プロローグ
●雑木林の奥へ消えた少女
—―とある日の午後の出来事だ。
首都タブロスのA.R.O.A.本部を、一人の男性が訪ねて来た。
仕立ての良いスーツに、きっちり調えられた横ワケの前髪が印象的な青年だ。
「失礼します……。本日は、こちらに依頼したい案件があって参りました」
「はい、どういった内容でしょうか?」
受付が丁寧に問いかけると、青年は深く息を吸ってから、大声で叫ぶように言った。
「お願いです! どうか、どうか……あの娘を助けてやってください!」
青年は、先ほどまでの落ち着いた態度とは打って変わり、興奮した様子である。
どうやら、かなり情緒不安定な状態のようだ。
「落ち着いてください。……まずは何があったのか、詳しく話してくださいませんか?」
受付が、宥めるような優しい口調で再度用件を問う。
「は、はい……! ――ごほっ……、ゲホッ……」
すると、突如声を張り上げたためだろうか、青年は激しく咽び始めた。
「大丈夫ですか!?」
受付が慌てて青年の元に駆け寄り、その背をゆっくり撫でてやると、彼の呼吸も次第に落ち着いてきたようだ。
「すみません、見苦しいところを……。僕は、エリックと申します。依頼したい事と言うのは、僕の親友の、アンヌの事なんです」
エリック青年の話に寄ると、親友のアンヌと言う女性が、セレッソ村近くの小川へ散策に行ったきり、家に戻っていないのだという。
最後に彼女とエリックが会ったのは、今から三日前。
場所は、エリックの屋敷だったという。
「小川の付近では、最近怪しい人影を見たって噂も出ているんです。もしかしたら、盗賊や人攫いにさらわれたのかもしれない……! あの日、僕が彼女を止めていれば、こんな事にならなかったのかもしれないのに……」
「セレッソ村ですか。確か、あそこの小川近くでは、オーガの目撃情報もありました」
受付が険しい表情で言うと、エリックは力なく呟いた。
「オーガだろうと盗賊だろうと、どうだっていいんです……。とにかく、アンヌを探していただけないでしょうか?」
「かしこまりました。依頼を出しておきます」
「あぁ……ありがとうございます! ごほっ……、僕も自分でアンヌを探しに行きたいんですが、肺病を患っていて……。医者に、なるべく外出は控えるように言われているんです」
エリックは、胸元を手で押えたまま、受付に何度も頭を下げた。
「本当に、よろしくお願いいたします……。彼女の身に何かあったら、僕は……。――どうか、お願いします!」
外に迎えの車を待たせているというエリックは、涙で瞳を潤ませながら、重い足取りで、A.R.O.A.本部を出て行った。
彼が去った後、受付は今回の依頼内容をまとめてみた。
・エリックの話によると、アンヌは小川へ向かう前、特に変わった様子はなかったらしい。
ただ、「雑木林を散歩したいわ」と、エリックに漏らしていたという。
・「一人で行くのは危険だから、僕の召使いを同行させよう」とエリックが提案したところ、アンヌは慌てて首を振り、「一人で大丈夫よ!」と同行を拒否していた。
・セレッソ村の小川付近ではここ最近、怪しい人影がうろついているという噂があった。
現に、雑木林を散策中、突然柄の悪い数名の男たちに取り囲まれ、金品を奪われたという村人が多くいる。
中には暴力を振るわれたり、背後から襲われて食料や荷物を盗られた村人もいるのだが、この一連の事件の犯人は、いまだ捕まっていないとの事だ。
・雑木林では、美味しい茸や病に効く薬草が採取できるのだが、近頃はオーガや盗賊騒ぎが恐ろしくて、誰も近づくことができないらしい。
・憶測だが、アンヌはエリックの病に効く薬草を探すため、雑木林の一番奥へ向かった可能性が高い。
雑木林の最深部は、オーガの住処になっているかもしれない。
――アンヌの未来と村人たちの平穏は、ウィンクルムたちの活躍に懸かっているのだ。
解説
■雑木林の中に消えてしまった少女、アンヌを探しだし、エリックを安心させることが本エピソードの目的です。
問題の林ですが、入口から中間部までは盗賊たちがうろついています。
潜んでいる盗賊の人数は、大体五、六人程度と見られ、ナイフや長剣を持っています。
一人一人はそれほど強くありませんので、囲まれないようにだけご注意下さい。
・林の奥へ向かい、アンヌを捜索・保護
・盗賊たちと戦う
今回は、上記二つの行動がメインとなります。
林は広く、道に迷いやすいです。
盗賊に邪魔された場合、アンヌを安心して探せなくなるかもしれません。
アンヌを捜索(保護)する人、盗賊と戦闘して足止めする人等、ウィンクルムの皆様で行動をご相談なさっていただければと思います。
※登場人物は多いですが、お話の主役はウィンクルムの皆様です。
NPCの登場により、リザルト内の描写量に変化はございません。安心してご参加下さい。
ゲームマスターより
アドベンチャーエピソードでは、初めての執筆となります。
よろしくお願いします。
皆様のチームワークで、アンヌとエリックを救ってあげてください。
ご参加、お待ちしております!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
フィーリア・セオフィラス(ジュスト・レヴィン)
…アンヌさん、エリックさんの、ために、薬草…、探しに行った、の、ね…。 アンヌさん、無事に、連れて帰って、あげなくちゃ…。 持ち物 水とお弁当(アンヌさん用) 準備 セレッソ村で、林の地図が無いか、と…。 薬草が、ある場所までの、大体の道順、とか、聞いてみよう、かしら…? 行動 皆で林へ…。 盗賊が、出てきたら…、相手、するつもり、だけど…。 皆一緒だと、盗賊が出てこないかも、しれないから…。少し、前を歩くと、いい、かしら…? 盗賊が、出てきたら、すぐにトランス、して…。 …一応、攻撃、してみる、…怖い、けど…。 盗賊、捕まえたら、アンヌさんのこと、聞いて、みる。 捕まってたり、しないか…。 …薬草、どんなの、かしら…? |
ひろの(ケネス・リード)
足止め組との距離は、遠くても20mぐらいで。 足止め組との間に、盗賊が割り込めるかどうかぐらいがいい。 盗賊が出たら人数を確認。 予測も踏まえて全員いるようなら足止め組に任せる。 攻撃されたときのために、こっそり護符を構える。 囲まれて邪魔されたら、進行方向の盗賊の顔に神符で威嚇攻撃。(当てない 足止め組と分かれたら、惑いの鬼蜘蛛で迷子防止に糸を出して一番奥を目指す。 アンヌさんの名前を呼びながら探す。 アンヌさんを見つけたらタオルで汚れを拭いて。水筒の水をあげる。 オーガがいたらトランス。 アンヌさんごと護符で護りを固めて、神符でケーネの支援。 持ち物: 肩掛け鞄(捕縛用ガムテープ、タオル新品2枚、水の入った水筒) |
マユリ(ザシャ)
先に村で情報収集 僕たちは林でオーガを最近目撃したかどうか、村民の方に訊いてみます (最近見かけたなら、大体どのくらい進んだところで見かけたか訊く) はいはい、ザシャくん。頑張りましょうねっ アンヌ捜索 基本的に皆で捜索 僕とザシャくんは捜索組で、足止め組から離れすぎないように着いていきます 依頼は二度目ですけど油断せずアンヌさんを助けましょう…! …ちょっとどういう意味ですかザシャくん 進んで行く際、最深部ではオーガにも注意を あまり、無理しないで下さいね、アンヌさん… |
Acorn168(Huang710)
(アンヌさん……大丈夫かしら) 事前にセレッソ村で盗賊の特徴について尋ね、皆に知らせて情報共有 雑木林では、予めファンとトランス ひろの先輩とマユリ先輩の先を歩きつつ、アンヌさんを捜索 歩いた道は、後で戻って帰れるように、色付きのチョークで 木に大きくひっかくように書いて、目印をつけておく 人の気配や音を少しでも感じたら、ファンとトランス 場合により、ひろの先輩とマユリ先輩を先に行かせます 盗賊が現れたら、目の前に立ち、中腰で立ち向かって一文字に斬りつける 奥地に来た時は、アンヌさんの名前を呼びながら捜索 名乗った後、エリックさんが探している事、なぜここまで来たのか聞き出す 私達でよろしければ、お手伝いさせて下さい |
●セレッソ村で情報収集 ――集合――
――危険を承知で、エリック青年の依頼を快く引き受けたウィンクルムたち八人は、早朝からセレッソ村の広場に集結していた。
「やっぱ、オレも聞き込むようになるのか……。マジか……」
頑張りましょうね!、と意気込むマユリとは対照的に、パートナーのザシャは、余り気乗りしない様子だ。
マユリたちは、まず村の西方面に向かい、オーガの目撃例が出ているかどうかの聞き込みする。
「では、……私たちは、村の人に、地図が貰えないか…、訊いてみます」
フィーリア・セオフィラスは、ジュスト・レヴィンと二人で、東へ。
「そうね……。それじゃあ、エイコンさんとファンさんは、盗賊の情報収集をお願いするわ」
ひろのとケネス・リードは、アンヌ捜索中に道に迷ったりしないように雑木林の地理を調べ、Acorn168とHuang710は、盗賊を見たという人に会いに行き、直接話を訊くことに決まった。
こうして、八人は二時間後に再びこの広場に集合という約束をし、各々行動を開始するのだった。
●セレッソ村で情報収集 ――作戦――
「すみません、お話をお伺いしてもいいですか?」
マユリは、西の村落入り口付近で庭掃除をしていた老婆に、声をかけた。
積極的に聞き込みをする役はマユリで、入手した情報をメモする役がザシャだ。
ここでも二人のチームワークが、バッチリ機能している。
「それでは、最近林に近づいた村人はいないのですね?」
「エエ……。なんでもあの辺りじゃ、盗賊どもが悪さしちょってねぇ。中々林までは、近寄れんのじゃ……。アンヌちゃんも、なしてあんな場所に行きよったんかねぇ」
「オーガについては、何か知りませんか?」
「それが……、それらしきモンを見たって言ってるのが、小さな子供でねぇ。夕方の事だったし、どこまでホントかは分からないんだよ……」
その後も詳しく話を訊いて回ったが、オーガについての有力な手がかりは得られなかった。
「今のところ、盗賊の目撃情報ばっかりだな。オーガの件は、噂が一人歩きしている可能性が高そうだ」
「そうですね……。でも、奥に何があるか分かりませんから、気をつけましょうね、ザシャくん」
二人は、調べた結果とメモを持って、ほかのメンバーの戻りを待つことにした。
***
「ウィンクルムさんですね。お待ちしておりました。これが、簡単な雑木林の地図です。アンヌのこと、よろしくお願いします!」
「はい、必ず……。わざわざ、ありがとう、ございます……。エリックさん」
村を回っていたフィーリアとジュストに声をかけてきたのは、依頼人・エリック青年だった。どうやら、ウィンクルムたちに協力しようと、地図を持ってきてくれたらしい。
「後は僕達に任せて、エリックさんは、安静にしていて下さい」
エリックの顔色が優れないことに気づいたジュストは、気遣うように彼の背中を支えてやる。
「すみません……。ごほっ。お二人も、くれぐれも気をつけてください」
エリックは、地元の人が知っている「薬草」の知識を、二人に話してくれた。
これらの情報が、アンヌを探す手がかりになるかもしれない。ジュストは、地図の裏にエリックの言葉を、しっかり書きとめておいたのだった。
***
一方、ひろのペアとエイコンペアは、雑木林全体の地理や、盗賊についての情報を集め終えて、広場に戻って来た。
お昼前にはウィンクルム全員が集合し、雑木林に突入する前の作戦会議だ。
「盗賊は、夕方六時頃から、林付近の小川に現れたらしいです。襲われた人から聞いた話だと、背後から殴られて、金品を奪われたとの事でした」
エイコンが、ノートにメモした情報を丁寧に読み上げ、
「刃物で腕を切りつけられた人も居るっていうから、気をつけたほうがいいよ。っていうか、いきなりナイフで襲われたら、普通の人にはどうしようもできないだろうね」
ファンが、補足するように冷静な口調で付け加える。
「こっちも、林の大体の広さは分かったので……。あとは作戦通り潜入ですね」
ひろのは、フィーリアたちがエリックから預かった地図に目をやりながら、自分たちの情報を付け加えたメモ書きを、全員に配った。
すべての情報が共有できた所で、アンヌ捜索へ出発だ。
「さあ、準備はいいわね?」
ケネスの真剣な眼差しと言葉に、ウィンクルムたちはお互いの顔を見つめ合うと、しっかり頷いたのだった。
●アンヌを探して ――戦闘――
雑木林は薄暗く、見通しは悪い。
だが、手に入れた地図と情報のお陰で、最深部までの道のりは大体把握できていた。
エイコン、フィーリアペアが『盗賊の足止め組』として先頭を歩き、彼女たちの後方、二十メートルほど距離を開けて、『アンヌ捜索組』のひろの・マユリペアが付いて来ている。
「念のため、目印をつけて置きますね。先輩たちもこれを辿れば、安心して付いてこられますから」
道すがら、エイコンが持参したチョークで、木の幹に「×印」を書きこみ、目印を残していった。
――しんと静まり返った林の中、暫くは一同の靴音だけが続いていたが……。
「シッ……。皆さん。今、……遠くの茂みが、揺れました」
「リア――」
微かな物音を察知したフィーリアとジュストが、まずトランス状態へ突入し、
「エイコ、おい達も行くぞ」
続けて、エイコンとファンも、すかさず臨戦態勢に入った。
「――なんだ、てめぇら!?」
「ここは、俺達の縄張りだぜ!」
茂みの奥から四人の前に飛び出してきた盗賊は、二名。
一人はナイフを持っており、もう一人は金属バットを引きずっている。
更に――。
「ひろの先輩、マユリ先輩!」
エイコンが、後方のひろのたちを確認しようとすると、捜索組と足止め組の間にも、別の盗賊が入り込んで来たのだ。
盗賊たちは、林の細い別れ道から、ウィンクルム達へ忍び寄っていたらしい。
新参の盗賊は四名で、皆同じく、長剣とナイフで武装していた。
「――六人か。情報と同じだね……」
ひろのは口の中だけで呟くと、目の前に飛び掛ってきた盗賊の顔面目がけて、準備していた護符を放った。
「ッ!?」
不意打ちの攻撃を喰らった盗賊は怯み、大きくよろめいている。
「あたしもいるわよ!」
すると、その隙をついたケネスがひろのに駆け寄り、体勢を崩した盗賊目がけて、斧を振るった。
「……ガ……ッ」
「安心なさい。殺しはしないわ」
ケネスは、斧の柄で盗賊の腹部を強打し、気を失わせたのだ。
盗賊の一人はうめき声と共に、その場に崩れ落ちた。
「貴様ら、よくもやってくれたなッ!!」
仲間がやられて逆上した盗賊たちが、ひろのたちに向かってナイフを振り上げようとしたが、そこへ――。
「――やらせるか! ハァッ……」
「おいも来るけん! 喰らえ!」
やや遠方からジュストが『シャイニングアロー』を、ファンが罰ゲームを発動し、『マジックブック』を放ったのだ。
「なっ……、何?」
「ウァッ……!」
眩い光の弾丸が盗賊の肩と頭を掠め飛び、彼らの注意は、後方にいたフィーリア、エイコンペアに向けられた。
「ひろの先輩たちは、今のうちに、奥へ!」
エイコンは中腰で構えを取り、果敢にも盗賊の前に立ちはだかる。
フィーリアも、ジュストの脇に控えて、攻撃に備えていた。
盗賊の金属バットがフィーリアを襲うが、そこに滑り込んできたのは、パートナーのジュストだ。
敵の一振りをかわし、すかさずカウンターで盗賊に反撃を入れる。
「ガッ……」
「まだまだ――!」
更に、抜群の連携で、ファンがジュストに加勢し、エイコンをかばった。
足止め組の戦いぶりは、盗賊を徐々に押し始めている。
「……ここは、私達に、任せて……下さい!」
フィーリアの真剣な眼差しに打たれ、捜索組のひろのとマユリは、力強く頷く。
今は、足止め組が戦ってくれている隙に、一刻も早くアンヌを見つけ出さなくてはならないのだ。
――それが、依頼人エリックと、村の人々の願いなのだから。
●アンヌを探して 1
「……オマエ、下もちゃんと見て歩けよ。すぐ転びそうだし」
足止め組と別れてから、マユリとザシャは林の最深部を目指して歩いていた。
ひろのたちも、マユリたちとは反対の小道を進み、アンヌを捜索している。
「もう。どういう意味ですか、ザシャくん」
ザシャは、ちょっと不服そうにしているマユリを見て、口元をほころばせて苦笑を漏らした。
――アンヌや仲間達も当然心配だが、目の前のマユリが転んだりしないかどうかは、ザシャにとって大きな気がかりのひとつである。
「ザシャくん!」
すると、地面を確認したマユリが、何かを発見して声を上げた。
「どうした?」
「足跡です……。かなり大きいですよ」
それは、地面に点々と続いている、大きな動物の足跡らしきものだった。
「まさか、村でオーガって言ってたのは、これか?」
ザシャは、村で聞いた『子供たちがオーガを見たと騒いでいた』と言う情報を、ふと思いだした。
確かに小さな子供であれば、熊や動物をオーガと見間違ったりすることもあるかもしれない。
いずれにせよ、この雑木林に危険が潜む可能性は、捨てきれないだろう。
***
「アンヌさん! 聞こえたら、返事をしてください」
ひろのとケネスは、アンヌの名を叫びながら林を捜索した。
一行が雑木林に入って歩き始めてから、四十分ほど経過している。そろそろ最深部に到達する頃だ。
「……ゥ……ッ……」
「ひろの、こっちよ!」
ケネスは、微かな声が茂みの奥から漏れたのを、聞き逃さなかった。
近くに居たひろのを呼びよせて、二人で茂みの奥へと急ぐ。
――やがて、二人の目の前に、打ち捨てられた小さな山小屋と、そのドア付近に倒れている、小柄な少女の姿が見えてきたのだった。
「アンヌさん!」
少女の周りには、様々な種類の薬草が散らばっており、足元には籠が開いた状態で転がっていた。
「大丈夫ですか?」
ひろのがいち早くアンヌを抱き起こし、何度も声をかける。
アンヌの頬についた泥や汚れは、タオルでそっと拭ってやった。
「う……。だ、誰――……?」
「アンヌさん、あたしたちはウィンクルムよ。エリックさんに頼まれて、探しに来たわ」
ケネスは、戸惑うアンヌに優しい口調で事情を説明した。
彼の穏やかな微笑みを見て、アンヌも漸く事態を飲み込めたようだ。
「助けに……、来てくださったのですね……。ありがとう、ございます……」
●アンヌを探して 2
その後、足止め組も盗賊を全て倒し終えて、捜索組に合流を果たした。
命までは奪わなかったが、ウィンクルムたちがたっぷりとお灸を据えた上、ガムテープ等で口を塞ぎ、捕縛済みである。
「アンヌさん、これ……良かったら、どうぞ……」
フィーリアが持参していたお弁当のお陰で、衰弱していたアンヌの体力も、ある程度戻ってきたようだ。
「無茶だな……。気持ちは分からなくも無いけど――」
「はい……。皆さんにもエリックにも、本当にご迷惑をおかけしました……」
ジュストは、口では彼女の無謀を諌めつつも、救急箱でアンヌの手や足のかすり傷を、治療してやっていた。
「アンヌさん、ここに来た理由があるんですね? 私達でよろしければ、お手伝いさせて下さい」
アンヌが落ち着いた頃合を見計らってエイコンが申し出ると、アンヌはこくりと頷いた。
「実は――……。咳止めの薬草が、どうしても必要だったのです……。私がエリックの為に出来るのは、それしかなかったから――」
***
ウィンクルムたちが村で集めた情報を参考にし、アンヌが探している薬草は、すぐに見つけ出す事が出来た。
人数も多かった為、量も多めに確保できたことが幸いだった。
「何から何まで……。皆さん、本当にありがとうございます……」
「僕が言うのもなんですが――、これからは、エリックさんを心配させないで欲しいです。きっと、アンヌさんが危ない目に遭うのを、エリックさんは望まないです」
ファンがぽつりと呟いた言葉に、アンヌは瞳を潤ませながら、「はい」としっかり同意を示してくれた。
アンヌは、病に苦しむエリックを救いたくて、自分にできることを探していたようだ。
だが、エリックや村人にそれがバレれば「危険だ」と止められることも分かっていたので、一人で林へ向かうしかなかったのだろう。
勿論、ファンだけでなく他の仲間たちも、アンヌの気持ちは十分わかっていた。
だからこそ、心優しいアンヌとエリックが傷つくのは、見ていられなかったのだ。
「これからは、絶対無茶はしません。それがエリックを悲しませるなら、尚更……。そう、皆さんに教えていただきましたから……」
アンヌは反省した様子で、ウィンクルムたちに頭を下げていた。
「分かってくれたらいいのよ。さ、帰りましょ?」
ケネスとひろのがアンヌの肩を支えてやり、フィーリアは、アンヌの薬草籠を運んでくれている。
「アンヌさん、付いて来てくださいね」
アンヌを先導して行くのは、エイコンとファンだ。
セレッソ村に戻る道は、エイコンがつけて置いた目印を辿っていくので、迷う事はないだろう。
こうして、全てのウィンクルムたちの活躍のお陰で、村を脅かす盗賊は捕らえられ、アンヌを救出する任務も、見事大成功を収めたのだった。
***
一行は村に戻った後、エリックの元にアンヌを送り届けた。
マユリとザシャは、捕まえた盗賊を引き渡す際、念のため林の中で見た足跡の事を、村人たちに報告した。
オーガの可能性は極めて低そうだが、凶暴な動物に村人が襲われないよう、注意を促すためだ。
「すごく大きな足跡だったので、もし林に行くのなら、気を付けてくださいね」
「足跡……。それは熊かもしれぬな……。猟師と相談して、対処することも考えよう……。あなたたちには、なんとお礼を述べていいのか……」
「そんな……。当然のことです」
大勢の村人に感謝され、マユリはちょっと照れくさそうにほほを赤らめる。
「もしまた何かあれば、力になれるかもしれない。助けが必要な時は、言って下さい」
ザシャは、そんなマユリを温かく見守りながら、村人に力強く語ったのだった。
「皆さん、ありがとうございました……! 是非、また遊びに来てください。今度は、僕の屋敷にもいらしてくださいね。アンヌと一緒に、おもてなし致します」
エリックは、心からの笑顔で、ウィンクルムたちに感謝の言葉を伝えてくれた。
エリックの隣にいるアンヌも、何度も何度も「ありがとうございます」と繰り返している。
「エリックさん、……地図、ありがとうございました……。お体、お大事に、して下さいね」
「こちらこそ、何度お礼を言っても足りません。ありがとう」
フィーリアは、エリックから預かっていた地図をそっと手渡しながら、二人を優しいまなざしで見つめていた。
「アンヌさんの事も、頼みます」
ひろのは、今後もアンヌとエリックが仲良くいてくれることを願いながら、エリックにそっと耳打ちした。
ひろのの言葉を聞いたエリックも、「はい、必ず……」と応えてくれる。
きっとこれからは、エリックがアンヌを自分の手で守ってゆくだろう。
ウィンクルムたちは、エリックの活き活きとした表情を見て、強くそう実感したのだった。
――セレッソ村では、ウィンクルムたちは村を救った英雄として、末永く語り継がれることになる。
そして、エリックとアンヌの心にも、ウィンクルムの雄姿が焼き付いている事だろう。
二人の未来と恋を導いてくれたのも、ウィンクルムたちの力なのだから……。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 夕季 麗野 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | 戦闘 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 4 ~ 5 |
報酬 | 少し |
リリース日 | 06月21日 |
出発日 | 06月28日 00:00 |
予定納品日 | 07月08日 |
参加者
- フィーリア・セオフィラス(ジュスト・レヴィン)
- ひろの(ケネス・リード)
- マユリ(ザシャ)
- Acorn168(Huang710)
会議室
-
2016/06/27-23:51
はい。私の方もプランできました
エイコンさんはまとめありがとうございました。分かりやすかったです。 -
2016/06/27-23:49
ひろの先輩、ありがとうございます。
プランは提出しました。
出発するまで先輩方の書き込みは、ちょくちょく覗かせていただきますので。 -
2016/06/27-23:49
-
2016/06/27-23:48
えと。Acorn168さん、まとめ、ありがとうございました。
わかりやすかった、です。 -
2016/06/27-23:26
私の方で、『足止め組との距離は、遠くても20mぐらい』と書いてます。
ので、文字数が足りないなら無理に書かなくて。大丈夫です。 -
2016/06/27-23:09
まとめてみました。
下記の事で補足したい事、変更したい事、聞きたい事がありますか?
セレッソ村での情報収集
・フィーリア先輩:地図を借りる、薬草がある場所までの道順
・ひろの先輩:雑木林の広さ、そこに慣れた人だと何分で奥地に着くか
・マユリ先輩:最近で入口や中間部にオーガが出たかどうか
・エイコン:盗賊の容姿や背格好、または、これまでの被害
持ち物
・フィーリア先輩:救急箱
・ひろの先輩:ガムテープ
・エイコン:色つきのチョーク(※コピー用紙はかさばるので却下しました)
雑木林
・足止め組、先行:フィーリア先輩、エイコン
・捜索組、ついていく:ひろの先輩、マユリ先輩
※遠くても20mの距離間(予定)
私側のプランには、
歩いた道の木々をチョークで印をつける事、
盗賊に遭遇した際、ひろの先輩とマユリ先輩を先に行かせてから、足止めする旨を書いています。
>ひろの先輩
プランにひとまず、捜索側の位置から20mほど先を歩くと書きますが……。 -
2016/06/27-22:12
>情報収集
最深部がオーガの住処になっているかもしれない、ということなので、
入口や中間部に最近オーガが出たかどうか、念のために訊いてみようかと思います -
2016/06/27-21:33
>足止めの人が先行
…えと、はい、では、それで…、よろしく、お願い、します…。
>手当
救急箱、持って行くように、書いてみようと、思い、ます。
うまくできると、いいです、けど。
>情報収集
情報収集、してから、出発、です、ね。分かり、ました…。
ええと…、薬草が、ある場所までの、大体の道順、とか、聞いてみよう、かしら…? -
2016/06/27-21:23
先行する足止め組とは、遠くても20mくらいの距離を予定してます。
林の中で見通しは悪いと、思う、ので。
あまり離れすぎると、後ろの人だけ囲まれるとかもあるかなって。思うから。
先行する足止め組と、後方の捜索組の間に盗賊が割り込めるかどうか。
ぐらいを、考えてます。
そう、ですね。
雑木林の広さがどのくらいかは、知っておきたいです。
私は慣れた人だと。どのくらいの時間で一番奥に着くのか、聞こうと思います。 -
2016/06/27-21:11
>並行して、盗賊の事や雑木林の奥地の事に情報収集した方がいいでしょうか。
「に」じゃなくて「も」ですね……。
セレッソ村で情報を収集したり、地図をお借りしてから、
雑木林を足止め組が先を歩き、捜索組がついていく、と認識しています。 -
2016/06/27-21:07
>全員で行動すれば、盗賊が出てこなくなる
それは……ないと思います。
先程1人で出てきても、大勢で出てきてもって、私も言いましたが、
雑木林には、数名の男性が取り囲んで金品を奪う話もありますから、
1人で現れる事はないと確信しました。
足止めの人が先行するという案は、私も了解しました。
どれくらい離れても構いませんが、
少なくとも振り返って、ひろの先輩、マユリ先輩が確認できる範囲で先を行きますね。
>回復を持っていくと、攻撃手段が無くなる
(しばし考え、渋々頷く)
誤解させてすみませんでした……。
はい、捜索の事です。
ジュスト先輩でしたら、ファストエイドを使えると思ったのですが……そう、ですよね。
盗賊から、どこから攻撃されるかわからない以上、反撃の術がないのは困りますよね。
(答えて下さって)ありがとうございます。
でも、ジュスト先輩が医学スキルを持っているなら……
アンヌさんに何かあった際、(手当を)お願いしてもいいですか?
村の人に地図を借りるって案、良いと思います。
並行して、盗賊の事や雑木林の奥地の事に情報収集した方がいいでしょうか。 -
2016/06/27-21:05
足止めの人が先行でその後を捜索の人が着いていく、ですね。
私も賛成です -
2016/06/27-20:37
>足止めの人が先行
少し離れてなら。賛成、です。
なら、私は後ろの組で。前の組とは少し離れて、ついて行きますね。 -
2016/06/27-19:51
遅く、なってしまって…。
…えと、マユリさん、ザシャさん、どうぞ、よろしくお願いします。
>移動
…全員で、行動すれば、捜索は、やり易いかもって…、私も思い、ます…。
でも、あの…、盗賊が出てこなくなったり、とかは、その…、しませんよ、ね…?
盗賊は5、6人で…、私たちは、8人、ですし…。
…もしかして、そういうことが、ありそう、なら…。
足止めの人が、少し、先行して…、その後を、捜索の人がついて行くとか、どうかしらって、思ったり…、その、します、けど…。
>エイコンさん
えっと、救出というと…、捜索のこと、ですか…?
私は、どちらでも…、いい、ですけれど…。
ただ、ジョブスキルが、まだ、1つしかセット、できないので…。
回復を、持って行くと…、攻撃手段が、無くなってしまって…。
…ジュストは、一般スキルの医学が、ありますから、応急手当くらいなら、できるかも、です…。
>迷子対策
地図、とかないか…、村の人に、聞いてみようと、思います…。 -
2016/06/27-16:59
取り急ぎ、こちらの認識のみお伝えしますね
私も皆さんと移動する、という認識でいました。
道に迷いやすいなら尚更そうした方が良いでしょうし。 -
2016/06/27-15:44
先輩方、こんにちは。出発出来て良かったです。
ひろの先輩とフィーリア先輩は、初めまして、ですね。
マユリ先輩もナメクジ退治お疲れ様でした。
●役割は、こんな感じですね。
【アンヌの捜索と保護】ひろの先輩、マユリ先輩
【盗賊の足止め】 フィーリア先輩、エイコン
アンヌさんが盗賊に襲われたりして怪我した時の事を考えると、
フィーリア先輩は救出側にいてほしい、というのが私個人の希望です。
●あと、今回捜索する雑木林は、広くて道に迷いやすいそうですね(推定:PL情報)。
私も皆で捜索という認識です。
もちろん、盗賊が1人で来ても、大勢で来ても、全員で対応すると、
アンヌさんを助けられなくなりますね。
なので、ひろの先輩が仰る「人数に応じて足止め」をした方が良いと私も賛成です。
迷子対策といいますか、私の場合は、辿った道を戻って帰れるように、
白い紙(コピー用紙)か、チョークを木に書いて、目印をつける予定です。
それと、ご挨拶が遅れましたね……。
精霊はトリックスターのファン、私は神人のエイコンです。
改めてよろしくお願いします(頭を下げる)。 -
2016/06/27-14:36
(連投失礼します)
あ。人数に合わせて足止めっていうのは、その。
盗賊も全員で行動は、してないかもって。思って。 -
2016/06/27-14:33
雑木林は広くて、迷いやすいみたいだから。
移動は皆で、って認識であってますか?
盗賊が出てきたら、人数に合わせて足止めがいいかなって。思ってます。
捜索と足止めの人で別れて行動すると。捜索側に盗賊が来たら、捜せないし。
それと。
捜索に回ります、けど。念のため、捕縛用にガムテープ持っていこうと思います。
縛るより、巻く方が早いから。 -
2016/06/27-09:43
(すみません発言を読み間違えていたので削除、再投稿しました)
人手が足りないと聞きまして失礼します
エイコンさんはナメクジ退治でお会いしましたね。
他の皆さんは初めまして
4組目、マユリとエンドウィザードのザシャです。
よろしくお願いします
えっと、私たちは探索の方へ向かいますね
あ。足止め側でも大丈夫なので、変更ありましたらどうぞ仰ってくださいな。 -
2016/06/26-20:05
…えっと、あの、フィーリア・セオフィラス、です。パートナーは、ライフビショップの、ジュスト・レヴィン…。
その…、どうぞ、よろしく、お願いします…。
えっと…、捜索と、足止めで役割分担、なら…、私たちは、足止めの方に、いこうかと思います…。
あ、どちらでも、いい、のですけど…。 -
2016/06/26-14:33
はじ、めまして。ひろのです。
それと、シンクロサモナーのケーネ……、ケネス・リードです。(小さくお辞儀
よろしく、お願いします。
捜索と、足止めで役割分担は賛成、です。
えと。とりあえず、捜索に立候補します。
後から来た人が、捜索に行きたいときは。足止め側に変更でも、大丈夫です。 -
2016/06/26-00:04
あと3組ね。
盗賊を阻止する側とアンヌさんを助ける側に分かれた方が良さそう(ニコニコ)。
私達は盗賊の足止めに向かう所だけど、他のウィンクルムはどうするのかしら?
楽・し・み(ウィンク)。