パンツとゴブリンと時々ウィンクルム(あき缶 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●まさかの被害
「毎日パンツが無くなるんです……」
 よよよ……と泣き崩れるファータの青年を前に、ウィンクルム職員は困っていた。
「いや、あのね、うちA.R.O.A.だから。オーガ系専門の機関だから。そういうのは探偵とかさ、他んとこに……」
「町中の若い男のパンツが、ですよ!!」
 がばぁ! と顔を勢いよく上げるなり叫んだ彼は、人の話を聞いてくれない青年だった。
 職員が途方にくれた顔で突っ立っていると、ファータは勝手に喋りだした。
「もう洗濯物外に干せません! でも次はひん剥かれると思うんです! 僕もう怖くて怖くて!」
「あ、うん、そうだね、そこから先はウチじゃなくてね……」
「でもね! 僕、怖いけど一生懸命正体を突き止めたんですよ! えらいでしょ!」
「う、うん、えらいネー。あの、人の話聞いてくれるともっとえらいんだけどナー……」
 心底逃げたくなった職員だが、青年がぐゎしっと肩を掴んで大声で続けるので逃げられない。
「何だったと思います!?」
「あ、聞いてくれないナー」
 諦めた。職員はもう諦めた。
「ゴブリンの群れですよ、ゴ・ブ・リ・ンーー!」
 きぃんと職員の耳が鳴る。
 至近距離で叫ばれた。職員の鼓膜に10のダメージ!
「いや、だからね、うちはね……」
 職員が畑違いだと何度目かの説明をしようとしたところ、青年は決定打を言い放つ。
「デミ化したゴブリンも見たんですよ!」
「なん……だと……」
 職員の顔が真顔に戻った。

 というわけで、召集されたウィンクルムへの依頼はこんな感じである。
 現場は、テルラ温泉郷にほど近いオルテ村。
 ゴブリンの集団が村を襲っては、イケメンのパンツを奪うという。
 既に洗濯物のパンツは盗みきったため、次はイケメンを襲ってパンツを剥ぐ可能性が高い。
 悲劇が起こる前に、ウィンクルムの手でゴブリンを一掃せよ。

「ゴブリン王やゴブリン魔法使いがゴブリンを指揮している。デミ化したゴブリンの目撃情報もあるようだ。油断するなよ」
 パンツ相手に油断もへったくれもありゃしない。

 悲劇は悲劇であろうが……ウィンクルムたちは一抹の虚しさを覚えた。

解説

●成功条件:オルテ村からゴブリンを一掃する
 ゴブリンの生死・パンツの被害の有無は不問です。

●敵
・ゴブリン 20体
 すばしっこい雑魚です。子供くらいの身長で、茶色い肌。
 仲間と同じ行動をとりたがり、一人での行動を極度に嫌がります。
 パンツを奪い王に献上することを至上目的として動きます。
 キーキーしか言いません(ニンゲンゴ ワカラナイ)

・ゴブリン魔法使い 1体
 ゴブリン王の側近。ゴブリンたちを指揮し、パンツを奪おうとします。
 チョットダケ ニンゲンゴ デキル。(単語レベル)

・ゴブリン王 1体
 金キラに着飾ったゴブリンの自称王。今回の敵の中では最も賢い。
 ゴブリン魔法使いの助言に従い、ゴブリンたちを統率し、パンツを蒐集。
 ニンゲンゴ デキル ツモリ。(あまり難しい話は理解できません)

・デミ・ゴブリン?
 いると思っただろ? 実は見間違いさ!

 オルテ村:ほぼ精霊しか住んでいないイケメン村
 村人に戦闘能力はありません。
 事前に避難させるも良し、囮として犠牲になってもらうも良し。
 どちらにせよパンツは危ないですが、生命の危険はありません。

※注意※
 スラップスティック系ちょっとエッチな――厳密な戦闘判定よりもギャグ的な力が働く依頼です。
 本依頼には皆様のキャラが崩壊するおそれがあります。
 故にパンツの安全は保証できません。
(ウィッシュプランに着用パンツについて記載があれば反映します)
 ネタにまみれてもいい! と断言できる方のみ依頼をお受けください。

ゲームマスターより

お世話になります、あき缶です。
キラキララブラブした空気やシリアスCOOLでカッコイイ空気、
ふわふわうふふな空気、しっとり大人ロマンチカな空気は、
この依頼には存在しません(断言)
どたばた・ヨゴレ・ボケカオス・絶叫ツッコミ――そういう空気を容認できる方のみどうぞ。
忠告は、しました。
……あ、一応公序良俗には違反しない範囲でのえっちネタです。
あんまりソッチ方面に頑張りすぎないで下さい。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイヤ・ツァーリス(エリクシア)

  へ、へっち、なのはいけないとおもいますっ
健全な範囲でのへっちは、その、いいと思うです…けど。
そんなゴブリン王さん主催の『もろり☆イケメンだらけのパンツ脱がし大会』みたいなのは…やっぱりダメ、ですっ。

エリクは確かに格好いいですけど、その、やっぱりまともに考えたらおとりにしちゃダメ、です……よね?
ぼ、ぼくがおとりになってみます。イケメンではない、ですけど…。
多分、エリクたちが守ってくれますよね。
ぼくも自分の身は自分で守れるように頑張るですが…ゴブリンさん他人に危害加えてないからパンツを守れるように、かな?

※緊張したりエリクシアや家族以外の年上を前にすると「~、です」というぎこちない敬語になります。



(桐華)
  パンツ守るぞー

村の子は自宅避難で
剥かれたくなかったら、戸締りしっかりね

魔法使い>王>雑魚
なのでとりえあえず雑魚を指揮から引き離したい
おニューのパンツひらひらさせて釣ってみよう
使用済みみたいな照れたお顔でいるけど、未使用です
その辺はフェイクで上手く誤魔化したい
出来るだけ広くて、程よく距離を取れる障害があるような場所があればいいな!
囲まれ無いようにだけは注意したい
いざとなったら偽パンツに石包んで遠くに放り投げよう
ほーら取ってこーい!

2体1くらいまでなら頑張れるかなぁ…
数は減らして行きたいし
引き離し中でも、狙えそうなら指揮側狙いたい
他に狙う子が居てくれるなら、全力でサポートするよ。桐華が
僕も程々に


高原 晃司(アイン=ストレイフ)
  何かどうしようもない依頼がやってきたもんだな…
男のパンツを剥ぎ取るとかどんだけ変態野郎なんだよ!
そんな奴等は懲らしめねぇとな
でもまだ窃盗だけで剥ぎ取られてはねぇんだっけか?
どっちにしてもボコボコにするだけだ!

今回はゴブリンらしいし
とりあえずはトランスしないで行こうと思う
パンツひん剥かれたらトランスをする

とりあえず買ってきたパンツを広い場所において誘き寄せる
撃破優先順位は
魔法使い>王>その他雑魚になるな

俺はナイフで切りつけておくぜ
あとはパンツを強奪されないように警戒をしておくのと
ズボンのベルトはきっちり結んでおく!

もしパンツを奪われたら殴る蹴る、ヤクザキックを
そこら辺のゴブリン共にかますぜ


初瀬=秀(イグニス=アルデバラン)
  ……何やってるんだろうな俺ら(遠い目)
仕方ねえ仕事だ仕事
頑張れよイケメン(絶対狙われないだろうと踏んでいる)
イグニス、お前は落ち着け。

広場辺りに罠を張って待機
ゴブリンが来たら奇襲だな
観念しやがれパンツ泥棒ども
俺は後ろの方で尊い犠牲に手を合わせつつ応援を……
おいちょっと待てなんでこっちにくる!?あぶれたからか!?
ふざけんな散れええぇ!(ズボン死守)
おい今トンデモ発言しなかったかイグニス!?
温泉行った時見ただろって違う!(セルフツッコミ)

手下を蹴り飛ばしつつ王が近くにいたらぶん殴る
パンツ ヌスムナ ソシテ ニドト クルナ。
(据わった目で脅し)
二度と近寄らないなら命までは取らねえからさっさと帰れ…!



ルイード・エスピナル(ドルチェ・ヴィータ)
  ■心情
趣味趣向をとやかくいうつもりは無いケド
人のもの盗むのはよくないよね…うん

■準備
新しい下着数枚

■行動
村人には事前に屋内に閉じこもっててもらう
我が身が可愛いならじっとしてるんだぞ!マジで!

公園などの広い所にパンツ(新品)を干して(難しい場合置く)隠れる
ゴブリンが誘き出されたところで
魔法使い>王>他
の順番で倒す

囲まれたら困るし
オレは普通のゴブリンの頭数を減らす側にまわろうかな
このズボンだけは、絶対に守ってみせる…!(ベルトを抑え)

そもそも何で男のパンツを集めるんだー!
いや、あんま知りたくないけど!

■事後
ゴブリン達から盗られたパンツが回収できるなら持ち主に返してあげたいけど…
まあ、廃棄だろうな


●静か過ぎる村で
 しぃん……と静まり返ったオルテ村。
 村人らは皆、息を潜めて自宅に引きこもっている。
 一歩でも外に出れば、ゴブリンに襲われてパンツを奪われるのだ。のこのこ出てくる奴はいまい。
 あまり大きくない村で唯一開けた場所となる噴水広場に、ウィンクルム達は集まっていた。
「しっかし趣味趣向をとやかくいうつもりは無いケド、人のもの盗むのはよくないよね……ウン」
 コンと小石を蹴り、ルイード・エスピナルは独り言を言い、頷く。
「しかしどうしてパンツを集めるのでしょうかね。気になるところです」
「そりゃもう、当人に訊くしかねーんじゃねえか?」
 初瀬=秀が、アイン=ストレイフの独り言に返事をした。
 その間に、真剣な表情で叶が荷物からパンツを取り出す。
「ここは演技力が肝心だね。こう……新品なんだけど使用済みのような顔をする……」
 それを精霊、桐華が残念な人を見る目で見下ろしている。
「今後、どこにも使えない演技だな、それ」
 ルイードは用意しておいたパンツを木に引っ掛けた。
 高原 晃司もパンツを広場の良く見える位置に設置する。
 勿論どれも新品だ。
「つくづくどうしようもない依頼だよな……」
 秀は遠い目で頷く。
「ほんと、何やってるんだろうな、俺ら……」
 パンツを監視する仕事である。
 パンツを監視し、パンツ欲しさにおびき寄せられたパンツコレクターゴブリンを一網打尽にする仕事である。
 どう言い換えても、なんともお間抜けな……。
「仕方ねえ、仕事だ仕事!」
 大声で思考を中断し、秀は割り切って、身を隠すべく茂みへと足を向けた。そのあとをオロオロついてくるイグニス=アルデバランは、
「なんということでしょう秀様のピンチがパンツ! あっ、パンチがピンツ! ん、パンツがピンツ? え、パンチでポンチ? 違う、パンツがピンチ! そうっ、パンツがピンチです!!」
 無駄におろおろと手足をばたつかせ、喋る内容は完全にコンフュージョンな精霊に、秀は頭をかきながら向き直る。
「イグニス、お前は落ち着け」
「はいっ、落ち着きます! すぅううーはぁあああー。しかしご安心ください私がお守りしますから! パンツを!! 秀様のPA・N・TSU・を!!」
 良い返事とお手本のような深呼吸をこなしたイグニスだが、大きな声で継ぐ言葉が残念すぎた。
「落ち着けてねえー!!」
 とツッコミを入れている自分も相当混乱していると自覚し、秀は咳払いを一つ。
「ごほん。ま、頑張れよイケメン」
「あ、私は大丈夫です」
 優雅に微笑む精霊に、秀は素で首を傾げる。
「なんでだ?」
「考えたんです。いっそ穿いてなければ取られないと!!」
 ドヤ顔でヅバーンと言い放ったイグニスに、秀は突発性の眩暈と頭痛を覚えた。
「へ、へっち、なのはいけないとおもいますっ」
 あうあうと七歳のセイヤ・ツァーリスが訴える。
 何でこの依頼来たのか、本当に大丈夫なのか(キャラを守る的な意味で)……と思うようなキラキラした少年だ。
 彼の後ろに控える執事兼精霊のエリクシアも同様にキラキラしている。パンツの攻防戦に巻き込まれるとはとても思いたくないキラキラぶりだ。
 しかしこのゴブリン依頼を受けたからには、全員等しく容赦なくパンツの危機に晒されるのである。
 茂みからまっすぐパンツを監視しつつ、ルイードは隣の精霊に命令した。
「……ドルチェ、とりあえずオレと一緒に行動しろな。ま、まぁーこんなアホな依頼やってられんと思うかもしれないけど、村人が困っている正式な事件だからね……って」
 振り向いたら、ドルチェ・ヴィータは茂みに同化できるように両手に枝を装備しながら隠れていた。
(ノ……ノリノリ……だと……ッ?!)
 ガビーンと心の顎を落としながら、ルイードはおずおず尋ねる。
「い、……意外にノリ気……なの?」
「面白そうだからね」
 息を潜めて、完全に潜伏モードの声で返事をされ、ルイードは首を振った。
「……お前の『面白い』の基準、分かんねーわ……」
 反対側の茂みで、セイヤはエリクシアをかがませていた。
「エリクは避けるのが苦手だから、心配だなぁ……」
 と顔を曇らせながら、せめてトランスしたテンペストダンサーとしての身のこなしでパンツを狙う魔の手から逃れて欲しいと願う。
「絆の誓いを貴方に」
 ちゅっ、というリップ音を隣に聞いて、晃司は目をひん剥く。
「ト、トランス……?!」
 ぎょっとしながら視線を前に移せば、ルイードがドルチェの頬に唇を寄せている瞬間を目撃してしまい、尚ぎょっとする。
 とっさに視線を外すと叶が桐華の頬にキスしていた。
 晃司は大いにうろたえたが、大丈夫、トランスしたのはこの三組だけのようだ。
 アインの視線を受け、晃司は眉を寄せながら首を横に振る。
「まだだ」
 ウィンクルムの『キスしてトランス』という制度に慣れない晃司、むしろ出来る限りトランス無しでなんとかしたい晃司は、ゴブリン程度でトランスするつもりはない。もちろん、パンツをひん剥かれれば状況は変わるが。
 またしばしの静寂。
 なかなかやってこないゴブリンに、緊張が緩んだ頃、桐華が鋭く声を上げた。
 広場の入り口に、人にしては小さい影が複数現れたからだ。
 一同は、固唾を呑んで影とパンツを見つめた。

●パンツ広場で
 キーキーと言いながらゴブリンたちはやってきた。
 わらわらと小さい褐色の人型ネイチャーが広場に入ってくる。
 杖を持ったゴブリンと、どう見てもメッキっぽい金ぴかで飾り立て頭には金色のビキニパンツをかぶったゴブリンが一歩後からついてくる。
 ——誰だ、あんな趣味の悪いパンツ所有してた村人は。
 という疑問をウィンクルムたちが共有している間に、ゴブリンは、ぽつんと落ちているパンツに気づいたらしい。勿論、おつむの弱いゴブリンは、何も疑うことなくパンツまっしぐら。
 団子のようにパンツに群がり、キーキャー言いながら誰が王にパンツを渡す役になるかで内輪もめ中。
「今だ。ドルチェ、蹴散らしてくれ」
「断るね」
「!?」
 神人の指示を拒否するドルチェに驚き、ルイードは精霊に勢いよく振り向く。
 当のドルチェはにやにやした口元を枝で覆い、
「ここで一気に叩いて潰そうと思えばできるけれど、それじゃあちっとも面白くないよね?」
 ここでゴブリンを叩きのめせば、ウィンクルムのパンツは守られるだろう。だが、それではつまらない。と、言い放つドルチェの顔はイキイキしている。
 ついでに、愕然としているルイードの表情もドルチェにとっては面白かったらしく、ますます顔が輝く。
 別に命の危険が迫るようなシリアスな依頼ではないし、ここぞとばかりに楽しまなければ損である。
 ——だが。
 広場をつんざく銃声。
「逃がしはしませんよ」
 アインの銃が火を噴いたのだ。
 ゴブリン魔法使いを狙いたかったが団子過ぎてどれが誰やら分からなかったので、とりあえず団子めがけて撃った。
 キャーと悲鳴をあげて蜘蛛の子を散らすようにゴブリンが散会。残念ながら弾はパンツに当たっただけで、ゴブリンには当たらなかったようだ。
 焦げた穴の開いたパンツが宙を舞う。
「よし、これで連中が良く見えるな!」
 晃司が茂みから立ち上がる。手にはナイフ。
「キョエエエー」
 凶器に気づいたゴブリン魔法使いは、老木の枝のような杖を振り回して、ゴブリン語らしき呪文を唱えた。
「いててっ」
 魔法の小石、つまりマジカル小石が晃司に雨あられと降り注ぐ。
「魔法、まあ普通な方だったな。……よかったっつーとアレだが、よかった」
 秀が胸をなでおろす。パンツ系の魔法だったらどうしようと心配していたのだ。パンツ系の魔法ってどんなだ。
「畜生、変態野郎共め、ボコボコにしてやる!」
 晃司がゴブリンへと近寄る。
「って、うわー、ちょ、やめ、登るな! 引っ張るな!!」
 案の定、ゴブリンに群がられた。
「ッギャーー!!」
 予想はしていたもののあまりの光景にウィンクルム達が固まっていると、あっという間に、ほかほかの黒ボクサーパンツがゴブリンの手に渡ってしまった。
 ズボンごとパンツを脱がされては、もう動けない。しゃがみこむ晃司を見て、アインは湧き上がる衝動を押さえ込んだ。顔には絶対に出さない。それがアインの意地である。だが自分を抑えるのに懸命過ぎてアインは、動くのが一瞬遅れた。
「あわわ、大変です」
 アインより先に我に返ったイグニスが茂みから飛び出す。
「ほーら、イケメンさんとパンツですよー!」
 と口に両手を当て大声でゴブリンを呼んでみるイグニス。
「おっと、お呼びかな?」
 イグニスの反対側から叶がパンツを頭上でぶん回しながら登場。
 ゴブリン王が叫び、ゴブリンが叶へ方向転換する。
 そのスキにルイードは、持ってきていた別の新品パンツを晃司に投げた。
「囲まれたらあんなになるのかよ、怖すぎる!」
 ズボン死守を改めて決意しながら、ルイードとドルチェは茂みから出た。
「いやー、これは脱ぎたてパンツなのー」
 と滅茶苦茶恥ずかしそうな叶が、頭上でぶん回すパンツ。行動と表情と言葉があっていない。
 鬼ごっこには自信のある彼が広場を駆けずり回ると、ゴブリンの中から落伍者が出てくる。ついていけなかったらしい。
 走力に劣る者は、今度は並んで立っていた桐華とエリクシアへタックルを試みる。
 だが、するりするりとまるで剣舞かのように二人はゴブリンのボディプレスやスライディングを避けていく。
「……こんなことに技を使うとはな……」
「いやー、華麗華麗! さっすが桐華! 期待通りの身のこなしだよー! 囮がんばってー!」
 桐華は、パンツを振り回しながら走り回りつつこちらに叫んでくる神人を横目で見、心底他人のふりをしたいと思った。授業参観で応援してくる母親を背にした思春期の男子のような気分だ。
 逆に、エリクシアを襲うゴブリンを見て、彼の神人はパタパタ走りより、
「ぼくのエリクになにするのっ! めっ!」
 と言いながら小刀を振るってくれる。
 そしてゴブリンに反撃とばかりに襲われて悲鳴をあげるセイヤを、エリクシアが守る。
 同じテンペストダンサーコンビなのに差が凄い。
「わっ、エ、エリクありがとう……」
 体を張って守ってくれる精霊の背を見上げ、セイヤは自分の胸をぎゅっと押さえた。
 胸がどきどきする。(恋です)
 顔が熱い。(恋です)
 エリクを見ると目が潤む。(恋ですってば)
「ど、どうしよう、こんなときに持病の発作が出るなんて……」
 恋だっつってるのに、セイヤはこの症状を持病だと信じ込んでいるのだ。
 もう片方の神人は、
「そーら、とってこーい!」
「キー」
 パンツに石を包んでブンブン振ったあとに、大きく振りかぶって投擲。ゴブリンにパンツを追いかけさせていた。

●誰も油断してはならぬ
 混戦のスキをぬい、イグニスはマジックスタッフに嵌った濃紺の宝玉から魔法弾を発射、ゴブリン魔法使いを撃つ。
「キヤッ!」
「ライバル! 負けませんよ!」
 ゴブリン魔法使いと張り合うイグニス。それでいいのかエンドウィザード。
「加勢するぜ!」
 とゴブリン魔法使いを剣で切りつけようとするルイード。だが、ガクンと後ろから引っ張られてつんのめり、剣は地面を刺す。
「なにす……王?!」
「クレ、パンツ」
「嫌に決まって……ちーぎーれーるー!!」
 ゴブリン王とルイードのパンツ綱引きが始まる。なお、頼みのドルチェは……爆笑している。
 だが、因果応報というのだろうか。ずるっと足を滑らせたゴブリン魔法使いが、とっさにドルチェのベルトにしがみついた弾みでドルチェのパンツが一瞬、公衆の面前に現れた。
 もちろん、ドルチェはすぐにズボンを上げ、ゴブリン魔法使いを蹴り飛ばしたので、晃司ほどの大事には至らなかったが。
 だが、バッチリ彼のパンツを見てしまったルイードは驚く。
「お前、ふだんそんな派手なの履いてないだろ?」
 思わず言ってしまった。だって黒Tバックだったんだもん。
「あっれぇ? ルイードったらいつもボクのパンツ見てるの?」
「なっ、そんなわけなっ」
 真っ赤になったルイードが反駁するも、ドルチェは(悪い)笑顔で、
「えっち♪」
 などと言う。ますます赤くなってルイードが反論を重ねようとするが、
「だからちが……って、キャアアーー!!」
 そのスキに王がズボンを降ろしていた。ボクサーパンツがまるみえである。
 流石に哀れになったか、身を屈めるほど笑いながらドルチェがタイガークローで王を斬った。笑ったせいで本来の破壊力は出なかったが、王は悲鳴をあげてルイードから飛びのく。
 大慌てで着衣を整えるルイードは、泣きそうな位赤面している。
「そんなに赤くならなくっても」
「赤くなるだろ、フツー! なんでお前は大丈夫なんだよ!?」
「恥ずかしがるから恥ずかしいんだよ」
 笑いすぎて目尻にたまった涙を拭い、息を整えながらドルチェは平然と告げた。
「んにゃろぉおおお!」
 晃司はキレていた。まさかの開幕一番手でパンツを奪われるとは思っていなかった。
 怒りに任せてゴブリンを殴る蹴る、踏み潰す。強い。鬼神か。
 もはや恥ずかしいとか考えている場合ではない。
「アイン! トランスだっ!」
 いつもの躊躇など微塵もない。高らかにインスパイアスペルを叫ぶ晃司。
「覚醒の誓いを今ここに!!」
 アインの頬に晃司の唇が触れるなり、アインの体がウィンクルムの絆の力で光りだす。
 まさかのパンツ依頼で、カッコイイトランスシーン。
「観念しやがれパンツ泥棒共……」
 わんさと出てきたイケメンに、どこを狙うべきかと右往左往しているゴブリンを見、秀は広場の端で、色つきメガネを掛けなおし、ニヒルに呟いた。
 自分は高みの見物を決め込むつもりだ。
「尊い犠牲に感謝すんぜ……っておいぃいい!?」
 自分の方に走ってくるゴブリンを認め、秀は先ほどまでのニヒルはどこへやら、大いに慌てだした。
「ちょっとまて、なんでこっちにくる!? あぶれんな! 向こう行けって……」
 がっしりとズボンのウエストを掴まれ、
「ふざけんな、何してんだァアア!!」
 大絶叫するも、数体のゴブリンにぶら下がり健康器よろしくズボンにぶら下がられては、重力にしたがって秀のズボンはじりじりと……。
「散れええええ!!」
 ぶんぶん体を振られ、ゴブリンはストラップのように揺れまくるが、しかし執念のように手は離さない。揺らす力もズボンを降ろす力になる。
 じりじりと青いトランクスのゴムが見えてきた。なお、新品。
「きゃあああ、秀様!? 秀様のパンツがピンチに!」
 ゴブリン魔法使いとタイマンしていたイグニスが、勝負を放り投げて、悲鳴をあげながら神人へと駆けつける。
「ゆゆ許しませんよ、私ですらパンツ見たことないのに!」
 といいながら、秀のズボンに取り付いたゴブリンを引っ剥がす。
「おい今トンデモ発言しなかったか、イグニス!? どさくさにまぎれて?! 温泉行った時見ただろってちッがーう!!」
 ブォンブォン風を切る勢いのある手刀を切って、全力のセルフつっこみを入れる秀だった。

●何かお忘れではないかい
 晃司の獅子奮迅の八つ当たりに、エリクシアと桐華の剣舞、そしてようやく本気を出すことにしたドルチェに、魔法使い対決や『積年の秀様のパンツの恨み』(「待て、イグニス! 全然積年じゃねえから!」という秀の突っ込みは総スルーされた)に燃えるイグニスにより、気づけばゴブリンの大半はぶっ倒れ、ゴブリン魔法使いは戦闘不能。
 ゴブリン王を含め動けるゴブリンらは、ぶるぶる震えて広場の隅っこに固まっていた。
 この期に及んでまだ晃司の黒ボクサーを握り締めている。
「アイン、ダブルシューターだ」
 怒りに満ちて冷酷になってしまっている晃司が、王をしとめることを精霊に命じるも。
 セイヤと秀が、晃司を止める。
「ゴブリンさんはまだ人に危害は加えてない、ですし、こ、殺さなくっても、追い出せればいいと思う、です。へ、へっちなのはいけない、ですけど。『もろり☆イケメンだらけのパンツ脱がし大会』をやめてもらえるなら、い、いいんじゃない、でしょうか」
 一番、生々しいことを言っているが本人はいたって真面目に、必死の説得をしているので、あえて誰もそこには触れない。
「ま、お仕置きには十分なんじゃないかな」
 パンツを指先でクルクル弄んだり、パンツをつまんでユラユラさせてゴブリンの首を動かしたりして遊んでいる叶が頷く。
 怒り覚めやらぬ晃司の肩を叩き、
「まぁまぁ、ここは俺に任せとけ。な?」
 秀が王に歩み寄る。
 そして王の脳天に一発拳骨を落とすと、据わった目で王を見据えた。
「パンツ ヌスムナ ソシテ ニドト クルナ」
 カクカクカクと頷く王を蹴り飛ばし、
「二度と近寄らないなら命まではとらねえから、さっさと帰れ……ッ!」
 と秀がドスの利いた声でどやすと、ゴブリン達は仲間を背負い、脱兎のごとく村から逃げ去っていった。
「めでたしめでたし。オーガでもない子を殺すのも夢見が悪いからね」
 叶がパンパンと手を叩き、帰ろうと一同を促す。
「結局なんで男のパンツ集めてたんだろうな。いや、あんま知りたくないけど」
 と帰路の途中でルイードがふと思い出したかのように言うと、ハッと気づいた晃司が素っ頓狂な声で叫ぶ。
「俺のパンツーー!!」
 返してもらってなかった。
 夕闇のタブロスに男の絶叫が木霊する。



依頼結果:普通
MVP
名前:初瀬=秀
呼び名:秀様
  名前:イグニス=アルデバラン
呼び名:イグニス

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: ふくろう  )


エピソード情報

マスター あき缶
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル 日常
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 4 ~ 5
報酬 ほんの少し
リリース日 05月19日
出発日 05月26日 00:00
予定納品日 06月05日

参加者

会議室

  • 取りあえずここで相談したようなことはまとめてみた。
    あと心の準備もできた(キリッ)

    期限ギリくらいにもっかい覗けたら覗こうと思ってるので、
    何か追加事項とかあれば言ってやってな。

    ちと早いけど、皆の健闘を祈るっていうか、お互い清い身体で帰ってこような…!

  • 特に反対意見もなさそだし、じゃあ大体あんなイメージでいいんかね。

    ・村人
    自宅待機にオレも賛成ー

    ・誘き出す
    広さのある場所を事前に決めて、パンツ(新品)を置いておいたらいいかな
    地面にぽん、だと目立たないから同じ様に干しておくのが無難かね

    ・戦闘
    敵数多いし、オレとドルチェは頭数減らすのに
    普通のゴブリンから倒そうかなーって検討中だね!
    回避は数字がアレだし、ローズガーデンでカウンター狙いとかね。

    ところで皆今回トランスする?
    オーガ相手でもないし、しなくても困りはしないだろうけど
    どっちがいいのかなーとかとか

  • [9]セイヤ・ツァーリス

    2014/05/25-10:16 

    そうですね、ルイードさんの流れが良い感じ、ですね。
    ぱんつをかけた鬼ごっこ……ゴブリンさんと、あそぶ、です?

    干してあるぱんつに反応してた、です、から、おとりはパンツを
    買っていくのがいいかも、ですが。
    ……ゴブリンさんは20体もいる、ですから
    ぱんつはいっぱいに必要となるきもする、です……?
    全方向から(脱がしに)来られるのを防ぐために誘導したいとこ、です。

    村人さんは自宅避難で良いとおもう、です(こくこく)
    魔法使いさんの魔法、は……もしぱんつに関係するものなら
    もうどうしようもない、です、ね(遠い目)

  • [8]初瀬=秀

    2014/05/23-12:59 

    回避率なんて飾りです!とうちの相方が叫んでいた。
    流れはルイードのやつでいいんじゃねえかね。
    公園でゴブリンと(パンツ賭けた)鬼ごっこか……シュールだな……

    パンツ置いといてゴブリンが群がったところにカナリアの囀りぶち込もうかと思ったが
    10m四方に被害が拡散するので危険だった。
    この前の依頼でも言ったんだがこれ以外に機会が限定される。

    村人は自宅避難でいいんじゃないか?万一集まったところ襲撃されたら大惨事だろうし。
    村人に意識が行く前に囮に気づかせりゃいいか。

    魔法使いの魔法な……真面目に考えりゃ攻撃なり行動阻害(回避率低下とか)なりだろうが
    これで穿いてるパンツの柄を当てる魔法とか使って来たらどうするよ?
    いや害はないだろうが。自分で言っといてなんだが精神的に嫌だな。

  • [7]叶

    2014/05/23-04:35 

    セイヤの発言聞いて気になったけど…回避率、えらいことになってますね…(みんなのステシをちらちらしつつ)
    やっぱりうちの桐華さんには目一杯体張って貰おう。
    エトワール、こんなことに使われるとは思ってなかっただろうなぁ…

    ルイードの流れイメージ、大体僕も一緒(ぐっ)
    見通しの良い所で、程よく障害物のあるところ、だと理想だなぁ
    そのイメージだと公園とか、かな?

    村人の子は、避難するなら、どっかに集まって貰うよりは
    自分ちで厳重に戸締りして貰う方が、良いのかな。

    魔法使いの魔法…何だろう、攻撃よりもこっちの行動阻害とかの方がきつい気がしてる…

  • 村人には心に傷を負っても可哀想だし、個人的には避難してもらいたいかなー。
    我が身可愛さに犠牲になって頂くのも…まあ、場合によっては。

    オレも司令塔から倒すのさんせーい。

    流れのイメージとしては
    ・イケメンな囮をつかうなどしておびき寄せるなどする
    (見通しのいい広いとことか?)
    ・パンツ守る
    ・魔法使い倒す
    ・パンツ守る
    ・王倒す
    ・パンツ守る
    ・他のゴブリン倒す

    って感じか。
    勝手なイメージで言ってるので、ここから肉付けなり軌道修正なりしてもらえれば。
    あと、デミは解説見る限りいないってことでいいの、かな!

    ところで魔法使いってどんな魔法つかうんだろうな…嫌な予感しかしねーべ。

  • [5]高原 晃司

    2014/05/22-16:29 

    すまん!挨拶おくれた!晃司だ
    よろしく頼むぜ!

    パンツ…しかも男物を集めるなんてなんかの変態集団なんかな?
    村人をどうするかだよな
    囮として使うかもしくは避難させるか
    どちらにしても俺らがひどい事になるのは予想済みだけどな

    アインは残念ながら範囲攻撃ができねぇからやっぱ頭狙ってからの雑魚処理かな

  • [4]初瀬=秀

    2014/05/22-12:46 

    初瀬だ、相方はエンドウィザードのイグニス。
    顔見知りも初顔もよろしくな。
    パンツ集めてどうするかは王にでも聞けばいいんじゃないか。安全は保障しかねるがな!

    そうだな、頭を先に潰せば集中攻撃は……うん、本能で動いてるっぽいがまあ散るだろ。
    習性からすると一旦狙われたら覚悟はしておいた方がいいんだろうな……

    変なトラウマ受けてもなんだから俺らで対応できりゃいいんだろうがな。
    まあなんだ、美少年美青年たちは頑張れよ。
    四十路のおっさんは後ろから応援してるから。

  • [3]セイヤ・ツァーリス

    2014/05/22-11:26 

    えと、あの、セイヤ、です。
    パートナーはテンペストダンサーでエリク、です。

    え、えっちぃなのはいけないとおもう、です!
    めっ! しなきゃ、ですねっ。
    魔法使いさんと王様を先に倒して、デミ・ゴブリンさん……かなあ。
    エリクは回避が出来ない人なのでエトワールでなんとか回避力をあげていきたい、です……。

  • [2]叶

    2014/05/22-01:19 

    はーい、お邪魔様、叶って言いまーす。
    生贄…もといパートナーはテンペストダンサーの桐華。

    狙えそうなら魔法使いの子から倒せたら良いのかなー。
    指揮が崩れたら群がられる危険も減るかなって。
    数がこっちの倍居るからねぇ、手段で来られたら大変そうだし。

    村の子に囮になって貰っても良いけど、
    何か普通に新しいパンツばら撒いても良いんじゃないかって思ってたりも。

  • 野郎のパンツ集めてどーすんの!?
    願いとか叶うの??
    びくりした上で一周して気になって参加しちゃったじゃねーか…

    あ、挨拶忘れてた。オレルイード。
    精霊はシンクロサモナーのドルチェってーの。よろしくよろしくー。

    とりあえずオーガもいないらしいし、
    成否に関してはそんな構えなくてもよさそうネ。
    その分守りに力入れろってことかな!


PAGE TOP