リザルトノベル【女性側】イヌティリ・ボッカ交戦部隊
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リザルトノベル
──バレンタイン城、いやこの国は、何処もかしこも甘い香りがする。
イヌティリ・ボッカは、瞳を細めてその城を見上げた。
この城に、俺様を封印しやがった奴等が居る。
──全部、ぶっ潰してやる。
そうすれば、この不愉快な気分も感覚も消え去る筈だ。
ボッカはクッキーの地面を踏み締めゆっくりと歩いていく。
「私と羽純くんは、リヴェラさんの護衛をします」
「状況をみて前線にも出ようと思ってる」
桜倉 歌菜と月成 羽純はそう言って、一同を見た。
「私は右の楼閣に上って、鶏の声を上げる役をしたいと思います」
「なら、俺は伊万里の居る楼閣を守るぜ。ボッカに鶏の焼き菓子を壊されないようにしないとな」
八神 伊万里が楼閣を見上げれば、アスカ・ベルウィレッジも同様に巨大な鶏の焼き菓子を見た。
「私とアルは、前に出てボッカと戦うわ」
「ええ。出来るだけ、こちらに引き付けたいと思います」
月野 輝の視線に、アルベルトは微笑んで頷いた。
「私は左の楼閣で鶏の焼菓子を攻撃して、鶏の声を出すようにします。
もし、鶏の声で『絶望色のオーラ』が消えない場合は、呪符での解除も試みようかと思っています」
かのんは『【呪符】五行連環』を手に、左の楼閣を見た。
「俺は前衛組だな。連携していこう」
天藍が微笑むと、一同は頷く。
「俺も前に出る。『絶望色のオーラ』が消えるまで、耐えていこう。戦う中で隙や弱点も見えてくる筈だ」
「私は後ろから援護するわ」
シリウスが静かに言い、リチェルカーレが微笑んで言えば、
「私も、これで皆を援護する」
ひろのは、二種の呪符と『逢魔鏡ショコラント』を大事に抱えて続いた。
「オレは前衛だ。オーラが消えた時が、勝機だな」
ルシエロ=ザガンがそう言うと同時、誰からともなく手を出した。
円形に並んだウィンクルム達はそれぞれの手を重ねる。
「……守り切ろう!」
ウィンクルム達は決意を固め、それぞれの位置へと散らばった。
『シュヴァリエ・グロリア』内は、とても静かだ。
歌菜は少しひんやりとした空気を吸い込んで、天井を見上げるリヴェラ・アリアンヌを見た。
「リヴェラさん、きっと私達が何とかしてみせますから」
歌菜が声を掛け、ぐっと拳を握れば、リヴェラは微笑む。
『うん、そうだね。……一人じゃないからね』
そんな二人を横目に、羽純は周囲を隈なく見渡した。
いざという時、どのようにリヴェラを守るべきか考える。
ゾクリと、背筋を凍らせるような瘴気に、羽純と歌菜はほぼ同時に顔を上げた。
「羽純くん……!」
「ああ、来たようだな……ボッカが」
羽純は頭上を睨んだ。
圧倒的な威圧感。渦のような瘴気。
ギルティ・ストルゲを司るギルティ──イヌティリ・ボッカは、マントを翻し笑った。
「──やはり俺様の邪魔をしに来たか、ウィンクルムども」
品定めするようにウィンクルム達を眺めると、ハッと鼻を鳴らす。
「いいぜ、丁度むしゃくしゃしてた所だ。俺様を封印しやがった奴等をぶっ潰す前座に、相手してやるぜ」
「可哀相な人……」
肌を刺すような殺気に怯まず、輝は一歩前に出た。
その言葉に、ボッカが眉を上げる。
「どういう意味だ?」
「言葉のままよ。貴方には愛する人はいなかったの?」
輝の黒曜の瞳と、ボッカの剣呑な眼差しが絡み合った。
「『愛』? 俺様にはそんな甘ったるい感情(もの)はねぇ。美しくて強い俺様が、誰かに愛される事があってもな」
「……どうして、貴方はギルティになったの?」
輝はじっとボッカを見た。
ずっと疑問に思っていた事だ。
ボッカは、その眼差しを一瞥して右手を上に上げる。
「お喋りはここまでだ。俺様は忙しい」
「おや、随分とせっかちな事だ」
わざとゆっくり言い、アルベルトはにっこり笑った。
「まさか、私達程度の相手に本気を出したりしませんよねえ?」
小馬鹿にした笑いに、ボッカの眉がピクリと動く。
「当たり前だ。お前ら如き、片腕でも十分なくらいだぜ」
まんまと釣られたボッカは、負けじと傲慢な笑みを浮かべた。
(……ギルティになった理由について、話を逸らしたように見えたわ)
リチェルカーレは、後ろからボッカの表情の変化を観察している。
ウィンクルムの絆の力を見せれば、もっと彼の本音を引き出せるかもしれない──リチェルカーレは、シリウスへ声を掛けた。
「支援は任せて。あなたは振り返らないで」
「……ああ、わかった」
シリウスは一瞬驚いた顔をするも、即座に微笑みを返す。
ボッカは不愉快そうに顔を歪めた。
──胸の辺りを熱くする、あの夢の女の言葉を思い出す。
その間、後ろに控えたひろのは、『逢魔鏡ショコラント』を構えてボッカの姿を捉えていた。
悪しき敵を写している間、対象の敵を弱体化させる効果があるという魔境。
ボッカはその魔力を感じ取ると、口の端を邪悪に上げる。
「ふん、そんなもので俺様を捕らえられると、思うんじゃねぇ……!」
ダンッとクッキーの床を踏み付けると、ボッカの姿が一瞬で五つに別れる。
「どうだ! これが必殺『イケてるメンズパラダイス』だ!」
「……分身したの?」
「いや、これは……高速で移動しているんです。我々が見えているのはその残像でしょう」
目を丸くするリチェルカーレに、アルベルトが眼鏡に手を掛け答える。
「歩いてるのに何でこんなに速いんだ!?」
ボッカの動きを目で追いながら、アスカが舌を巻いた。
「出鱈目だな……」
シリウスも眉を寄せる。
「ふはははははは! 驚いたか!」
ボッカが高笑いを上げた。
(そろそろでしょうか)
右の楼閣に待機していた伊万里は、反対側の楼閣の下に居る、かのんに視線を向ける。
『共に最善を尽くしましょう』
かのんと天藍は同時にインスパイアスペルを唱えた。天藍がかのんの紋章に口づけると、かのんの背中に光の翼が広がる。
『セイクリッド・トランス』──神人の能力を爆発的に飛躍させるトランスだ。
伊万里とかのんの目が合い、頷き合うと、二人は同時に鶏の形をした焼き菓子を攻撃する。
伊万里は『片手剣「トランスソード」』で斬り付け、かのんは呪符を飛ばした。
『コケッコッコー!』
突如鳴り響いた鶏の声に、ボッカは肩を跳ねた。
分身が解け、嫌悪を湛えた顔で、辺りを見渡す。
「どこから……」
その隙を、ウィンクルム達は見逃さない。
天藍は特殊な呼吸方法で速度を上げながら、『ダーインスレイヴ』で斬り付けた。
「……くっ!?」
ボッカはほぼ本能的な動きで、何とかそれを躱す。
そこへ、流れるような舞いの動きで、シリウスが『【魂剣】ソウルダンサー』を突き出した。
「チッ……!」
左肩を双剣が掠り、ボッカが顔を顰める。
身を引こうとした所へ、今度はルシエロの『ダーインスレイヴ』が飛び込んできて、紅い鎖がハート状に弛み、ボッカの腕に巻き付いた。
伊万里とかのんは、更に鶏の焼き菓子へ攻撃を加える。
『コケコケコッコー!』
「うぐう……!」
ボッカの顔が青ざめ、絶望色のオーラが揺らぐのをひろのは見た。
「貰った……!!」
ルシエロが拘束した右手目掛けて、アスカは『セルシウス・ダイヤ』を振り抜く。
「ぐうううう!」
相手の装甲を砕き、防御力を下げる一撃に、ボッカの顔に苦痛が浮かんだ。
「やあ!」
下がろうとするボッカへ、輝は『槍「緋矛」』を振るって妨害する。
「まだ終わりじゃ、ありませんよ……!」
アルベルトの『【輪廻剣】インカーネーション』が白い蛇になり、アスカが攻撃した同じ場所へ噛み付くように斬り付けた。
「……お前ら……!」
力を無くし落ちる右腕を押さえ、ボッカは瘴気の風でウィンクルム達を牽制し、後ろへ下がった。
じりじりとウィンクルム達はボッカを包囲する。
「言葉通り、片手で相手する事になりましたねえ」
アルベルトが微笑めば、ボッカからどす黒い瘴気が立ち上った。
「それか……!」
カッとボッカの瞳が開くと、左手を突き出す。
「危ない! 避けろ……!」
「モテ☆ビーム!!」
シリウスの叫びでウィンクルム達が構えた瞬間、瘴気を含んだ強烈な閃光弾が、左の楼閣へ放たれた。
「きゃ……!?」
「かのん!!」
天藍が叫ぶ。
かのんは、数メートル後ろへ下がりながらも、何とか爆風に耐えた。『セイクリッド・トランス』状態でなければ、一緒に吹き飛んでいたかもしれない。
天藍はほっと安堵の息を吐き出した。
楼閣から落ちて砕けてしまった鶏の焼き菓子を見て、リチェルカーレは『神符「詠鬼零称」』を構える。
ひろのも同時に二種類の呪符を両手に持っていた。
(もう片方の焼き菓子は守らないと……!)
リチェルカーレの神符と、ひろのの二種類の呪符が光る。
(やられる前に、やるしかありません!)
伊万里は力の限り、鶏の焼き菓子を剣で叩くように斬った。
一匹になった鶏は、伊万里の想いに応えるように、一際大きく鳴く。
『コケッコッコー!』
「……!?」
反射的に体を強張らせるボッカに、リチェルカーレの神符から放たれた拘束の力が絡みつく。
「鶏が苦手なんだって? 突かれた事でもあるのか」
高速で突進したシリウスが薄ら笑いでそう言えば、ボッカの顔が赤く染まる。
「隙だらけだ」
防御を崩す剣撃を腹に喰らい、ボッカは低く呻いた。
「……うおおおお!! 風よ!俺様を引き立てる罪な風!」
吼えたボッカは、左手で瘴気を含んだ風を巻き起こし、リチェルカーレの神符の力を無理矢理振り解く。
「斬り裂け!」
そのままボッカは、伊万里の居る楼閣へ瘴気の風を放った。
「させない……!」
刃となった風の前に、『【式占盾】六壬式盤』を構えたかのんが立ち塞がる。
「……守って……!」
ひろのの『護符「水龍宮」』が輝きを放つと、かのんの前に護符が展開し水の波紋が広がった。
「くぅ……!」
護符の力で弱まった瘴気の刃をかのんは盾で受け止め、後ろに押されながらも耐え切る。瘴気は霧散した。
「あんた、ギルティ化する前は何してたんだ?」
その間、背後に回り込んでいた天藍は、そう問い掛けながら高速の突きを繰り出す。ボッカの脇腹から血が飛んだ。
「そんな事は……覚えてねぇ!」
瘴気の風の刃を、天藍は舞うような動きで避ける。
「実はこの国の英雄だったが、酷い裏切りを受けた……とか?」
「笑えない冗談だ!」
ボッカは怒気を放ち、彼の手元に魔方陣が出現した。
「俺様的必殺技『ダークネス・スライス』! 全員、斬り刻んでやる……!」
「させるか!!」
アスカは跳躍し、剣を振り翳す。
ギィン!
アスカの剣とレイピアが火花を散らし、ボッカから瘴気が噴き出ると同時、アスカは弾かれた。
「ぐう……!」
「アスカさん!」
地面を転がるアスカにかのんが駆け寄るが、そこでふっと力が抜けていくのを彼女は感じる。
背中の羽が消え、『セイクリッド・トランス』の効果が切れると、がくんとその場に座り込んでしまった。
「かのん、暫く休んでくれ。必ず守る」
即座に天藍が、かのんとアスカの前に滑り込む。
「天藍さん、ここは私が……!」
輝がアスカを助け起こし、かのんに肩を貸して力強く言った。
「頼む……!」
天藍は頷くと、再びボッカの元へ走る。
「はあ!」
「まだまだ!」
「ふっ……!」
アルベルトとルシエロ、シリウスの剣が、ボッカのレイピアと激しく火花を散らした。
『コケッコッコー!』
伊万里が鳴らす鶏の声に、ボッカの力が弱まる度、その身体に傷が増えていく。
「逃がすか!」
そこへ天藍も加わり、ボッカはウィンクルム達に囲まれた。
(この俺様が押されている? まさか、まさか……!)
歯噛みしながらも、ボッカはこのままでは不利である事を理解していた。
(あの忌々しい鶏の鳴き声さえなければ……)
ルシエロの剣が急所を正確に狙い、ボッカの体勢が崩れた時、目の前に水の竜が現れる──ひろのの『神符「水龍宮」』の力だ。
下から吹き上げる激流と水圧に、ボッカは左手を突き出す。
「モテ☆ビーム!!」
水の竜と閃光弾がぶつかり合い──クッキーの床が崩落した。
ボッカは、ウィンクルム達と一緒に地下の空間へと落下する。
激しい爆発音に、羽純は『チャーチ』を展開し、背中に歌菜とリヴェラを庇った。
テソロ──ガウェイン・フーリンも、『セイクリッドアイアース』を構える。
クッキーの床と共に落下してきた者の中に、ボッカが居る事に気付くと、ガウェインは即座に叫んだ。
「皆、離脱して下さい……!」
武器化した英雄達が一斉に光に包まれ消えていく──ガウェインにより、別次元に転移されたのだ。
「ここは……何処だ?」
満身創痍のボッカは、ゆらりと立ち上がり前を見る。
そして、『彼女』に気付いた。
「お前は……」
「……ボッカ」
リヴェラは微笑んだ。
カチリと、ボッカの中で記憶の歯車が噛み合う音がする。
※
昔話をしよう。
昔々、あるところに、貴族の青年が居ました。
名前はシュバルト・ボッカ。
彼はとても貴族らしい青年で、高慢で不遜、ナルシストでした。
当然、女の子にもモテモテで、女の子に冷たくされた事などありませんでした。
そんなある日、ボッカは平民の女性に出会います。
リヴェラ・アリアンヌは、とても美しい女(ひと)でした。
ボッカは一目でリヴェラを気に入り、声を掛けましたが、何という事でしょう。
リヴェラはボッカを見るなり、『着ているものが派手過ぎる、悪趣味』と言い放ったのです。
ボッカはとても腹が立ちましたが、同時にリヴェラがとても気になりました。
生まれてこの方、そんな事を言われた事はないボッカにとって、歯に衣着せぬ彼女の言動は、眩しく好ましいものでした。
いつしかボッカはリヴェラに会いに町に通うようになり、二人はすっかり仲良くなりました。
高慢な言動の中に潜むボッカの優しさに、リヴェラも惹かれていたのです。
友情が恋に──そして愛に変わるのに、然程時間は掛かりませんでした。
二人は幸せな恋をしたのです。
しかし、その幸せは長く続きませんでした。
ボッカの家の人々が、リヴェラとの仲を引き裂いたのです。
理由は『身分が違うから』。
相応しい身分の女性を妻として迎えるように。
そう言われて、ボッカが納得できる筈がありませんでした。
密かにリヴェラと逢瀬を重ね、彼女と幸せになる方法を必死で模索します。
『城を探しているんだ』
『お城?』
『お前と俺様、二人で暮らす城だ。誰にも邪魔されず、一緒に暮らせる城を探す』
夢みたいだね──そう言って幸せそうにリヴェラは微笑みました。
けれど、運命の日はあまりにも残酷にやってきます。
『お止め下さい!』
扉の外で争う声に、リヴェラはそっと外を窺いました。
そこでは、ボッカが彼女の為に護衛に付けてくれた彼の部下達が、大勢の男達に襲われていました。
男達はリヴェラを捕らえに来たのです。
『私なら一緒に行きます。だから、これ以上彼らに酷い事はしないで欲しい』
『いけません、リヴェラ様!』
『行くな!』
『俺達の為に、そんな……!』
泣いて止める部下達に、リヴェラは笑顔を見せます。
『どうか、ボッカには知らせないで欲しい。知らせるなら、すべてが終わった後に』
そして彼女が連れていかれたのは、処刑場でした。
罪状を言い渡す処刑人の声に、リヴェラは天を見上げます。
──下賤な身分にも関わらず、嫌らしい体でボッカを誘惑し、悪の道に誘った魔女。
処刑人はそう言いました。
『違う。私はボッカと愛し合った。その真実は誰にも曲げられない』
喩え処刑されても、この想いだけは曲げられない。
ただ、ボッカが……私を失ったボッカが、どんなに悲しむか……それだけがこんなに辛い。
『退け! 退けぇ……!!』
ボッカの声が聞こえました。
ああ、どうして……見ては駄目。
ボッカ、来ないで──。
──コケッコッコー。
処刑の終了を告げる、鶏の声を聞きながら、リヴェラは自分の命が零れ落ちていくのを感じていました。
『アア、あああああああああ……!!』
ボッカの吼える声がして。
その彼の前に、邪悪な何かが現れたのに、リヴェラは気付きました。
『愛する者を奪った者達に復讐をしたくないか』
駄目。駄目だよ、ボッカ。
復讐なんて、駄目──。
ボッカが黒く染まりました。
彼の部下も一緒に、黒く、黒く、昏く──。
死ねない。まだ死にたくない。
ボッカを置いて、逝けない──。
リヴェラが消えそうな意識の中、そう強く願った時。
『愛する者のために、力を貸してください』
目の前に、神々しい女神が立っていました。
女神ジェンマです。
リヴェラは、差し伸べられたその手を取り、命を取り戻したのです。
それから、様々な村を破壊し、ウィンクルムを殺し続けたボッカの前に、ウィンクルムと共にリヴェラは現れました。
女神ジェンマの力、宝具『英霊ノ鏡』、そして愛の力を使い、リヴェラはウィンクルムと力を合わせ、ボッカと戦います。
そして、自らとイヌティリ・ボッカの力を封印することに成功したのでした。
※
「思い……出した……」
イヌティリ・ボッカは呟いて、左手を上げた。
羽純と歌菜がリヴェラの前に出て、ガウェインが盾を構える。
「リヴェラ……またお前は、俺様の復讐を邪魔するのか……!」
瘴気を含んだ強烈な閃光弾が放たれた。
「くっ……!」
「きゃあっ!」
まともに受けた羽純と歌菜が衝撃で吹き飛ばされ、場が白く染まる。
そして、視界が元に戻る頃には、ボッカの姿は跡形もなく消えていた。
「リヴェラさん……は?」
ひろのに助け起こされながら、歌菜が尋ねると、ひろのは大丈夫と頷いた。
同じくルシエロの手を借りて起き上がった羽純は、歌菜の無事とリヴェラの姿を確認して安堵の息を吐き出す。
リヴェラは穴の開いた天井を見ていた。
ボッカが消えた、空を。
※
全身を引き摺るようにして、ボッカは、『ギルティ・ガルテン』に転がり込んだ。
ギルティの呪いにより永遠の夜が続く世界。
頭が割れるように痛く、寒かった。
ボッカは倒れ込み、瞼を閉じる。
脳裏に、先ほどの『彼女』の姿が甦った。
俺様は──。
ボッカは思考を閉ざす。
今は、ただ眠りたかった。
(執筆GM:
雪花菜 凛 GM)
戦闘判定:大成功