夢見る魔法(こーや マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●みらくる
「……て……か……。きこ……ますか……?
聞こえて、いますか……?
今……貴方たちの心に……直接、語りかけています……」
「なに、この声……?」
「いいですか……?貴方たちの奥底に眠る力を……解放します。
これが……私に残された、最後の力です……。
さあ……魔法少女たちよ……目覚めるのです……」
「どういうことなの……胸が、熱くなってくる……!」
 目の前で繰り広げられるやり取り。
ミラクル・トラベル・カンパニーのツアーコンダクターは異世界に来たような錯覚に陥った。
 無理もない。
なんたってこの三文芝居、主演が40代男性、助演が30代男性というヘヴィさ。
しかもどっちもムキムキ、むしろガチムチ。
ツアーコンダクターの瞳から生気が抜け落ちるのも当然である。
 しかし、主演俳優(仮)と助演俳優(仮)はその反応が嬉しかったらしい。
「おお、この程度で済んだか!俺達もまだまだいけるな!!」
「まだまだ研究の余地はあるが、合格ラインだったっていうことか!!」
 なんだよ、合格ラインって。
しかもこの程度で済んだって、もっとひどい反応を想定した上でやらかしたってことか、訴えられるぞ。
「あの……サバイバルゲームのお話だって聞いてたんですけど、これは精神的な意味でのサバイバルですか?」
「いやいや、間違いなくサバイバルゲームだ(ずっきゅーん決めポーズ)」
「そうさ。我々が生み出した新たなるエンターテイメントへさ(ばちこーんウィンク)」

 つあーこんだくたー の めのまえ が まっくらになった。


●ぱんどらのはこ
「いえね、確かにサバイバルゲームではあるんですよ。
ただ、その……ちょっとといいますか大分といいますかかなりといいますかむしろ全部といいますか、変わってまして」
 ツアーコンダクターの目は泳ぎっぱなし。
あまりの様子のおかしさに、君はパートナーである精霊と顔を見合わせた。
「その、ね。主催者達がいつも通りサバイバルゲームをしていたら、突然、魔法少女になった人が出たらしくてね」
 突然、魔法少女になるってどういうことだ。
既に話は理解出来ない。
「普通、誰かおかしいって思うじゃないですか。
けど誰も思わないどころか、皆が魔法少女になってしまったそうなんです」
 意味が分からないよ。
 ツアーコンダクターがチラシを差し出す。
「それで全く新しいサバイバルゲームを開催するそうで……ええ、はい、うちに話を持って来られたんですよ」
 ハハと、目を泳がせたまま乾いた笑い声を上げるツアーコンダクターに一体何が起きたというのか。
気にはなるが、詳しく触れると彼が壊れちゃいそうな気がしたので君達は触れないでおくことにした。
優しさプライスレス。
 精霊が受け取ったチラシを、君は横から覗き込んだ。
なにやらファンシーでポップな感じだが、実情を考えると世にも恐ろしい。


『どっきどき☆まじかるサバイバル』

・参加費は一人につき350ジェール(はぁと)
ペア制だから必ずパートナーと来てね!

・ちゃーんと変身コスチュームは用意しておくから安心してね♪

・ルールは簡単!
水鉄砲で他のペアとバトル!
打たれた人は即失格、二人ともが撃たれたら敗退になっちゃうからね!
中身は色水だから、当たったらすぐ分かるぞ☆
当たってないとか嘘ついたらダメダメぷんなんだからね!

・必殺技の用意は忘れないようにしておいてね!
困ったときは先輩達が秘密の魔法を教えてあげちゃうぞ☆

・優秀者には素敵なスィーツが待ってるぞ☆


 隅っこに印刷された写真はムキムキのおじ様方がいい笑顔で大集合。
ただし全員がふりっふりのぷりちーな衣装を着用している。
小さい子が見たら泣くぞ、これ。
 君はごくりと、唾を嚥下した。
恐ろしい、確かに恐ろしいのだ。
しかし、怖いもの見たさのあまり君は参加を考えてしまった。
これが絶望への一本道だと、分かっていながら。

解説

魔法「少女」の概念に関しては突っ込んではいけません

●参加費
一人につき350jrとなっております。


●まじかるろじかるぱわぁ
ペアのどちらかは必ず魔法少女になってください。
もう一人はお供のマスコット、悪の幹部なども出来ます。
また、二人とも魔法少女でも可です。

その上でサバイバルゲームを行っていただきます。
ルールは簡単、敵味方で分かれて撃ち合い、当たったら失格。
神人と精霊のペアでの参加となっております。


・場所
二階建ての小さい廃ビルです。
エレベーターやエスカレーターの類は動いておりません。


・貸衣装
なんでもばっちこいです。
魔法少女らしいふりっふりのワンピースから
よくわからない生き物のきぐるみも揃っております。
どんなサイズだって心配しないで☆

魔法少女お約束のステッキやそれらしいコンパクトなども完備です。
過程はとばしますが、メイクさんもいます。
すごいですね。

・水鉄砲
見た目はファンシーでしゃらんらな感じです。
ペア毎に違う色の色水になっております。
希望がありましたらプランへお願いします。
色がかぶった場合はなんとかします、気合い。

・すぃーつ
最後まで生き残った、より多くのペアを倒した、なんかすごい魔法の使い手だった
などの優秀者にはご褒美があります。
超一流パティシエの手によるフルーツ盛りだくさんのケーキです。
ホールですが二人での食べきりサイズとなっております。

あーんとかしちゃって、いいんですよ?
ただし魔法少女の格好のままになりますが。

●その他
エピソードの都合上、ステータスにおける口調はほぼ反映いたしません。
(独り言や心の声、お着替え中は除外します)
その為、口調やキャラ設定をプランにお書きください。

ゲームマスターより

怒られるラインを探りつつ、今日もこーやは戦うのであった

リザルトノベル

◆アクション・プラン

羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)

  心情
お茶会で女装した時に思ったんだ
こういうのは開き直った者勝ちだって(涙目
ご褒美のケーキを食べる為に絶対生き残りたい

設定
魔法少女スイーツぷりんせす☆
さらわれたお友達(ご褒美のケーキ)を助けにやってきた

衣装
苺パフェをモチーフにしたふりふりドレスワンピース、ティアラ
スプーン型のステッキ

必殺技
らぶスイーツぱふゅーむ☆
ステッキから甘ったるい匂いを振り撒き戦意を削ぐ

みんなに甘い夢と魔法をお届け!魔法少女スイーツぷりんせす☆だよっ(ういんく
大丈夫、ぶーちゃんの事はボクが必ず守るから
ボクを助けてくれた…?あ、ありがとう、キミは一体何者なの?

【記憶】で建物の構造を把握しつつ隠れながら逃げ回る
色水:ピンク



柊崎 直香(ゼク=ファル)
  なぜ魔法少女同士戦わねばならぬのか
私の姿を見ればおわかりでしょう
黒衣は血に染まり純白の面影もなく
ただあの――光の世界に生きる少女達が妬ましい
私はもう彼処へ戻れない。だから貴方も

闇堕ち系魔法少女+ナオカ+
7月8日深夜0時より放送開始
「貴方もこの赤で、穢してあげる――」


準備中に零して服汚れちゃったよ、な水鉄砲は赤色水
黒フリル魔法少女だよ

開始と同時に二階を目指し、上方での待ち伏せ狙い撃ち
中身水だから軌道は下だし撃ちやすい
ファルファル邪魔だね、頃合い見て盾にしよ
「さよなら私の獣。仇は必ず」
仲間の死で覚醒するよー
「私の最期の白の力【乙女の恋心】!」
適当に乱射。恋心は激しいね
周囲は鮮血に染まることでしょう


アイオライト・セプテンバー(白露)
  やったっ。あたし、魔法少女になってみたかったんだー♪
青の色水使いたいっ
あたしの名前のアイオライトみたいな色のやつ
衣装も青色でそろえたいなっ
決め台詞は「迷えるあなたの人生の羅針盤になっちゃうぞ」きゅんきゅん♪
必殺技は「アイオライト・ミルキー・フラッシュ」きゅんきゅんきゅん♪
相手は死なない
一般スキル「ダンス」で踊りながら可愛く決めちゃうもん☆
「みんな今日はありがとー♪」

フルーツケーキは食べたいけど(パパにあーんしたげたい)、水鉄砲は自信ない
以前すずらん通りでやったことあるけど
とにかく可愛く楽しくやれたらいいよね
負けても記念写真撮れたらそれで満足

口調はいつもどおり
設定もいつもどおり、無駄に元気っこ



柳 大樹(クラウディオ)
  紫の色水。

衣装:
フリフリふわふわバレエ衣装みたいなの。
眼帯が浮かないように、首や腕、脚等の露出部分に包帯を巻く。
テーマは傷だらけの魔法少女。
エクステ付ける。

設定:
親友を助ける為に自らも魔法少女となることを決意した。慣れない戦いで、体はボロボロ。
今は、助け出す際の怪我で昏睡している親友の目が覚めたときに、平和な世界を見せたくて戦う。
海の力を借りて戦う。

わたしは、戦う。あの子の為に……!
負けるわけにはいかない、勝たないといけないの。
大いなる海の力をその身に刻みなさい!

(妹が見ていた魔法少女ものだと、こう(ステッキ持った手首を返し)だっけ?)

ケーキを食べるなら、クロちゃんにあーん、の指導をする予定。


ラヤ(ウルリヒ=フリーゼ)
  黒と青基調のふりふりゴスパンク、星の飾りが沢山
あるなら腰までウィッグも借りる
一人孤独に戦い続ける、闇の力を借りた魔法少女という設定

うふふーまた水鉄砲だねウル♪
色水は黄色にするー、必殺技にあわせて撃ったらきっとお星様に見えるよ!

ミラクル・トゥインクル・ウィンクルム☆ミ
この愛と死を運ぶ魔法少女ラヤが来たからには、みーんなぶち転がしちゃうんだからねっ☆
ウルやっちゃってー!
ダークネス★スターダスト★オーシャン!(必殺技
ステラにかわってお仕置きだよ♪(きゅるるん決めポーズ
わーん台詞中なのに撃たないでよー!

危なくなったらウルの盾に
あとは…まかせたよ…

ご褒美もらえるかなー?
もらえたらあーんしてあげるね♪


 無駄毛処理についてはノーコメントでお願いします。
見えないもの、存在しないものとして頂きます様、ご理解とご協力をお願い申し上げます。


●なんだか……力が湧いてくる!
「お茶会で女装した時に思ったんだ……こういうのは開き直った者勝ちだって」
 涙を浮かべどこか遠くを見ている羽瀬川 千代は呟いた。
ぜんぜん開き直れてない気がするがきっと気のせいだろう。
 ラセルタ=ブラドッツは千代の珍しい格好とキャラを出来るだけ長く観察したい一心からガン見してるが、これって無自覚の羞恥プレイだよね。
千代は苺パフェをモチーフにした赤と白のふりっふりのワンピースとスプーン型ステッキにティアラ、ラセルタは何か汁をぶっしゃあああ!しそうな雰囲気の腐った梨のように茶色いきぐるみを着用しようとしている。
この状況下での観察をプレイと言わずして何と言う。
 それは兎も角、ラセルタも準備を整えなくてはいけない。
きぐるみもとい皮のファスナーを上げる。
すると、熱気が皮の中に篭るわけで。
「オレサマ暑いのムリ!しぬ!」
 蒸しラセルタの完成である。
ご丁寧に裏声で叫んでいるあたりに余裕を感じる。
ところで蒸した梨は美味しいのだろうか、いや、腐ってるから美味しくないか。


柳 大樹とクラウディオは無感動に眼前に現れた二人組を眺めていた。
「いつだって、私達が先を逝っているというのに!」
「そう、我々の先見を嘲笑ってくるのはいつだってお前達だ!」
と、謎の因縁をつけてきたのだ。

大樹がバレリーナを思わせるふわっとした衣装を選んだ所までは良かった。
股間に白鳥のお約束を勧めてくるメイク担当者を跳ね除け、自前の眼帯だけが浮かないようにと肌の露出部分に包帯を巻き、エクステで髪を長くした、ここまでは良かった。
大樹がクラウディオに黄色いネズミを思わせるきぐるみを押し付けた途端、この二人組が現れたのだ。
フリルなどで若干、可愛らしく見せようとしているが全身を覆う黒いボディスーツ(しかも体のラインが出てるので目に猛毒)に高い位置でのポニーテール、そして眼鏡の男A。
青いハリネズミらしき男B。
間違いなく怒られるレベル。
「何度だって言ってやる!我々、えすーえーじーえーセー

―暫くお待ちください―

「何だったんだろうね、今の」
「どこぞの狂信者か何かだろう」
「そっか、なら仕方ないね」
 そんな会話をしながらクラウディオはきぐるみの内部へin。
大樹はファスナーを閉めてやってから、正面へ回ってマスコットへ華麗に変身した相方を眺める。
黄色くふっくらしたシルエットに、赤い頬、シャープな尻尾がアクセント。
本来の面影は皆無、むしろあった方が怖い。
「……ぷっ、あはははははははは!」
 大樹が崩れ落ちるほど笑うのも無理は無い。
が、クラウディオは驚いていた。
笑い声に感情が篭っていたから。
大樹の声から感情を読み取れたことなど、今まで無かったから。


 アイオライト・セプテンバーはうきうきわくわくしながら衣装を吟味していた。
魔法少女になってみたかったアイオライトにしてみれば今回のイベントは渡りに船、魔法少女に杖だったのだろう。
名前に合わせて青い衣装で菫の紫に近い青で揃えようと物色中。
 そんな彼女じゃなかった彼を白露は見守る……というにはいやに緊張した面持ち。
まあ何を着せられるか分かったものじゃない以上、それも仕方ないだろう。
魔法少女ではないことを祈るのみだ。
 白露の心中を知らないアイオライトは腰の大きなリボンとオーガンジーを幾重にも重ねた青い衣装に決め、ちょいちょいと手招きで白露を呼ぶ。
嗚呼、一体、何を着ろと言われるのか。
「前に見たアニメでね、普段は変な生き物だけど、いざとなったらイケメンに変身してヒロインを守ってくれるのがいたんだよ」
「……つまり?」
「パパの好きなアヒルリーダーっぽい着ぐるみ着て、あたしを守ってね☆」
 いいところで牛乳を飲んで変身(脱皮)して、王子様のように助けて欲しい。
その上で助け終わったらまたきぐるみに戻って―
アイオライトからの要望に、白露は心底ほっとした。
「パパ、プレストガンナーだから水鉄砲得意でしょ。がんばれー♪」
 たとえハードルをガンガン上げられても生ぬるい牛乳を飲むことになっても、魔法少女になることを考えたら遥かにマシである。


 白露が懸念した魔法少女化……今、まさにそれを強いられようとしている精霊がいた。
「僕と契約してるんだから魔法少女になってよ」
「断固拒否する」
 黒い髪に黒いフリルを基調とした衣装でありながら、どこか白く見える柊崎 直香とゼク=ファルの攻防。
ここで魔法少女になれば魂を持っていかれることになる、それを理解しているゼクは静かに、けれど全力で拒否する。
「ムキムキウィザードなのはなんのためだよ」
「少なくともこの為ではない」
「じゃあ、いつ目覚めるの?今でしょ」
「その理屈は絶対におかしい」
 折れる気配の無いパートナー。
やれやれと直香は溜息をつき、おもむろに水鉄砲を弄る。
すると、うっかりトリガーを引いてしまったらしく赤い色水が噴き出てその衣装を濡らした。
うん、返り血を浴びたように見えてちょっと怖いですよ、直香さん。
お願いですからその格好でニヤリと笑うのは止めてください、なまじ可愛いだけにマジ怖い。
「しょうがないにゃあ。お供の闇に添いし獣役ね」
 そう言って直香が指差した先には熊のきぐるみ。
「普通に熊の着ぐるみって言え。あと季節考えろ」
 大丈夫、きぐるみ率高いから安心していい。
ただ見た目が暑苦しくてきぐるみ役だけがしんどいだけだから。
「魔法少女の衣装は涼しいよ?」
「二択かよ」
 魔法少女(精神への負担)かきぐるみ(肉体への負担)ならば迷わず後者である。
ゼクが置かれたこの状況下で前者を選ぶのはただのドMだ。


「うふふー、また水鉄砲だねウル♪」
 カオスな状況に見合わぬ爽やかな笑顔でラヤは、がしゃこんと劇鉄とカートリッジを兼ねた水鉄砲のタンクを引く。
タンクの中の色水は黄色。
必殺技にあわせて撃ったらきっとお星様に見えるよーとラヤははしゃいでいるが、既に別の意味で星が見えている参加者もいるので多分丁度いいだろう、多分。
「また水鉄砲か。今回は服溶けないからいいけどさぁ……」
 ラヤに対して浮かない様子のウルリヒ=フリーゼが憂鬱そうに呟く。
憂鬱にもなるだろうけど仕方ないね、魔法少女だもんね、ファイト。
「ラヤなんか女装ばっかしてない?ウルリヒさん、ラヤくんの将来がとても心配なんだけど」
 胸の内に秘めるはずだった思いが口からしっかり放たれてしまったのは、あまりにもラヤが楽しそうに必殺技の練習をしているからだろう。
 黒と青を基調としたゴシックパンクの衣装にはいくつもの星飾りが付けられていて、煌びやかだ。
腰までの長さのロングストレートのウィッグまでつけているパートナーの心配をするのも当然といえば当然。
 とはいえ、他の精霊達を思えば自分などまだいい方だろうということもウルリヒは理解している。
ヘソ出しで黒いコート、なんだか風速28メートルまでなら熱唱できそうな気がするスタイルは通気性抜群。
自分の体のことは気にせず、ラヤのことだけ心配できるという彼は(比較的)幸運だ。
なんといったって、魔法少女でもきぐるみでもなくちょっとイタイだけの格好ですんだ彼は(現時点では)一番傷が浅いのだから。


●私達は、負けない!!
「みんなー!今日は来てくれてありがとーーーーう!ルールの説明をするから、よく聞いてねー!!」
 ガチムチでスキンヘッドに豊かな顎髭と、厳つい要素しかない推定五十代男性の魔法少女姿を見たがる物好きがどこの世界にいるのか、どういった趣味なのか。
ステッキを模したマイクをくるりと手中で回すおっさんは魔法少女なんていう可愛い代物ではなく、いっそ上位クラスのオーガ、ギルティだと言われる方がまだ納得できる。
 おっさんの野太い声でのルール説明がスピーカーを通してビル内に響き渡る。
各参加者は予め主催者側から指示されたスタート地点から、その声を聞いていた。
散らばっている他のペアの姿は見えないが、全ペアが一階にいるらしい。
それ以外だとルール違反者は即刻退場の上、詳細は伏せられたが恐ろしい罰が待っているという、チラシには無かった説明があった。
大樹とクラウディオの前に現れた二人も、きっと今頃恐ろしい罰とやらを受けているのだろう。
「分かったかなー?私の魔法がスタートの合図だからね!それじゃあ、いっくよー!
奇跡の魔法、みらくるんるん☆まじかるんるん、自爆でどきゅーん☆」
 奇跡の魔法が自爆でいいのかと突っ込みたい自分を封じ込め、魔法少女達とお供達と寝返ったへそ出しは一斉に行動を開始した。


開始早々、逃げられない状況に陥るとはついていない。
建物の構造を把握しながら逃げ、少数での戦いになってから勝負を仕掛けるという魔法少女スイーツぷりんせす☆(千代)とマスコットのぶーちゃん(ラセルタ)の思惑は既に崩れてしまった。
行き止まりと気付かず進んだところ、敵に退路を塞がれてしまったのだ。
「わたしは、戦う。あの子の為に……!」
 敵……傷だらけの魔法少女とクラチュウ(仮名)は連携して撃って来る上に、クラチュウが大樹の死角をカバーするように動いている為、隙が無い。
親友のために魔法少女となった大樹の為にクラチュウ(ややこしいからクラウディオに戻そう)はサポートに徹しているのだろう。
 しかし、お互い身を隠すものも無い真っ向勝負。
千代達にも勝ち目はある。
 やるしか、ない。
飛んできた紫の色水を脅威のハイジャンプで避わし、そのままの勢いでラセルタは『分離』じゃなかった『覚醒』した。
つまり、腐った梨の皮から己の身を解き放ったのだ。
 華麗なる空中分解に大樹とクラウディオは驚く。
ついでに千代も驚いている。
 中から現れたのはガトーショコラをモチーフとしたタキシードにシルクハット、目元を仮面で隠した一人の男。
熱中症の危険も顧みず、持てる技能を駆使してきぐるみの中に仕込んだらしいですよ。
技術の無駄遣いってやつだね。
「私はガトーショコラ仮面!今だ、スイーツぷりんせす!!」
 呼びかけに我を取り戻し、千代はくるり、半回転。
「らぶスイーツぱふゅーむ☆」
 甘い香りと共に放たれたピンクの色水を、ぎりぎりのところで大樹が避ける。
正確に言えばクラウディオが大樹を押して避けさせたのだ。
「負けるわけにはいかない、勝たないといけないの」
「キミだけに戦わせる訳にはいかない。ボクだって戦う力を手に入れたんだ。
あの子の為に、そこまで頑張るキミを見ていられない!ボクだってぇぇぇ!!」
「大いなる海の力をその身に刻みなさい!ナミノ・リ・ピッカ2!!!」
 追撃を許すかと言わんばかりにクラウディオが乱射。
態勢を立て直した大樹も呼応するようにトリガーを引く。
避けられない……そう踏んだラセルタは自らの体で千代を庇い、天井めがけて水鉄砲を発射した。
「チョコレート・コーティング!スイート・レイン!!」
 弧を描き飛んだ水は、重力に引かれ飛沫を撒き散らしながら床へと落ちていく。
大樹とクラウディオを巻き込んで。
「こんな……ところで……」
「ネズミと……海の関連性が無かったのが……いけなかったのでは……」
 時代に波乗り出来なかったのが敗因かもしれない。
がくり、倒れた二人を他所に千代は己を庇ったラセルタに駆け寄る。
「ぶーちゃん!」
「俺は君を……ずっと側で見守っているよ……」
「……私、行くわ!ぶーちゃんの為にも!」
 倒れたラセルタを連れて行くわけにはいかない。
千代は立ち上がり、先へ進もうとした。
 そう、進もうと『した』のだ。
「ダークネス★スターダスト★オーシャン!」
「……え?」
 響き渡る声。
千代は己の身に起きたことを咄嗟に理解出来ず、ゆっくりと顔を胴へ向ける。
衣装は黄色く染まっていた。
「「ミラクル・トゥインクル・ウィンクルム☆」」
 さらに響き渡った声、今度は二つ。
一つは明るく、もう一つは無気力というか棒読み。
 声の主はラヤとウルリヒ。
曲がり角を手鏡で確認していた彼らは、どちらかが倒れるその時を待っていた。
 ラヤはニコニコと笑っている。
その笑みは、宿した力同様の闇を孕んでいた。
「ステラにかわってお仕置きだよ♪」


 一方、熾烈な争いを繰り広げる二組の魔法少女達がいた。
アイオライト&白露ペア、直香&ゼクペアだ。
どちらの組も二階を目指し、そして激突したのだ。
 壁を盾に打ち合うも膠着状態。
より階段の近くにいるのは直香とゼクだが、白露はプレストガンナー。
水鉄砲とはいえ銃の扱いには長けている。
下手に動くことは出来ない。
「ファルファル、ちゃんと四足歩行しないと」
 パンダのような名前だが、熊ベースマスコットのゼクの名前である。
「少しは勝つこと考えろよ」
「喋っちゃダメだよ」
「魔法少女の相棒なら喋るだろ」
「えっ、ゼク、魔法少女知ってるの?」
「あ、いや」
 パートナーとの会話では墓穴を掘ってるが、ゲームでそうする訳にはいかない。
どうするか……なんやかんや言って真剣に考えるファルファルの後ろで、血まみれの魔法少女が口角を吊り上げた。

「うーん、これはちょっとピンチかなー?」
 アヒルの後ろから、アイオライトが状況を窺う。
今はまだいいが、後ろから別の組が来れば絶体絶命のこの状況はまさにピンチ。
しかもアイオライトは水鉄砲の腕に自信が無い……となれば。
 衣装に負けず劣らずキラキラした眼差しで白露の背中を見つめる。
雄弁すぎる視線はきぐるみ越しでも分かったのだろう。
 白露は牛乳の入った水筒を出すようにアイオライトに促す。
いそいそとアイオライトは水筒を差し出すが、ここにきて二人は気付いた。
きぐるみを着たままだと、牛乳が飲めないということに。
「……このまま脱ぐしかないですよね?」
「ちぇー」
 残念ではあるが仕方ない。
牛乳を吸い取った雑巾の恐ろしさ思えば、押し通すわけにはいかない。
悪臭漂う魔法少女などいてはならないのだから。
 覚悟を決めた白露が素早くきぐるみから脱出すれば、抜け殻となったきぐるみをアイオライトが突き飛ばした。
ダミーに打ってつけだったからだが、愛着があったのか白露は「アヒルリーダー……!」と小さく悲鳴を漏らした。
 びしゃ、ばしゃ。
アイオライトの狙い通りに撃って来た……タンクを引いて水を装填しなおさなくてはいけない今が好機!
白露とアイオライトは壁から飛び出した。
流石プレストガンナーと言うべきか、流れるような動作で白露は水鉄砲を撃つ。
避けられたが問題ない。
止めは魔法少女の役目だ。
「アイオライト・ミルキー・フラッシュ!」
 軽やかなステップを踏み、アイオライトはトリガーを引く。
放たれた魔法もとい青い色水。
命中を確信したアイオライトは一足早くきゅんきゅん決めポーズ。
「迷えるあなたの人生の羅針盤になっちゃうぞ☆」
 真っ直ぐ向かってくるそれを避けようと、ゼクがバックステップしようとしたその時―
「逝け、ファルファル!突進だ!」
 何かを蹴ったような音がしたかと思いきや、バランスを崩したゼクはきぐるみのせいで立て直すことも出来ずそのまま転がる。
近くにいた白露を巻き込んで。
「さよなら私の獣。仇は必ず」
「パパ!!」
 アイオライトが倒れた白露に駆け寄る、その隙を闇に堕ちた魔法少女は見逃さなかった。
「私の最期の白の力『乙女の恋心』!」
 どこかで聞いたような呪文と共に、直香の水鉄砲から色水が放たれた。


●これが、私達の最後の魔法!
 二人だけとなった一階をラヤとウルリヒが歩いて行く。
目指すは二階。
『この愛と死を運ぶ魔法少女ラヤが来たからには、みーんなぶち転がしちゃうんだからねっ☆』
 物騒極まりない標語で一階にいた魔法少女を片っ端から倒していった。
手鏡による確認はそれを可能とするだけの効果があったということかもしれないが、一人孤独に戦う魔法少女というよりも一人邪悪に戦う魔法少女の方が正しい。
しかも一人孤独に戦っていたのはラヤではなく、『ウル、やっちゃってー』の合言葉でウルリヒさんが頑張りました。
『やるの俺かよ!』という突っ込みは闇の力で抹消。
気だるげな雰囲気を醸し出そうとしていたが、どちらかというと苦労人の雰囲気がむんむんしているのはさて置き。
 先ほどビル内に響いた野太い魔法少女の声曰く、残ったのはラヤとウルリヒ、そして直香だけだ。
この階に直香の気配が無いということは二階にいるということ。
 階段に辿り着き、すぐにウルリヒが手鏡で様子を窺う。
いた。
手鏡に小さく映る直香の姿。
踊り場の影に身を潜め、階下を窺っているのだろう。
 状況はよろしくない。
数で言えばラヤ達に利があるが、地の利は直香にある。
直香は高所を押さえている以上、攻めの姿勢にも待ちの姿勢にも転じることが出来る。

 ラヤとウルリヒは目を合わせ、頷き合った。
二人同時に階段を駆け上り、その間に撃たれなかった方が直香と対峙するしかない……それを無言のうちに確認しあう。
指でカウント。
3、2、1……二人は一斉に走り出した。
 すぐに頭上から色水が降ってくる。
二人には当たらなかったが、地面に落ちて跳ねた色水は血溜りのようで怖い。
先のアイオライト戦で飛び散った色水もあるので余計に。
魔法少女モノじゃなくてホラーに変わってるよ、こんなの絶対おかしいよ!
「なぜ魔法少女同士戦わねばならぬのか……私の姿を見ればおわかりでしょう。
黒衣は血に染まり純白の面影もなく、ただあの――光の世界に生きる少女達が妬ましい」
 階段に響く直香の声。
確かにラヤさんは見た目上は光だけどね、中身は違うよというツッコミは残念ながら直香には届かない。
「私はもう彼処へ戻れない。だから、貴方も……」
 再び放たれた色水がウルリヒに襲い掛かる、寸前。
ラヤが割って入った。
「ラヤァアァァ!」
 倒れ逝くラヤ。
ウルリヒが伸ばした手を、ラヤは掴まなかった。
「あとは…まかせたよ…」
 ぐっと拳を握り締め、ウルリヒは残る段差を駆け上る。
三度飛来する色水は高低差が小さくなった為か、先ほどまでよりも軌道が読みやすい。
 ダンッと最後の一段を踏み、ウルリヒは銃口を血塗れの魔法少女へ向ける。
「たったひとつの単純な答えだ、貴様は俺を怒らせた」
 黄が赤を押さえ込んだ瞬間だった。


 最後まで残った最優秀ペアとしてラヤとウルリヒ、インパクトが強かった上に作戦も優秀だったということで直香とゼクも表彰された。
 表彰式は、ゲーム以上に残念な光景だった。
魔法少女(男)とマスコット(男)があーんと食べさせあったりしてる訳で。
「ねぇこの格好のままだと恥ずかしい。脱ぎたい」
 ウルリヒは非常に恥ずかしそうだが、台風が来ようが嵐が来ようが規定上脱げないので諦めてください。
ふりふり衣装の男の娘にへそ出し男があーんしてる光景は、犯罪の香りがする。
「技名ディスるんじゃねえ。せめて捻れ」
 対して抗議を入れつつゼクが直香に食べさせているさまは微笑ましく見える。
衣装が赤く染まっているという一点を除けば。
 ふいに直香が他の参加者の方へ向き直り、口角を吊り上げ毒々しく笑う。
「闇堕ち系魔法少女ナオカ。7月8日深夜0時より放送開始。
『貴方もこの赤で、穢してあげる――』」
 まさかの放送予告。

「みんな今日はありがとー♪」
 フルーツケーキが羨ましくない訳ではないが楽しくやれたからいい。
アイオライトは他の参加者へ礼を言う。
「パパ、記念写真撮ろ!」
 その提案に白露は心底安堵した。
魔法少女じゃなくて良かった、と。

 大樹はステッキを持った手首を返す。
妹が見ていた魔法少女モノを回想しながら。
「ソ・ラト・ブ=ピッカ2の方がよかったかも……?」
「そういう問題じゃないだろう」
 冷静な声音で突っ込みを入れ、ネズミのクラウディオは表彰台で恥ずかしがるウルリヒを見やる。
「これが羞恥プレイというやつか」
ご尤も。
付き合わされた側がとにかく恥ずかしい魔法少女サバイバルゲーム。
その真髄はまさに『羞恥プレイ』であった。



依頼結果:大成功
MVP
名前:柊崎 直香
呼び名:直香
  名前:ゼク=ファル
呼び名:ゼク

 

名前:ラヤ
呼び名:ラヤ、ラヤくん
  名前:ウルリヒ=フリーゼ
呼び名:ウル

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター こーや
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月03日
出発日 07月08日 00:00
予定納品日 07月18日

参加者

会議室

  • [5]柳 大樹

    2014/07/07-06:35 

    直香ちゃん以外は、初めましてー。
    大樹でーす。(棒

    色水ねえ。
    そうだな、紫にでもしようかな。

  • [4]柊崎 直香

    2014/07/07-03:08 

    はいどーもー、クキザキ・タダカですー。よろしくどうぞ?
    精霊を魔法少女にするための方策を一日考えてたけど無理だったよ。

    水鉄砲の色水はとりあえず赤色希望しとく。
    衣装はたぶん黒系で。精霊のは悩みちゅう。着ぐるみでも着せるかな。

  • [3]ラヤ

    2014/07/07-01:39 

    やっほー♪ラヤとウルだよっ!
    えっと、千代おにーちゃんと大樹おにーちゃんははじめましてー(ぺこっ

    ラヤちゃんと登場時のセリフも考えてきたよ~
    言ってる間は撃っちゃだめなんだからね!

    ウルリヒ:あー、気にしなくて良いです遠慮なく撃ってください。

    ウルひどいー
    色水は~…青はアイオライトだからラヤは黄色にしようかな♪

  • いつもお世話になっておりまーす&柳さんははじめまして♪
    アイオライト・セプテンバーですっ。
    魔法少女たのしみー♪ わくわくっ。
    青色の色水希望だけど、かぶるようだったら変えるから、教えてね-。

  • [1]羽瀬川 千代

    2014/07/07-00:17 

    こんばんは、羽瀬川 千代とパートナーのラセルタさんです。
    初めましての方もお久し振りの方も、宜しくお願いしますね?

    サバイバルゲームと……言わずもがな魔法少女に
    なるのも初めてなので、謎の緊張感を感じていますが。
    ご褒美のフルーツケーキ目指して、出来る限り頑張ろうと思います。いろいろと。


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