願いの一筆箋(あき缶 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●したためるこころ
 それはちょっとした昔話。
 水の妖精が住むという祠の湧き水に、秘めたる恋に悩む少年が、誰にも言えない想いをしたためた手紙を溶かした。
 それを読んだ妖精は、彼を哀れに思って、恋を叶えたという。

 そんな話が伝わる村で、手紙を書くイベントが行われるのだとか。

「文具市の開催に合わせて行われる小さなイベントなんですが、行ってみてはいかがですか?」
 にこにこして、A.R.O.A.の職員がウィンクルムに教えてくれた。
「単に手紙を書くだけですが、こんな機会でもないと手紙なんて最近書かないでしょ」
 もらえるのは、水に溶ける紙で出来た一筆箋たった一枚。数行書けば紙面が終わる。
 だから、短い言葉に万感の想いをこめることが大事。
「祠の泉に、お願い事や誰にも言えないことを書いて溶かすのもいいですし、防水封筒にいれて、誰かに送るのもいいですよね。ほら、最近会えてない人とか、こういう機会でもないと連絡しないじゃないですか」
 泉に溶かすか、ポストに投函するか……それは自由に決めていいけれど、もらえる一筆箋は一枚だけだから、どちらもとは欲張れない。
「あぁ、もちろん……隣の人に、手渡ししたっていいんですよ」
 いたずらっぽくウインクして、職員は鼻歌交じりに去っていった。

解説

お手紙を書きましょう。というイベントです。
ついでに文具も購入できます。

●手紙で出来ること
1、祠の泉に手紙を溶かす
 願い事や秘めた想い、誰にも言えない懺悔などを書いて泉に溶かします。
 蝋燭で照らされている祠は狭く、二人くらいしか入ることが出来ません。

2、防水封筒にいれた手紙を投函する
 家族や恩人など、誰に送ってもかまいません。ちゃんと宛先は書いてくださいね。

3、手紙を誰かに手渡しする。

4、手紙を誰にも渡さずに持って帰る。

●一筆箋について
 3行程度しか書けない短冊状の便箋一枚。
 神人と精霊に一枚ずつ無料配布されます。
 水につけると数秒で溶けて消えます。

●プランに書いて欲しいこと
・手紙をどうするか:番号で結構です。
・誰宛の手紙か
・手紙の内容:本文でもディテールでもOKです。

 今回は、神人の手紙内容でもウィッシュプラン(非公開)に書いていただいて構いません。

●文具市について
 同時に文房具の市場が開かれています。
 10〜1000ジェールくらいの価格帯で、便箋やシール、ペンや画材が販売されています。
 ご予算と欲しいものをプランに書いていただければ、予算の範囲内で欲しいものを発見し、購入したと判定します。
 ただし、「10ジェールで万年筆」などムリがありすぎる予算の場合は購入できなかったという判定になります。
 なお、ジェールは消費しますが、アイテム配布はできません。
 RPへの反映はご自由にどうぞ。

ゲームマスターより

お世話になっております。あき缶でございます。
口では言えない事も手紙なら伝えられるかも。
誰かに手紙を出すことで、大切な人に自分のことを話すきっかけができるかも。
手紙が、手紙に関する話題が、お二人の仲を深められれば幸いです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

高原 晃司(アイン=ストレイフ)

  手紙をどうするかについては3を
送る相手はアインに送るぜ!
ってか俺にはもう家族もいねぇからアインに送るしかねぇんだけどな。

手紙とか本当にあんまり書いた事ねぇからなー
と言っても三行程度だしな
とりあえずアインに普段世話になってるからありがとうの気持ちをつづってもいいよな!

とは言えまずはペンを買ってこないとな
それと折角だし封筒とかも買うかな
できればアインが好きそうな落ち着いた色合いのがあればいいんだけどな

手紙の内容は
アインいつも俺を世話してくれてありがとうな!
アインが居なかったら今の俺は無いと思ってる
これからもよろしく頼むな!

って感じで書いて封筒に入れるぜ
「…ほら、アインとっとと受け取れよ!」


スウィン(イルド)
  3.イルドへ
昔話…ロマンチックね~♪
祠の泉に手紙を溶かすっていうのも、なんかいいわ
でも秘めた想いとか懺悔とかはとくに思いつかないのよね
確かにこんな機会じゃないと手紙なんて書かないし
折角だから何か書きたいけど…?(考えながらイルドをちらっ)
そうだ、手紙を交換しましょ!決定!
イルドはどんな手紙をくれるのかしら?楽しみだわ~♪…はい!
(期待の眼差しで了承させ、さらさらと綺麗な字で書いて交換)
『いつも守ってくれてありがとう!これからもよろしくね!』
イルドからの手紙…すっごいレアね!おっさんの宝物にするわ~♪
(照れたイルドに追いかけられ、楽しそうに逃げる)
捕まえてごらんなさ~い♪絶対返さないわよ~!



アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
  いつも有難うとか、お前との同居生活も慣れてきたぞとか、書きかけて…消す

どうせ読まれないように水に溶かしてしまうのだからと思いなおして心の中を書くことにした

==
セクシャリティの壁ってのは超えにくいものなんだ
だから中々お前の気持ちに応えてやれなくてすまないと思ってる
オーガを倒すという大義名分だけじゃなく、俺を好きだというのなら…
俺に時間をくれ
結論は今はまだ分からないけれど、努力はしてみるから
==

ランスに気付かれないようにこっそりと溶かしてしまおう
これは俺の中の区切なのだから…

もし奴に見られそうになったら隠すか水の中に落そうとする
読まれたら→観念してちゃんと向き合う
読まれなかったら→いずれ話すと謝る



栗花落 雨佳(アルヴァード=ヴィスナー)
  …あ、絵具が切れた…
文具市?へぇ…そんなのがやってるんだ…?
丁度いいから画材を買ってこようかな

・黙々とカンバスに向かうと、手に取った絵具がない
精霊からそうゆう市がやっていると聞いて行ってみる
1000Jr程度で適当な画材を買う

うーん、何が足らなかったっけ…
これと…あ、この筆欲しいな…

…水に溶ける…か
…秘めている想いを溶かしてしまうのも、悪くない…かな
君は何か書く?

・内緒。と見せようとしないが気を抜いてチラ見される

…君はまっすぐで、僕にはちょっと眩しいな…

そうだね
ごめん…僕が悪かったよ…

…それ、書かないんでしょ?頂戴

…これは君に
この想いは溶かさないで君に知っていて欲しいから

ねぇ、仲直り出来る?



アイオライト・セプテンバー(白露)
  文具市ってわくわくしちゃう。かわいいものがいっぱいだもん。
あたし、緑のペンが欲しいな。メロンのいい匂いのするの、あるかなあ?
予算は……パパ買ってくれないよね(しょぼ)……100ジェール以内で買えるといいなあ。
なんで緑かっていうとね、緑のペンでラブレターを書くと両思いになるって、おまじないを聞いたから。
ね、パパ。手貸して。文様がないほうね。
「パパだいすき☆」っておまじない書いてやるー☆ パパとずっと一緒にいられるように。
あれ、もしかしてこのおまじない、誰かに見られたら効果がなかったかも。
じゃ、じゃあ、あたしの名前も書こうっと。だって、自分の名前を書いておいたらなくしても戻ってくるんでしょ?


●色の坩堝
 かの文具市は、食品のそれにくらべればずっと静かな市だった。
 客は皆じっくりと己の相棒となる筆記具を見定め、対話する。店主も心得たもので派手な呼び込みはせず、客と商品の対話を見守り、時には助言を、時には連れて行って貰いたがる商品の後押しをする程度。
 落ち着いた雰囲気の中、しかし筆記具たちはさまざまな色を誇り、見るだけで心をさざめかせる。
「わぁ……」
 絵を学ぶ美学生として、心躍る光景だ。栗花落 雨佳は物静かな相貌を歓喜に崩す。
「思った以上に品揃えがいいね。アル、教えてくれてありがとう」
 この市の開催を雨佳に教えたのは、彼の精霊だ。
「予算はいくらくらいなんだ」
 礼には返事をせず、アルヴァード=ヴィスナーは端的に尋ねた。
「1000ジェール程度かな」
 アルヴァードは内心の驚きを、僅かな眉の動きに漏らしてしまった。
 1000ジェールは中々大金だ。コンビニのバイトが二日必死で働いて手に出来るくらいの。
 しかし良い道具を手に入れようと思えば、金もかかる。職人の精魂込めた品には、それ相応の対価が必要なのだ。
 なので、アルヴァードは、そんなものだとすぐに納得して、驚きを口にすることは控えた。
 彼には良い道具で良い絵を思う存分描いてもらいたい。描いている間、ずっと自分は放置されるが、もうそれは慣れた。絵を描くのが神人の無上の喜びであるならば、追求してもらいたい。
「まずは何を買うんだ?」
「そうだね……絵の具が切れたから、まずは絵の具を」
 いそいそと、さまざまな色のチューブが並ぶ画材屋に雨佳は足を向ける。
 今描いている絵の続きのための絵の具だ。メーカーが違えば微妙に色味も違う。
 探しきれないので、素直に雨佳は店員に、愛用しているメーカー名と足りない色を伝えた。もうすぐなくなりそうな色も保険で買っておくことにする。
 すぐに必要な絵の具が出てきて、対価を滞りなく支払う。
 次、とばかりに背を向けようとする雨佳に、
「あぁ、もし、このメーカーの絵の具の色がお好きなら……」
 丁寧で控えめな口調で店員は声をかけた。
「こちらのセットはいかがでしょうか。初心者入門用のアクリル絵の具ですが、とてもロマンチックなのでお勧めです」
 と二十四色セットの箱を店員はおもむろに見せる。
 箱の絵は、どこかの屋敷の門だった。
 白煉瓦の上に黒い柵。柵に絡みつく蔓薔薇は今が盛りで、甘い香りが漂ってきそう。蔓薔薇の奥、屋敷の庭には立派な楠が葉を繁らせている。穏やかな世界を柔らかな雨が湿らせている……そんな優しい絵だった。
 雨佳の目が箱に吸い寄せられたのを見て、店員は微笑み、箱を開いた。
 箱の裏には、セットの絵の具一覧が記されている。
 だが絵の具は色の名前ではなかった。
 朝靄、宵闇、夕日、湖畔、新緑……。
「名前が、ステキでしょう? 入門者セットですからお値段は100ジェールもしませんし、コレクションとしてもお勧めです」
 雨佳はそうなるのが当然というような動きで、財布を開いた。
「ありがとうございましたー」
 店員の声に送られて、雨佳達は店を後にする。
「……買っちゃった」
「いきなり衝動買いか」
「いいじゃない。あ、アル、よかったらこれで絵を描いてみる? 教えるよ?」
「いらねえ」
 やっぱり、と即答に苦笑する雨佳。
 そこに、不意にだみ声が割り込んだ。
「兄ちゃんたち、絵描きさんかぃ」
 赤い鼻の老人が、店の奥から手招きしている。
「まだ、絵描きというわけではないんですけど……」
 と言いながらも、雨佳は老人に近寄った。
「筆屋さんですか」
「そうだよ、俺が作ったんだぃ。どうだい、天然のテン毛だよ」
 雨佳は、ずらりと並んでいる中から、一本丸筆を手に取る。穂はノリで固まっていたが、なるほどツヤリと程よく油が乗っていて、美しいまでの光沢を誇っていた。
「そんじょそこらの筆じゃぁねえ。毛抜けなんかありゃしねぇぜ」
 もちろん、天然毛だから使っていくうちに切れちまうのはしょうがねえがなぁ、ガハハと笑う老人。
「水や絵の具の含みもいいし、コシがあって描き良いことは保証するぜ。それに直販だ。他所より安いぞ!」
 だが問題は安いとは言うものの、価格だ。この筆を平筆と丸筆一本ずつ買ったらもう予算が尽きる。
 勿論、タブロスの市中でこれと同じレベルの筆を買おうと思えば、もっともっと金が必要だが。
 しかし、ここで購入してしまうと、市の序盤でもうお金がなくなってしまう……。
「うぅん……」
 先ほど絵の具を買った画材屋にも筆はあった。だが、こんなにいいものではなかった。
 雨佳は筆を前に悩む。
「買えよ」
 悩む神人に、アルヴァードはポンと言葉を投げた。
「え?」
 きょとんと筆から視線を移してくる雨佳に、
「良い道具は裏切らないぜ」
 とだけアルヴァードが言う。
 トラットリアでシェフををしている彼は、道具の大事さを知っている。
 種類は違うが、彼も芸術家の一種であり職人だといえよう。
「……そうだね。じゃあ、ください」
「まいどありぃ」
 予算が尽きた。
「もう見ないのか?」
「欲しくなっちゃうからね。これ以上お金出すと明日からの生活が……」
 柔らかく苦笑する雨佳。
 普段は何にも頓着しない、欲など皆無のように見える彼でも、絵にだけはこだわりがあるのだろう。
 生き人形のような彼が唯一生気を見せる瞬間が、絵画だった。
「ほら、これもあるし、ね」
 黙るアルヴァードに、雨佳が見せるのは入場時に配られた一筆箋だ。
「そうだな。溶かすなら祠はあっちだ」
 と先に歩き出したアルヴァードの背を見つめながら、
「水に溶ける……か」
 と雨佳は呟く。
(秘めている想いを溶かしてしまうのも、悪くない……かな)
 思い出すのは、あの潰えた故郷。血まみれの世界の彼。戯れに残された自分。
(消えるなら、『会いたい』と……書きたいけれど)
 きっとあの精霊は怒るのだろう。ならば。
(『君と生きて行きたい……』これは溶かさなくていいよね。すぐ傍にいるのだもの)

●ひみつのおまじない
「わー。いっぱいペンがあるー!」
 アイオライト・セプテンバーは、色の洪水のような市にはしゃいでいた。
「こういうのってワクワクしちゃう。かわいいものがいっぱいだもん!」
 犬や猫のシールに、果物のような丸いメモパッド、押し花のしおりに、面白い形のクリップ……。
 文具はアイデアが詰まった雑貨でもある。
 アイオライトは蜜を楽しむ蝶の様に、あちらこちらを跳びまわって商品を見ていく。
 彼の財布には100ジェールが鎮座している。
(パパ買ってくれないよね……このお金で買えるといいけど)
 しょぼんとちょっぴり寂しい財布を見つめ、しかし気を取り直してアイオライトは探し物を続けた。
「アイは何を探しているんですか?」
 パパこと白露は、アイオライトに一生懸命ついていきながら(迷子になられると困るので)、尋ねる。
「んっとね、緑のペン!」
「ペン……あぁ、この手紙を書くためですね」
 と見下ろすのは、入場時に有無を言わさず押し付けられた薄い紙の細長い便箋だ。
「でもどうして緑?」
「えっ? ……べ、別にいいじゃん、何色でも!」
 アイオライトは慌ててプイとそっぽを向く。
(緑のペンでラブレターを書くと両思いになるっておまじないだけど……言うの恥ずかしいよ)
 だが、そっぽを向いた先に目当てのものがあった。
『香りつき! もぎたてフルーツペン』と書かれたポップの棚に、ずらりと並んださまざまな色のペン。
 赤はりんご、ピンクはいちご、黄色はレモン、橙はオレンジ……と色から連想されるフルーツの香りがついているペンだ。
「わぁ」
 アイオライトご所望の緑は、メロンの香りだった。
「これください!」
 勿論予算内で収まる。
「パパ、あったよ!」
 と振り返ったら、白露は向かいの店で羽ペンに興味津々だった。
 もーっとアイオライトがふくれっ面をする前に、
「お嬢ちゃん。これ、おまけだよ」
 常に女装しているアイオライトを、少女だと勘違いした店の老婆が笑顔でペンと一緒に包みをくれた。
「わー、カワイイ! ありがとー」
 少年は瞬時に機嫌を直し、透明な包みの中身を確認する。お風呂に浮かべるあひるさんが書かれた水色の付箋だった。
 あひるさんから吹き出しが出ていて、そこに文字が書けるというデザインだ。
「パパよろこびそう!」
 付箋を持って、白露の元へと走る。
 おおはしゃぎのアイオライトに若干押され気味の白露は、付箋を渡されるや否や、そのまま市の外へと引っ張られていく。
「あ、ちょっ」
「ね、パパ、手かして?」
 そう言われて素直に出した手に、アイオライトは買ったばかりのペンで、『パパだいすき☆』と書いた。
「アイ……」
 びっくりしている白露をよそに、
(あれ? もしかしてこのおまじない、人に見られたらダメだったんだっけ?)
 とアイオライトは今更焦る。
 そして、追加でアイオライト自身の名前を書いた。
「自分の名前を書いたら、なくしても戻ってくるでしょ?」
 とはにかみ、白露が何か言う前に、アイオライトは祠へと走る。
 少年の手には、こっそり書いた亡き姉への手紙。誰にも見せず、泉の妖精に持っていってもらうための手紙。「元気だよ、大丈夫だよ」と。
 白露は己の便箋を見やる。何を書こう。書くならば、思いがけず一緒になった彼に何かを……。
(それは今じゃなくても、いいですよね)
「早くー!」
 追いつかない白露を急かすように、アイオライトが手を振っている。
「ま、待ってください!」
 あわあわと便箋をポケットにねじ込み、白露は彼の後を追いながら、お風呂に入ったら手の字は消えてしまうだろうけど、アイは泣いてしまわないかな……と心配しているのであった。

●交わす想い
「ロマンチックね〜!」
 一筆箋を貰うついでに祠にまつわる伝説を聞いたスウィンは、歓声をあげた。
 そして一筆箋を眺めて、思案に耽る。
「手紙なんてきっかけがないと書かないし、折角だから何か書きたいけれど……溶かすような想いとか懺悔とか、特にないのよね」
 そしてチロリと横にいる精霊を見てニッと笑う。
「そうだ。手紙交換しましょ!」
「え!?」
 いきなり話をふられて、精霊イルドは面食らう。
「おい、なんで隣にいるのに手紙交換するんだよ! 口で言え、口でっ」
 しかし、スウィンは大焦りのイルドなんて気にしない。
「決定♪ イルドはどんな手紙をくれるのかしら? 楽しみだわ〜♪ ほんと楽しみだわ〜」
 大いにプレッシャーを与えながら、スウィンは鼻歌交じりに便箋へペンを滑らせる。
 断れない空気にイルドは大いに汗を垂らしながら、ウンウンと紙切れを前に脳みそを絞り始めた。
「て、手紙か……」
 そもそも今までそんなものを書いた覚えがないイルドだ。書き方が分からない。
「ハイケイ? ゼンリャク? いや、違うよな」
 手持ち無沙汰にペンを回し、薄い便箋を弄りながら、
(水に溶ける紙なんてスパイグッズみたいだな)
 とよそ事を考えたりしていると。
「はいっ! できましたっ」
 ずずいと二つ折りになった便箋を差し出された。
 イルドは受け取って目を通す。綺麗に整った字が並んでいた。
「いつも守ってくれてありがとう。これからもよろしくね……」
「やだー。口に出して読まないでよっ」
 スウィンは笑いながら、ばしーんとイルドの肩を叩く。
「ハイ、返事」
 にこにこと手を伸ばしてくる神人に進退窮まったイルド。
「ちょっと待て!」
 と机に向かい、ガガッと鉛筆で殴りつけるように書いて、折りもせずにスウィンに突き出した。
「ええとなになに……?」
 そこには、素直になれない彼からの最大限に優しい言葉があった。
『怪我されたら面倒だ。あんま無茶すんなよ』
「……すっっごいレアね! おっさん、宝物にするわ〜!」
「ちょ、なにィ!?」
 目を剥くイルドから、ぴゅーっとばかりに逃げ出すスウィン。
「返せこら! もう読んだなら捨てるか溶かせ!」
「だぁあーめ。絶対返さないわよー!」
 大の大人の鬼ごっこが始まった。

「っと、まぁ……こんなもんか」
 高原 晃司は、市を背に、戦利品を眺めて頷く。
 美しい光沢を放つダークグレーの封筒に、封蝋風の金のシール。ペンは書ければ良いとばかりに一番安いボールペンだが、なかなか我ながらいい買物が出来たと思う。
「アインも何か買ったのか?」
「ええまぁ、ペンをね、ちょっとばかし」
 アインも同じく安価なペンを購入していた。
「アインも手紙書くんだな」
「まぁ、せっかく貰ったんです。ノらないと来た意味がないでしょう」
「そりゃあそうだ」
 ハハハと笑って、晃司は早速備え付けの机にむかい、サラサラと一筆箋になにやら書く。
 その隙に、とアインも便箋にペンを走らせた。
「アイン!」
 呼ばれてアインが顔を上げる。
「ん」
 と差し出されたのは、きちりと封蝋シールでとじられた封筒。
「こういう色、好きかなって思ってな」
「ああ、私のことを考えてこの色を。いい色ですな。仕立てのいいスーツみたいで」
「……ほら、アインとっとと受け取れよ!」
 促されて手に取り、目だけで、開けても? と尋ねるアインに、高原は照れくさそうに鼻の下を擦り、頷いた。
 文面は晃司らしく真っ直ぐだった。
 いつも世話になっていることへの礼、これからもよろしくというような内容。
 そして何よりアインの目を引いたのは、『アインが居なかったら今の俺はないと思ってる』という文だった。
 オーガから晃司を助けたのはアインだ。彼はあの時以来、身寄りがない。だから晃司の言葉は当然だが。
「なんだか改めて言われると、くすぐったいですな」
 くすっと笑い、アインは丁寧に手紙をもう一度封筒に収めると、スーツの内ポケットにしまいこんだ。
「アインは手紙どうすんだ?」
「ちょっと溶かしてきます」
 そそくさとアインが祠へと向かう。
「えっ、見せてくれないのかよ!?」
 と驚く晃司だが、誰しも口に出来ない想いがあることも事実。落ち着かない気持ちを抱えながらも、アインを祠の外で待った。
 ヒンヤリとした祠の中で、アインは達筆で記された己の手紙をそっと取り出し、泉に浮かべるかのように水面に乗せた。
「ま。……まだ秘密ってことで」
 じわじわと蕩けていく手紙を見送り、アインはうっすら微笑む。
 まだ晃司に告げていないこと、見せていない面、アインには沢山ある。
「いずれ、ね……」
 いつになるのかは分からないけれど——今は、まだこのままで。

●気づき
 うーーーん……と唸り声が聞こえる。
 綺麗な黒髪をガシガシ掻き回し、机に向かってアキ・セイジは悩んでいた。
 彼をこんなにも悩ませているのは、たった一枚の紙切れだ。
 さっきから書いては消し、消しては書き、何を手紙に記そうか悩んでいる。
 日頃の精霊への感謝とか、精霊との共同生活に慣れてきたこととか、書き出すことは様々なれど、すべてヴェルトール・ランスのことばかり。
 しかし頭の中が精霊のことで一杯だということに、セイジは自分で気づいていない。
 もやもやとした気持ちに満たされたセイジはとうとう自棄のように、その気持ちを手紙にぶつけることにした。
 どうせ誰にも見せずに溶かす手紙だ。何を書こうが勝手である、とふっきれたのだ。
「随分とお悩みだな」
 ふいに頭の中を一杯にしていた者の声が耳に飛び込み、セイジは弾かれたように振り向いた。
「ラ、ランス……」
 あわててセイジは便箋を伏せる。
「君は書けたのか」
「まぁね」
 あっさりと返ってきた言葉に、セイジは脱力する。
「そ、そうか」
 こんなに人が悩んでいるのに、気楽にパパッと書いてのけたらしい。
 腹立たしいような羨ましいような、悔しいような。
「セイジ」
「え? っ!?」
 ランスに呼ばれてセイジが顔を上げると、柔らかくて湿った感覚。
「ななな!」
 顔を押さえて、のけぞるセイジは、怒ったように眉を吊り上げ、
「なんのつもりだよ!」
 と叫ぶ。
「こういうつもり」
 ランスがぺらりと広げて見せるのは一筆箋。
 それは、端的かつ単純なるラブレター。
「!!」
 ランスの手紙を目の当たりにしたセイジは、顔を真っ赤にすると、机の上の己の便箋を引っ掴み、早足で祠へと進む。
 それをしばらく眺めてから、ランスはセイジを追いかけた。
「逃げるなよ。ほら、俺が見せたんだし、セイジのも……」
「逃げてなんかない。これは溶かすんだ!」
 セイジが泉に放り込もうとした便箋を、空中でランスが捕まえる。
 アッという悲鳴めいた驚声がセイジから飛び出すが、ランスは構わず手紙を読む。
 紙面には、ランスの気持ちを受け入れようとして上手くいかず、悩み苦しむ気持ち。必死に向き合おうと努力するから猶予が欲しいという切々な想いがあった。
 にやにやしていたランスの顔が、真顔に戻る。いたたまれないとセイジは頭を抱えて蹲る。
「……見せるつもりはなかったんだ。これは俺の中の区切りだから」
 蚊の鳴くような声でも祠の中ではよく響いた。
「いや、今はこれで十分だ」
 ランスはそう言って、蹲るセイジを引き起こす。
 間近に迫った顔に、ランスは低く告げた。
「ちょっとずつ、俺がお前を変えていってやるよ」



依頼結果:普通
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター あき缶
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月15日
出発日 04月22日 00:00
予定納品日 05月02日

参加者

会議室

  • [4]アキ・セイジ

    2014/04/21-22:27 

    セイジだ。

    自分の中に迷いがあるので、それを書く予定だ。
    書くことで気持ちの整理がしたいんだろうな。

    誰かに見られると困るので、こっそりと水に溶かすつもりだが…

  • [3]スウィン

    2014/04/19-15:37 

    は~い、今回もよろしくぅ。
    おっさんはイルドと手紙交換でプラン提出済みよ。当日は楽しみましょうね♪

  • いつもお世話になってまーす。
    そんで、初めましての方は初めまして。アイオライト・セプテンバーですっ。

    文具市はペンが欲しいなー、いい匂いのするやつ。
    一筆箋はたぶん溶かしちゃうかな……内容はまだちょっと迷ってるけど。

  • [1]栗花落 雨佳

    2014/04/18-01:10 


    見知った顔が多いですね。今回もよろしくお願いします。
    初めましての方もよろしくお願いします。栗花落雨佳です。

    僕は絵を描く事が好きな一応美大生なので、良い画材を沢山購入出来ればなと思います。

    一筆箋は……宛てる人を誰にしようか…僕はちょっと迷ってます。


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