プロローグ
●
それはあまりにもこの季節にありふれていて、それに対して思い入れがある人がいることを忘れてしまいそうな花だった。
青く、夕方には萎んでしまうツユクサと呼ばれる花。
昔はツキクサとも、また蛍草、帽子花とも呼ばれてもいる。
そして、また一つ別名があった。
「今年も青花は咲いたかしらねぇ……」
なるほど、青い花だから青花。
安直にも思えるが、でも青花という名前がこれほど相応しい花もないだろう。
今はもうあまり見えない瞳を細め、老女がゆっくりと丘の上へとやってきた。
家からそんなに遠くないこの場所は、老女にとってはいい散歩場所なのだ。
「……あら?」
例え見えにくくなったとしてもその異変は老女にはとてもよく分かった。
自分が小さい頃からこの場所に通い、結婚し、伴侶には先立たれ子供達が独立した今になってもくる場所だ。
いつもなら一面に咲いている。といっても過言ではないその青花達が無残にも踏み散らかされている。
折れた青花が風に揺られたてる音は、まるで痛いよ、痛いよ。
とでも言っているようで。
この付近の人々は、昔からこの青花の世話になってきたために、こんなひどいことをするような人はいないはずだ。
「ここのところは、食べる人も少なくなったと思うけれど……」
摘んで行ったのだとしても酷い人もいるものだ。
老女がふぅっと溜息つく。
その時、老女は気が付いていなかった。
その地面に明らかに何かの獣の足跡がついていることを。
そして。
あと、もう少しでその足跡の持ち主が丘の上へと戻ってくることを。
●
その時、貴方がたは依頼からの帰り道だった。
ここの所あちらこちらで異様な足跡と爪痕の発見が相次ぎ、ひょっとしたらオーガかデミ・オーガの仕業かもしれないと調査依頼がきていたのだ。
しかし、今回は「そのもの」を見つけることが出来ず、再度調査することに決まりまずは今日の分を報告しようと本部へと向かっていたのだが。
「……?」
それはウィンクルムの本能だったのだろうか。
何かが見えた気がして、そちらへと足を進める。
あぁ、そういえばそこはツユクサが生い茂る丘があるといっていた場所だった。
そう思った時……貴方がたの視線の先に、デミ・オーガの姿が映った。
あいつだ!
調査内容とその後ろ姿が完全に一致し、駆け出しながら皆が戦闘準備を整えていく。
そのとき、誰が言ったのだろう。
『午後からいつもあの丘の上で、わたしはのんびりした時間を過ごすのよ』
そういった老女が居なかったか、との言葉に皆に緊張が走る。
夕方には降りてくるとのだったが、ひょっとしたら。
まだ、時間は夕方にはなっていない。
迷っている時間なぞないが、一体どうすればいいのか。
ウィンクルム達は視線を交し合う……!
●丘の上にて
老女はゆっくりと足を進めていた。
一体どのくらいの範囲でこんなに無残なことになっているのか。
そんなに大きくないこの丘の上ならば、自分の足でじっくりと見て回っても15分と掛からない。
さて、時計回りにでも探索しようかしら。
なんだか子供の頃に戻ったかのようにわくわくしながら、歩いてくのだった。
解説
●丘の上まで
丘の上までは人が通れる一本道(それしかありません)と、あとは草花が生い茂る道なき道があります。
一本道は大人が三人通れる幅の広さ、あとは雑草が生い茂っているためにとても通りにくいです。
●デミ・オーガ
狼のデミ・オーガ 1体
噛みついたり、体当たりをしてきたりします。
●老女
耳が少々遠く目が見え辛いですが、足腰はしっかりしています。
とはいえ、老女らしい動きなので幾ら急いでいても緩慢な動きになります。
皆様の指示に従いますし、明らかに異様なのは理解できるため、デミ・オーガから離れるよう自発的に行動します。
●丘
そんなに丘の上は広くないですが、一面が青花なので足元が少々戦いにくいかもしれません。
遮るものはなにもありません。
人が通りやすい場所が一本道なだけで、どこからでも上り下りできます。
上まで行くのに、歩いて2~3分ぐらいです。
(老女の足では約10分ぐらいです)
●PL様向け
既にトランスは終え、武器も手に持っている状態からスタートです。
PCさんたちは丘の道が始まる付近、デミ・オーガは半分ぐらい上がったところ。
遠距離攻撃は届く範囲。
丘の上の老女は上がる道があるところから2メートル程離れた場所にいます。
ゲームマスターより
昔は沢山咲いていたのですが、ここ数年みることがなくなってしまって寂しいです。
綺麗ですよね、あの青い花。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
オレ達2人はデミ狼戦対応だ。 オレは戦闘中接敵し、狼の攻撃対象を分散化させる。 敵からの攻撃を積極的に引き受ける盾役だ。 ノクスさんの近くで狼の攻撃が彼に集中しないようにする。 狼は基本「群れを作って行動する」生物だから、 他に敵がいないか戦闘中も警戒。 他に敵が居た場合は攻撃。 非デミ化狼の場合は殺さないよう威嚇攻撃をし追い払う。 ラキアのMP不足時はディスペンサ。 その後丘へ行く。 敵デミ狼との戦闘で返り血や出血があると おばあさんに会った時に驚いちまうかも。 先に返り血を拭いておく。怖がらせたら可哀想だ。 丘の上でハンティングスキルを使い他狼の痕跡がないか調べるぜ。 最後に、おばあさんを皆で家まで送って行こうぜ。 |
アイオライト・セプテンバー(白露)
あたしは急いでおばあさんの方行くよ おばあさんを保護できたら、ウサミミで李月さん達に連絡して、狼から遠ざかるようにしてみる さすがに全部内緒にすることはできないと思うから、おばあさんにはいろいろと事情を話して、安心してもらうの 「パパ達は強いから、狼なんかすぐやっつけちゃうよ」って 「あたしも強いから、いざというときでも大丈夫だよ」って お花、たくさん踏んじゃったみたい(しょぼん でもね、散ったお花も無駄にならないんだよ あのね、葉っぱをちょいちょいっとすると、帆のあるちっちゃいお舟になるの で、川に浮かべ…って川がないー(ガーン) あ、あたしのおうちにはたらいあるもんっ 持って帰るからっ…持って帰ってもいい? |
李月(ゼノアス・グールン)
上に老女がいるなら遭遇させず討伐完了したい考え 敵をアプローチに掛けやすい様ノクスさんより少し下がる位置 アプローチ後 相棒と一緒に敵の背後へ回り上への道塞ぐ ハンマー叩き込みスタン狙う こちらに攻撃向くなら盾で牽制 相棒MP不足にディスペンサ 老女と敵が万一遭遇事態なら彼女の守り最優先につく インカムでアイオライトさんと情報連絡 保護報告等情報は皆に知らせる 戦後 帰る時怯えさせない為デミ死体は草むらにどけて見え辛くしておく 丘の上へ行き合流 怖がらせない様 武器は後ろ手に持つ 浄化兼ね老女に付添いこの場所の話をしたい 聞き役優先 青は好きな色 光景は感じ入るものが 食用と知ればレシピが浮かぶ 調理4 出来れば彼女を家迄送りたい |
ラティオ・ウィーウェレ(ノクス)
ご老人が降りて来る前に倒せたらいいのだけれどね。 ノクスや他の皆にデミ・オーガを任せて、丘の上に走るよ。 デミ・オーガを避けて登るけれど、可能な限り道の上を進みたいね。 丘へ上がり切る前に、振り返って戦況を確認する。 驚かさないように剣を納めて丘の上へ。 ご老人を見つけたら、声をかけてから近づく。 ・仲間が丘を登る途中でデミ・オーガと戦っていること。 ・僕が万が一デミ・オーガが来たときに備えて護衛に来たこと。 ・仲間が倒すまで、ここで共に待機して欲しいこと。 の3つを伝える。 デミ・オーガが来たら、ご老人を背に庇って剣を抜く。 皆が来るまで持ち堪えたいね。 日が暮れても、暮れていなくても。帰りは村まで送るとしようか。 |
●
地面を蹴る足に、力が籠る。
胸に湧きおこる衝動。
それは焦燥にも似た、何かだった。
先へ、先へ。
それはウィンクルムたちの思いなのか。
先へ、先へ。
それとも、丘の上へ向かう狼の思いなのか。
もっと、もっと先へ。
ざりっと音を立て、また一歩。
丘の上へと近づいて行く。
その日、依頼を受け調査を終えたウィンクルムは、総勢8名だった。
報告をしに戻ろう……。
そんな時に発見したデミ・オーガ。
速やかにトランスを終えた8人の視線の先には、丘の上にと向かう一匹の狼……デミ・オーガの姿。
地面を蹴り上げ、石をまき散らすそんな狼の足元。
狼の足付近の地面を穿ったのは光を放つ矢だった。
ざりっと地面を蹴る音とともに、ぐるる。と喉奥から聴こえる唸り声。
警戒の唸りをあげ、狼が振り返った視線の先には……セイリュー・グラシアとラキア・ジェイドバイン。
2人の視線が狼のつり上がった瞳と絡みあい、間合いを測りあう。
そして下の方にゼノアス・グールンと李月が狼を見据えていた。
じりっと狼の殺気が湧き上がるのを肌で感じ、狼とウィンクルムの間に漂う緊張の一瞬。
正面ばかりに気をとられていた狼は、移動を重ね近づいていた白露に気が付き、ぱっと飛びのく。
狼に近づいていたのは白露だけではなかった。
「さて、貴様の相手は我だ]
ノクスから放たれたオーラに触れた狼の視線が、ノクスの視線と絡みあう……。
ぐるる。
狼の唸り声が、空気を震わせた。
狼から少し離れた道なき道。
そこは見るからに登るのが大変そうな道であった。
アイオライト・セプテンバーとラティオ・ウィーウェレはそんな緑生い茂る坂道を走っていく。
出来れば舗道した所を通りたい所だったが、大きく迂回しない限り戦闘の邪魔にもなりそうだった。
そう考えれば、自然と草花おいしげるものの、一本道を選ぶのは自然。
普段ならばつつましくも美しくも見えるだろう、赤や白の小さな花々。
絡みつく緑の草花は、今日ばかりはその動きを制限し、アイオライトとラティオの足を鈍らせる。
ぶつり、と鈍い音を立て抜けた草と花がはらりと宙を舞った。
先へ、先へ。
もっと先へ。
仲間を信じて、少しでも早く丘の上を目指す……!
その頃丘の上では、老女がゆっくりと青花の間を歩いていた。
時折立ち止まっては青花の様子をみるその瞳は、慈しみに満ちている。
遠い過去を思い出しているのだろうか。
この丘の上には、老女の……いや、きっとここで過ごした人々の思い出に満ちているのだろう。
ふ、と何か聴こえた気がしてほんの少し動きをとめた老女は、首を傾げた後再び歩きだす。
●
きゃん!! と鋭い声が上がる。
アプローチが発動したのを見てとり、ゼノアスが距離を縮め攻撃を加えたのだ。
負けじと噛みつけば、吸血薔薇に攻撃を返され、その身を震わせる。
ゼノアスに攻撃を仕掛けるのを諦め、向かおうとする先。
そこにはノクスが居る。
なぜ自分が彼を狙うのか……分かっているかいないか皆からは分からないが、狼はノクスの元へ向かおうと皆の隙を狙っているようだ。
しかし、ノクスを守る壁は厚い。
ラキアの持つ魔本から放たれた光は、ノクスの周りをも覆い、狼からノクスの姿を見えにくくしていた。
ぐるる。
あがった唸り声は不満なのだろう。
うまく機能しているのを確信しながら、セイリューがぐるりとあたりを見渡した。
今の所、対処すべき敵は1体。
「狼は基本、群れをつくって行動する生き物だけど……」
セイリューの言葉に、ゼノアスも同意を示す。
「複数いてもおかしくねぇ、ホントに1体だけか?」
その言葉に、皆に新たな緊張が走る。
先に調べた結果が全てというわけではない。
視線を交し合い、目前の敵だけでなくほかの敵がこないかにも注意を払うのだった。
少々手間取りながらも丘の上にあがれば、一面の青と緑。
それは全てツユクサ……青花、と呼ばれるものなのだが、今はところどころ無残に折られ、花や葉が散っている。
「あ、おばあちゃん!」
息をつく暇もなく、視線を彷徨わせていたアイオライトは、そう広くもないその丘の上にすぐに目的の老女を見つけることが出来た。
アイオライトがゆっくりと花を見て歩いていた老女の方へと向かう。
まだ老女は下の騒ぎに気が付いていないようだ。
「あの、すみません!」
少し遅れてやってきたラティオが声をかければ、老女が気が付いたようでゆっくりと体を起こすのに合わせ、アイオライトがウサミミを揺らしながら李月達へ連絡を入れる。
ほかに敵がいるかもしれない。
そんな連絡を受けて、ラティオにと小声でその旨を伝える。
無駄に老女に不安を与えるのは得策ではないだろう。
とはいえ、すべてを内緒にできるとはアイオライトも思っていなかった。
ほかの敵がいるかもしれない。
その情報を胸に刻みながら目上の相手に警戒を抱かせないように、敬語を使用しつつラティオは3つに絞り端的に説明していく。
「今、僕たちの仲間が丘を登る途中でデミ・オーガと戦っています」
振り返ってみた時、彼らは的確に興味を引きつけ、そして囲もうと布陣を開始していたと、さらに情報を付け加える。
それは老女に安心感を与える情報であった。
蒼白だった老女に安堵の色が見えたのだ。
「パパたちは強いから、狼なんかすぐやっつけちゃうよ」
だから、安心して欲しいとアイオライトが胸を張れば、その通りだとラティオも頷く。
「そして、僕たちが万が一デミ・オーガが来たときに備えて護衛にきました」
驚いたように瞳を見開く老女に、アイオライトが胸を叩く。
「あたしも強いから、いざというときでも大丈夫だよ」
「ですので、仲間が倒すまでここで共に待機していて欲しいのです」
安心させるように微笑んだラティオに、老女も小さく頷きを返したのだった。
●
説明をしている同時刻。
「無事、会えたみたいだ」
李月がアイオライトから報告を受け、皆に聴こえるように声をはりあげる。
ほっと息を吐きながらセイリューがノクスだけに攻撃をいかせまいと狼を挑発すれば、煽られたかのように攻撃の矛先をセイリューの方へ。
獲物を追い詰める唸り声を発しながら、狼は加えられる攻撃を避けては、次の攻撃へと繋げようと間を探っている。
それでもノクスのオーラの効果のおかげで、確かに狼をこの場に引きとめることに成功していた。
とはいえ、オーラの効果だけということではないだろう。
視線を交し合い、状況を見てできるだけ包囲をしようとする動きがあるからこそ、狼もそう簡単に突破し逃げれないのだとわかっているのだ。
万が一にでも老女の方へは行かせない。
噛みつかれた足から血を流しても、切り裂かれた腕から血が流れても。
そんな強い意志が皆の間にあった。
一本道を外れることになったとしても、おばあさんの元へ向かわせるよりは……。
白露も囲むのに協力するために草花が茂る方へと移動しながら攻撃を加えていく。
足元を草にとられながらも狼の足元を狙い動きを妨害すれば、李月の攻撃を助ける力となる。
(今は……勘弁してください)
青花が足元で散るのに謝りながらも白露の歩みは止まらない。
ポップな見た目に反し、かなりの衝撃を受けた狼はたたらを踏んだ。
ぐるる。
体の奥底から憎しみを込めているような唸り声だった。
その身はもう、あまり動けないだろうに未だに殺意だけは薄れることはない。
李月に伸ばされた爪は、ゼノアスの剣で防がれた。
指一本、彼に触れさせることなどしない。
「これで終わりだぜ」
逆に大爪で狼の体を切り裂けば大きく口をあけ……そして、それがゆっくりと力なく閉じていく。
どさり。
倒れた体は、皆が近づいた所で動くことはない。
「終わったか」
ノクスが確認をするように皆をみれば、そうだね、と頷きが返る。
そんな狼の近くの地面に広がるのは赤い色だけでなく、白や緑や、青もあった。
踏み散らすことになってしまった草花たちだ。
それがどこか物悲しく、されど確かにデミ・オーガを倒した証しでもある。
「今の所、ほかに居なさそうだけど」
セイリューが剣をおさめながら、再度あたりを見渡す。
皆もつられてあたりを見渡すが、空は晴れわたり、丘へと続く道には彼らと狼以外なにもなく。
見えない側にひょっとしたら何かあるかもしれないけれど、それでもやはり、今の所ほかに仲間が現れることはないようだった。
●
懸念していた他のデミ・オーガ……または狼も今のところは大丈夫だろう。
普通の狼がでた場合も、セイリューと共に住民が襲われるリスクを減らすために追い払おうと思っていたラキアは、少なくとも戦闘中に現れなかったことにほっと息を吐いた。
絶対にいないとは言い切れないために警戒を解くことはしない方がいいかもしれないが、少なくとも今ここで怪我の治療は出来るだろう。
怪我した人の手当てを申し出れば、手が上がり傷を癒していく。
「怖がらせないようしないとな」
頬についた血を拭いながらセイリューが言えば、治療の終わったラキアの指先が伸ばされる。
「ここにもついてるよ」
額を拭ってやれば、セイリューがありがとうと微笑む。
ラキアのほつれた髪をなおしてやろうと、セイリューの手を伸ばす……そんな彼らの傍で李月とゼノアスも血の汚れをぬぐっていた。
「リツキ」
ほら、汚れてる。
指摘された場所に視線をやり、拭っていく。
「ゼノアス、さっきはありがとう」
爪から守ったことだと気が付いたゼノアスの口元に笑みが浮かぶ。
彼を守る。
それは息をするのと同じぐらい、ゼノアスにとっては普通のことだ。
「リツキ、オレは大丈夫か?」
お互いに確認しあう、そんな様子を白露が踏み荒らしてしまった草花をそっと起こしながら聞くともなしに聞いていた。
距離があったために血こそついていないだろうが、自然と伸びた指先が額へと向かう。
額に浮かんだ汗を拭いながら、再び視線を草花へと向けるのだった。
「さすがにここに置いてはおけないだろう」
放置して新たにデミ・オーガが発生しないとも限らない、とノクスが遺体を移動させようとしながら問いかける。
「通常、死骸の処理はどうしているのだ? A.R.O.A.か?」
「連絡しておこうか」
そういいながら、帰りにもしも見つけて吃驚させたら大変だと李月とゼノアスも参戦し、ひとまず草むらの中へと遺体を隠すのだった。
そんな風に丘の途中の仲間たちが後片付けをしている中、アイオライトとラティオは警戒を続けながらも老女と話をしていた。
さわさわと風に揺れる青花たちが、そんな3人を見守っている。
おばあちゃん、皆と会ってくれる? とアイオライトの言葉に、えぇ、勿論よ。と微笑みを浮かべ頷く。
「きたようだ」
大勢の人の気配を感じ、ラティオが2人へと伝える。
それが狼を追ってなのか、そうじゃないのか判断はつかない。
ただ、彼らが丘の上にくるのだとしたら、それは倒したときだとラティオもアイオライトも思っていた。
だからこそちゃんと確認するまで警戒は解かないものの、2人の間に安堵の空気が広がる。
さて、彼らがくるまでもう少し……。
「終わったぞ」
ノクスが丘の上にやってきて伝えれば、他の皆も少し遅れてやってきた。
ラティオはその言葉に、剣から手をゆっくりと放す。
この剣を使うことがなかったのは、皆との連携のおかげだろう。
どれか一つでもかけていたら、狼は倒せても老女が傷ついていたかもしれないし、もっとこの青花が傷ついていたかもしれない。
よかった、と安堵を浮かべるラティオの傍らに立ち、老女がゆっくりと頭を下げた。
「お話はききました、ありがとうございました」
この青花を、そして私を守ってくれてありがとう。
狼と勇敢に戦ったノクスたちを、そして不安がることはないと守りながら傍にいてくれたアイオライトとラティオに老女は感謝の気持ちを示す。
老女を守れたことを、老女の微笑みを目の前にしてウィンクルム達は実感するのだった。
●
武器を後ろ手に隠し、挨拶をする李月。
丁寧な彼の仕草に、老女が微笑みを浮かべた。
浄化を兼ねて、李月は老女と共に青花を見て歩くことを伝えれば、老女が嬉しそうに頷く。
そんな彼らの傍らで、ゼノアスは敵が居ないか調べていた。
同じように調べる面々もいるが、人数が多くて困るということはないだろう。
(今の所は特になにもねぇみたいだが……)
殺気を感じることは今の所はなく、老女の思い出話を静かに聞く李月と視線があった。
好きな青色に囲まれ、沢山の青花と共に老女の優しく微笑ましい過去の話を聞く。
どこか遠い昔を思い起こせるようなそんな不思議な時間に、李月はどこか優しく瞳を細める。
混ざり合った視線からそんな様子を感じ取り、ゼノアスも瞳を細めた。
「食用にもなるんですね」
話の途中で出てきた料理の話に、李月がくいつけば、ゼノアスがそんなリツキの肩を小突く。
「今度食わせろ」
そうだね、と微笑む李月には、どんどんメニューが閃いていて。
サラダもいいだろうし、お浸しに、あとは炒め物も案外あうかもしれない……。
踏み荒らされた青花に触れ、ラキアは優しく声を掛けていた。
「痛かったね、もう大丈夫だよ」
浄化され、ふるりと喜びに揺れた青花の先には、セイリューが他の狼の足跡はないかと探している姿が見える。
ラキアと視線があえば、どんな感じかと自然と声を掛け合う。
「浄化の方は進んでるよ」
「こっちはもう少し見てみるけど、いなさそうだぜ」
足跡は複数はなく、どうやらあの1体だけのようで。
ひょっとしたら「異質」なあの狼は群れを追い出されたのかもしれない。
そんな会話を交し合う中、土や青花が浄化されていくにつれ、どこか青々しさが増していくようにも感じられた。
「もう少し、手助けするね」
太陽光に似た光を浴びた青花達は生命力あふれるその輝きに身を委ねていく。
「元気になったな!」
セイリューの笑顔も、元気になったようだとラキアは口元に笑みを浮かべながら思う。
痛々しい姿をさらす青花を見詰める白露。
折れて、散ってしまったものは戻らない。
ならば、花を持って帰ろうかと伸ばした指先が、痛々しい緑の茎へと伸ばされる。
「青花は染色の下絵に使うそうですが……」
私にはその技術はありませんね、と小さく微笑みながら摘んでいく。
家に飾るぐらいしか出来ぬけれど、アイオライトの好きな可愛い器を用意してあげようと。
(アイなら喜びそうですね)
そんな愛らしい器に飾ってあげたら、青花も、そしてアイオライトにも笑みが広がるだろうと思う白露だった。
そのアイオライトといえば、悲しみに瞳を陰らせる老女にと話しかけていた。
「でもね、散ったお花も無駄にならないんだよ」
一生懸命伝えるアイオライトに、老女が小さく頷きを返し、続きを促す。
「あのね、葉っぱをちょいちょいっとすると、帆のあるちっちゃいお舟になるの。で、川に浮かべ……」
右をみて、左をみて。
そしてちょっと下をみて……。
「って、川がなーい!」
と叫ぶアイオライトに、老女が笑い声をあげた。
でもその気持ちだけで私は十分嬉しいわ。と、そういうのに、あ、でもね! と明るい声をあげるアイオライト。
「あ、あたしのおうちにはたらいあるもんっ!」
ね、パパ? と問いかけられ、青花を摘んでいた白露が大きく頷いた。
「持って帰るからっ……持って帰ってもいい?」
えぇ、勿論よ。
そういって微笑む老女と、一緒に花を摘んでいく。
「綺麗だと思わない?」
ラティオのその問いに、ノクスがちらりと視線をラティオへとやったあと、しっぽ髪を揺らし僅かに頭を上下に動かす。
「そうだな」
最初に踏み荒らされた以上の被害もなく……今は浄化もされ、生命力あふれた光を浴びた青花たちは、より一層青々と茂っている。
さわさわと風に揺れるそのさわやかな音色も、どこか先ほどまでと違って力強く聞こえた気がした。
のんびりとそんな光景をノクスと共に見ていたラティオだが、日も暮れ始めてきたのに気が付く。
さてそろそろ帰ろうか、とラティオが皆に伝えれば賛同が返ってきた。
「危ないからさ、一緒に帰ろうと思って」
いいだろう? と相棒のノクスに問えば頷きが返された。
じゃぁ、皆で帰ろうというセイリューに賛同があがる。
わいわいと皆でしゃべりながら、ゆっくりと丘を下って行く。
「今日は、ありがとう」
無事、家まで送り届け手を振り別れながら、ウィンクルムたちは本部へと帰還したのだった。
数日後。
「あら、あら……」
老女がいつものように丘の上にくれば、青花たちが元気に咲き誇っていて。
「良かったわね」
ふわりと、老女の笑顔に合わせて青花たちも風に揺れる。
ありがとう、ありがとう。
そんな声が聴こえてきそうだった。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 如月修羅 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | 戦闘 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 5 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 08月06日 |
出発日 | 08月13日 00:00 |
予定納品日 | 08月23日 |
参加者
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- アイオライト・セプテンバー(白露)
- 李月(ゼノアス・グールン)
- ラティオ・ウィーウェレ(ノクス)
会議室
-
2016/08/12-23:49
プラン提出できたー。
狼対処中のおばあさん対応はラティオさんとアイちゃんに任せたぜ。
ラキアはノクスさんとゼノアスさんの回復中心で行動。
ノクスさんにはシャイニングスピアが飛ぶぜ。
オレも敵攻撃を引き受けるつもりだから、多少は敵からの攻撃分散できるかな?
皆さん、相談その他色々とお疲れさまでした。
良い結果になりますように! -
2016/08/12-23:45
こっちもウサミミ装着。
情報連絡もプランにねじ込みました。
提出できています。
成功祈ります! -
2016/08/12-23:25
はあい、プラン出せましたー。
もうちょっと手直しする予定だけど。
うん、あたしはラティオさんに付いておばあさんの方行くね。 -
2016/08/12-23:15
>ウサミミ付けてく
アイオライトさんはラティオさんに同行してお婆さんの保護に向かう、
でいいのかな? -
2016/08/12-23:08
セイリューとラキアは久しぶりだね。
今回もよろしく。
ノクスにはアプローチ2を使い続けて貰うとして。
僕は提案していた通り、ご老人に説明と倒すまでは留まって貰いたいと伝えるようにしたよ。
後は、万が一にデミ・オーガが登って来た時はご老人を背に庇うぐらいかな。
そうそう。プランは提出しているよ。 -
2016/08/12-22:49
>サイバースノーヘッド
あ、なるほど。
いい考え
じゃあ、ウサミミ付けてくね。
プランはパパのほうだけ(つまり、ウィッシュプラン)完成しましたー -
2016/08/12-22:22
>おばあさんに対処
保護できたら戦闘組に知らせて欲しいかな。
現状「いるかもしれない」という状況なので、保護の知らせを貰えたら安心して戦えるし。
お婆さんへは状況説明や戦闘終わるまでそこにいてもらって、励ましたり? とかかな。
アイオライトさんがラティオさんと同行した場合、僕とスノーヘッドで連絡取れますね。
僕が同行も有りですが。
もし決ってない様なら連絡係とかどうですか? -
2016/08/12-21:29
ノクスさんがアプローチしてくれるっていうし、多分ラティオさん1人でも問題ないと思うけど…。
人数が増えたから狼に対処できる人も増えたし、おばあさんに対処する人はラティオさん1人だけでなくそっちにもう1人ぐらい増えても、デミとの戦力に関しては心配ないと思う。
ただ…あたし、おばあさんに何していいか分からなくって。
後からのフォローならなんとなく思い浮かぶんだけど。
進捗まだです() -
2016/08/12-19:37
セイリューさん、よろしくお願いします。
あ、ここに体力削れる奴がいますので(相方シンサモ)回復ありがたいです!
>他に敵がいないか
こちらでも殺気感知で複数いないか相棒が探る行動します。丘の上でも。
結果は皆さんにお知らせします。
>老女フォロー
討伐後はデミの死体は草むらにどけておこうと思います。
帰りに通りますからね。
>返り血
僕の装備は白いコートだからどうにもならないな…。
ハンマーは後ろ手に持って目につかない様にする位だろうか。
>狼囲む
道を通らなくても草むらから上へいかれてしまうから
囲む形になるのかなと思います。
アプローチは強力だと思うから逃げられる可能性はほぼ無さそうですが。
僕もどういう形がいいのかよくわからない。
うーん、文字数に余裕がある。
何か抜けがあるようで怖いな。
ラティオさんを一人で行かせるのは大丈夫なんだろうか。と、ふと。 -
2016/08/12-18:17
セイリューさんもよろしくー♪
パパは遠距離攻撃の弓だから、まっさきに攻撃して、デミの注意をこっちに向けてもらうね
道からはずれることになっても、皆でバラバラになって狼囲んだほうがいいかな?
というか、頂上に向かわせなきゃいいのかな。
>返り血
そのへんの葉っぱでも拭けそう?
いいアイディアだと思いますっ。
そして、肝心のプランはまだです() -
2016/08/12-00:19
セイリュー・グラシアとLBのラキアだ。
ギリギリの参加でゴメンヨ。
今回も皆ヨロシク。
相談内容に沿った形で行動は考えるぜ。
オレ達2人も狼対応の方へ入る予定。
負傷時の回復と、敵攻撃対象の分散化要員かな。
狼は基本「群れを作って行動する」生物だから、
他に敵がいないか警戒・探索と、居た場合の対応ってトコ。
あとラキアがツユクサを診たいって言ってた。
踏み荒らされたままだと可哀想って。
大体こんな感じで行動するつもり。
敵デミ狼との戦闘で血とかつけていると
後でおばあさんに会った時にビックリさせちゃうかもしれないから
そのへん何か良い方法考えた方がいいかな。
怖がらせたら可哀想だからさ。
返り血を拭いておいた方が良さそう? -
2016/08/11-22:06
老女へのフォローについて
文字数に大分余裕があるので
討伐後は丘の上でお婆さんと青花談義して暫く過ごそうかと考えています。
場の浄化とお婆さんの精神的フォローの意味でなんですが。
不要ならばっさりカットされるのは覚悟して。 -
2016/08/11-21:52
>ご老人の護り
わかった。なら、僕が行くことにするよ。 -
2016/08/11-20:59
>精霊の武器
そうだねー。銃だとパニック起こさせそう。
じゃあ、今回、パパの武器は移動しながら攻撃しやすい弓にしとくね。
だから、スキルもそれっぽいパルパティアンにしとく。
>老婆
じゃあ、ラティオさんにお任せするね
おばあちゃんの速さを考えたら、1人で大丈夫そう?
あたしは何しようかなあ…。 -
2016/08/11-19:48
!
今回もよろしくお願いします、アイオライトさん。
白露さんは確かアドでは初めてですね。
>ご老人の護り
先に行って保護して貰えるなら安心です。
僕はラティオさんにお任せしたいと思います。
僕は敵とお婆さんが万が一遭遇事態になったら
お婆さん最優先で守る予定です。
>銃で合図
は、銃声はお婆さんにはちょっと刺激が強いかな、
というのが少し気になるかな。すいません(汗
(ちょっと考え直し、発言し直しました) -
2016/08/11-14:00
お、人が増えたね。
来てくれてありがとう。よろしく頼むよ。
ノクスがアプローチ2で足止めして、そこを後ろに回り込んで囲むと。
うん。アプローチ2が効いてる間はいいけれど。
効果が切れたときに丘を登られては問題だからね。いいと思うよ。
>銃で合図
何も説明なしに銃声だけ聞いても、ご老人も何かあったことしか判断できない気がする。
ご老人の安全を考えると。先に誰か説明と護衛に、ご老人のところに行った方がいいかも知れないね。
人も増えた事だし。
丘の上までの距離でトランスが切れる心配は無いだろうから。
僕がご老人の護りに行ってもいい。 -
2016/08/11-10:26
来ちゃった☆
こんにちはー、アイオライト・セプテンバーとパパでーす
パパの銃を使えば、万が一でも、おばあさんに合図出しやすいかなって思って
それとも、移動しながら撃ちやすい弓のがいいかな?
と、全然まとまってないけど、よろしくー♪ -
2016/08/09-21:49
アプローチを使って貰えるなら心強いです。
そうですね、丘の上まで行かない内に倒して
お婆さんに遭遇させずに済ませられたらと思います。
こちらの予定は
相棒はブラッディローズ(カウンター)とタイガークローⅡで、攻守でダメージ狙い。
僕はハンマー効果でスタン狙い。
アプローチに掛ったら僕等はデミの後ろ取って挟み撃ちの形を作ろうかと。
アプローチから逃げられるとは思わないけど上に行くのを妨害する為です。
他はお婆さんへのフォローを考えています。 -
2016/08/09-20:07
そうだね。こうして通常時の任務だと初めてだ。
知っての通り、僕はラティオ。それとロイヤルナイトのノクスさ。
どうぞよろしく。
ノクスがアプローチかアプローチ2を使えば足止めは可能だと思ってね。
デミ・オーガが丘の上に進まないよう、努めるつもりでいるよ。 -
2016/08/09-19:42
李月と相棒はシンサモのゼノアスです。
ラティオさんは通常エピで会うのは初めてですね。
こちらでもどうぞよろしくお願いします。
と、人増えないかな。