『伝説の英雄達と、ギルティの記憶』

リザルトノベル【女性側】イヌティリ・ボッカ交戦部隊

イヌティリ・ボッカ交戦部隊

メンバー一覧

神人:桜倉 歌菜
精霊:月成 羽純
神人:八神 伊万里
精霊:アスカ・ベルウィレッジ
神人:月野 輝
精霊:アルベルト
神人:かのん
精霊:天藍
神人:リチェルカーレ
精霊:シリウス
神人:ひろの
精霊:ルシエロ=ザガン

リザルトノベル

 ──バレンタイン城、いやこの国は、何処もかしこも甘い香りがする。
 イヌティリ・ボッカは、瞳を細めてその城を見上げた。
 この城に、俺様を封印しやがった奴等が居る。
 ──全部、ぶっ潰してやる。
 そうすれば、この不愉快な気分も感覚も消え去る筈だ。
 ボッカはクッキーの地面を踏み締めゆっくりと歩いていく。


「私と羽純くんは、リヴェラさんの護衛をします」
「状況をみて前線にも出ようと思ってる」
 桜倉 歌菜と月成 羽純はそう言って、一同を見た。
「私は右の楼閣に上って、鶏の声を上げる役をしたいと思います」
「なら、俺は伊万里の居る楼閣を守るぜ。ボッカに鶏の焼き菓子を壊されないようにしないとな」
 八神 伊万里が楼閣を見上げれば、アスカ・ベルウィレッジも同様に巨大な鶏の焼き菓子を見た。
「私とアルは、前に出てボッカと戦うわ」
「ええ。出来るだけ、こちらに引き付けたいと思います」
 月野 輝の視線に、アルベルトは微笑んで頷いた。
「私は左の楼閣で鶏の焼菓子を攻撃して、鶏の声を出すようにします。
 もし、鶏の声で『絶望色のオーラ』が消えない場合は、呪符での解除も試みようかと思っています」
 かのんは『【呪符】五行連環』を手に、左の楼閣を見た。
「俺は前衛組だな。連携していこう」
 天藍が微笑むと、一同は頷く。
「俺も前に出る。『絶望色のオーラ』が消えるまで、耐えていこう。戦う中で隙や弱点も見えてくる筈だ」
「私は後ろから援護するわ」
 シリウスが静かに言い、リチェルカーレが微笑んで言えば、
「私も、これで皆を援護する」
 ひろのは、二種の呪符と『逢魔鏡ショコラント』を大事に抱えて続いた。
「オレは前衛だ。オーラが消えた時が、勝機だな」
 ルシエロ=ザガンがそう言うと同時、誰からともなく手を出した。
 円形に並んだウィンクルム達はそれぞれの手を重ねる。
「……守り切ろう!」
 ウィンクルム達は決意を固め、それぞれの位置へと散らばった。


 『シュヴァリエ・グロリア』内は、とても静かだ。
 歌菜は少しひんやりとした空気を吸い込んで、天井を見上げるリヴェラ・アリアンヌを見た。
「リヴェラさん、きっと私達が何とかしてみせますから」
 歌菜が声を掛け、ぐっと拳を握れば、リヴェラは微笑む。
『うん、そうだね。……一人じゃないからね』
 そんな二人を横目に、羽純は周囲を隈なく見渡した。
 いざという時、どのようにリヴェラを守るべきか考える。
 ゾクリと、背筋を凍らせるような瘴気に、羽純と歌菜はほぼ同時に顔を上げた。
「羽純くん……!」
「ああ、来たようだな……ボッカが」
 羽純は頭上を睨んだ。


 圧倒的な威圧感。渦のような瘴気。
 ギルティ・ストルゲを司るギルティ──イヌティリ・ボッカは、マントを翻し笑った。
「──やはり俺様の邪魔をしに来たか、ウィンクルムども」
 品定めするようにウィンクルム達を眺めると、ハッと鼻を鳴らす。
「いいぜ、丁度むしゃくしゃしてた所だ。俺様を封印しやがった奴等をぶっ潰す前座に、相手してやるぜ」
「可哀相な人……」
 肌を刺すような殺気に怯まず、輝は一歩前に出た。
 その言葉に、ボッカが眉を上げる。
「どういう意味だ?」
「言葉のままよ。貴方には愛する人はいなかったの?」
 輝の黒曜の瞳と、ボッカの剣呑な眼差しが絡み合った。
「『愛』? 俺様にはそんな甘ったるい感情(もの)はねぇ。美しくて強い俺様が、誰かに愛される事があってもな」
「……どうして、貴方はギルティになったの?」
 輝はじっとボッカを見た。
 ずっと疑問に思っていた事だ。
 ボッカは、その眼差しを一瞥して右手を上に上げる。
「お喋りはここまでだ。俺様は忙しい」
「おや、随分とせっかちな事だ」
 わざとゆっくり言い、アルベルトはにっこり笑った。
「まさか、私達程度の相手に本気を出したりしませんよねえ?」
 小馬鹿にした笑いに、ボッカの眉がピクリと動く。
「当たり前だ。お前ら如き、片腕でも十分なくらいだぜ」
 まんまと釣られたボッカは、負けじと傲慢な笑みを浮かべた。
(……ギルティになった理由について、話を逸らしたように見えたわ)
 リチェルカーレは、後ろからボッカの表情の変化を観察している。
 ウィンクルムの絆の力を見せれば、もっと彼の本音を引き出せるかもしれない──リチェルカーレは、シリウスへ声を掛けた。
「支援は任せて。あなたは振り返らないで」
「……ああ、わかった」
 シリウスは一瞬驚いた顔をするも、即座に微笑みを返す。
 ボッカは不愉快そうに顔を歪めた。
 ──胸の辺りを熱くする、あの夢の女の言葉を思い出す。
 その間、後ろに控えたひろのは、『逢魔鏡ショコラント』を構えてボッカの姿を捉えていた。
 悪しき敵を写している間、対象の敵を弱体化させる効果があるという魔境。
 ボッカはその魔力を感じ取ると、口の端を邪悪に上げる。
「ふん、そんなもので俺様を捕らえられると、思うんじゃねぇ……!」
 ダンッとクッキーの床を踏み付けると、ボッカの姿が一瞬で五つに別れる。
「どうだ! これが必殺『イケてるメンズパラダイス』だ!」
「……分身したの?」
「いや、これは……高速で移動しているんです。我々が見えているのはその残像でしょう」
 目を丸くするリチェルカーレに、アルベルトが眼鏡に手を掛け答える。
「歩いてるのに何でこんなに速いんだ!?」
 ボッカの動きを目で追いながら、アスカが舌を巻いた。
「出鱈目だな……」
 シリウスも眉を寄せる。
「ふはははははは! 驚いたか!」
 ボッカが高笑いを上げた。
(そろそろでしょうか)
 右の楼閣に待機していた伊万里は、反対側の楼閣の下に居る、かのんに視線を向ける。

『共に最善を尽くしましょう』

 かのんと天藍は同時にインスパイアスペルを唱えた。天藍がかのんの紋章に口づけると、かのんの背中に光の翼が広がる。
 『セイクリッド・トランス』──神人の能力を爆発的に飛躍させるトランスだ。

 伊万里とかのんの目が合い、頷き合うと、二人は同時に鶏の形をした焼き菓子を攻撃する。
 伊万里は『片手剣「トランスソード」』で斬り付け、かのんは呪符を飛ばした。

『コケッコッコー!』

 突如鳴り響いた鶏の声に、ボッカは肩を跳ねた。
 分身が解け、嫌悪を湛えた顔で、辺りを見渡す。
「どこから……」
 その隙を、ウィンクルム達は見逃さない。
 天藍は特殊な呼吸方法で速度を上げながら、『ダーインスレイヴ』で斬り付けた。
「……くっ!?」
 ボッカはほぼ本能的な動きで、何とかそれを躱す。
 そこへ、流れるような舞いの動きで、シリウスが『【魂剣】ソウルダンサー』を突き出した。
「チッ……!」
 左肩を双剣が掠り、ボッカが顔を顰める。
 身を引こうとした所へ、今度はルシエロの『ダーインスレイヴ』が飛び込んできて、紅い鎖がハート状に弛み、ボッカの腕に巻き付いた。
 伊万里とかのんは、更に鶏の焼き菓子へ攻撃を加える。

『コケコケコッコー!』

「うぐう……!」
 ボッカの顔が青ざめ、絶望色のオーラが揺らぐのをひろのは見た。
「貰った……!!」
 ルシエロが拘束した右手目掛けて、アスカは『セルシウス・ダイヤ』を振り抜く。
「ぐうううう!」
 相手の装甲を砕き、防御力を下げる一撃に、ボッカの顔に苦痛が浮かんだ。
「やあ!」
 下がろうとするボッカへ、輝は『槍「緋矛」』を振るって妨害する。
「まだ終わりじゃ、ありませんよ……!」
 アルベルトの『【輪廻剣】インカーネーション』が白い蛇になり、アスカが攻撃した同じ場所へ噛み付くように斬り付けた。
「……お前ら……!」
 力を無くし落ちる右腕を押さえ、ボッカは瘴気の風でウィンクルム達を牽制し、後ろへ下がった。
 じりじりとウィンクルム達はボッカを包囲する。
「言葉通り、片手で相手する事になりましたねえ」
 アルベルトが微笑めば、ボッカからどす黒い瘴気が立ち上った。
「それか……!」
 カッとボッカの瞳が開くと、左手を突き出す。
「危ない! 避けろ……!」

「モテ☆ビーム!!」

 シリウスの叫びでウィンクルム達が構えた瞬間、瘴気を含んだ強烈な閃光弾が、左の楼閣へ放たれた。
「きゃ……!?」
「かのん!!」
 天藍が叫ぶ。
 かのんは、数メートル後ろへ下がりながらも、何とか爆風に耐えた。『セイクリッド・トランス』状態でなければ、一緒に吹き飛んでいたかもしれない。
 天藍はほっと安堵の息を吐き出した。
 楼閣から落ちて砕けてしまった鶏の焼き菓子を見て、リチェルカーレは『神符「詠鬼零称」』を構える。
 ひろのも同時に二種類の呪符を両手に持っていた。
(もう片方の焼き菓子は守らないと……!)
 リチェルカーレの神符と、ひろのの二種類の呪符が光る。
(やられる前に、やるしかありません!)
 伊万里は力の限り、鶏の焼き菓子を剣で叩くように斬った。
 一匹になった鶏は、伊万里の想いに応えるように、一際大きく鳴く。

『コケッコッコー!』

「……!?」
 反射的に体を強張らせるボッカに、リチェルカーレの神符から放たれた拘束の力が絡みつく。
「鶏が苦手なんだって? 突かれた事でもあるのか」
 高速で突進したシリウスが薄ら笑いでそう言えば、ボッカの顔が赤く染まる。
「隙だらけだ」
 防御を崩す剣撃を腹に喰らい、ボッカは低く呻いた。
「……うおおおお!! 風よ!俺様を引き立てる罪な風!」
 吼えたボッカは、左手で瘴気を含んだ風を巻き起こし、リチェルカーレの神符の力を無理矢理振り解く。
「斬り裂け!」
 そのままボッカは、伊万里の居る楼閣へ瘴気の風を放った。
「させない……!」
 刃となった風の前に、『【式占盾】六壬式盤』を構えたかのんが立ち塞がる。
「……守って……!」
 ひろのの『護符「水龍宮」』が輝きを放つと、かのんの前に護符が展開し水の波紋が広がった。
「くぅ……!」
 護符の力で弱まった瘴気の刃をかのんは盾で受け止め、後ろに押されながらも耐え切る。瘴気は霧散した。
「あんた、ギルティ化する前は何してたんだ?」
 その間、背後に回り込んでいた天藍は、そう問い掛けながら高速の突きを繰り出す。ボッカの脇腹から血が飛んだ。
「そんな事は……覚えてねぇ!」
 瘴気の風の刃を、天藍は舞うような動きで避ける。
「実はこの国の英雄だったが、酷い裏切りを受けた……とか?」
「笑えない冗談だ!」
 ボッカは怒気を放ち、彼の手元に魔方陣が出現した。
「俺様的必殺技『ダークネス・スライス』! 全員、斬り刻んでやる……!」
「させるか!!」
 アスカは跳躍し、剣を振り翳す。
 ギィン!
 アスカの剣とレイピアが火花を散らし、ボッカから瘴気が噴き出ると同時、アスカは弾かれた。
「ぐう……!」
「アスカさん!」
 地面を転がるアスカにかのんが駆け寄るが、そこでふっと力が抜けていくのを彼女は感じる。
 背中の羽が消え、『セイクリッド・トランス』の効果が切れると、がくんとその場に座り込んでしまった。
「かのん、暫く休んでくれ。必ず守る」
 即座に天藍が、かのんとアスカの前に滑り込む。
「天藍さん、ここは私が……!」
 輝がアスカを助け起こし、かのんに肩を貸して力強く言った。
「頼む……!」
 天藍は頷くと、再びボッカの元へ走る。
「はあ!」
「まだまだ!」
「ふっ……!」
 アルベルトとルシエロ、シリウスの剣が、ボッカのレイピアと激しく火花を散らした。
『コケッコッコー!』
 伊万里が鳴らす鶏の声に、ボッカの力が弱まる度、その身体に傷が増えていく。
「逃がすか!」
 そこへ天藍も加わり、ボッカはウィンクルム達に囲まれた。
(この俺様が押されている? まさか、まさか……!)
 歯噛みしながらも、ボッカはこのままでは不利である事を理解していた。
(あの忌々しい鶏の鳴き声さえなければ……)
 ルシエロの剣が急所を正確に狙い、ボッカの体勢が崩れた時、目の前に水の竜が現れる──ひろのの『神符「水龍宮」』の力だ。
 下から吹き上げる激流と水圧に、ボッカは左手を突き出す。

「モテ☆ビーム!!」

 水の竜と閃光弾がぶつかり合い──クッキーの床が崩落した。
 ボッカは、ウィンクルム達と一緒に地下の空間へと落下する。

 激しい爆発音に、羽純は『チャーチ』を展開し、背中に歌菜とリヴェラを庇った。
 テソロ──ガウェイン・フーリンも、『セイクリッドアイアース』を構える。
 クッキーの床と共に落下してきた者の中に、ボッカが居る事に気付くと、ガウェインは即座に叫んだ。
「皆、離脱して下さい……!」
 武器化した英雄達が一斉に光に包まれ消えていく──ガウェインにより、別次元に転移されたのだ。

「ここは……何処だ?」
 満身創痍のボッカは、ゆらりと立ち上がり前を見る。
 そして、『彼女』に気付いた。

「お前は……」
「……ボッカ」
 リヴェラは微笑んだ。

 カチリと、ボッカの中で記憶の歯車が噛み合う音がする。




 昔話をしよう。

 昔々、あるところに、貴族の青年が居ました。
 名前はシュバルト・ボッカ。

 彼はとても貴族らしい青年で、高慢で不遜、ナルシストでした。
 当然、女の子にもモテモテで、女の子に冷たくされた事などありませんでした。

 そんなある日、ボッカは平民の女性に出会います。
 リヴェラ・アリアンヌは、とても美しい女(ひと)でした。
 ボッカは一目でリヴェラを気に入り、声を掛けましたが、何という事でしょう。
 リヴェラはボッカを見るなり、『着ているものが派手過ぎる、悪趣味』と言い放ったのです。

 ボッカはとても腹が立ちましたが、同時にリヴェラがとても気になりました。
 生まれてこの方、そんな事を言われた事はないボッカにとって、歯に衣着せぬ彼女の言動は、眩しく好ましいものでした。
 いつしかボッカはリヴェラに会いに町に通うようになり、二人はすっかり仲良くなりました。
 高慢な言動の中に潜むボッカの優しさに、リヴェラも惹かれていたのです。
 友情が恋に──そして愛に変わるのに、然程時間は掛かりませんでした。

 二人は幸せな恋をしたのです。

 しかし、その幸せは長く続きませんでした。
 ボッカの家の人々が、リヴェラとの仲を引き裂いたのです。

 理由は『身分が違うから』。

 相応しい身分の女性を妻として迎えるように。
 そう言われて、ボッカが納得できる筈がありませんでした。

 密かにリヴェラと逢瀬を重ね、彼女と幸せになる方法を必死で模索します。

『城を探しているんだ』
『お城?』
『お前と俺様、二人で暮らす城だ。誰にも邪魔されず、一緒に暮らせる城を探す』

 夢みたいだね──そう言って幸せそうにリヴェラは微笑みました。

 けれど、運命の日はあまりにも残酷にやってきます。

『お止め下さい!』

 扉の外で争う声に、リヴェラはそっと外を窺いました。
 そこでは、ボッカが彼女の為に護衛に付けてくれた彼の部下達が、大勢の男達に襲われていました。
 男達はリヴェラを捕らえに来たのです。

『私なら一緒に行きます。だから、これ以上彼らに酷い事はしないで欲しい』
『いけません、リヴェラ様!』
『行くな!』
『俺達の為に、そんな……!』

 泣いて止める部下達に、リヴェラは笑顔を見せます。

『どうか、ボッカには知らせないで欲しい。知らせるなら、すべてが終わった後に』

 そして彼女が連れていかれたのは、処刑場でした。
 罪状を言い渡す処刑人の声に、リヴェラは天を見上げます。

 ──下賤な身分にも関わらず、嫌らしい体でボッカを誘惑し、悪の道に誘った魔女。
 処刑人はそう言いました。

『違う。私はボッカと愛し合った。その真実は誰にも曲げられない』

 喩え処刑されても、この想いだけは曲げられない。
 ただ、ボッカが……私を失ったボッカが、どんなに悲しむか……それだけがこんなに辛い。

『退け! 退けぇ……!!』

 ボッカの声が聞こえました。
 ああ、どうして……見ては駄目。
 ボッカ、来ないで──。

 ──コケッコッコー。

 処刑の終了を告げる、鶏の声を聞きながら、リヴェラは自分の命が零れ落ちていくのを感じていました。

『アア、あああああああああ……!!』

 ボッカの吼える声がして。

 その彼の前に、邪悪な何かが現れたのに、リヴェラは気付きました。

『愛する者を奪った者達に復讐をしたくないか』

 駄目。駄目だよ、ボッカ。
 復讐なんて、駄目──。

 ボッカが黒く染まりました。
 彼の部下も一緒に、黒く、黒く、昏く──。

 死ねない。まだ死にたくない。
 ボッカを置いて、逝けない──。

 リヴェラが消えそうな意識の中、そう強く願った時。

『愛する者のために、力を貸してください』

 目の前に、神々しい女神が立っていました。
 女神ジェンマです。
 リヴェラは、差し伸べられたその手を取り、命を取り戻したのです。
 
 それから、様々な村を破壊し、ウィンクルムを殺し続けたボッカの前に、ウィンクルムと共にリヴェラは現れました。
 女神ジェンマの力、宝具『英霊ノ鏡』、そして愛の力を使い、リヴェラはウィンクルムと力を合わせ、ボッカと戦います。
 そして、自らとイヌティリ・ボッカの力を封印することに成功したのでした。



「思い……出した……」

 イヌティリ・ボッカは呟いて、左手を上げた。

 羽純と歌菜がリヴェラの前に出て、ガウェインが盾を構える。

「リヴェラ……またお前は、俺様の復讐を邪魔するのか……!」

 瘴気を含んだ強烈な閃光弾が放たれた。
「くっ……!」
「きゃあっ!」
 まともに受けた羽純と歌菜が衝撃で吹き飛ばされ、場が白く染まる。

 そして、視界が元に戻る頃には、ボッカの姿は跡形もなく消えていた。
「リヴェラさん……は?」
 ひろのに助け起こされながら、歌菜が尋ねると、ひろのは大丈夫と頷いた。
 同じくルシエロの手を借りて起き上がった羽純は、歌菜の無事とリヴェラの姿を確認して安堵の息を吐き出す。

 リヴェラは穴の開いた天井を見ていた。
 ボッカが消えた、空を。

 ※

 全身を引き摺るようにして、ボッカは、『ギルティ・ガルテン』に転がり込んだ。
 ギルティの呪いにより永遠の夜が続く世界。
 頭が割れるように痛く、寒かった。
 ボッカは倒れ込み、瞼を閉じる。
 脳裏に、先ほどの『彼女』の姿が甦った。

 俺様は──。

 ボッカは思考を閉ざす。
 今は、ただ眠りたかった。


(執筆GM:雪花菜 凛 GM)


戦闘判定:大成功
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