【ジューンブライド】雨の街にて(あき缶 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●雨――サムシング・フォーを探して
 タブロスの街角で、吟遊詩人が唄っている。

 サムシング・フォーって知ってるかい?
 それを持って結婚式をすると、一生幸せに暮らせるんだって。
 古いもの、新しいもの、借りたもの、青いもの。
 六月の結婚式ってだけでも幸せになるのに、サムシング・フォーを持てば、そりゃあもう幸せ間違いなしさ。

 そんな魅惑のサムシング・フォーが一気に手に入る街を知ってるかい?
 この時期は、結婚式を控えた人たちがよく訪れるそうだよ。
 町の名前はウートゥルメール。タブロスから少し離れた田舎町。
 山間のウートゥルメールは、雨がちで空が青く晴れる日は殆ど無い。
 だから住民は、青い空にあこがれて、全部の建物を真っ青に塗ったのさ。
 ウートゥルメールは、青の街。植えている草木も青い花をつけるものを選んで育てているとか。
 今は紫陽花が見頃かな。

 そうそう、サムシング・フォーの話だったね。
 ウートゥルメールでのサムシング・フォーの探し方を教えてあげよう。
 瑠璃色の骨董品店で『古いもの』、水色の雑貨屋で『新しいもの』。
 『借りたもの』は、紺色の図書館に行けばいいだろう。
 『青いもの』? それはもう街全体が青いのだから、探せば見つかるはずだよ。

 ウートゥルメールの雨は夕立のような激しい物は殆ど無くて、ずっとしとしと振り続ける静かなものさ。
 疲れたんなら、青緑の喫茶店に入るといい。ミントティーが有名だそうだ。

 君は、その歌がどうにも気になって、気になる人を誘ってウートゥルメールへと向かうことにした。
 ウートゥルメールは少し遠い。散歩というよりは、日帰りの小旅行気分で。

解説

●概要:雨の日のお買い物散歩
 別にサムシング・フォーを探さなくても構いません。

●青の街『ウートゥルメール』
 全ての建物が外装も内装も青に塗られた街
 雨がちで、晴れ間が覗くのは本当にまれです
 青緑の喫茶店で飲めるミントティー(30ジェール)が有名

●サムシング・フォー
 古いもの・新しいもの・借りたもの・青いもの
 を各1つずつ持って結婚式をすると、幸せになるという言い伝え

 瑠璃色の骨董品店で古いもの(有償)
 水色の雑貨屋で新しいもの(有償)
 紺色の図書館で借りたもの(無償)が手に入ります
 残り1つは、青の街で探して(予想して)みてください

●予算について
 プランに予算を書き、ほしい物・飲食したいものを書いておけば
 ジェールを消費し、判定で購入できます(アイテム配布はございません)

●世界観について
 らぶてぃめっと世界では 
 男同士の結婚は社会的・文化的に認められており、ごく自然なことです

ゲームマスターより

お世話になっております、あき缶でございます。

 なにかひとつ古いもの、なにかひとつ新しいもの
 なにかひとつ借りたもの、なにかひとつ青いもの
 そして靴の中には6ペンス銀貨を

……よい雨の日を

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイヤ・ツァーリス(エリクシア)

  エリクと一緒にサムシングフォーをさがす、です。
えっと、骨董店、雑貨店、図書館、あとひとつはどこでしょう……?
お花、かなあ……。
でもお花だとすぐに枯れちゃうし……うーん……?
でもこんな風に青い街をゆっくり散歩しながら探すのは楽しいよね。
あ、でも途中で疲れたらエリクと一緒にミントティを飲むんだ。
お菓子もちょっとだけ欲しいなあ。

「青い物」は街って気がするの。
だってこんなに綺麗な青のある素敵な街なんだもの。
でもそれだとなにか違うような気もするんだ……。
うーんうーん、むずかしいなあ


木之下若葉(アクア・グレイ)
  青い街か。ちょっと見てみたいよね
アクアを誘って行ってみようか
雨の街らしいから傘を持って

青の街を眺める
濃淡の違う青が灰色の曇り空の下並ぶ様は
綺麗だけれど少しだけ不思議
淡い幻みたいだよね

ああ、唄の内容か
古いものに新しいもの…
おまじないみたいなものなのかな
幸福でありますように、って
ん?アクアどうしたの

「おや。俺が花嫁さんなんだ」
何だか母の日に花束貰うお母さんの気分だね
いや、本当に嬉しいよ
有難うってアクアをゆくり撫でながら

それなら来週また此処に来ようか
本を返さなきゃだし
それまでにアクアの好きな料理も教えてよ
俺も覚えるからさ

あ、そうだ
片手が花束で塞がってるし
「傘も半分こで帰ろうか」
相合傘。なーんて、ね



高原 晃司(アイン=ストレイフ)
  こういう小旅行もいいよな
それにサムシング・フォーなんて面白そうな事もやってるしな!
骨董店で古い物と雑貨屋で何か安い物を購入
図書館で借りる物は本かな?
だったら恋愛に関する本とかいいな!

あとは青い物か…
候補としては石とかガラスの破片とかだよな
地面を見ながら歩いてみるかな
もしくは最悪青いペンキを住人から貰えないかだよな
ただ折角だし探したいよな!

「なぁ、アイン。青い物って何か心当たりあるか?」
折角なんでアインにも聞いてみるぜ
詰まった時には誰かに聞くのが一番だしな

時間はたっぷりあるだろうしアインとゆったり歩くのもよさそうだな
静かな町っていう話だしゆっくりとできそうだ


初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
  何か幸せになるものを集めるんだと張り切ってたが……
サムシングフォーか
懐かしい、ってほど前の話でもないんだがな
いや、こっちの話だ
ほら、行くぞ。

予算は大体全部で1000ジェールくらいかね
骨董品店から見ていくか

イグニス、身に付けられるものが基本だからな?
その壺を下ろせ。
タイピン?まあいいんじゃないか?

雑貨屋と図書館回ったら一旦喫茶店へ
2人分のミントティー頼んで休憩

色々集めたな、でこれを誰に……は、俺?
……そう、か。この前婚約者に逃げられた話したからか……
で、ひとつ足りないんだが?
……なるほど、青い花束か
今すぐに、って……(思わず目の前の相方を見つめ)
あーいい、いらんこと考えた!!


スウィン(イルド)
  サムシング・フォー…全然知らなかったわ
結婚なんて遠いものに思えるけど
サムシング・フォーを探してみるのは面白そう

古い物…これ、どうかしら?意味なんてなくていいのよ
こういうのはフィーリング♪
次は新しい物…これは?エンゲージリング、なんちゃって!
借りた物…
ちょっと、武器大全なんてロマンチックじゃないわよ!却下!
結婚といえば、愛よ、愛
最後は青い物…この街にはありすぎて、逆に迷うわね
…?(イルドが拾った物を見てにっこり)
イルドも、ちゃんと見付けられたじゃない!
いいのいいの!
結婚式はいつにする?ダーリン
(ふざけてイルドと腕を組み
喫茶店にミントティーを飲みに行く)

後は…靴にジェールを入れればいいのかしら?


●青色しとしと瑠璃色世界
 青の街、ウートゥルメール。その町の入り口となる駅は高台にある。
「うわぁ……!」
 改札を出て、丘の下を見下ろしたアクア・グレイは、眼下に広がる幻想的な青の世界に嘆息を漏らした。
 しとしとと雨を降らせる鼠色の厚い雲の上にあるはずの晴天が、町に広がっているかのよう。
「青と言っても一色じゃないんだ。色んな青があるんだね」
 アクアの隣で木之下若葉が呟く。
 雨音以外の音があまり無い、静かな街へと二人は傘を広げて降りていく。
「雨の日のお散歩ですね!」
 お散歩と言うには少し遠出だが、二人は青の世界へと溶けこんでいく。
「ところで吟遊詩人さんの言ってたサムシングフォーって何なんですか?」
「んー、おまじないみたいなものなのかな。幸福でありますように、って……どうしたの?」
 若葉の説明を聞いて、ぴょんと跳ねたアクアは、
「えへへ、なんでもありませんっ」
 と舌をちょっぴり出して笑った。

「こういう小旅行も良いよな」
 高原 晃司はそびえる青の建物の間を歩きながら、精霊を見上げた。
 見上げられたアイン=ストレイフは、晃司よりも周囲の景色の方に視線を合わせていたが、話しかけられて頷く。
「ええ。観光にはうってつけの街です。……晃司はサムシングフォーの方が気になりますか」
「えっ、いや、だって面白そうだろ」
 スタンプラリーか宝探しの感覚なのだろう。晃司にとってサムシングフォー探しは立派なイベントである。
「えーと、古いものと新しいものと借りたものと青いもの……か。まずは古いものだな! あ、あった!」
 晃司は瑠璃色の骨董品店を右手に見つけ、走り出した。
「やれやれ、せわしないですね」
 苦笑しながらアインも彼の後を追う。
 骨董品店の中は、エキゾチックな古いものがひしめきあっていた。
「……イグニス、サムシングフォーって基本的に身につけられるものだからな? だから、その壷を下ろせ」
 初瀬=秀は痛む頭を押さえながら、いつもながら天然な行動を取る精霊をいさめた。
「骨董品といえば壷だと思ったのですが……確かにこれは持っていけませんね」
 どす、と聞くからに重そうな音と共に、大きな壷が元在った位置に戻った。イグニス=アルデバランは困った顔で店を見回す。
「身につけられるもの……身につけられるもの……」
 彼なりに必死だ。なぜなら、サムシングフォーを集めれば幸せになれるというのだから!
(秀様の悲劇を! 打ち消す! 結婚式の為に!! 是非ともとびきりを……)
 鼻息すら荒くする勢いでイグニスは『古いもの』を探す。
「……やけに必死だな……」
 イグニスの想いを知らない秀は、呆れたように精霊の頑張りを眺めている。
(サムシングフォー、か……)
 結婚式のおまじない。そう聞くと、まだ懐かしいとまでは風化できていない思い出が蘇る。
 端的に言えば、秀の結婚式が友人に花嫁ごと略奪された話である。
(ニガい……)
 事実は小説よりも奇なり。秀はあまり思い出したくない、と頭を振って思考を飛ばす。
「秀様! これどうでしょうタイピン!」
 思考に耽っていたので、いきなりズズイと眼前に突き出された物体に思わず秀はのけぞった。
「うお! あ、タイピンな……。まぁいいんじゃないか?」
 金とも銀ともつかぬ鈍い光を孕み、瑪瑙らしき楕円の玉があしらわれたシンプルなタイピンだ。
「しかもお手ごろ価格! では買ってきますね!」
 イグニスは素早く会計に向かった。
 店の奥では、棚に陳列された小物を、スウィンとイルドが品定め中。
「サムシングフォーなんて全然知らなかったわ。結婚なんて遠いものに思えるけど……」
 だがテーマに沿って買物をするのは面白そうだ、とスウィンはサムシングフォー探しに乗り出したのだ。
「あら、これステキね。どうかしら?」
 ふと目に止まったものを指差し、スウィンはイルドに話しかけた。
「……意味無くないか?」
 じっとそれを見つめたイルドは、素直に言う。
 それは古ぼけた懐中時計。デザインは洒落たレトロだが、金メッキは傷だらけで文字盤のガラスは曇っている。そして針は動かない。つまり、壊れているのだ。故に、とても安いのだが……。
「動かない時計を買う意味あんのか?」
 買うのにあまり積極的ではないイルドの発言を気に留めず、スウィンは時計を手に取った。
「意味なんてなくていいのよ。こういうのはフィーリング♪」
 と鼻歌交じりに会計へ行ってしまう。
「さ、次は新しいものよ。行きましょ!」

●水色ざあざあ紺色模様
 スウィン達が水色の雑貨店に入ろうとしたとき、雨が急に強くなった。
「はぁっ! 山沿いだからか天気の変化が急ねえ」
 雨から逃げ切った、と屋根をくぐって一息つく。
 傘を畳んでいると、逆に店から出て行く白いディアボロとすれ違った。彼はビニール袋の包みを濡れないようにと大事そうに抱えて、ぱしゃぱしゃしぶきを跳ね上げ、走って行く。
「大変ね」
 とヒツジのテイルスに見間違いそうな彼を見送り、スウィンは雑貨店の品定めに移る。
「うぅん、こまごまと可愛いものが多いわね!」
 目移りしちゃう、とスウィンは店の中をうろちょろ。
「へえ、パワーストーンか。……すぐ壊れそうだな」
 イルドの目に止まったのは、月石の指輪と表記されている玩具みたいなチャチなもの。
 色々な意匠があるが、石自体は小指の爪の半分くらいしかない。
 彼の声に反応して、スウィンがそそくさと現れる。
「あらっ、良いわね。二つおそろいのがあるわ」
 ヒョイヒョイと男がつけてもおかしくない、シンプルなものを摘み上げ、スウィンは照れ笑う。
「エンゲージリング! なんちゃって」
 軽口で言ったものの、自分でその言葉が気に入ったらしい。スウィンは素早く指輪を購入した。
「さあさあ、お次は借りたものよ。紺色の図書館に行きましょ!」
「めまぐるしいな、おい……」
 頭を掻き掻き、スウィンの後を追うべく、イルドは傘を開いた。
「どんな本を借りようかしら?」
「武器大全とか……」
「ちょっと! 全然ロマンチックじゃないっ。却下却下! サムシングフォーは結婚のおまじないなのよ!? ほら、愛をテーマにした詩集とかあるじゃない!」
「……似合わなすぎだろ」

 紺色の図書館に入ると、防音がしっかりしているのだろう。外のますます激しくなった雨の音はピタリと止んだ。
 ずっと窓から、雨に濡れる青の建物と緑の植木のコントラストを眺めていたアインは、
「何を借りるので?」
 ずーっと書棚の見取り図とにらめっこしている晃司に近づく。
「うわっ」
 と晃司はアインの接近に驚いて声を上げるが、『おしずかに!』の張り紙を見て、口を覆った。頬が赤い。
「……おどかすなよな」
 小さな声で、照れ隠しのように抗議する晃司にアインは苦笑する。
「そんなつもりはなかったんですがね。で……何を借りるつもりで?」
「……恋愛に関する本とかいいなと思って」
 はにかみながら晃司が小さく言う言葉に、アインは意外そうに眉を動かした。
「ほう……」
 親代わりとして晃司を育ててきたので、彼のことは大体分かっていたつもりだが、まさか恋愛ものを借りるとは思わなかった。彼の中に何か変化があるのかもしれない、とアインは面映い気持ちを抱くのだった。

●ぽつぽつサムシングブルー
 本も借り、古いものと新しいものも手に入れた晃司は、最後の一つに悩んでいた。
 雨は大分弱まり、今はもう傘も必要ないくらいの小雨だ。
「なぁ、アイン。何か心当たりあるか?」
「青いものですか……」
 ペンキやクレヨンといったすぐ購入できそうな画材をアインは提案してみるが、
「折角だし探したいんだよな。石とかガラスの破片とか……?」
 と晃司はしぶる。
 思考に耽りながら歩く晃司にアインは優しく言った。
「ま、時間はたっぷりあるんです。探しながら歩きましょうや」
「そうだな、ゆっくりいこう」
 頷き、晃司はアインに寄り添うように歩き出す。
 青いものに悩むのは、晃司だけではない。
「青、青……この街にはありすぎて、逆に迷うわね」
「そーだな。…………お?」
 傘を畳んでブラブラと歩いていたイルドは、ふと爪先で蹴ってしまった小石を拾った。
 天然石なのか、それとも磨耗した建物の欠片か、はたまた玩具か、染めたように青い丸石だ。
 それを見て、スウィンは笑顔を弾けさせた。
「あら! イルドもちゃんと見つけられたじゃない!」
「これがか?! ただの石だぞ!?」
「いいのいいの。青いんだもの、立派にサムシングブルーよ! ふふっ、結婚式はいつにする? ダーリン♪」
 がばっと抱きつくように腕を組んでくる大喜びのスウィンに、イルドは頬を染め、そっぽを向きながらも抵抗はしない。そして呆れたようにぼそりと言う。
「……いつでも。ハニー」
 腕を組んだまま、二人はミントティーを飲みに行くべく、喫茶店へと続く坂道を登っていった。
 坂道のふもと、ウートゥルメールの空色の花屋はそれなりに客がいた。
「なにかひとつ青いもの……。お花、かなあ……?」
 次々に青い花束を持って店を出て行く精霊たちを眺め、セイヤ・ツァーリスは首を傾げる。
 彼の後ろに控えるエリクシアは、骨董屋や雑貨屋、図書館で手に入れた物品の入った袋を提げ、悩むセイヤを見守っていた。
「でも、お花だとすぐに枯れちゃうし……」
 ずっと持ってはいられない、とセイヤは花屋に背を向け、再び歩き始めた。
「サムシングブルー。ねえねえ、エリクはどこにあると思う?」
 エリクシアは穏やかに微笑んだまま、返事をしない。セイヤがまだ話を続けると知っているのだ。
「昔、母様にきいたのは結婚式で使った青いリボンなんだけど……やっぱり身につけるものだし、リボンなのかな。それともハンカチ……?」
 とまで言い、セイヤはエリクシアの視線が一点に集まっているのに気づいた。
「どこを見てるの?」
「セイヤ様のお帽子ですよ。なにかひとつ、身につける青いものです」
「えっ? 帽子?」
 意外な返事にセイヤは自分がかぶっていた小さめのハットを脱いで、しげしげと見つめ、アッと声を上げた。
「確かに、帽子のお花は青だけど……」
 彼のハットに飾られた青薔薇は、装飾用の花だから、絶対に枯れない。
「でもでもせっかくここまできたんだし、街の中で見つけないと」
 ふるふると首を振り、セイヤはハットをかぶりなおした。ハットをきちんと調えてあげながら、エリクシアは、
「大分歩きましたが、お疲れではありませんか? ミントティーが有名だそうですから、行ってみましょうか」
 と提案する。
「そうだね、行ってみよう。お菓子もちょっとだけ欲しいな」
 エリクシアの予想通り町中歩いて疲れていたセイヤは、素直に彼の提案に賛同した。
「青いもの……街そのものなのかな。だってこんなに綺麗な青のある素敵な街なんだもの。……でも、なんだか違う気もするし」
 喫茶店への道すがらもまだウートゥルメールのサムシングブルーについて悩むセイヤ。
 いつの間にか悩みは、青そのものよりも、それを渡す相手についてに移っていた。
(エリクは何が似合うかな……似合うものが見つかったら、エリクにプレゼントしたいな……)
 思案に耽る主人をエリクシアは金と青のオッドアイで見つめていた。

●サムシングフォーの幸福
 内装も緑青の喫茶店は、それなりに広く、それなりに観光客や地元の客で埋まっていた。
「はぁー。それにしても色々集めたな」
 秀はミントティーのカップを口に運び、ズラリとテーブルクロスの上に並べられた品々に目を落とした。
 骨董品店で瑪瑙のタイピン、雑貨屋で白いハンカチ、図書館で料理本。
 品々から視線を上げれば、得意満面のイグニスである。
「これだけあれば幸せになれますよ、秀様!」
 とイグニスはずずいと品を押し出す。
「え、俺?」
「先日、秀様の昔の話を聞かせていただきましたから。是非ともとびきりのサムシングフォーを思いまして!」
 頑張りましたっとイグニスの得意げな表情がますます深まる。
「……そう、か。…………そうか……うん」
 なんと言えばいいものやら、秀は調子が狂うのか、くすぐったそうな顔で黙り込んでいたが、
「……で、ひとつ足りないんだが?」
 結局いつものツッコミ気質に立ち返ることにしたらしい。
 だが、それしきでイグニスはへこたれない。
「ふふふ、青いものはですね。とびっきりのものを贈ります! ハイ!」
 後ろに隠していた紙袋から、イグニスはブルースターの細い花束を差し出した。
 爽やかな青い花を秀は素直に受け取ってくれた。
「なるほど、青い花束か」
「これで今すぐにでも結婚できますね!」
 にこっ!
「今すぐに、って……」
(プロポーズかよ!)
 愕然とイグニスを見つめる秀だが、すぐに自分の考えにつっこみをいれる。
(んな訳ねーよ。こいつはいつも通り何も考えず喋ってるだけだ!)
「どうかしました? おなか痛いんですか?」
「あーいい、いらんこと考えた!!」
 心配そうなイグニスにぶんぶんと右手を突き出して振り、左手で己の額を押さえて秀は青い天井を仰いだ。
(なーに考えてんだか、俺は!)

 喫茶店の前にある広場で立っている神人に、アクアは駆け寄っていく。
「ワカバさん!」
「アクア! 探したよ!」
 急にいなくなるからびっくりした、と若葉は心底安心したらしく、屋根つきのベンチにへたり込んだ。
「ごめんなさい、思ったより時間がかかっちゃって」
 アクアは謝りながら、若葉の隣に座る。
 ずっと彼に内緒でサムシングフォーを集めていて、途中までは気づかれずに済んだのだが、最後の花屋で花束を作ってもらうのに、予想外に時間を使ってしまった。
「はい、これ。ワカバさんに! 幸せのおまじないです」
 と、アクアはちょこちょこ集めたサムシングフォーを差し出す。
 レシピ本の上に乗せた、青と白で美しくまとめられたブーケ。可愛いメッセージカードがついていて、ブーケの持ち手には、少し黄色がかった古いレースのリボンがくくられている。
「おや、俺が花嫁さんなんだ」
 と言いながらも、まるで母の日に花束を貰う母親のような優しい喜びに包まれた若葉は上機嫌でサムシングフォーを受け取る。
「ありがとう。本当に嬉しいよ」
 ゆっくり精霊の淡い水色のふわふわした髪を若葉は撫で、メッセージカードを開いた。
 カードには、アクアの直筆で『いつも有難う。これからもよろしくお願いします』と記されている。
 アクアはレシピ本を開いた。写真つきで色々な料理の作り方が分かりやすく書かれている書物だ。
「レパートリーを増やしたいんです。ワカバさんの好きなもの、教えてくださいっ」
「アクアの好きな料理も教えてよ。俺も覚えるからさ」
 あれが好き、これが好き、そんな話をしていたらもう夕暮れ。
 やみかけていた空は、ぱらぱらと再び泣き始めていた。
「来週またここに来ようか。借りた本を返さなきゃだし」
 と立ち上がる若葉の片手は花束でふさがっている。
 傘を開いて、若葉はアクアに笑いかける。
「……そうだ、傘も半分こで帰ろうか。相合傘。なーんて、ね」

 青い石でも落ちていないかと地面を見ながら歩いていた晃司は、後頭部に冷たさを感じて雨に気づく。
「あ、また降ってきやがった」
「晃司、ほら上」
「え?」
 下ばかり向いていた晃司は、アインに促され、天を仰ぐ。
 すいーっと鉛色の空の下を、目の覚めるような青い小鳥が飛んでいった。
「幸せの青い小鳥、ですな……」
 ぽつんと呟くアインの隣で晃司は頷く。――幸福はすぐ傍にある。

「結局、見つからなかったな……。サムシングブルー」
 と帰りの列車を待ちながら、残念そうにエリクシアに振り向いたセイヤは、灯りに照らされる穏やかな微笑を浮かべた精霊を見て、閃きの様に思いついた。
 セイヤにとって、幸せの『サムシングブルー』はエリクシアの左目そのものなのかもしれない――。



依頼結果:普通
MVP
名前:スウィン
呼び名:スウィン、おっさん
  名前:イルド
呼び名:イルド、若者

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: きのった  )


エピソード情報

マスター あき缶
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 06月10日
出発日 06月19日 00:00
予定納品日 06月29日

参加者

会議室

  • [2]スウィン

    2014/06/18-20:57 

    ばんわ、スウィンよ。サムシング・フォーを探す皆は、どんな物を見付けるのかしらね。
    素敵な物を見付けられるといいわね♪


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