【桜吹雪】桜咲く、お花見デート(春夏秋冬 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 城下町『サクラウズキ』は、ここでしか見られない珍しい品種の桜『ヨミツキ』を見ることが出来る、一年中ぽかぽかとした気候が特徴的な町です。
 ですが今ここでは、一つの大事件が起こっています。
 ギルティ『ヴェロニカ』により、昼の世界『サクラウズキ』と、夜の世界『サクラヨミツキ』が新たに発生してしまっているのです。
 このままでは、世界に歪みすら起きかねません。

 そこで、ウィンクルムである皆さんの出番です!!

 昼の世界『サクラウズキ』で、デートをしちゃって下さい。皆さんがパートナーとデートをする事で、『サクラウズキ』に発生している瘴気を浄化することが出来るのです。
 ですので皆さん、デートしちゃいましょう!!

 などと、やたらとテンションの高いA.R.O.A.職員が、アナタ達にデートプランを提案してきます。

「皆さんにお勧めするのは、お花見祭りで飲んで食べて楽しんじゃおうプランです!! ヨミツキがたっくさん植えられた広場で開かれるお祭りに参加してデートをして下さい」
 そう言うと、職員は現地の地図をアナタ達に配り、お客の呼び込みのような勢いで更に続けます。
「沢山の屋台や露店がありますから、それを巡ってみるのも良いですし、ヨミツキでお花見をしてみるのも良いと思います。夜のヨミツキは、それはもう綺麗で、妖しい雰囲気さえ感じさせるそうですよ。行ってみたくなりますよね?」
 期待感一杯に尋ねてくる職員に、アナタ達は――?

解説

 詳細

 サクラウズキでお花見祭りデートをして下さい。

 お花見祭りでは、屋台や露店が幾つもあります。
 種類は食べ物だけでなく、アクセサリーやちょっとした小物まで様々です。
 イメージ的には、お祭りの食べ物屋台や、フリーマーケット、そして偶に、職人が作った小物やアクセサリーを売っている本格的な露店などがあります。

 そういった物で売っているであろう商品でしたら、自由に購入できます。
 極端に無理がある物以外でしたら、プランで書いて頂ければ、購入された描写を行わせて頂きます。

 購入費用に関しては、お祭りの参加費用500Jrを支払って頂ければ、それ以上の費用に関しては、瘴気の浄化依頼ですので経費として出ますので、500Jrを超える事はありません。

 ただし、あまりにも極端に高額な物を買われるプランを出された場合、金額が下がる商品に変わります。

 例 数カラットのダイヤの指輪→シルバーのペアリング

 とはいえ、あくまでも極端な物に限りますので、それほど気にされなくても大丈夫です。

 以上です。
 それでは、楽しいデートをして頂ければ幸いです。

ゲームマスターより

 桜の季節が近づく中、お花見デートなシナリオを出させて頂きました。

 少しでも楽しいデートになるよう、判定にリザルトノベルに頑張ります。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

エセル・クレッセン(ラウル・ユーイスト)

  デート?…ええと…。(精霊と『デート』として行動したことがないのでちょっと動揺)
…要は祭りを楽しめばいいんだよな、うん。『ヨミツキ』が見たい。

どうするかな。
そう言えば花見では花見団子を食べるって聞いたような気がする。
そういうの屋台で売ってるかな?あったら買おう。
あ、それと。
露店で『ヨミツキ』のストラップみたいなのも売ってたら一つ買って。
ラルにプレゼントするな。お花見祭りに付き合ってくれた、お礼。

それから『ヨミツキ』見物しよう。
昼もいいけど夜の『ヨミツキ』も見たいんだよな。
暗くなった木の下に座って、ちらちら降る花びらを見上げたら、きっとすごく綺麗だ。
…怖いくらいに?ラルと一緒だから大丈夫。


小鳥遊 光月(甲・アーダルブレヒト)
  A.R.O.A.職員に進められサクラウヅキでデート。
思い切って着物で来たのにスルーされてしょんぼり。
甲の後を歩いていたら平然と煙草のポイ捨てをしたので仰天。
反射的に甲の後ろ頭を強く叩く。
「何やってんの! マナー違反! 事故になったらどうすんの!!」
甲が煙草を拾ったので怒りは止まるが、その後気まずくなる。
(どうしよう、叩いちゃったよ)
謝ろうかどうしようかしていると甲に話しかけられる。
「え、あの……」
「そ、それじゃわたあめ……を」
沿道の屋台でわたあめを買ってもらう。
「え……はい」
「は、はい……?」
シャキっと話せと言われ
「頑張って着物を着てみましたがどうですか」
褒められて笑う
(悪い人ではないんだよね)


リヴィエラ(ガウェイン)
  サクラウズキ(昼)でお花見

リヴィエラ:

……。

…(あの方(※もう一人の精霊ロジェ)がいなければ、
桜も青空も何もかも美しいと思えない…)

(団子を勧められ)…いりません…

(そう言えば以前、ロジェと色水の掛け合いをして…
私を澄み渡る青空のようだと仰ってくださって…
あの時も桜が咲いていた…)

(ぽろぽろと涙を零していると、ぬいぐるみを買ってきたガウェインが
ぬいぐるみの手でリヴィエラの頭をポンポンと撫でる)

…っうっ…ふえぇぇ…(涙を零しぬいぐるみを抱きしめる)


エルナ・バルテン(ロードリック・バッケスホーフ)
  わぁ…なんだかすごい…
ええ、父の看病もあって、なにより貧乏だったから余裕がなくて
へっ? あ、ありがとう…
頭に落ちた花びらを取ってもらったことに驚き
な、なにを言い出すのっからかわないでよもう…!
頬を染めてムキになる
…それにしても、きれい
暫く桜に見惚れる

…あ、バッケスホーフさん、どうかしたの?
え? わ、私に…? でもそんなの、悪いし…
そ、それじゃあ…ありがとう
遠慮気味に受け取る
…可愛い…!
砂が薄いピンク色の砂時計
良いの? 私がもらって。なんだか高そう…
掌に乗るくらいの通常より少し小振りなサイズ(高価ではないです)
そっか…。バッケスホーフさん、本当にありがとう
今日が忘れられない日になりそう
だって、嬉しいから


マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)
  いつもの『ウィンクルム活動の一環』とは違うのだろうかと思いつつ
は、はいお供いたします

指輪に赤面

先日特別報奨として頂いた花形パーツの可愛い指輪
内側にTOで綴られた二人のイニシャルと薔薇の彫りがあった
あの時一緒に添えられていた白薔薇(尊敬の意)を込めてくださったのだと思うと嬉しく
この溢れる気持ちの名前は知ってる
でも伝える事は出来ない
このままで十分身に余る幸せ

エスコートされふわふわ気分

アクセサリーと聞かれおずおず差出す
情熱的赤色の石が嵌め込まれたシルバー細工のクラバットピン

手を取られ動揺赤面
ご、ご迷惑でなければ…

(こんなに喜んで頂けるなんて
笑顔が可愛いと感じてしまった

なんとなく今日はいつもと違う


●桜咲く下で、お祭りデート

 鮮やかに咲き誇る満開の桜。
 心躍る華やかさの元で、お祭りに訪れた皆の表情は綻んでいる。
 そんな中、デートをする事で瘴気を払おう、という依頼を受けたウィンクルム達は、それぞれお祭り会場を散策していた。
 それは、こんな風に。


 小鳥遊 光月は、春めいた明るい色合いの着物を着て、甲・アーダルブレヒトと共にお祭りデートに参加していた。
 瘴気を払う為の依頼とはいえデートである。折角だからと気合を入れて着ていた着物は、周囲で咲き誇る桜の色合いに馴染み、似合っていた。
 けれど今の彼女は、しょんぼりと浮かない顔だ。
 それは、しょうがない。なにしろデートという事で、思い切って着物を着て来たというのに、肝心の相手と言えばその事には何も触れず。
 甲は、いつもと変わらぬ態度。
 そんな彼に光月は声を掛け辛く、言葉少なく彼の後をついて歩いていた。
 無言のまま、賑やかなお祭り広場を歩いて行く。そしてお祭りの喧騒を避けるように、いつの間にか河原沿いの桜並木を巡っていた。
 会話も無く、ただ歩くだけ。そんな手持ちぶさたに間が持たなかったのか、甲は何気なく煙草を吹かす。
 そしていつものように、道端にポイっと捨てた。そんな彼に、
「何やってんの! マナー違反! 事故になったらどうすんの!!」
 後ろを歩いていた光月は、後ろ頭を強く叩く。
 これに驚いた甲は、即座に振り向く。視線の先には、真剣に怒った光月の顔が。
 それが、気付かせるような驚きを湧き上がらせた。
(こいつ怒るときは怒るんだ……)
 おっとり気弱な娘だと思っていた彼女の豹変が、自分が目の前の相手の事を良く知らなかったのだと分からせた。
「……すみませんでした」
 どこか素直な声で甲は謝ると煙草を拾い、少し離れた場所に有った喫煙スペースに捨てに行く。そして戻ると、再び連れ立って歩き始める。
 傍で見ていると、それまでと変わらぬ二人。けれど心の中は違っていた。
(どうしよう、叩いちゃったよ)
 怒りが収まった光月は、慌てたように心の中で右往左往。どうしたら良いかと悩み中。
 それに対し甲と言えば、自分を怒った光月に好感を抱いたというのに、最初と同じように黙ってしまっているのが気に入らない。
 お互い煩悶とする中、先にしびれを切らして声を掛けたのは甲だった。
「おい、何か欲しいものあるか? 遠慮せずに言え」
 それに光月は驚きつつも、
「え、あの……そ、それじゃわたあめ……を」
「分かった。ちょっと待ってろ」
 そして2人分の綿飴を買うと、連れ立ってベンチに座る。
 言葉は無く、けれど今までとは違い、強くお互いを意識しながら綿飴を食べていると甲は、
「お前、意外に意志をはっきり出せるんだな」
 これに光月が驚き顔を向けると、視線を合わせたまま更に甲は言った。
「俺ははっきりした女は好きだ」
「え……はい」
「だから、ぶたれるのは嫌だが、もうちょっとシャキっと話してくれればいい」
「は、はい……?」
 真顔で言う甲に、光月は少しだけ勇気を振り絞るような間を開けると、
「頑張って着物を着てみましたがどうですか」
 思い切って聞いてみる。すると、じっと見つめた後、真剣な表情で、
「よく分からんが上品でいい」
 彼なりの賞賛の言葉を贈った。それに光月は、
(悪い人ではないんだよね)
 どこか苦笑するように、嬉しそうな笑顔を浮かべるのだった。


「わぁ……なんだかすごい……」
 満開に咲き誇る桜の華やかさに、エルナ・バルテンは見とれていた。
 そんな彼女を、ロードリック・バッケスホーフは苦笑するように見詰めながら、優しく問い掛ける。
「そうだな、見事に咲いている。嬢ちゃんはこういうの初めてか?」
 これにエルナは、なにかを思い出すような感慨深い表情を僅かに滲ませながら、柔らかな笑顔で返した。
「ええ、父の看病もあって、なにより貧乏だったから余裕がなくて」
「なるほどな……」
 エルナの応えにロードリックは小さく頷くと、彼女の傍に寄り添うように近付く。
 そして彼女の頭に、はらりと舞い落ちた一枚の桜の花びらを、そっと手で払うと、
「嬢ちゃんは、桜がよく似合う。俺の好きなバラも似合うけどな」
 柔らかく甘い声で、囁くように告げると、次いで喉で笑う。
 これにエルナは、頭に落ちた花びらを取って貰ったことに驚きながら、
「な、なにを言い出すのっ。からかわないでよもう……!」
 頬を桜色に染め、言葉を返した。
(からかったわけじゃないんだがな……)
 ロードリックに、そう思われているとは気付かないエルナは、元の調子を取り戻しながら再び桜に見入る。
「……それにしても、きれい」
 桜に見とれている彼女を見詰めていたロードリックだったが、ある露店に目が留まる。
 すると彼は、エルナに気付かれないよう露店を訪れると商品を品定め。
 やがて一つの商品に目が留まる。
「……これ、きれいだな」
 それは砂が、薄いピンク色の砂時計。
 掌にちょこんと乗るほど小さく可愛らしいそれを求めると、店主は桜の花が描かれた包装箱に収め、持ち運びし易いよう小さな紙袋も渡してくれる。
 それを手に、ロードリックはエルナの元に。それに気付いたエルナは声を掛ける。
「……あ、バッケスホーフさん、どうかしたの?」
「ああ、悪いな。ちょっと見てたんだ。なあ嬢ちゃん」
 ロードリックは買ったばかりの砂時計が入った包装箱を差し出す。
「え? わ、私に……? でもそんなの、悪いし」
 驚きながら遠慮するエルナに、
「良いんだよ。女は遠慮しねぇくらいが丁度良いんだ。開けてみな?」
 ロードリックは包装箱を手渡した。エルナは遠慮気味に受け取ると、
「そ、それじゃあ……ありがとう」
 礼を返し中身を取り出す。すると、
「……可愛い……!」
 顔をほころばせ嬉しそうな声を上げる。
「良いの? 私がもらって。なんだか高そう」
 中身を見た二言目が値段の事だったので反応が少し遅くなったロードリックだったが、
「……あ、ああ。値段のことは気にすんな。こっちが好きでやってんだから」
 エルナの頭をぽんぽんと撫でた。それにエルナは感謝の言葉を口にする。
「そっか……。バッケスホーフさん、本当にありがとう。今日が忘れられない日になりそう」
「忘れられない日?」
 思わず聞き返したロードリックに、
「だって、嬉しいから」
 エルナは喜びに笑顔を浮かべながら応えた。その笑顔に、
「喜んでいただけてなにより。……お嬢様」
 柔らかな笑顔で返すロードリックだった。


「ラル。あの屋台、花見団子を売ってるぞ」
「買うのか?」
「もちろん。だって花見をするなら、花見団子は食べる物だって聞いたからな」
「そうなのか?」
 率先してお祭りを楽しもうとするエセル・クレッセンに、ラウル・ユーイストは静かについていく。
 瘴気を払うためとはいえデートという事で、ちょっと動揺したエセルであったが、要は祭りを楽しめば良いのだと思い付き、満喫する事に。
「うん、美味しい。綺麗な桜を見ながら食べる花見団子は良いものだね」
「そうだな。確かに、ここの桜は綺麗だ」
「これならきっと『ヨミツキ』も綺麗な筈さ。今から楽しみだ」
「夜まで花見をするつもりなのか? それなら他にも何か買っておけ。団子だけだと足らないだろう」
 どこか妹の世話を焼く兄のように、ラウルはエセルを気に掛ける。
 その心遣いが嬉しかったのか、はしゃぐようにエセルは返していく。
「じゃあ、巻き寿司とかいなり寿司とか入ったお弁当がいい」
「分かった……あそこのヤツなんかはどうだ? 彩りも綺麗だ。それと飲み物はお茶で良いか?」
「うん、それで良いよ」
 そうしてラウルがお弁当とお茶を買いに行っている間に、エセルは一つの露店に気付く。
 そこはサクラウズキにちなんだストラップが売られているお店だった。デフォルメされた城下町もあれば、『ヨミツキ』をかたどった物もある。
 それを気に入ったエセルは、『ヨミツキ』をかたどった物を購入する事に。
 手にしたまま元居た場所に戻ると、そこには2人分のお弁当とお茶を手にしたラウルが。
「どこに行ってたんだ?」
「買い物だよ。お花見祭りに付き合ってくれた、お礼」
 そう言って差し出された『ヨミツキ』のストラップに、
「……『ヨミツキ』のストラップ? 別に礼を言われるようなことはしてないが……少し待ってろ」
 貰うだけでは気が引けたのか、彼も色違いの物を買ってエセルに差し出す。
「ほら、交換だ」
 こうして2人はプレゼントを贈り合い、再びお祭り巡りに。
 賑やかなお祭りの喧騒と、華やかな桜の美しさを楽しみ、お昼になれば一緒に食事をとる。
 楽しい時が過ぎて行き、やがて夜がやって来た。
 空には月が。夜の闇を照らし、『ヨミツキ』の美しさを浮かび上がらせる。
 それは妖しい美しさ。見ているだけで心がざわめき、目を離すことが出来なくなる。
 だからこそ、周囲の喧噪はゆっくりと薄れていく。まるで『ヨミツキ』に魅入られたかのように、皆は静かに見入っていた。
 エセルとラウルも、それは同様で。暗くなった木の下に座って、ちらちら降る花びらを見上げている。
 音は、最早ない。怖いぐらいの静けさの中、黙って『ヨミツキ』を見詰めていた。
 けれど寂しさも恐ろしさも、2人は感じない。何故なら2人は、共に傍に居るから。
『ヨミツキ』の下で座り、見上げるエセルは思う。
(……綺麗。でも、怖さは感じないかな。ラルと一緒だから大丈夫)
 エセルの隣で寝ころびながら『ヨミツキ』を見上げるラウルは思う。
(……夜の『ヨミツキ』は妖しいくらいに綺麗、か。……たまには、こういうのも悪くはない……)
『ヨミツキ』の美しさを楽しみながら、2人は共に傍に居続けるのだった。


 華やかな桜が咲き誇り、お祭りの喧騒で賑わう中、ガウェインはリヴィエラを元気づけようとしていた。
「おおぉーっ、これが桜かぁ! 天気も良いし、気持ち良いなぁ! なっ、リヴィエラちゃん?」
 陽気にガウェインは、リヴィエラに声を掛ける。満開に咲く桜並木を連れ立って、少しでも心を晴れやかにさせようとしているのが見ているだけで感じられる。
 けれど、リヴィエラの表情は晴れる事も軽くなる事も無かった。
「…………」
 沈む想いに囚われて、言葉を返すことも出来なかった。
 いま彼女は、ある理由から想い人と離れ離れになっている。その辛さが、彼女を感情を持たない人形のようにさせていた。
 それを少しでも晴らすために、ガウェインは笑顔を浮かべ彼女と共にあろうとする。
「桜、凄く綺麗だ! 空も晴れ上がって青空が綺麗だなぁ!」
 精一杯声を掛け、彼女の心を動かそうとする。それが僅かにリヴィエラの視線を動かす。
 晴れ渡る青空の元、鮮やかに咲く満開の桜。
 しかしそれを見ても、彼女の心が動かされる事は無い。
(あの方がいなければ、桜も青空も何もかも美しいと思えない……)
 声を掛けても、彼女を動かすことが出来ない。その事実にガウェインは僅かに言葉を詰まらせ、けれど諦める事は決してなかった。
「……お、そうだ、団子でも買ってくるからさ、ちょっと待ってろよ! ほら、リヴィエラちゃん! 団子だぜ!」
「……いりません……」
 言葉少なく返すリヴィエラに、それでも言葉を返してくれた事に手応えを感じ、ガウェインは更に奔走する。
「そ、そうか……腹は減ってねぇか……よし、それなら!」
 ガウェインは露店を一つ見つけ走り出す。そこは大小さまざまな種類を取りそろえたぬいぐるみ屋。リヴィエラの為にガウェインは買いに行く。
 そうしてリヴィエラは束の間一人きりに。
 周囲の喧騒は喜びと楽しさに溢れ、それが却って一人きりでいる事を実感させる。
 その孤独が、彼女の想いを今ではなく過去へと戻す。
 想うのは会えない人の事ばかり。晴れ渡る青空と、その下で咲く桜が、余計に想い出させる。
(そう言えば以前、ロジェと色水の掛け合いをして……私を澄み渡る青空のようだと仰ってくださって……あの時も桜が咲いていた……)
 大事な大事な想い出。それは彼女の支えになると同時に、想い人に会えない寂しさをより一層強く浮き上がらせる。
 静かに、声を上げることも出来ず。ぽろぽろと彼女は涙を流す。
 彼女は一人きり、想い人に会えない苦しみに涙を流す。
 それを、ガウェインは許しておける訳が無かった。
「ほ~らリヴィエラちゃん、泣くな泣くな~?」
 元気づけるような明るい笑顔を浮かべ、ぬいぐるみを買ってきたガウェインは彼女に寄り添う。
「…………」
 リヴィエラに差し出したのは、銀髪に紫の瞳の人型のぬいぐるみ。それはどこか、彼女の想い人を思い出させた。
 無言のまま、ぬいぐるみをじっと見つめるリヴィエラに、ガウェインはぬいぐるみで彼女の頭を優しくぽんぽんと撫でる。
 彼女は、何も返せない。けれど想いは心の中に溢れてくる。
 それはやがて、泣き声として溢れ出た。
「っうっ……ふえぇぇ……」
 ぽろぽろと涙を零し、ぬいぐるみを抱きしめる。感情を持たない人形のようになってしまっていた彼女は、今この時、辛い思いを形にすることが出来たのだ。
 彼女のために、動いたガウェインのお蔭で。
 泣き続ける彼女を見詰め、ガウェインは思う。
(……ったく、ロジェの奴。早く帰ってきてやれ。このままじゃリヴィエラちゃん、壊れちまうぞ)
 リヴィエラの想い人が一刻でも早く、戻って来る事を。
 その願いを胸に、ガウェインはリヴィエラを少しでも元気づける為に、その後もお祭りを巡っていくのだった。


「今日はパートナーとしてデートしてくれる?」
「は、はいお供いたします」
 それがマーベリィ・ハートベルとユリシアン・クロスタッドの関係を良く表していた。
 瘴気を払う為のデート依頼。
 けれどユリシアンはマーベリィを女性としてデートに誘い、しかしマーベリィはあくまでも依頼として、そして自分の立場をわきまえながら返す。
 想いは2人とも、心の内に。お互いがお互いを想いながら、けれどそれを確かな形にする事までは、踏み込めないでいた。
 決して相手を傷つけないように。相手を思いやる気持ちが、そうさせている。
 それでも桜の花の艶やかさが心を躍らせる中、2人はデートを楽しんでいた。
「指輪、やっぱり似合っているよ」
「あ、ありがとうございます」
 マーベリィが右手の薬指につけた指輪を見て、ユリシアンは彼女を褒める。
 花形パーツの可愛いらしい指輪は、先日特別報奨という形で、ユリシアンが贈った物だ。
 内側にTOで綴られた2人のイニシャルと薔薇の彫りが入れられたそれは、マーベリィにその時一緒に添えられた白薔薇の花言葉を思い出させ、心に想いを満たしていく。
 溢れるようなその想いは、何であるのかは自覚している。けれど、
(伝える事なんて出来ない。このままで十分身に余る幸せだもの)
 マーベリィは自分で自分に言い聞かせていた。
 そんな彼女を見詰め、ユリシアンは静かに思う。
(男が指輪を贈る意図を本当に特別報奨だけと思ってるのだろうか? 真面目な彼女だ、ありうる……ふふ)
 マーベリィの事を想いながらも、彼女の性格と今の関係を考えれば焦りは禁物と自制する。
 そんな2人は、露店を巡る。巡る先は幾つかのアクセサリーのお店。それぞれ特色のあるお店を巡っていく。
 あくまでも、ユリシアンがエスコートするように。マーベリィが望む場所を誘い招くように連れ立って、彼女の言葉に耳を傾け会話を重ねていく。
 しばし巡り、少し小休憩。喫茶店のマスターが開いていた野外カフェ形式の露店で、紅茶と桜のシフォンケーキを2人で楽しむ。
 お茶とお喋りを楽しみ、その内に先ほど巡っていたアクセサリーの露店の話題に。
「そういえばさっきアクセサリーを見ていたね。何か欲しい物があったのかい?」
「は、はい。その、1つ良いなと思う物があって」
「そうか。なら、このあと買いに行こう。今日はデートなんだから、断るのは無しだよ」
「え、あ……はい」
(デート……うん、デートなんだから、そうしなきゃ、ダメだよね)
 ふわふわとした気持ちを抱き、マーベリィはユリシアンにエスコートされ露店に訪れる。
 目当ての物は、情熱的な赤色の石が嵌め込まれたシルバー細工のクラバットピン。
「どれが良いんだい? 遠慮せず、好きな物を選んでね」
 優しい笑顔と声を向けられて、おずおずと手に取り差し出す。
「これを……その……」
 差し出されたユリシアンは、思ってもいなかった物に驚きながら、ピンを見た瞬間マーベリィの手を取る。
「ぼくに、ぼくにだよね?」
 ユリシアンは子供のように笑顔を浮かべ、喜びと嬉しさを隠すことなく溢れさせる。
 その笑顔を、マーベリィはかわいいと素直に思う。
(こんなに喜んで頂けるなんて)
 ユリシアンの喜びように、マーベリィは手を取られ動揺し赤面しながらも嬉しくなる。
「ご、ご迷惑でなければ……」
「嬉しいよ迷惑なんてあるものか」
 喜びに心が弾み、ユリシアンは自分の気持ちを抑えきれない。
 ピンを着けて手を繋ぎ、マーベリィとのデートを続けていく。
 そしてマーベリィも、喜びに心を躍らせずにはいられない。
 ふわふわとした気持ちに包まれながら、デートを続ける2人だった。

 こうしてウィンクルム達はデートを行った。
 そのデートにより、サクラウズキを覆う瘴気は晴れたに違いない。そう思えるデートだった。



依頼結果:成功
MVP
名前:エセル・クレッセン
呼び名:エセル
  名前:ラウル・ユーイスト
呼び名:ラル

 

名前:マーベリィ・ハートベル
呼び名:マリィ
  名前:ユリシアン・クロスタッド
呼び名:ユリアン様

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 春夏秋冬
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月31日
出発日 04月09日 00:00
予定納品日 04月19日

参加者

会議室

  • どうぞよろしくお願いいたします。

  • [3]リヴィエラ

    2016/04/06-18:22 

    ガウェイン:
    俺はガウェイン。一緒に見て回るのは、リヴィエラちゃんって言うんだ。
    あぁ俺、任務は初めてなんだが皆宜しくな!
    花見、楽しみだなぁ。なんだかこう、ワクワクするぜ!

  • [2]エセル・クレッセン

    2016/04/04-22:27 

    私はエセル・クレッセン。パートナーはラウル・ユーイスト。
    どうぞよろしく。
    祭りも花見も楽しみだなあ。夜のヨミツキ、見てみたいんだけど昼と夜、両方でもいいのかな?

  • [1]エルナ・バルテン

    2016/04/04-09:33 

    エルナといいます。
    依頼として、ですがお祭りは初めてなのでお花見祭りとても楽しみです。
    よろしくお願いしますっ


PAGE TOP