


●いかんともしがたく
屋上を冷たい秋風が吹き抜けた。
「ごめん」
「え、あ……ヨ、ヨハン先輩……」
秘めきれない想いに耐え切れず、死にそうなくらい勇気を出して口にした告白を、たった三文字で断られ、シオンは呆然と目を見開いた。
「ごめん、俺、部活に専念したいから。恋人は作らない」
じゃあ、もう部活の時間だから。と、ヨハンは淡々と踵を返すと、足早に階段を駆け下りていった。
「そんな……」
崩れ落ちるシオンの背中に、快活そうな少女の声が突き刺さる。
「ダメだったんだ」
「……ヘラには関係ないだろ」
涙目で振り返るディアボロの少年を、気の強そうなツインテールの少女が腕を組んで見下ろしている。
「駄目なものはダメなのよ。だから止めたじゃん。ほらほら、もう忘れようよ、あんなバイオリン馬鹿。それよりさ、おいしいクレープ屋見つけたんだけど。あんた、甘いものに目がないじゃん。一緒に行くでしょ」
「うるさい」
目をこすり、シオンはイライラと声を荒げ、立ち上がる。
ヘラは不機嫌そうに怒鳴った。
「なによ。人が慰めてやってんのに!」
「いらないよ! ほっといてよ! いつもおせっかいでエラソーでウザいんだよっ!」
自棄のように怒鳴り散らし、シオンは唖然とするヘラを置いて、走り去っていった。
真っ赤な夕日に照らされ、ヘラは地団太を踏んだ。
「キーッ。なによなによなによ。シオンのくせに! なんであたしじゃないのよー!」
一目散に逃げるように家に帰ったシオンは、夕飯も食べずに部屋に閉じこもった。
ぐすぐすと拗ねて泣いていると、親は呆れて外出してしまった。
「ヨハン先輩……」
目を閉じると、あの流麗なポブルスが優雅にバイオリンを弾いている姿を思い出す。そして、また目から涙があふれる。
「う~……目が真っ赤だ……」
ともかく、顔を洗おう。と、ようやくシオンが立ち上がったとき。
呼び鈴が鳴った。
「こんな夜更けに……パパかママが忘れ物でもしたのかな」
警戒なくシオンがドアを開ける。
戸口には、かぼちゃをかぶったマントの子供が居た。
『トリック・オア・トリート』
シオンは目の前が真っ暗になった。
十七歳のディアボロがこん睡状態にある、とA.R.O.A.に通報があった。
精霊は生まれながらにして、A.R.O.A.の監視下にある。精霊の異常は即時報告されるのだ。
「どうやらオーガのせいらしい。少年……シオンという名前なのだが。彼は今、夢の中に閉じ込められている」
このままでは衰弱し、やがては石化するという調査結果が出ている。
職員は一冊の絵本を取り出した。
「これはシオンの傍に落ちていた絵本だ。君達にはこの絵本を通して、シオンの夢の中に入ってもらいたい」
絵本の中に入ると、現実世界ではこん睡状態になる。
「夢はこの絵本の内容と同じような状況になっているようだ。オーガは何かの役になりすましているから、見つけ出して倒してくれ」
だが、どれがオーガなのかは倒してみないと分からない。
「だが、手当たり次第に倒すのはまずいんだ。この話がバッドエンドになった途端、シオンは石化してしまう」
逆に、オーガが見つからなくても話をハッピーエンドにしてしまえば、シオンは目覚めるという。
「夢の中で死んでしまっても、話がハッピーエンドになるかオーガが死ねば、皆無事で目覚められる。手に持てる程度の荷物は一緒に持って入れるが、この絵本自体は持ち込めないからな」
一同は絵本を手にする。
絵本のタイトルは『サロメ』。
王からの求愛を拒む踊り子サロメ。
サロメは王が捕らえた反乱者ヨカナーンに恋してしまうが、ヨカナーンはサロメを冷たく拒絶する。
恋に狂ったサロメは「何でも与えよう」という女王に、とうとうヨカナーンの首を所望した。
反逆者であり恋敵であるヨカナーンが嫌いだった王は、処刑人に命じてヨカナーンを斬首する。
が、与えられたヨカナーンの首にサロメがくちづけするのを見て、嫉妬にかられた王はサロメを殺す。
そんな悲劇の話。


●成功条件:シオンを救う
方法1:夢をハッピーエンドにする
方法2:夢の中にひそむオーガを探して倒す
●夢:内容はOPの絵本『サロメ』参照
サロメ:シオンその人。自分はシオンで現実世界の記憶もあるがだが、ここではサロメと呼ばれていて、王に仕える踊り子だと認識している。(夢の中の感覚)
王:ヘラに似ているが、ヘラではない。
ヨカナーン:ヨハンに似ているが、ヨハンではない。
●夢の中について
オーガは外見から判別できないが、バッドエンドにしようと動く。
絵本以外のものは、手に持てる範囲で持ち込むことができる。
夢の中で死んでも、目覚めることができれば無傷で済む。
シオンが石化しても、夢が終わればウィンクルムは目覚めることができる。
お世話になっております。あき缶でございます。
ハロウィンイベントが始まりましたね。
ということで、いきなり耽美ドロドロな夢にご招待。
サロメってほんと、全員が全員どうしようもない話なのですが、
ここからいかにして解決するのか、皆様のお手並み拝見でございます。


◆アクション・プラン
アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
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念の為「牢番ランス・処刑執行人セイジ」と文中に書いてから入る 配役が貰えてればよし、でなくても城に雇って貰う形で役に付きたい *駄目でもなんとか忍び込む(最悪処刑に割り込む 面会に来たシオンと話そう 彼のどんな所が好きなのかから始め、想いを分かち合うんだ 好きな人に思いが通じない苦しみを君は知ってる ヘラの苦しみもヨハンの悩みも、今の君なら向き合えるんじゃないかな、と… 処刑の時、俺は頭の代りに南瓜入りの包みをシオンに渡す 「物言わぬ南瓜とは話し合えない」 「振り返れ。まだ間に合う」と ★オーガ(例:女王)が正体を見せたらトランス 鎌を振るってランスの前に立つ 鎌は処刑道具じゃなく、ランスを守るために持ってきたんだ! |
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■踊り子演奏者 持ち物:オカリナ(スキル【演奏】、インカム 絵本がメリーバッドEDならいいかも知れないが、辛い話だ オーガは世間か、サロメのバッドを望むのかわからない シオンの心を救いつつオーガを倒すつもりで聞き込こもう ◆ 踊り子として潜入。学び、力が足りなければ演奏者として盛り上げ。隙をみてサロメと話す 吟遊詩人になりたかったけど出稼ぎでここへ(建前) できる事なら絵本は再現したくない。辛いのにも関らず悪い 王は任せて ご指導ねがえないでしょうか お酌し、お世辞で気持ちよくなった所で質問する 恋とはどんなものでしょう。王様はどうでした? (相手の幸せを望む気持ちで想い留まらせれば サロメの命は延びる。その内に…!) |
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サロメも幾つかバージョンがあるけど、ヨカナーンの殺害を望んだのは王妃って場合があったよな。 聖人に色々と非難されてたじゃん。 サロメに色目を使う王に嫉妬したりとか、ここの登場人物はサカってるのが多いぜ(え? 兵士として紛れ込み、王妃(女王?)ヘロディアスをマークだ。 他の人とインカムでこっそり連絡取るぜ。 女王だった場合は、ヘロディアスに神について聞いてみる。オーガなら神を否定しそう。 それだと物語と合わないだろ。 サロメがヨカナーンの首を求めたら 何故死なせたいのかサロメに聞いてみよう。 どうせならヨカナーンを生きたまま貰えばいいじゃん。いつか振り向いてくれるかもだし? 殺したら彼は永遠に手に入らなくなるぜ。 |
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「サロメ」のお話のハッピーエンドってなんだろ 原作通りでもサロメにとってはハッピーエンドかもしれないけど…(ごろごろ 登場人物みんな、もうちょっと他の人の幸せも考えればいいのに あたし踊り子さんやるーっ♪ パパはあたしのボディガードね で、ヨカナーンさんの様子を見に行こ そのうちサロメが会いに来ると思うし で、サロメがいなくなったらヨカナーンさんに話し掛ける 「サロメにももうちょっと優しくしたほうがいいよ」って (預言者という設定を踏まえて) 「他人の気持ちをないことにしちゃうのはダメだよ」って たとえ受け入れられなくても 怪しい人がいたら、カンケツセンでぴゃってしちゃお これなら傷付けないはず 恋愛って難しいなあ… |
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心情 ・シオン君を幸せにするか、トラオム・オーガを倒すか。 出来れば前者の結末を迎えてほしいけど、上手くいくか流石に心配かな。 行動 ・香油売りの商人になり、香油を売りながら宮殿内を捜索。 途中、誰かが話しているのを見たら聞き耳を立てたり、話を聞いたりして情報収集。 まあ、誰もいなくても宮殿内の細かい箇所を見る余裕は、あるよね。 ・その時、ヘラさんやヨカナーンさん、サロメ(シオン君)が絡むような話が出ていたら、人目を避けてからインカムで皆に連絡しよう。 戦闘は極力避けて行きたいけどねぇ トラオム・オーガに遭遇したら、笛を鳴らして皆に知らせつつ、宮殿内にいる人達を外に避難させよう。 剣を振るって戦うのはそれからだ。 |
●乳香薫る砂塵の国にて
宮殿の中から、楽しげな音楽と喝采が聞こえる。王の誕生祭が連日続いているのだ。
「賑やかなこったねぇ」
宮殿の庭園の中で、香油を売り歩く鹿鳴館・リュウ・凛玖義は、音の方を振り仰ぎ、口端を上げた。
ここは絵本の中、シオンの夢の中、トラオム・オーガが作った悲劇の『サロメ』の世界。
「シオン君を幸せにするか、トラオム・オーガを倒すか。出来れば前者の結末を迎えてほしいけど、流石に上手くいくかねぇ」
心配そうに呟き、また凛玖義は声高に香油を売り始めた。
宮殿の中では、二つの話題で持ちきりであった。
一つ目は、王が反乱者を捕らえて誰とも会話することも相見えることも許さないという話。
「ははぁ、それがヨカナーンか……」
凛玖義は噂の逐一を耳に入れ、ヨカナーンが宮殿の地下牢に居ることを知る。
二つ目は、王が踊り子のサロメにご執心であるという話。しかし、サロメは王のことをあまり好いていないようだという噂も同時に回っていた。
「それ以上はないか……。絵本で夢だもんな、ウラ話なんてそうあるもんじゃない」
凛玖義は溜め息を吐くと、得た情報をインカムで仲間に伝えるべく、人目のない場所を探し始めた。
(りくがいないけど……泣かない!)
ぐっと寂しさを耐え、琥珀・アンブラーは槍を握り直し、ぶかぶかの兜を片手で押さえた。
兜の陰から、金色の瞳で女の王を見上げる。見た目は普通の人間だ。オーガなのかどうか全くわからない。
彼が護衛する宴席の真ん中で、今まさにサロメやアイオライト・セプテンバーが、セラフィム・ロイスのオカリナの音に乗って踊っている。
数段高い場所の玉座に、足を組み、頬杖をついて、踊りを眺める王の左右には、火山 タイガとセイリュー・グラシアが近衛兵の格好をして控えていた。
手慰みにブドウを摘む王の視線は、複数いる踊り子の中のサロメだけを見つめている。
その様子を呆れたように眺め、セイリューは肩をわずかにすくめた。
(女王様は徹底マークだな)
王に神について問おうと思ったが、セイリューの身分では余計な口はきけない。
たとえ質問が出来たとしても、仮に彼女がオーガであろうが、役になりきっている間は弁舌にボロは出さないだろうが。
熱心にオカリナを吹くセラフィムを見つめ、タイガは眉を寄せていた。
(セラ……大丈夫なのか。ただでさえ処刑されたりする世界なのに。人の斬首なんてみせたくねぇ。守らないと)
このまま話が進めば、サロメはヨカナーンの首を所望する。
それが、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、ウィンクルムにはわからない。
愛する者の死体であっても、切望した唇が手に入るのであれば、それは幸せなのかも知れぬ。
しかし、やはり愛する者を殺しては手に入っていないも同義だし、すぐに王に殺される運命なのは不幸なのかも知れぬ。
本来の結末が、サロメにとって幸なのか不幸なのか。どちらともわからないが、しかし、人の首が落とされる結末は――彼らはどうしても避けたかった。
笛が止まる。
優雅な一礼をして、サロメは踊りをやめる。
王が労おうと口を開くよりも前に、サロメは舞うように大広間を抜けていった。
「ちっ」
悔しげに舌を打つ強気そうな女王に、セラフィムは近寄る。
タイガの心配そうな視線に、『王は任せて』と目配せでセラフィムは返事をして、
「お酌をいたしましょう」
酒瓶を取り上げた。王の機嫌を損なわぬよう、己の身の上やら、王への賛辞やらを重ねて場をつなげる。
その間に、アイオライトは身を翻してサロメを追う。
彼の後に白露が続く。
●大理石の床の下にある鉄格子
ぱたぱたと宮殿の白い廊下を歩きながら、アイオライトは一歩後ろをついてきてくれる白露に話しかけた。
「絵本読んだけどさー、登場人物みんな、もうちょっと他の人の幸せも考えればいいのに」
頭の後ろで手を組み、アイオライトが天井めがけて息を長く吐く。
「ついでに、私の幸せについても考えて欲しいですけど」
「パパ、何か言った?」
「いいえ。どこに向かうつもりですか?」
「地下牢~。さっき、凛玖義さんから通信があったじゃない。ヨカナーンさんがいるって」
「しかし、王が誰の接触も許していないとも言っていましたよ」
白露が同時に聞いていた情報をあげて、懸念を示すも、
「大丈夫大丈夫。……なんとなく」
アイオライトはどこまでも楽天的だ。怒られたら、その時また考えればいいというものである。
「はぁ……」
白露は、溜息を吐きながらも、予想通りの受け答えにもうあきらめているようだった。
牢の前には既にサロメがいた。
サロメと押し問答をしているのは、ヴェルトール・ランスだ。
だが、押し問答も形だけである。すぐにランスはサロメに罪人との面会を許した。
「……去れ、穢らわしい」
牢の奥で、ヨカナーンは吐き捨てる。
「ヨカナーン、君は綺麗だ。白い肌、黒い髪、赤い唇……どうかくちづけさせてくれ」
懇願し、かき口説くサロメに、ヨカナーンはただ冷たい視線をくれる。
「寄るな。下がれ。男の分際で、男にくちづけしたいなど。下賎な手で触れるな。汚い視線にさらしてくれるな。卑近な唇など反吐が出る」
サロメは、シオンは泣きそうな顔で俯き、絞りだすような小さな声で呟く。
「……夢の中でくらい、優しくしてよ……ヨハン先輩……」
そして走り去る。
「二度とあの踊り子を俺の前に出すな」
ヨカナーンはランスに言った。
「ちょっと、ひどくない?」
口を挟んだのは、アイオライトだ。
「サロメにも、もうちょっと優しくしたほうがいいよ」
「何だ貴様」
上品そうな顔を歪め、ヨカナーンはアイオライトを睨みつける。
だが、アイオライトは怯まず続けた。
「他人の気持ちをないことにしちゃうのはダメだよ。たとえ受け入れられなくってもね」
「……好きでもない人間に好かれても、迷惑なんだよ」
ヨカナーンの声は冷たい。
「その格好、お前もあの気味の悪い踊り子の仲間か。去れ、お前に掛ける言の葉はない」
「……行きましょう、アイ」
白露がアイオライトを牢から離す。
「なに、あの態度!」
とぷりぷり怒るアイオライトを、白露は宥める。
「難しいお話ですよね。何をすべきか、私にもよくわかりません。今できることを出来る限りやるしか無いでしょうね」
また二人きりになった牢で、ランスはヨカナーンに声をかけてみる。
「巨大カボチャが壊されたら集めたものは無駄か?」
「は? かぼちゃ?」
「……いや、忘れてくれ」
ランスは肩をすくめて、牢番に戻る。
(演技か本心か……よくわからないな)
走り去ったサロメをアキ・セイジは呼び止めた。
「何……ですか」
兵士らしき男に呼ばれ、サロメはあからさまに不審そうな視線をセイジに向ける。
「ヨカナーンの……いや、ヨハンのどんなところが好きなんだ?」
「……理屈じゃないよ。綺麗なんだ。とにかく、輝いて見えるんだ。夢でも、現実でも。ヨカナーンは、綺麗だ。ヨハン先輩は、綺麗だ。完璧なんだ。……僕を見てくれないことだけが、辛いだけ」
うっとりと夢を見るような口調で語るサロメに、セイジは言う。
「……好きな人に思いが通じない苦しみを君は知ってる。ヘラの苦しみもヨハンの悩みも、今の君なら向き合えるんじゃないかな」
しかし、サロメは眉を寄せた。
「ヨハン先輩に悩みなんて無いよ。完璧だもの。僕が、……あの人の世界には、僕だけが余分なんだろうね。納得できないけど」
「ヘラは?」
サロメの顔はますます歪む。
「あいつなんてどうでもいいよ。苦しんでるの? そうは見えないけど。僕を口うるさく世話を焼くことがあいつの趣味なんだよ。毎日楽しいんじゃないかな!」
吐き捨てると、サロメは戻っていった。
●踊りの報奨を罪人の首にはすまいぞ
また翌日も宴席は儲けられた。
昨日の続きだ。
「サロメ、舞え」
王の命令に、サロメは首を横に振ったことだけが違う。
「サロメ」
「僕はこれから、貴方の生誕を祝うべく、命かけて踊ります」
サロメは七枚のヴェールをまとい、蠱惑的に王に言う。
「しかとご覧くださいませ」
王は、サロメの誘うような表情を見て、思わず頷いた。
「それでは、舞いましょう」
サロメの目配せを受け、セラフィムはオカリナに唇を当てた。
流れ出る旋律に合わせ、サロメが舞った踊りは、いやらしく、うつくしかった。
その場に居る全ての者が息を呑んだ。
それは、色気などまだ全くわからないであろう琥珀ですら圧倒する踊りだった。
踊りが終わると、喝采すら人々は忘れて呆然とサロメを見つめていた。それくらい、魂すら吸い取られそうな、凄まじい踊りだったのだ。
「……素晴らしい! なにか褒美にとらせよう。何がいい? なんでもやろう。国土でも身分でも宝石でも、なんだって望むものはやろうじゃないか」
王がやっとのことで口を開き、手を叩く。
「なんでもくださるのですね?」
「そう言っているだろう」
「誓ってくださいますか?」
「ああ、誓う」
「二言はございませんよ」
「しつこい」
ならば、とサロメは微笑み、はっきりと大きな声で、強請った。
「ヨカナーンの首を下さい」
しいんと場が静まり返る。
名も無き同席者達がどよめく。――あの踊り子は人の生首を所望だ。気が狂っている。
しかし王は、そんな異様な場の雰囲気を物ともせず、にたぁと笑い、我が意を得たりと頷いた。
「ああ、そんなものでよいのか。ならば、すぐにやろう。お前に、あの者の首をやろうじゃないか」
(……? なんだか、変……)
王の台詞を聞いた琥珀は心の何処かが引っかかるような気持ちになる。
だが、琥珀が何が変なのか言い表せず、悩んでいる間にヨカナーンはランスに連れられ、広間に引っ立てられてきた。
鎌を持ったセイジが、後ろ手に縛られているヨカナーンの側に立つ。
「なんで死なせたいんだ!?」
セイリューが叫んだ。
「どうせなら、生きたヨカナーンを貰えばいいじゃん。いつか振り向いてくれるかもだし。殺したら彼は永遠に手に入らなくなるぜ!」
サロメはただ悲しく笑った。
――どこかでわかっていた。彼は永遠に振り向いてくれないと。だから、殺してしまいたい。死んで物言わぬモノになれば、己のものになるのだから。物言わず抵抗しないヨカナーンなら、口づけだって何だって自由にできる。
その目は、セイリューの考えを羨むような蔑むような色をしていた。
――生きていてもこちらを見てくれないんだもの。同じ見ないのならば、死んで思い通りに出来るヨカナーンがほしい。
「黙れ衛兵。さあ、早くその反逆者の首を斬れ!!」
王が叫ぶ。
セイジが鎌を振り上げる。首が落ちるところに、ランスが銀の鉢を構える。
「やめて!」
兵士の群れからラキア・ジェイドバインが駆け出す。セイリューがラキアに駆け寄り、くちづけをする。
「滅せよッ」
光り輝き出すラキアが、セイジとヨカナーンの間に割って入る。
「ダメだ!」
「……心配するな」
セイジはごろんと銀の鉢にかぼちゃを転がした。
「シオン」
息を呑むサロメに、セイジはかぼちゃ入りの銀の鉢を渡す。
「物言わぬ南瓜とは話し合えない」
「……話し合う必要なんて」
「振り返れ。まだ間に合う」
「うるさ……」
サロメが泣きそうな顔になった時、
「何をぐずぐずやっている! さっさとその男のそっ首を落とせ!」
カカカ!
セイジの鎧に宿ったジャックオーランタンが笑った。
「王様、御免!」
タイガが走り寄り、セイジの背後から剣を振り下ろそうとした王の胴にバトルスプーンをぶち当てるのと、アイオライトの水鉄砲が温泉水を王の顔に浴びせたのは同時だった。
「グギャッ」
「本性あらわしやがったな。オーガだ、皆逃げろ!」
いつのまにか、広間の入り口に立っていた凛玖義が高らかに声を上げる。
「りく!」
琥珀が顔を輝かせる。神人がそばに居ないとどうにも落ち着かないのが、精霊というものだ。
パタパタと駆け寄り、トランスを受ける。
即座に琥珀が作り出したオーラで、オーガの注意を引き、少しでも避難の時間を安全に保つ。
「誰かが首を斬られるエンドは迎えずに済みましたね」
白露はヨカナーンを退避させながら、ほっと顔を緩ませた。
ヨカナーンはそのまま、何も言わずに凛玖義の横を走り去る。サロメはその様子を、泣きそうな顔で見送った。
「……所詮は、そうか」
「ここまで盛大にフラれたら、踏ん切りもつくかね」
サロメの呟きと表情を見た凛玖義は苦笑し、肩をすくめた。
「王がオーガだったのか。恋とはどんなものでしょう……なんて訊いている余地はなさそうだ」
セラフィムがタイガの頬に唇を寄せる。先ほどの奇襲には、トランスが間に合わなかったのだ。
「白ウサギの懐中時計の出番は無かったようだな」
セイジが鎌を王に向けたまま呟く。いつの間にかトランスを済ませたらしく、ぼんやりとセイジとランスは光っている。
「鎌は処刑道具じゃなく、ランスを守るために持ってきたんだ!」
セイジに守られているランスは、顔を怯えて硬直しているサロメに向けた。
「シオン、結末はオーガを倒してからゆっくり変えても良いんだ。現実でな」
というと、真剣な表情で詠唱を始める。
「ランス、俺もシャイニングアローで守るよ」
神人だけに守護を任せる訳にはいかない、とラキアが己の回りを守護する光輪で囲む。
「いざとなれば命は平気な世界! いくぜ!」
タイガが吠えて、王に殴りかかる。
オーガも剣を振り回して抵抗したが、とうとうランスの放った灼熱が王を包んで焼きつくした。
火柱のようになって、オーガが断末魔を叫ぶ。
「ヘラ!!」
思わずシオンが叫んだのを、ランスは見逃さなかった――。
●飛び出した現し世で見た顔
「ヘラ!!」
叫びながらシオンは夢から醒めた。
「えっ……」
目覚めた場所は、あの砂塵の国の宮殿ではなく、見知った自室だ。
あっけにとられたシオンは、きょろきょろと周囲を見回そうとしたが、
「このバカぁ!!」
涙で顔をベタベタにした少女に抱きつかれて叶わなかった。
「ヘ、ラ?」
「あんた、覚えてないの? ずうっと眠ってたんだから!」
と身を離して怒鳴る少女。後ろでは、真っ青な顔にようやく血の気が戻ってきた両親が、安堵の表情で頷いている。
「なんか、ごめん」
「……いいのよ。あんたが無事でよかったわ。ウィンクルムの皆さんにお礼言うのね」
「え……ウィンクルム?」
逆側を見れば、シオンと同時に夢から放り出され、目覚めた十人もの男が所在なさげに佇んでいる。
夢で見ていた顔と全く同じだ。シオンは頬を赤らめ、頭を下げた。
「あ、ありがとうございます……」
ランスはヘラを顎でしゃくると、
「誰がお前の身を一番案じたか、見てみろよ」
と言った。
「……う」
この場に、ヨハンは居ない。
だが予想に反してシオンの顔はどこか晴れ晴れとしていた。吹っ切れたのだろう。
「誰も夢で死ななかったし、オーガは倒せた。めでたしめでたしってことでいいのかな」
ラキアが呟く。
ここでシオンが石化せず、夢から目覚めたのだから、オーガの目的である標的の絶望も阻止することが出来たのだろう。
「……恋愛って難しいなぁ」
アイオライトが、むぅと口を尖らせる。
白露がそれを見て、優しく言う。
「そうですね。帰ったらきちんと話しあいましょうか。いいお勉強のきっかけですよ」
| 名前:アキ・セイジ 呼び名:セイジ |
名前:ヴェルトール・ランス 呼び名:ランス |



エピソード情報 |
|
|---|---|
| マスター | あき缶 |
| エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
| 男性用or女性用 | 男性のみ |
| エピソードジャンル | 日常 |
| エピソードタイプ | ショート |
| エピソードモード | ノーマル |
| シンパシー | 使用不可 |
| 難易度 | 普通 |
| 参加費 | 1,000ハートコイン |
| 参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
| 報酬 | 通常 |
| リリース日 | 10月05日 |
| 出発日 | 10月14日 00:00 |
| 予定納品日 | 10月24日 |

2014/10/13-23:52
こっちもプラン出したよ。今回は冷や冷やもんだねぇ。
成功するといいな。
2014/10/13-23:49
プランは提出したぜ。
後は上手くいくように祈っている。
相談その他諸々お疲れさまでした。
良い結果が来ますように!
2014/10/13-19:58
凛玖義さん、初めましてー♪
セイリューさん、久しぶりによろしくでーすっ
セラフィムさんもおかえりなさーい
一応仮プラン提出だよっ
ヨカナーンさんを見張るのと、原作と違う動きをするキャラに警戒すること以外、上手く書けてないけど…
ほんとハッピーエンドが難しいよねー(ごろんごろんごろん ←悩みながら転がってる
2014/10/13-03:16
えっと・・・ただいま(照)タイガと交代してきた
凜玖義は久しぶり。セイリューで満員うまったな。もぐらに続きよろしく頼む
本当にな・・・。落としどころは悩むが
会議室で皆の行きたい方向を合わせれる分、まだプランは書けるよ
やはり使えなくてもインカムは持っていってみる
様子はみるにしても、どう質問して引き出すとか決定打が浮かばない。〆切まで考えるが。
あまりするのも不信感もたれそうだしなぁ
2014/10/13-00:18
セイリュー・グラシアだ。
間際の参加でゴメンよ。
ざっと相談内容には目を通したのでその方向でいくつもり。
王妃ヘロディアスがいると思うので、彼女の様子を見に行くつもりさ。
落とし所が難しいかな・・と思いつつ。
2014/10/12-02:01
遅れちゃったかな、ゴメンね。
アイオライト君は初めましてだね。凜玖義っていうよ。
アキ君、セラフィム君はお久しぶりだね。改めてよろしく。
インカムは僕も欲しいねぇ、当日まで誰がトラオム・オーガかわからないし。
持ってこられなかったら、笛を持って知らせようかな。
首を斬らない代わりに、カボチャを渡すのはアリだし、
シオン君の事を考えたらヨカナーンさんは守る方がいいね。
僕は今のところ、牢屋の監視役か香油売りの商人。
琥珀ちゃんは兵士か村人をする予定だよ。
2014/10/12-00:51
タイガ君おかえりーーっ。
セラフィムさんが王様に会いに行って、アキさんがサロメ(シオン)に行くなら、あたし、ヨカナーンの様子を見に行こうかなあ。
そしたら、メインの登場人物全員抑えられるし。妙な動きがあったとしたら、分かりやすいかなって。
その他大勢にオーガがいる可能性も捨てきれないけど。
斬首はやっぱりみんな避ける方向なんだね。
あたしもなるべくそうしたい。ヨカナーンさんを守ればいいのか。
>踊り子
あはは、ばれてたーー♪
うしろのパパの方から「アイは絶望的に色気がない」とか聞こえるけど、気にしなーーい♪
>懐中時計
おー。すごい。行動の幅が拡がりそうだねー。
あたしは……濡れ透け水鉄砲なら持ってます(意味ない)
2014/10/12-00:03
これたー!戻ってこれたうおおおお!!!!
はあ。よっすセラの相棒のタイガだ。PLの状況が改善して今後マメにこれるようになりそうだ
>斬首は
俺もセラにみせたくねぇしそう持っては、いきたい
基本的に、物語から外れ次第、割ってはいるつもりではいるけどなー(うーむ)
>セイジ
>シオンの気持ち
いいと思うぜ
シオンのこと気にかけてるしガイドのふりがあって親身になるのは打開できそうな感じした
うまくいったら現実もどうにか打開できそうだしさ(気持ち的に)
カボチャは(笑)それにぶつけて次の恋へ振り切れ!とかな
時計は便利アイテムだな・・・!?夢でも命にかかわるしそりゃ助かる!
>アイオライト
>踊り子
あーー。セラからの伝言
『言うと思ってたよ(微笑)と、僕もよく考えたら「ダンス」のスキルもないし
習うかもしれない
それかもう演奏家(吟遊詩人)でやった方が腕前もあるし
現実のシオンの想い人もヴァイオリンしてるしいいんじゃないかと。
ヒートアップした気持ちの静め役とかね
今のところ両方書いてる。明日にはもっとまとまりそう』
2014/10/11-19:41
俺には踊り子は肩幅的に無理なので、なんとか城に雇われた形で近づきたい
まあ…無理ならシノビこむか割って入るしかないけどな
ヨカナーンに面会に来たシオンと少し話し合ってみたいんだよ
まずはシオンの気持ちを聞くところからさ…
それを知った上で、このサロメの物語をハッピーエンドに持っていきたい
丁度人物が重なってることだし、シオンにとっては現実とオーバーラップさせやすいだろうしさ
できたら、斬首はしない方向を希望している
首の代りに、カボチャでも渡してやるよ(笑
それは兎も角、
オーガとの戦闘を含めて、俺は”一度だけ攻撃をなかったことにできる時計”を持っていく
シオンも仲間も含め、「白ウサギの懐中時計」が一度だけ致命傷から守ると思う
2014/10/10-22:07
わーい、ぼっちじゃなくなったー♪
今回もよろしくおねがいしまーす。
考えすぎて、頭から煙が出そうになってたところだから、うれしいなー♪
オーガにとってもハッピーエンドは望ましくないと思うから、物語がハッピーエンドに向かえば、オーガは自動的に暴れるかなにかしてくれるかなーって。
オーガにはそんとき対処すればいいかなって思ってた。
恋愛が完全成就でなくとも、希望をもてる展開にすれば、一応ハッピーエンドかなあ。
ってなわけで、「サロメがヨカナーンの首を望まない」「それで満足する」展開に持っていきたいなーとは思ってるけど……。
まだぜんぜん具体的になにも決まってなかったり。
はーい、あたしも踊り子さんするするー♪
したいだけーーー♪
2014/10/10-20:26
オーガは「トラオム・オーガ」。
夢の中で物語の登場人物になり、特殊能力を使ってくる。
夢の外では弱いが、夢の中では強いと思っておけば良いと思う。
他のハロウィン関連のエピにも出ているな。残念ながら現段階では弱点は不明。
2014/10/10-19:08
連投ごめん
3連休の内に安定してこれる自信がない(うまくいけばマメにこれるけど)
からプラン作成しておくよ。大丈夫だったらまたくるし、返信する
いいだしっぺとして、踊り子と兵士で王を探りつつ
話をみるつもり
オーガは見つけたらトランスして火力押しのいつも通りかな。連携はしたいけれど
オーガのタイプもわからないから作戦考えづらいね
2014/10/10-18:56
4人あつまって心強くはなったね。皆、よろしく頼むよ
まずサロメ目線でのハッピーか、世界(読者?)のハッピーかがわからないんだよな
でもバッドの方へオーガは働きかける。
絵本と違ってくるところを見極めればオーガはわかりそうな
ということはサロメのハッピーが、ハッピーエンドか・・・?
延々繰り返しそうだな(苦笑)
これで物語通りスムーズにいくなら不安になりそうだ
あと出てるNPCの中でオーガそうなのは
物語通りだったら王で(無傷)
簡単に成就や最後捨てて逃げられる事になったりしたらヨカナーンが怪しそう
>どうしよう
分からないうちは聞き込みして話を任せるのはどうだ?オーガを倒すつもりでさ
失敗したら元も子もないし。
誰が違うか探って、オーガ対処しつつ物語を見極めようと思ってる
>サロメ対処
夢と認識してるだけ説得や「現実じゃない」っていえるし、絵本も話せるし
協力者にはならないだろうか
>持ち物
連絡取り合うようにインカムって夢でつかえるかな・・・?
だめなら万能アイテムとして懐中電灯と手鏡でも持ってくつもり
2014/10/10-10:51
アキ・セイジだ。
なにをもってハッピーエンドとするかは意見が分かれるところだと思う。
ちなみに俺も首に口づけする展開はサロメにとってのハッピーエンドだと思っている。
望むエンドを各自が考えた上で、
その必要要員がオーガだった場合の対処方法(オーガかどうかの確認と討伐方法)を考えておくのがいいと思う。
関係者がオーガでなければそのままハッピーエンド、オーガであっても倒してしまって解決、にできるからな。
プランに戦闘方法が書いてあれば勝率も上がると思うんだ。
アイオライトさんの「3」でいうと、ヨカナーンがオーガかどうか確認するってこと。
もっと言えば、関係NPCの全てに対しオーガかどうかの確認がしたいんだけど、
それだとストーリーをハッピーエンドにするよりオーガ討伐に重点が移ってしまうから、
背後が「エピソード的な面白みがへっちゃう!」と言うので困っている。
どうしようか?(ニガワライ
2014/10/10-00:32
こんばんわ。僕セラフィムとシンクロサモナーのタイガだよ
血なまぐさい絵本だけど事件が気になって引き受けさせてもらった
まずは原作通りがハッピーエンドかどうかで意見わかれそうだよね
僕はバットだと思ってたけど・・・だとしたらどうバットになるんだ・・・?(呟き)
恋を成就させれればいうことないんだけど。各人に説得いるよね
今の所、動こうと思ってる案は王への目くらましかな
サロメと同じ踊り子の立場で、気を引くというか・・・
『(俺はセラにはそーいうのやってほしくねぇけどな・・・)』
怪しい言動も探れそうだし、タイガは兵士で警護
口付けのシーンで嫉妬にかられなければいいんだろう?そこで気を張ってればと
オーガが分かるかもしれないし
2014/10/09-19:21
うん、なにも考えられていない(開き直った)
とにかくハッピーエンドだよね。で、ある程度ハッピーエンドを区分することから初めて見る。
サロメ(シオン)の視点からのハッピーエンドっつうと……、
1.原作通りの展開
たぶんハッピーエンドだと思うの、サロメにとっては。
傍から見るとメリバってゆうか、あまり気持ちいいものでないかもしれないけど。
2.サロメがヨカナーンを綺麗に諦めて新しい恋をする
説得系になるのかな、これはこれで難しそうな。
すくなくともうちのパパには無理。あたしも当然無理。
3・ヨカナーンがサロメに恋をして、両思い
オーガがヨカナーンだった場合、これはどうやったって無理だよね
そうでなくとも、難易度高そう。
途中まで原作通りの展開でも、王様がヨカナーンの首を斬らなかったら、たぶんバッドエンドだよね-。
うーんどうすればいいかわかんにゃいよー(ごろんごろん)
2014/10/09-00:13
えーと、遊んでないで考えられるだけ考えておこうっと。
オーガ見付けるの難しそうだから、物語をハッピーエンドに持ってく方向をとりあえず目指すのがいいのかなあ。
だけど、ハッピーエンドってどんなだろ(悩)
うーん……元のままでもある意味ハッピーエンドっていうか、メリバっていうか……。
誰も死なずに、かつ、みんなが満足するってのかなあ……。
わかんにゃい(酷)
2014/10/08-23:45

