【枯木】全身全霊でお前の熱に触れてやる!(Motoki マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 ホテル『Die glänzende Meer』。

「輝く海を意味する名の付いたそのホテルの『レストラン&バー』に、オレが石達で飾ったクリスマスツリーがあるんですよ」
 イベリンのとある通りにある宝石店、『ジュエリー・カァタァフォィル』の青年店員・カミルは、そう言って肩を竦めるようにして笑った。
「とても雰囲気のあるレストラン&バーで、夜に窓辺の席に座れば輝く星と月、それらの光を反射し打ち寄せる波達が見られるんです。今回は窓辺で無くとも、店内のシックな明かりを反射するツリーが見られますよ」
 クリスマスの洒落たデートには最適です、とカミルはあなた達へと耳打ちする。
 頬を赤らめたあなたのパートナーを見て、揶揄うような瞳で悪戯っぽく笑うと、トントン、と肘であなたを突っついてきた。
「……あー、じゃあまあ、行ってみるか」
 別の理由も念頭に置くあなたの意図に気が付いて、パートナーも「そうだな」と頷く。
「恋愛は、惚れた方の負け――なんて言うけど。あなた達はどっちが惚れられた側?」
「「自分」」
 2人共が己を指差し言ったので、青年は体を折るようにして笑う。
「では、恋人に贈る指輪はぜひ、当店で」
 気取ってお辞儀したカミルに見送られ、手を振られ、あなた達はホテルへと向かった。


 ホテルの最上階である15階。
 レストラン&バーに入ったあなた達は、視線を交わし合う。
「…………やっぱり。こーゆうクリスマス関連のトコには植え付けられてんだろうな、黒き宿木の種は」
「かなり高い確率で。いや、絶対的に?」
 そうして視線を逸らし、周りを見回した。
 どこに植え付けられてるのかは判らない。黒き宿木の種が発芽する前に、愛の力を浴びせ枯らせる必要があるだろう。
 その手っ取り早い、方法は。

「お前の愛の熱に、触れてやろうか?」

 ――惚れてんだろ、俺に?

 自信満々の、その態度が気に入らない。
「いやいや、何を仰いますやら。触れて欲しいのはそっちだろ?」
 手をご希望? 頬? 頭? ――それとも。

 互いの意地と想いが、交錯する。

 さて、どっちが触れて、どっちが触れられる?

 惚れた弱み。
 相手に素直に触れられてしまうのは、さぁどっち?

解説

●目的
食事やドリンクを楽しみながら、より強く惚れられている側が惚れている側に触れる事で、愛の力を放出させる。
同じ惚れ具合である場合は、お互い同時に触れ合う。

※成功させる為には、それなりの雰囲気を出す必要があります。

※『黒き宿木の種』を消滅させる為ですが、その場所でウィンクルムの親密度が上がれば自然に黒き宿木の種は枯死しますので、プラン内で黒き宿木の種について書かれる必要はありません。

※親密度によっては、行動が成功しない場合もございます。ご了承下さい。

●リザルトノベル
時間帯は夜。レストラン&バーに入ってからの描写となります。他の参加者と接触する事はありません。

※未成年の飲酒等は描写致しません。

●料金
今回はお1人につき、となります。
・ドリンクのみを飲まれる場合はドリンク代として、300Jr(お2人で600Jr)
・食事のみをされる場合は食事代として600Jr(お2人で1200Jr)
を戴きます。
ドリンク・食事両方をご注文の場合は、両方を足した額を頂戴致します。

●レストラン&バー
ホテル『Die glänzende Meer』の15階にあります。
メニューは少し高級なレストラン、バー、にあるものなら大概あります。
お好きなものをご注文下さい。

お席は『W』(窓側)か『T』(ツリー側)のどちらかをお選びになり、『T』,『W』のどちらかをプランの冒頭にお書き下さい。

・窓側 
 床から天井までの大きなガラス窓側の席です。綺麗な海と空の夜景をご覧になりたい場合はこちら。

・ツリー側
 少し照明を落とした店内の席です。宝石や天然石で彩られたツリーの輝きを楽しみたい場合はこちら。

●カミル
 宝石店『ジュエリー・カァタァフォィル』の青年店員。今回のリザルトでは登場致しません。

ゲームマスターより

皆様こんにちは、Motokiです。
どうぞよろしくお願い致します。

こんの意地っ張り達めが~、な感じです。
こういうシチュエーションに萌えます! 私!

それでは。
皆様の素敵なプラン、とても楽しみにお待ちしております!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

 

えっ?ここで食事をするだけで良いのか?
…んな訳ないよな、うん、そう世の中甘くないか(苦笑
ともあれ食事と飲物を2人分頼んでひと時の夜景を楽しむよ

どっちが先にとかどっちが沢山とか、そんなこと今更言われても俺達は…なあ
なんだそのヤルキ満々な顔は
いや、気持ちは分かってるし
っていうかこんな所で言わなくても家で言ってくれればそれで
ああっ、だから
恥かしいから勘弁してくれ

そりゃ俺だって……だけどさ
言わなくても察しろよ
ドレくらいってそんなの
言わせんなよ察しろよ
くそー、ワザと知らない素振りしやがって

ま…まあ、ランスがそう言ってくれるなら、それでいいけど

とか言いつつ彼が触れる瞬間、俺もサッと彼の頬に手を伸ばす←w


アイオライト・セプテンバー(白露)
 

えーと…よく分かんなかったけど、つまり…
パパがあたしをなでなでしてくれれば、なんとかの種は枯れるんだよね?
はいどうぞっ
いっぱい撫でてくれていいよー(にこにこ
それとも、おっぱいのほうがいいとか?
やだ、もう、パパったらこんなところで大胆っ☆
先にご飯だね、わかったよ
いっただっきまーす

ごちそうさまでしたーっ
(にこにこにこ)←なでなで待ってる

うん、ツリーがキラキラして素敵
でも、なんだか物足りない気がするなあ
わかった!
ここに白とか水玉のぱんつのオーナメント飾ったらきっとかわいい…
パパ?どうしたの?
暗くて顔がよく見えないけど…?
えへへ、ありがとー←いろいろ勘違い
じゃあ、あたしがパパをなでなでしたげるねっ


瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
  W

「珊瑚、好みのちゅらかーぎーがいたら、
ここに連れて来るといいんじゃないか?」
珊瑚と窓の景色について話をしつつも、
時々見つめては気持ちを巡らす。

「ほとんど料理は家で作って食べてばかりだからな。
今日は気分を変えられていいかもしれない」
メニューを見てみるが、逆に迷う。
悩んだ末、従業員に一押しのメニューを聞いて注文。

食事した後、目の前に珊瑚がいた。
「顔が近いぞ?」
そして、いきなり告白する珊瑚に内心動揺する。
「お前は……女の子の方が好きなんだろう?」

「……反省しろ」
込み上げる鼓動を隠すように呟く。
その証拠に詰め寄る珊瑚の頬を撫でようとして、
口元についたソースを拭った。
「もう少しで惚れる所だったからな」


カイン・モーントズィッヒェル(イェルク・グリューン)
  T

是非とも見てぇな
指輪は自分で作るから悪ぃな

…なんて、やりとりしたなぁ
※ロートシュポンとコース料理を堪能、職業柄ツリーに興味津々
やっぱ自分で作ったの贈りてぇし
嫁の時?
指輪準備してなかったっつーか…嫁調理師だったんで、仕事じゃねぇ料理は一生独占してぇなと言ったら、そうなったっつーか
嫁の反応?俺の顔面にまで飛ぶ勢いで飯噴いたな
馬鹿意外性の産物悔しい独占させてやる大好きと言われてOK
ひでぇ反応だな
イェルも中々いい思い出じゃねぇか

そうだ、手貸せ
これなら、触るのは同時になるしな
…サイズは大体分かった
あ?指輪の話
さっき言っただろ
ホント、何でこんな可愛くなってるんだかな
※笑って手を伸ばし頬を愛しそうに撫でる


ローランド・ホデア(シーエ・エヴァンジェリン)
  W
俺はブランデー、シーエは白ワイン

ただ酒を飲みに来た
たまには葉巻燻らせ景色を肴にするのもいい

種?こんな所でまで仕事熱心なことだな
俺もウィンクルムの端くれとして解決してやるのは吝かではないのだが、生憎相手がシーエだからな
リェンなら強引にでも触れていたが
この愛とやらは家族愛的なものでもいいのかね?だったら何とかなるかもしれんが
家族愛で解決ってのもぞっとしねえな

シーエ?酔ったのか?珍しい
熱っぽいぞ?

てめえ、ここで触ってくる意味、分かってんのか?
まさか、だろ?いつから?

…はっ、てめえも不毛な奴だ
なんでそう(酒を煽り頭を抱える)
(シーエは親同然、否それより大切な人だ。何とかしてやりたいが…こればかりは)


●アイとシレンの優しい熱に
 ツリー近くの席を希望したアイオライト・セプテンバーは、料理を注文しウェイターが離れた途端、相手の紫色の瞳を見つめる。
「えーと……よく分かんなかったけど、つまり……」
 立てた人差し指を顎へとあてて、首を傾げた。
「パパがあたしをなでなでしてくれれば、なんとかの種は枯れるんだよね?」
 上目遣いでこちらの顔を見上げていたアイオライトが、「はい、どうぞっ」と笑顔で頭を突き出す。
「いっぱい撫でてくれていいよー」
 苦笑気味に伸ばしかけた白露の手が、次のアイオライトの言葉で止まる。
「それとも、おっぱいのほうがいいとか?」
 パッと身を起こして、少年はクネクネと身を捻る。
「やだ、もう、パパったらこんなところで大胆っ☆」
 目を見開く白露の前で、悪気もなくえへへ、と笑った。
 固まっていた白露がハッとして、周りを見渡す。そろりと手を己の膝の上へと戻した。
 見知らぬ相手には、アイオライトは少女にしか映らないだろう。
 本来ならすぐさまなでなでしてもよかったのに。
 アイオライトの発言のお陰で、逆に撫で難くなってしまった。
(おっぱいがどうのと言われたあとで触ったら、なんだか通報されそうじゃないですか)
「いえアイ、あのね」
 違う事をはっきりさせようとした精霊の前で、「はいパパ、どうぞっ」と神人は胸を突き出し撫でられ待機。
「…………」
 手遅れだった。
 アイオライトはもう、人の話を聞かないモードに入ってしまっている。
 笑顔で固まっている白露への助け舟のように、料理が運ばれてきた。
 良い匂いに、クンクンと神人が鼻を動かす。僅かに視線を下げたアイオライトに、すかさず白露が声をかけた。
「と、とにかく、冷めないうちに食事をいただきましょう」
「先にご飯だね、わかったよ」
 いっただっきまーす、とナイフとフォークを持ったアイオライトを、白露は微笑み見ながら密やかに胸を撫で下ろす。
(……はあ、なんとか話をごまかせました)

 しかしあっという間に食事は終わり、悩みは続行。
 にこにこにこ。
 なでなでをひたすら待っている神人から、そっと視線を逸らした。
(えーと、どうやってごまかしましょうか)
 泳ぐ視線に入ってきた、色とりどりの光を放つクリスマスツリー。
「そうだ、アイ、ツリーが綺麗ですよ」
 差した指を辿って、それを映した瞳が輝く。
「うん、キラキラして素敵。――でも、なんだか物足りない気がするなあ」
 真剣な顔で考え込んだアイオライトが、「わかった!」と指を差した。
「ここに白とか水玉のぱんつのオーナメント飾ったらきっとかわいい……」
 言った少年の向かいの席で、「ああ、やっぱりそういう結論になるんですね」と静かに精霊が遠い目をした。
「パパ? どうしたの?」
 暗くて顔がよく見えないけど、とアイオライトが顔を覗き込んでくる。
「いえ、なんでもありません。アイはそのままでいいんですよ」
「えへへ、ありがとー」
 いろいろ勘違いしたままの神人が、体を乗り出し手を伸ばす。
「じゃあ、あたしがパパをなでなでしたげるねっ」
 小さな手が頭に乗せられて、優しく揺らされた。
「はあ、ありがとうございます」
 なでなでされてしまった、と白露は己の頭に掌で触れる。
「アイは素直ですけど、素直すぎるのも問題ですよねぇ……」
 苦笑混じりで小さく呟けば、ツリーの宝石達の煌きも笑っているように見えた。

●悪戯と鼓動が奏でる熱を
 窓際の席に座った瑪瑙瑠璃と瑪瑙珊瑚は、店のオシャレな雰囲気と窓からの見事な夜景に「へぇ」と感心の声をあげる。
「珊瑚、好みのちゅらかーぎーがいたら、ここに連れて来るといいんじゃないか?」
 瑠璃の言葉に珊瑚がひょいと片眉をあげて、「そうだな」と煌く濃紺色の波へと視線を向けた。
 その横顔を見つめる瑠璃は、双子の弟のように接している相手の過去を、自分が密かに気にしている事を考える。
 今まであった事。話してくれた事。
 それらをぼんやりと巡らせていた。
 不意に返ってきた視線に、「さ、何食べるかな」とメニューを広げた。
「ほとんど料理は家で作って食べてばかりだからな。今日は気分を変えられていいかもしれない」
 言いながらも、何を注文しようかと悩んでしまう。そっと横へと立ったウェイターを見上げて、一押しのメニューを尋ねた。
「そうですね、私ですと――」
 上体を屈め、1つを薦めてくる。具材や調理法、ソースの説明を聞いて「じゃあそれを」と注文した。
「瑠璃が頼むなら、オレも頼んじゃおっかな?」
 便乗してくる珊瑚を見ると、向かいの席でニッと笑っている。
 好き嫌いやアレルギーは大丈夫なのかと心配すれば、ほがらかな笑みが返った。
「なんくるないさ! 海ぬ幸も山ぬ幸もぬちどぅ宝」

 白身の最後の一切れを野菜と共に口に入れた瑠璃がナプキンで口を拭えば、カチャンと食器の揺れる小さな音がする。視線を上げれば、すぐ前に珊瑚の顔があった。
 ゴクンと飲み込んで、「顔が近いぞ」と突っ込んでみる。
 真正面の至近距離から顔を覗き込んでも、表情1つ変えない。
 そんな相手の顔を、珊瑚は崩したくなった。
「瑠璃が近寄ってるんじゃねぇか?」
 揶揄うように笑んで言えば、相手の眉が僅かに寄る。開きかけた相手の唇が言葉を発する前に、告げた。

 好きやさ。

 いきなりの告白に、瑠璃の目が見開かれる。悪戯に笑ってみせたのに、今のが本気の言葉だと、伝わっていた。
「お前は……女の子の方が好きなんだろう?」
 かすれたような声は、瑠璃の動揺を表す。
「やしが、瑠璃への好きとは違う」
 揺れる、海のような深い瞳を見つめたままで、珊瑚は続けた。
「いくら、ちゅらかーぎーが好きだからってよー、いじめられてたとか、触られるのが苦手とか……言えるわけねぇだろ?」
 だから――と更に顔を近づける。
 それでも瑠璃は身を引かない。
「…………」
 身を引かないから。触れ合いそうになった唇を、ふい、と珊瑚が僅かにずらした。
「本当ぬわんを知っているのは……瑠璃だけ」
 耳の奥へと囁き込むような、静かな告白。
 返ったのは、睨むような視線と、何かを抑えたような低い声だった。
「……反省しろ」
 込み上げる鼓動を隠すように呟いて、瑠璃は手を持ち上げる。
 すぐ前にある頬をなでようとした指が、微かに揺れた。一瞬の間の後、指先は珊瑚の口元に付いたソースを拭う。
 ふっ、と力を抜くように椅子の背凭れへと背を預けて、拗ねたような視線が珊瑚を貫いた。
「もう少しで惚れる所だったからな」
 言えば相手は、席へと座りなおして悪戯っ子のように笑う。
「惜しかったさー……」
 指を鳴らすと、肩を揺らした。
 何だと、と2人で笑い合ってから、窓の外を眺める。
 それでもあの時。
 ソースを拭った指先に、確かに感じた、熱。
 また気にする事が増えたさ、と窓へと映る珊瑚をそっと見つめた。

●不毛なる熱を、あなたに
 窓際の席に座り、頬杖で顎を支えたローランド・ホデアは、もう片方の手で揺らしたブランデーを口に含む。
 穏やかに見える波の煌きを肴に、ただ酒を飲んで。葉巻を燻らせて。
 たまにはこうしてぼんやり過ごすのもいい。
 いや、違うな、と煙を吐く中で小さく呟いて、ローランドは向かいの席に座る精霊をチラリと見遣った。
 ――種、か。
 こんな所でまで仕事熱心なことだな、と思う。
(ウィンクルムの端くれとして、解決してやるのは吝かではない――が、生憎相手がシーエだからな)
 一目惚れした相手になら強引にでも触れていたんだが、と考えて、僅かの笑みが口許に浮かんだ。
 素直に向こうが触れられるかどうかは、別の話だがな。
 クッと喉を鳴らして、いや違う今は……と現状に頭を悩ませる。
(この愛とやらは家族愛的なものでもいいのかね? だったら互いに何とかなるかもしれんが……)
 そこまで考えて、「だが家族愛で解決ってのもぞっとしねえな」と独りごちた。

(若を好きなこと、不毛なことだと分かってますよ)
 俺だって馬鹿じゃないんだ、と睨むように夜景を見ていたシーエ・エヴァンジェリンは、白ワインのグラスを傾ける。コクリ喉の奥に流し込んでから、身を正して向かいの席の神人を見つめた。
(あんたには金で買い取るほどに好きな狐がいて、それとは別に婚約者もいる。どう転ぼうが俺の手には落ちてこないんでしょう? 知ってますよ)
 それでも、とグラスに添えたままの指に力を込めた。
 好きなことは、止められない。
 だから。
 ――俺が貴方を想うことくらいは、許される筈だ。
 キュッと唇を噛んで、己に言い聞かせるように心の中で繰り返す。
(秘めておけば、秘めて……)
 瞼を閉じて全てを閉じ込めようとした熱は、行き場を失い、ただ焦がれた。

 でも、こんなに苦しいのを分かってほしい気持ちもあるんだ……!

 目を開けて、赤き瞳で見つめて。
 意識せず手は、相手の頬へと伸びていた。

 パシリ。

 弾かれた手で、ハッとする。
「っ! す、すみません」
 しかし。己以上に驚いている、相手の顔が目の前にあった。
「シーエ? 酔ったのか? 珍しい。……熱っぽいぞ?」
 弾いた手の甲が触れる手が熱い事に、ローランドが眉根を寄せる。
 そうして怪訝な視線を精霊に戻した。
「てめえ、ここで触ってくる意味、分かってんのか?」
「ああ、はい、分かってますとも。愛している方が触るのでしょう。そういう意味ですよ」
「違う。愛している方が触られる側だ。愛されてる方が触る方が、愛の熱は放出されるだろうが」
 いや違う、今言わなきゃならないのはそこじゃねえ。
 肘を付いた手の指で額を押さえ、首を振る。まさかだろ、と呟きながら、指の間から相手の顔を見返した。
「――いつから?」
 神人のその言葉に、ずっとローランドとの契約を待ち望んでいた精霊は静かに目を剝く。
 こうなりゃ自棄だとばかりに、身を乗り出した。
「若に出会った子供の頃からですよ!」
 相手の動きが止まる。
「……はっ、てめえも不毛な奴だ」
 ようやく呆れたような笑いを吐いた唇が、「なんでそう」と形取られた。
(シーエは親同然、否それより大切な人だ。何とかしてやりたいが……こればかりは)
 ブランデーを煽り、再び頬杖を付いて。ローランドは頭を抱える。
 そしてその前で、シーエも残りのワインを飲み干していた。
(ああ、明日素面になったとき、死にたくなるんだろうな……)
 それでも。
 今夜はもう少し、飲みたい気分であった。

●未来に籠める、互いの熱は
 ――是非とも見てぇな。だが指輪は自分で作るから、悪ぃな。
 その言葉にも楽しそうに笑った青年とのやり取りを思い出しながら、ロートシュポンとコース料理を頼んだカイン・モーントズィッヒェルとイェルク・グリューンは、クリスマスツリーの傍の席に座っていた。
「聞いていて恥ずかしかったです」
 お口取りのムースを口に運びながら、イェルクは照明の落とされた店内で頬を僅かに染める。
「やっぱ自分で作ったの贈りてぇし」
 そんな神人の声に視線を上げれば、相手は宝石や天然石が鏤められたツリーを見上げていた。
 視線を辿って、ツリーを見上げる。自分はカインとは違って素人ではあるが、色や石の大きさなども考慮し配置されているだろうツリーは、見事だと思った。
「前の時も自分で作ったんですか?」
 何気に問えば、顔を戻した相手は「嫁の時?」と不思議そうにこちらを見返した。
「指輪準備してなかったっつーか……嫁調理師だったんで、仕事じゃねぇ料理は一生独占してぇなと言ったら、そうなったっつーか……」
 彼女の反応はと言えば。
「俺の顔面にまで飛ぶ勢いで飯噴いたな。馬鹿意外性の産物悔しい独占させてやる大好きと言われてOK」
 ひでぇ反応だな、と肩を竦めながらも楽しそうに笑って、カインは前菜の生ハムと葉にフォークを刺した。
「奥様のお気持ちお察しします」
 真顔で静かに伝え、心の中で突っ込む。
 ――何だその恥ずかしい天然プロポーズは。
 そっちは、と今度は問われて。イェルクは懐かしむような微笑を浮かべる。
「彼女が詳しくて教えて貰うのが好きだったから、調べなかったんです」
 花も宝石も彼女から教わって、彼女が好きな物を贈ってプロポーズ出来たらと、思っていたから。
 する立場ではなくされる立場になるとは思ってなかったが、と相手に意識を戻せば、楽しそうに自分の話を聞いてくれていた。
「イェルも中々いい思い出じゃねぇか」
 自分達の関係は、こんな感じだ。
 過去に全く嫉妬しない訳では、ないだろうけれど。
 その思い出ごと、彼女達への愛ごと、互いを大切だと思う。
 ――カインが調べて、やるタイプだったのも意外だ……。
 牛頬肉の煮込みを食べ終われば、デザートがくるまでの間に唐突にカインが告げた。
「そうだ、手貸せ」
「……手、ですか?」
 不思議そうな顔をするのは、今度はイェルクの番で。それでも素直に、手を差し出す。
(これなら、触るのは同時になるしな)
 そんな思惑もあってだが、イェルクに触れた手は、何かを確かめるように指を辿った。
 甘い――とは言い難い手の動き。
 愛の力を放出出来るように感じないし、それに……とイェルクが僅かに眉を寄せていると、「サイズは大体分かった」と手が離れていった。
「サイズ?」
 思わずカインへと聞き返す。
「あ? 指輪の話。さっき言っただろ」
 ――って、事も無げに……!
 衝撃を受けた精霊は、眩暈を覚えながらグラスを手に取った。
(奥様、私は絶対あなたと仲良くなれます)
 誓いのように軽く掲げた赤ワインを、喉へと流し込む。
 相手に噴き出しは、しなかったが。
 恥ずかしくて、死ねる。

(ホント、何でこんな可愛くなってるんだかな)
 幸せな男は、肩を揺らして手を伸ばす。
 触れた頬の熱は、飲んだワインの所為だけではないはずだ。
 熱を、共有するように。
 包んだ頬を、掌が愛しげに撫でていた。

●確かに伝わる愛の熱を
「えっ? ここで食事をするだけで良いのか?」
 窓際の席に案内されたアキ・セイジは、振り返り精霊を見る。にんまりと笑みを深めたヴェルトール・ランスに、「んな訳ないよな」と、大人しく席に座った。
 うん、そう世の中甘くないか、と苦笑を浮かべれば。
 向かいではなく隣の席に座ってきたランスに、「なんで隣に来るんだ」と含む視線を向ける。
 まあまあ、と宥めるように瞳を返した男が、ウィンクしてみせた。
(この機会は、愛を育む絶好のチャンス)
 キランッ、と瞳を光らせ凛々しく顎に手を遣ったランスをチラリ見て、見てないフリをする。
 とりあえず視線での会話を続けていても仕方が無い。メニューを差し出すウェイターに迷惑をかけてもと、食事と飲み物を2人分頼んだ。
 床から天井まである大きな窓からひと時の夜景を眺めれば、まるで空中に浮いてるような感覚にもなる。
 星達と海の煌きを楽しみながら、それでも浮かんでしまうのは此処でやらねばならぬ事。
「どっちが先にとかどっちが沢山とか、そんなこと今更言われても俺達は……なあ」
 困ったような視線を向け言ったセイジが、ランスの顔を見た途端、真顔になる。
「なんだそのヤルキ満々な顔は」
 えーだってぇー、と甘えたような声を出した精霊は、ニヤニヤ笑いを止められない。
「セイジはどうなんだよ?」
 う、と声を洩らして、神人は視線を泳がせる。
「そりゃ俺だって……だけどさ、言わなくても察しろよ」
「えー、分からないしぃ。――ドレくらい?」
 普段は可愛いとさえ思えてしまう相手の甘えた態度も、今は少しばかり憎たらしい。
「そんなの言わせんなよ察しろよ」
 ――くそー、ワザと知らない素振りしやがって。
 頬を赤らめながら視線を逸らしていれば、「俺はセイジが好きだぜ」と囁くランスの声が聞こえた。
「だから俺の方が好きなんじゃねって思うけど?」
 首を傾げるように問うてきた相手に、意地を張っているのも馬鹿みたく思えてくる。
「ま……まあ、ランスがそう言ってくれるなら、それでいいけど」
「誰にも聞こえないように言うから」
 ずいと近付いてくる気配に、セイジは掌を突き出した。
「いや、気持ちは分かってるし――っていうかこんな所で言わなくても家で言ってくれればそれで……」
 クスリと笑った相手は、「耳元で囁くから」と優しい声を出す。
「ああっ、だから。恥かしいから勘弁してくれ」
 くすぐったそうに首を縮めたパートナーに、「受け入れて欲しいな」と目を細め言えば、突き出していた掌がゆっくりと降ろされた。
 セイジの耳に手を伸ばせば、同時に頬に触れる相手の掌を感じる。
 ――ああ、そうだな。俺の方が好きなんだから、触れてもらわなきゃなんねーんだよな。
 笑み零して。だがセイジが示したかったのは、それではないだろう。
 きっと、同じくらい、と――。
「愛してるよ」
 囁いた途端、耳に添えた手から伝わった愛の熱は、思わず頬にキスしたいほど。けれど、「バカ」と落とされた小声に、それは何とか堪える事ができた。
 バカの裏にある言葉は、声に出されなくても心に伝わってくる。
(だって耳まで真っ赤だし、ふるふるしてるし、はうーって俯いちゃうし!)
 可愛いぜ、と俯いたままの顔を眺めていれば、微かにその唇が動いた。

「愛してる」

 消え入ってしまいそうな小さな声は、確かな熱を運んでくれる。
「サンキュ……な」
 セイジの性格で、この場で愛を口にするのは、余程の勇気がいったはずだ。
 それはランスの真っ直ぐな言葉を、受け留めている証拠でもあるだろう。
「さ、飯にしようぜ」
 ぷしゅー、と湯気でも出そうなセイジの頭を、ぽふぽふとやさしく撫で「大丈夫かー?」と笑った。



依頼結果:成功
MVP
名前:アキ・セイジ
呼び名:セイジ
  名前:ヴェルトール・ランス
呼び名:ランス

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター Motoki
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月11日
出発日 12月17日 00:00
予定納品日 12月27日

参加者

会議室


PAGE TOP