現実と幻想と(紫水那都 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

●幻のような
それは、夢だったのか現実だったのか。
とにかく、彼は自由だった。
空を駆け、大地を舞い、大気と溶け合うようにして。
星のささやきを聞き、月と歌い、太陽と笑った。
身体の重ささえ感じないほど、心の重ささえ感じないほど、彼は解き放たれていた。
それは、幸福な瞬間だった。

しかし、気付けば彼は元の彼だった。
体に重さがあり、大地を踏みしめている。
心に重さがあり、世界を感じている。
しかし、未だふわふわとした感覚が離れない。
自分は今、現実を生きているのだろうか。
それとも、夢を見ているのだろうか。

●現のような
そんなふわふわとした感覚のまま、彼はパートナーの元へ向かう。
パートナーは、いつものように彼を迎える。
しかし、彼にはそれが現実なのか夢なのか、未だはっきりしないでいた。
この重さのある心身が現実だとしたら、パートナーも現実の存在だ。
だが、この重さのある心身が夢だとしたら、パートナーですら夢の中の存在だ。
そこまで考えて、急に怖くなった。
もしも、パートナーが夢の中の存在だったら。
パートナーは、幻のように消えてしまうのではないか、と。
だから、彼は問いかける。
これが、現実である事を祈って。

「なあ、これは現実だよな。夢じゃ、ないよな?」

解説

パートナーの元へ行く交通費やデート費用等で一組につき400Jr消費いたします。

まるで現実のような、気分の良い夢をみた貴方。
だが、夢が現実のように感じ、パートナーの存在に現実感が見いだせなくなってしまう。
そんな時、貴方はどうする?

●書いて欲しい事
神人と精霊、どちらが夢を見たか。
夢を見た方のプランの頭に「夢」と一文字お書き添えください。

●書いて欲しい事2
夢の内容。
ごく簡単で良いのでお書き添えください。

●注意点
各組別々の場所で起こったこととします。
そのため、他の組と出会う事はありません。

ゲームマスターより

こんにちは、紫水那都です。
あんまりに気分の良い夢を見ると、現実に戻ってきたくなくなってしまうオネムな今日この頃です。

さて、今回は気分の良い夢を見たせいで、大切なパートナーに現実感が持てなくなってしまいます。
そんな時、貴方はどうするでしょう。
パートナーが現実であることを確かめる?
それとも、夢ではないかと探りを入れる?

リザルトノベル

◆アクション・プラン

李月(ゼノアス・グールン)

  状況
2人で寄ったハト公園
木陰で休んでいたら相棒は寝てしまったので自分は読書

起きたの気付く
たわごとに 寝ぼけてるのか?
抱寄せ拒否 人がいる所はヤメロ!

寝ぼけてるにしても様子が変 熱中症?
麦茶飲ませて濡れタオルで相棒の汗拭いてやる
指は何本だ? 指かざし意識レベル確認 大丈夫そうだな ほっ
首にも濡れタオル当て

夢は願望の表れでもある?
英雄か 強さを求めるお前にはさぞ気分良い夢だったろう
神妙な顔してるから伸ばされた手を躊躇しつつ受入れ
従える相棒を本当は望んでいる? それとも僕はしもべ認識なんだろうか
面白くない

残念ながらそうだよ
僕はご主人様なんて呼ばないけどね
可愛いとか言うな 照
今更消えたりできるかよ 笑み

駄目だ にっこり


アイオライト・セプテンバー(ヴァンデミエール)
  じーじ、おはよーっ
一緒に新作ぱんつを見に行く約束してたでしょ?
夏休みだからっていつまでもお昼寝してちゃダメだよ

じーじがちょっと変
なんだか素っ気ない
いつもは優しいし、ちゃんとあたしに目を合わせてくれるのに

じーじ、お出掛けしてからずっとぼんやりしてるけどどうしたの?
じーじのおはなし難しい…えっと、つまり、目が醒めてからすっきりしないってこと?
じゃあ、何処かのカフェで珈琲飲む?
あたしね、ジェラートが食べたい!ベリーベリーの!
お店まで連れてってあげるね(腕ぐいぐい

美味しいおやつ食べて、あったかい珈琲飲めば、しゃきーんってするよっ

じーじ、どう?
あたしのこと分かる?
じゃ、かわいいぱんつ探しに行こうっ☆彡


●英雄と相棒の物語
 ある日の昼下がり。
 抜けるような青空の良い天気だったから、2人で散歩でもしよう、とハト公園に赴いた李月とゼノアス・グールン。
 夏の草花を眺め、噴水の周りに飛散する霧を浴び、餌を欲するハトに追いかけられ……などしているうちに、暑気のせいで汗ばんできた。
 李月が、ふぅ、と息をつき片手でぱたぱたと自らの顔を仰ぐ。
「少し休もうぜ」
 李月の体調を慮り、ゼノアスが木陰を指差す。李月に断る理由はなかった。
「涼しい~」
 木の陰の下、芝生の上に腰を下せば、気持ちの良い風が抜けてゆき、李月の長めの前髪をそよがせる。
 顔を綻ばせる李月の隣で、ゼノアスはごろりと横になる。
「良い風だな」
 しばし休んで汗がひくのを待とう。
 李月がそう思っていると、いつの間にやらゼノアスからは規則正しい寝息が。
「ゼノ?」
 控えめに声をかけてみるが、その程度では目をさます気配はない。疲れていたのだろうか。
 今日はとくに予定もないのだ、無理に起こすこともない。
 李月は持ち歩いていた本を取り出した。
 相方が目を覚ますまで、読書の時間としよう。
 李月は本が好きだった。
 今日持ってきているのは「狼少女」という童話だが、李月はどんなジャンルの本でも好む。
 知識を得られる歴史書も楽しい。自分と全く違う人生が描かれた小説も。自分が謎解き役になった気分になれる推理小説も悪くないし、胸躍るような冒険活劇も夢中になってしまう。
 そして、異世界の英雄譚にも心を惹かれるものがある――。

 英雄ゼノアスは、勇猛果敢な若き戦士であった。
 東の盗賊、西の魔物。噂を聞きつければ野を越え山越え困難乗り越え、駆けつけては、見事な手際で退治する。
 人々は彼の豪胆な戦いぶりに心酔し、彼を讃えた。彼の冒険は少年たちの心を躍らせた。
 彼が大剣を振るえば、倒れぬ魔物はいなかった。
 屍となった魔物を縛り上げ背に抱え凱旋すると、人々は彼を取り囲み、惜しみなく賞賛の声を浴びせる。
 街の中心では油を染み込ませた櫓に炎が上がり、英雄はそこに魔物の巨軀を投げ入れる。
 バチバチと炎が爆ぜ、魔物は肉と化す。英雄はその肉を大剣で削ぎ取り、豪快に食らいつくのだ。
 美しい娘たちが英雄の杯に果実酒を注ぎ、彼は肉と酒、そして勝利を堪能する。
 人々の賞賛の声は止まず、吟遊詩人は彼を讃える歌を歌い、それに合わせて踊り子たちが足取り軽く舞う。
 英雄は満足気に笑むと、傍の黒猫に視線を下ろす。
 黒猫も彼を見返し、にゃあんと鳴いた。
 彼が常に従えている、一匹の黒猫。
 旅路を共に歩き、戦いの時には敵を翻弄し、休む時には寝台の傍に丸まる。
 賢く、気品があり、主人に忠実な――

「黒……猫……」
 英雄ゼノアスは、此度の戦いでも彼を助ける見事な働きをした黒猫を、撫でて褒めてやろうと手を伸ばす。
 が、伸ばした手の先に黒猫の姿はなく。そこにいたのは黒髪の青年。
 眼鏡の奥から怪訝そうな瞳でゼノアスを見て、「寝ぼけてるのか?」などと呟いている。
「オレの黒猫が人になったのか?」
 ゼノアスは一瞬だけ驚くが。
 まあいい。そんなこともあるのだろう。世の中は不可思議な現象で満ち溢れている。英雄ゼノアスは数多の冒険でもっと奇妙奇天烈な体験を幾度となくしてきたではないか。黒猫が人に変わるくらい、大した問題ではない。
 ゼノアスは人の姿に変わった黒猫を愛でようと、その腰に腕を回して抱き寄せる。
 途端に、手を跳ね除けられた。
「人がいる所ではヤメロ!」
 なんと、生意気にも黒猫は主人の抱擁を拒否している。
 ゼノアスはむすっとした顔で芝生の上に胡座をかく。
「オレはお前の主人だぞ。なんでだ?」
 未だ夢から醒めやらぬぼんやりとした視線でそう告げる。
 黒猫もとい李月は眉根を寄せて、英雄もとい相棒のゼノアスを見やる。
 李月から見れば、今のゼノアスは言ってることも目つきもおかしい。
 これはまさか、熱中症か?
 であれば、速やかな応急処置が必要だ。
「これでも飲んでろ」
 李月は鞄の中から麦茶の入った水筒を取り出し、ゼノアスに押し付けるように渡す。
 ああもう世話の焼ける、と零しながら近くの水飲み場まで駆けていき、タオル地のハンカチを水で濡らすとゼノアスの元に戻ると、彼の額や首筋の汗を拭いてやった。
「あ~……気持ちいい」
 うっとりとするゼノアスを、李月は涼やかな色合いの扇子で煽いでやる。ほんのりと白檀の香りが漂った。
 李月はゼノアスの目の前に指をかざして見せ、真面目な顔で問う。
「これ何本だ?」
「は?2本だろ」
 そんな簡単なこと、なんで聞くんだよ。ゼノアスはそう言いたげな表情だったが、李月はほっと息をつく。
「意識レベルは正常のようだな」
 ひと安心し、李月は濡れたハンカチをゼノアスの首の後ろにあててやる。
「おかしなことを言い出すから不安になっただろ」
 李月の抗議に、ゼノアスは「悪い」とバツが悪そうに笑う。
「夢見てたんだ。最高に気分良かったぜ」
 ゼノアスは李月に夢の話を聞かせる。
「オレは魔物を倒す英雄で、いろんな人から褒め称えられてるんだぜ」
「英雄か。強さを求めるお前にはさぞ気分良い夢だったろう」
 夢は願望の現れとも聞くしな、と思い李月が笑う。
 ゼノアスは、得意そうな顔で夢の話を続けた。
 話しているうちに、ゼノアスの胸に夢の中での気分の高揚が蘇ってくる。
「自分の何倍もある大きな魔物をずばっと斬り伏せるのは、爽快だよな」
 魔物を退治した時の感触はまだ手に残っている。
 あまりにも生々しいその感覚。
 あれはやはり、夢などではなかったのではないか?
 と、なれば、目の前でゼノアスの話を興味深そうに聞いている李月は、もしかしたら……。
「オレの相棒は黒猫か?神人か?」
 確かめたくなり、ゼノアスは李月の頬に右手を伸ばす。
 李月の瞳は躊躇うように揺れたが、結局ゼノアスの手を受け入れた。ゼノアスが、いやに神妙な顔をしていたから。
 夢は願望の現れ。
 それが本当であれば、ゼノアスは、その黒猫のような従える相棒を本当は望んでいる?
 頬にゼノアスの掌を感じつつ、李月はそんなことを考える
(それとも僕はしもべ認識なんだろうか)
 どちらにしろ……面白くない。
 そして、ゼノアスはゼノアスで、さっきと違い大人しく触れさせてくれる、そんな李月の態度に不安を覚えた。
 李月が今にも黒猫に姿を変えてにゃおんと鳴くのではないかと。
 忠実なしもべが傍にいる。それは大層気分の良いものではある。だが、ゼノアスは李月にそれを望んではいない。
 この眼差しも、頬も、もの言いたげな唇も。
 従者のような黒猫ではなく、相棒たる神人李月のものであって欲しい。
「オレの相棒はオマエだよな?」
 言葉にして、確かめる。
「残念ながらそうだよ」
 李月がふいと顔を背けるので、その拍子にゼノアスの手が李月の頬から離れる。
「なに拗ねてんだよ。残念な事あるか」
 ゼノアスは李月の態度に不思議そうな顔になるが。
「僕はご主人様なんて呼ばないけどね」
 その言葉で、李月がなぜ拗ねているのか合点がいった。
 それと共に、目の前にいるのはやっぱり自分の大切な相棒なのだと確信した。
「猫がオレの体心配して濡れタオル当てるか? 口尖らせて、んな可愛い顔するか?」
 ゼノアスはくくっと笑う。
「可愛いとか言うな」
 顔を赤らめ反論する李月の頬を、再びゼノアスの掌が捕える。
「こっちがオレの現実だ」
 2人の視線が交わる。
「消えんなよ」
 命令のような、懇願のような口調でゼノアスが囁く。
「今更消えたりできるかよ」
 李月がふっと笑みをこぼす。
 その笑顔が一層愛しくて。
「抱き付いていいか?」
 ゼノアスが李月の肩に両腕をかける。
 李月からはにっこり良い笑顔と
「駄目だ」
 という明快な返事。
 しかしゼノアスは拒絶の言葉にがっかりするわけでもなく、逆に嬉しそうに笑う。
「この思い通りにならねぇのがオレの相棒だ」
 自分に付き従い気分を良くさせてくれる、そんな相棒だったならきっと、ここまで愛しいと思わなかった。
 家に帰ったら存分に抱きついてやろう、と画策し、ゼノアスはにやりと笑うのだった。

●甘やかな記憶
 扉の前に、ヴァンデミエールは立っていた。
 腰に下げた鍵束の中から、一つの鍵を取り出し、それを愛おしそうに眺める。
 やっと手に入れた、扉の鍵。
 他の鍵なら簡単に手に入ったのに。この鍵だけは特別苦心した。特別な鍵なのだ。
 この鍵で目の前の扉を勝手に開けることはできるのだが、ヴァンデミエールはあえて鍵を束に戻し、それをしなかった。
 すっと拳にした右手を持ち上げ、扉に打ち付けようと軽く引く。
 扉の向こうにいる相手は、今までの遊び相手とはわけが違う。
 大切に大切に、想いを育んでいきたい。そんなふうに思わせてくれる相手に出会うなんて、何年ぶりのことだろう。
 顔を思い浮かべるだけで、胸の底から甘く芳醇な蜜のような美酒のような、とろりとした何かが湧き上がる。
 ああ、懐かしいこの感覚。
 このままずっと、胸を満たす心地よさに酔っていたい。
 恋とは愛とは、かくも甘い………。

「ん……少し昔の夢を見たようだ」
 ヴァンデミエールは寝台の上に身を起こす。
 夢の内容は目が覚めたと同時にどんどん薄れていってしまうというのに、胸の奥にはまだあの甘い感覚が残っていて、本当にただの夢なのか、と疑問に思う。
 もしかしたら夢ではなく、懐かしい記憶だったのかもしれない。
 美味しい酒に浸ったときのように、くらくらする。
 目が覚めたとはいえ、まだその酔いに身を任せていたい。
 ヴァンデミエールは室内の椅子に腰掛け、目を閉じ直す。このまましばらく、夢の余韻に浸って静かに過ごしていたい。もっと鮮明に夢の内容を思い出したい。
 だがその希望は、近づいてくる元気な足音と扉を開く盛大な音に打ち破られる。
「じーじ、おはよーっ」
 朗らかな大声が響き、鮮やかな金髪が飛び込んできた。
 アイオライト・セプテンバーは今日も元気だ。
 その元気の良さは、ヴァンデミエールの酔いを覚ましてしまいそうな勢い。いつもなら元気の良いアイオライトを可愛らしいと思うのだが、今だけは、少しだけ、疎ましいと思ってしまった。ヴァンデミエールはこの甘やかな酔いが消えてしまうのが惜しかった。
「……なんだ嬢か、おはよう」
 なんとか笑顔を作って返事をするものの、どこか上の空になってしまう。
「一緒に新作ぱんつを見に行く約束してたでしょ?夏休みだからっていつまでもお昼寝してちゃダメだよ」
 アイオライトはヴァンデミエールの膝に上半身を乗せ、ヴァンデミエールの顔を見上げる。
 そうだった、そんな約束をしていたかもしれない。
「急いで支度をするから、しばらく待ってくれないか」
 ぽんぽんとアイオライトの頭を撫でるヴァンデミエールの微笑みは優しいものの、視線はアイオライトを捉えておらず、言葉にはため息が混じる。
 ヴァンデミエールの膝から降りたアイオライトは「むぅ……」と小さく唸る。
(じーじがちょっと変)
 アイオライトはヴァンデミエールの素っ気なさを敏感に感じ取っていた。
 ゆるゆると出かける支度をするヴァンデミエールを観察する。
 いつものヴァンデミエールはもっと優しい。アイオライトときちんと目を合わせてくれる。
 アイオライトがお出掛けしようと言えば、すぐに支度を整えてくれる。今日のように前もって約束をしているのなら、アイオライトが呼びに来る前に支度を整え終わっているくらいだ。
 だのに今日は、いったいどうしてしまったというのだろうか。
 アイオライトは首を捻る。
 けれど、外に出れば気も晴れて、きっといつものヴァンデミエールに戻ってくれるだろう。
 アイオライトはそう楽観し、支度を終えたヴァンデミエールの手を引いて街に飛び出した。

 しかし、アイオライトの期待通りにはいかなかった。
 ヴァンデミエールはなんだかぼうっとしておりアイオライトの言葉に気のない返答を繰り返し、心ここに在らず、といった様子。
 さすがにアイオライトも心配になったようだ。
「じーじ、お出掛けしてからずっとぼんやりしてるけどどうしたの?」
 ヴァンデミエールの態度は咎められても仕方のないものであった。
 だがそれを咎めるのではなく、心配してくれるアイオライトの瞳が、ヴァンデミエールに現実を思い出させた。
 ヴァンデミエールは
(どうも本調子じゃないね)
 と反省した。
 半分忘れてしまった夢を思い出そうとして、アイオライトのことすら鬱陶しく思ってしまうのは、実にまずい。
「なんでもないよ……いや、嬢には正直に話そうか」
 アイオライトは幼いながらに利発な子だ。はぐらかすのは良くない。
「先刻、夢を見たんだ」
「夢?」
 大きな瞳でこちらを見返すアイオライトに、ヴァンデミエールはゆっくり頷く。
「それからずっと夢の続きにいるみたいだ。頭の中が綿で詰まったようで、嬢は目の前にいるのに、幻と同じに感じられる」
「じーじのおはなし難しい……えっと、つまり、目が醒めてからすっきりしないってこと?」
 アイオライトは眉根を寄せて考え込み、自分なりの解釈を試みる。
 その様子を、ヴァンデミエールは愛おしそうに見つめた。
「じゃあ、何処かのカフェで珈琲飲む?」
 アイオライトはぽんと手を打って提案する。
「あたしね、ジェラートが食べたい!ベリーベリーの!」
 カフェで珈琲からスイーツを連想したアイオライトの瞳がきらきら輝く。
「お店まで連れてってあげるね」
 善は急げとアイオライトヴァンデミエールの腕を取りぐいぐい引っ張る。
「美味しいおやつ食べて、あったかい珈琲飲めば、しゃきーんってするよっ」
 ぱちん、とウインクするアイオライトにヴァンデミエールは自然と微笑みが漏れる。
「やれやれ嬢は変わらず元気だね」
 ヴァンデミエールの声色は、いつもの優しいものに戻っていた。
 アイオライトに連れられてやってきたカフェで濃いめの珈琲を一口飲みくだす。アイオライトは目の前に運ばれてきたジェラートに手をつけるのも忘れ、ヴァンデミエールの様子を神妙な顔で見ていた。
「じーじ、どう?」
「どう、とは?」
「あたしのこと分かる?」
 小首を傾げて問うてくるアイオライト。
 ヴァンデミエールはふっと笑った。
 ゆったりと美酒に酔うような甘美な感覚は心地良い。
 けれど。
 今目の前にある現実も、甘いいちごミルクみたいで、それはそれで美味じゃないか。
 ヴァンデミエールは目尻を下げる。顔の皺がより深くなる。
「安心するよ、これが僕の日常なんだって」
 アイオライトはきょとんとする。
「僕はここにいる」
 アイオライトに、そして自身に言い聞かせるように言葉にするヴァンデミエール。
 それを聞いて、アイオライトはほっとしたように笑った。普段のヴァンデミエールに戻ったことを実感して。
 あたしのじーじは、ちゃんとここにいる。
 アイオライトはさくさくとスプーンでジェラートを掬い口に運ぶ。
 ヴァンデミエールは珈琲の続きを楽しみながら、アイオライトを優しい瞳で見つめた。
 恋に愛に酔ったのは、遠い遠い昔のこと。
 年齢を重ねるに連れ、だんだんと酔うことも少なくなり、気づけば久しく酔っていない。
 けれど、夢のおかげであの頃を思い出してしまったから、あの甘い記憶を懐かしく、そしてまた味わいたく思ってしまった。
 ただそれだけのこと。
 ほんの少しの間であったけれど、あの感覚を再び味わえたことに感謝しよう。
 そして、今は違う喜びがあることに、さらに感謝しよう。
「じゃ、かわいいぱんつ探しに行こうっ☆彡」
 ジェラートを平らげたアイオライトが元気良く立ち上がる。
「そんなに急がなくても、かわいいぱんつは逃げていかないよ」
 ヴァンデミエールもゆっくり立ち上がる。
 さあ、新しい気持ちで買い物に出掛けよう。

(このリザルトノベルは木口アキノマスターが代筆いたしました。)



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 紫水那都
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月22日
出発日 07月29日 00:00
予定納品日 08月08日

参加者

会議室

  • 御挨拶遅れちゃってごめんね。
    先日はこちらこそごちそうさまでした(なんかちょっと違う気もする)

    アイオライト・セプテンバーとじーじです。
    あたしたちはどうしよっかな、おうちの近くで買い物かなあ?

  • [1]李月

    2016/07/26-20:31 

    成立ですね、良かった。
    李月と相棒のゼノアスです、よろしくお願いします。
    僕等はハト公園でまったり中での出来事な感じの予定です。

    アイオライトさんは最近よく会いますね。
    この間のリザはご協力ありがとうございました。


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