【薫/祝祭】ロータスプール(山内ヤト マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 お菓子のメルヘンワールド、ショコランドでは湖さえもしゅわっと甘いソーダでできていた。
 透き通ったソーダの湖には、人が入れるぐらい巨大なロータスの花も咲いていた。花の中心部が器状になっていて、そこにソーダ水が溜まっている。
 ロータスのプールのサイズは、遊園地のコーヒーカップくらい。二人で入っても、余裕がある。形状は、取っ手のないマグカップに近い。

 まだ湖の水温は泳ぐには冷たいが、ロータスのカップの中は晴れた日の日差しで心地良い温度にまで上がる。
 ちょっとした天然の温水プールが楽しめるというわけだ。



 このロータスプールを一層楽しむために、最寄りの村では小人達手作りのバスボムが販売されている。
 良い香りのする、発泡タイプの入浴剤だ。自然の素材で作られており、ソーダの湖を汚染する心配はない。

 色と香りは、次の五種類から選べる。

 メロン。甘い果実の香り。透明感のある緑色。
 ゆず。和風の柑橘類の香り。薄い黄色。
 カシス。ベリー系の香り。濃い赤紫色。
 ハニー。濃厚な甘い香り。しっとりうるおう黄金色。
 ミルク。濃厚な甘い香り。保湿効果のある乳白色。

 村ではウィンクルムへの厚意で、着替え場所なども用意してくれている。
 天然の温水プールで、好きな香りを思いっきり楽しもう。

解説

・必須費用
バスボム代:1つ300jr



・水着について
プールや湖に入る人は、水着を着用してください。
デートコーデで水着を装備していない場合は、シンプルなデザインの水着をレンタルした扱いになります。

・プランについて
基本的に個別描写になりますが、同じソーダの湖が舞台です。
プランでお互いに希望すれば、他の参加者と交流することもできます。
パートナーと二人で過ごすのも自由です。



・デートコーデの小ネタ
連合軍制服「青の旅団」
金時計「グローリア」
手袋「ロイヤル・レット」
手袋「ロイヤル・チェック」
エンシェントクラウン
など、バレンタイン地方での功績を示すアイテムをPCが装備していると、NPCから敬意を払われます。
直接的な利益は特にありません。

ゲームマスターより

山内ヤトです!

寿ゆかりGM主催のフレグランスイベントのエピソードです。
対象のエピソードの納品時に、参加者へ全8種類のうち、ランダムで2つの『香水』がプレゼントされます!
リザルト内で購入したバスボムは消耗品です。アイテムとしては配布されないので、ご了承ください。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

淡島 咲(イヴェリア・ルーツ)

  バスボム:メロン 水着は借ります

ロータスプール、なんだか可愛いですね。
バスボムの香りもとてもいいです。
バスボムがしゅわしゅわって解けるのみてるとわくわくします。
こういうのって炭酸で筋肉がほぐれたりするんでしたっけ?
イヴェさんにはいつも戦ってもらったり守ってもらったりで…筋肉筋肉凝ってたりとかしますか?
あの、よかったらマッサージしますよ!手とか肩とか!
へへへ~じゃあもみますね~
(自分からこんな風に触れるのって初めてで緊張しちゃうんですがでもイヴェさんと接することができるのは嬉しいな)
お客さん、気持ちいいですかー?なんて。
えっ、私にもしてくれる?いや、それはその…えっと!は、恥ずかしいです!



手屋 笹(カガヤ・アクショア)
  水着:水辺の祈り手
バスボム:ゆず
髪:まとめてアップにしています。

(カガヤと向かい合わせに座っています)
ゆずの爽やかな香りに気持ちがさっぱりしますね…
カガヤは本当に動きたがりですね…
泳ぐのはまた別の日にしてのんびりしましょう。

ところで折角二人でこんなに近いので…カガヤの隣に行きたいのですが…
私もカガヤも水着なのが…

身長もですが体型も気になります…
カガヤに先に呼ばれてしまいました…

はわ…カガヤ、近いですよ…

「カガヤを怖い…なんて、そんな事全く無いです…
カガヤと一緒に居るのは寧ろあったかくて…安心出来ます。
この身長も体型もカガヤがそのままでいいと言ってくれるなら…
恥ずかしくない…そう思えてきます」


ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  【バスボム:ゆず】
甘い香りはディエゴさんの為避けました

クリスマスに「夏は海かプールに行こう」と言った事が
もう早く達成されるとは思いませんでした

ディエゴさん、この水着どうですか?【インナー:ロタティオン】
これもロータスをイメージした水着なんです…似合うでしょうか
せっかくだからロータスプールに入ってみましょう

水は冷たすぎず温かすぎず、そしてこの天気
なんだかうとうとしてきちゃいますね…
と、ここでのディエゴさんの行動に内心驚きましたが
でもとても嬉しかったのでこのまま微睡んでいる振りをします
べたべたしてるわけじゃないですから、彼だって恥ずかしくないはず
お言葉に甘え、ではなく行動に甘えさせて頂きますね


アイリス・ケリー(ラルク・ラエビガータ)
  蓮の水槽、いえ、浴槽ですか
まるで絵本の中のよう
流石ショコランドですね

バスボムは…ラルクさん、ご希望は?
それでは、赤い『カシス』にしましょうか

水の中に咲いてる花もあまり見ないのに、自分がその花の中にいるなんて…
あ、忘れるところでした
では早速…シュワシュワしますね
温泉に行ったこと無いのですが、泡が出るものなんですか?

視力が悪いわけではないですし、お風呂やプールのときにコンタクトレンズは必要ありませんから
…そうですね
コンタクトレンズも手袋も、人前で外すつもりはありませんでしたから
え?
…お見通しですか

プールらしいこと?
きゃっ…!
確かにプールらしいことですね
分かりました、この勝負、受けて立ちましょう


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  バスボム:ミルク
保湿って大事だと思うんです
羽純くんも私も仕事上、洗い物で手荒れしやすいですし
それに…乳白色なら、恥ずかしくないかな…と。上手い具合に身体を隠してくれる事を期待なのですっ

ロータス…聖なる花のプール、本当に素敵だね♪
ささっ、早く入ろう、羽純くん!(水着見られるのが恥ずかしいから)
温かいし、良い香り…凄く落ち着くな
気持ちいいね、羽純くん
隣を見て、慌てて視線を前に戻します
だって…羽純くんのリラックスした表情とか胸板とか鎖骨とか色々!目のやり場が!
ううー顔赤くなってないかな?乳白色の水じゃ、確認も出来ないし…
きゃ!?
手を使った水鉄砲?
わあ、羽純くん上手…!
私も…う、飛ばない
教えてくれる?


●淡島 咲とメロンソーダ
「ロータスプール、なんだか可愛いですね」
 ソーダの湖に浮かぶ大きな花を見て、『淡島 咲』はのどかに微笑んだ。着ているのはシンプルな水着。
 『イヴェリア・ルーツ』も、このプールで咲と一緒に過ごす時間を楽しみにしているようだ。夕日に輝く海をイメージした海パン「ゴールドビーチ(夕焼)」を身に着けている。

 二人はさっそくロータスプールの中に入る。
 ショコランドの小人が手作りしたバスボムを咲がとぽんと投入する。しゅわしゅわと弾ける泡とメロンの香り。
「バスボムの香りもとてもいいです」
「バスボムはメロンを選んだのか。果実の香りがいいな」
 イヴェリアは香りでリラックス。
「こういうの見てるとわくわくします」
 咲は嬉しそうな顔をしている。
(バスボムが溶けるのを見てるサクが可愛い……)
 咲の無邪気さに、イヴェリアは自分の表情が優しく緩むのを感じた。

「こういうのって炭酸で筋肉がほぐれたりするんでしたっけ?」
 急に話を振られて、リラックスモードだったイヴェリアはわずかに会話の反応が遅れる。
「炭酸バス……は確かに筋肉をほぐす効果はあるが……なんだ?」
「イヴェさんにはいつも戦ってもらったり守ってもらったりで……」
 A.R.O.A.から任務を請け、プレストガンナーとして勇敢に戦うイヴェリアの姿を思い描く。
「筋肉凝ってたりとかしますか?」
 思いやりの気持ちから、そう尋ねてみた。
「あの、よかったらマッサージしますよ! 手とか肩とか!」
 イヴェリアが返事をするより先に、ぐいぐいと咲が話を進めていく。
「マッサージ? 今、ここで!? この状況で!?」
 水着の男女がマッサージでスキンシップ。このドキドキなシチュエーションに、真面目で謙虚な性格のイヴェリアは抵抗感を抱いた。
「……いや、いい」
 角の立たないよう、穏やかな声で断ったけれど。

「へへへ~じゃあもみますね~」
「サク……俺の意見は無視か……?」
 神人の咲から積極的に、精霊との距離を縮める行動を起こす。
(自分からこんな風に触れるのって初めてで緊張しちゃうんですが……でもイヴェさんと接することができるのは嬉しいな)
 咲はイヴェリアの肩や背中に触れてみる。スラっとしているが必要な筋肉はついている。肩を中心にもみほぐす。

(水着を着ているとはいえこの状況でマッサージとかサクは俺を殺す気か)
 マッサージを受けているイヴェリアは、複雑な気持ちだった。素直に嬉しいという気持ちと、咲から異性として意識されていないのではないかという不安。
(……サク的にはお父さんの肩もみくらいのイメージなのだろうが)
 イヴェリアにしてみれば、なんとも複雑な心境だ。
「お客さん、気持ちいいですかー? なんて」
「……気持ちいいかと聞かれたら気持ちいいと答えるしかないだろう……」
 そんな調子で、咲のマッサージはしばらく続いた。

「ありがとう。もう充分疲れはとれた」
「そうですか! 良かった~」
 くるり、とイヴェリアが咲の方へと振り向く。
「では……サク、今度は俺がマッサージをしてやろう?」
「え……っ」
 その言葉に、咲は驚いて固まった。
「……私にもしてくれる? いや、それはその……えっと! は、恥ずかしいです!」
 咲は両手を前に突き出し、首を横にふるふるっと強く振る。
「何? イヤ?」
「うう、けしてイヴェさんがイヤというわけではないのですが……この状況でマッサージだなんて、さすがに恥ずかしいですよ~……」
 咲が戸惑いがちにNOを告げれば、イヴェリアはそれ以上の無理強いはせず、むしろ満足したように引き下がってくれた。紳士的な振る舞いだ。
 メロンの香りのするロータスプールの中で、イヴェリアは咲の顔を見ながらこう言った。
「これで分かっただろう……俺はとてもドキドキしたんだ」

●手屋 笹とゆずソーダ
 『手屋 笹』が小人から買ったのはゆずのバスボムだった。金時計「グローリア」に気づいた村人は、ソーダの湖に遊びにいく笹をにこやかに送り出してくれた。
「ゆずの爽やかな香りに気持ちがさっぱりしますね……」
 向かい合わせで少し離れた場所に座っている『カガヤ・アクショア』も、心地良さそうに目を細める。
 二人が着ているのは、ブルーサンクチュアリ産のオーダーメイド水着。
 笹の水着は水辺の祈り手。笹の可愛らしさと神秘的なイメージを兼ね備えたデザインだ。髪はまとめてアップに。
 カガヤの水着はスカーレットハウンド。スパッツ型の水着の上にトランクス型の水着を重ね履きしたスタイルだ。肉球マークのワンポイントが、犬のテイルスであるカガヤによく似合う。
「温水プールって聞いてたから泳げるのかと思ってちょっとわくわくしてたんだけど……」
 ロータスプールは、遊園地のコーヒーカップほどのサイズだ。二人で入ってもくつろげるだけのスペースは確保されているが、さすがにこの中で泳ぎ回るのは狭すぎて無理だろう。
 アクティブなカガヤを見て、笹は朗らかな苦笑を浮かべる。
「カガヤは本当に動きたがりですね……。泳ぐのはまた別の日にしてのんびりしましょう」
「そうだね。大人しくしゅわしゅわと香りを楽しもう~」
 カガヤはゆずの芳香を嗅いでみた。
「うーん鼻がすっきりする癒しの香り……」

 ソーダの湖にプカリと浮かぶ大きな花。
(せっかく二人きりでこんなに近いのですし……カガヤの隣に行きたいのですが……)
 もっと近づきたい。でも笹には、それを躊躇う理由があった。水辺の祈り手に視線を落とす。とても素敵な水着だが、水着姿というのが笹の悩みの種だった。
(私もカガヤも水着なのが……)
 自分の体型が気になって、カガヤのそばにいく勇気が出ない。小柄でスレンダーな笹の体は華奢で繊細だ。しかし笹は、身長141cmのこの体にコンプレックスを抱いていた。
(身長もですが体型も気になります……)
 ただ黙ってカガヤの方を見つめるしかなかった。

(う? 笹ちゃん、こっちと自分と見てどうしたの?)
 ロータスプールでくつろいでいたカガヤは、ふと笹の視線に気づく。彼女の表情を見れば、カガヤにはピンときた。
(あれはまたコンプレックスに苛まれている顔だな……)
 そんな笹に、どんな言葉をかけようか。カガヤは考えてみた。
「笹ちゃん」
 そう優しく名前を呼んで、笹を手招きする。
「あ……カガヤ……」
 呼ばれた笹は、やっぱりコンプレックスが気になって、すぐにはカガヤに近づけず、まごついてしまった。
 カガヤは穏やかな笑顔を浮かべ、笹の手をとった。その手を引いて、自分の前へと座れるように優しく誘導してくれた。
「はわ……カガヤ、近いですよ……」
 カガヤの手がそっと笹の胴体に回される。緩やかな力で、かるーく抱きしめられた。
「笹ちゃんは俺の事怖い? 俺は笹ちゃんが怖くないやり方でもっと仲良くなりたいな」
 単純だけれども、それゆえに真っ直ぐな思いのこもったカガヤの言葉。
「カガヤを怖い……なんて、そんな事全く無いです……」
 笹は自分の手を動かして、カガヤの腕に触れてみた。しなやかな細身の筋肉がついている。
「カガヤと一緒に居るのは寧ろあったかくて……安心出来ます」
 その言葉にパッと笑顔になってから、カガヤは優しい声でささやいた。
「体型とか身長とか関係無しに笹ちゃんが好きで一緒に居たいな」
 カガヤから、純粋な好意を向けられる。笹の存在そのものに対する、深く強い肯定。カガヤは笹のことが大好きだ。
「この身長も体型もカガヤがそのままでいいと言ってくれるなら……。恥ずかしくない……そう思えてきます」
 根強いコンプレックスが、カガヤの言葉で溶けていくのを感じた。

●桜倉 歌菜とミルクソーダ
 村の小人達は、やってきた『桜倉 歌菜』と『月成 羽純』の姿を見て熱烈な歓声をあげた。
 歌菜のコーデは、連合軍制服「青の旅団」に頭にはエンシェントクラウン。手袋「ロイヤル・レット」。金時計「グローリア」が光る。
 羽純の手にも手袋「ロイヤル・チェック」がはめられ、さりげなく主張している。
「ようこそおいでくださいました!」
 村をあげての歓迎ムードの中で、歌菜が選んだのはミルクのバスボムだ。保湿効果があるところが歌菜の気に入った。
(羽純くんも私も仕事上、洗い物で手荒れしやすいですし)
 歌菜はお弁当屋さんの看板娘。羽純はカクテルバーでシェイカーを振っている。
 ミルクのバスボムにしたのは保湿だけが理由ではなかった。
(それに……乳白色なら、恥ずかしくないかな……と。上手い具合に身体を隠してくれる事を期待なのですっ)
 そう期待して、歌菜は村に用意された更衣室で情熱のビキニへと着替える。
 別の部屋で羽純も情熱の海パンへの着替えを済ませた。

 水着に着替え、二人はソーダの湖まで遊びにいく。
「ロータス……聖なる花のプール、本当に素敵だね♪」
「そうだな」
 ショコランドの風景をじっくり見ようとする羽純を歌菜が急かす。水着姿でいるのは恥ずかしいので、早くミルクのバスボムを使いたかった。
「ささっ、早く入ろう、羽純くん!」
「はいはい」
 羽純は軽く笑ってロータスのプールへ向かう。
(……少しくらい水着を見せてくれてもいいのにな)
 と内心思いながら。

「それじゃあ、バスボムを入れるね!」
 歌菜がバスボムをプールに入れる。しゅわしゅわと細やかな泡が出るのと共に、甘いミルクの香りが辺りに広がっていく。
「良い匂いだな」
「温かいし、良い香り……凄く落ち着くな。気持ちいいね、羽純くん」
 そう言って、隣の羽純に視線を向けた歌菜だが、すぐに慌てて前を向いた。
(だって……)
 赤くなりながら、さっき一瞬だけ見た羽純の姿を思い出す。
(羽純くんのリラックスした表情とか胸板とか鎖骨とか色々! 目のやり場が!)
 歌菜は自分の頬の色が気になった。
(ううー顔赤くなってないかな? 乳白色の水じゃ、確認も出来ないし……)

 この状況にどぎまぎしているのは、歌菜だけではなかった。
(……水着姿を見るのは初めてではないが……恋人になったからだろうか、目のやり場に困る……)
 羽純もまた、歌菜の水着姿に落ち着かない気持ちになっていた。乳白色の温水がお互いのボディラインを隠してくれているが、その状態でも意識してしまう。
(距離が近いのも原因か)
 羽純がそれとなく歌菜の様子をうかがうと、彼女も緊張していることがありありと伝わってきた。
(歌菜も緊張しているのか。……それなら……)

「きゃ!?」
 突然顔に水が飛んできて、歌菜は思わず悲鳴をあげる。
 見れば、ちょっとイタズラっぽく笑いながら羽純が両手で水鉄砲を作っていた。
「わあ、羽純くん上手……!」
 歌菜も自己流で水鉄砲を試してみるが、手の位置が悪いのか、思うように水が飛ばない。
「私も……う、飛ばない……」
 がっくり肩を落とした後で、歌菜は少し上目遣いで羽純に助けを求めた。
「教えてくれる?」
「コツがあるんだ」
 羽純がそっと近づいてきた。歌菜の手をとり、水鉄砲のやり方を教えてくれる。
「隙間なく指を組んでみろ……こうだ」
「うん、わかった……それっ!」
「ほら、遠くまで飛んだ」
 羽純のレクチャー通りにやってみると、今度はちゃんと遠くまで水を飛ばすことができた。
「やったぁ! 羽純くん、ありがとう……って!」
 いつの間にか、羽純と凄く近い距離にいることに気づく。
 でもお互いに緊張がほぐれたせいか、そこで気まずい空気にはならない。
 ちょっと照れながらも、二人仲良くミルクのお湯でくつろいだ。

●ハロルドとゆずソーダ
 『ハロルド』が村のお店でゆずのバスボムを選んだのは、『ディエゴ・ルナ・クィンテロ』のために甘い香りを避けたからだ。ゆずなら、さっぱりとした柑橘系の香りがするだろう。
 村で着替えてからロータスプールに入るまでの間、ディエゴはラッシュパーカーを水着の上から羽織っていた。ディエゴは自分の体の傷が気になっており、オーダーメイドの水着も肌の露出が少ないタイプのものだ。
「クリスマスに『夏は海かプールに行こう』と言った事がもう早く達成されるとは思いませんでした」
 ソーダの湖と、その水面に浮かぶ大きな花を眺めながら、ハロルドがそう一言。
「変わったプールだ。ショコランドならではという感じか」
「ディエゴさん」
 白く清楚な水着を身につけたハロルドが、ディエゴを見つめる。
「ディエゴさん、この水着どうですか? これもロータスをイメージした水着なんです……似合うでしょうか」
 特注の水着、名前はロタティオン。
「一緒に作ってもらった水着か」
 ディエゴはふっと笑みをこぼした。
「……似合ってる、とても」
 褒められれば、悪い気はしないハロルドだ。ミステリアスな部分の多い性格の彼女だが、嬉しそうな声でディエゴをプールへと誘う。
「せっかくだからロータスプールに入ってみましょう」
「ああ」
 ディエゴはするりとラッシュパーカーを脱いで、手頃な木の枝にかけておいた。体の傷は気になるが、よく知らない色々な人に見られるのと、ハロルドにだけ見られるのでは、感じ方が違った。

 ソーダの湖はまだ冷たいが、ロータスプールの中はうららかな日光で温められて天然の温水プールになっている。
 ディエゴが自分達の水着の生地を見て、感心したようにつぶやいた。
「水の中に入ると輝くようだ、不思議な光景だな」
 ロタティオンもライド・ザ・ブルー・リンボも、特殊な繊維が使われている。
「バスボムを入れますね」
 心が落ち着くゆずの香りが漂う。
「この匂いなら、俺も嫌じゃない」
 ディエゴがハロルドの顔を見て礼を言った。
「ありがとう。エクレールはこういうものを選ぶ時のセンスが良いと思う」
「それはどういたしまして」

 ロータスプールの中は冷たすぎず温かすぎず、とても調度良い温度。そしてこのぽかぽか陽気だ。
「なんだかうとうとしてきちゃいますね……」
 眠そうな声で、ハロルドがむにゃとつぶやく。
「眠たくなる気持ちはわかるが、この状態で寝るのは危険だぞ」
 心配した声でディエゴが注意する。
 ただ、そう声をかけてもハロルドの眠気ははれないようだった。
 見兼ねたディエゴが行動に出る。
「どうしても眠りたいなら俺に寄りかかれ、支えておいてやるから」
 ずれて溺れることがないようにと、自分の腕にハロルドの頭を乗せて支える。その状態で、そっとハロルドの肩をつかんだ。

(ディエゴさんの行動に驚きですね)
 ハロルドはうとうとしていたが、本格的に寝入っていたわけではなかった。だが、まだ微睡んでいるふりを続ける。
(とても嬉しかったんですから)
 べたべたするのとは少し違うので、これならディエゴも恥ずかしくはないはずだ。
(お言葉に甘え、ではなく行動に甘えさせて頂きますね)

(帰りに村の小人達に感謝の言葉を送りたい。着替え場所を提供してくれたんだ)
 連合軍制服「青の旅団」を着たディエゴに、村人達もきっと好意的な反応を返してくれることだろう。衣装云々よりも、ディエゴの丁寧さと礼儀正しさに、ショコランドの小人は好感を持つだろう。
(ドライスーツでない限り海やプールで遊ぶのは嫌だった)
 ディエゴは、目を閉じているハロルドの顔を眺める。
(が、これなら良いかもしれない)
 つい口に出す。
「……良い香りだ」
 その言葉はゆずの香りに向けられたのか。それとも……。
 幸せに微睡むハロルドに?

●アイリス・ケリーとカシスソーダ
 『ラルク・ラエビガータ』は、ひゅうと口笛を吹いた。
「子供が立てるような馬鹿デカい蓮の葉ってのは見たことあるが、大人二人が楽々入れる花とはな」
「蓮の水槽、いえ、浴槽ですか」
 ソーダの湖に点在する蓮の花のプールを想像しながら『アイリス・ケリー』が言う。
「まるで絵本の中のよう。流石ショコランドですね」
 ラルクは少しばかり顔をしかめた。
「……確かにショコランドらしいが、甘ったるいのは勘弁だな」

 小人達の村で、二人は手作りのバスボムを買うところだ。
「バスボムは……ラルクさん、ご希望は?」
 商品のラインナップにざっと目を走らせ、ラルクはそっけなく一言。
「ゆずかカシスがいい」
「それでは、赤い『カシス』にしましょうか」
 村の更衣室で、アイリスは細身のシルエットの青い水着「アクアアニムス」に着替えた。
 ラルクの水着はパシオン・シーの夏の太陽を連想させる、真っ赤な「レッドサン」。

 いざソーダの湖のロータスプールに入ると、アイリスはしばらくぼんやりしてしまった。
(水の中に咲いてる花もあまり見ないのに、自分がその花の中にいるなんて……)
 不思議な気分を味わっているところ、ラルクの声で現実に引き戻される。
「アンタ、バスボムはどうした?」
「あ、忘れるところでした」
「なんだ、花に見とれてたのか。確かにこんな光景、そう見れるもんじゃないが」
 ラルクもほんの少しの間、アイリスと一緒にソーダの湖の景色を眺めた。
「では早速……シュワシュワしますね」
 風景を見終えたところで、アイリスがカシスのバスボムを手にする。とぽん、とプールの中に落とせば、炭酸の泡が弾けた。
「温度がちょいと足りないが、ちょっとした温泉気分だな」
 機嫌良さそうにラルクがつぶやく。
 温泉にはあまり縁のないアイリス。ラルクに質問してみる。
「温泉に行ったこと無いのですが、泡が出るものなんですか?」
「場所次第だな。まあ、しない方が殆どだが」
 普段は和服で過ごしてるラルクは、こういった和の文化にも詳しいのだろう。

 カシスのバスボムは泡を出しながら小さくなっていき、やがて完全に温水に溶けた。
 唐突に、ラルクがこう口にする。
「……目、外してきたんだな」
 いつもつけているカラーコンタクトのことを指しているのだと、アイリスにはすぐに察しがついた。
「視力が悪いわけではないですし、お風呂やプールのときにコンタクトレンズは必要ありませんから」
 その説明で、ラルクは納得しない。鋭くこう指摘した。
「それでも前までならアンタ、そもそもこういうとこに来るつもりなかっただろ」
 二人の間に、つかの間の沈黙が訪れた。
「……そうですね」
 ゆっくりと瞬きをしながら、アイリスが答える。今の彼女の瞳はエメラルドグリーンではない。カシスよりも赤かった。
「コンタクトレンズも手袋も、人前で外すつもりはありませんでしたから」
 アイリスは手でお湯をすくって、ぱちゃりと軽く小さな飛沫を作った。
 右手の甲には傷跡。左手の甲には紋章。
「カシスを選んだのもそれか?」
「え?」
 ゆずかカシスの二択。その時アイリスは、赤いという理由でカシスを選んだ。ラルクはそれをちゃんと覚えていた。
「この色なら水面に目が映っても気にならねぇだろ」
「……お見通しですか」
「まあな」
 ラルクはニッと笑う。
「目を気にしなくていいってことは、プールらしいことしてもいいってことだな?」
「プールらしいこと? きゃっ……!」
 大きな飛沫。ラルクがアイリスに水をかけた。
「……確かにプールらしいことですね」
 髪からぽたぽたと滴を垂らしながらも、あくまでもアイリスは不敵な表情。
「分かりました、この勝負、受けて立ちましょう」
「望むところだ」
 わいわいと、二人で賑やかに水をかけあうのだった。



依頼結果:成功
MVP
名前:手屋 笹
呼び名:笹ちゃん
  名前:カガヤ・アクショア
呼び名:カガヤ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 山内ヤト
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月06日
出発日 03月11日 00:00
予定納品日 03月21日

参加者

会議室

  • [8]桜倉 歌菜

    2016/03/10-22:28 

  • [7]桜倉 歌菜

    2016/03/10-22:28 

  • [6]桜倉 歌菜

    2016/03/10-00:49 

  • [5]桜倉 歌菜

    2016/03/10-00:49 

    桜倉歌菜と申します。
    パートナーは羽純くんです。
    皆様、宜しくお願い致します!

    バスボム、どの香りにしようかすっごく悩みます…!
    全部試したいくらい…(わくわく♪

    よい一時になりますように!

  • [4]アイリス・ケリー

    2016/03/09-16:23 

    アイリスとラルクです。皆さん、お久しぶりですね。
    天然の温水プール、楽しみです。
    それでは、よろしくお願い致します。

  • [3]手屋 笹

    2016/03/09-13:19 

  • [2]ハロルド

    2016/03/09-12:26 

  • [1]淡島 咲

    2016/03/09-05:19 


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