思い出のコーディネート(月村真優 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

冬風が厳しくなってきても、ショッピングモールと言うのは暖かくて居心地がいい場所だ。
クリスマスの楽しげな音楽が流れ、明るい店内は十分に暖房がきいている。
それに、ウィンクルムたちを悩ませる『黒き宿木の種』もどうやらここにはないようだ。

そんな中で暖かくて素敵な服でも見つかれば、気分も(何なら、財布の紐も)少しは緩むというものだ。

厳しい寒さのためか、クリスマスに向けてよそいきの服を新調しに来たのか。
『あなた』は冬服を買いにここを訪れていた。一人で来る者もいればパートナーと二人でお買い物デートに来た者もいるだろう。

ゆっくりと店内をめぐり、気に入った品々を選んでいく。
そうしてゆったりと時間を過ごしていると、『あなた』は店員の視線に気が付いた。
どうやら、あなたの今の服装と持ち物――つまりデートコーディネート――が気になるようだ。


つられて自分の服に眼を落とすと、ふと記憶がよみがえってくる。
そういえば、このコーディネートにはどんな思い出があっただろう。
パートナーと一緒に出掛けたこと。交わした言葉。いろいろなことがあった筈だ。

二人でカフェにでも寄って思い出話をするもよし、一人でゆっくり追想にふけるのもよし、店員相手にのろけてみるもよし。

少し思い返してみるのも、悪くはないだろう。

解説

今回は装備アイテムにまつわる回想がメインとなります。


●アイテムについて
コーディネートは神人/精霊のどちらのものでも構いません。ただしアイテムは二つまでとします。
該当品を装備しているほうのプラン冒頭に○を書いておいてください。(今回は片方のみのアイテムを対象とします)

なお、アイテムは服・アクセサリーだけでなくデート携帯品・雑貨でも構いません。メモ帳とかでも大丈夫です。

●消費ジェール
買い物代として300ジェールいただきます。

●ご注意点
思い出という事で過去エピソードを参考に提示したい方もいらっしゃると思いますが、見るのは最大でもひとつまでとさせてください。またあくまでも参考です。
提示された場合でも当リザルトノベルを作成する際はプランを基に執筆しますので、時系列等を変えてプランを書いていただければと思います。

ゲームマスターより

 すっかり寒くなりましたね。皆様いかがお過ごしでしょうか。
 アイテムのイラストがかわいいので結構気に入っている月村真優です。

 皆様のコーディネートをぱらぱら眺めているとこれらにも各自の設定ができそうだな、と思ってこんなものを作ってみました。クリスマスとはあまり関係してませんがよろしくお願いします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)

  参照リザルト
あごマスターの【灯火】煙と未来

ディエゴさんの胸の内側のポケットに入っているタバコ「ロンリーキングダム・ライト」が目に入りました。

……ディエゴさん??
私の気のせいでなければ、パッチ張り続けるとかで禁煙続けるんじゃあありませんでしたっけねぇ?
もしかして、隠れて吸ってます?
…まぁ、前にも言ったように一日の本数を決めて吸うなら良いんですよ
ただ隠し事は嫌ですよ、嫌というかダメですよ。

…なんだ、そうだったんですか
ないとさみしくなるくらい吸ってたんですね、以前は
そんなに良いものなんですか?タバコは…
成人したら吸ってみたい気もしますが、ディエゴさんが止めるからやめておきますね。



アイリス・ケリー(ラルク・ラエビガータ)
  ○エメラルドフローラ

好きというか…バランスが取れる色だからでしょうか
そうだと思います
カラーコンタクトをするようになってからは、それまで着ていた服が合わなくなってしまって
髪を染めた時はあまり困りませんでしたから

…言われてみれば、ラルクさんと服を見に来るのって初めてですね
まさか付いて来られるとは思いもしませんでした

では、今日は何故?
特に決めてませんでしたが、多分そうなっていたかと
…コンタクトレンズを外せと?

春は、よく着てましたね
お花見だけでなく、テーマパークもこの服の時に行きましたね
…色々なところに、この目の色で行きました
私は、私の赤い目が嫌いです…
だから、いつお見せ出来るかは保証しませんよ?


マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)
 
髪飾り

このリボン頂き物なんです

店員と会話しつつ思い出す
顕現の経緯
AROAへ連れてこられた事
泥だらけだった自分を見かねたAROA職員が服を用意してくれた
今迄着た事も無いおしゃれなお洋服とこのリボン

髪飾りなんて私には似合わないって言ったら
これから貴方は運命の精霊と逢うのだからこの位おしゃれしないとね
って言われたんです

その精霊が奉公先の主人と分かった時は言い様の無い驚きだった
本当に運命という物があるのかと

あはいすぐに
会計済ませ店員に会釈
そそくさと彼の後につき店を出る

荷物奪われ困惑
お任せする事に

そんな風に思っていたのかと驚き喜び照れ
ももももったいないお言葉です

歩きながらそっとリボンに触れ
小さく微笑む


アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
  ○ゴーストチョーカー

ふと
…そういえばこうして自然に会話できるようになったのって…何時からだっけ?

カフェ
ホットココア

少し会話を交え
考える

…最初、私も精霊も殆ど喋らなかった
私は一目惚れの衝撃冷めやらぬ状態だったし
精霊は見た目通りクール…というか、どこかひんやりした印象だったし…
静寂が落ち着くのは割と最初からだったけど…

契約したのが丁度ハロウィンの時期で
その時に貰ったチョーカーを触る

記憶を辿り、行きついた先はEP3の出来事
…ああそうだ。あの頃からだ
ガルヴァンさんに迷惑掛けちゃったのは申し訳ないけど…助けてくれて嬉しかった
初めて笑ってくれたのもあの時だった

ふと相手を見
ど…どうしたの?

ガルヴァンさんも?


●アラノアとガルヴァン・ヴァールンガルド、そして二本のチョーカー

 クリスマス目前のショッピングモールは買い物客でごった返していた。その様子をカフェの中から眺めながら、アラノアは向かいに座ったガルヴァン・ヴァールンガルドに向かい、何とはなしに話しかけた。
「今日は大分混んでるね」
「そうだな。……ウィンクルムもいるようだ」
 ガルヴァンの視線を辿れば、確かに神人の服を選んでいる姿が目に入った。精霊が何かを提案しているようだ。
「ほんとだ。……クリスマス前だもんね」
 そうゆっくりと呟けば、後には心地のいい静寂が広がる。
(……そういえば)
 ココアを口につけながら、アラノアはふと疑問が浮かび上がるのを感じた。
(こうして自然に会話できるようになったのって、何時からだっけ?)
 彼女はゆっくりと記憶を辿り始めた。

 その様子を眺めながら、ガルヴァンはコーヒーを飲み、考える。
 基本、彼らの会話は弾まない。だがその静寂を彼もまた気に入っていた。最初こそどんな奴なのか、と観察していた事もあったな、と思い出す。
 だがそれもすぐにやめてしまった。無理に距離を詰めてこようとしてこない相手だ、という事はすぐにわかったから。
 ガルヴァンはゆっくりとコーヒーとココアの香りが入り混じる空気を吸い込む。この空間が落ち着くのも、彼女の人柄あっての事なのだろう。

 そう、最初から二人はこの沈黙に落ち着きを見出していた。その空気の中で、アラノアはゆっくりと考えを巡らせる。最初は二人とも喋らなかったし、自然な会話など望めそうになかった。
 彼女の方は人生初の一目惚れの衝撃が抜けていなかったし、その上彼の方は見た目通りクールといえばいいのだろうか、どこかひんやりした印象でとても気軽に話しかけられたものではなかった。
 契約したのは、確かハロウィンの頃だったか。その頃に貰ったゴーストチョーカーに何気なく触れ、急に記憶が蘇った。これを掴まれ、引き寄せられた感触とその時の恐怖。そしてその後に助けてもらった事。
 そうして彼女は気づいた。
(ああそうだ。あの頃からだ)

 そのチョーカーに、その時の事を思い出したのはアラノアだけではない。ガルヴァンもまた、神人の触れたチョーカーを見て同じ日の光景を思い出していた。
 薄暗いカラオケの個室内で男にチョーカーを掴まれて体を抑え込まれ、目を瞑って怯えていたアラノアの姿だ。その時の事を思い出して、眉間に皺が寄るのを自覚する。
 正直、何かに対してここまで憎悪を引きずるのは初めてかもしれない。何故だろうか。彼は自分のチョーカーを無意識にさすりながら自問した。

 だが、答えが出る前にその思考は中断された。
「ど……どうしたの?」
 心配そうに神人が自分の顔を見上げ、問いかけてきたからだ。眉間に皺を寄せていたのを見られていたらしい。険しくなった表情を緩めて答えを返す。
「ん? ……ああ、少し考え事をな」
「ガルヴァンさんも?」
 少し驚いたようにアラノアは聞き返す。
 彼女もその時は相当に嫌な思いをした。それでも、今となっては「助けてくれて嬉しかった」という感情のほうが強い。迷惑をかけてしまったな、とは思うが初めて笑ってくれたのもあの時だった。
「まあ……な」
 あの一件以降会話が増えている事、そして自分がだんだんと神人を気に掛けるようになったことに彼は気が付いていないのだ。
 だから、ガルヴァンの方にとっては苦々しい記憶でしかない。
(……今更、過ぎた事に思いを巡らせても仕方ない)
 そう考え直し、苦々しい記憶を飲み下すように彼は黒く苦いコーヒーを飲み干したのだった。

 そうして、また穏やかで静かな時間が二人の間に流れていく。
 だが、もちろんその静けさがずっと続いている訳ではない。カフェの窓を一枚隔てた近くでは、もう一組のウィンクルムが穏やかならぬ雰囲気を纏っていた。
 どうやら、神人が精霊に詰め寄っている様子だ。

●ハロルドとディエゴ・ルナ・クィンテロ、そして禁断の煙草

「……ディエゴさん??」
 ショッピングモールの朗らかなクリスマスソングを背景に、ハロルドはディエゴ・ルナ・クィンテロを問い詰めていた。その視線が射抜いているのはディエゴの上着の胸あたり――正確には、内側の胸ポケットに鎮座する煙草、「ロンリーキングダム・ライト」だ。
 買い物の最中、何かの拍子にちらりとその箱が見えたのだ。それで今問い詰めている、という訳である。
「私の気のせいでなければ、パッチ張り続けるとかで禁煙続けるんじゃあありませんでしたっけねぇ?」
「うっ……」
 気まずそうな顔をしたディエゴは思わず一歩後ろに下がった。だがハロルドは追及の手を緩めない。
「もしかして、隠れて吸ってます?」
「吸ってはいない」
 ディエゴは素早く否定した。吸っていないならどうして持っているのか。そう言いたげなハロルドのじとーっとした目に、ディエゴは言葉を続ける。恥ずかしい事ではあるが、詰め寄られたら言うしかない。
「吸ってはいない、が時々咥えたりしてる……誓って言うが、本当に吸ってないぞ」
 その様子に、少しだけハロルドは纏う雰囲気を柔らかくした。どうやら信じてくれたようだ。少し言い過ぎた、と思ったのかもしれない。
「……まぁ、前にも言ったように一日の本数を決めて吸うなら良いんですよ。ただ」
「ただ?」
 問い返したディエゴを下から見上げて、少しだけ寂しそうに、あるいは甘えた様にハロルドは答える。
「隠し事は嫌ですよ。……嫌というかダメですよ」
 こういう顔をされるとディエゴは逆らえない。ああ、と言って頷かざるを得なかった。
「ただ…持ってないと落ち着かないんだよ、あって当たり前だったものがないというか」
 これは非喫煙者にはわかりにくい感覚なのだろうな、とディエゴは思う。
 例えるなら何だろうか……ああ、ちょうど目の前にいるじゃないか。
「……あ、そ、そうだ、お前が傍にいないのと同じくらいのものだと思ってくれていい」

 この言葉は効果てきめんだった。ハロルドは相好を崩し、ぽつりと呟く。
「……なんだ、そうだったんですか」
 ほっとして肩の力を抜いたディエゴを見ながら、ハロルドは感慨深げに呟いた。
「ないとさみしくなるくらい吸ってたんですね、以前は」
 どうやらわかってくれたようだ、と安心していたディエゴはしかし、続く言葉に再び身を強張らせる羽目になった。
「そんなに良いものなんですか?タバコは……」
 神人が煙草に興味を持ち始めたらしい。これはまずい、言い過ぎたようだ。
「あー……えーと、煙草はやめておいた方が良い。医療に携わっていておいて煙草を吸っていた俺が言うのも説得力がないだろうが、体に悪いし……」
 あわあわとしながらも、こちらを見上げている色違いの瞳を見下ろして言葉を探し続ける。
「それに身体能力が落ちてしまうぞ。お前には優れた運動神経があるんだから、勿体ない」
 そう続けると、やがてハロルドは納得したようだった。
「ディエゴさんが止めるからやめておきますね」
 成人したら吸ってみたい気もしますけれど、という声が聞こえたので、絶対にこの神人の前では煙草を口にするまいとディエゴは誓ったのだった。

 そんな誓いを胸にしまい、気を取り直して二人はまた服を選びに向かう。並んで歩く二人が足を向けた先では、もう一組のウィンクルムが服を選び、相談していた。神人が手に取った緑色の服に、精霊は何か言いたい様子だ。

●アイリス・ケリーとラルク・ラエビガータ、あるいは翠玉の瞳とブラウス

「アンタ、その緑の服好きだよな」
 ラルク・ラエビガータの台詞は唐突だった。
 手に取った服を胸にあてがって色のバランスを確かめていたアイリス・ケリーはその手を止めて考える。確かに、今選んだ服も着ているブラウス――アクターウェア「エメラルドフローラ」――とあわせる前提で色を選んでいた気もする。
 確かにこのエメラルドフローラを着ている事は多い。
「好きというか…バランスが取れる色だからでしょうか」
 その答えに、ラルクは納得したように「ああ、それでか」と答えた。
「目の色かね?」
 彼女は髪と目の色をそれぞれ変えている。銀髪から茶髪へ、赤い目から緑の瞳へ。
 だが銀髪でも茶髪でも、そこまで服の色で悩む必要はなさそうだと思ったのだ。
「そうだと思います。カラーコンタクトをするようになってからは、それまで着ていた服が合わなくなってしまって」
 髪を染めた時はあまり困らなかった、と神人は付け加えた。彼の読みは当たっていたらしい。正解だった、と心の中で思う。単に目の色に合わせていた、という事に対してだけではない。
「ラルクさんと服を見に来るのって初めてですね」
 彼女の服選びに着いてきた事に対してだ。ラルクはわずかに笑みを浮かべた。

「まさか付いて来られるとは思いもしませんでした」
 彼の思惑には気付かないまま、彼女は言葉を続ける。ラルクはあっさりとそれを肯定した。
「そうだな、服だとか小物だとかの、女の買い物は疲れる。付き合いたくないのが本音だ」
 似合う物を着ていればそれでいい。普段なら口出しする事も無いだろう。
「では、今日は何故?」
 アイリスの疑問は当然だ。だがラルクはすぐに答えず、彼女が手にしていた服に視線を落とした。やはり青や緑を基調とした色のものだ。緑の目にはよく映えて似合うだろう、とは思う。だが赤い瞳にはどうだろうか。
「今日も緑だとか青だとかの服買う気だったんだろ?」
「特に決めてませんでしたが、多分そうなっていたかと」
 そうだろうと思っていた。それが面白くないからラルクはわざわざついてきたのだ。
「それはちょいと困る。そろそろアンタの本当の目の色を見たいんでな」
「……コンタクトレンズを外せと?」
 怪訝そうに言うアイリスに、彼は爽やかに「そういうこった」と返した。
「アンタは花見の時もその服を着てたな」
「春はよく着てましたね。お花見だけでなく、テーマパークの時も」
 あれはいつだったか、なんて懐かしそうに眼を細めて言うラルクにアイリスもゆったりと笑みを浮かべて答える。翠玉色のこの服は新緑によく映えるのだ。
「……色々なところに、この目の色で行きました」
 二人の間に共有されるさまざまな思い出。それらはみな、緑の目に映って来たものだ。それを否定しようとはラルクも思っていない。
「似合ってるとは思うぜ? ただ」
 それでも、今の瞳の色が彼女固有の、本来のものではないという事を彼は知っている。
 そして、あの赤い瞳のほうが彼女の強さがよく現れていると思ったのだ。
「アンタの家で見た、昔のアンタの写真を見たらな。あっちのがらしいと思ったのさ」
 だが、わざわざ目の色を変えているアイリスからすれば素直に喜べるものでもない。
「私は、私の目の色が嫌いです……」
 それはラルクも承知の上で言っているのだろう。だから、本当の目の色を見たいと言う彼の言葉を端から断るのはやめにしておいた。勿論今日明日にというわけではない。それでも、いつかこれを外してみようか、と思ったのだ。だから、外さない、ではない。
「だから、いつお見せ出来るかは保証しませんよ?」
「まあ、気長に待つさ」
 それは彼もわかってくれたらしい。分かった上で、彼は適当に手近にあった紅色の服を示しながらこう言うのだ。
「んじゃ、赤に合わせた服を見るか」

 ひとまず彼が手に取った服は柄と値段が微妙だったので却下して、その後彼女は服を選び直し始めた。その傍らではいくつかの服を買いこんだ神人が通り過ぎて行った。相談していた店員と笑顔を交わしながら会話しているのがちらりと聞こえて来た。

●マーベリィ・ハートベルとユリシアン・クロスタッド、そして出会いのリボン

「お買い上げ、ありがとうございます」
 服を選び終えてレジに並ぶマーベリィ・ハートベルに店員が頭を下げた。服選びの時にも相談相手になった店員で、特に今の髪飾りにあわせる服を色々と提案してきてくれた人だ。
「それにしても、本当綺麗な髪飾りですよね。優美で、本当にお似合いです」
 しみじみと呟く店員に、マーベリィは照れたように答える。
「このリボン、頂き物なんです」
「あら、そうだったんですか」
 本当にあの日は驚きの連続だった、としみじみユリシアン・クロスタッドとの出会いの顛末を思い出す。
 奉公に上がる日が来たと思えば事故に遭い、気が付けば顕現していて。ボロボロで泥だらけのまま保護され、A.R.O.Aへと連れてこられた。
「泥だらけだった自分を見かねて、そこの職員さんが服を用意してくれたんですよ」
 それが、今まで来た事も無かったようなおしゃれな服。そしてこのリボン。

 「髪飾りなんて私には似合わないって言ったら、『これから貴方は運命の精霊と逢うのだからこの位おしゃれしないとね』って言われたんです」
 その『運命の精霊』が奉公先の主人と分かった時は言い様の無い驚きだったと思い返す。
 本当に運命という物があるのか、と思った。そう言うと店員も目を丸くしながら頷いていた。

 噂をすれば影が差す、というのは本当らしい。いつの間にかユリシアンが迎えに来ていた。
「終わったかい?」「あ、はい、すぐに」
 彼女はいつの間にか空いていたレジで急いで終わらせ、店員に会釈して店を出た。使用人が主人を待たせるなんてあってはいけない。
 そう思っていたら、いつの間にか荷物を奪われていた。困惑して思わず荷物を取り返そうとしたが、ひょいと手の届かない高い所に持ち上げられてしまったのでお任せする事にした。

「そのリボン、久しぶりだね」
 彼女の困惑をよそに、懐かしそうにユリシアンはそっとリボンに触れる。彼もその日の事は覚えていたようだ。
「緊張で小さくなってる少女を飾るそのリボンがとても印象的だった。可愛い娘さんのナイトに選ばれた事を神に感謝したよ。巡り合わせには運命を感じたけどね」
 そう言ってウィンクを飛ばせば、この小動物のような神人は赤くなって俯いてしまった。
「ももも、もったいないお言葉です……」
 俯いているので表情は見えないが、喜びと照れが半分といったところだろうか。またいつのもように赤面しているのだろう。その後頭部で揺れるリボンを見ながらユリシアンは思う。
(ぼく等はいつまで、この主従関係を続けるのか)
 契約相手として、彼女とその家族の面倒を見る、と言った自分に対し、彼女は『施しは必要とされる者に贈られる福音だ』とその申し出を拒んだ。
 そうして、彼女は雇用を望み、現在の主人と使用人としての関係がある。それは気高い選択だと思うし、その誇り高い精神をユリシアンは尊重したい。

 だが、いつまでもそうあり続けるのだろうか。自分のすぐ後ろに付き従うマーベリィの、その揺れる髪飾りを見ながら思う。出会った頃とは確実に何かが変わっている、と自覚させられる。
 彼女の姿はあの時と同じまま。彼女の心情はどうなのだろう。
 そしてぼくの……いや、やめておこう。
 彼は思考を無理やりに中断し、奪った荷物を抱え直した。

 今はまだその時じゃない。だから、この感情の名は考えないでおこう。今のところは。

 洋服売り場を後にする二人とすれ違うようにして、カフェで静かなひと時を過ごした二人が売り場を訪れる。お揃いのチョーカーを首に嵌めて。
 ショッピングモールは今日も繁盛しているようだ。



依頼結果:大成功
MVP
名前:マーベリィ・ハートベル
呼び名:マリィ
  名前:ユリシアン・クロスタッド
呼び名:ユリアン様

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 月村真優
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月07日
出発日 12月15日 00:00
予定納品日 12月25日

参加者

会議室

  • [4]アイリス・ケリー

    2015/12/13-18:04 

    アイリス・ケリーです。
    皆さん、お久しぶりです。
    ちょっとした買い物にきただけだったんですが…なんだか以前のことを思い出してしまいました。
    それでは、よろしくお願い致します。

  • [3]ハロルド

    2015/12/13-00:10 

  • [2]アラノア

    2015/12/12-22:18 

    よろしくお願いします。
    (…思い出のアイテム…か)

  • よろしくお願いいたします


PAGE TOP