プロローグ
●
「カモミール、またはカミツレ、あとはカミルレなんて呼ばれることもある花をご存じですか?」
林檎の香りがするとも言われる、白く小さめの花のことである。
職員はそう言うと、ででーんと何かを差し出した。
……どうやらパンフレットのようだ。
「カモミール……いえ、このパンフレットに書かれてある通り、カミルレは2月14日の誕生花なんです。
なので、バレンタイン当日に、その誕生花のハーブでお茶会をしませんかっていうお誘いだそうで」
だがしかし、それだけならばよかったのだが……。
「はい、ここで私が依頼しているということで察しましたね?」
残念ながらただのお茶会というわけにはいかないようである。
バレンタインの時期を迎えた今日この頃。
「リア充爆発しろ」派は人間だけ……というわけではないようだ。
「会場となる村から、一時間程、車で行った所に農園があるのですが、そこにデミ・ハーピーが一体現れたそうなんです。
どうも、ハーブを狙っているようでして、今回はその農園からハーブを会場に持っていくところを襲おうと計画しているようで……」
自分が一体だけなために、確実に妨害出来るほうを選んでいるようで、今も虎視眈々と農園から誰か出てこないか、荷物を持っていないかを上空から狙っているようだ。
「何も持っていなければ、農園に入ることは可能です。
ですから、まずは皆様には農園に向かっていただきたいのです」
ただ……と職員が瞳を曇らせる。
「常にこちらからハーピーを確認できるわけではございませんので、農園に入る前に確実に撃退できるとは限りません。
誰か囮になるとか、いっそのこと農園の方にトラックを出していただき、向かってる途中で撃退するなど考えた方がより安全でしょう。
ちなみに、会場から農園までは一本道で、周りは田んぼですので戦闘に困ることは御座いません。
運よく農園の前で戦闘する際も、駐車場が広いですからそこでなんとかなると思います」
そのために、戦闘自体は足元を注意するぐらいでそこまで大変なことはないだろうという。
「で、皆様には倒し終わったら、会場の設置やハーブの搬入のお手伝いをしていただくことになる……という」
もごもごと職員が伝える。
どうやら、何度かハーピーに襲われて、搬入も会場設置も遅れている……ということらしい。
ちなみに、農園から会場まではトラックが破壊されたとか道が不通になったとかでない限り、トラックに乗せてきてもらえるという。
「あ、あ、勿論ただとはいいませんよ! 報酬の他に、今回のお茶会で使用予定のカミルレのハーブティーとチョコケーキをお土産にお渡しするそうです。
チョコケーキは甘いものと、ビターのものと両方ありまして、どちらか2つとかどっちも1つずつとか貰ってくださいね。
会場で一足先に食べて帰るのもいいそうですよ!」
ハイネ村ではちょっと動揺が広がっているという。
手伝いをした後に、お茶会をして帰れば自信がつくかもしれませんね?
そう言って職員が笑うのだった。
解説
ちょっとだけ変わったバレンタイン、前夜(?)戦です。
ハイネ村の人々に自信をつけさせてあげてください!
・農園
ウィンクルムの皆様の指示に従います。
もしも彼らがトラックを運転し、向かう場合はトラックから出ることはしません。
男性 10人(トラックの運転手)
もしも、囮用にハーブを使う場合は、お渡ししますのでご安心下さい。
詰め込み自体はほぼおわっているため、お手伝いは会場についてから降ろす方の手伝いになります。
農園主(女):サーシャ
トラックリーダー(男):カイネ
・戦闘場所
農園:駐車場
一本道:田んぼ
どちらにせよ足場はあまりよろしくないので、足元には注意したほうがいいです。
また、大きな穴が開くような事態になりますと、失敗ではありませんがいい印象はありません。
・敵
デミ・ハーピー 1体
皆様でしたらそこまで苦戦することない相手です。
・会場
門の設置ぐらいしか出来ておらず、テーブルを並べたり鉢植えを設置したり、屋台(調理場)部分を作ったり、ハーブの上げ下ろしをしたり色々お仕事があります。
会場設置後、お持ち帰りも大丈夫ですが、お茶会をして帰ると喜ばれるかもしれません。
村長:ロイド
村長奥:ミーネ
リーダー(男):ティム
ゲームマスターより
よろしくお願い致します!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
アイリス・ケリー(ラルク・ラエビガータ)
申請:耳栓×2 さて、リア充の皆さんの為にも農園の方の為にもなんとかしませんと アラノアさん達は先にトランスするようですし、農園に入る前も周囲に気をつけておきましょう きちんと守りきれるよう、全員が乗れる最小限台数のトラックで出発 農園と連絡できる手段があるならお借りしたく 農園を出発する前にトランス 先頭車は私が運転します 敵襲は、声を上げて仲間に知らせてから耳栓を着用 運転席から降りて荷台へ 足場が悪いのでこちらからはしかけず、近づいてきたところを迎え撃つにとどめます 討伐次第、農園に連絡し残りのトラックの出発を促す 会場ではハーブの上げ下ろしを手伝う 折角ですからお茶会も ケーキは甘い方 ふふ、美味しい |
エセル・クレッセン(ラウル・ユーイスト)
持ち物 耳栓(ハーピーの唄対策用) 対デミ・ハーピー 誘き出しのメインは農園に着いてから。 ハーブを積んだトラックを、皆が乗れる最小台数用意してもらって、会場へ向かう。 私たちは荷台に乗せてもらって周囲を警戒しておくな。 農園に行く時や駐車場とかでも警戒はしておくけど。 ハーピーが現れたら耳栓つけて、トランス。 その後は、私はハーピーの動きに注意しておくな。 会場設置、お茶会 テーブルとか鉢植えとか並べる手伝いをするかな。 これってバレンタインのイベントなんだよな? 鉢植え、ハート型に並べてみたらそれっぽくなるかなあ? お茶会もさせてもらう。…実は楽しみにしてたんだ。 ラルはチョコケーキ、甘いのとビターとどっちがいい? |
アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
ハーピーにも独り身の辛さとかあるのかな…? トランスして農園に向かう 農園に入る前 トランスのオーラで釣れるか試す ハーピーが来たら討伐開始 足元と頭上注意 釣れなかったら諦めて農園に入る トラック ハーピーが来たら討伐開始 ハーブからなるべく離れず、狙いに来たら攻撃 耳栓は敵察知・発見時に付ける 手伝い 鉢植えの設置とかテーブルを運んだりとか色々 私にできる事(一般スキル)があるのなら何でも お茶会 ケーキ甘いの ハーブティーもケーキも美味しい…! バレンタイン…もうすぐ誕生日なのかぁ… あ…うん 私の誕生日、2月20日だから バレンタインが近くなると、私の誕生日も近いなって思うの えっ…?!そんな祝ってもらえる程の事じゃ…!(恐縮 |
●
その日も、「ひとりみのつらさ」を全身に滾らせたハーピーが農園を見張っていた。
睨みつける先の農園では、今日も出るに出られず「お茶会」会場へ向かうことが出来そうにない人々が溜息を零している……はずだった。
されど今日ばかりはウィンクルムの皆がきてくれるときき、その瞳に希望を彩らせている。
それにハーピーが気がつくのは、もう少しあとのこと……。
アラノアはガルヴァン・ヴァールンガルドと共にトランスを終えた状態で農園へと向かう。
彼女の心中といえば……。
(ハーピーにも独り身の辛さとかあるのかな……?)
である。きっとその答えは、もうすぐ分かるだろう。
トランス状態に誘われてくれれば、とすでにしているものの、引っかかっては来ないようだ。
(つがいのいるいないはともかくとして、邪魔者は排除しなければな)
ガルヴァンはそう思えばこそ、切れ長の琥珀色の美しい瞳を、警戒のために光らせるその近くでも、同じように警戒する姿。
「今のところ、見えないみたいだ」
ラウル・ユーイストは、目立たぬよう布に巻いた武器をさりげなく携帯しながらエセル・クレッセンにと確認している。
「そうだな」
さらりと銀の髪を揺らし頷くエセル。
その視線の先には、もう農園が見えてしまっている。
「このままでないつもりなのか……」
エセルのその言葉にアイリス・ケリーもどうなんでしょうね、と辺りを見渡した。
(さて、リア充の皆さんの為にも農園の方の為にもなんとかしませんと)
だからこそ、出てくるのならそろそろ出てきてほしい物なのだが……。
見上げる空は、ただただウィンクルム達に暖かな光を注ぐだけである。
「リア充実爆発しろ派なハーピー……聞いてるこっちが哀れになる存在だな」
ラルク・ラエビガータの声が聴こえて居たらハーピーも大激怒しそうではあるものの、出てきてはいない。
出てきてはいないが、何かが確実に居るというのが伝わってくる。
それは殺気というものかもしれなかった。
「そろそろ出てきてもいいころだとは思うんだ」
改めて木の陰あたりも見つめつつ、ラウルが呟く。
「とはいえ、納品する時間を考えるとな」
ラルクが時間のことも考えなくてはと皆を見る。
今は待つべきなのか、それとも次に向かうべきなのか……。
広がるのはただの牧羊的な光景。
ウィンクルムをみて逃げ出したわけではなく、どちらかというと「最高のタイミング」を図っているために、この不気味な沈黙の時間になっているようだ。
アラノアとガルヴァンの視線が絡み合う。
ここで待つか、それとも……。
「行くか」
ガルヴァンの判断に、アラノアも頷く。
ここで粘っていてもいいけれど、時間もそうそうない。
それであれば、次の段階へと移るべきだった。
「そうですね……待ってても意味はなさそうです」
逆に警戒をさせてしまいそうだと、アイリスも頷く。
既にここに10分は居るだろうか。
そうともなれば、不審がるのも時間の問題であろう。
「じゃぁ、行こうか」
エセルがラウルに先に入ろうと促す。
布で隠しているといえども、先に入ってしまった方が安心だろう。
それに合わせて、皆も入って行くのだった……。
そんな彼らを、やっぱりちゃんとハーピーは見ていた。
というか、寧ろもう、「男女の二人組がいる、絶対許さん」的な雰囲気がすでに滲みでている。
もう彼女にとって「二人連れ添う」ということが、なによりも許せないことになっているようだった……。
●
農園では、すでに準備をしていた農園の主を筆頭に、ウィンクルムの姿を見て安堵したように微笑みを浮かべ出迎えてくれた。
「宜しくお願いします」
農園の主のサーシャを筆頭に、トラックを運転する面々が頭を下げた。
「こちらこそよろしくお願いいたします」
それにこちらも挨拶をし返し、アイリスがサーシャにと話しかける。
農園との連絡する手段や、トラックの運転のことなどだ。
アイリスの要望は全て通り、先頭の車を運転することと、連絡手段に関してはトラックに積んである無線で行われることになった。
これならば、トラックさえ無事であれば、農園とも会場とも、そしてトラック同士でも連絡することが出来る。
「別れるんなら、俺とラウルは別の方がいいだろう」
攻撃の仕方を考えれば、同じ所よりも別の方がいいだろうとラルクが言えば、ラウルも頷く。
トラックにウィンクルムが別れて向かうときき、サーシャが声を掛けた。
曰く、トラックは今ある全部で行くのかどうか、という質問だ。
が全部という言葉を聞いて首を振った。
「多すぎても守るときに困るからな」
「それに、無線で連絡ができるのですよね? 必要最低限で最初に向かい、倒し終わってから出発して貰おうかと思っていました」
アイリスの申し出に、なるほど、それが一番いいとサーシャが納得し頷く。
「私たちは荷台にのりますね」
エセルが荷台にと乗ると運転手に伝えれば、助手席に乗ることも可能なために、必要ならばいってくださいとの申し出がある。
とはいえ、荷台からの方がハーピーを視認しやすいだろうし、戦いやすいかもしれない。
「戦いが終わったら、頼むかもしれない」
アラノアの言葉に、運転手達が頷くのだった。
「じゃぁ、そろそろ順番を決めるか」
アイリスを先頭に、ハーブの守り手、そして主に攻撃を担う者などの自分達の動きによって場所を決めていく。
既に詰め込み作業も終わり、あとは出発するだけ……。
それぞれのトラックの運転手に挨拶をしながら、ウインクルム達が荷台にと乗り込んでいく。
「では、まいりましょう」
アイリスが運転するトラックが、駐車場より、一本道をでて行く。
次々と間隔をあげながら連なっていくトラックは、5台。
それを見つめるハーピーは、勢いをつけて先頭へと向かって行く……。
最初の一台を止めてしまえば、一本道。
そんなに進んでいないが、最初のトランスでかなり煽られていたのだろう。
駐車場のような広い場所よりは、とハーピーが狙いを定めたその場所は、それでも特に戦いに支障はなさそうである。
アイリスの運転するトラックの目の前にひらりと舞いおりたハーピー。
ばぁん! と体当たりされたトラックのウィンドウが、びりびりと音を伝えてくる。
「きました!」
アイリスの無線により、すべてのトラックで状況を把握する。
速やかに減速し、止まったトラック達。
運転手たちの表情は硬いものの、その顔に不安の色はない。
ウィンクルム達を信用し、ただ、戦う彼らの邪魔にならなぬよう身を潜めるだけだ。
ハーピーが出たと分かってすぐ、ウィンクルム達は耳栓を装着している。
少しはこれで、歌への対策になるだろう。
「きっちり仕事はこなさねぇとな」
一番先にハーピーと対峙することになったのは、ラルクだった。
荷台から飛び降りた彼が生み出した幻影の竜が攻撃をしかけるその間、荷台へと移動するアイリスと入れ替わるように移動し、地面へと落とそうと今度は手裏剣にと攻撃を切り替える。
竜が消えうせたその瞬間にはラウルの弾丸もハーピーを穿てば、激昂したハーピーがひらりと舞いあがった。
「デミ・ハーピーってことは、いずれオーガに……」
舞い上がるその姿に視線が険しくなる。
最初に攻撃を仕掛けたトラックには、まだヒビひとつ入っていない。
それが不満だと言いたげにトラックの周りを旋回するものの、攻撃をしかけようにも飛んでくる攻撃に一つに固執することはやめたようだ。
手薄の所を狙おうとするハーピーだが、攻撃を仕掛けるウィンクルムだけはなく、ハーブを守るために動くガルヴァンもいる。
「ハーブには触れさせんぞ」
青白く輝くウルフ。
その姿を見たハーピーの瞳が見開かれたと同時に、彼女の腕や体に何カ所も噛みつかれ悲鳴が上がった。
距離を取ろうとガルヴァンに蹴りを入れ、ぱっと飛び上がる。
「……っ」
ぱっと舞った血に小さく唇を噛みながらも、ガルヴァンの武装は解除されることはない。
なかなかに手ごわいということが分かったのだろう。
主に攻撃を仕掛けてくる男性陣よりも、女性陣は……と視線をやるものの、アラノアに、エセル、アイリスもただこの戦いを見守っているわけではない。
「くる……?」
アラノアが構えた武器は、的確に自分にと狙いを定めている。
それは、アイリスも同様だ。
「ここは守ります」
彼女たちがただ、そこにいるだけの存在ではないということを知るにつけ、瞳が釣りあがっていく。
だが、それがハーピー自身の寿命を減らしていることに、ハーピーは気が付いただろうか。
「……いらだってるね」
エセルがぽつりと呟く。
苛立てば苛立つ程、周りの状況がうまく判断できなくなる。
ガルヴァンがラウルとラルクの動きをみ、最後の一手を迎えるべく、動き出す。
「ラウル! ラルク!」
ガルヴァンがちらりとラウルとラルクを見た後、ハーピーの意識を此方に向けるかのように、ハーブの前から移動する。
耳栓をしていて聞こえずらいかもしれないが、唇の動きと視線で、なんとなく意味は把握してくれるだろう。
それはほんの少し動いただけであったけれど、その隙を逃さないとばかりにもう突進をしかけるハーピー。
彼女はその時、周りに注意を払う、という初歩的なことをすっかり忘れていたに違いない。
「確実に、倒す」
ガルヴァンの意図を理解し、狙いすまされたナブサ・M12ポンプショットガン20ゲージ。
ちょこまかと動いていたハーピーが、分かりやすい軌道を描いたのだ。
彼から放たれた弾丸が、的確にハーピーの翼を狙い穴をあけていく。
「これで、おしまいだな」
何度もその身に攻撃を受け続けたハーピーは、思った以上に体力が残っていなかったようだ。
それに、致命的な翼の痛み。
耐え切れず落ちてきた彼女の視線の先で、きらりと何かが光る。
それは、ラルクの持った手裏剣だった。
なぜ、離れていた彼がここに、と思う間もなく、一瞬で間合いを詰めたラルクが仕留める。
ガルヴァンとラウル、そしてラルク……三人の連携により、独り身の寂しいハーピーはその野望を果たすことなく倒されたのだった……。
「大丈夫か?」
アラノアの問いかけに、トラックの運転手たちが頷く。
「怪我人は……」
ガルヴァンの言葉に、ウィンクルム達が首を振る。
怪我人もなく、トラックも無事だった。
「ハーブも無事だよ」
そしてハーブの点検をしていたエセルからも、大丈夫だとの答えが返る。
「では、連絡しておきますね」
アイリスがトラックについている無線で農園へと連絡をとる。
これで、残りのトラックも向かうことが出来るだろう……。
●
のんびりと進むこと、一時間。
ついた会場では、村人達がわぁっと駆け寄ってきた。
漸く主役が到着したのだ。
「ありがとうございます!!」
あちらこちらでお礼の声があがる。
やがて落ち着けば、さぁ、会場づくりを始めよう! と皆が動きだすのだった。
トラックから下ろしていくのはハーブたち。
「こちらのハーブはどちらに……」
アイリスの問いかけに、それはあそこの屋台へ持って行ってくれ、と指示が入る。
「では、持っていきますね」
よろしく~と見送られハーブを持っていく先では、ラルクが会場の屋台の設置を手伝っていた。
柱がまっすぐかいなかでわいわいがやがやとしているのにあわせ、ラルクが動かしていく。
「こうか?」
ラルクが言われた通り位置をずらせば、そうそう! と答えが返る。
どうやらまっすぐ立ったらしく、声をかけてもいいかとアイリスがラルクの背中にと声を掛ける。
「アイリス」
振り向いたラルクがアイリスを認め、名を呼びかけた。
「ラルクさん、お疲れ様です」
どうした? という視線に、こちらに置いておけとの指示で……とハーブを見せれば、こっちこっち! と声が掛る。
「では、またあとでですね」
「あぁ」
もう少し、時間はかかるだろうか。
ラルクも次はこっちをお願い、という声に其方に向かっていく。
エセルとラウルも、会場作りをしている。
彼らが主にするのはテーブルの設置と、鉢植えの飾りだ。
「このテーブルを動かせばいいんだな」
エセルが村人と共にせっせと並べていく傍ら、ラウルもまた別の個所のテーブルを村人と共に並べていた。
その数は沢山あって、なるほど、これだけあれば盛大な催しになるに違いないと見ただけで分かるものである。
とはいえ、無限ではないテーブル並べ。
そろそろ終わりも見えてきたころ、鉢植えを並べなくてはとの声が上がる。
エセルが立候補し、共に向かっていく……のに、ラウルが声を掛けた。
「お前、一人で運べるつもりか?」
え、無理かな? との答えに、ラウルも共に向かう。
ばばーんと無造作に並べられた鉢植えは、どう頑張っても一人で運びきれる物だとは思えなかった。
「………どこへ運ぶんだ?」
こっちこっちと誘導した先には、先ほど並べた白いテーブル。
そこにこれをどうやって並べようか……とエセルが暫し悩む。
(これってバレンタインのイベントなんだよな?)
バレンタインといえば、ハートかな、と合点する。
「鉢植え、ハート型に並べてみたらそれっぽくなるかなあ?」
やってみたらどうだ? との答えに、エセルが並べ始めるのだった。
アラノアはテーブル並べの手伝いを、そしてガルヴァンは次々とやってくるトラックからの積荷おろしを手伝っていた。
ガルヴァンの手際はかなりいい。
すっと手の差し伸べられる場所が的確で、頼んでいる人達もかなり大助かりだ。
「普段原石の搬入を手伝ったりするからな」
「あぁ、なるほど……」
だからこんなにも慣れているのだと伝え、どんどんハーブが必要な場所へと送り込まれていく。
そんな風にガルヴァンが動きまわっている頃、アラノアの手により磨かれていくテーブルが、白く眩しく光り輝いていた。
「こんな感じだろうか」
流石に倉庫から出してきたと思われるテーブルたちはくすんで汚れていて、そのままでは置いておけそうにないと、一生懸命磨きかけていたのだ。
頑張っただけあって、どんどん綺麗になっていく。
一体何個目のテーブルをやり終えたのだろう……その頃になって、村人からありがとうと感謝の意を伝えられる。
「お陰で全部綺麗になったよ」
本番の際も、これならば拭くのも簡単にすむだろう。
「並び終えたみたいだな」
ぴかぴかになったテーブルが並んでいる。
そんな中を、これまた荷物運びが終了したガルヴァンがやってくるのだった。
さぁ、頑張ってくれたお礼に、お茶会を。
村人たちの表情に、自分達を救ってくれたウィンクルムの皆にと、「何かをしたい」という気持ちが込められている。
手伝いも終わり、集まってきたウィンクルム達にと、村長が声をかけるのだった……。
●
「お疲れ様でした、お茶会を楽しんで行って下さいね!」
準備も一段落すれば、お茶会が始まる。
それに否を唱えるものはなく、ウィンクルム達も席にといざなわれるのだった。
席についたアイリスとラルク。
二人の前には、甘いケーキが二つ。
ゆらりと香る爽やかな香りは、カモミールだ。
「ふふ、美味しい」
アイリスの口元にほんわかと笑みが浮かぶ。
口の中に広がる、甘いケーキの味は、疲れた体もいやしてくれそうで。
半分程、そのケーキのビターの方を食べたラルクは、今はゆっくりとカモミールの紅茶を楽しんでいる。
「ほー、カモミールの茶ってこんな味がすんだな」
ビターでそこまで甘くなかったとはいえども、それでもチョコが苦手なラルク。
渡したビターの半分は、アイリスのお皿の上だ。
「こういう甘さなら、俺でもいける」
「良かったですね」
カモミールがお気に召したラルクにそう言って、今度はビターなチョコを楽しむアイリス。
ほわんと口に広がる少々苦めのチョコレート。
先程とはまた違う味わいを楽しんでいく……。
甘いケーキを選び、アラノアはほわんと広がる甘い香りに微笑みを浮かべた。
「ハーブティーもケーキも美味しい……!」
その心からの賛辞に、ハーブティー口に運ぶガルヴァンも頷く。
「ふむ……このハーブティーは癖が無くて飲みやすいな」
ふわりと唇に運ぶたびに甘く程よく香るハーブティー。
ビターのチョコレートケーキにも、それに甘いチョコケーキにも合うように配分されたものだ。
「香りも良い。気に入った」
そんな彼にと頷き、アラノアが並べられた鉢植えを見ながら呟く。
「バレンタイン……もうすぐ誕生日なのかぁ……」
誕生日? とガルヴァンが視線をアラノアへと向ける。
「あ……うん。私の誕生日、2月20日だから。
バレンタインが近くなると、私の誕生日も近いなって思うの」
そういうアラノアに、ガルヴァンが首を傾げた。
「成程……では何か祝った方が良いか?」
「えっ……?! そんな祝ってもらえる程の事じゃ……!」
酷く恐縮するアラノアに、ガルヴァンが苦笑を浮かべる。
「恐縮するほどの事か……?」
でも……と恐縮するアラノア。
「まあ……その時になったらまた聞こう」
だから、今はのんびりとお茶とケーキを楽しもうと伝えれば、アラノアも頷いた。
頑張ったご褒美は、まだまだ残っているのだから……。
お茶会を実は楽しみしていたエセルと、色々動いたあとだからこそ、水分補給……。
紅茶を飲めるとあれば、ラウルも助かると、お茶会へ。
ハートに並べた鉢植えが、可愛く映る。
白い椅子にと腰掛け、メニューを開く。
ぱらりとメニューを開く指先は、ラウルにも見やすいようにゆっくりと動かして。
「ラルはチョコケーキ、甘いのとビターとどっちがいい?」
「……甘いのかビターかどちらか?」
どっちでも、と言いかけて、いや、と言葉を紡ぐ。
「……ストレートのハーブティーと一緒に食べるなら、甘いのでいいんじゃないか?」
ならば、甘いのを。
二人頼んだケーキとハーブティーを楽しむ。
甘いケーキと、すっきりした飲み口のハーブティー。
カモミールの香りがほわんと二人を包み込んでいく。
「美味しい」
エセルのささやきに、ラウルも頷く。
きっと、本番当日も、こんな風に笑顔が広がっていくに違いない。
そう、思えるのだった。
皆の楽しげな様子に、村人達も自信をつけたようだ。
きっと本番も上手くいくに違いない……。
そんな思いが村人達に広がっていく。
ウィンクルム達の手によって、お茶会も無事、開催されることになったのだった。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 如月修羅 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | 戦闘 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 01月28日 |
出発日 | 02月03日 00:00 |
予定納品日 | 02月13日 |
参加者
会議室
-
2016/02/02-23:55
プランは提出っと。
無事に済んで、お茶会楽しめるといいな。
お疲れさまでした。 -
2016/02/02-23:30
もう後僅かですね。最善を尽くせるように頑張りたいです。
トラックとか破壊されないよう守り通したいですね…
耳栓の件はこちらも付けるようにしました。
手伝いは出来る事なら色々とやりたいですね。
お茶会も楽しみです。 -
2016/02/02-22:53
とりあえず、プランは提出済です。
ぎりぎりまで確認するつもりなので、何かあればお声掛け下さい。
>トラック
昨日から怒涛の短期集中コースで免許を取得してきました。お任せください。
>耳栓
すみません、遅くなりました。
私達も耳栓は敵を発見次第としてあります。
後から付ける方が敵を発見した際のやりとりもスムーズかと思いますので。 -
2016/02/02-20:20
>「全員が乗れる最小限の台数」
了解。
アイリスさん、運転よろしくお願いするな。
>戦闘
ああ、うん、ハーブに唐辛子がかかったらまずいよなぁ。
耳栓だけ持っていってみる。ハーピーが現れたらつければいいかな。
>会場準備
ええと、私たちはテーブルとか鉢植えとか並べる手伝いをするかな。
お茶会もさせてもらおうと思う。 -
2016/02/02-14:55
>誘き出し
出来れば一台で済ませたいところですね。
ただ、荷台に荷物があるので全員乗れるとは限りませんから、「全員が乗れる最小限の台数」としておくのが良いかと思います。
とりあえず運転スキルを上げて、先頭の一台の運転を受け持ちますね。
>戦闘
ラウルさんが守りを固めてくださるのでしたら、接近された際の不安がなくなるので心強い限りです。
よろしくお願いいたします。
はい、デミですので討伐でよろしいかと。
耳栓はあると良いかと思いますが、唐辛子の粉はやめておいたほうがいいように思います。
ハーブにかかるかもしれませんから。
>会場準備
ラルクさんは屋台の設営準備を、私はハーブの上げ下ろしを手伝うつもりでいます。
あと……せっかくですし、御茶会をさせていただきたいなと思っております。 -
2016/02/01-19:48
>誘き出し
じゃあ、誘き出しのメインはトラックで農園を出る時、だな。
トラックの荷台に乗るのも了解。
トラックの台数は1台?
運転スキルを上げるかはアイリスさんにお任せする。
>戦闘
ラルは遠距離攻撃だけだから。
うん、トラックの周りで、近寄ってくるハーピーを狙ってもらうことにするな。
なるべく引き寄せてから攻撃するのがいいかな。逃げられたら困るから。
アラノアさんたちがハーブを守っていてくれるなら安心だな。
…ハーピー、デミだから倒すでいいんだよな?追い払うじゃなくて。
前にハーピーと戦った時は唄対策に耳栓とか唐辛子の粉とか用意した気がするけど。
一応、耳栓くらい持っていくかな? -
2016/02/01-18:49
成程…では多数決ということで、私もトラックで農園を出る方針でいきます。
私達は近接オンリーなので戦闘ではあまりお役に立てなさそうですが…ハーブの守りの方は出来るだけ固めるつもりです。 -
2016/02/01-13:47
>農園までの移動
徒歩で行くのであれば、討伐後に連絡してトラックに拾って頂くか、農園が近くであれば引き返して報告し、乗せてもらうのが無難かと。
>誘き出し
入る前のトランス、良いかと思います。
仮に敵が警戒してもハーブを持ち出しさえすればその後誘い出せるでしょうから。
アラノアさんが徒歩、エセルさんがトラック寄り、といったところでしょうか。
エセルさんがおっしゃた点…トラックの方が目立つので誘き寄せやすい、確かにそうだと思います。
私もトラックで農園から出るに一票を。
それと、トラックに乗る際は荷台だと認識しています。
私、スキルポイントが余ってるんですよね。
取りたいスキルはほぼ取り終えてるので…運転スキルを2まであげて運転することも可能かと思います。
>戦闘
追いすがるよりも近づいてくるところを狙う方がやりやすいでしょうから、トラックの近くにとどまるのが良いでしょうか。
ラルクさんは遠近どちらも対応できますが、足場が悪いことと相手が飛行するということを考えて…遠距離主体でお願いしようかと。
私は太刀で、近寄ってきたところを追い払うくらいに止めようかと思います。 -
2016/01/31-21:20
私はエセル・クレッセン。パートナーはプレストガンナーのラウル・ユーイスト。
アイリスさんとラルクさんは、お久しぶり。アラノアさんとガルヴァンさんは初めましてだな。
どうぞ、よろしく。
農園までの移動は、特に書いてないみたいだし…、徒歩?
農園から迎えに来てもらうとか、できないかな。
お茶会の手伝いもするなら、あまりのんびり移動してる訳にもいかない気がする。
>誘き出し
農園から出る時の方がハーピーが来る確率が高い、んだよな?
でも、警戒はずっとしてることになるんだろうし。
アラノアさんの方法、やってみてもいいんじゃないかな。
私たちはまだレベル低いから、回数と時間的に役に立たないと思うけど。
農園から出る時は、トラックの方が目立って誘き寄せ易そうな気はするかな。
アイリスさんの言うように台数は少ない方が守り易いと思う。
でも運転、農園の人にしてもらうと私たちは荷台に乗ることになるのかな? -
2016/01/31-20:20
アラノアとシンクロサモナーのガルヴァンさんです。お久しぶりの人はお久しぶりです。
よろしくお願いします。
>誘き出し
可能なら私達はトランスをして農場に向かいたいと思います。(トランスのオーラで誘き寄せる)
こちらは入る前に撃退できればいいな位の感覚です。
来なかったらハーブを借りて農場から出る方針を取りたいです。
なるべくさくっとハーピーを倒して会場のお手伝いをしたいですね。
…ところで会場のある村から農場まで車で一時間掛かるんですよね…
向かう時の移動手段ってどうなってるんでしょうか… -
2016/01/31-18:04
アイリス・ケリーとシノビのラルクです。
お二組とも、お久しぶりですね。
どうぞよろしくお願いいたします。
>誘き出し
何も持っていなければ農園に入るだけなら問題なし。
常にこちらからハーピーを確認出来るわけではないので、農園に入る前に確実に撃退できるかどうかは分からない……
となれば、何かしらの囮を立てて誘き出すのが良いでしょうね。
1:ウィンクルムがハーブを持って農園から出る
2:トラックを出してもらう
男性のあとに「運転手」と記述がありますので、トラックは5~10台でしょうか。
トラックを出してもらうのであれば、私達全員が乗れるだけにとどめてもらうのが良いかと思います。
敵が一体だけといえ、トラックが多ければ多いほど護衛対象が増えてしまうので対応しづらいかと。
トラックを出して貰う場合の利点は、早めに準備に取り掛かれることでしょうか。
逆に私達がハーブを持って出るのであれば、足場以外の不安は少なくなるかと。
足場についても、駐車場で少し様子を見るのも手かと思います。
ここで襲いかかってくれればいい、といったくらいになりますが。