トマト祭りしようぜ!(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●こんにちは、嫉妬団です
「兄弟!! 今日は合法的にカップルを妨害できる日だ!!」
「分かってるぞ兄弟、トマトをぶつけてぶつけてぶつけまくるんだな!!」
「その通りだ兄弟!! いちゃいちゃいちゃいちゃしてるやつらは全員真っ赤に染まるがいい!!」
「いくぞぉぉ!!」
「「リア充ほろぶべーし!!」」
 ちなみに別に兄弟というわけではないのだが、老若男女、トマトを手に走りだす。
 が、そこに現れたのはなぜかいちゃこらする2体のゴブリン。
 トマトを食べさせあう2体は、なるほどトマトに誘われてやってきたんだろうなということがよくわかる。
 ……しかし、嫉妬団は止まらない。
 いちゃいちゃに国境も性別も、種族も年齢もなんかいろんなあれもそれも関係ない。
「リア充滅ぶべしー!!!!!」」
 そういって突撃を掛けた瞬間、盛大に棍棒でぶんなぐられることになるのだった。


●というわけで
「トマト祭りですよー!」
 日頃の疲れがたまっているのか、目の下にクマを作った職員がそういってチラシをぶんぶんしていた。
「なんですが、今年はちょっと問題がありまして……2体のゴブリンがきちゃったようなんですね」
 2体はどうやら男同士のようであるが、恋人のようで仲が睦まじい。
 いちゃいちゃとトマトを食べたいだけのようであるので、とりあえず籠か何かにトマトを詰め込んでお引き取り願うのがオーソドックスかと思われる。
「今回は、こちらに直接持ち込まれた依頼ではないんですが、まぁもしもウィンクルムの皆様が対処していただけるのならば、参加料は半額にいたしましょうとのことでして」
 そのために、会場にいるゴブリン達と交渉してほしいとのことである。
「今日だけはお祭りなので、もし説得がうまくいけば一緒にお祭り参加も面白いかもしれませんが……」
 3歳児程度の知能はあるために、話がまったく通じないということはないだろう。
 言って聞かせれば、戦闘になることなく退散、もしくは少しなら遊べることも可能かもしれないということだ。
「あぁ、もちろん、仲間に引き入れるとかはできませんし、その町に居つかれても困りますでしょうし、そこは皆様にお任せいたします」
 あ、そうでした、と職員が言葉を紡ぐ。
「トマト祭り自体は、汚れてもいい服でお願いします。
トマトを投げ合うお祭りなので……。
シャワーなんかも浴びれますし、荷物を預けることもできますからそこは気にせずタオルと洋服を持って行って下さいね」
 ちなみに祭りに使われるトマトは、普段ならば廃棄処分にされる痛んだものや規格外で捨てられていたりしたものらしい。
「さらにさらに、そのあとは肥料に回されるそうなので、安心してお祭りを楽しんでください!」
 そんな風に楽しんだ後は、屋台を楽しむのもいいだろうとのことだった。
「トマトのスープやトマトのデザート、その他もろもろ沢山ありますので! 是非!」
 何か面白いトマト料理を探すのもいいだろうと職員が笑うのだった。

解説

本当はオーガかデミ・オーガにして戦闘+お祭りの予定だったんですが、2人を裂くのかわいそうじゃない?
 とこんな感じになりました!

・ゴブリン
 知能は三歳児程度。
「トマト、好キー!」
「モット食ベタイー!」
 こんな感じでいちゃいちゃしながら食べてます。
 一応半額になるのはこの子達をどうにかした後になりますので、皆様でどうにかしていただけたら幸いです。

・お祭り代
 お一人様 300jr

・トマト祭り
 トマト投げ合います。
 敵味方別れてません。
 とにかく人を見つけたらぶつけます。
 トマトの補給はそこらへんに沢山ありますのでそれを手にとってお使いください。
 顔に当てたり抑えつけて無理にあてたり、暴力などはいけません。

(着替えの描写やシャワーシーンなどはありません。
また、皆様は特に後片付けや手伝いなどしなくて大丈夫です、純粋にお祭りを楽しんでください)

・屋台
 色んなトマトの料理があります。

ゲームマスターより

 なぁ知ってるか……。
 如月、トマト嫌いだってことを……。
 でもこの祭り楽しそうだなって思ってるんだ……。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)

  Tシャツとジャージ半パンツでトマト祭りの準備ばっちりだぜ。

ゴプリン達には「トマト、ウマいか?ウマいよな」
笑顔で話しかけ警戒を解く。
ここの人達が畑で大事に育てたからウマいんだぜ。
美味しいトマト食えてよかったな。(笑顔
トマトは勝手に生えてこないからな。
色々と世話をしてやるとこんなにウマくなるんだぜ。
育ててくれる人には感謝しなくちゃな。
「ウマいトマトをありがとー」って。
とゴブ達がここをトマト目当てに襲撃しないように話をするぜ。

トマト祭りではとにかく全方向にトマト投げまくろう。
畑で完熟まで育ったトマトは超ウマいんだぜ。
店で売っているのとは全然違うっ!
魅惑の濃い味を楽しむべく、トマト齧りながら投げる。


李月(ゼノアス・グールン)
  ゴブリン
挨拶し篭のトマトアピール
警戒解きたい
トマトの美味しさの話しつつ
彼等の使う調味料や好みの味を聞き
その情報で簡単トマトスープレシピを創作※調理4
こんな食べ方はどう?
彼等に伝授したい


無気力Tシャツ
下黒ジャージ
お前が荒ぶってるなら丁度いいだろ

いくぞービシャ
くそっ…はぎゃっ
腹や肩とか当りまくりトマトまみれ
舐め…!?おまっ何を(赤面焦
ふざけてないでいくぞおらっ!と当てにいくがヒョイと躱され闘志メラッ

屋台
これは!トマト練り込んだたこ焼き発見
見事な食べっぷりに笑顔
自分もぱくりつつ(布教はヤメロ恥かし…
色々巡り
ほっとけば底なし胃袋の相棒に途中から幸腹のフォークで食べさせ財布の平和守る


レシピ考えとく


カイン・モーントズィッヒェル(イェルク・グリューン)
  嫉妬団ってのも暇なんだな
だから、ダメなんじゃねぇの?

ま、ゴブリンがずっといるのも問題だな
思い出作って楽しんで貰って、気持ちよくお帰りって所かねぇ

まずゴブリンへは普通に挨拶
お互いの好きな所や可愛い所でも聞こうか
一通り聞いたら、イェル抱き寄せて
俺も俺の嫁が最高に可愛い
見た所、てめぇらは新婚さんじゃねぇな?
なら、ここで思い出作ったら、2人きりでいちゃいちゃしねぇと勿体ねぇぞ?
(キスして)こういうトマトみてぇな顔の嫁を他の奴に見せるな
俺は可愛い嫁と結婚してるからいいが、他の奴に惚れられたらどうする
邪魔入らない静かな場所でいちゃつけ
2人きりはいいぞ(真顔

無事に説得したら普通に楽しむ
※アドリブ・絡み歓迎


アイオライト・セプテンバー(ヴァンデミエール)
  ゴブリンに負けずに、あたしもじーじといちゃいちゃするのーっ

李月さん達がゴブリンにトマトのレシピ教えてあげるんだって
いいなー、美味しそうだなー、あたしも今すぐ作ってもらいたいなー
って、ふり(というか、本気)をする
いいなーってする人がいたら、ゴブリンも早く作ってみようって思うんじゃないかな?

トマト祭りに参加するんだから、あたしも髪をアップにしちゃおう
ねー、じーじ、あたしのうなじ色っぽい?
ぐっと来る?
……(ちょっと赤面)
えへへ、綺麗だって
「かわいい」じゃなく「綺麗」って言ってもらえるの、あんまりないから、嬉しいな

トマト投げは遠慮しないよー
どうせあとでシャワーかぶるもん
みーんな狙っちゃうよ
ばきゅーん☆



 わいわいがやがやと楽しげな様子の中、宙を舞うのは赤い赤いトマト達。
 つやっつやなトマト達が人々に当たってあがるのは悲鳴ではなく笑い声だ。
「嫉妬団ってのも暇なんだな。だから、ダメなんじゃねぇの?」
 カイン・モーントズィッヒェルは宙を舞うトマトを見ながら呟く。
 それは、先程ゴブリンに吹っ飛ばされたはずなのに、根性でだろうか、復活している嫉妬団へと向けての辛辣な一言だ。
「カイン、論点ずれてますから」
 的確に突っ込むのはカインの妻のイェルク・グリューン。
 嫉妬する前に自分を磨けばいいのに……とイェルクも思っているのだけれど。
 そんな妻へ視線を向けつつ、肩をすくめるカインに苦笑を零した所で、アイオライト・セプテンバーが声をあげた。
「ゴブリンってあれかなー?」
 じーじとゴブリンに負けずにいちゃいちゃする! と宣言していたアイオライトは、ヴァンデミエールと手を繋ぎ共に歩きながらそのゴブリンを探していたのだ。
「あーそれっぽいな」
 Tシャツとジャージ半パンツという汚れてもいい服に身を包んだセイリュー・グラシアが瞳を細める。
「それにしても、一心不乱に食べてるね」
 ラキア・ジェイドバインがそういうのも無理はない。
 飛び交うトマトなぞなんのその。
 一応彼らの周りには先程の悲喜劇をみていたおかげか人はいないのだが。
 それでもやはり、近くではトマトが飛び交っているというのに一心不乱に2人で食べさせ合っている姿は、こんな状況でなければ微笑えましくも見えたかもしれない。
 そんなゴブリン達に一番最初に話しかけたのは李月だった。
「やぁ、こんにちわ」
 視線を合わせて挨拶する彼は、籠に入ったトマトをゴブリン達に見えるように掲げて見せる。
 そんな彼に視線をやったあと、ゼノアス・グールンは李月より前にでて、持っていた籠をゴブリン達の方へと差し出した。
 今はまだ攻撃の意志を示さないゴブリン達だけど、何かあった際、彼を守れるよう、そんな意図も込めてだ。
「ほら、これ土産だぜ」
 困惑したようにトマトと彼らを交互に見詰めたゴブリン達は、ひとまず棍棒を足元に置くのだった。


 その様子に、話は聞いてもらえそうだと判断したウィンクルム達はほっと息をつく。
 今回、彼らは説得し(楽しい思い出も作ってもらいつつ)ゴブリン達にお引き取り願う方向で考えていた。
 人間とゴブリン、やはり同じ場所でずっと過ごすわけにはいかないのだから。
 皆がさて、次はどう攻めようかと顔を見合わせた時、流れをみていたカインが動いた。
「よぉ、初めまして」
 カインとイェルクが挨拶をすれば、ゴブリン達も手を繋いだまま軽く頭を下げる。
 一体なんなんだ、と不思議そうな瞳で見つめられるのに、仲良しみたいだけれど相手のことをどう思っているのかとカインが問いかければ、明解な答えが返ってきた。
 瞳が好き、声が好き、そんなシンプルだけど愛情のこもった答えにイェルクが微笑む。
「ひゃっ」
 そんなイェルクを抱き寄せて、カインが俺も自分の嫁が最高に可愛いと頷く。
「見た所、てめぇらは新婚さんじゃねぇな?」
 その言葉にゴブリン達が反応を示すのをみて、腕の中のイェルクを抱きしめながらカインが頷く。
「なら、ここで思い出作ったら、2人きりでいちゃいちゃしねぇと勿体ねぇぞ?」
 そんなカインの腕の中ではにかみ寄り添うイェルクは、カインが先輩風を吹かせているものの、これは絶対便乗して惚気ていることを理解していた。
 ただ、それも説得のためならば仕方がないと意を唱えることはしない。
「私の良人はいつもこうなんですよ。困った人です」
(これは嘘ではないしな)
 そういう妻にキスを一つ。
「こういうトマトみてぇな顔の嫁を他の奴に見せるな」
 俺は可愛い嫁と結婚してるからいいが……とカインが言い、自分が照れている間に、真顔で何を言ってるんだ、とイェルクが心の中で突っ込む。
「他の奴に惚れられたらどうする」
 ソレハコマルー! と声をあげるゴブリンに、そうだろう? とカインも頷く。
「邪魔入らない静かな場所でいちゃつけ」
 2人きりはいいぞ。
 そう真顔で言われれば説得力が倍増だ。
 しかも彼の腕の中のイェルクが恥ずかしそうながらも幸せそうに見えるのだから、説得力があった。
 ぎゅっと手を握り合う2人は、視線を交し合うがしかし、残念ながら、彼らはゴブリンの性も強かった。
 いちゃいちゃは、もう少しあとでも出来る。
 まるでそういうかのように、2人の視線はトマトの山へ。


 そんな2人へ、ラキアが近づく。
「突然村の人がトマトぶつけてゴメンね」
 ラキアの言葉に、トマトをぶつけられた時のことを思い出したのだろう。
 どこか警戒を強めたゴブリンへとセイリューが声を掛ける。
「トマト、ウマいか? ウマいよな」
 警戒していたゴブリン達だったけれど、セイリューの微笑みを浮かべたその問いかけに、少し警戒を解いたようだ。
 トマト愛と書かれたTシャツの文字を読むことはゴブリン達に出来なかったけれど、なんとなくそういう雰囲気からも彼がトマト好きだということが理解できたようで。
(セイリュー、ドコで見つけたの?) 
 ちなみに同じTシャツに身を包むラキアは、一体このTシャツをセイリューが見つけたのか疑問に思っていた。
 お店で売ってるのか、もしかして手作りという線もなきにしもあらずだろうか。
「ここの人達が畑で大事に育てたからウマいんだぜ」
 美味しいトマト食べれて良かったな? と満面の笑顔のセイリューに、おずおずと頷くゴブリン達。
 一体彼らが何の目的で自分に話しかけているのかという疑問はあるのだろう。
「手をかけて育ててるからこのトマトは美味しいんだよ。大事に育てた物だから、勝手に畑から持って行っちゃ駄目だよ?」
 ラキアがセイリューの言葉を引きつぎそう言い、視線を合わせてさらに説得する。
「君達も大事な物勝手に盗られたら怒るでしょ」
 ウンウン、ヤダー! と声をあげるゴブリン達にセイリューとラキアがそうだよねと頷く。
「トマトは勝手に生えてこないからな。色々と世話をしてやるとこんなにウマくなるんだぜ」
 育ててくれる人に感謝しないとな。と言われ、このトマトがどこからか湧いてくるものではないとゴブリン達にも理解は出来たようだ。
 襲撃しないように、という意図を持っての説得であったが、ゴブリン達にどこまで通じたのかはちょっと分からなかった。
 ただ、大事な物を勝手に盗るのはダメだと言う事は理解したようなのでゴブリンの集団がここを襲うことはないだろう。
 だがしかし、だからといって今すぐここを去る理由にはならなかったようだ。
 動こうとしない様子をみて、次に動いたのは李月だ。



「旨い食べ方の話をしに来たぜ」
 話の流れを見ていた李月が、説得役を交代しようとゴブリン達へと話しかけた。
 李月とゼノアスもセイリュー達と似たようなTシャツに身を包んでいるためか、それともトマトを貰ったためか。
 2人に視線を合わせ、ゴブリン達は話を聞く気になっているようだ。
 どんな調味料を使ってるのかといわれれば、どこから持ってきたのか分からないが、塩ぐらいのようで。
 火を起こすことは出来るようなので、焼いたり煮たりは出来るらしいというのを拙い言葉から理解して、李月が少し考え込む。
「そうだな、こんな食べ方はどう?」
「ナニー?」
 興味を引くように一旦、言葉を切った後、出来るだけ分かりやすい言葉を選んでレシピを教えて行く。
「ハーブはあるんだよね? なら、トマトとハーブと肉を煮込んでスープなんていいんじゃないかな」
 それに塩を味を見ながら入れていくんだよ、と伝えておく。
 あまり細かい数字をいっても彼らにはどうも覚えられそうにもないので、物凄くおおざっぱではあるが、なんとかなるだろう。
「そうそう、ハーブや野菜を使ったサラダもいいかもね」
「あぁ、あとトマトソースを作っておけば色々アレンジききそうだしな」
 ゼノアスの力説も手伝い、オシエテー! とゴブリン達も乗り気のようだ。
 そんなに沢山のレシピを教えても混乱するだろうと、簡単なものを三つばかり。
 それでも今までそんな食べ物を作りだしたことがないゴブリン達の興味はマックスである。


 李月の言うメニューを、アイオライトも瞳を輝かせながら聞いていた。
「いいなー、美味しそうだなー、あたしも今すぐ作ってもらいたいなー」
 ね、じーじ! と笑顔でヴァンデミエールを見上げる。
「そうだねぇ、たしかに美味しそうなレシピだ」
 ヴァンデミエールも少々大げさというぐらいに頷く。
 そう、2人は李月達にのっかり、盛大に「お家に帰って早く作らなきゃ」感を煽る作戦なのだ。
 こんな風に気分を盛り上げて行けば、きっとゴブリン達も自ら進んでここから去って行ってくれるだろう。
 ……という風になるはずなのだが、アイオライトは半分以上本気で自分も同じ料理を作って貰いたかった。
 その気持ちが込められた言葉に、ゴブリン達も気分が否応なく高まって行く。
「帰ったら白露に作ってもらおうか」
「そうだね、パパに作ってもらうの!」
 本当に美味しそうなレシピゆえ、今日実際に作ってもいいかもしれない……と周りの皆も思う。
 とはいえ、とヴァンデミエールが視線をちらりとゴブリンへ。
「僕たちは終わるまでは我慢しないといけないから」
 ちらりと見たゴブリン達は、自分達ならば今すぐにでも作れるということに気が付いたようだ。
「そうそう、こんなに美味いトマトなら今すぐにでも料理するべきだよな」
「そうだよね、俺たちは出来ないから残念だよ」
 セイリューとラキアも言葉を合わせれば、ぐっとゴブリン達が言葉に詰まる。
 じりじりと足が動いてるを見たイェルクが、そっと目配せをすればそれに気が付くカイン。
「2人っきりで料理して食べさせあうのもいいもんだ」
 カインのそのダメ押しに、2人が漸く踵を返す。
 貰ったトマトはとても美味しそうに熟れていて、教えてもらった料理を作ったら最高に美味しいだろう。
「人間、アリガトー!」
 手をぶんぶん振って今度こそ外へと去って行くゴブリン達。
「痛むから今日中に使えよー!」
 手を振るゼノアスにオー! と声が返る。
「終わったねー!」
 アイオライトが去って行くゴブリンに手を振りながら言えば、ヴァンデミエールも頷く。
 そして、その緑色の瞳を細め……楽しげにトマトを投げ合う人々へと向けられた。
「さて、僕たちも参加しようじゃないか」
 にこりと笑んだその笑みは、どこか艶を含んでいたのだった。


(倫理の枷を放たれた老若男女が、公共の場で人目も厭わず、どろりとした液体に汚れて……)
「実に、いい」
 いや、どろりとした液体はただのトマトの液体なのだけれど。
 ふふっと妖艶に微笑むヴァンデミエールはぶれなかった。
 通常運転な彼の視線の先には楽しげに投げ合う姿と、髪を結いあげようとしているアイオライトの姿。
「ねー、じーじ、あたしのうなじ色っぽい?」
 ぐっと来る? と見せられたうなじは瑞々しくヴァンデミエールの前にと晒される。
「髪を整えたんだね、嬢はうなじも綺麗だよ」
 その言葉に、アイオライトの首筋が赤く染まる。
(おやおや、嬢までトマトみたいに真っ赤になっちゃって)
 それを視界に収め、瞳を細めて見守る。
 見守られているアイオライトは、えへへ、と笑みが口元に浮かんでいた。
(えへへ、綺麗だって)
 可愛いではなく、綺麗と言ってもらえるのはあまりない。
 だからこそ嬉しくてぱっと浮かんだ笑みはとても幸せそうで、見ていたヴァンデミエールも気がつけば口元に笑みが浮かんでいたのだった。
 トマト投げは遠慮しないよーと宣言していた通り、アイオライトの投げる手は止まらない。
 どうせあとでシャワーを浴びるのだからと全身トマトまみれだ。
 同じく、トマト祭りに関しては手加減せず正々堂々と戦おうとヴァンデミエールも宣言していた。
 そういうわけで、アイオライトにも投げることがあるわけだけれど。
(といっても、僕も若くはないからどこまでやれたものだか)
 童心に帰って投げたトマトが、丁度近くに居た嫉妬団にあたったようだ。
 戦闘とはまた違った体の動かし方だが、やけにそれが爽快である。
「嬢、トマトまみれの僕はどうだい?」
 嫉妬団からの総攻撃を受けたヴァンデミエールに視線をやり、にこりと微笑む。
「じーじ、かっこいいよー」
 そんなじーじもかっこいいという言葉に微笑み浮かべて次のトマトへ。
「みーんな狙っちゃうよ」
 ばきゅーん☆
 投げられたトマトは、ヴァンデミエールの加勢もあって皆へと当たって行く。

「わっ!」
 李月に飛んできたトマトは、どうやらアイオライトとヴァンデミエールからのもののようだ。
 無気力と書かれたTシャツへと見事被弾する。
 反撃を試みた李月が身につけるTシャツは、ゼノアスとある意味お揃いだった。
「オマエそれ着んのかよ」
「お前が荒ぶってるなら丁度いいだろ」
 そんな会話を少々したあと、黒ジャージで挑む彼らは機動力はあった。
「くそっ……はぎゃっ」
 いくぞー! と反撃の狼煙はトマトの爆撃に敗れ、肩や腹に当たっていく。
 しかし、それでも彼の頭上にトマトが当たらないのは伸びたゼノアスの腕に払い落とされたからだ。
 同じように爆撃を受けているはずなのに、ゼノアスには余裕の色が見える。
 それはトマトの軌道をしっかりみているからだろうか。
 そして、彼には余裕があった。
 トマト塗れになっている相棒をみる余裕が。
「舐め……?!」
 なんとも美味そうだ、というのはトマトというより相棒の方で。
 肩についたトマトを舐めれば、李月の顔がトマトのように赤く染まる。
 そちらのほうが美味そうだ、と思うゼノアスだったけれど、李月がてれからかトマトをゼノアスの方へ投げてよこす。
「ふざけてないでいくぞおらっ!」
 しかし、そんな彼の投げるトマトも反対の方向へ避けてしまえば、闘争心を煽られたのだろう。
 受けてたとうと全力でかかっていくゼノアスと共に、いつしか笑いあうのだった。


 セイリューが投げたトマトは、2人を狙っていた嫉妬団へと上手く被弾し、嫉妬団が退散していく。
 それを見ながら、投げるはずだったトマトをもぐりとかじってみれば、濃厚な味が広がって。
「店で売っているのとは全然違うな!」
 セイリューったらと微笑みながら、ラキアも手に持ったトマトへと視線をやる。
 畑で完熟まで育ったトマトは超ウマいんだぜ。と言っていたセイリューの言葉通り、すでに香りが濃厚で美味しそうだ。
 これを食べたらさぞかし美味しいだろう……そんな風に思っている彼へ投げられたトマトは「トマト愛」の文字へ上手くヒットして、ぶつけた少女がどこか楽しそうに笑うのに瞳を細めたラキアが呟く。
「よく熟れてて痛くないね」
 だよな、とトマトを齧りつつ投げているセイリューをじっとみたあと、ラキアの口元に悪戯っ子的な笑みが浮かぶ。
「セイリュー!」
 えーいっと投げられたトマトは、見事ふりかえったセイリューの「トマト愛」へと被弾するのだった。

 カインが守るより先に、投げられたトマトがイェルクの頬に飛び散る。
 それをそっと指先で拭ってやりつつ、近づく距離を零にして。
「顔、赤いぞ」
 誰にも見られない、そんな隙をついてのキスに、トマトよりも赤くなったイェルクに微笑む。
「私がトマトになるのは、良人のせいだということをお忘れなく」
 我ながら恥ずかしいことを言う、とイェルクは思うけれど。
 それでも、そんな風に言えるのはカイン相手だからだ。
 覚悟して下さいね。
 それはトマトにか、それとも別のなにかにか。
 そんな2人の会話の間にも、トマト投げは止まらない。
「カイン、反撃しましょう」
 イェルクの言葉にふっと口元に笑みが浮かぶ。
「そうだな、行くか」
 トマトを手に、先程投げてきた相手に投げ返すカインがその答えを聞くのは、当分先になりそうだった。



 運動もおわれば、トマトの屋台巡り。
 さっぱりとしたアイオライトと、ヴァンデミエールが手を繋ぎながらのんびりと屋台をみて歩いている。
 時々立ち止まっては視線を交わし笑いあう2人は、やがてデザートトマトなる屋台で足を止めたのだった。
 甘い甘いトマトは、冷たいデザートになって体を癒してくれるだろう。
「一緒に食べよ?」
 きらきらとした笑顔のアイオライトに、ヴァンデミエールが頷きを返す。
 さて、どんなお味だろうか。


 そんな2人の近くを李月とゼノアスが通りかかり手を振れば、2人からも手を振ってくれる。
「あれも美味しそうだけど」
 ゼノアスがちらりとデザートへ視線をやりつつ呟くが、しかし彼のギラギラト輝く瞳は、まだまだそれだけで満足出来るとはいっていなかった。
 その時なんだか香ばしく美味しそうな香りが漂ってくるのに気がついた。
「これは!」
 李月の瞳が輝く。
 それはトマトを練り込んだたこ焼きだったのだ。
 さっそく買って一口ぱくりと食べれば、おいしい! と声が上がる。
 たこ焼きを作っていたおっちゃんがその様子をみて、お前さんはたこ焼きが好きなんだなと声をかけた。
「おう! たこ焼き大使だぜオレは!!」
 ゼノアスのそのセリフと食べっぷりに、おっちゃんも気を良くしたのだろう。
 李月もゼノアスの食べっぷりに笑顔が浮かべていたのだが、そんな彼らへおまけをどどーんと追加する。
「たこ焼き大好きー!」
 彼の笑顔とその心からの賞賛に、気が付けば人々が集まってきていて。
(布教はヤメロ、恥ずかし……)
 ぱくりと食べつつ、いつの間にか布教し始めていた相方に心の中で突っ込む。
 さて、そろそろ懐の財布の中身も心配しなくてはいけないだろう。
 おまけしてもらったというのに残りも少なくなったたこ焼きを幸腹のフォークで食べさせてやりつつ、李月は、あーんと餌付けされるゼノアスに口元が笑みの形に。
 彼の胃袋はなんだかそんな李月の愛情も貰っていっぱいになりそうであった。

 セイリューとラキアも屋台を見て歩いていた。
 李月とゼノアスが食べているたこ焼きに視線をやり……美味しいぜ! と布教されるのに近寄って話を聞いてみる。
 どうやらトマトの味を引き立てるために味はあっさりめらしい。
「セイリュー、美味しいよ」
「お、そうだな」
 あっさりめのたこ焼きは、何個でもいけそうだったが、それでお腹いっぱいにするのももったいない。
 それに、トマトを今後も買ってもらえるかもしれないとなれば、屋台の人たちもレシピを快く教えてくれる。
 交流が生まれれば、もっと美味しく感じられるのだ。
「よし、次はあっちだな」
 きらきら笑顔を浮かべるセイリューと共に、ラキアも足を進めていく。

 トマトのスープを手に入れたカインとイェルクは、人が少ない路地にてのんびりと楽しんでいた。
 それぞれトマトが入っていながらも違う味を楽しんでいた2人が交わすキスは、どこか甘酸っぱくて。
「美味しいな?」
 それはスープのことか、それとも愛おしい妻のことか。
 赤くなった頬を辿り、カインは微笑みを浮かべる。
 その答えは、きっとイェルクには伝わってしまっているだろう。
 2人は寄り添いながらスープと互いの温もりを楽しんでいく……。

 トマト祭りもそろそろ終わりが見えてきた頃。
「トマトスープ今度オレに作れよ」
 肩を抱き帰路につくゼノアスがそう言えば、少々考え込んだ李月が眼鏡を月の光に輝かせ後、小さく頷く。
「レシピ、考えておく」
 その言葉にゼノアスが嬉しそうに微笑みを浮かべたのと同じ時間。
 ゴブリン達は教えて貰った料理を作り終え、カイン達に負けじといちゃいちゃと食事をしているのだった。
「オ祭リ、楽シカッター!」
 でも、大切な人を誰かに盗られるのも、大切な物を盗まれるのも、どちらも嫌だから。
 ゴブリン達はそれを理解して、二度とあの街へは行かないだろう。
 こうして、トマト祭りは無事、ウィンクルム達の説得によって無事に終了したのだった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月09日
出発日 07月15日 00:00
予定納品日 07月25日

参加者

会議室

  • 所用で顔出せなくて悪いな
    プランは出してある
    俺も説得方向だが足並み揃えるようイェルの方で書いてあるのでそんな変なことにはならねぇと思う
    間も無く出発、楽しく過ごせるといいよな

  • プランは提出した。
    ゴブ達とトマト祭りちょっと楽しむか、と思ってたけど。
    プランはゴブ説得でお引き取り、の方向にしておいたぜ。

    後はトマトぶつけまくりーの、屋台でトマト食べまくりーの。
    しかし文字数が色々とキビしく・・・天の采配に超期待するぜ。
    楽しい時間がすごせますように!

  • [14]李月

    2016/07/14-23:18 

    僕もプラン提出しました。
    うまくいくといいなぁ(祈

  • たぶん(強調)パパが美味しくアレンジしてくれるから、だいじょうぶ♪

    プラン提出しましたっ

  • [12]李月

    2016/07/14-22:38 

    >レシピ
    自由に使ってやってください。
    でもゴブリン向けの味付けですよ?

  • あーなるほどー>調味料
    じゃあ、調味料は却下だね
    …ついでに、あたしも、レシピもらっていい?
    帰ったらパパに作ってもらうんだーー♪

    で、プラン書いてきます

  • [10]李月

    2016/07/14-19:51 

    どんなトマトスープかはスキルのアドリブ頼みなので僕もわからない…。
    煽りは歓迎です!
    調味料渡すのはしない方がいいと思うよ。
    調味料欲しさに人の家やって来るとかなったら困るから(汗)

    カインさんとセイリューさんはどうするのかな。
    がっつりゴブリンと遊ぶつもりだったらこっちとかみ合わなくなるので
    ご迷惑になるのではと心配だな。

  • トマトスープ美味しそうー☆
    ミネストローネみたいなのかな?
    たぶん大丈夫だと思うよ
    なんなら調味料も渡したほうが、いいのかな?

    あたし、李月さん達がレシピ教えるときに「いいなー美味しそうだなー」って演技(たぶん本気)してもいい?
    そういうふうに煽ったほうが、ゴブリン達もすぐに帰りたくなるかなって思って

  • [8]李月

    2016/07/14-18:58 

    >アイオライトさん
    ゴブリン対応してからお祭りに参加の流れですね。

    イラストは分りやすくていいですね。
    トマトスープの作れたらこうなるよというイラストなんかあれば興味は引けるかもしれないです。
    文字は多分彼らは読めないと思うのでイラストで解説みたいなのであればいいのかも。

    トマトスープにしたのは材料が熟れたトマトなのでこれだとスープかソースだろうなと思ったので。
    レシピは「簡単トマトスープレシピ」とプランに入れるつもりなのでゴブリンでも作れるんじゃないかと。
    エピの難易度的に大丈夫と思いたい。

  • >李月さん
    はーい、協力はだいじょうぶだよ
    あたしは何すればいいかな?
    ゴブリンさんたちはなるべく早く帰ってもらったほうがいいなら、最初にゴブリンを探す?

    ゴブリンは「知能は三歳児程度。」だから、難しいレシピじゃないほうがいいよね
    わかりやすいイラスト付きのメモを渡すってのはどうだろ?

  • [6]李月

    2016/07/14-12:42 

    >アイオライトさん
    ありがとうございます。

    ゴブリン対応は協力パートなのかな?と思ったんですが、個別希望なのかな皆さん。
    僕の方法をやっても良いよという事でしたら
    良ければご協力頂けると嬉しいです。
    ゴブリンは最初にちょっかい掛けられてますから
    話が出来る様に警戒を解かなくちゃいけなさそうです。

    僕等が予定しているのは以下です。
    挨拶して声掛けして
    トマトの食べ方、調味料、好みの味聞いてレシピ創作、伝授。
    篭いっぱいのトマト準備、「痛むから~」の声掛け。

    すぐ帰って早速作ってみよう、と思わせるのが狙いです。

  • 皆さん、今回もよろしくーーっ

    ………え? ←ゴブリンに帰ってもらう方法をまったく考えてなかった人
    楽しんですっきりすれば、それで帰ってくれるかと思ってた・汗

    うん、李月さんのアイディアすっごくいいと思うなっ

  • [4]李月

    2016/07/14-00:11 

    李月と相棒のゼノアスです。
    最終日ですが面白そうなので入らせて貰いました。
    どうぞよろしくお願いします。

    ゴブリンにやんわりお帰り頂く方法を考えてきました。

    トマトスープのレシピを伝授
    お土産に篭いっぱいのトマト
    「痛むから今日中に使って」

    この点を踏まえれば自発的に帰ろうと思ってくれるんじゃないかと。
    僕は調理4なのでゴブリンから彼らが使っている調味料なんかを聞いて
    その場でレシピを創作する事は出来るんじゃないかと思うので
    これで交渉してみたいんですが、いいでしょうか?


PAGE TOP