プロローグ
夏本番を迎え、ゴスミスポーツが経営するプール施設はこの度屋外プールを開放した。
ごく普通の長方形プールのほか、流れるプールやウォータースライダー、飛込み台。休憩用のベンチ。
敷地を取り囲む、南国を思わせる木々の植え込み。
その植え込みの隙間から、女子たちの熱い視線……。
あの人、いい筋肉してるわ〜。
やっぱ男は大胸筋よね。
いえ、上腕筋よ。
えー、あたしはそんな筋肉質な人よりスリムな人のほうがいいわ〜。
なんてひそひそ。
会話の間に、「ゴブっ、ゴブっ」という笑い声が混じる。
そう、女子は女子でもゴブリン女子だ。
ゴブリン女子たちは腕力も意思も強い。
これ、と決めた男性を力づくで手に入れるのだ!
A.R.O.A.本部にゴスミスポーツスタッフが泣きついてきた。
「なんとかしてください!」
聞けば、屋外プールを利用する男性が、ゴブリンたちに連れ去られる事件が連続し、客足がすっかり遠のいてしまったと言うのだ。
ゴスミスポーツ側の要望は、ゴブリンの退治と誘拐された男性6名の救出。
ゴブリンたちの棲家は明らかにされていない。
が、同じ群れのゴブリンが来ているようなので、皆同じ棲家にいるだろう、とのこと。
早急にこの群れの棲家を突き止め、誘拐された男性6名を助け出さなければならない。
一番確実と思われる方法は、任務にあたるウィンクルムのうち何名かが囮となりゴブリンに誘拐される。それを残りのウィンクルムで尾行し棲家を突き止めるという方法。
「この群れのゴブリンは肉体美に弱いようです」
囮役には肉体自慢の者が適任ということだろうか。
「ウィンクルムの皆様の肉体美を引き出すべく、様々なタイプの水着をご用意しますので!」
それは果たしてありがたいのかありがたくないのか。
しかし、連れ去られてしまった男性はいったいどうなってしまったのだろう。
「おそらく、ゴブリンのお婿さんにされてしまうのかと……」
なんと!
ということは、この任務に失敗してしまうと、囮役となったウィンクルムはゴブリン女子の餌食……もとい、お婿さんにされてしまうのか!
なんて危険な依頼なのだろう。
失敗は許されない。多分。
解説
囮役と尾行役に別れてください。
囮役の数×2のゴブリンが現れ、囮役を誘拐します。
囮役と尾行役、人数のバランスが悪いと尾行の成功率が下がります。
尾行が成功した際には、合計20匹前後のゴブリンの群れを相手に戦い、誘拐された男性たちを救出することになります。
囮役は自分の身体が最も美しく見えると思われる水着をプランに記載してください。サーフタイプでもスポーツタイプでも六尺褌でもゴスミスポーツで用意してくれます。
うまくゴブリン女子の目を引いて、ゴブリン女子たちが誘拐したくなるよう仕向けてください。
囮役のバトルコーデは、尾行役が持って行き、戦闘前に装備することになります。
仲間がゴブリンのお婿さんになってしまうことのないように、健闘を祈ります。
ゲームマスターより
夏ですね〜暑いですね〜、ゴブリンとか、暑苦しいですね〜。
コメディ色強めのアドベンチャーですので、お気軽に参加していただけると嬉しいです!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
*尾行役 ランスの方がマッチョなのは一応認める でもそこは好みの問題だからな(むう 物陰に隠れ観察 ランスの内ポケットのスマホの位置表示(定番アプリ)でも位置把握 通話状態のそれからの音声でも状況把握 ⇒敵の大体の数と位置を事前に掴む 見張りの居ない手薄な方向を探し、そこから静かに隠れて接近 敵がまったく居ない場所が有れば気付かれない間に要救助者を救出 救出に絶対に敵に気付かれる配置の場合、奇襲して敵が戸惑う間に救助したい 縛られてる者が居たら縄を切り、 ランスに杖を放り投げる 避難完了とランスの用意が出来るまでは俺が鞭でお相手するぜ *拘束と広範囲への振りぬきとで威嚇して時間稼ぎ で、ランス… 何もされてないよな?(じっ |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
囮役はこのオレだ。 水着は競技用タイプ。 プールで泳いでトレーニング。 さらりと体鍛えているぜアピール。 うむ、我ながら良い筋肉。鍛えるって素晴らしい(自賛) 鍛え上げられた筋肉が美しいことに異存はない! だが無理矢理に攫うのはどーなんだ? ゴブリン女子の皆も、自負分の筋肉美に自信があるなら、そこをアピールしてさ。 自分を好いてくれる相手を探す方がいいんじゃね? と攫われたらゴブリン説得を試す。 ラキア達が助けに来てくれたら合流後即トランス。 「オレ達を婿にするなら戦って勝ち取れっ!お前達が負けたら素直に帰れ!二度と来るなよ!」とゴプリンと戦う時宣言しよう。 煽った責任もあるし、オレは最前線で剣を振るい敵を抑えるぜ。 |
アイオライト・セプテンバー(白露)
あたしがちゃんと守ってあげるから、パパが囮ね! だってパパのおっぱいはあたしのだもん パパの水着もあたしが選ぶー はいこれ、スク水(男子用)! スイムキャップもあるよ パパ若く見えるから、絶対似合うよ☆ それとも、メッシュのメンズビキニにする? ゴブリン尾行するために、地図があったほうが迷わないかな そろーっと…あ、パパ、ゴブリンの子に優しくしてる…むっ いいもん、あたしも後でなでなでしてもらうもん ゴブリン見付けたら「ひかえおろー」印篭使っちゃう その間に、パパ達に誘拐された人達を解放してもらおう で、あたしはゴブリンへ突撃して混乱させちゃうよ えいっ、パパを放してよー パパといちゃいちゃするのはあたしだけだもーんっ |
夏の陽射しが眩しい屋外プールは、人の気配が全くなかった。
ゴブリンに狙われているのだから仕方がない。
「あたしがちゃんと守ってあげるから、パパが囮ね!」
アイオライト・セプテンバーの「あたしが守ってあげる」という言葉に、白露はうっかり感動しそうになった。が。
「だってパパのおっぱいはあたしのだもん」
生まれかけていた感動は泡沫のごとく消え去った。
「アイ、胸だけでなく、まんべんなく全身を守って欲しいのですが……」
という白露の言葉は最早聞こえていない様子。
「パパの水着もあたしが選ぶー」
アイオライトは鼻歌まじりに更衣室に並べられた水着を見てまわる。
「さて、俺はどんな水着にしようかな」
ヴェルトール・ランスが当然のように水着を選び始める。
彼の中ではすでに自分が囮役、アキ・セイジが尾行役と決まっているようだ。
(むぅ……確かに俺よりランスの方がマッチョなのは認める、一応)
肉体に自信のあるほうが囮役になるのも自然な流れ。
(でもそこは好みの問題だからな)
ゴブリンに好まれても……と言われれば確かにそうだが、それでもなんだかちょっぴり悔しい。複雑な男心。
セイリュー・グラシアは一足早く競泳用水着に着替え、己の姿を鏡で確かめる。
「うむ、我ながら良い筋肉。鍛えるって素晴らしい」
そんなセイリューを始めは微笑ましく見ていたラキア・ジェイドバインだったが、ふと、ある心配が頭をよぎる。
(セイリューって体鍛えるの大好きだからゴブ子達と変に話が合っちゃうんじゃ……!)
ゴブリン相手に本気で嫉妬しそうになるラキア。
「変な意気投合とかしないでね」
思わず口をついて出た言葉に、セイリューは不思議そうな顔をした。
「あ、これがいいかも!」
アイオライトが声を弾ませる。気に入った水着を見つけたようだ。
「はいこれ、スク水!」
ちゃんと男子用ですから、大丈夫。お名前書いたタグも付けたよ!って、問題はそこではない。
「スイムキャップもあるよ」
そこも問題ではない。
「水着にこだわりはありませんけれど、スク水はどうでしょうか」
白露は優しく説き伏せようとする。しかし、アイオライトには効果がなかった。
「パパ若く見えるから、絶対似合うよ☆」
だから、そういうことではなく。
「流石に『1年A.R.O.A.組 白露』のタグが付いた水着でうろちょろするのは……」
「それとも、メッシュのメンズビキニにする?」
「スク水でいいです」
白露はがっくりと肩を落とした。なぜメッシュのメンズビキニまで用意してあるのかと多少恨めしく思いながら。
水着を選んでいるランスに、セイジは、ポケットの付いたサーフパンツを勧めた。
「ポケットがあれば、スマホが入れられるかなと思って」
そうすれば、位置表示アプリで位置が把握できるうえに、通話状態も確認できる。とセイジは説明する。
なるほど、とランスは思ったが、別の心配が頭をもたげる。
「うーん、でも、防水の面で心配だよな」
もしここでスマホが壊れてしまっては、プライベートでも今後数日間セイジとの連絡に支障が出るだろう。声が聴きたいときに連絡がとれないなんて、想像するだけで寂しい。
耳を垂れだんだん悲しそうな顔になるランスの様子から、セイジは彼の考えていることが概ね理解できた。
「それもそうだな」
と、スマホ案を引っ込める。
「けど、セイジが選んでくれた水着だから俺はこれ着るぜ」
ランスはにぱっと笑ってセイジから水着を受け取った。
そんなこんなで、囮役三者三様準備ができた。
貸切状態の屋外プールに早速飛び込むセイリュー。
鍛え上げた身体をこれでもか、と見せつけるように泳ぐ。
肉体自慢なら負けちゃいないぜとランスもざぶりとプールに入る。
白露はプールサイドを散歩するふりをしながら、どこかからゴブリンたちがこちらを覗いていないか調べる。
「パパ頑張ってね」
尾行役3人はビーチパラソルの陰から囮役の動向を固唾をのんで見守っている。
明らかに他人の視線を意識した動きで水をかきわけ泳ぎ始めるランスの姿は、セイジにとってあまり面白いものではない。
「むむぅ……」
思わず呻くセイジに、ラキアが苦笑する。
「囮だし仕方ないよ」
とはいえ、実はラキアだって心中穏やかではない。
(セイリューったら、ゴブ子相手に筋肉アピールを……)
ラキアのセイリューを見守る視線に若干怒りが混じっているのは気のせいではないだろう。
2人とも、相手はゴブリンだから落ち着いて。
プールサイドをゆっくり歩いていた白露は、植え込みの葉が不自然に揺れているのに気が付いた。
もしかして……と注視すると、葉っぱの陰にひそむナニカと目が合ってしまった。
「……!」
やはり、思った通りゴブリンだ。
しかも、がっつり目があってしまった。お互いに硬直し、緊張が走る。
さて、どうする。
ここでゴブリンの気を引き誘拐してもらわねばならない。
しかし白露は他の2人の囮役とは違い、自分の肉体に、ゴブリンたちの気を引けるほどの自信は持っていなかった。
身体に自信がなければ他で勝負。
白露は固まっているゴブリンに対し、優しい笑みを作って見せた。
「お嬢さん、私達と遊びませんか」
言葉が通じるかどうか不明だが、ここは雰囲気だ。
「ゴブっ!」
ゴブリンはびくっと身を震わせると、警戒するようにじりじり後退る。
それもそうだろう。これまでは、嫌がる男性を無理やり攫ってきたのだ。
嫌がらずに自らこのように声をかけてもらったことなど、初めてなのだから。
手段を誤ったか。
だが白露は諦めずに、尚も笑顔でゴブリンに手を差し伸べてみる。
「ゴ……ブ……」
ゴブリンは後退を止めると、ごつごつした手で口元を覆い、もじもじし始める。
所詮ゴブリンの頭脳はこの程度なのかもしれない。個体差もあるだろうが。
もじもじしながらゴブリンが出てきた。
その背中を、後ろに控えていた仲間のゴブリンが次々に小突く。
ひゅーひゅー、やるじゃーん、といったところだろうか。
白露がゴブリンと接触したことに気付いたランスは、他のゴブリンたちの注意を引くために、ざばりと大きな水音をたててプールサイドに上がる。
ランスの金の髪から滴り落ちる水が彼の大胸筋を伝い、太陽の光を浴びるその身体をきらきらと輝かせる。
「ゴブぅっ」
筋肉好きにはたまらないショットだ。
白露の柔らかい態度で警戒も解け、少し大胆になっていたのだろう、ゴブリンたちはぞろぞろと姿を現す。
そして、自分たちは受け入れてもらえるかもしれない、なんて思い始めていた。
ランスはセイジが隠れている方向に視線を向ける。セイジはパラソルの陰から少しだけ顔を出しランスと視線を交わす。お互いひとつ頷き、ランスはゴブリンに向きなおる。
「君達どこから来たの?」
笑顔で、ナンパでもするが如く。
これで、ゴブリンたちは完全に勘違いしてしまった。
自分たちは、ここの男性たちに受け入れてもらえる!と。
そうなると、彼女たちは積極的だ。てけてけとランスの方へ走りよっていく。
さらには、「アタシあっちの子も気になっていたのよね~」「アタシも」と言わんばかりに、2匹のゴブリンが筋肉の躍動美しく泳いでいるセイリューの方へと駆けていった。
ゴブリンたちの足音が聞こえたセイリューは、ゴブリンに気付かないふりをして何食わぬ顔でプールの端まで泳いでいくと、さて一休み、といった様子で水から上がる。
そこへ、後方からゴブリンが飛びつき、彼の両の腕にそれぞれ一匹ずつ抱き付く。
一瞬、ビーチパラソルの柄を掴むラキアの手にぴきっと青筋が浮かんだが、彼はそれ以上怒りを表すことは我慢した。
「わー、なんだ、このゴブリンたちは」
若干棒読みなのはご愛嬌。
本来セイリューにとってゴブリン2匹など簡単に振り払える相手ではあるが、あえてゴブリンの好きなようにさせた。
ゴブリンはゴブゴブ言いながらセイリューを敷地の端まで引っ張っていく。
「待てよ、オレをどこに連れていく気だ?」
わざとらしく大声をあげるセイリュー。
引っ張られるままに歩いていく。
「ゴブゴブー!」
ランスと白露の傍にいたゴブリンたちも、同様に彼らの手をひき始めた。
「えーっと、俺たちに、ついてこいってことなの?」
「そんなに強く引っ張らなくても行きますから。乱暴はよしてください。ね?」
「ゴブっ?」
白露の言葉に、植え込みの陰から何かを取り出そうとしていたゴブリンが動きを止める。
白露は、その「何か」がロープであることに気付くが、ゴブリンがそれを投げ捨ててくれたのでほっとした。
この白露の一言がなければ、ロープで縛りあげられて連行されていたかもしれない。
ゴブリンに連れられた囮3人は、植え込みの隙間から敷地外に出てゆく。
「パパ、すぐ助けに行くからねっ」
アイオライトたち尾行役はすぐにパラソルの陰から出ると、囮役が消えていった植え込みの隙間から顔を出し、左右を確認する。
植え込みの向こうは道路になっていたが、このプール施設を利用する人以外の通行はほとんど無い様子だった。
ゴブリンと囮役たちは右方向へと進んでゆく。
「プールのスタッフさんに地図の写しを貰っておいたの。役に立つかな」
「さすが、気が利くな~」
セイジに褒められ、アイオライトはえへっと笑った。
いくら通行量が少ないからといって、いつまでも人目につく恐れのある舗装された道路を進むことはないだろう。いつ物陰に引っこんでしまうかわからないから、目が離せない。
充分に距離が開いたのを見計らい、尾行役3人は道路に出る。
思ったとおり、ゴブリンたちは道を逸れ茂みの中へと入っていく。裸足のままの囮役3人にはなかなかつらい道のりになりそうだ。
茂みの先は、斜面。次第に木々が増えていく。見失う確立も高くなる。
「少し急ごう」
セイジが歩調を速め、ラキアとアイオライトもそれに倣う。
茂みに入れば、足音も大きくなるため、さらに距離を開けねばならない。
「……っ」
アイオライトが足を滑らせ、咄嗟にラキアが手を差し伸べて支える。
足場も悪いのだ。
(こういう場所の尾行は、ランスの方が得意だったかもな)
セイジは前方に見えるランスの背中を見つめる。
ゴブリンと囮役は、先頭に案内役のゴブリン1匹、その後ろに右手をゴブリンに引かれた白露、さらに後ろに同じように右手をゴブリンに引かれたランス、その隣には両手をゴブリンに掴まれたセイリュー。最後尾にもう1匹ゴブリン、という隊列だった。
セイリュー以外がゴブリン1匹ずつしかついていないのは、彼らが初めから友好的態度をとっていたからかもしれない。
「あ、パパ、ゴブリンの子に優しくしてる……むっ」
ゴブリンに警戒されないためであろう、白露はゴブリンをレディのように扱い、木の根が張った場所などでは逆に白露がゴブリンの手を引いてやっている。
「いいもん、あたしも後でなでなでしてもらうもん」
ぷう、とふくれっ面を作り、アイオライトは尾行を続ける。
ゴブリンの目を盗み、セイリューがなにやらランスに耳打ちした。
ランスは一つ頷くと、空いている方の手で、近くの枝を折りはじめる。
「こっちに目印を残しておいてくれてるみたいだな」
セイジが小声でラキアとアイオライトに告げる。
これで、距離が離れて囮役が視界から外れてもなんとか尾行していけそうだ。
囮役の皆の姿が枝葉の向こうに隠れても、ランスが残した目印を頼りになんとか追うことができた。
斜面を登り切ると、遠くに小高い丘と大きな木が見える。
その根元で、囮役とここまで彼らを連れてきたゴブリンたちが向かい合っていた。
「君たちここに住んでいるんだ。何人くらいいるの?」
友好的な態度を崩さないランス。
木の根元はよく見ると大きな穴があいている。
木の根や枯草で覆われ、ぱっと見ただけでは気付かない。
おそらく、その向こうがゴブリンの巣穴であろう。
成人男性には少し狭いかもしれない。誘拐された男性たちはさぞ窮屈な思いをしているだろう。
「ゴブっ」
ランスの言葉を受け、数匹のゴブリンが巣穴に入っていく。仲間を連れてくるつもりのようだ。
「鍛え上げられた筋肉が美しいことに異存はない!だが無理矢理に攫うのはどーなんだ?」
セイリューは、自分の両腕にまとわりつくゴブリンたちにお説教を始めた。
「ゴブぅ……」
セイリューが筋肉に対し自分たちと似た価値観を持っていることを知り、セイリューに対する警戒が和らいだゴブリンは、素直に彼の言葉に耳を傾ける。
「皆も、自負分の筋肉美に自信があるなら、そこをアピールしてさ。自分を好いてくれる相手を探す方がいいんじゃね?」
ゴブリン2匹はしょんぼりと肩を落とす。
その隙をつきセイリューは後方を確認する。
茂みの向こうにラキアたち尾行役の姿を見つけほっとしたように笑むと、口の動きだけで、ここがゴブリンの棲み処であると伝えた。
「ここまで来たら、あとはゴブリンやっつけてパパのおっぱいを守るだけだね!」
アイオライトが拳を握り立ち上がる。目的はそこじゃなくて誘拐された人たちを助けることなのだが。
「よし、行こうか」
ラキアが言い、セイリューに合図を送る。
尾行役3人が駆け出したところで、セイリューはゴブリンたちを振り払い後方へ走る。
ランスと白露もそれに倣う。
「ゴブっ!」
虚をつかれたゴブリンたちだったが、セイリューたちが向かう先にさらに3名の素敵男子がいることに気が付いた。
いや、素敵男子とか言ってる場合じゃない。
彼らは次々にトランスへと移行する。
「ゴーブっ」
キスしてる、羨ましい!じゃなかった、あなたたちウィンクルムだったのーー!
ゴブリンたちは地団駄を踏む。
セイジとランスはハイトランスまで済ませ、ゴブリンたちに「悪い悪い」と悪戯っぽく笑う。
「オレ達を婿にするなら戦って勝ち取れっ!お前達が負けたら素直に帰れ!二度と来るなよ!」
びしっと指をゴブリンたちに突きつけて、声高らかに宣言するセイリュー。
「ちょ……セイリュー、何勝手に約束してるの!?」
セイリューをゴブリンたちに勝ち取られてしまっては大変だ。ラキアにとってかつてないほどに負けられない戦いが、今、始まる!
「まずは俺がお相手するよ」
セイジがひゅん、とウィップ「ローズ・オブ・マッハ」を振るう。
囮役が装備を整えるまで、自分が矢面に立ち時間を稼ぐつもりだ。
ラキアはセイリューにシャイニングスピアを施す。
前線に出て戦う彼の身を護るためでもあるが、今回は違う意味合いも含まれている。
(セイリューに手を出すと酷い目に遭うってゴブ子達に判らせないと!)
そして自分も共に前線に出るため、自身にはシャイニングアローIIを施した。
アイオライトは「ひかえおろー」と印篭を取り出す。
ゴブリンたちの視線が印籠に引き寄せられ、彼女たちの胸に誘拐なんて悪い事をしてしまった、という罪悪感が広がった。
「パパ、誘拐された人たちをお願いね」
「わかりましたよ、アイ」
白露は片手銃ラブフォースエヴァーをしっかりと握る。
巣穴からは続々とゴブリンの仲間たちが出てきている。
セイリューとラキアは、カウンタースキルを身に纏い最前線に身を投じる。
しかし、自分たちから積極的な攻撃はしなかった。
ゴブリンたちの動きをよく見て、極力、彼女たちに危害を加えないようにしているのが他の仲間たちにもわかる。
「さほどたちが悪いゴブリンには見えませんから、命まで奪いたくありませんね」
白露には、なぜセイリューとラキアが積極的に攻撃しないのかが理解できた。
ランスも同意し頷く。が、彼がさきほどから詠唱しているのは強力なスキル「カナリアの囀りII」だったりするのだが。
セイリューとラキアが前衛を張っているが、ゴブリンは20匹ほど。何匹かは彼ら2人の目をかいくぐってこちらまで接近してくる。
セイジは詠唱中のランスを護るように彼の前で鞭を振るい、アイオライトはゴブリンたちを混乱させるが如く、縦横無尽に駆け回る。
「パパといちゃいちゃするのはあたしだけだもーんっ」
そういうことは人前で言わないで、と思いつつ、白露はそっとゴブリンの棲み処へ向かう。
身を屈めて木の根元の穴に潜りこむと、1匹のゴブリンと出くわした。
「ゴブっ」
ゴブリンは怯むが、こちらへ攻撃する気配はない。
白露も銃は構えず、優しく語り掛けた。
「貴女方みたいな美しい方には、誘拐なんかしなくとも、いつかいい人が現れます。だから今は、誘拐した人たちを解放してくれませんか?」
「………」
このゴブリンの群れは、武装などをしている者はいなかった。
だからこそ、皆防戦一手でやり過ごせていたのだが、このままでは埒が明かない。
そこへ。
空中で練られたプラズマ球が、轟音を立てて地に落ちた。
誰もいない、空き地へ。
「!!」
それまでわいわいとウィンクルムたちにまとわりついていたゴブリンたちが、轟音と閃光に度胆を抜かれ、一気に静まる。
ひゅう、と風が吹き土煙が流れてくる。
静けさの中に、ランスの声が響いた。
「力の差は分かっただろう?」
ゴブリンたちから反論の声は上がらない。プラズマ球の爆発に圧倒され、身動きもしない。
「いい女は、花婿が浚うものなのさ。花婿が浚いたくなるような、いい女になってきなよ」
無言のままのゴブリンたち。
アイオライトが再度印籠を取り出す。
「ひかえおろ~。さあさあ、悔い改めるなら今のうちだよ」
「そういうこと」
ランスも印籠を取り出しウインクしてみせた。
ゴブリンたちはがくりと膝をつき首を垂れた。
「良かった。反省してくれたみたい」
ラキアはほっと息をつく。無駄に相手を傷つけることなく事を終えることができそうだ。
「皆さん無事でしたよ」
巣穴から、誘拐されていた男性たちを連れて白露が出てくる。
「パパ!お疲れ様!」
アイオライトが白露に飛びつく。
白露を案内してくれていたゴブリンが、何か言いたげに見上げてくる。
「ダメだよ。パパはあたしのものなの!」
めっ、とアイオライトがゴブリンを睨む。
白露はほんの少し、ゴブリンが気の毒に思えた。
「水着は記念に差し上げますから」
いつまでもこんな水着を持っていたら、またいつアイオライトに「スク水着て~」とねだられるかわからない。
白露が水着をゴブリンに手渡すと、ゴブリンは喜んだらしく、水着片手に舞い踊った。
「じゃあな、ゴブ子!良い相手と出会えるよう祈っとくぜ」
セイリューがゴブリンたちに手を振ると、彼女たちも手を振って見送ってくれた。
誘拐された男性たちの救出は、穏便に終わった。
「もー、パパったら、どうして水着あげちゃうのー」
プールまでの帰り道、不満の声をあげるアイオライト。白露は笑って誤魔化す。
「で、ランス……」
セイジはランスをじっと見る。
「何もされてないよな?」
「何も……って」
尾行中、セイジの視界からランスが消えていた時間がわずかだがある。その時間に何かされていたりしなかったろうかと不安が胸をよぎったのだ。
「何が有るってんだよ!」
笑いながらランスはセイジに体当たり。
「それもそうか」
「だろ?」
ウィンクルムたちの間に笑いが沸き起こった。
依頼結果:成功
MVP:
名前:セイリュー・グラシア 呼び名:セイリュー |
名前:ラキア・ジェイドバイン 呼び名:ラキア |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 木口アキノ |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | 戦闘 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 07月02日 |
出発日 | 07月10日 00:00 |
予定納品日 | 07月20日 |
参加者
- アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- アイオライト・セプテンバー(白露)
会議室
-
2016/07/09-23:23
プランは提出できたぜ。
印篭使用は皆に任せた。
オレ達に堕着る限りの事はした。
後は天の采配に任せよう!
相談とかお疲れさまでした。
上手くいきますように! -
2016/07/09-23:17
印籠でのステレオ説得についてはランスの欄に書いたよ。
「いい女になって、婿に浚って貰うんだよ」路線で諭してると思う。
上手くいかなかったら実力行使するけどね。
プランは提出できているよ。
上手くいくと良いな。 -
2016/07/09-23:03
いちおうプラン出せたよっ
あたし、印ゴブリン見付けたら、被害者の人達に逃げてもらう隙を作るのに印篭を使うって書いた
ステレオで使えたらおもしろいねっ☆
改心してもらえたらいいんだけど、そのためにいい方法思い付かなくてー
いちおうパパに説得してもらったんだけど -
2016/07/09-22:44
土下座印籠は俺も持ってるからステレオでつかってみる?
なにをもって退治と定義づけるかと言う話だと思う。
話し合いでの改心なのか、ボコボコにこらしめるのか、殺すのか。
どれも退治には違いないのさ。 -
2016/07/09-21:41
セイリューさんも今回もよろしくっ
やったー囮も充実だーー(?)
だね、ゴブリンはお婿さん探してただけみたいだから、あんまり傷付けたくないなー
うーん…代わりに肉体美あふれるゴブリンを紹介できればいいんだけど、あてがない(当たり前)
うーんうーんうーん
使用済み水着福袋で手を打ってくれないかなあ -
2016/07/09-20:52
セイリュー・グラシアとLBのラキアだ!
安定のいつもの顔ぶれで安心だな。
囮役は当然、オレでいくぜ!(皆そう思っていただろ?)
ゴブリンの退治と依頼にあるけど。
デミ化もていないゴプリンなら討伐退治するのは気が引ける。
生命が脅かされてた訳じゃないし、
「二度と人攫いしない」という話に持って行ける方が
後々の遺恨は残さなくて済むんだけど。
どーしよう?
ゴブリンとは言え女性に酷い事はしたくないしなぁ。
たとえ超マッチョ系ゴプリンだとしても。
『婿殿を求める、心はやっぱり乙女なの』なんじゃん?
悩ましいトコだな。
オレ達だって人間だからっていう理由で他生物から退治されたくねーしさ。
最初は懲らしめる方向で、どうしてもだめなら討伐な感じで行けないかなぁ。
や、攫われて色々見聞きして情がわいたとかそーいう訳じゃないぞ?
(ラキアの嫉妬溢れる視線が超痛い) -
2016/07/09-17:50
プランにまっさきに書いた一言が「メンズビキニ」でした。
>ゴブリン退治
女の子(一応)退治するのは気が引けるけど、それじゃあ仕方ないかなあ。
武器だけならなんとかなるよね…と、信じたい
そういえば、あたし印篭持ってる
ゴブリンが土下座するかもしれないってやつ
これで、バトルコーディネート整えられるかな?
ゴブリンの棲家ってどんなとこだろ?
それによって救出方法変わりそうだけど、
まーそこんとこは臨機応変にー(投げ遣り -
2016/07/09-16:55
>肉体美に弱い
らしいので、俺のところは相棒が囮になるよ
貧弱なボウヤでし見向きもされないのだろうか(うーむ
>ゴスミスポーツ側の要望は、ゴブリンの退治と誘拐された男性6名の救出。
ってあるから、ゴブリンも退治した方が良いかもしれないと思ったよ。
まず救助して(同時に逃がさないようにしつつ)からの逃がしてた人も合流しての退治かなあ。
バトルコーデに着替えるゆとりもつくらないとか?
せめて武器だけでも・・・
-
2016/07/07-20:33
じゃーんっ(戻ってきた)
ウィンクルム1組から1人ずつぐらいが、囮になればいいのかな?
じゃあ、うちはパパねっ。あたし、女の子だからっ。
べつにゴブリンは退治しなくても、誘拐された人さえ助けられればいいかんじ? -
2016/07/07-08:59
来ちゃった☆
アイオライト・セプテンバーとパパでーす。よろしくおねがいしまーす。
細かいことはまた後で書きに来るね。 -
2016/07/05-02:29
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2016/07/05-00:20