドは、裾の部分だけでも水分を払おうと屈みました。
 その途端、ハロルドの肩にふわりとシャツがかけられました。
 ディエゴの着ていたYシャツです。彼の衣服も濡れていたのですが、その場で固く絞ったようでした。ハロルドの服よりは水気がありません。
(なにがなんでも絶対に人前で肌を出さない俺だったが、相手はその事をすでに知っているエクレールだ。シャツも充分に水を吸っているが絞ればましになる。早足でタオルを取りに戻ろう。洗濯機と風呂の準備も忘れない。早く洗濯しないとな)
 そういう考えで、ディエゴはシャツを脱いで肌を露わにしたのです。彼は元、軍人でした。利権にまみれた軍に嫌気が差していたのに、自らも汚職に手を染め、庇ってくれた恋人と上官を亡くすという壮絶な過去を持っています。傷だらけの体は、その象徴なのかもしれません。ハロルドとの生活に、今はそれほど過去の陰りはないのですが、それでも肌を見せなかったのは、彼の過去の傷が関係あるのかもしれませんでした。
「そこで待っていろ」
 そう言い捨ててディエゴは急ぎながら家の中に消えました。
「……はい」
 ハロルドは言葉少なにディエゴの傷だらけの背中を見送りました。
 大人しく待っていると、ディエゴは大きなタオルを持ってきてハロルドの髪の毛にふわりとかけたのでした。
 ハロルドはディエゴが傷だらけの体を人に見られるのを何より嫌がるのを知っています。その彼が、自分から衣服を脱いで、肌をみせ、自分にかけてくれた事に酷く感動を覚えました。
(……私のためにしてくれた事に感動です)
 ディエゴはいつもと何も変わらない態度でハロルドから荷物を受け取り、また家の中に入っていきます。
 ぎくしゃくしたところはどこにもありません。
 互いに過去に傷を抱えた二人でしたが、二人の心が重なるごとに、次第に傷は癒えて、少しずつ少しずつ、傷跡をさらけだせるようになっていくのかもしれません。その傷跡もまた、愛情が重なるごとに消えて行き、なんら普通と変わりない、新しい皮膚になっていくのかもしれませんでした。



依頼結果:大成功
MVP
名前:伊吹 円香
呼び名:お嬢
  名前:ジェイ
呼び名:ジェイ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月06日
出発日 08月13日 00:00
予定納品日 08月23日

参加者

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