リザルトノベル
◆アクション・プラン
明智珠樹(千亞)
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×3
★夜のムーングロウ散歩
(撮影隊に)
「ふ、ふふ!
可愛らしい千亞さんを撮影し永遠に残したい気持ち、わかります…!
しかし!
残念ながら今日の千亞さんは予約済です…!
私が千亞さんのあんな姿やこんな姿を撮影をいたしますので
ぜひご期待くださ(蹴られ)」
●愛
「ふふ、今日も素晴らしい足技…!」
(海辺でもいつも通りな千亞に安堵)
千亞さん。
(手を差し出し、笑み
鼻歌交じりに散歩
小さく柔らかな手
急に歩みが止まる千亞
振り返れば、涙目で)
「千亞さん…思い出させてしまい、申し訳ありません」
「誓います」
微笑み、抱きしめ
頬に優しいキスを
千亞からのキスに驚くも、幸せそうに受け
「千亞さんの初デレ…!」
ガッツポーズし蹴られる
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月明かりの中、ぼんやりと輝き始めるムーングロウ。
折角のデートだから、と明智珠樹は月夜のヤシの林へ精霊である千亞を散歩に誘った。
静寂の中を、二人の足音だけがさくさくと行く。ヤシの木の間を覗き込めば、月だけを映しだした黒にも近い深い深い藍色の海が見えた。ふるり、と千亞の瞳が不安げに揺れる。
大切な兄を奪った海は、昼間でさえ少し怖いと感じるものなのに、宵闇に飲み込まれた海はなおさらだ。真っ黒で、冷たく光っていて、美しいけれど……吸い込まれそうで、少し怖い。傍らの珠樹をちら、と見上げると、いつもの横顔があったからその恐怖は拭われていったけれど……。
「あ、撮影の人だ」
もう一つの足音を察知して後ろを振り返ると、そこには撮影クルーが。
よろしいですか? と声をかけてくるのに対して、珠樹はにこりと微笑んだ。
「ふ、ふふ! 可愛らしい千亞さんを撮影し永遠に残したい気持ち、わかります……!」
それでは、とクルーがカメラを構えた瞬間くわっと珠樹の目が見開く。
「しかし! 残念ながら今日の千亞さんは予約済です……!」
「へ? 予約済み……?」
鼻息荒く珠樹は言葉を続ける。
「私が千亞さんのあんな姿やこんな姿を撮影をいたしますのでぜひご期待くださ」
「あんなすが……っ!? 何言いだすんだド変態っ!」
ずがぁん! と容赦なく珠樹のボディに兔キックが炸裂する。
「はふぁぁんっ!」
べしゃり、と砂地にめり込む珠樹。
クルーが心配そうに大丈夫ですか、と駆け寄るのを片手で制止し、千亞は頭を下げる。
「どうもお騒がせしました!」
「ふふ、今日も素晴らしい足技……!」
珠樹は、千亞が海に恐怖心を抱いていることはわかっていた。先刻の揺れている瞳を見て、しっかりと把握していたのだ。こうやって跳び蹴りを入れられるくらいだから、千亞はいつも通りだ。そう感じ、心の奥で小さく息を吐いた。
千亞は、恍惚とした表情の珠樹の首根っこを掴んでずりずりと引きずっていく。
「行くぞ! ド変態っ!」
体勢を立て直して、珠樹はずんずん進んでいく千亞についていく。
そうしてクルーから距離を取ると、珠樹はそっと手を差し出した。
「千亞さん」
ふわりと微笑んだその瞳は月と千亞を映しだし、妖艶に輝いている。
あたりに誰もいないのを確認すると、千亞は頬をふわりと桃色に染めながら珠樹の手をそっと取った。
素直に手を取ってくれたことが嬉しくて、珠樹は鼻歌交じりに千亞の手を引きムーングロウを歩む。小さくやわらかな手の感触を楽しみながら景色を見ている珠樹。その傍らで、千亞は俯き気味に煌めく小路を見つめていた。
月の光と、輝く道。まるで天上の星々を全て敷き詰めたかのようなムーングロウの小路は、美しいばかりではなく千亞を広大な夜空と海の真ん中に放り投げたかのような感覚に陥れる。
大きく暖かな、珠樹の手。優しいその感触は、幼い頃に兄と手を繋ぎ歩いた記憶を呼び覚ます。もう、二度とあのぬくもりは帰らない。
じわり、と千亞の視界が滲んだ。ぴたり、と足がすくんで急に動けなくなる。
つないだままの珠樹の手が、くんっと急に止まった千亞に引き戻された。
違和を感じ、珠樹は即座に千亞を振り返る。
そっとその赤い瞳を覗き込むと、涙にぬれているのに気付いた。
「千亞さん……」
零れそうで零れない涙を必死にこらえて、千亞は珠樹を見上げる。
「思い出させてしまい、申し訳ありません」
共にあることで少しずつトラウマは払しょくできたと思っていたが、千亞は全てが重なって思い出してしまった。
珠樹は、兄によく似ている。
背格好なんかは正に兄そのもので、暗がりで手を繋いでいれば思い出してしまうのも無理は無い位だ。
けれど、千亞だって理解している。
珠樹は兄ではない。
兄の代わりはいない、兄にはもう会えない。
けれど、珠樹だってかけがえの無い存在になっているという事に、悔しいけれど千亞は気付いていた。
この手を、離したくない。――離さないでほしい。
申し訳ありません、と眉を寄せ頭を下げる珠樹に、千亞は零れそうになる涙をぐい、と拭って顔を上げた。
「いや、大丈夫だ……」
珠樹は、その細く儚い千亞の体と消えてしまいそうなか細い声にそっと優しく手を伸ばす。さらり、と髪を撫でると千亞は珠樹の瞳を見つめ、名を呼んだ。
「……珠樹」
「……はい」
不安げに、けれど、期待を込めて揺れる瞳。
珠樹はその瞳を見つめ、真摯な声で答える。
「僕のこと……」
ざぁっと強く吹いた後、海風が凪いだ。
遠くで、海の音が聞こえる。
もう、失いたくない。
もう、離れたくない。
大切なものは、ずっと傍に。
「離さないって……誓ってくれる?」
震える声で、千亞が問う。
その瞳は強い決心を湛えて珠樹を見つめていた。
珠樹は、間をおかずにゆっくりと頷く。
「誓います」
それはまるで誓いのキスのように、優しく微笑んだ珠樹はそっと壊れ物に触れるように千亞の肩を抱く。そして、少し屈んでその頬に羽が振れるような優しい口づけを落とし、それからすっぽりと包み込むように千亞を抱きしめた。
千亞は擽ったそうに微笑み、そしてこの上なく幸せそうにその細い腕を珠樹の背に回す。
真っ暗な海も、零れ落ちてきそうな星も、もう怖くない。
間違いなく、珠樹はここにいる。
絶対に、離さないと誓ってくれる。
ぎゅっと珠樹の背に回した腕に力を込めると、珠樹は少し驚いて千亞の肩口にうずめていた顔を上げた。
珠樹を見上げた千亞の唇が、音に出さず『たまき』と動く。
珠樹が小さく首を傾げて千亞にそっと顔を近づけると、千亞はゆるりと白い指先を珠樹の頬に伸ばし、少し背伸びをしてから引き寄せた珠樹の唇にふわりと自分の唇を重ねた。柔らかな感触、ほんの一瞬の出来事なのにその瞬間だけが切り取られたシーンのように珠樹の心に焼き付く。
まさか千亞からキスを貰えるなんて思っていなかった珠樹は、驚きに目を見開いたが、すぐに甘やかな香りに瞳を閉じ、そのわずかな時間に酔いしれた。
ゆっくりと触れた唇が、おなじようにゆっくりと名残惜しそうに離れる。
「やくそく、だからな」
少し困ったように微笑む千亞に、珠樹はしっかりと頷いた。
「はい」
約束、です。
抱きしめられた耳元で甘く囁かれた誓いに、千亞はそっと瞳を閉じる。
潮騒の音が聞こえてくるけれど、それはもう大切な人を奪う恐ろしい音ではない。
新しい珠樹との思い出が、傷をすこしずつ癒してくれる。
そう思えば、なんだか悪くないような気がしてきた。
そうしてしばらく2人で抱き合って鼓動を感じ合い、夜風が出てきたのでホテルへ戻ることに。
来る時と同じように珠樹が差し出した手を握り、千亞は温かい気持ちのまま帰路へ……。
と、傍らで珠樹がガッツポーズをするのが目に入った。
「な、何してるの珠樹」
「千亞さんの初デレ……!」
かあっと千亞の顔が真っ赤に染まる。
「っ……余計な事、言うなっ!」
すっぱぁんと良い音を立てて、珠樹の尻に千亞のスラリとした脚によるキックが炸裂。
さっきまでの甘い空気を返してくれと言わんばかりの打音が美しい夜空に響き渡る。
「はあぁぁんっ!」
珠樹の嬉しそうな声に、千亞はこめかみを抑える。
けれど、ふと視線が合った瞬間2人は優しい微笑みを交わした。
――仕方のない奴だけれど、それでも、かけがえの無い人だから。
千亞は、つないだ手にきゅっと力を込める。
それに気づいた珠樹が、そっと千亞に視線を向けた。
――僕も、珠樹を離したくない……。
そんな2人を見守っているのは、白く輝く月だけだった――。
依頼結果:大成功
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名前:明智珠樹 呼び名:珠樹、ド変態 |
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名前:千亞 呼び名:千亞さん |