リザルトノベル【女性側】結界石破壊チーム
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リザルトノベル
●門前日の出が、敵陣への突撃開始の合図だ。
うっすらと注ぐ日の光に影を伸ばすのは、ラインヴァイスの城郭ばかりではない。あたりに徘徊しているデミ・オーガ。夜の闇をものともしない生き物たちもまた、その容貌を露わにし始めていた。
その中でトランスを終えたウィンクルムが、それぞれの武器をとる。今回一同の目的は、城の四方にある結界石の破壊および、内部に潜入するグループが通る道を拓くことだ。
「楽しいものを無茶苦茶にする奴はブッ飛ばすってのが、私の信条なの」
スティレッタ・オンブラはそう言って、引き抜いた剣の柄を握った。
せっかく楽しめるはずだったクリスマスイベントを行う場所が、戦いの地になっている。そんなことを、許せるはずはない。
「行くわよ、クロスケ!」
「ああ」
返事と同時、バルダー・アーテルは双剣『ファイスライサー』を手に、走り始める。
目指すは、ラインヴァイス城門だ。
手始めとばかり飛び掛かってきたデミ・大ラットに短剣『クリスナイフ』を突き刺したのは、アルフレート シェルリングである。
「トーコ様は僕が護ります!」
まだ幼い身ながら、力いっぱいに武器を振るう。続く桜水 桐子も慣れない剣を握ってはいたが、足手まといにならないように、自分の身を守るだけで精一杯。
彼らと並び一直線に走るのが、紫月 彩夢と神崎 深珠だ。
彩夢は、喉を鳴らし飛び掛かってくるデミ・ワイルドドックに短剣『コネクトハーツ』の刃を向けた。その直後、深珠が両手に持った剣で斬りかかる。もはや、敵を数えている余裕はない。鼠でも犬でも狼でも、深珠が狙うは、体幹部ではなく、足などの起動部分。一撃必殺にならずとも、動けなくすれば問題はない。
「ディーナ!」
そのすぐ近くで、エヴァンジェリスタ・ウォルフが叫んだ。牙をむき出しにしたデミ・ウルフが、相棒のオンディーヌ・ブルースノウに、今にも飛び掛かろうとしていたからだ。
オンディーヌは伸びてきた爪を、とっさに短剣で受け止めた。しかし敵の力は強く、押さえているのがやっと。そこにエヴァンジェリスタが突撃し、両手斧を振り上げる。
彼のスキルが万が一にも失敗した場合は、援護をすると約束をした。
バルダーはデミ・ボアに対峙しながらも、エヴァンジェリスタを視界の端に置いている。まだ戦いは始まったばかり。誰もがここで、膝をつくわけにはいかないのだ。
●南
南側の結界石付近、蠢く敵は、デミ・トレント。
それは節くれだった腕をゆっくりと振り回していた。避けることはたやすいが、何かの拍子に、手足を絡めとられては厄介だ。
その他にも、痩せた犬の頭を持つデミ・コボルトや、デミ・ベアー、イノシシのデミ・ボアなど、敵は多い。すべてにまともに対峙していては、ウィンクルムの消耗はすさまじいものになってしまうだろう。
桂城 大樹は大きく息を吸い、声を張り上げた。
「アプローチ!」
大樹にいっきに、敵の視線が集まる。
その傍らで、片手剣『クリアライト』を掲げたのは、御神 聖。刃が朝の光にきらりと輝き、デミ・トレントを怯ませる。
「デミ・オーガさんたち、こちらですわよ!」
スキルで敵を引き寄せることはできないが、声で注意を引くことはできる。
マーベリィ・ハートベルは剣を握ったまま、大きな声を出した。
彼女を守るように腕を伸ばしながら、ユリシアン・クロスタッドが、敵に銃口を向ける。
ガウン、ガウン!
飛び出た弾丸は、まっすぐにデミ・ボアの毛皮を貫く。
その脇を、椿姫桜 姫愛姫が走り抜けていく。手に持つのは、特製の香辛料入りスプレーだ。
「ブサいデミ・オーガたちに、これは効くのでしょうか?」
通り抜けざまに、デミ・ゴブリンの横っ面にひと吹き。しかしオーガは目を瞬かせたものの、反応はそれだけだった。逆にさびた剣を向けられ、それを、麻琵 桜玉 殊月が身にまとった光輪がはじく。
「姫は私が護ります。どうかご安心を!」
「そうよ、あなたは結界石へ!」
エルナ・バルテンの声ともに、彼女が放った弓がゴブリンに刺さる。しかし敵は一撃では倒れずに、キイキイと高い声で叫びながら、エルナを向いた。そこに、ロードリック・バッケスホーフのロングソードが叩きつけられる。
「嬢ちゃん、無理するなよ」
動かなくなった敵の、今度は横のゴブリンに剣を向けるロードリック。
その頃には姫愛姫は、敵の間を通り抜け、結界石へと近づいていた。
●東
「僕たちは、皆のフォローにまわるよ、レーバ、お願い」
「……ま、突破するのも大切だが、被害を減らすのも大切だな」
天野 想華とレヴァンテイルはそう言って見合わせた顔を、デミ・オーガたちへと向けた。
結界石の周りには、異臭を放つデミ・リビングデットや、デミ・ウルフ、他にも尖った前歯を見せるデミ・大ラットなど、多くの敵が群がっている。
突撃したい気持ちはあれど、自分たちでは力不足であるだろう。
肌を刺すような冷たい空気の中、シャルティは『アイシクル・スラッシャー』を握っている。
「いくわよ!」
敵の不気味さに顔をしかめながらも剣を振り上げ、リビングデットの崩れかけた顔を狙う。
「ほんと数が多いな!」
グルナ・カリエンテは大剣を持ったまま、身体を回転させるようにして、周囲の体を薙ぎ払った。しかし何匹かは倒れるも、すぐにまた次が現れる。
敵は容赦なく、ウィンクルムに襲い掛かった。たとえ相手が幼少であっても、例外はない。
たくさんの鼠たちに囲まれて、真衣は盾を構えている。がん、と響いた衝撃は、敵の前歯が盾に当たったことによるものだ。
じんと腕が痛む。それを真衣は、歯をくいしばって耐えた。
「ハルトから離れないようにしなくっちゃ」
「ああ、そうしてくれ」
ベルンハルトは、遠方を狙っていた銃口を、手近な敵に定めた。その体に押し当て引き金を引けば、鈍い音とともに、敵が倒れる。
ロロ・リアルもまた、小さな体で大きな剣を振るっている。
初めての戦闘で緊張はするが、少しでも皆の役に立ちたい。
剣の切っ先が大ラットの鼻をかすめると、敵がキイ、と鳴いた。
ロロの隣で、ウォルフ・ルーガもまた、マジックワンドを振っている。
もちろんその間にも、長身を生かして周囲に目を配ることは忘れない。仲間が傷ついたら、癒すのは、ライフビショップである自分の役目なのだ。
そんな仲間の間を、上巳 桃と斑雪が駆けていく。
「はーちゃん、後ろは任せたからね!」
桃はきつく握り締めた『コネクトハーツ』で、向かってくる敵を斬りつけた。
続く斑雪は、『陽炎』と『朧月』で敵をかく乱しつつ、斧を振り回す。
「結界石まで、もう少しです! 全力で行きましょう、主様!」
●北
デミ・トロールの口から、咆哮が上がる。それに呼応するように、デミ・ワイルドドックやデミ・ウルフたちも次々に吠え出した。そこに、ゴブリンが武器を揺らす音が混じっている。
足元には鼠、少し先には動く死体と、敵は様々。そしてさらにその先には、結界石がある。
「これ以上、石に近付かれてもいけませんね」
敵の注意を、なんとしてでも石からそらしたい。ジュニール カステルブランチは、迷わず『アプローチⅡ』を発動させた。ぎょろり。異形の目が一斉に、ジュニールを向く。
秋野 空は、その傍らで周囲を警戒している。相棒のもとに敵が集まるのならば、支えるのは自分でなくては。振るった刃がデミ・ワイルドドックの毛皮を裂き、辺りに赤いものが散る。
もちろん、彼らを支える者はまだ別にもいる。
声ならぬ声を発したリビングデットが倒れたのは、ロラン・リウが狙った銃弾が当たったからだ。
狙撃手として大事なのは、安全圏にいること。だからあえて、遠方から狙いを定めている。
その横で短剣を握るのは、ユズリア・アーチェイド。
「兄様を守るのが、わたくしの役目ですわ」
敵はまだ、ここまでは届かない。だが、やってくる可能性は、十分にあるのだ。
一方結界石近くでは、ユウキ・アヤトが大剣を振り回していた。にも関わらず、気づけば敵に囲まれているという有様。しかしいっそ好機と身体を回転させて、いっきに敵を薙ぎ払う……が。
いかにせん、敵が多すぎたか。戦いきれず、膝をつく。
「アヤト!」
ミヤ・カルディナが駆けつけ、とっさに彼を抱きしめた。
インスパイア・スペルが耳に届き、身体がすっと楽になる。『サクリファイス』だ。
ロランのいるあたりの敵を斬り、ジュニールの周りに集まる奴らを薔薇の防御で突破して、アラノアとガルヴァン・ヴァールンガルドはひたすら走る。
倒すのは自分たちを邪魔する者のみ。そして目指すは、結界石だ。
アラノアの『トランスソード』と、ガルヴァンの両手剣『ゼノクロス』はともに赤く濡れており、当初の輝きはない。それでもまだ、進まねばならない。
その時、ウオオオン、と低い声が響き渡った。
二人の前に立ちふさがったデミ・ウルフ。その体に、逆月の放った矢が刺さったのだ。
傍らで、豊村 刹那は、敵の攻撃を受けとめている。狼の爪と片手剣『破邪』の刃があたり、固い音を出した。刹那は引きかけた敵に、さらに切りかかろうと足を踏み出す、も。
「刹那、あまり前に出るな。敵が寄らなければ、それでいい」
逆月が、落ち着いた声で言う。
●西
レイナス・ティアは紫色の目を見開いた。先ほど仲間と共に、デミ・オーガを倒した際の緊張が残っているわけではない。
「ルディウス様……本気、ですか……っ?」
ルディウス・カナディアは深く頷く。
「ええ、ここを制しないと、最終的に誰も護れなくなりますから」
そのために結界石から離れたこの場所に、あえて残っている。
彼が発動する力は『アプローチ』。
敵が一斉に、こちらに足を向けるのがわかった。
その脇で。
「じゃあ、レオ、パペット用意だよ!」
ファルファッラは黒髪を揺らし、大きな声で言った。
「やれやれ人使いが荒い……準備は出来てる、行くぞ」
言うが早いか、レオナルド・グリムの前には大きなパペットが飛び出す。
支援ができればいいと思っていたが、なかなかどうして、それだけではすまなそうだ。
レオナルドのパペットが、ルディウスの周囲に集まるオーガへと、突撃していく。
近くでは、雨地楓太もロングソードを振るっている。小さな体躯に大きな武器はアンバランスだが、それでも周囲のデミ・大ラットを潰すことができた。
「ひーばあちゃんがけがしないようにがんばる!」
その愛らしい声にも、井垣 スミは笑顔を見せることはない。
石へと向かおうとしているデミ・オーガの背中を、ステッキで思い切り叩く。
「年をとってもね、譲れないものがあるの」
そしてそんな遠方での戦いは知らず、ラブラ・D・ルッチとアスタルア=ルーデンブルグは、結界石間近で戦っていた。
「アス汰ちゃんとクリスマスパーティーをする予定なんだから、邪魔しないでちょうだい!」
ラブラは『コネクトハーツ』でデミ・ウルフの肉を切る。そこにアスタルアの手裏剣が刺さるのだが、その声が。
「僕聞いてないんですけど!?」
叫び声で会話をしつつ、目に入る敵には武器を向け、やっとのことで、石にたどり着く。
●石の破壊、そして再び門前
南・東・北・西と走り、回りつつ。
危険に陥っている仲間を救うために弓を使い、アリシエンテとエストは、最終的に、西の結界石のもとへとやってきた。
動きながらの攻撃でもそれなりに戦えたのは、エストの能力によるところが大きいだろう。
今見ているのは、地面に設置された、半球状の石。
その前で、アスタルアが仕込み刀を構えている。
南の地では、姫愛姫が、短剣を。
西の地では、斑雪が、小剣を。
北の地では、ガルヴァンが、両手剣を。
振り下ろしたのが、同時。
――ガシャン、と。
石はいとも簡単に割れた。
「扉が、開く……!」
門前で、最初に気付いたのは誰だったのか。
手前へと開いてくるドアの脇で、シルキア・スーは再び剣を握り直した。これまでも戦ってきた。しかし今後は、この中へと敵を入れないための戦いが、始まる。
彼女への攻撃を盾で受け止めていたクラウスは、周囲の仲間に目を向けた。多くの敵を相手に、皆が疲弊してきているのがわかる。
「そろそろ回復をする」
相棒への合図の後、クラウスはそう言って、『サンクチュアリ』の詠唱を始めた。
そこにやってきたのが、リデルとエイルだ。
リデルは、詠唱中のクラウスの前へと立った。
「サポートするよ」
短くシルキアに言えば、ありがとうと返される。
日の出からこれまでの間に大方の敵は叩いてきたが、それでもまだ敵は向かってきていた。
「デミ・ゴブリンか。行くよ、リデル」
リデルに並び、エイルが剣を構える。
仲間を護るために戦っているのは、カイラス・エスクリヴァも同様だ。
傷つく者がなるべく少ないようにと、防御力向上の『フォトンサークル』を展開している。その内部で、向坂 咲裟は短剣を振るう。
戦い当初よりは日も高くなり、『クリアライト』も光を反射しやすくなっている……と、天を見上げ、下ろした視界に。
武装した、ウィンクルムの姿が見えた。
「皆、ラインバルト城の扉は開いたのだよ!」
采女 澪は、武器を手にやってくる仲間に、声高らかに告げた。城内に向かう、レッドニス救出チームとダークニス討伐チームだ。
ヴァーリ=ウルズは城門をくぐっていく彼らに、期待のまなざしを向ける。
「頼んだぜ!」
「クリスマスを取り戻してくれ!」
「敵は絶対に、中に入れないわ!」
「怪我だけは、注意して」
仲間からの言葉を受けて、より危険な戦いへと身を投じる者たちが、城の内部へと進んでいく。
――その背に、クリスマスの未来を背負って。
※
そして、しばらく後。
開かれたままの城門を、内からくぐる者があった。
それに最初に気付いたのは、ユーリとカインリーグルシュだ。
だが、声を上げたのは、彼女を知る別のウィンクルム。
「あれは……リオさんと、レッドニス!?」
「そうだ、助かったんだ!」
外部の敵を倒しきっていた一同は、わあ、と一斉に、二人のもとへと集まった。
リオに手を引かれ歩くレッドニスは、想像していたよりもよほど平気そうではある。
しかし、だ。
「一応万が一のこともあるから、病院へ行った方が良いのだよ」
「ああ、そのつもりだ」
皆の疲労回復用にと、用意していたお茶を手渡す澪の言葉に、リオが短く答える。
お互いに見る姿はそれなりに満身創痍。
場内の戦いだって、けして楽なものではないはずだ。
それでも、目的は達成した。
「さあ、街へ戻りましょう!」
「レッドニスと一緒に!」
ウィンクルムは揃って、足を踏み出した。
(執筆GM:瀬田一稀 GM)