春空に咲く大輪の華(巴めろ マスター)

プロローグ


●春空に咲く夏の華
「皆さま、ええっと……『柔らかな春の夜空に咲く大輪の花――春の花火祭りに興味はございませんか?』」
ミラクル・トラベル・カンパニーの青年ツアーコンダクターは、メモを読み読みそう切り出した。そして、顔を上げると面々に人懐っこい笑顔を向けてみせる。
「トト村っていう小さな村がタブロス近郊にあるんだけど、そこで毎年、この時期に花火祭りが行われるんだ。代々続く腕のいい職人がいてさ、あそこの花火はほんと、見事だぜ」
一見の価値ありだ、と青年はにやりと口の端を上げる。
「あの村の人たちにとっては年に一度の祭りだからな。屋台なんかも出るぜ。やきそばとかたこ焼きとか綿菓子とか……祭りの屋台といえば! な食べものは大抵揃ってるんじゃないかな? 一番のおすすめは『花火飴』。夜空に咲く花火を模した綺麗な棒付き飴で、口に入れるとぱちぱちはじけるんだ」
面白いだろ? と青年はころころ笑って、それからふと声を潜め、
「俺さ、花火がよく見える、とっておきの場所も知ってるんだ。特別サービスでその場所も教えるからさ。どうかな、春の花火祭り。大切な人と一緒に出かけたら、きっといい思い出になるぜ。ツアーのお値段は、おひとりさま300ジェール。な、お得だろ?」
そこまで言い終えると、青年はやっとツアーコンダクターの顔を取り戻し、「どうぞいい旅を」とにこりと微笑んで頭を下げた。

解説

●今回のツアーについて
トト村の春の花火祭りをお楽しみいただければと思います。
ツアーのお値段はおひとりさま300ジェール。
(屋台で食べものをお買い求めの場合は、そちらは別料金となります)
ツアーバスで夕方首都タブロスを出発し、祭りが始まる前には村へ着きます。
祭りを堪能していただいた後、夜行バスでタブロスまで送迎いたします。

●屋台について
ここでしか食べられないものとして、ツアーコンダクターがご紹介している『花火飴』があります。
1本50ジェール。飴部分は子どもの掌くらいのサイズと、結構大きめです。
また、プロローグにある通り、祭りの屋台で食べられるものも大抵揃っています。
こちらもすべて一品50ジェールでお楽しみいただけます。

●『とっておきの場所』について
ツアーコンダクター君おすすめの花火観賞スポット。
村外れのちょっとした丘の上で、村人たちはおらず静か。勿論花火もよく見えます。
ただ屋台のある会場から少し離れているので、屋台をゆっくり楽しんでいると花火の打ち上げに間に合いません。
目当ての品を買って急いで向かえば、やっと間に合うくらいです。

●花火を見る場所について
祭りの会場か『とっておきの場所』かをプレイングで指定していただければと思います。
指定のない場合は、こちらで選ばせていただきます。

●プレイングについて
公序良俗に反するプレイングは描写いたしかねますのでご注意ください。
また、白紙プレイングは極端に描写が薄くなります。お気を付けください。

ゲームマスターより

お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!

春の空に咲く花火もきっと素敵だろうなあと思いながらプロローグを執筆いたしました。
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイヤ・ツァーリス

  えと、エリクと花火を楽しみたい、です。

コンダクターさんにとっておきの場所を教えてもらって、花火飴を買って……。
おべんとうとかもあると嬉しいけど……おべんとうの屋台はないとおもうんだ。
うーん、いい屋台はあるかな?
とりあえず焼きそばとか、お好み焼きとか……そんな露店をさがしてみるね。
食べるものを買ったら花火が始まる前に教えてもらった場所にいけたらいいなあ、って。
お祭りはどこのお祭りも賑やかで楽しくて笑顔がいっぱいだよね。
僕、エリクと一緒にお祭りに来れてすごく楽しかったから一緒に来れて良かった。嬉しいな。

※緊張したりエリクシアや家族以外の年上を前にすると「~、です」というぎこちない敬語になります。


大槻 一輝
  祭り会場

■心情
食うぞ、楽しむぞ。
ああ、もう全力で。
学生の頃は勉強ばっかで愉しむ余裕なんて…あ、友達が居ない訳じゃねえからな!

■行動
食って歩く。
定番のものは食う。
但し、金銭的にも色々使用限度はあるので程々に。
ガロンと半分個だな。食うか?(差出
ウマー。
おぉ…次あれ食うぞ!あれ!


ん…籤?
ああ、知ってるか。ああゆう所の籤引きっていうのは大概大目玉の1等ってのは入ってないんだぜ。
つまり何回引いても無駄ってことd(ダァンッと金を叩き付け)おっちゃん、5回頼むわ←

……

OTL

ああ、知ってたさ。
1等は入ってねえって事くらい。
俺は夢を買ったんだ(

お、花火。始まったな
…悪くないよな、こうゆうの
また、夏のも行こうぜ


ノクト・フィーリ
  『花火飴』かあ…。食べてみたいかなあ。屋台にいろいろなものがあるっていうし色々見てみたいかな。

あ、でも『とっておきの場所』でミティスと花火を見るのも捨てがたいし…。
ううん、あんまり欲張っても全部はできなさそうだし、『花火飴』を買って『とっておきの場所』に向かいたいかなあ。
それで、花火飴を食べながら二人で花火を見るの。えへへ、今から楽しみになってきちゃった!


●光の華咲くその前に
辿り着いたトト村は、祭りのメインである花火の打ち上げが始まる前から賑わいに満ち満ちていた。
あちこちに光溢れる花火の村の特別な夜に、ノクト・フィーリの心もふわふわと弾む。
「わぁ……! ね、すごいね、ミティス。屋台がいっぱいだよ。それに、皆とっても楽しそう」
「ノクトの言う通りだね。見ているだけで、こちらまで嬉しくなってくるよ」
傍らのノクトにふっと笑いかけてから、ミティス・クロノクロアは祭りの喧騒へと視線を移した。
「さて……屋台を巡るか、それとも『とっておきの場所』に急ぐか、だね」
ノクトはどうしたいの? と柔らかに問われて、口元に手を当て、真剣に考え込むノクト。
「えーっと、屋台は見て回りたい……けど、『とっておきの場所』でミティスと花火を見るのも捨てがたいし……」
悩めるパートナーをミティスはそっと見守り、彼の導き出す答えを待つ。
「ううん、あんまり欲張っても全部はできなさそうだし、『花火飴』を買って『とっておきの場所』に向かいたいかなあ。それで、『花火飴』を食べながら二人で花火を見るの!」
今から楽しみになってきちゃった! とはにかむように笑うノクトに微笑みを返し、「それじゃあそうしようね」と応えるミティスもどこか楽しげで。
「花火が始まる前に飴を手に入れないとね」
そう言って歩き出そうとするミティスに、ノクトは思わず声をかける。
「待って」と。
屋台の辺りは人に溢れていて、ともするとミティスを見失ってしまいそうな気がして。そのことを思うだけで心細いような心地がしたものだから、思わず。
「……あのね、人がすごく多いでしょ?」
「? うん、そうだね」
「はぐれちゃったら嫌だなあって。だから、できるだけ傍に――」
いてほしい、とノクトが言い終わる前に、細い指がノクトの手を取った。
「……ミティス?」
「気づかなくてごめんね、ノクト。私も、ノクトとはぐれるのは嫌だよ」
そっと繋がれた手の温もりに、ノクトは俯いて笑みを零す。
本当は、一番は手を繋いで欲しかったから。
「どうしたの? あ、手を繋ぐのは、余計だったかな?」
下を向いてしまったノクトを見て、ミティスが心配そうに尋ねる。ノクトは、ふるふると首を横に振った。
「ううん、すっごく助かるよ。だってこうしてたら、絶対にはぐれないでしょ?」
顔を上げて、パートナーへと零すのは満面の笑み。
そうして二人は、手と手を重ねたまま『花火飴』を求めて屋台へと急ぐ。
辿り着いた『花火飴』の屋台には幾らか人が並んではいたものの、祭りの屋台の回転は速い。あっという間に順番は回ってきて、二人は無事、きちんと二人分の『花火飴』を購入することができた。もしも時間がなければ二人で一つでも……と思っていたノクトだったが、その懸念は杞憂に終わる。
「それじゃあ、行こっか。『とっておきの場所』に!」
片手にはぱちぱちはじけるという不思議な棒付き飴を、もう片方にはそれぞれの手を取って、二人はツアーコンダクターから聞いた、『とっておきの場所』を目指した。

「食うぞ、楽しむぞ! ああ、もう全力で! 学生の頃は勉強ばっかで愉しむ余裕なんて……あ、友達が居ない訳じゃねえからな!」
流暢に回る口は、祭りが誘う浮かれた気分の表れだろうか。流れるように言葉を溢れさせてから、大槻 一輝は焼き立て熱々のたこ焼きを口に頬張った。
「はふっ……あー、うまー」
祭りをめいっぱいエンジョイしている一輝の様子を、彼のパートナーであるガロン・エンヴィニオはにこやかに見守っている。珍しく一輝が楽しんでいる様子を見て、ならば自分も楽しまないことはあるまいとガロンは思っていた。ちなみに、ガロンの手には一輝が先ほどまで食べていた焼きそばの残り半分。一緒に食べ歩きをしているというよりは一輝に振り回されている……ように、傍目には見えるが。
「カズキ。どうやらあちらに件の『花火飴』があるようだぞ。行くかね?」
「おう、行く行く! 次あれ食うぞ! あれ!」
と、このように、ガロンは一輝のことを実に巧妙にエスコートしているのだった。一輝が楽しめればそれでいいと、はしゃぐパートナーを後ろからゆったりと追いつつガロンは満足顔である。
「あ、そうだ」
真っ直ぐに『花火飴』の屋台を目指していた一輝が、ふと思い出したようにガロンの方を振り返る。
「ガロン。これ、お前の分な。食うか?」
「ああ、いただこうかな」
差し出されたのは、律儀に半数が残された熱々のたこ焼き。焼きそばのパックの蓋を一旦閉じて、ガロンはたこ焼きを一つ口に運んだ。
「ふむ。悪くない」
思わず、口元に笑みが浮かぶ。
一輝と過ごす時間は、ガロンにとって存外悪くないものだった。
「うっし! 『花火飴』ゲットー!」
噂の飴を手に、一輝はガロンの元へと戻る。そして――彼は、祭りには付きもののとある屋台を、偶然にも発見してしまった。
「ん……くじ?」
「ほう、くじ引きか。祭りらしいな」
「ああ。知ってるか? ああゆう所のくじ引きっていうのは大概大目玉の一等ってのは入ってないんだぜ。つまり何回引いても無駄ってこと……」
そこまで一輝が言ったところで、屋台のおやじが大声を上げた。
「さあ、一等は屋台の食べ物食い放題のチケットだよ! くじは一回たったの10ジェール!」
やれやれとガロンは首を振った。食べ放題と言われても値段が安くても、当たりが入っていないのでは意味がない。
「カズキ、そろそろ……」
花火が見やすい場所に移動しないかと言いかけて、ガロンは一輝の姿が傍から消えていることに気づく。辺りに視線を巡らせれば――相棒はちょうど、くじ引きの屋台に勢いよくジェールを叩きつけているところだった。
「おっちゃん、五回頼むわ」
キリリとした声音で宣言する一輝。
ガロンはそんなパートナーを見て、密かに苦笑を漏らした。

「お祭りは、どこのお祭りも賑やかで楽しくて笑顔がいっぱいだよね」
自身も幼い面に笑顔を浮かべて、セイヤ・ツァーリスは傍らに立つエリクシアを見上げる。セイヤの執事兼教育係兼パートナーであるエリクシアは、愛らしい主の無邪気な言葉に、柔らかく目を細めた。
「えっと、ツアーコンダクターさんに『とっておきの場所』を教えてもらったでしょう? だからね、そこで花火が見えたらなぁって」
「ええ。セイヤ様がそれをお望みでしたら、是非そうしましょう」
「それとね、僕、『花火飴』が食べたいな。それから、お弁当とかもあると嬉しいけど……お弁当の屋台は、ないと思うんだ」
「ご明察です、セイヤ様。確かに、祭りの屋台にお弁当は珍しいでしょう。セイヤ様は世の中のことを、よく知っていらっしゃる」
一生懸命に言葉を紡ぐセイヤに、にこにこ笑顔でエリクシアは応える。エリクシアの教育方針は、これから買い求める予定の飴にだって負けないほど――つまりとんでもなく、甘いのだ。対するセイヤは、褒められるのがあまり得意ではない。
「え、エリク。僕そんな、エリクに褒めてもらえるようなこと言ってないよぉ」
「そんなことはありませんよ。世のことを知らぬ方は、セイヤ様が思ってらっしゃるよりも多いですから」
さて、それでは参りましょうかと、エリクシアが優しく促す。花火はセイヤたちの買い物を待ってはくれないからだ。早めに『花火飴』と弁当の代わりになる物を手に入れて、『とっておきの場所』へ向かわなくてはいけない。
屋台のある方は、賑やかすぎるほど人に溢れている。人々は皆楽しげだけれど、小さなセイヤには、その人の群れが少しばかり怖くも感じられた。気を抜いたら、迷子になってしまいそうだ。
(エリクと手を繋いでいきたい、けど……)
その想いを口にするのは、少々憚られた。
(だってもう僕も、いろんなことを一人で頑張れるようにならないとだもの)
強くそう思うものの、思うように足は進んでくれない。
と、その時。
今一番欲しかったものが、エリクシアの方から差し出された。
エリクシアの手が、セイヤの小さな手を包み込む。
驚くセイヤに、エリクシアは悪戯っぽく微笑みかけて。
「この人混みでは、セイヤ様とはぐれてしまいそうです。申し訳ございませんが、こうして手を繋いでいただけませんか?」
「うん」とか「いいよ」といったようなことをセイヤは呟いた。はっきりとしないのは、胸が急に苦しくなったせいで小さな小さな声しか出なかったからだ。
(困ったなぁ。また、いつもの病気だ……)
少年は、未だそれを恋の病とは知らず。
そうしてセイヤたちは、手に手を重ね屋台の方へと歩き出した。

●春空に花火ははじけ
未だキリリと冴えた夜の空は、それでもどこか春の柔らかさを含んでいる。その夜空に、先ずは一発目の花火が大きく咲いた。とりどりの色の煌めきが暗い空を明るく彩り、そして儚く散っていく。
「うわあ……綺麗だねぇ」
「うん、美しい……」
村外れの丘の上で、ノクトとミティスは次々に咲いては消える光の花を眺めていた。夜空を遮る物は何もないそこは、確かに花火を眺めるのにはうってつけの場所だった。
花火に見惚れるミティスの隣に腰掛けて、ノクトはそっと『花火飴』を口に含む。飴は話に聞いていた通り、口に入れるとぱちぱちとはじけた。
(面白いなぁ。それに、甘くて美味しい)
何だか懐かしいような味のする飴だった。溶けてなくなってしまうのが、勿体なく感じるような。
「……でも、なくなっちゃうんだよね。花火だっていつか終わっちゃう」
ぽつり、と口から零れた呟きは、花火の音にかき消され、夜の闇に溶け消えた。
溶け消えたと、ノクトは思った。
けれど。
「でも、ノクトと一緒に花火を見た思い出は、残るよ」
気が付くと、ミティスがこちらを見やり、優しく笑っていた。ノクトの言葉は、ミティスの耳に届いてしまっていたらしい。
気恥ずかしくて、けれど何やら嬉しいような気もして。ノクトは温かなものを胸に抱えたまま、えへへと照れたように笑った。
「ほら、ノクト。花火、見逃すよ」
ミティスが柔らかく言う。夜の空にまた、美しくて儚い花が咲く。
(そっか。覚えておけばいいんだ)
花火を見上げながら、ノクトはそっと思った。思わず頬が緩む。
「――ねえ、ミティス」
「うん? どうしたの?」
「ぼく、今日のこと忘れないよ。それから……これからもね、ミティスとたくさん思い出作れたらなぁって」
ノクトの言葉に、ミティスは緩やかに微笑んで。
「勿論。私もそう思うよ、ノクト」
だって、私たちはパートナーなんだから。ね?
口の中で、飴がはじけては溶けていく。優しい味は、心まで溶かしてしまうような、甘さ。
花火が、また上がった。寄り添い合った二つの影は、仲睦まじくそれを見上げていた。

一輝が引いたくじは、五回とも見事に外れだった。
「成る程。当たりが入っていないというのは本当のようだな」
なぜか感心したように頷くガロン。
「ああ、知ってたさ。一等は入ってねえってことくらい。俺は夢を買ったんだ……」
一輝の力ない呟きをかき消すようにして、花火が夜の空に咲いた。くじを引いた後、二人はガロンの機転で屋台の辺りから離れていた。人はまばらで、花火を見るのに何の差支えもない。二人は引き寄せられるように、次々と夜空を彩る煌めきの花を見上げた。
「今更だが、春の花火、というのはなかなか珍しいな。だが、悪くない」
「ああ、そうだな。……悪くないよな、こういうの」
そっと口元に笑みを乗せた一輝の頬に、不意に何かひんやりした物が押しつけられる。不快なほどではない、適度な冷たさだった。
「ほら、飲み物だ。喉、乾いただろう?」
「……お前って、ほんと抜け目がないよなぁ」
「それは、褒め言葉として受け取っておいていいのかな?」
「あー、うん。褒めてる褒めてる。サンキューな」
おざなりに返しながら、一輝は手に取った缶ジュースのプルタブを引き開ける。甘すぎないドリンクが身体に染み込み、渇きを内から癒していく。また、花火が上がった。
「っと、忘れてた」
ごそごそと荷物を漁り、一輝はビニールで封じられた『花火飴』を取り出した。ぺりぺりとビニールを破けば、花火を模した飴は鮮やかさを増す。一輝はそれを、器用に二つに割って、ガロンへと差し出す。
「ほら、お前の分」
声をかければ、ガロンはふっと笑みを零した。
「ありがとう、カズキ」
お互いの手の中で、『花火飴』が本物の花火の輝きを浴びて幻想的に煌めく。飴が溶けて手が汚れる前にと、一輝は半分になった『花火飴』を口に放り込んだ。飴が、口の中でぱちぱちとはじける。
「へえ、面白いな」
「ああ、悪くない」
二人は顔を見合わせて、どちらともなく笑った。
「今日は、いい息抜きになったんじゃないか?」
「だな。まあ、楽しかった。……あー、あのさ、ガロン」
「ん? どうした?」
「また、さ。夏のも行こうぜ、花火」
口に出してはみたものの何だか気恥ずかしくて、一輝は再び花火へと目を向ける。
だから、ガロンの表情は窺えなかったけれど。
「ああ、いいな。楽しみにしておこう」
返ってきたガロンの声は、柔らかな響きを帯びていた。

ツアーコンダクターの言葉に嘘はなく、『とっておきの場所』から見る花火は最高に美しかった。
「セイヤ様、たくさん召し上がってくださいね。あ、口元が汚れていますよ。お拭きしましょう」
結局セイヤとエリクシアの二人は、弁当の代わりに焼きそばを買った。屋台のおじさんが、サービスだと言って香ばしいソースの匂いがする焼きそばを盛りに盛ってくれたので、買ったのは一パックだけ。割り箸だけ二人分付けてもらった。それから、セイヤご所望の『花火飴』も忘れずに。
「もう、エリクったら……。僕は大丈夫だから、ちゃんと花火を見ようよ。ほら、すっごく綺麗だよ」
小さな主に諭されて、エリクシアはやっと大人しく花火を眺めることに決めたらしい。咲いては散りゆく花火の色が、青の瞳に映る。
(でも僕も、本当はエリクのこと言えないんだ……)
花火も勿論素敵だけれど、隣に座るエリクシアの横顔が気になってしまって。
エリクシアはセイヤの憧れだ。いつか彼のような大人になりたいなと、セイヤは思っている。
(……なんかどきどきするけど、これはいつもの病気だからすぐにおさまるよね。うん)
早く脈打つ胸に手を当てて、深呼吸を一つ。
「セイヤ様、どうかなさいましたか?」
目ざとく気付いたエリクシアが心配顔で尋ねてくるのに、何でもないよとセイヤはへにゃりと笑いかける。
「そうだ。あのね、エリク」
「はい。何でしょうか、セイヤ様?」
「僕、エリクと一緒にお祭りに来れてすごく楽しかったから。……一緒に来れて、良かった」
嬉しいな、と言葉を零せば、エリクシアも顔を綻ばせる。
「私も、セイヤ様と共に時間を過ごせて幸せです」なんて極上の笑みを浮かべて応えるものだから、セイヤの小さな胸はどきどきしっぱなしだ。
(どうしよう。病気、酷くなっちゃったかもしれない)
収まらない恋の鼓動に見当違いの感想を抱きながら、セイヤはエリクシアと共にやや春めいてきている夜空を見上げる。また、花火が咲いた。儚く、けれどもとても美しく。
(『花火飴』、持って帰ろうかなぁ)
見る度にきっと、この花火の夜のことを鮮明に思い出せるだろうから。

色が散る、華が散る。
花火はじきに終わるけれど、今日という日の思い出は、それぞれの胸の内に鮮やかに残るだろう。



依頼結果:大成功
MVP

名前:セイヤ・ツァーリス
呼び名:セイヤ様
  名前:エリクシア
呼び名:エリク

 

名前:大槻 一輝
呼び名:カズキ
  名前:ガロン・エンヴィニオ
呼び名:ガロン

 

名前:ノクト・フィーリ
呼び名:ノクト
  名前:ミティス・クロノクロア
呼び名:ミティス

 

エピソード情報

マスター 巴めろ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月06日
出発日 03月14日 00:00
納品日 03月19日

 

参加者

会議室

  • [2]セイヤ・ツァーリス

    2014/03/11-06:33 

    セイヤ、です。 えと、その、よろしくです。

    えへへ、花火、たのしみだなあ……!

  • [1]ノクト・フィーリ

    2014/03/09-00:28 

    ノクトだよ、よろしくねっ。

    花火飴も気になるけど、とっておきの場所で花火見るのもいいなあ…。


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