【蝕糖】この愛しい世界に祝福の金平糖を!(東雲柚葉 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 眼前に並びし那由他にもなろうかというオーガの軍勢にも、小柄な少女はニヒルな笑みを浮かべて立ち塞がっていた。
 そして、その特徴的な帽子を揺らし、自分の身長の3倍はあるであろう巨大な杖を天に掲げてすぅっと大きく息を吸う。瞬間、少女の周りからつむじ風が巻き起こり、ふわりと少女の髪の毛を揺らした。
「浮かび出る契約の紋章。下賎なる悪鬼の姿。立ち上がり・否定し・怖し・蠢き・昵懇を妨げる。姦計する悪鬼の王女。絶えず顕現する神の精霊。耽溺せよ。法悦せよ。無に堕ち己の存在を知れ――」
 風圧によって飛ばされそうになる帽子を押さえながら、少女は呪文の詠唱を終え、ついにその強大なチカラを解放する。

「エクスプロおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおジョンっ!!!!」

 轟音。
 閃光が全身を包み込み、空気をも打ち震わせる爆音が轟き、土煙が辺り一体を蹂躙する。その様はまるで爬行する生き物のようだったが、すぐに吹き荒ぶ風によって掻き乱され、視界が戻ってゆく。
 数えるのもバカらしく思えるほどの数を誇っていたオーガの大部分が削り取られ、生き残っている者達もすぐには立ち上がれないようだ。
 このまま何度かこの爆裂魔法を繰り返せば勝てる――!
 誰もがそう思う、清清しい局面に見えるだろう。
 しかし。
「うへ~~~……」
 小柄な少女の体内に宿っている魔力は、それほど高くは無い。爆裂魔法などという強大なチカラを使ってしまえば、魔力を使い切り動けなくなってしまうのだ。
 眼前に広がるは、数えるのもバカらしい数を誇るオーガの大軍勢。少女の一撃によって大きく吹き飛んだとはいえ、少女は動けない。どうなるのか。どうなってしまうのか。
「……………………おたすけ……」
 どうにもならないのである。
 突然魔力が煌々と湧き出てきたりなどしない。現実はそう甘くないのだ。
「わ、我が杖ローズテンタクルスよ、誰か、誰か呼んで来て! ……ください!」
 杖は主人に命令――涙目で懇願され、しぶしぶと面倒くさそうに飛び立った。
「かの杖に導かれし聖なる者、爆裂魔法を行使出来るだろう」
 ふふふ、ふふふふふふ、とうつぶせで地面に倒れ伏しながら、小柄な少女は笑う。
 この現実から、目を背けるために。
「たすけてくださいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
 悲痛な叫びは、爆裂魔法の炸裂音より大きく響いた。

解説

【出現オーガ】
ヤグアート ヤックハルス ヤグズナル ヤックドロア ヤグナム ヤグルロム ヤックルロア ヤックアドガ ヤグマアル ヤックドーラ ヤックドロア・アス……etc
その他デミオーガの皆様
※全員のステータスを無視し、爆裂魔法を食らうと死にます。

・神人か精霊が、爆裂魔法を使って、有象無象のオーガを吹き飛ばすエピソードです。
☆注意!☆
※爆裂魔法を使えるのは、神人か精霊のどちらかです!
※爆裂魔法を使うと、身体に力が入らなくなり、倒れます!
※お持ちの武器等で攻撃できますが、数の暴力によって勝てません! 近距離の場合逃げてください!

【目的】
爆裂魔法で、オーガ軍団を吹き飛ばします。
参加者様全員が爆裂魔法を撃ち終える頃には、オーガはみんなやられていることでしょう。
また、爆裂魔法を撃った後には、パートナーを背負って逃げてください。


【その他】
・基本的に個人個人描写ですが、一緒に爆裂魔法を撃ちたい方が居れば、承りますのでご一筆を!
・爆裂魔法によって周囲の村の硝子が粉々に。500jr頂戴します。


ゲームマスターより

えくすぷろぉぉぉぉぉぉおぉぉぉじょんっ!
東雲柚葉です。スティールはイケないので出来ません!!!!
……いや、もしかしてありだったのですか……?

今回は、日頃の恨みを晴らすためにオーガをぶっ飛ばしましょう!
私も爆裂魔法古城にぶっ放したい……。

ではでは、ご参加お待ちしております!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リヴィエラ(ロジェ)

  リヴィエラ:

ロジェ、お一人では危険です! せめて、この祝福を…
(らぶてぃめっとトランス使用)

爆風によって吹き飛んでも、魔力を使い切って倒れても、
ロジェの事は私が支えます。

(爆裂魔法でロジェが倒れた後、彼の肩を支えながら後方へ逃げる。重いのか、ズリ、ズリ、と引きずりつつ)

重い、です…でもこれは、貴方が抱え込んだ覚悟の重さ、ですっ…!
貴方はいつも、一人で抱え込んでばかり…っ!

何を仰るのです、私にもロジェの荷物を背負わせてください!
そしていつか、ロジェの故郷を復興させましょう。私もお手伝いします!

(マン…トゥール…? ロジェはさっき、何を言いかけたのでしょう?)


クロス(オルクス)
  ☆爆裂魔法使用

☆心情
「チッ、まさかオーガの軍団に囲まれてるとは、な…
オルク! 杖使って魔法完了するまで援護してくれ!!」

☆行動
・可能ならハイトランス
・基本的今回は魔法使う為後方へ移動
・攻撃の際は手足等を斬り込む
・クナイ等も使い足止め
・もし少女がいたら後方へその場から動かない様に伝えておく

☆呪文
「紅き桜の円舞に魅了されし者、炎をまといて踊り狂わんとし猛き焔よ。汝に触れし者全てを滅さんされし、全ての災いを灰燼させよ!! 今こそ我が力を喰らい尽くせ!! エクスプロおおおおおおおおおおおおおおおおおおおジョンっ!!!!」

☆終了後
・その後倒れ込むがオルクに受け止められ気絶
「はぁ、はぁ……っ
わ、り…オル、ク…」


アンダンテ(サフィール)
  なるほど、面白そうね
私、やってみたいわ

それでね、予備でいいからサフィールさんの杖も貸して欲しいの
格好いいじゃない、二刀流的な
そう。雰囲気はね、大事なのよ。中身は後付けでも間に合うの
例えば私とか中身は置いといて格好だけはばっちりでしょ?
そういうことよ

詠唱はなんとうか、こう、あれよ
仰々しいやつがいいわよね(振り向き
それなら私でもできそうね。採用よ!
さあ、待たせたわねと正面向き直り杖を掲げ詠唱開始

魔法発動後ふらふらとよろめいた後に抱えられ逃げる
いつもありがとう、サフィールさん
助けて貰えるって安心感があったからつい張り切っちゃったわ

それにしても…(ちらりと振り返り残骸を眺め
なんだか、癖になりそうだわ…


シャルティ(グルナ・カリエンテ)
  あらかじめ精霊には残った敵がいても一切深追いしないように伝える

なんだか…うじゃうじゃと鬱陶しいわね……
爆裂魔法ね…
みたいね。ストレス発散…には、良いかもしれないけど村にとってはありがた迷惑よね
分かってるわよ…私がやれば良いのね? 爆裂魔法

爆裂魔法使用後の対処は精霊に任せる
力が入らないだけで…別に問題ないけど…
…って、喋ってる場合じゃないでしょ…。ねえ、手貸してくれない?
へっ? あ、ちょ…ちょっと!?
…えーと…ありがとう? って、言えば良いの…これ…?


エリー・アッシェン(モル・グルーミー)
  杖と少女に
しらせてくれてありがとうございます!
オーガからの避難は、自力でできますか?

心情
不思議な杖に呼ばれて、やってきて見れば……。

……なんということでしょう。
こんなオーガの大群、まともに戦っては勝ち目は薄そうです……。

数の多さに怯んでいる場合ではありませんね。
今、私達ができることをしましょう。
トランス状態へ。

魔法。その不思議な力、どうか私達にお貸しください。

行動
邪魔にならないよう、モルさんの横にひかえています。
モルさんが完全に地面に倒れる前に腕をつかみ、背負う形に。
さあ、逃げますよ!
……お、重いです。

オーガ退治に積極的なのは私も同様ですが、モルさんの憎悪が彼自身を蝕まないか。
それが心配です。


☆シャルティ グルナ・カリエンテ ペア☆

 眼前にまるで蟻の巣から湧き出る蟻達とでも形容すれば良いのか――そんな数のオーガ達がシャルティの近くまで進行していた。
「本当にすごい数ね。爆裂魔法でオーガが残ったとしても深追いしないでよ」
 横目でそう言い放たれ、グルナ・カリエンテは眼前に広がる敵から目を逸らし、シャルティに目を合わせた。
「深追い? ……あー、はいはい、さすがにあんだけの数、相手できる自信ねぇしな」
オーガでも萎縮しそうな、眦を決した表情で睨まれては、グルナも苦笑いをするしかなかった。
「なんだか…うじゃうじゃと鬱陶しいわね……」
 まるで蟻の巣の近くに砂糖を落としたかのような惨状になっている。
 シャルティは、二人を呼んだローズテンタクルスという杖をまじまじと見つめながら、
「爆裂魔法ね……」
 グルナはガシガシと頭を一つ掻き、同じく杖に視線を移し、今度は草原の一部に大きく形成されているクレーターを見やる。
 これが、この杖から放たれる爆裂魔法の威力のようだ。
「……まあ、ほぼ吹き飛ぶっぽいしなぁ……」
「みたいね。ストレス発散……には、良いかもしれないけど村にとってはありがた迷惑よね」
 爆裂魔法のその強大な威力によって、近隣の村に備え付けられている窓硝子が粉々になるのだというから、命は助かるとはいえ、やはり抵抗がある。
「って、おい言ってる場合じゃねぇだろ」
 グルナがそう促し、シャルティもしぶしぶといった調子で杖を固く握り締めた。
「分かってるわよ……私がやれば良いのね?」
「おー、頼むぞシャルティ」
 シャルティが杖を天高く掲げて、ふと目を閉じた。
 そして、爆裂魔法を放つ為の詠唱を開始する。
「万寿の果て、届かざる神の意図、触れざる天の糧、闇へ堕とす道、悪鬼へ誘う風、集いて惑うな我に代わり力となれ、閃弾・八尺・霹靂・闊達・須臾・逆鱗・彩色の虹彩、剣振る姿、狂乱として消ゆ――」
 シャルティの詠唱と共に風が周囲に舞い上がり、魔力が練り上げられてゆく。
「エクスプローーーージョン!」
 一挙に魔力が放出され、それを受けた空間が萎縮する。無に晒されたかのような静寂が訪れ、須臾の間ではあるが時が止まったかのような感覚に支配された。
 しかして、その静寂は同じく魔力によって破られる。
 萎縮させられた空間は魔力と共に一気に拡散。オーガの一団が鎮座していた場所に、閃光が降り立った。
 そして。爆裂魔法がついにその牙を向き、炸裂。
 オーガの一団を地面ごと一挙に削り取り、土煙を巻き起こす。
 シャルティは途端に力が抜けたようにふらりと後方に足をもつれさせ、グルナが後ろからしっかりとシャルティの肩を掴んだ。
「大丈夫か?」
 シャルティは耳元近くで聞こえるグルナの声に、肩越しに振り返る。
「力が入らないだけで……別に問題ないけど……」
「……良くやったな。うし、後は任せろ」
 二人が爆風に耐え、オーガ達が居た場所に視線を移すと、そこには少女が作ったと思われるクレーターの隣に、巨大なクレーターが形成されていた。
 けれど、オーガ達を殲滅した、とまではいかないようだ。立ち上がれない状態ではあるものの、オーガ達はこちらに視線を移して殺気立っている。
「……って、喋ってる場合じゃないでしょ……。ねえ、手貸してくれない?」
 肩越しに精霊を見つめて、シャルティが呟く。
「おーおー、かなり削れたっぽいなぁ。んじゃさっさと退散するぜシャルティ」
「へっ? あ、ちょ……ちょっと!?」
 なんと、グルナはそのままシャルティを荷物でも担ぐように肩に乗せて駆け出した。
 がっしりとした腕に担がれてシャルティは安堵を覚えつつ、遠ざかる敵の群れをじっと見つめる。
「……えーと……ありがとう? って、言えば良いの……これ……?」
 グルナに身を任せながらも、シャルティは釈然としないようにそう呟いた。






☆リヴィエラ ロジェ ペア☆

 数えることすら難しい、理不尽な数を誇るオーガの大軍勢がリヴィエラとロジェの前に立ち塞がっている。
「ロジェ、このままでは村が……」
少女の持っていた杖を握るロジェは、身体を小刻みに震わせながら、オーガの集団を見据えていた。
「ロジェ……?」
 リヴィエラの問いかけにも応じず、ただオーガの軍勢だけを見つめるロジェ。
(俺はオーガ共に故郷を滅ぼされ、両親を殺された)
 ロジェのその双眸には、自分の故郷を踏みにじり殺戮の限りを尽くしたオーガ達の姿が映っていた。
(そして神人を……リヴィエラをも狙う奴らを……)
「――俺は許さない」
 ローズテンタクルスを握り締め、ロジェがオーガの軍勢へと突き進む。
「ロジェ、お一人では危険です! せめて、この祝福を……」
 その双眸にあえて映り込むようにしてリヴィエラがロジェの眼前に立ち塞がり、そのままインスパイアスペルを唱えてロジェの唇に自らの唇を重ねた。
「蒼穹の絆、ここに在れ」
 リヴィエラの服装が神々しいさながら歌姫のような物へと変貌し、ロジェの身体に纏われた光は怒りのせいか安定せずゆらゆらと揺れている。これはトランスの最上位――らぶてぃめっとトランスだ。
(そう言えば、リヴィエラの父親も自身の保身の為にオーガに加担していたな……リヴィエラをオーガに捧げるから、自分の命だけは……と)
 ロジェの握る力によって、ローズテンタクルスに血が滲む。
(クソッ、あのマントゥール教団員がッ)
 周囲を判別できないほどに激昂したロジェの背中を見送りつつ、リヴィエラは呟きを漏らす。
「爆風によって吹き飛んでも、魔力を使い切って倒れても、ロジェの事は私が支えます」
 例えロジェに聞こえていなくても聞こえていても、これがリヴィエラの本心。
 ロジェはリヴィエラの気持ちを背に受けつつ、忌々しそうにオーガを睨む。
「できる事なら、あの父親ごと吹き飛ばしてやりたいが……」
 オーガの軍勢を殲滅する為に、ロジェはその杖を天高く掲げ言い放つ。
「杖よ、導きにより現れたというのならば、俺に奴らを殲滅する力を――!」
 ロジェの周囲に巻き上げられていた光が杖に集約して行き、同時にロジェの髪が魔力の本流を受けて逆立つ。
「エクスプロージョンッ!」
 集約された魔力をロジェが怒りのままに放出し、その魔力は一挙にオーガ達を飲み込み炸裂、纏まっていた一団を殲滅した。まるでそれは、蹂躙され荒廃と化したロジェの故郷のように。
 爆風が吹き抜け、力が抜けたロジェはそのまま背に鎮座していたリヴィエラの腕に倒れ込む。
 残ったオーガ達が二人の下へと近づき始め、リヴィエラは、ロジェをずるずると引き摺るようにしてその場から撤退する。
「重い、です……でもこれは、貴方が抱え込んだ覚悟の重さ、ですっ……!」
 リヴィエラは、苦悶の表情を浮かべながら、ロジェを引き摺って前を向く。
「貴方はいつも、一人で抱え込んでばかり……っ!」
「ぐ……リヴィエラ、俺を置いて逃げろ……」
 背後から迫る魔の手に視線を移しながら、ロジェはリヴィエラにそう呟く。
「何を仰るのです、私にもロジェの荷物を背負わせてください!」
 リヴィエラは前だけを見据え、進む。
「そしていつか、ロジェの故郷を復興させましょう。私もお手伝いします!」
 リヴィエラの笑顔を見て、ロジェは絶句するように目を見張った。
「なっ、復興だと……? この、お人よし……君はどこまでバカなんだよ……っ」
 吐き捨てるように言いつつも、ロジェは微かに笑顔を浮かべた。
 それは、背後から忍び寄る魔の手から少しだけ視線を外して、未来を見据えるように。
(マン……トゥール……? ロジェはさっき、何を言いかけたのでしょう?)
 ただ、一点だけ、ロジェの漏らしていた言葉がリヴィエラの中で引っかかっていた。






☆クロス オルクス ペア☆

 少女の杖ローズテンタクルスによって導かれ、クロスとオルクスはオーガの大軍勢の前に身を晒していた。
「チッ、まさかオーガの軍団に囲まれてるとは、な……オルク!」
 クロスがオルクスを呼ぶとオルクスは、首肯してクロスの元へと駆け寄った。
「『我等が絆、桜の如く永久に咲き誇れ』!」
インスパイアスペルを二度唱え、クロスがオルクスに口付けを落とす――ハイトランス・ジェミニだ。二人の瞳がそれぞれ紅銀瞳と蒼銀瞳に彩られ、蒼紅銀をしたオーラが吹き荒ぶ。
「オルク! 杖使って魔法完了するまで援護してくれ!!」
 クロスが少女の杖を手に持ちながら、詠唱の準備をする為に後方へと移動する。
「ったく誰がこんな予想してたかよ……! あぁ、了解! 任せろ!!」
 クロスを援護する為、オルクスは迫り来るオーガに『パルパティアンⅡ』を使用しながら同じく後方へ移動する。
 腕や足を的確に狙い撃ち、相手の機動力を削ぐ攻撃の精度は流石のものだ。
 背後に回りこんでいたオーガに対し、クロスもトランスソードでオーガの手足を斬りつける。この数だ、まともに相手をしていてはキリが無い。
 クロスが片手でクナイを投擲し、オーガとの距離を離していたが、攻撃を受けて激昂したオーガ達が一挙にクロスへと近づいた。
「『グレネードショット』!」
 団塊のように固まっていたオーガ達を一気に吹き飛ばし、クロスから無理矢理距離を離した。
「サンキュー、オルク!」
 クロスが一気にオーガ達から距離を離すと、草原に倒れている少女の姿が。一瞬死体かと思ったが、どうやら違うようだ。
「……動くなよ!」
 見事なうつ伏せの態勢にクロスは一瞬かける言葉に迷いながらも、そう少女に投げかける。
「はい……動けません……」
 少女を背に庇うように立ち、少女の杖ローズテンタクルスを天高く構える。
「紅き桜の円舞に魅了されし者、炎をまといて踊り狂わんとし猛き焔よ」
 呪文の詠唱が開始され、オルクスはそれを確認してさらにクロスへの攻撃に警戒を強める。隠しナイフで隙を突いてオーガを牽制し、遠距離攻撃はナイフを投擲して逸らす。
「汝に触れし者全てを滅さんされし、全ての災いを灰燼させよ!!」
 詠唱が終わる、そう判断したオルクスが身を翻してクロスの元へと駆け寄る。
 すると、オーガの一体がその隙を突いてクロスへと攻撃を繰り出した。
 ダメージを半減する程度には軌道を逸らせるが、クロスへの被弾が免れないコースだ。オルクスは自分の身を挺して直撃を免れようとするが――。
「今こそ我が力を喰らい尽くせ!!」
 それよりも早く、クロスが詠唱を終えて魔力を解放する。
「エクスプロおおおおおおおおおおおおジョンっ!!!!」
 一挙に放たれた魔力の本流が怒涛の勢いでオーガの大軍勢に放たれた。
 そして、一瞬の静寂を造形した魔力達は、その次の瞬間に炸裂。
 文字通り爆音を轟かせた。
 地表を削り取るかのようにして炸裂した大爆発は、オーガの軍団を一挙に削り取り、灰燼に帰す。
 そして、爆風に打たれるようにしてクロスがふらりと倒れ――そうになったところをオルクスががっしりと掴んだ。
「はぁ、はぁ……っわ、り……オル、ク……」
「クー……! 良く頑張ったな……」
 全身の力を根こそぎ持っていかれるような感覚にクロスの意識が遠のき、オルクスの微笑みを見て安心したのか、そのまま気絶してしまった。
 オーガ達も大部分は居なくなったが、まだ動いてこちらに向かってこようとしている個体も居るようだ。
「さぁてさっさと撤退するか!」
 オルクスはクロスを抱きかかえ、余った片腕で少女も抱きかかえる。
「ちょっ、すごいですね!?」
 抱きかかえられた少女がオルクスにそう言うと、オルクスは笑みを浮かべながらひとつ答えた。
「一度に二人以上を助けられるように鍛えてるからな」






☆エリー・アッシェン モル・グルーミー ペア☆

「不思議な杖に呼ばれて、やってきて見れば……」
 オーガの膨大な数に辟易としながらも、エリー・アッシェンはモル・グルーミーと共に村とオーガの軍勢の中立に立ちはだかっていた。
「……なんということでしょう。こんなオーガの大群、まともに戦っても勝ち目は薄そうです……」
 どうやら少女は安全な場所へと避難させてもらえたようで、もう心配をする必要はなさそうだ。
「神人よ。あの大群は、主にDスケールオーガで構成されている。我らウィンクルムでなければ殲滅できぬ相手だ」
 モルのその言葉に、エリーはオーガの軍団を見る。言われて見れば、確かにその通りだ。
「多少無理をしてでも、ここで喰い止めねばならん」
 その双眸には、自身の過去が映っているようで。ウィンクルムとしての責務を果たそうという気持ちと共に、復讐という気持ちが見て取れた。
 エリーは、モルの言葉に頷き、
「……そうですね。数の多さに怯んでいる場合ではありませんね。今、私達ができることをしましょう」
 エリーがモルに近寄り、インスパイアスペルを唱えて口付けを落とす。
「『戦いの果て、凶鳥の糧』」
 トランスが発動し、二人の身体に力が満ち溢れる。
「魔法。その不思議な力、どうか私達にお貸しください」
 エリーが少女の杖、ローズテンタクルスにそう語りかけると、杖は地面に独りでに立ちまるで手に取れとてもいうように鎮座した。
「爆裂魔法……エンドウィザードの技に近いものだろうか?」
 モルはそう呟いて杖を手に取る。
「我はトリックスター。魔力の扱いには、少しばかり心得があるつもりだ」
「わかりました。モルさん、お願いします」
 エリーはモルの邪魔にならないように横に並んでオーガの大軍勢を眺める。巨大なクレーターが四つ出来ており、その付近にオーガが倒れているが、それでもなおオーガの数はまだ多い。
 モルが意識を集中させ、オーガの軍勢を睨みつける。
その胸中では敵を倒そうという思いは揺るがないが、同じぐらい強くオーガへの憎悪が渦巻いており、怨嗟が湧き上がってくるようだ。
 杖に魔力を集約するため、モルが呪文の詠唱を始める。
「散在する悪鬼の骸。劣等・激情・韜晦の塵埃。動けば死。止まれば堕つる。耳打つ音色が虚空に響き満ちる――」
 呪文の詠唱を終えると、モルは右手につけた鳥の爪に似たアーマーリングでオーガの群れを指差した。
「惨劇の創り手へ。お前達が育んだ一つの憎悪を、今、返そう」
 そのまま杖を天高く掲げ、呟く。
「……エクスプロージョン」
 爆裂魔法が発動した。
 嵐の前の静けさとも言うべきか、瞬く間に空間が凍りついたような静寂が訪れる。
 けれども、その静寂はすぐさま破られ、
 ――轟音が辺りを支配した。
 オーガの一団が吹き飛び、バラバラと音を立てて巻き上げられた土と共に地面に降り注ぐ。
 それを無表情ながらも満足気に見据えていたモルは、ぐらりと身体を後方に倒した。
 エリーはそれを見逃さず、モルが完全に地面へ倒れる前に腕を掴み背負い投げをするかのようにモルの身体を背負う。
「さあ、逃げますよ!」
 イメージではダッ、と駆け出せると思っていたのだが、やはり力が抜けている人間というものは非常に重たいものだ。
「……お、重いです」
 ずるずるとモルを引き摺りながらも、エリーは着実に戦線から離脱する。
「オーガ退治に積極的なのは私も同様ですが」
 エリーはモルの顔を覗き込むことはせず、あくまで前を見据えながら呟く。
「モルさんの憎悪がモルさん自身を蝕まないか、それが心配です」
 過ぎた炎は時として自分の身さえも燃やし尽くす。それが良い方向であっても、悪い方向であっても。
モルは、エリーに背負われ朦朧とした意識で、彼女の独り言を聞き――そのまま意識を落とした。






☆アンダンテ サフィール ペア☆

 迫り来るオーガの軍勢に、アンダンテは嬉々としていた。
「なるほど、面白そうね。私、やってみたいわ」
「面白そうとか言っている場合ではなさそうなんですが」
 先行したウィンクルム達によって大部分のオーガが削り取られたとはいえ、まだ途轍もない数だ。
 しかし、アンダンテはそれでもなお、おっとりとした口調で、
「それでね、予備でいいからサフィールさんの杖も貸して欲しいの。格好良いじゃない、二刀流的な」
 自分の杖と合わせて三本となるので、そんなに杖は要らないと思うのだが、アンダンテは意地でも三本使いたいらしい。
 ただ、自分が倒れてはそのまま引き摺られていく未来しか見えないので、アンダンテが爆裂魔法を使うことに関して異論は無い。
「そう。雰囲気はね、大事なのよ」
 サフィールの痛い娘を見るような目をまるで気にしていないかのように、アンダンテは続ける。
「中身は後付けでも間に合うの。例えば私とか中身は置いといて格好だけはばっちりでしょ? そういうことよ」
何がそういう事なんだろう、というか自分でそれを言うのかなど色々と思うことはあったが、サフィールは反応が面倒だったので、口に出さずにアンダンテに杖を手渡した。
 アンダンテは自分の持つ『愛の女神のワンド「ジェンマ」』と、サフィールの持つ『黒酉の飛翔』を持ち満足そうにポーズを決める。
 自然と口から溜息が漏れそうになったサフィールだったが、ここが戦場だということを思い出してアンダンテに近づき、サクッとトランスをしてしまう。
「『星の導きのままに』」
 そして、詠唱中にオーガが飛び掛ってこないように、サフィールは『天の川の彼方』を使用して敵と自分達の間に壁を形成した。
「詠唱はなんとうか、こう、あれよ。仰々しいやつがいいわよね」
「俺に振られても困るんですが……創作言語にして、横文字のような言葉でもそれっぽく並べればいいんじゃないですか」
 面倒くさそうに呟くサフィールだったが、アンダンテはバッと親指を立てて、
「それなら私でもできそうね。採用よ!」
 家業を継いだ身なので、「採用」という言葉の重みはあまりしっくりこないが、ここまでありがたみの無い「採用」という言葉も無いだろう、とサフィールは思ったが、段々面倒臭くなったのでとりあえず首肯しておく。
「さあ、待たせたわね」
アンダンテは正面向き直り、両手に握る杖を掲げ、詠唱開始。
ローズテンタクルスは空気を読んでそのままの位置で魔力を精製し始める。
「カイザィーダ・アバザード・リ・コントラクト・ハンセ・グロス・ユニバース!」
 たった今考えましたというような横文字を呟き、アンダンテが両手にそれぞれ持つ杖をオーガ達へ差し向ける。
「エクスプロ~~ジョン!」
 カッ! とオーガ達が蔓延るそのすぐ上空で、閃光が降り注ぐ。
 三つの杖から練成された膨大な魔力は、大気に亀裂を奔らせるのような音を響き渡らせ、その力を一挙に解放した。
 音だけで身体が後ろに押しやられそうなほどの爆音が響き渡り、オーガ達を爆裂魔法が飲み込む。
 アンダンテは、満足そうに魔法の威力を見つめていたが、ふらふらとよろめいた後、地面に倒れる前にサフィールに抱きかかえられた。
 サフィールは念には念を入れ、『天の川の彼方』をもう一枚張ってからそのまま駆け出す。
「いつもありがとう、サフィールさん。助けて貰えるって安心感があったからつい張り切っちゃったわ」
 アンダンテは満足そうに、そして無邪気に微笑みながらそう呟く。
「それにしても……」
 抱きかかえられながらちらりと振り返りオーガ達の残骸を眺め、
「なんだか、癖になりそうだわ……」
 サフィールは、その呟きに辟易とした表情をしながら、
「これっきりにしてください」
深いため息を落とすのだった。




●助かった村と少女

 ウィンクルム達によって救われた村では、女神ジェンマ様が『祝福の金平糖』を降らし、村を自愛に包んでいた。
 そんな中、少女は近隣の村の宿で金平糖に目もくれず、
「次はどこに爆裂魔法を……」
 楽しげに笑う少女に、宿屋の店主が問いかける。
「あの爆発、嬢ちゃんがやったのかい?」
「ふっふっふ、超魔導師の私にかかれば朝飯前――」
「そうかい。なら、朝飯前に請求書にサインしてもらおう」
 手渡された紙を見て少女の顔色が真っ青になる。
「はい? ……な、なんですかこの金額!?」
「あんたが割った窓硝子の請求書だよ。ウィンクルムさん達が半分以上立て替えてくれたんだ、きっちり払うんだな」
 少女は涙目になりながら、宿屋の中心で叫ぶ。
「どうしてこんな目に遭うんですかぁぁぁぁ!!」



依頼結果:大成功
MVP
名前:クロス
呼び名:クー
  名前:オルクス
呼び名:オルク、ルク

 

名前:アンダンテ
呼び名:アンダンテ
  名前:サフィール
呼び名:サフィールさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 東雲柚葉
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル 冒険
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月28日
出発日 03月04日 00:00
予定納品日 03月14日

参加者

会議室

  • [11]クロス

    2016/03/03-23:56 

  • [10]エリー・アッシェン

    2016/03/03-23:37 

    皆さんありがとうございます。
    私のプランだと文字数的に、声をかけるくらいしかできなくて……。

    あと、オーガの群れが主にDスケールオーガで構成されていることから、ジョブスキルを使わない予定でも、トランスはしておいた方が良いような気がします~。

  • [9]アンダンテ

    2016/03/03-22:47 

    >少女
    あら、そういえばそうね!すっかり頭から抜け落ちていたわ。
    私達の所は一応トランスもして、サフィールさんに天の川の彼方を使ってもらって時間稼ぎの壁にするつもりだったの。
    文字数的についでにって形にはなっちゃうけど、女の子も守る感じにしてみるわ。
    個人個人描写だからどういうった扱いになるかはわからないけど、とりあえず私も書いておくわね。

  • [8]クロス

    2016/03/03-22:31 

    クロス:
    少女の事は一応俺達のプランに書いておいた
    最悪オルクが俺と少女抱えて逃げるように書いといたから多分大丈夫だとは、思う←

  • [7]リヴィエラ

    2016/03/03-19:05 

    リヴィエラ:
    (はっとした表情で)そうでした、魔法少女様がいらっしゃるのでした…!
    そこまで気が回りませんでした、流石エリー様ですっ!

    ロジェ:
    魔法の杖が、少女を守れるかどうかだな。
    『全員が爆裂魔法を使う頃には、オーガは殲滅されている』とあるし、
    それまで少女には後方にいて貰った方が良いかもしれない。

    ※PL:魔法少女さんに関しては、文字数の関係で
    プランに入れられそうにありません、すみません(涙)

  • [6]エリー・アッシェン

    2016/03/03-17:45 

    そういえば、爆裂魔法少女さんは自力でオーガから逃げられるんでしょうか?
    魔法の杖が意思があって有能そうなので、この杖なら魔法少女さんを助けてくれてそうですが……。

  • [5]アンダンテ

    2016/03/03-00:26 

  • [4]クロス

    2016/03/02-22:54 

  • [3]エリー・アッシェン

    2016/03/02-17:18 

    エリー・アッシェンと、精霊のモルさんで参加です。

    モルさんが魔法を使うようですが、それってつまり魔力を使い果たしたモルさんを私が背負って逃げることに……。うふぅ……、重たそうです!

  • [2]リヴィエラ

    2016/03/02-14:01 

    ロジェ:
    俺の名はロジェと言う。パートナーはリヴィエラだ。
    皆、宜しく頼む。

    杖の導きによって、爆裂魔法が使えるとの事だが
    今回は俺が使うつもりだ。
    リヴィエラに倒れられては困るからな。

  • [1]シャルティ

    2016/03/02-07:47 


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