捜査ロボット試運転(らんちゃむ マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

●それは未来の為に
 カタカタと鳴るキーボードは、薄暗い部屋の中ぼんやりと光るディスプレイに文字を映しだしていく。
それは一般人が覗いても理解できない言葉の羅列で、時には数字のみが記入される事もあった。
一言も口にせずディスプレイを見続けた男性は、エンターキーをかちりと押し、椅子にもたれかかった。

「はぁー…!よし、あとは試運転だけか…」
頭をがしがしと掻いてディスプレイと携帯を交互に眺め、男は大きく息を吐いた。
パソコンに繋がっている無数のコードの先にある、小さな機械を眺め目を細める。
「やっと、やっとだ」
目頭を押さえ体の力を抜くと、男にやってきたのは強烈な睡魔。
ぼやけていく視界の中、目を覚ましたらやりたいことが山のように思いつく男の口元は小さく弧を描いていた。
「…今は寝よう、起きたら、さっそ…く…」

嬉しそうに微笑み、男は数日間後回しにしていた睡眠をたっぷり取った。


●必要なのは
 天気の良いある日の午前。
A.R.O.A本部に二人の男がやって来た。
「こんにちは、A.R.O.A本部へようこそ」
受付スタッフがそう挨拶をすれば、男の一人が名刺を取り出した。
「先日お電話しました…レンジャー部隊バレッドの開発部です」
「あぁ!お待ちしてましたよ、こちらへどうぞ」

スタッフに案内された先には数人のスタッフが待っていた。
小さな会議室の中で、早速男たちは手に持った小さな球体をスタッフに披露する。
「バレッド開発部で制作された、万能予定型ロボット…RPA1077号…通称ロピアです」

球体の中央のスイッチを押せば、四本の足が飛び出し、黒い部分から青い二つの光が点灯した。
それだけでもスタッフは驚いたものの、ロピアと紹介されたロボットは光で瞬きを表してみせた。
『キュイ』
「わー…凄いですね!」
「…でも、万能予定とはどういう意味ですか?」
 感動するスタッフの隣で首を傾げるスタッフがロピアを見つめる。
男の一人…少しよれたスーツを着た男が立ち上がり、数枚の紙をスタッフに提出した。
「私が製作者のバレッド開発局長…イシドです、ロピアは本来レンジャーの仕事を補助する為に制作されました
時には災害の被害者を救出、遭難者の保護…時には犯罪者を追跡し確保する…予定です」
「随分と曖昧な表現ですね」
「まだ未完成なんですよ、いくら完成しても試してみなきゃ本当の完成にはなりませんからね」
男は眉を下げ力なく笑ってみせた。
ロピアをそっと撫でると、本題ですがと話を切り出す。

「君達のトコの人材を貸して欲しいんだ…足が早い奴と、隠れるのが上手い奴」
「なぜウチなんでしょう…他にも場所があるはずでは?」

「おたくらの人材じゃないと生ぬるい結果しか出ないもんでね、実験は本番さながらに、ですよ」

イシドの隣にいた男が、鞄からさらにファイルを取り出しスタッフに提出する。
「こちらは他局のレンジャーでの実験結果です…潜在能力の高いA.R.O.A本部の人材を貸してはいただけないでしょうか」
「…よろしくお願いします ロピアで一人でも多く、人を救いたいんだ」

深々と頭を下げるイシドに、ロピアも真似るように頭を下げる
だが球体なので、頭を下げようとした途端ころり、と一回転してしまった。

『キュキュ』
「…っふふ、分かりました、こちらで人材を派遣させていただきます」
「人命救助ロボットの第一歩に貢献するよう政府からも一報いただいていますし…こちらも、全力を尽くします」

スタッフは転がってしまったロピアを起こしてあげると、イシドに向かって握手を求めた。
力強くかわされた握手により、A.R.O.A本部とバレッド開発部の合同実験が開始される事となった…。

解説

 レンジャー部隊バレッド開発部が制作した『万能予定型ロボットロピア』の実験に協力して下さい。
現段階でのロピアの性能は「捜査・捕獲・発見・追跡」の4種類のみ実装されています。
・ターゲットである対象を中範囲レーダーで捜査
・逃走する対象をネットでの捕獲
・発見した際に警報を鳴らし周囲に知らせる
・4足の足元に付いた車輪での高速追跡

ターゲットとなった皆さんには、ロピアから逃げて捕まらないようにしていただきます。
今回の目的はロピアの性能をどこまで活かせるかの実験になりますので、できるだけ逃げ隠れして捕まらないようにして下さい。

逃走範囲はバレッド開発部が所有する中距離の庭園です。
木々や建築物など障害物はありますので、それを活かして逃げ切って下さい。

ロピアの稼働時間は通常だと3時間、フルパワー使用だと1時間と計算されています。
敷地内に放たれるロピアは全部で3体…分かりやすいように赤・青・黄色のシールが貼られています。
参加者同士でどのように動き、ロピアに捕まらないようにするか作戦をたててください。

尚、ロピアに捕獲されたターゲットの皆さんは終わるまで見学です。
バレッドスタッフが用意したお茶菓子を食べて皆さんを応援しましょう…。

ゲームマスターより

らんちゃむです!
今回は戦闘…ではなく、ただただひたすら逃げ切って下さい。
一種の体力テストだと思って…ね。
終わったらバレッドスタッフのお茶菓子が待ってます…だからって自分から捕まったらダメですよ?

一人でも多く救いたい為に何かをするって素敵な事ですよね。
時々TVでやるロボット特集を見て、ふとそう思う事があります。

どうか協力、よろしくお願いします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

木之下若葉(アクア・グレイ)

  さて、何処まで追って来るかは解らないけれど逃げなくちゃ
ちょっとくらい小細工は在りかなって事でロープ持参で

俺はまずは木々の中へ
適当な高さの木に軽く登って隠れるよ

隠れてる場所が見つかってしまったら
落ち着いてロピアが登って追って来られるか確かめる

そうそう、隠れてる間に太めの枝にロープを括りつけ少々細工を

ロピアが追って来たり警笛鳴らすようだったら
そのロープを使って少し遠くの地面へ着地
ターザンごっこだね

ネットを飛ばされたら自分の着ている上着を放って
そのネットを落としてみたり
ほら、俺も逃げるの必死だからさ

そんな感じで見通しの悪い場所で隠れながら逃げようか
アクアはアクアで逃げているだろうし
さあ、どうなるかな




羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)
 
この子たちがロピアだね
依頼書で見た印象よりずっと小さくて可愛らしいな

合同実験は真剣に取り組むよ
自分の体力を把握できるいい機会だからね
……ちょっとは年寄り扱いを挽回出来ると良いのだけれど

ジャージに運動靴で参加
見慣れない?それはこっちの台詞だと思うな
実験開始前に準備運動はしっかりと行う
肩掛けバッグにタオルとスポーツドリンクを2つずつ持っていくよ

初めは建物の影などに潜み、ロピアの動きを観察
どの位近付いたら見つかるんだろうね?

岩や木など障害物の多い場所を選んで逃げる
一か所にあまり留まらないで、少しずつ動き回っておくよ
時々、水分補給を忘れずにね

誰かの役に立てるって嬉しいよね
俺も、もっと頑張らないと


スウィン(イルド)
  まさかこの歳になって鬼ごっことはねぇ
ま、オーガに追い回されるなんてのじゃないから
全然だいじょぶだわ
素早さには自信あるわよ
捕まえてごらんなさ~い♪

一網打尽を避ける為皆バラバラに逃げる
パワーを消費させ早く終わらせたい
スタミナがあるうちは積極的に走る
疲れたら隠れて体力回復 警戒を怠らない
障害物をひょいひょい避ける
フェイントを駆使

ほらほら、こっちよ!
残念でした!
皆まだ捕まってないかしら?
あっぶな!セーフ!

捕獲されたら少し悔しがる
「ロピアちゃん、なかなかやるわね…」
のんびりお茶しながら逃げる皆をほほえましく見守り応援
「ほらそっち、ロピアちゃん来てるわよ~!逃げて逃げて!」
「このお菓子おいし♪」


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  索敵能力も試したいのなら、先に隠れさせてくれるよな?
鬼ごっこがしたいんじゃなくて、そのまんるくんの性能実験だろ。逃げる所を見てちゃ駄目じゃん。
スキルのサバイバルも使って隠れるのに適した場所を探すぜ。ラキアが隠れた所には枝や葉っぱでカモフラージュもする。

見つかったら障害物を利用して隠れつつ逃げる。足元は石や芝生など起伏のある所をあえて。無限軌道ならともかく、車輪って動ける範囲狭いんだぜ。車が立ち往生しやすい足元を選んで移動。樹に登って建物の二階へなど立体的に逃げる。
庭に動物がいたらロピアに嗾ける。木の枝などロピアの目前に投げて網を発射させて浪費させたり。体力配分考えて逃げるぜ。



アイオライト・セプテンバー(白露)
  わーい、おにごっこだ。かくれんぼだ。遊ぶぞーーっ。

こういうのは、よーいどん、でみんなでバラバラに逃げるのが、御約束。
だから、なるべく他の人と違う方向に逃げるね。パパともちょっとお別れ。
あんまり隠れないで、目一杯ジグザグに走り回ろうっと。そのほうが楽しいもん。
警戒音のが聞こえて他の人が捕まえられそうになってたら、ロピアちゃんのほうに飛び出して、こっちだよって撹乱するの。で、またわっと逃げる。
逆にロピアちゃん捕まえたら負けなのかな。残念。
でも、ネットに絡まるのっておもしろそー☆ ぐるんぐるん。

ロピアちゃん、なでなでしていい? 鬼おつかれさまって。
ロピアちゃんはお菓子食べられないんだよね。寂しいな。


●盛大な鬼ごっこの前に
「それでは試運転に関して、こちらからもう一度説明させていただきます」
 試運転開始前、スタッフの女性がロピアを抱え一同の前に立った。

「RPA1077号、通称ロピアは万能型ロボットを予定としたロボットです」
「予定?」
「はい、皆さんにお手伝いしてもらうのも試運転…つまりは、この子はまだ未完成に等しい状態にあります」
『キュウ!』
「その予定ロボットのテストをオレたちに頼んだって事…でいいんだよな」

セイリュー・グラシアがそう問えば、スタッフは首を縦に振る。
抱きかかえられたロピアを下ろすと同時に、スタッフは人差し指を出した。
「皆さんにお約束願していただきたい事がございます」
「こちらで使用するロピアは3体、どれも分かりやすいように赤、青、黄色のシールが貼ってあります」
三体のロピアには、分かりやすく足の部分に三色のシールが貼られてあった。
それを一同に確認させたスタッフは、最後に一言告げる。

「今回皆さんには一方的に逃げる、または隠れる行動を取ってもらいます、決して攻撃や威嚇射撃、投石などはお止めください」
「…なるほど、シンプルに逃げ隠れのみで測定をするんですね」
木之下若葉が口にすれば、スタッフはその通りですと返事をした、すると後ろからイシドがひょこりと顔を出す。
「本来ならばある程度の落石に耐えられるか実験をすべきだが…まあ一気にテストすれば計測や記録をするこちらが大変でね」

困ったように笑うイシドに、アクア・グレイは深々と頭を下げて「お疲れ様です!」と返した。
「アッハハハ、どうもご丁寧に…さて、皆さん準備運動は済ませましたかな?」
楽しそうに笑うイシドは全員を見渡すようにすれば、どうやら全員の準備運動は終わっているようだ。

「それじゃあ…始めますかねえ、ロピア、たっぷり遊んでもらえよ」

『キュキュイ』
「いーっぱい遊ぼうね!あたし頑張っちゃうよー!」

アイオライト・セプテンバーがロピアの前に屈んで声をかければ、返事をするようにロピアは揺れてみせた。
返事をしたのかと驚くアイオライトにロピアは足元に体を擦り寄せてくる。
「…あはは、パパかわいいよロピア!欲しい!」
「ダメに決まってるでしょう…はあ、鬼ごっこでいっぱい遊んであげましょうね」
「はーい!」

「…いや、だから性能テストなんだろ?」
小声で訂正するセイリューに、ラキア・ジェイドバインはクスクスと笑いながら彼の肩を叩いた。

●鬼ごっこスタート!
 スタートを待つ一同だが、セイリューがスタッフとイシドに声をかけた。
「索敵能力も試したいのなら、先に隠れさせてくれるよな?」
「どうしますイシドさん」
「彼の言う事も一理あるな…よし、隠れる奴は先に庭園に入ってくれ」

イシドの言葉にセイリュー、そしてパートナーのラキア…イルドの三名がスタート前に庭園へと入っていく。
スウィンはパートナーを見送ると、庭園の前で足を止めた。
「さ!こっちも準備万端よ」
「いつでも行けるよぉ~!」
ぴょんぴょんと跳ねるアイオライトに合わせるようにゆらゆらと揺れるロピアは、彼等と遊ぶのを今か今かと待っているようにも見える。

「はいはい…いいか、お前達がスタートして3分後にロピアを全機放つぞ」
「よし!じゃあ鬼ごっこスタートだ!」

イシドがそう言い出すと同時に、全員が一斉に庭園へと駆け込んだ。
ついていこうとするロピアをイシドが抱きかかえると、足を飛び出させジタバタと動き出す。
「お前達はまだだ、あと2分57秒後だ」
『キュキュッ、キュー!』

●ロピア始動
「イシドさん、皆さんが庭園に入って2分50秒経過しました」
「よーし…ロピアをスタンバイさせろ」
「はい!」

スタッフがロピアを庭園の入り口に並べさせている間、イシドテーブルに置かれた拡声器を手にとった。
「聞こえるか、10秒後にロピアを放つ!ちゃーんと逃げ切ってくれよー」
「イシドさん、5秒前です!…3……2…1!」

「ロピアスタート!」
『キュー!』
「ロピアが庭園に行ったぞー…あぁ、逃げ切れとは言ったがうちのスタッフが甘いもんでも用意してるらしいから戻ってきてもいいんだぞ」
「ダメに決まってるでしょう!イシドさんしっかりして下さい!」
「ハッハハ!冗談だ冗談!」

スタッフに叱られるイシドの会話は、全て拡声器で庭園の一同に聞こえていたのは言うまでもなかった。


●かわいい、はず
「さーて、まだロピアの声はしないようだね」
「そのようだな…中距離とはいえこの広さだ、出くわすのも早々ないだろう」
 羽瀬川千代とラセルタ=ブラドッツが行動を共にしていると、イシドの拡声器からロピアが庭園に入ったと伝えられる。
流石にのんびりしていられないね、と羽瀬川が笑って言えば、ラセルタは警戒をしながら先に進む。
庭園の角にたどり着いてしまったようで、曲がろうと羽瀬川が右に指を指した時だった。
コロコロと、目の前に丸い球体が転がってきたのだ。
それは二人の前でピタリと止まり、カシャカシャと音を立て四本の足を出す。

「まずっ…!」
「走れ千代、今なら十分な距離が取れる」

羽瀬川の腕を掴みきた道を戻る頃には、ロピアは二人の姿を捉えていた。
『キュッ…キュキュッ…キィィィーッュ!』
警報が鳴り響き、それに答えるように遠くからも音がする。
見つかった、改めてそう思った羽瀬川はできるだけ距離を作るべくラセルタと走り続ける。

「おーおー早速誰か見つかったようだなー」
拡声器からイシドの声が聴こえる、彼はとても楽しそうに話していた。
「誰か知らないが死ぬ気で走ってくれよ?…うちの子は構ってくれる人間が大好きでなあ」
「大声で我が子自慢か…!」
ラセルタがそう言い終えるよりも先に、後ろから物凄い早さで何かが擦れるような音がした。
すっと体を通り抜ける嫌な予感に、羽瀬川の顔は引きつる……一瞬、一瞬だけと後ろを振り向こうと首を向ければ、彼は見た事を酷く後悔した。


「最近わざと構ってあげてないから思いっきりつっかかって行くぞー」
イシドの声と共に後ろを追いかけるそれ…ロピアが羽瀬川の視界に飛び込んでくる。
入り口で出迎えてくれたころころと転がる愛らしいロボット…のはずだったロピアは、前のめりに体を傾け物凄い速さで自分達を追いかけているのだ。
何かがこすれる音は、異常なまでに急回転する車輪の音だった。

「うあああああっ!」
「あれの何処に可愛らしさを見いだせるんだ…!」

思わず声をあげてしまう程の威圧感に、捕まるまいと必死に走った。
T字路に差し掛かったところで、ラセルタは羽瀬川の名前を呼ぶ。
「別れるぞ!」
「わ、わかった!」
左右に二人が別れると、物凄い勢いで追いかけてきたロピアは急停止した。
『キュ?キュキュ…』

どうやらどちらを追うべきかまで把握できなかったのか、姿が見えなくなった二人を追うのを諦めてしまった。
単独行動を開始した羽瀬川は、まだロピアの威圧感溢れる姿に驚き胸を抑えていた。

●余裕…でしょ?
「警報が鳴った!…さて、どうなるかな」
 スタート前にセイリューと共に隠れる場所を探したラキアは警報を耳にする。
息を潜め静かに茂み隠れていると、何処からか悲鳴まじりの声が聞こえてくる…もう捕まったのか?誰が、どうやって?
セイリューの施したカモフラージュで外の様子を把握できるのは自らの音のみのラキアは状況を把握しようとじっと耳を傾け続ける。

「…近くにいれば音が鳴るはずだから、きっと大丈夫…」
後ろに少し体を傾けたその時、腕に何かがコツン、とぶつかった。
振り返れば、そこには真っ白な球体に、青いシールが貼られた……
「なっ!ロピア!」
茂みから飛び出して距離を取ろうとするも、勢いよく飛び出してきたロピアが目の前に飛んでくる。
「ちょっ…うわ!」
フェイトをしようと体制を変えるよりも先に、ロピアから放たれるネットがラキアの視界一面に広がった。

「警報が鳴るはずなのになんで君は無音なんだよ…」
観念するも不満を目の前で転がるロピアにこぼせば、青い光は瞬きするように点滅するだけだった。


●別行動の末
 羽瀬川がラセルタと別れ別行動をしていると、またもイシドのアナウンスが入った。
「赤ロピアが一人確保だ、開始からー…40分ちょっとだな、頑張ってくれよー」
「え、もう一人捕まっちゃったのか…」
タオルで顔の汗を拭う羽瀬川は先程まで追いかけてきたロピアを思い出して顔を青ざめる。
流れる嫌な汗を早く拭いてしまおうと顔をごしごしと拭き、はあとため息をつくと、目の前に青いシールの貼られたロピアがじっと見上げていた。

「~っ!!!」
『キュピィイイイイイイ』

声にならない叫びを代弁するように青いロピアが警報を出す。
すぐに急カーブしてもときた道を進む羽瀬川だが、追いかけようとするロピアが彼の左足にぶつかってしまった。
「え、あっ」
バランスを崩しその場に倒れる羽瀬川が目にしたのは、自分の上に乗りネットを吐き出すロピアの姿だった。
「…もう…怖い」
『キュピピッ』
「…デザインを変える提案とか、したら考えてくれるかな……」
ぐったりと倒れたままの羽瀬川の上でコロコロと転がるロピアは、なんだか楽しそうだった。
彼が与えられた謎の威圧感と恐怖を知らずにキュキュと鳴くそのロボットに、羽瀬川は残酷だなあ…と小声で呟いた。

●不穏すぎる空気
「…叫び声しか聞こえないってどういう事だ」
 イシドのアナウンスとロピアの警報…そして謎の叫び声。
音のみの情報にしてはとてもシュールだとイルドは頭を抱える、他のメンバーは笑っていたからもっと笑い声が聞こえると思っていたがそうでもなかったのだ。
「はあ、まあいい、見付けられるもんなら見付けてみろ」
俺はそう簡単には捕まらないと呟けば、足元で機械音が響く。
『キュキュイ』
「っち…まあそこからだとネットも飛ばせないだろうな?悪いが逃げ切らせてもらうぜ」
高い木に登ったイルドから地面にいるロピアまでの距離は10数メートル、地面からネットを発射してもイルドまでは届かない。
立ち上がり他の木に飛び移ろうとすれば、木の下からガリガリと音がした。
「あ?」

下を見れば、ロピアは遠く離れてしまっていた。
足をしまい球体の状態になったロピアはコロコロと遠ざかっていく。

「…諦めたか?」
予想外のアクションを起こすロピアに足を止めたイルド。
次の瞬間、ロピアはピタリと止まり、物凄い早さで自らを回転させ始めた。
離れたと思ったが、白い球体は物凄いスピードでイルドの立つ木めがけて回転し進んでいく。
「ぶつかる気か?!…っち!」

あまりの早さに他の木々へ飛びのるも、ロピアはイルドが立っていた木へ直撃する。
だが助走をつけた反動で宙に上がったロピアは、すかさず足を飛び出させ車輪を急回転させていく。
「は!?」
ロピアは木を登ってみせたのだ、思わず驚くイルドはすぐさま地面に下りた。
あの早さで木々に飛び移られては不利なのは明白、上に登っている今のうちに次の場所を探しに行こう。
すぐさま出した結論を実行しようと走りだし、木々の密集する場所を抜け出す。
中央の時計台から南側に建物があるのを見つけたイルドは建物へと走ろうとした…だが。

一瞬だけ自分の足元が暗くなったのに違和感を覚え、動きを止めてしまう。
刹那、ゴトッという音に気づいた時、目の前には白い球体が転がっていた……先程木に登っていたはずの、黄色のシールが貼られてロピアだった。

「うそだろ…くそっ!」
『キューッ…ピ!』
スタートダッシュが送れるもイルドは建物へと全速力で走る、だが後ろから聞こえる車輪の音はすぐに大きくなっていった。
急カーブしようと体を曲げた時には、ロピアの放たれたネットが視界に入ってしまった。

「しまった!…いてっ!」

半分かかったネットを払いのけようとするも、足に絡みついてしまいロピアに捕獲されてしまった。
自分の周りをそわそわとするロピアに対し、イルドは悔しそうに地面を殴った。
「くそっ、駄目だったか!」


「いち、にーさん…ほお、三人目か」
「お疲れ様です、お茶菓子とお飲み物用意してありますよー!」
捕獲されたイルドにタオルを差し出すスタッフに、何を飲むか聞かれたイルドは「珈琲」と答えた。
自分以外に捕まったウィンクルムは、庭園からちらりと見えるパートナーを応援しているようで、ぼーっと庭園を見つめる。
「…はあ」
「お疲れ様でした、はい珈琲」
テーブルに置かれたお茶菓子を適当に口に放り込むと、イシドのアナウンスを聞きながら庭園を黙って見つめた。

●本気モード!
「三人目がやってきたぞー」
「あらら、そんなに捕まっちゃったんだ」
アイオライトがアナウンスを聞き驚いていると、イシドはさらに言葉を続けた。
「現在ロピアは一体故障でこっちにいる、つまりそこにいるのは二体だけってこった…そこでだ」
 提案をするイシドは、何かを起動させた音を拡声器に流し、説明を始める。
「今のロピアのエネルギー残量を見ても1時間を持たない、そこで残り二機をフルパワーに切り替えた」

「まあ頑張ってくれよ ざっと見積もって5分無いからな」
そう言ったイシドは、頑張ってくれと告げアナウンスを終えた。


「…本気モードか、ここから見る限りでも全速力に見えたけどな」
 木々の間に隠れていた木之下若葉が時計台を確認しようとすると、ずしん、と木に何かがぶつかる。
落ちないように慌てて捕まれば、下からロピアがこちらに向かって登ってきていた。
「うそ、登れるの」
すぐさま太い木の枝に縛ったロープを掴み、隣の木に飛び移る。
着地して密集する木々に足をかけていきロピアとの距離をとっていった。
ロープを掴み飛び移る事はロピアには不可能だ、姿を見失ったロピアはすぐに木から下りて別の場所へと移動した。


「よっ、ほっ…っへへ、来れるもんなら来てみろよ」
 庭園の北東側を逃げるセイリューはロピアに追われるも余裕の表情で距離を離していた。
イシドのアナウンスが入る前からターゲットとして追いかけられていたが、体力を温存したおかげで難なく危険じゃない距離を保てていた。
「フルパワーなあ…フルパワーでも無限軌道ならともかく、車輪って動ける範囲狭いんだぜ?わかるか?」
余裕を見せる彼はゆらゆらと揺れながらでこぼこした砂利道を進むロピアに向かって言った。
キュキュイと鳴いているロピアは返事をしたのかと関心するセイリューだが、一向に進まないロピアを見てため息をこぼした。
「はーあ、試運転でももうちょっと驚く動きみせてくれよな?…じゃ、他の奴でも探して追いかけてくれよな」
手をひらひらと動かし離れていくセイリューに、ロピアは一度だけキュウと鳴いてみせた。
背を向け安全な場所を探そうとしたセイリューの後ろを、ガタガタと音が押し寄せる。
振り返れば、ロピアは足をしまい球体状態で体を回転させこちらに向かってきているではないか。
突然の事に気を取られてしまったセイリューは、足元にある大きな岩にかかとをぶつけバランスを崩した。
視界がロピアから一変、青い空を映したかと思えば、彼を覆うようにふわり、空からネットが降り注いだ。


「ほらほらこっちよ~!…って、結構早くなってきたわね」
 フルパワー宣言から3分が経過した現在、イシドからソレ以降のアナウンスは一切なくなった。
茂みから飛び出してきたロピアと鉢合わせしたスウィンはロピアに追いつかれないように逃げ切っていた。
だがフルパワーと言うだけあって物凄い早さで追いかけてきている、そう思ったスウィンの目の前には噴水があった。
しまった、スウィンが口にすれば、ロピアがじりじりと近寄ってきている。

「あらら、ここでおしまい…はちょっと嫌かも!」
『キュ!』

悔しそうに叫んだスウィンだが、ロピアのネットは飛んでこなかった。
「ほらほら!あたしもいるよー!」
『キュ!キュキュイ…キュ!』
突然飛び出してきたアイオライトによって、ロピアの狙いが二つに分かれてしまった為ネットが飛んでこなかったのだ。
ぽかんとするスウィンに、アイオライトはにっこりと笑って手を振った。
「おいでロピアー!全速力の鬼ごっこするよー!」
誘導するように逃げ出していくアイオライトに、スウィンはほっと胸をなで下ろした。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、うん大丈夫よ…さっき助けてもらったとこ」
白露がスウィンを気遣うように駆け寄ると、彼はすぐさま北の方角を指した。
「あちらに広場があります、残り数分ですので入り組んだこちらよりは安全だと…」
「そうね、ありがとう」
白露の指示に感謝して移動するスウィンを見送り終えた白露は、ふうとため息を吐いた。
「ああやって何度も飛び出しては遊ぶから肝が冷える…さて、アイはどっちに行ったんでしょうかね」
遠くから聞こえる笑い声を頼りに、白露はアイオライトを探した。


「おっとと…あった建物!よしっ」
 建物に飛び込んだアクアを全速力でロピアが追いかけていく。
南西にある建物は庭園内にある建物の中で一番多く階段が設けられている建物で、ひょいひょいと階段を登っていくアクア。
「これで少しは困るかな?」
アクアがそう言いながら振り返れば、階段につっかかるロピアの姿があった。
球体になるも進めないロピアはアクアが目の前にいるも追いかける事ができないでいたのだ。
「ふふ、あと1分…よし、僕の勝ちだね」

にっこりと笑ったアクアの笑い声に、ロピアがガクリと揺れた。
エネルギーが切れたのかと思い首を傾げるが、次の瞬間ガタガタとロピアは動き出す。
足を出したまま回転させずに車輪を固定したロピアの揺れが収まると、少しの静寂がアクアとロピアの間に流れる。

刹那、四本の足をガサガサと揺らし階段を勢い良く上り詰めてきた。

「う、うあああああっ!」
あまりの迫力に驚いて目を閉じるアクアだが、ガサガサという音はすぐに消えてしまった。
「う…あ、あれ?」
『キュゥゥ…』

目の前にいたのは、ネットを半分出した状態でぐったりとしたロピアだった。
呆然とするアクアに、イシドのアナウンスが庭園に響く。

「テスト終了だ、ロピア全機のエネルギーが底を尽きた」
「…ぎ、ギリギリセーフ…!」

終了のアナウンスにほっと胸を撫で下ろすアクアの背後からがさりと音がした。
振り返ればパートナーの木之下が立っていて、彼は座り込むアクアに手を差し出す。
「お疲れ様」
「…うん、お疲れ様」

●お疲れロピア
「全員ご苦労様、各自から提出されたロピアの観察はじつに興味深いものばかりだった」
「捕まっちゃった皆さんもありがとうございました」
スタッフがお礼を言えば、悔しそうに目線を泳がせる彼等にイシドはにやりと笑った。
「まあ四人も捕まれば大成功に近いな」
帰り支度をする一同にお礼を告げるイシドだが、その背後からもはや聞き慣れた機械音が響いた。
『キュキュイ!』

三体のロピアが入り口まで一同を見送りにやってきていたのだ。
アイオライトはお疲れ様と言いながらロピアを撫でてあげれば、コロコロと転がってみせる。

「…千代、撫でてやればいいじゃないか」
「い、いいっ…俺は、遠くで走ってないのを見るのがいいと思うんだ」
少しだけ顔の青い羽瀬川に、ラセルタは首を傾げた。

「じゃあ気をつけてな」
「皆さんお気をつけて~!」

疲れたと話しながら去っていくウィンクルムを見送り、一同が残した調査書の再確認をする為研究室に戻ったイシド。
そこに書いてあった文字を見て、彼は研究室で大笑いをしていた。


「走り方が怖い」
「ちゃんと警報が鳴るようにしてほしい、突然後ろにいた時は驚いてしまった」
「車輪を停止させ階段を登ってきた時は黒いアレを思い出してしまいました デザインの変更を提案します」

「っくく…あー、笑った、改良型が完成したらまた頼むかな」

お腹を抱え楽しそうに笑うイシドを尻目に、一種のトラウマのようなものを植え付けられた一部の神人と精霊は、しばらく白い球体を見るだけで寒気がしたとか…。
 



依頼結果:成功
MVP
名前:アイオライト・セプテンバー
呼び名:アイ
  名前:白露
呼び名:パパ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター らんちゃむ
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル 日常
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 3 ~ 5
報酬 通常
リリース日 05月24日
出発日 05月29日 00:00
予定納品日 06月08日

参加者

会議室

  • やた満員成立っ。
    あたしはプラン出してきたよー。あんまり物影に隠れないようにしてみた。
    スキルのフェイクを使用する暇がなかった……。

  • [5]羽瀬川 千代

    2014/05/28-01:06 

    羽瀬川千代です。宜しくお願いします。
    鬼ごっこは久し振りだけれど、捕まらないように頑張りたいな。
    俺は物陰に隠れつつ、色々な場所を動き回ってみようと思ってます。
    折角の機会だし、ロピア達には色々なことを学んで欲しいからね。

  • セイリュー・グラシアだ。よろしく。
    頑張って逃げるぜ。
    ネットでの捕獲って、ネットを打ち出すのかな。
    それだと1回限りの事が多いから
    一度撃たせたらもうネットは無いとみていいかもな。
    (違っていたらゴメンよ)
    うっかり反撃しないように注意しなきゃ。

  • [3]スウィン

    2014/05/28-00:29 

    スウィンよ、よろしくぅ。バラバラに逃げるの賛成!
    おっさんは足速い方ね。スタミナ切れにならないように隠れて休憩したりしつつ逃げるつもり。
    イルドは足遅いから隠れるのメインかしら?スキルのサバイバルが役に立たないかな~と。

  • [2]木之下若葉

    2014/05/27-18:48 

    今晩は、木之下だよ。
    そうだね。成立を願いつつ。

    うん、ロピアは3体居るみたいだしバラバラに逃げた方がいいんじゃないかな。
    逃走範囲内の庭園には木々や建築物の障害物もあるみたいだしね。
    色んな場所に散り散りにーとか、さ。

    俺は今の所、軽く木のぼりしてみてロピアが追ってくるか確かめてみたいなぁ。
    なーんて思ってるよ。

  • おにごっこー☆彡 アイだよー。
    あとひとりっ。成立するといいなと思いつつ。

    よーいどんでみんなで一斉に別々の方向に逃げたほうが攪乱しやすいのかな?


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