春眠暁を覚えず(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「あれ? いないの?」
 ノックをしても返事をしない相方。相方に頼まれてコーヒーを買って帰ってきたところなのに。
 あなたはドアの前で怪訝に思う。
「入るよ?」
 もう一回ノックしてから、声をかけて、あなたは相方の部屋に入っていった。
 本と趣味のものがぎっしり詰まった相方の書斎。
 机の手前のカーテンも窓も開け放たれている。白いレースのカーテンが風に揺れている。窓から差し込む光に、舞い散る埃がきらきら光っていた。
 そしてそこに、相方はいた。
「あーもー、またこんなに散らかして……」
 あなたは嘆きを呟きながら、相方のいる椅子へと向かう。
 相方は椅子に腰掛けたまま、机に向かって倒れ伏している。
 書類や本をかきわけて、隣に行くと、相方の寝顔が見えた。
 だらしなく開いた本のページの上に顔をのっけて、口を開いて、軽いいびきをかいている。
 春のそよ風と陽気を、机の前から受けて、相方は実に気持ちよさそうに眠っていた。
「そんな姿勢じゃ首を痛めるだろ? ほら、起きて」
「んがぁあ~……」
 普段は知性的で隙の無い彼なのに、実に無防備な寝顔が見える。あなたは相方の頬をつんつん突いたり、首筋を撫でたりしてみたが、全く起きる気配がない。
「春は眠くなるっていうけどね……」
 呆れてしまいながらも、くすりと笑い、あなたはそっと相方の顔に顔を近づけていく。「顔にラクガキしちゃおうかな」
 そんな事を囁いても相方は起きる気配がない。
 あなたは机の上からマジックを片手に取り、キャップを開いた。それから、ふと笑って相方の頬に軽くキスを放つ。
「んがっ」
 ……反応あり。
 いびきが一瞬止まって、相方はむにゃむにゃ言いながらあなたの方を向く--と思いきや、また机に突っ伏して、いびきをかきはじめた。
 さあ、どうしようかな。
 優しく起こしてやろうか。
 それとも頬にラクガキの刑?
 寝ている間にこっそり部屋を漁る、なんてことも出来るけど……。
 滅多に見せない相方の隙につけこんで、何をしでかしてやろうかと、あなたは楽しい悩みを持ったのだった。

解説

 春に気持ちよくいびきをかいている相方です。神人、精霊、どちらでもOK。
 文章では昼間に相方の部屋に入っていった設定ですが、相方が無防備に寝ているところに遭遇したのならば、朝でも夜でも、どんな天気でも、どんなTPOでも構いません。
 相方が気持ちよく寝ているのを見た片割れは、一体何をするでしょうか。
 いたずらでも、キスでも、放置でも、何でもOKです。ただし公序良俗は守ってください!
 素敵なプランをお待ちします! 
★眠気覚ましにちょっといいコーヒーを買いましたので300Jrいただきます。

ゲームマスターより

陽気のせいか最近遠東も眠くてたまりません。ウィンクルムの皆さんもそうかなと思いました。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  *寝た(自室でパソコンに向って調べ物してるうち

疲れてたんだ
レポートの締切も近くて
AROAの活動もあって
だから肌寒いなと感じても起きなくて…

なんだか温かくなってギュと握る

船にゆらゆらされてるみたいで気持ち良いかも
ゆらりゆらりと夢の中、
俺はランスと枝垂れ桜が両岸から広がる渓流を、小さな舟で流れていく
ゆらりゆらり
ランスったらはしゃいで仕方ないなあ…
舟から立っちゃダメだよ

はっ!)

寝てたのか…
ガウンに気付く

俺、何か言わなかったか?
それなら良いけど(汗
ランスの目が楽しそうなのできっと何か言ったな俺
言わなかった事にしてくれるので、そういうコトにしようと思う

そうだな。ちゃんとベットで寝なおすか(笑


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  日記を広げたら、書く前にバロン(猫)がその上ににょいーんと寝そべっちゃってさ。
ユキシロ(レカーロ)もオレの膝に両手のせてくるし。しかも口にはブラシ咥えて。ブラシかけてくれという要求だな。
そしてバロンは「遊べ―!」か。よし。
ユキシロをまふまふしつつブラシかけたら、毛がさらにふわふわになってさ。
バロンがテーブルからぴょいんってユキシロの毛の中に飛び込んでくるし、お前達ホント仲良しだな!
ユキシロの毛が超気持ちよくってさ、気が付いたら寝ちゃっていたんだ。
誰がこのまふまふ、ふんわりまっ白毛皮の魔力に逆らえようか!
おひさまの香りなんだぜ。

う、いつの間にかラキア帰ってきてた!
おはよー。コーヒー淹れて?(笑顔



アイオライト・セプテンバー(白露)
  おなかすいたー
あたしおやつ食べたいよー…パパ、お昼寝してるの?
あ、パパ眼鏡はずしてるー寝顔かわいー寝息きゅーきゅーしてるのもかわいー
そうだ、あたしも一緒におやすみしようっと
だって、パパのおっぱいはあたしのものだもん(ごそごそ
いい気持ちだなーあったかいなー優しいなー
Zzz…

(寝言)ふにゃー…ぱんつの国のお姫様だもーん…

あ、パパがいない
そんで、甘くていい匂いがする…おやつの匂いだっ
きっとホットケーキだ
えへへ、でもすぐには起きないの
もう少し寝てるふり続けちゃおう
お姫様は王子様のキスでめざめるのです、わくわくどきどき
わくわく…え?
やだーホットケーキあたしも食べたーいー(がばっ
…(照)…パパおはよっ


蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  同居中の自宅アパート
学校から帰宅
フィンの部屋をノックしても返事がなく、扉を開けて部屋に入ったら…

ここ数日、ほぼ缶詰状態で仕事してたな
そんな中でも家事は一切手を抜かないんだから…本当に頭が下がる

夕飯は俺が用意しよう
出来ればベッドに運びたいけど…動かすと起きそうだし
せめてタオルケットを掛けて…

ミアプラ(海十所属のインディーズバンド)のCD?
何時の間に…
聴かれるのが恥ずかしいから、CD売ってないと答えた筈なのに

…嬉しいじゃないか…フィンのバカ
こっそりジャケットにペンでサインを入れる

やっぱりベッドで寝た方がいいし、運ぼう
フィンの腕を肩に掛けて持ち上げ
!!?躓いてベッドへ倒れ込み
ちょ、俺は抱き枕じゃない


セラフィム・ロイス(トキワ)
  ◆木の下で春の陽気に誘われてタイガと一緒に転寝していた
一人だったらそんな大胆な事はできないけど「こうすると気持ち良いだろ」って手を引いて誘うから
本読んだ後だからかな…とても気持ちよくて。暖かくて

■二人で遊びまわって途中からトキワや動物達も合流して楽しいピクニックの夢

うん…くすぐったい
(タイガが頭を撫でるなんて珍しい
あれ?でもこの感覚おぼえが…)
トキワ…?

■眠気眼でぼんやり目覚める
おはよう…じゃない、何でここにトキワが
そうだったんだ
無理ないよ、バイトは大事だし起きなかった僕が悪いんだ

こっちをみてくれないトキワに少し落ち込み
手を横顔を絵を眺める
(見てないようで見守っててくれてるんだよね。昔から)


●アイオライト・セプテンバー(白露)編

 その日、アイオライト・セプテンバーは精霊の白露を探して、彼の部屋に向かいました。
「おなかすいたー。あたしおやつ食べたいよー」
 そういう理由からです。部屋に入ってみると、白露はベッドでうたた寝をしている様子でした。
「……パパ、お昼寝してるの?」
 アイオライトはとことこと白露の方に向かいます。
「あ、パパ眼鏡はずしてるー寝顔かわいー寝息きゅーきゅーしてるのもかわいー。そうだ、あたしも一緒におやすみしようっと。だって、パパのおっぱいはあたしのものだもん」
 上機嫌になって白露のベッドの中に潜り込むアイオライト。ごそごそと毛布の中で動いて白露に対して一番いいポジションを探します。
「いい気持ちだなーあったかいなー優しいなー」
 白露のおっぱいに抱きついて、アイオライトはたちまち心地よい眠りについてしまいました。
 小一時間後--
「えーと……?」
 毛布の外側で白露は目を瞬きます。
(少し休もうと思って、おやすみひつじを枕に一眠りしていたら、気が付けば布団から蹴り出されているみたいなんですが……)
 根を詰めて本を読んでいたのですが、頭が疲れたのでベッドの中に入ったのでした。そこまでは覚えています。それから白露はベッドの中を振り返り、毛布にくるまって気持ちよさそうな寝息を立てている神人を見つけました。
「ああ、アイの仕業ですか」
 仕方ないなと白露は苦笑いをします。
(アイの寝相で私が布団から追い出されたわけですね)
 アイオライトは寝相までが元気がいいのです。
「ほら、アイ。ちゃんと布団を被らないと風邪を引きますよ」
 そう言って白露は布団をかけなおそうとしました。
「ふにゃー……ぱんつの国のお姫様だもーん……」
 アイオライトは幸せそうな顔でそんな寝言を言っています。
「……不穏な寝言は聞かなかったことにします」
 事なかれ主義者の白露はツッコミすらもいれませんでした。
「さて、今のうちに、おやつを用意しておきましょうか」
 白露は柔らかい笑顔でそう呟き、部屋を出て行きました。
「あ、パパがいない」
 やがて、アイオライトは青い目をぱっちり開いてそう言いました。布団の中に一緒に寝ていた白露がいません。
(そんで、甘くていい匂いがする……おやつの匂いだっきっとホットケーキだ)
 元々おなかがすいていたアイオライトは嗅覚が鋭くなっています。
(えへへ、でもすぐには起きないの。もう少し寝てるふり続けちゃおう)
 すぐに白露がホットケーキのお皿を持って部屋に戻ってきました。
「アイ、ホットケーキが出来ましたよ。早く目を醒ましてください」
 しかしアイオライトは返事をしません。白露はアイオライトの寝顔をのぞき込みました。
(お姫様は王子様のキスでめざめるのです、わくわくどきどき)
 アイオライトは白露からのキスを待っているようです。
(アイの口許が妙ににやにやしているようですけど……狸寝入りですかね、これは)
 白露はアイオライトのわざとらしさを見抜いたようでした。
「あーあー。アイはぐっすり寝ているみたいですね。なら、ホットケーキは私がひとりで食べちゃいましょうか」
「わくわく……え? やだーホットケーキあたしも食べたーいー!!」
 アイオライトはがばっと跳ね起きてしまいました。
「はい、おはようございます。ちゃんとミルクもありますよ」
 白露はにっこり笑ってお皿をアイオライトに差し出しました。
「……」
 アイオライトは照れて笑って誤魔化します。
「パパおはよっ」
 微笑む白露。そのあとはベッドに並んで座って二人で仲良くホットケーキを食べたのでした。春の幸せな休日です。

●蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)編

 その日、蒼崎海十が精霊のフィン・ブラーシュと同居しているアパートに帰り、彼の部屋をノックしても、返事は聞こえて来ませんでした。学校帰りです。海十は高校生とバンドのボーカルと、ウィンクルムの三足わらじで生活をしているのでした。一方フィンはルポライターと主夫とウィンクルムの三足わらじです。
「?」
 海十は部屋に入ってみました。目に飛び込んで来たのは、机に突っ伏して眠っているフィンでした。
 疲れ切っているのか、不自然な姿勢なのによく寝ています。
 フィンは旅行雑誌のルポライターです。締め切りにぎりぎりで間に合わせて原稿を送ったところで力つき、机で爆睡してしまったのでした。
(ここ数日、ほぼ缶詰状態で仕事してたな。そんな中でも家事は一切手を抜かないんだから……本当に頭が下がる)
 この何日かのフィンの様子を振り返り、海十は彼に尊敬の念を抱きながら近づいていきます。
(夕飯は俺が用意しよう。出来ればベッドに運びたいけど……動かすと起きそうだし、せめてタオルケットを掛けて……)
 海十はベッドからフィンのタオルケットを取り出し、彼の背中へと持っていきます。
 そのとき、海十はフィンの机の上に置いているものに気がつきました。
 海十がボーカルをしているインディーズバンド、「ミアプラ」のCDです。CDは少数だけ出していました。
(何時の間に……。聴かれるのが恥ずかしいから、CD売ってないと答えた筈なのに)
 ちょっと気恥ずかしくなってしまう海十。
 フィンは以前に、ミアプラのライブに行きすっかりファンになっていました。海十がCDを売っていないと言っても、彼の情報網を甘くみてはいけません。しっかり見つけてこっそり買っていたのでした。
 今回の原稿も、海十の歌を何十回も聞いて、元気をもらいながら仕上げたのです。
(……嬉しいじゃないか……フィンのバカ)
 海十はこっそりCDのジャケットにペンでサインを入れました。起きたらフィンは驚くでしょうか。それにしても、今日までフィンがCDを手に入れたとは知りませんでした。彼も秘密にしていたのでしょうし、サインに気がついたらどう言うでしょうか。
(やっぱりベッドで寝た方がいいし、運ぼう)
 しばらくフィンの寝顔を見ながらそっと金髪をなでつけていた海十ですが、そう思い立ち、海十はフィンの体を肩に担ごうとしました。
 身長差は8㎝ほどですが、フィンの方が体格がいいので海十の腕力がいります。特に眠っているので、ずっしりとした体重が彼の体にかかります。
「んっ……」
 海十は身じろぎをしました。
 軽い衝撃が走り、フィンは薄く目を開きます。ぼんやりした視界の中に海十が見えます。
(これは……夢の続きかな?)
 夢の中でフィンは、海十と楽しいデートをしていました。サクラウヅキでのキスの思い出をなぞるように。あのときの海十は妖艶だった。その海十が目の前にいる。ここは夢? 現実?
 そんな事を考えながら、フィンは本能的に海十をぎゅっと抱き締めました。フィンを担いで歩こうとしていた海十はたまったものじゃありません。
「!??」
 バランスを崩して、たちまちベッドへ向かって転んでしまいました。
 フィンはそのまま海十の上に乗るようにして抱きついていきます。慌てる海十。
「ちょ、俺は抱き枕じゃない」
「……抱き枕として抱き締めてる訳じゃないよ。海十だから、こうしてたい」
 いい匂いのする海十の肩口に鼻を埋めながら平然とフィンはそう言います。海十はじたばたもがきましたが、やがて仕方ないなとフィンの背中をぽんぽん叩きました。
 仕事も家事もしっかりやったフィンにご褒美です。少しぐらいならいいでしょう。
 うららかな陽気の春の日、仔猫の兄弟のように仲の良いウィンクルムでした。

●セラフィム・ロイス(トキワ)編

 その日、セラフィム・ロイスとタイガは、春の陽気に誘われて、木陰でうたた寝をしていました。
 セラフィムは一人ではそんな大胆な事は出来ないのですが、タイガが「こうすると気持ちいいだろ」と手を引いて誘ったのです。
 読書の後だったせいでしょうか。とても春の光も風も、とても気持ちよくて、あたたかかったのでした。
 そのままセラフィムは心地よい夢を見ました。
 タイガと二人で遊び回って、途中でトキワや動物たちも合流した、楽しいピクニックの夢です。笑い声だけが聞こえてくるような夢なのです。
 その頃、精霊のトキワは、虎坊主(タイガ)からセラフィムの事を任されました。スケッチをしようと思って、ロイスの屋敷の辺りを歩いていたら、うたた寝をしていたタイガとセラフィムに出くわしたのでした。
 それからタイガにセラフィムのお守りを頼まれたのです。
(まあ、ガキの頃から面倒みていたからいいか……)
 気持ちよさそうなセラフィムの寝顔を見ながらそう思います。
「行ったいった。時間なんだろバイト行って来い」
「任せたぞ」
 それからタイガはトキワに顔を近づけて小声で言いました。
(何もするなよ)
(取りゃしねえよ……)
 タイガの威嚇に苦笑いをして、手をひらひら振って見送ります。
 時間が惜しいので、トキワはスケッチブックを広げました。素描します。春めいた一枚です。
 素描を一枚描き終わって、セラフィムをちらりと見やりました。
(幸せそうな顔してまあ。夢ん中でも花畑にいるのかねぇ。泣き虫でおっかなびっくりしてたセラ坊はどこいったんだ? え)
 また苦く笑い、トキワはセラフィムの頭を撫でました。
「……よかったな」
 今、セラフィムが大胆なうたた寝で幸せな寝顔を見せられる事。それは大変に結構な事だとトキワは思うのでした。
(うん……くすぐったい)
 夢の中にいたセラフィムは、掌の感触にかすかに眠りから揺り起こされます。
(タイガが頭を撫でるなんて珍しい。あれ? でもこの感覚、覚えが……)
 トキワは身じろぎをしたセラフィムを見つめ、手を離します。相変わらず平和な寝顔ではあるのですが、微かな緊張感が浮かんでいます。その顔は、やはり、セラフィムの母によく似ているのでした。何度見てもそっくりだと思います。
(何見入ってるんだ俺は。起さなかった理由わかる気がする)
 本当に平和で幸せそうな寝顔だったのでした。トキワはセラフィムの昔の事や、セラフィムの過去の事を思い出しました。
(やめた。無断でセラ坊描いて機嫌損ねるのもなんだ。誘惑に駆られない内に絵に集中するか)
 トキワはスケッチブックに向き直りました。描きたい絵はあったのかもしれませんが、それよりも、今は無難な春のスケッチをした方が大人として賢いと思ったのです。
「トキワ……?」
 そのとき、セラフィムが目を覚ましました。ぼんやりとした表情で目をこすります。
「おはよう」
 何食わぬ顔でトキワは挨拶をします。
「おはよう……じゃない、何でここにトキワが」
「お守りを頼まれたんだよ」
 トキワはタイガのバイトの事を説明しました。
「そうだったんだ。無理ないよ、バイトは大事だし起きなかった僕が悪いんだ」
 セラフィムはちょっとため息をつきました。
 トキワは何も言わずに絵を描いています。
 セラフィムは少しも自分を見てくれないトキワに落ち込み、彼の手を見つめました。巧みな手つきで素描を続けています。その横顔は、本当に真剣。それから、セラフィムは彼の描く絵をそっと盗み見しました。
 うららかな春の風景が描かれています。
(見てないようで見守っててくれてるんだよね。昔から)

●セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)編

 その日、セイリュー・グラシアはトレーニングの記録を日記に書こうと机の上に広げました。
 そしてその上に、猫のバロンがにょいーんと広がりました。
 レカーロのユキシロもセイリューの膝の上に飛び乗ります。しかもその口にはブラシを咥えています。ブラシをかけて欲しいのでしょう。
 そして、バロンの方は「遊べー!」と凄い要求です。
「よし!」
 セイリューは日記をやめて、ユキシロを抱きかかえながら椅子から降りて床に座り込みます。
 ちょうど、大きく広げた窓からは春の午後の光とそよ風が吹き込んで来ました。レースのカーテンが優雅に揺れるぐらいのちょうどよい風。春の空気。それを受けて、ユキシロの毛は最強の幸せな空気を放っています。
 ユキシロをまふまふしながらブラシをかけると、毛がますますふわふわになっていきました。
 机からバロンがぴょんとユキシロの毛の中に飛び込んでいきます。本当に仲良しです。
 ユキシロの毛があまりにも気持ちよくて、セイリューはユキシロにブラッシングをかけ、バロンと遊んでいるうちにいつの間にか眠ってしまいました。春の爽やかな陽気を受けたユキシロの毛は、最強の幸せとともに最強の睡魔も放っていたのでした。
(誰がこのまふまふ、ふんわりまっ白毛皮の魔力に逆らえようか! おひさまの香りなんだぜ)
 ユキシロのふわふわの毛が毛布のようにセイリューに重なり、手足もこんがらがって絡み合い、その毛の中に仔猫のバロンが潜り込み……。実に見事なユキシロ団子ができあがってしまいました。窓からさしこむ春のうららかな陽気の下、実に平和な光景です。
 ちょうどそこに、精霊のラキア・ジェイドバインが帰ってきました。
 コーヒーを買ってきて、自宅に帰り、リビングに入ったら、セイリューとユキシロが団子になって寝ているのです。よく見ると、ユキシロの毛の中にバロンも眠っています。
「セイリュー?」
 声をかけて見ますが、どの子もよく眠っています。くーかくーかと気持ち良さそうな寝息。
「ふふふ」
 ラキアは思わず笑ってしまいました。
(どれだけ油断しているの、君達)
 それからテーブルの上に広がっている、まだ何も書かれていないノートに気がつきました。
(セイリューってば、日記にトレーニング記録書く前に陥落しちゃったんだね)
 大勢の小さい子と一緒に暮らす家ではよくあることです。何をしていても、遊んで遊んでと寄ってくるのが小さい子達なのです。家族なのですから、大事にしなければなりません。
 あまりに幸せそうな寝顔で眠っているので、ラキアはユキシロ団子たちを何枚かスマホで撮影しました。起きたらセイリューたちに見せてあげましょう。ユキシロたちはスマホの事は分かっていないけれど、そのうち、猫が偶発事故でやるという自撮りをすることがあるかもしれません。
(皆笑顔で寝てるんだもの。いい夢見ているのかな)
 それからラキアは、セイリューの手からブラシを拝借して、ユキシロの毛をそっととかしてあげました。
 ブラッシングの途中で寝たのだから、続きをしてあげようと思ったのです。ふわふわ、まふまふ、もふもふの毛。これでは余りに幸せで眠くなってしまっても仕方ありません。
 するとユキシロが嬉しそうに尻尾をパタパタさせはじめました。
「起こしちゃった?」
 バロンもあくびをしながらぐーんと猫のノビをします。
「セイリューおはよう」
 ラキアが言うと、セイリューもバロンに負けずに大きく伸びをしました。
「おはよー。コーヒー淹れて?」
 セイリューの笑顔。ラキアも笑顔。みんな、幸せそうないい笑顔です。

●アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)編

 その日、精霊のヴェルトール・ランスがリビングで待っていても、神人のアキ・セイジはいつものテレビを見にやってきませんでした。
 それで、ランスはテレビを録画にしてセイジの部屋に向かいました。
 いつの頃からか、セイジの部屋に鍵はかけられなくなっていました。ランスはそのことを心から嬉しく思います。
 すると、セイジは机に向かって舟を漕ぐようにして居眠りをしていました。
 自室でパソコンに向かって調べ物をしているうちにすっかり眠ってしまったのです。
 セイジは疲れていたのです。
 大学のレポートの締め切りも近くて、A.R.O.A.の活動もあって。
 だから、肌寒いなと思いながらも、眠りに落ちて起きなかったのでした。
 ランスはセイジの寝顔を見て、起こすかどうか迷います。
 熟睡しているので、起こせないなと思います。
 それで、ランスは自分の部屋からガウンを持ってきてセイジにそっと肩からかけてやりました。
 なんだか温かくなって、ぎゅっとガウンを握るセイジ。
 笑顔を見てランスもほっとします。

(舟にゆらゆらされているみたい……気持ちいい……)
 ゆらり、ゆらりと船の上。
 セイジとランスは両岸に枝垂れ桜の咲き誇る渓流を、小さな舟で流れていきます。
 ゆらり、ゆらり。
(ランスったらはしゃいじゃってまあ……舟から立ったらダメだよ!)
  
 一方、現実ではランスが二十分もの間、セイジの寝顔を見つめていました。
(夢? 可愛いな。見飽きない……)
 テレビなんかよりもよっぽど、セイジの寝顔を観察するほうが見甲斐があります。
 ゆらゆらと揺れながら、つじつまの合わない寝言を言うセイジ。
「え、何? 桜が綺麗?」
 どんな夢を見ているのか、セイジは桜に何か呼びかけているようなのです。
 よっぽど綺麗な桜なのでしょうか。
 桜が見られて喜んでいるようです。
 それからランスの名を呼びました。
 はいはい、と現実に隣にいるランスが返事をしても、目を覚ましません。なんだかいらだっているようです。
 それから急に眉間に皺を寄せ、ランスを叱るような事を言い出しました。
「……舟が揺れるから立っちゃダメ?」
 一体、何の夢を見ているのでしょうか。
 セイジの方は真剣ですが、夢の中でも彼は大真面目で真剣なようなのですが、現実のランスには状況が何も分かりません。寝ながらランスを叱っているセイジは、夢の中でも大変なようで。
 ランスは噴き出すのをこらえます。
 ぷるぷるしながらセイジの観察を続けるランス。
「はっ!」
 突然、セイジは目を覚ましました。
「寝てたのか……」
 自分に気がついたように独り言を言い、それから、セイジはランスのかけたガウンに気がつきました。温かくなったのはそのおかげです。
 それから当然、ガウンをかけてやったランスの存在に気がつきます。
「俺、何か言わなかったか?」
 羞恥をこらえる表情でセイジは言いました。
 自分が夢を見ていた事や、隣にランスがいることで、色々想像したようなのです。
「なんでもない」
 ランスは笑いをこらえてそう答えます。
 なんでもないも何も、二十分も人の値頃を観察していたのですが。
(うん、俺は何も聞かなかった)
 ぷぷぷとなるのを必死にこらえながら、ランスは自分にそう言い聞かせるのでした。
「それなら良いけど」
 冷や汗を流すセイジ。
(ランスの目が楽しそうなのできっと何か言ったな俺。言わなかった事にしてくれるので、そういうコトにしよう)
 必死に冷静さを取り繕うセイジ。そんな彼にランスは優しく言いました。
「ベッドでちゃんと寝ようぜ、ほら」
「そうだな。ちゃんとベットで寝なおすか」
 そう言ってセイジは立ち上がりランスに向き直りました。
 そのセイジの頬には、キーボードのあとがくっきりと……。
 こらえきれずに、ランスは大爆笑してしまったのでした。
 仲の良いウィンクルム。同棲していればそんな事件も起きるでしょう。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月22日
出発日 04月30日 00:00
予定納品日 05月10日

参加者

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