【祝勝/船旅】食べ放題な船旅(春夏秋冬 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 豪華客船『ラピスラズリ・プリンセス』
 黒き宿木の種が植え付けられ、そのままでは大惨事になる所を、ウィンクルム達の活躍で事なきを得た豪華客船だ。
 それもあって、豪華客船の所有者であるお爺さんとお婆さんは、ウィンクルム達を慰労会に招く事になりました。

「年初め時期だという事で、お正月イベントが開催されているようですよ」
 A.R.O.A.の職員が、ウィンクルム達に説明をする。
「着物の貸し出しサービスをさせているようです。色々と用意されているみたいですし、試してみられてはどうでしょう。それに――」
 A.R.O.A.の職員は、船旅案内の書かれたパンフレットを捲りながら続ける。
「そうそう、メインダイニングでお正月料理の食べ放題もされてるみたいです。お正月料理に飽きた人用の料理も有ったりして、種類も色々あるみたいですね」
 説明しながら、A.R.O.A.の職員も参加したいのか、説明そっちのけでパンフレットを見ていたが、ふと我に返ると、
「とにかく、折角のお招きですし、年初めの船旅を皆さんで参加されてみてははどうでしょう? 船員の皆さんも、心待ちにされているみたいですよ」
 アナタ達にA.R.O.A.の職員は改めて勧めて来ました。
 この申し出にアナタ達は?

解説

 解説

 お正月仕様の豪華客船での船旅に参加して下さい。

 必要なjr

 400jr

 参加可能イベント

 着物の貸し出しサービス。

 どういった物を着るかに関して具体的に書いて頂けると、非常に助かります。

 正月料理の食べ放題

 基本的には日本の正月料理ですが、場合によってはそれ以外の国の年末年始の料理が出たりします。
 例 ガレット・デ・ロワなど。
 プランに食べたい料理を書いて頂ければ、お正月料理以外の料理も出たりします。
 最後に辻占煎餅が出されおみくじが出来ます。
 大吉と凶が10%で、残りが出る確率がそれぞれ20%ずつ。
 おみくじの結果判定はサイコロでしますのでGMにも結果は分かりません。
 凶だった場合は、再度引き直しがあります。

 以上です。

ゲームマスターより

 失礼します、春夏秋冬と申します。

 どちらかというと、のんびりまったりな感じの物になっていますが、楽しんで頂ければ幸いです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

音無淺稀(フェルド・レーゲン)

  【着物】
臙脂色を基調とした白と薄桃色の桜柄の着物で黒地にレースをあしらった帯
【プラン】
おせち料理ですか…
自分では作った事ってあんまりないですね
一人でおせち料理食べるのって、なんか寂しかったですから
まぁ、だからっていうのもあっておせち料理のレパートリーが凄く乏しいんですよ私
今回は食べ放題って事ですし
きちんと勉強して帰りたいですね
貸し出しで着物もやってるんですね…

せっかくですから記念にフェルドさんも着替えていきましょう
凄く良く似合ってますよ

…伊達巻…魚のすり身も入れるんでしたっけか
綺麗に巻くの結構難しいですよね
そういえば、雑煮は地方で色々あったと思いましたが…
どの地方の雑煮が出るのか楽しみですね


リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
  着物
薄紅に梅を散らした小紋
「振袖?正装で料理楽しめとはお言葉だな
正装ではないが、年始に相応しい装いはしたつもりだが?」
銀雪へは
「お前は正礼装か
着崩さないように振る舞いには気をつけろよ」

さて、料理
折角なので馴染みのない料理を食べる

ザンポーネ、へぇ、豚足の料理か
水餃子、ペリメニ、ボーズは餃子、と

魚生?
初めて見るが、食べ方があるのか※説明聞き
(銀雪の願い事は私関係だろうな…)
ま、いい、食べるか
※願い事聞き
「新年からブレてないなお前。褒めておいてやる」
私の願い事は
「今年1年、皆大きな怪我も病気もしなければいい」
他は私自身の努力で叶えたいから別にいい

煎餅の吉凶は気にせず
大事なのは結果で己を戒める事、だ


シルキア・スー(クラウス)
  着物初体験
レンタル
緑地に花を散らした柄
オレンジ系の帯
コーデ品
括った髪に微風の簪

苦しい
こんなに締付けられるなんてキモノは忍耐鍛える修行服なの?

(頬染
お言葉に甘えさせてもらうね
転んだら立てる自信ないもん
おずおず腕に掴まる

あ‥ありがと
好きな色選んだだけだよ(照笑
クラウスもいつもながら着物似合ってる
ふふ


覚束ない箸使い(箸使わない文化圏出身
同じ物食し
この間私が作ったのは焦がしちゃったからここでしっかり運気取り戻さないとね
おいひー
他の和食も堪能
解説聞き
和食の心遣いに感心しきり
それじゃこの料理達は
オーナーご夫妻の心遣いが込められてるんだね

!‥うん
伝わってるのが嬉しく

みくじ結果
クラウスの言葉聞き
そうだね
笑顔


向坂 咲裟(ギャレロ・ガルロ)
  着物を着たのは初めてよ、素敵だわ
ギャレロは…ご飯に夢中みたいね
ふふ、ワタシも食べましょう

あら、おせちに飽きちゃったの?
濃い味付け…そうね、あのお肉料理はどうかしら?
コテキーノよ、ソーセージみたいなものね
美味しい?ふふ、良かったわ
お腹いっぱい食べてね

ワタシもちょっとおせち以外のものを食べたくなってきたわ
そうね…ガレット・デ・ロワを頂こうかしら
牛乳と一緒に食べて…うん、とっても美味しいわ
あら、ギャレロも食べたいの?
はい、あーん…美味しいかしら?

辻占煎餅は
どんな結果でも、今年も素敵な一年になると思うわ

◆着物
白地
薄紫の大ぶりの桐の花とその周りに濃い紫の小さな花々が配置されている
髪は結っている


アイリス・ケリー(エリアス)
  菊柄で赤色の訪問着、帯は黄色

お正月料理のいいところって、甘いものが多いことですよね
大丈夫です、ちゃんと食べますよ
甘いものが6、それ以外のものは4くらいの比率で
お雑煮は白味噌とお吸い物、両方あるんですね
私はお吸い物の方にしておきます

何を言ってるんですか、これでも控えたくらいです
黒豆も栗きんとんも美味しい…幸せ
…いい顔、ですか?
皮肉ですね、と苦笑い
姉様と同じ髪の色と目の色にして、姉様のように振る舞って
なのに一番似てるのは、私が素の状態になってしまう時だなんて
いいえ
今は、私らしくあるべきなんだと理解していますから

大吉か凶かのどちらかがいいんですけど…
これから先、上がるか落ちるかのどちらかだけですから


 豪華客船『ラピスラズリ・プリンセス』に招かれたウィンクルム達は、お正月料理の食べ放題に参加する前に、まずは着物に着替えていた。

●お着替えしよう
「振袖じゃないんだ……」
 黒の紋付袴姿になった銀雪・レクアイアは、リーヴェ・アレクシアの着物姿を見て不思議そうに言う。
 それにリーヴェは、さらりと返した。
「振袖? 正装で料理を楽しめとはお言葉だな。正装ではないが、年始に相応しい装いはしたつもりだが?」
 彼女が着ているのは、薄紅の下地に梅花を散らした小紋。帯は下地の色に埋もれないよう配慮された黒である。
 普段着としても用いられる小紋ということもあり、日常に溶け込むような落ち着いた雰囲気を見せていた。
 それでいて、生地の良さや染め模様の確かさが、訪問着としてハレの日に合った華やかさも感じさせる。
 リーヴェの言葉に納得した銀雪は、
「そっか、そういう気遣いは考えに入れてなかったよ……俺はどう?」
 何かを期待をするような響きを込め聞いてくる。それにリーヴェは、
「お前は正礼装か。着崩さないように振る舞いには気をつけろよ」
 どこか年下の身内に掛けるような親しさと配慮を見せた。それに、
(俺を気遣ってくれるリーヴェ、かっこいい)
 喜ぶ銀雪。
 しっかりものの姉に懐く弟、といった雰囲気を見せる2人であった。

 そうして着込んだ着物を話の種に、お喋りをするのは他の所でも。

「こんなに締付けられるなんて、キモノは忍耐を鍛える修行服なの?」
 初めて着物を着たシルキア・スーは、その着心地に思わず感想を口にする。
 彼女が着ているのは、緑地に花柄を散らしたもの。そしてオレンジ調の色彩をした帯も合わさることで、明るく若々しい雰囲気を見せていた。
 それに加え、括った髪につけた微風の簪が艶やかなアクセントとなっている。
 そんな彼女の姿を、クラウスは好ましく思いながら、
「修行か」
 微笑ましげに小さく笑みを浮かべると、
「着慣れていないと、大変だろう。歩き辛ければ掴まっているといい」
 助けるように手を差し出す。
 彼に視線を向ければ、やや明るい深青の半着の下に灰色袴を着込み、そこに半着よりも濃い色合いの深青の羽織を重ねている。そして、ゆったり括った髪には、シルキアとお揃いの微風の簪が飾られていた。
 東洋の文化に興味があり、普段の服装にもテイストを取り入れているだけあって、着こなしが上手い。
 そんな彼に手を差し出され、シルキアは薄らと頬を染めると、
「ありがと。お言葉に甘えさせてもらうね。転んだら立てる自信ないもん」
 おずおずとクラウスの腕に掴まる。
 図らずもエスコートするような形で2人は料理会場に。
 仲良く2人で歩く中、
「その着物は、お前に良く似合っている。自分に合う色をよく心得ているな」
 シルキアを微笑ましく見詰めていたクラウスは、2人だけに聞こえるように静かに言う。それに、
「あ……ありがと。好きな色選んだだけだよ。クラウスも、いつもながら着物似合ってるね」
 シルキアは照れたように頬を染め、クラウスと笑みを交わしあうのであった。

 そして他に視線を向ければ、着物を選んでいる者達も。

「せっかくですから記念にフェルドさんも着替えていきましょう」
「……え、僕も着るの?」
 音無淺稀に勧められ、フェルド・レーゲンは当惑しながらも選んでくれた着物を手にする。
 そして2人はそれぞれ別れお着替え。戻って合流。すると、
「うん、凄く綺麗だ」
 淺稀の姿を見たフェルドは、平坦ではあるが素直な響きを声に込め褒める。
 淺稀が着ているのは、臙脂色の下地に白と薄桃色の桜柄が絵羽模様で描かれたもの。そして帯は黒地にレースがあしらわれている。落ち着いた色合いの下地や帯に、浮かび上がるような軽やかな色合いで描かれた桜が目を引いていた。
「赤、いや臙脂色の着物? 桜の柄も似合ってる」
「ありがとうございます。フェルドさんも、凄く良く似合ってますよ」
 はにかみながら褒め返す淺稀に、
「そうかな? 僕が着ると服に着られてるイメージになる」
 平然としたように見えながら、声の響きや漂わせる雰囲気に、しゅんとした物を見せるフェルド。
 彼が着ているのは、黒を基調とした半着に、その色合いに合わせた同色系の袴姿。そこに、持って来ていたマフラーと帽子を着けている。
 自分が持って来ていた物も同時に身に着けている事もあり、その分慣れた着こなしに見えた。
 そんな彼に、淺稀は素直な思いを告げる。
「素敵ですよ、フェルドさん」
 余計な混じりけのない彼女の言葉に、しゅんとした気持ちを祓われたフェルドは淺稀に呼び掛ける。
「ありがとう。それじゃ、行こう。おせち料理が良いんだよね?」
「はい。自分では作った事が、あまりなかったですから。一人で食べるのは寂しいですし」
「なら、今度作ってよ。オトナシのおせち食べてみたい」
「良いですよ。なら、その為にも、きちんと勉強して帰りたいですね」
 食べる以外の楽しみも手にしながら、2人は食べ放題会場へと向かって行った。

 そうして2人揃って着物に着替えている者も居れば、女性陣のみが着替えていた者も。

「着替えるのは面倒だ。それよりも早く食べたい。先に行ってて良いか?」
 子供が我慢できず保護者にねだるように、向坂 咲裟に尋ねるギャレロ・ガルロへ、
「良いわよ、先に行ってて。ワタシは着物に着替えてから行くから」
 咲裟の許しが出た所で一目散にギャレロは食べ放題へ。そんな彼を咲裟は苦笑しながら見送ると、選ぶ楽しみを満喫し、お着替え。
 彼女が選んだのは、品の良い白地に、大ぶりな薄紫の桐の花をメインに置いて、その周りに濃い紫の小さな花々が配置され描かれた物。帯は描かれた花の色合いを損ねないように、着物の下地の色に合わせた物になっている。
 着替え終わり、着物姿と共に結い上げた髪も、用意された姿見で確認する。
 着物の下地は彼女の月のような金の髪に、描かれた花々は彼女の紫水晶の瞳と合わさり、より魅力を引き出していた。
 そして彼女は食べ放題会場へ。
 先についていたギャレロといえば、花より団子とばかりに勢い良く食べている。
 そんな彼の元に彼女が行けば、
「んっ……遅かったな。早く食べろ、無くなったら大変だぞ」
 彼なりに気を遣っているのか、食事を勧める。そして、
「着替えたんだな、服。それが着物か? 綺麗だぞ」
 思った事をそのまま口に出すように、素直すぎるストレートさで言った。
 そしてすぐさま食事に戻る。そんな大き過ぎる子供のような彼に、咲裟は苦笑しながら、
「ふふ、ワタシも食べましょう」
 料理の品定めに。当然のように、まずは牛乳が無いか探すのであった。

 そんな中、どこか張り詰めた緊張感を滲ませながら、食べ放題会場に向かっていたのはアイリス・ケリーとエリアス。

 2人は静かに歩いて行く。
 寄り添うほどの近しさは無く、けれど逃れるほどに離れる事も無く。
 どこか矛盾した気配を抱え、けれどそれを日常として飲み干していた。
「その着物、似合っているよ」
「そうですか。ありがとうございます」
 どこか作り物めいた薄い笑みを浮かべたまま、アイリスはエリアスに返す。
 私服姿のエリアスに対し、アイリスは赤を基調とした下地に、菊の花柄が描かれた訪問着。そして帯は黄色。派手さはないものの、生地の良さや染め模様の確かさが、ハレの日に合った華やかさを見せていた。
 そんな彼女と共にあるエリアスは、寄り添おうとするよりも、どこか守ろうとするかのような距離感で傍に居続けた。
 そして2人は会場に到着し、かくして参加したウィンクルム達の全ては、食事を楽しみだした。

●食べ放題
 アイリスは、見ているだけで喜んでいるのが伝わってくるほど、心底幸せそうな笑みを浮かべている。
(お正月料理のいいところって、甘いものが多いことですよね)
 その姿には、それまでの作り物めいた硬さが解けるように消えている。
 彼女の姿に、エリアスは穏やかな物を感じると同時に、どこか痛みにも似た物も感じていた。
 だがその想いを振り払い日常を生きるように、薬剤師でもあるからか、食べる物のバランスを気にして口を出す。
「アイリス、甘いもの以外も食べなよ?」
「大丈夫です、ちゃんと食べますよ。甘いものが6、それ以外のものは4くらいの比率で」
「……なんとも言えない割合だね。確かに正月料理って甘いから……それを考えれば、比率的にはおかしくない気もするのがなぁ……」
「何を言ってるんですか、これでも控えたくらいです」
「そうは言うけれどアイリス……栗きんとん、多すぎないかい? 皿の三割を占めてるのに、これでも控えたと君は言うのか……」
「控えてますよ、十分に。それに栗きんとんだけじゃありません。黒豆だって、美味しいんですよ」
 そう返しながら、黒豆や栗きんとんをアイリスは美味しそうに食べる。
 その表情には、変わらぬ自然な笑みが浮かんでいた。
 それを、日常とは少し離れたハレの場であるとはいえ見せ続けてくれるアイリスに、エリアスの心の中では穏やかな気持ちの方が勝る。
 だからこそ、更に踏み込むような言葉を口にすることが出来た。
「うん、君は甘いものを食べてる時が一番、いい顔をしてるよ。そう、君らしい笑顔で……彼女に、とてもよく似てる」
 エリアスの言葉にアイリスの笑顔は、すっと薄れていく。けれど消え失せる事も、作り物めいた薄い笑みに変わる事も無く、代わりに皮肉めいた苦笑いを強く浮かべ返した。
「いい顔、ですか? 皮肉ですね」
 自嘲するような間を置いて、彼女は続ける。
「姉様と同じ髪の色と目の色にして、姉様のように振る舞って。なのに一番似てるのは、私が素の状態になってしまう時だなんて」
「気に障ったかな?」
「いいえ。今は、私らしくあるべきなんだと理解していますから」
 返す笑顔には苦しみが滲み、けれど自身の想いを形にするような強い意志も見て取れた。
 その笑顔が、エリアスの心の奥底に沈む想いを意識させる。
 決して忘れることは出来ず、そして失いたくない想い。
 それを抱きながら、これからを生きていく。
 それがどれほど、不安定で脆い物だとしても。だからこそ、
「そっか……そう思えるようになったんだね。良いことだと、俺は思うよ」
 エリアスは、どこか自分自身へも語り掛けるように、思いを口にすることが出来た。
 そうして2人は、危うさも内包しながら日常を共に過ごし、最後に御神籤付きの煎餅を手に取る。
「さて、それじゃ今年最初の運試しといこうか」
「大吉か凶かのどちらかがいいんですけど……これから先、上がるか落ちるかのどちらかだけですから」
「……君は極端なことを言うね」
 そうして2人の結果は、なんとどちらも大吉。これには籤を渡した船員も本気で驚いた。
 その籤のように、この先2人には幸多かれと、思える結果であった。

 そうして食事を楽しんでいるのは他にも。

「なァ……おせちって味が薄くねぇか? 何か濃いヤツ食いてぇ」
 思う存分食べながら、けれど物足りなさを覚えたギャレロに、
「あら、おせちに飽きちゃったの? 濃い味付け……そうね、あのお肉料理はどうかしら?」
 咲裟は、完全に小さな子供の面倒を見る保護者の如く、ギャレロの為に料理を見つける。
「コテキーノよ、ソーセージみたいなものね」
「ソレ、肉なのか? おう、食う」
 レンズ豆を添えられた皿に乗ったハムのように太いソーセージ。年末年始に振る舞われる腸詰料理の一つだ。
 具材は、地域や料理人によって肉以外にも様々だが、ここにあるのはガッツリ肉々しい一品。
「美味しい?」
「うめぇ。肉はうめぇよな、これ好きだぜ」
 もりもり食べるギャレロ。そんな彼を見詰める咲裟は、
「美味しい? ふふ、良かったわ。お腹いっぱい食べてね」
 嬉しそうに笑顔を浮かべる。
 そんな彼女は、自分もおせち以外の物が食べたくなり、お菓子のスペースに。
 見つけたのはガレット・デ・ロワ。アーモンドの練り込まれた餡生地をパイで包んで焼いた物。
 地域によって年明けに食べられるそれは、物によってはフェーブと呼ばれる小さな陶器の人形が入っていたりする。
 それが当たれば幸運の印と言われていたりするが、ここでは生地の中には入れず、別に船員が手渡しする。
 小さな子ザルの陶器人形。愛嬌があり可愛い。気のせいか、ギャレロに似ているような気もしてくる。
 くすりと笑い、咲裟は牛乳と共に一口。アーモンドの風味と餡の甘味、そしてサクッとしたパイ生地の食感が楽しく、風味付けに使われたラム酒のコクのある苦味がアクセントとなって味わえる。
「うん、とっても美味しいわ」
「んぁ? サカサ、何食ってんだ」
 目ざとく気付き尋ねるギャレロに、
「あら、ギャレロも食べたいの? はい、あーん……美味しいかしら?」
「甘いな。肉じゃないが、これも好きだぜ」
 フォークに刺され差し出された物をパクリと。美味しそうに食べるギャレロに、更に食べさせてやる咲裟だった。
 そして最後の締めに辻占煎餅。結果は咲裟が中吉、ギャレロは小吉。
 凶ならもう一枚食べられるのにと、残念がるギャレロだった。

 そし他に視線を向ければ。

「伊達巻……魚のすり身も入れるんでしたっけか。綺麗に巻くの結構難しいですよね」
 自分が作る事も考え、調べるように食べているのは淺稀。
「伊達巻は知ってる。甘くて結構好き」
 本人は隠しているつもりだが、子供舌なフェルドは甘くてふわふわの伊達巻を、美味しそうに食べる。
 あまり表情が動かないように見えて、実際には喜んでいるのが伝わってきた。
 彼は皿に幾つも乗せた伊達巻を食べ終わると、
(今度、オトナシにお願いして作ってもらおう)
 静かに決意する。そう思ってしまうほど、満足していた。
 そんな彼を微笑ましげに見つめながら、淺稀は声を掛ける。
「美味しかったみたいですね。次は、何を食べましょうか?」
「おしるこ。あれも甘いから、結構好き」
「良いですね、美味しそうです」
「オトナシも、食べる?」
「はい。でも、まだ取ってきたおせちが残ってますから、これを食べて勉強してから頂きますね」
「なら、僕が取って来るよ」
 そうして持って来たのは丸餅が香ばしく焼かれたおしるこ。楽しくお喋りしながら2人は食べていった。
 そして最後の締めに雑煮を食べる事に。
「そういえば、雑煮は地方で色々あったと思いましたが……どの地方の雑煮があるのか楽しみですね」
「どんなのが良いの? 取って来るよ」
「ありがとうございます。でも折角だから、一緒に選びに行きませんか?」
「うん、分かった。一緒に取りに行こう」
 そして2人仲良く選びに行く。
 焼いた角餅を魚介で取ったすまし汁に入れた物もあれば、白味噌に丸もちを入れて煮込んだ物、そして餡餅を焼いて香ばしさを加えた上で赤味噌に入れた物などなど、お餅も汁も具材も様々。中には、海老やイクラ、あるいは焼いた干しハゼが丸ごと一匹入っていたりと、具材が豪華な物も。
 後で作ってみる事も考え、いくつか種類を選んで2人は楽しく食べていった。
 そして最後に辻占煎餅で御神籤を。
 結果は、淺稀が小吉、フェルドが大吉だった。
 フェルドの大吉はきっと、後で淺稀に学んだ料理を作って貰えるからに違いない。
 傍で見ていると思わずそう思ってしまう2人であった。

 そうした仲が良いのは他でも。

「おいしー」
 伊達巻と昆布巻を食べ、シルキアは喜びの声を上げる。
「この間私が作ったのは焦がしちゃったから、ここでしっかり運気取り戻さないとね」
 にっこりと笑顔を向けながら元気良く言うシルキアに、
(俺は十分に満足したのだが、やはり気に病んでいたのか)
 クラウスは気遣うように、けれどそれを悟らせない自然さで返す。
「黒豆も食べてみると良い。お前が作ってくれた物と同じで美味しいぞ」
 洗練された箸使いで食べるクラウスに、
「箸の使い方、上手ね」
 普段使いなれないせいで覚束ない箸使いのシルキアは感心する。
「慣れれば使えるようになるさ。ここに来る前に作ってくれたおせちのお礼もあるし、また教えてやるよ」
「ありがと。ならその時の為にも、料理上手くならないと」
 そう言うと黒豆を食べる。
「美味しい。そう言えば、おせちにはそれぞれ意味があるんだっけ?」
「ああ。今お前が食べた豆は、元々は健康や丈夫を意味するからな。その意味合いも込め、健康に働けますように、という意味合いが込められている」
 少しずつおせちを食べながら、その都度クラウスは由来を説明しシルキアは感心しながら聞き入る。
「食べる人の事を考えて意味が込められているんだ。それじゃこの料理達は、オーナーご夫妻の心遣いが込められてるんだね」
 天真爛漫な笑顔を浮かべ感心したように言うシルキアにクラウスは、やわらかな笑顔を浮かべながら返す。
「そうだな。先日のお節に込められていた心遣いと同様だな」
 クラウスの言葉にシルキアは、
「! ……うん」
 気持ちがちゃんと伝わっていたことが嬉しくて、満面の笑顔で頷くのだった。
 そうして2人は食事を楽しみ、最後に辻占煎餅で御神籤を。
 結果は2人揃って中吉。
「お揃いだね!」
「これは今年も2人で頑張って行けという事かもしれないな」
「うん。頑張ろ」
「ああ。だが自分に何が出ても、運を呼び込むのは己の心がけ次第だ。それも忘れずに頑張っていこう」
 クラウスの言葉に、笑顔で頷くシルキアだった。

 そうしておせちを食べる者が居る一方、折角だからと馴染のない物を中心に食べる者も。

「ザンポーネ、へぇ、豚足の料理か。こちらは、餃子か? ペリメニが水餃子で、ボーズが蒸し餃子か」
 小さい頃から料理を嗜み、惣菜屋に勤務しつつ自分の店をいつか持ちたいと思っているリーヴェは、積極的に見知らぬ味を知り学ぼうとしていく。
 ペリメニは地域ごとに食べ方に多少の差異があるが、ここで出されたのは茹でられた物に溶かしバターやサワークリームを乗せた物。つるんとした皮の食感が軽く、餡の肉の味はしっかりしていた。ボーズは噛んだ瞬間に肉汁が溢れ、旨味がたっぷり味わえる。豚足に肉などを詰めたザンポーネも合わさって、牧畜が盛んな地域の新年料理な数々である。
 それらをしっかり食べて研究するリーヴェの横で、
「ザンポーネは見た目でパスかな。でも色々食べたい」
 銀雪はリーヴェについて回るようにして様々な料理を楽しむ。そんな中、
「魚生? 初めて見るが、食べ方があるのか」
 野菜が盛り沢山な刺身サラダとでも言うべき魚生は、豊かになる事を願い食べる縁起物。
 しかも、それを食べる時には皆で混ぜあい、願い事をその時口にすれば叶うと言われている。
 説明を聞いた銀雪は、
「願い事言って食べるの? なら!」
 リーヴェと一緒に食べる気満々である。
(銀雪の願い事は私関係だろうな……)
 リーヴェの予想通り、
「かっこいいリーヴェを大人の男っぽくリードしたい!」
 力いっぱい願いを口にする銀雪に、
「新年からブレてないなお前。褒めておいてやる」
 返すリーヴェ。それに、
(褒めてくれたから幸先いいな)
 喜ぶ銀雪だった。そしてリーヴェも願いを口にする。
「今年1年、皆大きな怪我も病気もしなければいい」
 自分の願いは自分の努力で叶えたい彼女らしい願い事だった。
 そこから更に食べて回り、最後に辻占煎餅で御神籤を。
 結果は2人とも末吉。残念がる銀雪に、
「吉凶は気にするな。大事なのは結果で己を戒める事、だ」
 リーヴェは彼女らしく返す。そんな彼女を、更に格好良いと思う銀雪だった。

 かくして皆は正月料理を楽しみ、新たなる年を迎えるのであった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 春夏秋冬
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月04日
出発日 01月12日 00:00
予定納品日 01月22日

参加者

会議室

  • [6]アイリス・ケリー

    2016/01/11-21:35 

    俺じゃなく間違えてラルクで入っちゃったかーって思ってたけど、
    ステータスで活性化してる方の精霊のアイコンが表示されるんだってこと忘れてたよ。
    うん、改めましてアイリスとエリアスだよ。
    リーヴェは忘れててごめんね、失礼しましたってアイリスからの伝言。
    それじゃ、今度こそよろしく

  • [5]シルキア・スー

    2016/01/10-12:44 

    シルキアとパートナーのクラウスです
    よろしくお願いします

    自分で作ったお節は失敗したので
    プロの味をしっかり堪能したいと思います

  • [4]向坂 咲裟

    2016/01/09-15:20 

    こんにちは、向坂 咲裟よ。
    今回はギャレロと一緒に参加よ。
    みんな、よろしくね。

    綺麗な着物に美味しいご飯の食べ放題…わくわくね。
    ギャレロもお腹いっぱいご飯が食べられるって楽しみにしているみたい。
    きっと素敵な船旅になるわね…楽しみだわ。

  • リーヴェ・アレクシアだ。
    今回のパートナーは銀雪・レクアイア。
    はじめましての方もそうでない方もよろしく頼むよ。

    >アイリス
    申し訳ない、二度目ましてだ。
    イベリンでの祭りはそちらも楽しまれたかな?
    互いにいい時間を過ごせればいいな。

  • [2]アイリス・ケリー

    2016/01/08-13:19 

    アイリス・ケリーとラルクと申します。
    シルキアさんとクラウスさんはお久しぶりです。
    他の皆さんは初めまして。

    美味しそうなお料理をたくさん味わえると聞いて、わくわくしております。
    それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

  • [1]音無淺稀

    2016/01/07-20:49 

    まだ誰もいらっしゃいませんがこんばんわ。
    音無淺稀(おとなし あさき)と申します。
    とても久々に参加するので少し緊張しますね(汗

    フェルドさんの着物姿って見たことないですし、ちょっとどきどきです(微笑み
    ご飯も食べ放題って事ですので…今後のために勉強しなきゃですね。

    皆さん宜しくお願いしますね(ぺこり


PAGE TOP